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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q |
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管理番号 | 1374556 |
審判番号 | 不服2021-2500 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-02-26 |
確定日 | 2021-06-22 |
事件の表示 | 特願2019-220729「プログラム、情報処理方法、端末」拒絶査定不服審判事件〔請求項の数(24)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和元年12月5日の出願であって、令和2年9月28日付けで拒絶理由通知がされ、同年11月25日付けで手続補正がされ、令和3年2月8日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同月26日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同年3月31日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年4月26日付けで手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和3年2月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1-25の記載は、第1金額、第2金額との間の技術的関係について特段の規定がない結果、一のユーザにより支払い済みの金額を複数の端末のユーザにより割り勘精算する発明特定事項を含んでいない。これに対し、本願明細書には、割り勘精算する技術が記載されているものの、割り勘精算を行わないものを含む一般化を可能とするための技術的事項が記載されていない。出願時の技術常識に照らしても、請求項1-25に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 よって、本願の特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載した発明を記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていない。 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 本願請求項1-5、7-8、10-14、17-25に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2018-32200号公報 2.特開2013-254279号公報 3.特開2016-151785号公報 第4 本願発明 本願請求項1-24に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明24」という。)は、令和3年4月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-24に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-24は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 決済に関する処理を実行する端末に実行させるためのプログラムであって、 前記端末のユーザによる前記端末に対する入力に基づいて、前記端末のユーザによる第1決済に関する第1決済情報を前記端末の通信部によって送信することと、 前記第1決済情報と、前記端末とは異なる端末のユーザによる第2決済に関する第2決済情報とに基づく、前記端末のユーザが送金、または受け取る第1金額と、前記異なる端末のユーザが送金、または受け取る第2金額とのうち、少なくとも前記第1金額の情報を前記通信部によって受信することと、 前記第1金額に基づく送金処理、または受取処理を前記端末の制御部によって行うこととが前記端末によって実行される。 【請求項2】 決済に関する処理を実行する端末に実行させるためのプログラムであって、 前記端末のユーザによる前記端末に対する入力に基づいて、前記端末のユーザによる第1決済の決済履歴である第1決済情報を前記端末の通信部によって送信することと、 前記第1決済情報に基づく、前記端末のユーザが送金、または受け取る第1金額と、前記端末とは異なる端末のユーザが送金、または受け取る第2金額とのうち、少なくとも前記第1金額の情報を前記通信部によって受信することと、 前記第1金額に基づく送金処理、または受取処理を前記端末の制御部によって行うこととが前記端末によって実行される。 