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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1374591
審判番号 不服2020-7532  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-02 
確定日 2021-06-22 
事件の表示 特願2018- 24423「提供装置、提供方法及び提供プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月22日出願公開、特開2019-139654、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月14日の出願であって、令和元年7月17日付けで拒絶理由が通知され、令和元年9月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和2年2月28日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、令和2年6月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年2月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 この出願の請求項1-6、9-12に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2004-341861号公報
引用文献2.特開2009-296452号公報
引用文献3.特開2014-241098号公報
引用文献4.特開2009-151370号公報
なお、請求項7-8、13-14に係る発明については、拒絶理由を発見しない請求項とされている。

第3 本願発明
本願請求項1-13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は、令和2年6月2日になされた手続補正(以下、「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であり、そのうち本願発明1及び7は以下のとおりのものである。(下線部は、補正箇所である。)

なお、本件補正により本件補正前の請求項4が削除されたことに伴い、本件補正後の請求項1-13のうちの請求項4-13は、本件補正前の請求項5-14の項番が1つずつ繰り上がったものに対応し、本件補正後の請求項7は、本件補正前の請求項8に対応する。

<本願発明1>
「【請求項1】 ユーザの位置情報とともに、当該位置情報が取得された日時を取得する取得部と、 前記取得部によって取得された位置情報を利用するデータ利用者から、当該位置情報の利用要求とともに、当該データ利用者が当該位置情報及び当該日時を利用する際の態様に関する情報を受け付ける受付部と、 前記受付部によって受け付けられた前記態様に関する情報に基づいて、利用を所望する日時以外に取得された位置情報についてはノイズを追加し、利用を所望する日時の位置情報にはノイズを追加しない加工が施された位置情報である加工後位置情報を前記データ利用者に提供する提供部と、 を備えたことを特徴とする提供装置。」

<本願発明7>
「【請求項7】 ユーザの位置情報を取得する取得部と、 前記取得部によって取得された位置情報を利用するデータ利用者から、当該位置情報の利用要求とともに、当該データ利用者が当該位置情報を利用する際の態様に関する情報を受け付ける受付部と、 前記受付部によって受け付けられた前記態様に関する情報に基づいて前記位置情報に対して加工を施すとともに、当該加工が施された位置情報である加工後位置情報を前記データ利用者に提供する提供部と、 を備え、 前記提供部は、 前記態様に関する情報に応じて、ノイズとともに、当該ノイズを相殺する位置情報を加えた加工後位置情報を前記データ利用者に提供する、 ことを特徴とする提供装置。」

本願発明2-6は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明8-9は、本願発明1又は本願発明7を減縮した発明である。
本願発明10は、本願発明1の提供装置の取得部、受付部、提供部が行う処理を工程とした提供方法に係る発明である。
本願発明11は、本願発明1の提供装置の取得部、受付部、提供部が行う処理をコンピュータに実行させるための提供プログラムに係る発明である。
本願発明12は、本願発明7の提供装置の取得部、受付部、提供部が行う処理を工程とした提供方法に係る発明である。
本願発明13は、本願発明7の提供装置の取得部、受付部、提供部が行う処理をコンピュータに実行させるための提供プログラムに係る発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1(特開2004-341861号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は、注目箇所に当審が付した。