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載のプログラムであって、 少なくとも前記第1金額の情報と前記第2金額の情報とを含む金額情報を前記通信部によって受信することと、 前記金額情報を前記端末の表示領域に表示することとが前記端末によって実行される。 【請求項4】 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプログラムであって、 前記送金処理、または前記受取処理は、前記異なる端末のユーザへの送金、または前記異なる端末のユーザからの金額の受け取りを含む処理である。 【請求項5】 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプログラムであって、 前記第1金額と前記第2金額とは、前記第1決済に関する決済処理を実行するサーバによって決定される。 【請求項6】 請求項5に記載のプログラムであって、 前記サーバは、前記端末と、前記異なる端末を含む複数の端末とのうち、各々が送金、または受け取る金額を決定する。 【請求項7】 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のプログラムであって、 前記第1決済情報は、前記端末のユーザによる前記第1決済の金額の情報を含む。 【請求項8】 請求項7に記載のプログラムであって、 前記第1決済情報は、前記第1決済で購入された商品、または前記第1決済で提供されたサービスに関する情報を含む。 【請求項9】 請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のプログラムであって、 前記端末のユーザと、前記異なる端末のユーザとを含み、前記端末から前記異なる端末に送信されたコンテンツと、前記異なる端末から前記端末に送信されたコンテンツとを含むチャットルームを前記端末の表示領域に表示することが前記端末によって実行され、 前記第1金額の情報は、前記チャットルームに表示される。 【請求項10】 請求項9に記載のプログラムであって、 前記異なる端末のユーザは、前記端末のユーザによって選択された前記チャットルームに基づいて選択される。 【請求項11】 請求項10に記載のプログラムであって、 前記チャットルームは、前記異なる端末のユーザを含む複数のユーザを含み、 前記第1金額の情報と、前記複数のユーザの各々が送金、または受け取る金額の情報とを含む金額情報を前記チャットルームに表示することが前記端末によって実行される。 【請求項12】 請求項11に記載のプログラムであって、 前記チャットルームに含まれる、前記異なる端末のユーザを含む複数のユーザから、少なくとも一人のユーザを削除する処理を前記制御部によって行うことが前記端末によって実行される。 【請求項13】 請求項9から請求項12のいずれか一項に記載のプログラムであって、 前記チャットルームに含まれないユーザを追加する処理を前記制御部によって行うことと、 前記チャットルームに含まれない追加されたユーザが送金、または受け取る第3金額の情報と、前記第1金額の情報と、前記第2金額の情報とを含む金額情報を前記通信部によって受信することと、 前記金額情報を前記チャットルームに表示することとが前記端末によって実行される。 【請求項14】 請求項13に記載のプログラムであって、 前記第1金額と、前記第2金額と、前記第3金額とは、前記チャットルームに含まれない追加されたユーザによる第3決済に関する第3決済情報に基づいて決定される。 【請求項15】 請求項3に記載のプログラムであって、 前記異なる端末のユーザは、第1端末のユーザであり、 前記金額情報は、前記第1端末とは異なる第2端末のユーザを追加する処理が前記第1端末によって実行された場合、前記第2端末のユーザが送金、または受け取る第4金額の情報を含む。 【請求項16】 請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のプログラムであって、 前記端末のユーザと、前記異なる端末のユーザとを含み、前記端末から前記異なる端末に送信されたコンテンツと、前記異なる端末から前記端末に送信されたコンテンツとを含むチャットルームを前記端末の表示領域に表示することと、 少なくとも前記端末と前記異なる端末との送金処理、または受取処理のリクエストに関する通知を前記チャットルームに表示することとが前記端末によって実行される。 【請求項17】 請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のプログラムであって、 前記端末のユーザを少なくとも含み、前記端末から送信されたコンテンツを含むチャットルームを前記端末の表示領域に表示することと、 前記第1決済情報の送信に関する通知を前記チャットルームに表示することとが前記端末によって実行される。 