【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ユーザから発信される個人情報及び現在の位置情報を収集し、あるユーザからの要求に従って処理された情報を提供する情報提供システム又は情報提供方法に関する。
【0005】本発明の目的は、多数のユーザから発信される個人情報及び位置情報を収集・記録し、あるユーザから要求された情報に基づいて、収集・記録した個人情報及び位置情報を処理・加工し、要求されたユーザに送信することにより、多種多様なサービスをユーザに提供することができるシステムを実現することにある。
【0007】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明における情報提供システム又は情報提供方法は、個人情報及び現在の位置情報を発信する個人情報提供者装置と、情報を要求する情報要求者装置と、前記個人情報提供者装置から発信された個人情報及び現在の位置情報を収集・記録し、前記情報要求者装置からの情報処理要求が行われた場合には、前記収集・記録した個人情報及び現在の位置情報を要求に応じて処理・加工し、前記情報要求者装置に対して送信する情報収集処理者装置とで構成され、前記個人情報提供者装置から発信された個人情報及び現在の位置情報を、前記情報収集処理者装置が収集・記録し、前記情報要求者装置からの情報処理要求に応じて、前記収集・記録した個人情報及び現在の位置情報を要求に応じて処理・加工し、前記情報要求者装置に対して送信することを特徴とする。このことにより、多数のユーザの個人情報を活かした多種多様かつきめ細かなサービスをユーザに提供することができる。
【0010】図1は、本発明の情報提供システムの概略図を示している。本システムは、個人情報及び位置情報101を発信する個人情報提供者装置102、発信された個人情報及び位置情報101を収集・記録し、処理を行う情報収集処理者装置103、及び所望の情報104を情報収集処理者装置103に対して要求し、処理された情報105を受信する情報要求者装置106から構成される。各装置は、メモリに格納されたプログラムをCPUが実行することにより所望の機能を実現する一般的な情報処理装置によって実現可能である。
【0011】図2は、本発明の情報提供システムの詳細図を示している。本システムでは、個人情報提供者装置102が個人情報及び位置情報を発信(201)し、情報収集処理者装置103が前記個人情報及び位置情報を収集・記録する。一方、情報要求者装置106は所望の情報要求を個人情報及び位置情報と共に情報収集処理者装置103に送信(202)し、情報収集処理者装置103は、要求に応じて情報を処理・加工し情報要求者装置106に結果を送信(203)し、所望の情報を受信した情報要求者装置106から受信した情報に応じたポイント又は情報料を回収(204)する。情報収集処理者装置103は、情報を提供した個人情報提供者装置102に対してポイント又は情報料を付与(205)する。
【0012】図3は、本発明の情報提供システムにおける簡単な構成図を示している。本システムでは、個人情報提供者装置及び情報要求者装置は、GPS機能を備えた携帯端末301及び311を用いるものとし、各携帯端末301及び311は、入力情報や受信した情報を表示出力する表示・出力部302、発信する情報や所望の情報を入力する情報入力部303、発信する情報等を記録しておく情報記録部304、GPSの処理を行い位置情報を取得する位置情報処理部305、情報の発信や受信の処理を行う無線通信処理部306から構成される。また、情報収集処理者装置は、種々の情報を収集・記録するサーバ群307で構成され、情報収集処理者装置のサーバは、種々の情報処理を行う情報処理部308、収集または処理した情報を記録しておく情報記録部309、情報の受信や送信の処理を行う無線通信処理部310から構成される。個人情報提供者装置301、情報要求者装置311、及び情報収集処理者装置のサーバ群307は、無線網317を通じて情報の送受信を行う。
【0014】図5は、本発明の情報提供システムにおける、情報収集処理者装置の処理フローを示している。この処理フローは、当該装置内のメモリに格納されたプログラムをCPUが処理することにより、実行される。個人情報提供者装置から発信された個人情報及び位置情報を受信(501)し、収集・記録する(502)。一方で、情報要求者装置からの情報処理要求を受信(503)すると、要求に応じた情報の処理を行い(504)、処理された結果を情報要求者装置に送信(505)する。送信した情報に応じたポイント又は情報料を情報要求者装置から回収(506)し、情報提供者装置に対してはポイント又は情報料を付与(507)する。
【0018】図9は、本発明の情報提供システムにおける、情報要求者装置が送信する情報を示している。情報要求者装置が送信する情報901は、位置情報902、要求する所望の情報903、現在のポイント又は情報料の残高904から構成される。
【0025】この際、個人情報提供者装置102はGPS機能を備えた無線通信端末301を使用するものとし、提供する個人情報702は情報入力部303から入力し、情報記録部304に記録しておき、入力内容は表示・出力部302で確認する。また、位置情報701は位置情報処理部305により取得し、同様に表示・出力部302で確認できる。設定した個人情報702及び位置情報701は、無線通信処理部306により、無線網312を介して発信される。
【0028】一方、情報要求者装置106は、情報収集処理者装置103に処理要求を行う所望の情報を設定(601)し、設定した所望の情報902を位置情報901及び現在のポイント残高903と共に情報収集処理者装置103に送信(202、602)する。
【0030】次に、情報収集処理者装置103は、情報要求者装置106からの情報処理要求を受信(503)すると、要求された処理情報802に応じた処理を、各種情報データベース805内の当該情報と共に収集・記録した個人情報に対して行い(504)、情報処理結果803を情報要求者装置106へ送信(203、505)する。
【0031】この際、送信された情報処理要求902、位置情報901及びポイント残高903は、情報収集処理者装置103の処理サーバ307の無線通信処理部310で受信され、情報記録部309に記録し、要求された処理を、情報記録部309に記録された個人情報801と各種情報データベース805を用いて情報処理部308で行い、一旦情報記録部309に記録し、無線通信処理部310により、情報要求者装置106へ処理された情報803を送信する。
【0033】この際、無線網312を介して情報収集処理者装置103が送信した処理結果は、情報要求者装置106のシステム端末311の無線通信処理部310で受信され、一旦情報記録部304に記録し、表示・出力部302で情報を表示する。同時に、情報収集処理者装置103の処理サーバ内のポイント管理情報804に従って、記録しておいた情報要求者装置106のポイント残高903からポイントを回収し、回収後の残高を無線通信処理部310により情報要求者装置106に送信し、情報要求者装置106は、無線網312を介してシステム端末311の無線通信処理部306で受信し、一旦情報記録部304に記録し、表示・出力部302でポイント残高を表示する。

上記記載によると、次のことがいえる。
(1)【0001】、【0005】、【0007】、【0010】、【0014】、【0025】の記載によれば、引用文献1には、個人情報提供者装置から発信された個人情報及び位置情報を受信する情報収集処理者装置が記載され、個人情報提供者装置は、ユーザが所持するGPS機能を備えた携帯端末であるから、「個人情報提供者装置から発信された位置情報」は「ユーザの位置情報」であるといえる。よって、引用文献1には、「ユーザの個人情報及び位置情報を受信する情報収集処理者装置」が記載されている。
(2)【0007】、【0011】-【0012】、【0018】、【0028】-【0031】、【0033】の記載によれば、情報収集処理者装置は、情報を要求する情報要求者装置から、ユーザによって入力された情報処理要求を受信すると、個人情報及び位置情報を情報処理要求に応じて処理・加工し、結果を情報要求者装置に対して送信するものであり、送信された結果は、情報要求者装置において表示される。
ここで、情報を要求する情報要求者装置から、情報処理要求を入力するユーザは、情報を要求する情報要求者ということができるから、上記(1)の「情報収集処理者装置」は、「情報を要求する情報要求者から、情報処理要求を受信する」構成を有している。
そして、「情報収集者装置」が「個人情報及び位置情報を情報処理要求に応じて処理・加工し」た結果は、情報要求者装置に送信され、情報要求者は情報要求者装置において、前記結果の提供を受けるから、上記(1)の「情報収集処理者装置」は、情報要求者からの情報処理要求に応じて個人情報及び位置情報を処理・加工した結果を情報要求者に提供する構成を有している。

(3)以上、(1)、(2)によると、引用文献1には、
「ユーザの個人情報及び位置情報を受信し、
情報を要求する情報要求者から、情報処理要求を受信し、
前記情報処理要求に応じて個人情報及び位置情報を処理・加工した結果を情報要求者に提供する、
情報収集処理者装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

2 引用文献2(特開2009-296452号公報)
原査定に引用された引用文献2には、次のとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。