【請求項18】 請求項17に記載のプログラムであって、 前記チャットルームは、前記端末のユーザと、前記送金処理、または前記受取処理に関するサービスを提供する企業のアカウントとを含む。 【請求項19】 決済に関する処理を実行する端末の情報処理方法であって、 前記端末のユーザによる前記端末に対する入力に基づいて、前記端末のユーザによる第1決済に関する第1決済情報を前記端末の通信部によって送信することと、 前記第1決済情報と、前記端末とは異なる端末のユーザによる第2決済に関する第2決済情報とに基づく、前記端末のユーザが送金、または受け取る第1金額と、前記異なる端末のユーザが送金、または受け取る第2金額とのうち、少なくとも前記第1金額の情報を前記通信部によって受信することと、 前記第1金額に基づく送金処理、または受取処理を前記端末の制御部によって行うこととを含む。 【請求項20】 決済に関する処理を実行する端末の情報処理方法であって、 前記端末のユーザによる前記端末に対する入力に基づいて、前記端末のユーザによる第1決済の決済履歴である第1決済情報を前記端末の通信部によって送信することと、 前記第1決済情報に基づく、前記端末のユーザが送金、または受け取る第1金額と、前記端末とは異なる端末のユーザが送金、または受け取る第2金額とのうち、少なくとも前記第1金額の情報を前記通信部によって受信することと、 前記第1金額に基づく送金処理、または受取処理を前記端末の制御部によって行うこととを含む。 【請求項21】 決済に関する処理を実行する端末であって、 前記端末のユーザによる前記端末に対する入力に基づいて、前記端末のユーザによる第1決済に関する第1決済情報を送信し、前記第1決済情報と、前記端末とは異なる端末のユーザによる第2決済に関する第2決済情報とに基づく、前記端末のユーザが送金、または受け取る第1金額と、前記異なる端末のユーザが送金、または受け取る第2金額とのうち、少なくとも前記第1金額の情報を受信する通信部と、 前記第1金額に基づく送金処理、または受取処理を行う制御部とを備える。 【請求項22】 決済に関する処理を実行する端末であって、 前記端末のユーザによる前記端末に対する入力に基づいて、前記端末のユーザによる第1決済の決済履歴である第1決済情報を送信し、前記第1決済情報に基づく、前記端末のユーザが送金、または受け取る第1金額と、前記端末とは異なる端末のユーザが送金、または受け取る第2金額とのうち、少なくとも前記第1金額の情報を受信する通信部と、 前記第1金額に基づく送金処理、または受取処理を行う制御部とを備える。 【請求項23】 決済に関する処理を実行する端末であって、 メモリに記憶されたプログラムを読み出し、前記プログラムに基づく処理を実行するプロセッサを備え、 前記プロセッサは、 前記端末のユーザによる前記端末に対する入力に基づいて、前記端末のユーザによる第1決済に関する第1決済情報を前記端末の通信部によって送信することと、 前記第1決済情報と、前記端末とは異なる端末のユーザによる第2決済に関する第2決済情報とに基づく、前記端末のユーザが送金、または受け取る第1金額と、前記異なる端末のユーザが送金、または受け取る第2金額とのうち、少なくとも前記第1金額の情報を前記通信部によって受信することと、 前記第1金額に基づく送金処理、または受取処理とを実行する。 【請求項24】 決済に関する処理を実行する端末であって、 メモリに記憶されたプログラムを読み出し、前記プログラムに基づく処理を実行するプロセッサを備え、 前記プロセッサは、 前記端末のユーザによる前記端末に対する入力に基づいて、前記端末のユーザによる第1決済の決済履歴である第1決済情報を前記端末の通信部によって送信することと、 前記第1決済情報に基づく、前記端末のユーザが送金、または受け取る第1金額と、前記端末とは異なる端末のユーザが送金、または受け取る第2金額とのうち、少なくとも前記第1金額の情報を前記通信部によって受信することと、 前記第1金額に基づく送金処理、または受取処理とを実行する。」 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0012】 <システム構成> 図1は、実施形態の一態様における通信システム1の構成を示す図である。図1に示すように、通信システム1では、ネットワーク2を介してサーバ10、端末20(端末20A,端末20B,端末20C)、及び外部サーバ30が接続される。サーバ10は、ネットワーク2を介してユーザが使用する端末20に、端末20間でのメッセージ、静止画、動画、及びスタンプ等のコンテンツの送受信を実現するサービス、例えばSNS(Social Network Service)を提供する。