【0018】
本発明によれば、位置情報サービスを利用する者に対して、位置情報を選択して過度に個人情報を露出することを避けることのできる位置情報管理システムを提供することができる。
【0020】
図1は、本実施形態に係る位置情報管理システムの構成概略図である。本実施形態に係る位置情報管理システムは、通信ネットワーク100で互いに接続された無線通信端末装置10、基地局40、位置管理サーバ20及び位置サービスサーバ50を備える。無線通信端末装置10、基地局40又は位置管理サーバ20は、無線通信端末装置10の地理的な位置を測位する測位部を備える。位置管理サーバ20は、測位部の測位する位置をぼかした位置を位置情報として蓄積管理し、配信する。無線通信端末装置10は、携帯電話やPDAなどの携帯可能な無線通信端末装置である。基地局40は、位置管理サーバ20と通信ネットワーク100で接続され、無線通信端末装置10と無線通信を行う。位置サービスサーバ50は、位置管理サーバ20の配信する位置情報を用いて、無線通信端末装置10に対して位置情報サービスを提供する。基地局40と位置サービスサーバ50は、一体となっていてもよい。
【0024】
また、位置ぼかし部は、必要以上に位置がぼかされることを防ぐために、位置の誤差量の増減、桁数の上げ下げに応じて、位置のぼかしの程度を可変することが好ましい。また、十分な位置情報サービスが受けられるよう、配信部の配信先に応じて、位置のぼかしの程度を可変することが好ましい。配信部の配信先は、サービスによって定められるアプリケーションを基に識別することができる。例えば、位置ぼかし部は、内蔵されたソフトウェアによって、位置情報サービスの内容に応じて位置情報の精度を自動で指示することが好ましい。位置情報の精度は、位置情報サービスの提供者が予め設定してもよいし、位置情報サービスの提供者が予め設定するなかから無線通信端末装置保持者が選択してもよい。
【0028】
図2は、無線通信端末装置が測位部を備え、位置管理サーバが位置ぼかし部を備える場合の構成概略図である。無線通信端末装置10は、測位部12と、通知部13と、指示取得部11と、を備える。位置管理サーバ20は、受信部21と、位置ぼかし部22と、管理部23と、配信部24と、を備える。測位部12は、無線通信端末装置10の地理的な位置を測位する。通知部13は、測位部12の測位する位置を位置管理サーバ20に通知する。受信部21は、通知部13の通知する位置を受信する。位置ぼかし部22は、受信部21の受信する位置をぼかす。管理部23は、位置ぼかし部22によってぼかされた位置を位置情報として蓄積管理する。配信部24は、管理部23の蓄積管理する位置情報を配信する。

3 引用文献3(特開2014-241098号公報)
原査定に引用された引用文献3には、次のとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。

【0009】
すなわち、従来技術によっては、個人の生活行動に関連して収集されるセンサデータの管理とユーザの氏名などの個人情報の管理を異なる事業者に分割する場合において、1つのセンサデータを任意の分析要求に応じた異なる形式の匿名化データに加工して提供することはできない。また、従来技術では、センサデータのような大量のデータの匿名化処理をデータ収集事業者が実行する必要があり、データ収集事業者における計算機コストの負担が過大になっている。
【0020】
匿名化処理後データ102は、分析事業者の一つであるA保険会社が取得するデータである。A保険会社は、例えばこれらのデータを用い、急加速や急発進といったユーザの運転傾向を分析して事故危険度を算出し、事故危険度に応じた保険料の割引サービスをユーザ毎に提供する。匿名化処理後データ102は、ユーザプライバシの保護のため、危険運転分析に必要なデータのみに限定したデータ項目の絞り込みと、データ内容の曖昧化による、匿名化処理が行われている。すなわち、ユーザ個人の非行動情報(本実施例では、個人情報のうちセンサによって取得されるセンサデータ以外の情報の意味で使用する)は、性別と年齢と職業に限定され、年齢は「30?34」というグループ情報に曖昧化されている。また、センサデータは、日時、位置情報、エンジン回転数、速度、ブレーキレベルに限定され、日時と位置情報と速度は精度の調整により曖昧化されている。
【0022】
匿名化処理後データ102及び103を比較して分かるように、曖昧化するデータ項目や曖昧化の内容は、分析事業者ごとに異なっている。ここで、曖昧化するデータ項目や曖昧化の内容は、各分析事業者において実行される分析の内容と必要とする精度に応じて定まる。

4 引用文献4(特開2009-151370号公報)
原査定に引用された引用文献4には、次のとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。