なお、ネットワーク2に接続される端末20の数は限定されない。」 「【0018】 外部サーバ30は、端末20に対して、商品の購入やサービスの予約等の所定のサービスを提供する機能を備える。外部サーバ30は、下記実施形態において記載する機能を実現できる情報処理装置であればどのような装置であってもよい。」 「【0048】 <機能構成> (1)端末の機能構成 図1を用いて端末20の機能構成について説明する。端末20は、SNS処理部210、検索部220、及び拡張機能処理部230を有する。これらの機能は、記憶装置208に格納された1以上のプログラムを読み出して制御装置207(例えば、CPU207A)が実行することにより実現される。 【0049】 SNS処理部210は、サーバ10を利用した、SNSのメッセージングサービスを利用する各種処理を行う。例えば、SNS処理部210は、トークルームにおいて、文字列のメッセージ、スタンプ、画像等のコンテンツを、サーバ10を介して他の端末と送受信する。 【0050】 検索部220は、ユーザから入力された情報に応じたスタンプ(「オブジェクト」の一例)を検索する。 【0051】 拡張機能処理部230は、トークルームの画面において、送受信されたコマンド(検索クエリー)機能を有するスタンプに応じた拡張機能の処理を行う。 (2)サーバの機能構成 図1を用いて、サーバ10の機能構成について説明する。サーバ10は、通信処理部110、SNS処理部120を有する。これらの機能は、記憶装置105に格納された1以上のプログラムを読み出して、制御装置104(CPU104A)が実行することによって実現される。」 「【0147】 ステップS311で、端末20Aの拡張機能処理部230は、ユーザからの操作に応じて、IAB(インアプリブラウザ)を起動し、外部サーバ30への処理要求を行う。」 「【0153】 ステップS312で、端末20Aの拡張機能処理部230は、外部サーバ30から受信した、処理要求の結果を表示する。 【0154】 図13は、第2の実施形態に係る端末20における、処理要求の結果の表示画面の一例を示す図である。 【0155】 図13A、図13Bは、トークルーム宛てに受信した、処理要求の結果の表示画面例である。」 「【0158】 例えば、図13A、図13Bの「割り勘依頼」ボタン561を押下すると、図14の画面が表示される。 【0159】 図14は、支払い要求操作を受け付ける際の端末20Aの表示画面の一例である。 【0160】 図14Aでは、支払った額や、購入したサービス等の情報が表示される。図14Bでは、トークルームに含まれる他のユーザの一人あたりの支払額が表示されている。なお、図14Bの例では、端末20AのユーザがIABを用いた処理で支払いを済ませているため、割り勘する相手が1人であっても、支払額を2で除算した額が割り勘額として算出される。 【0161】 図14Cでは、支払い要求をトークルーム宛てに送信する際に、一緒に送信するメッセージやスタンプを選択できる。また、「割り勘のレシートを一緒に送る」ボタン571を選択すると、相手からもレシートを参照できるようになる。 【0162】 ステップS315で、端末20AのSNS処理部210は、端末20Bから、支払い結果を受信し、表示する。 【0163】 図14Dでは、端末20Bのユーザへの支払い要求572と、端末20Bのユーザからの支払いが完了した旨の通知573のメッセージとスタンプが表示されている。 【0164】 図14Eでは、支払いが完了した旨の通知573をクリックした場合の、通知573の表示例を示す。」 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 ユーザの端末に対し、SNS等の、端末間でのメッセージ、静止画、動画及びスタンプ等のコンテンツの送受信を実現するサービスを提供するサーバと(【0012】)、 ユーザの端末に対し、商品の購入やサービスの予約等の所定のサービスを提供する外部サーバと(【0018】)、 SNS処理部、トークルームの画面のコマンド機能を有するスタンプに応じた拡張機能の処理を行う拡張機能処理部等を有する端末(【0048】?【0051】)である端末Aと端末B等と、 がネットワークを介して接続されたシステムにおける(図1、【0012】)、 端末Aが実行するプログラムであって、 端末Aは、外部サーバへの処理要求を行い、(【0147】) 外部サーバから受信した処理要求の結果として、購入されたサービスの内容、合計金額、割り勘依頼のコマンドボタン等を表示して、(【0153】?【0155】、図13A、図13B) ユーザから、サーバの決済サービスを利用した、トークルームに含まれる他のユーザへの、料金の一部の支払い要求操作を受付け、その際、ユーザの割り勘依頼ボタンの押下げに応じて、端末Aのユーザが支払いを済ませた支払額や購入したサービス等の情報を表示し、さらに、トークルームに含まれる他のユーザの選択に応じた一人あたりの支払額が表示され、(【0158】?【0160】、図14A、図14B) 支払い要求を送信する際、一緒に送信するメッセージやスタンプを送信でき、「割り勘のレシートを一緒に送る」ボタンの選択により、相手からもレシートを参照できるようにすることができ、(【0161】、図14C、図14F) 端末Bからの支払い結果を受信し、端末Bのユーザへの支払い要求と端末Bのユーザからの支払いが完了した旨の通知のメッセージとスタンプ等を表示する、(【0162】?【0164】、図14D、図14E) 処理を含む処理を実行するプログラム。」 2.引用文献2?3について (1)引用文献2 当審拒絶理由に引用された引用文献2には、その実施例1に係る記載(段落【0041】?【0055】)において、割り勘にあたって、均等割りの場合に端末において計算を行うことが記載されており、また、その実施例3に係る記載(段落【0059】?【0062】、図10、11)において、より複雑な割り勘の場合に端末でなくサーバにおいて計算を行い、その計算結果である自分の負担分の金額及び自分以外の者の金額を自分の端末が受信して表示することが記載されている。 (2)引用文献3 当審拒絶理由に引用された引用文献3には、決済管理装置20において割り勘の計算を行わせる例が示されており(段落【0106】)、決済に関する処理を行うサーバにおいて割り勘の計算のような関連処理を行うことが記載されている。 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 引用発明の「外部サーバへの処理要求」及び「外部サーバから受信した処理要求の結果」として「購入されたサービスの内容、合計金額」を表示することは、サービスの購入に伴う決済に関する処理であるから、本願発明1の「決済に関する処理」に相当し、引用発明の「端末A」及び「端末B」は、決済に関する処理を実行する端末及びこれと異なる端末であるから、本願発明1の「決済に関する処理を実行する端末」及び「前記端末とは異なる端末」に相当する。 引用発明の「割り勘のレシート」は、決済に関する処理を実行する端末のユーザによるこの端末に対する入力に基づいてこの端末から送信されものであり、本願発明1の「第1決済に関する処理に基づく第1決済情報」に相当する。よって、本願発明1と引用発明とは、「前記端末のユーザによる前記端末に対する入力に基づいて、前記端末のユーザによる第1決済に関する第1決済情報を前記端末の通信部によって送信する」点で、一致するといえる。 引用発明の「選択」された「他のユーザ」にかかる「一人あたりの支払い額」は、決済に関する処理を実行する端末のユーザが受け取る金額である点で本願発明1の「第1金額」に相当するとともに、前記端末とは異なる端末のユーザが送金するものである点で、本願発明1の「第2金額」にも相当する。そして、引用発明の「支払い要求」の送信は、本願発明1の「少なくとも前記第1金額の情報を前記通信部によって受信すること」と、「少なくとも前記第1金額の情報」を前記通信部によって通信する点で、共通するといえる。 引用発明の、決済に関する処理を実行する端末(端末A)における、これと異なる端末(端末B)からの支払い結果の受信は、サーバの決済サービスを利用した他のユーザへの支払い要求の結果の受信であるから、本願発明1の「第1金額」に基づく「受取処理」に相当する。よって、本願発明1と引用発明とは、「前記第1金額に基づく送金処理、または受取処理を前記端末の制御部によって行う」点で、一致するといえる。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 決済に関する処理を実行する端末に実行させるためのプログラムであって、 前記端末のユーザによる前記端末に対する入力に基づいて、前記端末のユーザによる第1決済に関する処理に基づく第1決済情報を前記端末の通信部によって送信することと、 第1決済情報に基づく、前記端末のユーザが送金、または受け取る第1金額と、前記端末とは異なる端末のユーザが送金、または受け取る第2金額とのうち、少なくとも第1金額の情報を前記通信部によって通信し、 前記第1金額に基づく送金処理、または受取処理を前記端末の制御部によって行うことが前記端末によって実行される。 (相違点) (相違点1)「第1金額の情報」の「通信」が、本願発明1では「第1金額の情報」の「受信」であるのに対し、引用発明では「第1金額の情報」の「送信」である点。 (相違点2)「第1金額の情報」が、本願発明では、「前記第1決済情報」のみならず「前記端末とは異なる端末のユーザによる第2決済に関する第2決済情報」にも基づくものであるのに対し、引用発明は、「前記端末とは異なる端末のユーザによる第2決済に関する第2決済情報」に基づくものでない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点2について検討すると、引用発明は、あくまで「端末Aのユーザが支払いを済ませた支払額」の一部について端末Bのユーザに支払い要求を行うものであり、端末Bのユーザの決済に係る処理を端末Aのユーザが行うことを想定していない。 また、この相違点を克服する技術を開示する文献は、見当たらない。 したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2について (1)対比 本願発明2と引用発明とを対比すると、両者は、1.(1)に示した一致点において一致し、次の相違点1’及び相違点3で相違する。 (相違点) (相違点1’)「第1金額の情報」の「通信」が、本願発明2では「第1金額の情報」の「受信」であるのに対し、引用発明では「第1金額の情報」の「送信」である点。 (相違点3)「第1決済情報」が、本願発明2では「第1決済の決済履歴」であるのに対し、引用発明では割り勘のレシートであり、「第1決済の決済履歴」でない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点3について検討すると、引用発明は、レシートを送信してその金額について割り勘を行うものであり、これを「決済履歴」に変更する動機付けはない。 また、この相違点を克服する技術を開示する文献は見当たらない。 したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明2は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 3.本願発明3-18について 本願発明3-18も、上記相違点2又は相違点3に係る本願発明1又は2の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1又は本願発明2と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4.本願発明19、21、23 本願発明19は、実質的にプログラム発明である本願発明1に対応する方法発明であり、本願発明21、23は、いずれも本願発明1に対応する端末の発明であって、これらは、いずれも、上記相違点2に係る本願発明1の構成と実質的に同一の構成を備えるものである。 よって、本願発明19、21、23は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 5.本願発明20、22、24 本願発明20は、実質的にプログラム発明である本願発明2に対応する方法発明であり、本願発明22、24は、いずれも本願発明2に対応する端末の発明であって、これらは、いずれも、上記相違点3に係る本願発明2の構成と実質的に同一の構成を備えるものである。 よって、本願発明20、22、24は、本願発明2と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定についての判断 令和3年4月26日付け手続補正による補正後の請求項1-24は、発明の詳細な説明の段落【0014】等に記載された「割り勘」に係る、「端末のユーザ」による「端末に対する入力」に基づいて「前記端末のユーザによる第1決済に関する処理に基づく第1決済情報」を「送信」すること、少なくともこの「第1決済情報に基づく」ものである「前記端末のユーザが送金、または受け取る第1金額」に基づく「送金処理、または受取処理」を「前記端末の制御部によって行う」ことを特定している。 そして、これらの特定事項は、発明の詳細な説明の段落【0025】?【0036】、【0275】?【0315】等の記載からみて、発明の詳細な説明の記載によってサポートされており、「割り勘」に係る旨が明示的な特定事項とされていないことで過度な一般化がなされているとはいえない。 よって、請求項1-24の記載は、サポート要件に違反するものではない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-06-03 |
出願番号 | 特願2019-220729(P2019-220729) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06Q)
P 1 8・ 537- WY (G06Q) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 梅岡 信幸 |
特許庁審判長 |
佐藤 聡史 |
特許庁審判官 |
後藤 嘉宏 相崎 裕恒 |
発明の名称 | プログラム、情報処理方法、端末 |
代理人 | 富崎 曜 |
代理人 | 加美山 豊 |
代理人 | 山田 勉 |
代理人 | 富崎 元成 |