【0001】
本発明は、行動履歴情報生成装置、行動履歴情報生成システム、行動履歴情報生成方法およびコンピュータプログラムに関し、特に、個人情報が保護された行動履歴情報を生成する行動履歴情報生成装置に関する。
【0022】
(第1の実施形態) まず、本発明の第1の実施形態にかかる行動履歴情報生成装置100について説明する。本実施形態では、所定の間隔でGPS衛星から発信される位置情報取得して、当該位置情報に基づいて行動履歴情報を生成する行動履歴情報生成装置100に本発明の行動履歴情報生成装置を適用して説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態にかかる行動履歴情報生成装置100の機能構成を説明するブロック図である。行動履歴情報生成装置100は、GPS(図示せず)から発信される位置情報を所定間隔で取得する。本実施形態においては、GPSから発信される位置情報を第1の位置情報という。また、第1の位置情報が所定の範囲にある場合に、第1の位置情報とは異なる第2の位置情報を設定する。ここで、所定の範囲とは、ユーザの入力に応じて決定される領域であって、本実施形態においては、個人情報保護領域という。すなわち、本実施形態によれば、個人情報保護領域外では真の位置情報である第1の位置情報に基づき、個人情報保護領域内では第1の位置情報とは異なる偽の位置情報である第2の位置情報に基づき行動履歴情報を生成することにより、個人情報が保護された行動履歴情報を生成することができる。
【0031】
図3は、第1の位置情報を乱数的に変化させて第2の位置情報を設定した場合の、第2の位置情報を説明する説明図である。図3に示したように、「×」で表した点が第2の位置情報である。説明図50aの「×」印は、第1の位置情報が乱数的に変化した第2の位置情報を示す。同様に、50bの「×」印、50cの「×」印も第1の位置情報を乱数的に変化させた第2の位置情報を示している。このように、第1位置情報取得部102により取得された第1の位置情報を乱数的に変化させることにより、個人情報保護領域内のユーザの真の位置情報である第1の位置情報を特定不可能な、偽の位置情報である第2の位置情報を設定することが可能となる。


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「ユーザの個人情報及び位置情報」は、ユーザの位置情報を含むものであるから本願発明1の「ユーザの位置情報」に相当する。
また、引用発明は、「ユーザの個人情報及び位置情報を受信」するから、ユーザの個人情報を取得するものであり、取得するための「取得部」を備えることは明らかである。
よって、引用発明における「ユーザの個人情報及び位置情報を受信」する「取得部」と、本願発明1の「ユーザの位置情報とともに、当該位置情報が取得された日時を取得する取得部」とは、いずれも、「ユーザの位置情報を取得する取得部」である点で共通する。

イ 引用発明における「情報を要求する情報要求者」は、情報処理要求に応じて提供される個人情報及び位置情報を処理・加工した結果を利用する者であるから、本願発明1の「取得部によって取得された位置情報を利用するデータ利用者」に相当する。また、引用発明において、個人情報及び位置情報の処理・加工は「情報処理要求」に応じて行われるものであり、さらに、情報要求者は、提供された個人情報及び位置情報を処理・加工した結果を利用することは明らかであるため、引用発明の「情報処理要求」は、本願発明1と同様の「位置情報の利用要求」であるといえる。
また、引用発明は、「情報処理要求を受信」するから、「情報処理要求を受け付ける受付部」といえる構成を備えることは明らかである。
よって、引用発明において、「情報を要求する情報要求者から、情報処理要求を受信」する「受付部」と、本願発明1の「前記所得部によって取得された位置情報を利用するデータ利用者から、当該位置情報の利用要求とともに、当該データ利用者が当該位置情報及び当該日時を利用する際の態様に関する情報を受け付ける受付部」とは、いずれも、「前記所得部によって取得された位置情報を利用するデータ利用者から、当該位置情報の利用要求を受け付ける受付部」である点で共通する。

ウ 引用発明における「前記情報処理要求に応じて個人情報及び位置情報を処理・加工した結果」は、位置情報が加工されたものであるから、本願発明1と同様の「加工が施された加工後位置情報」であるといえる。
引用発明は、「前記情報処理要求に応じて個人情報及び位置情報を処理・加工した結果を情報要求者に提供する」から、「提供部」を備えることは明らかである。
よって、引用発明の「前記情報処理要求に応じて個人情報及び位置情報を処理・加工した結果を情報要求者に提供する」「提供部」と、本願発明1の「前記受付部によって受け付けられた前記態様に関する情報に基づいて、利用を所望する日時以外に取得された位置情報についてはノイズを追加し、利用を所望する日時の位置情報にはノイズを追加しない加工が施された位置情報である加工後位置情報を前記データ利用者に提供する提供部」とは、いずれも、「加工が施された位置情報である加工後位置情報を前記データ利用者に提供する提供部」である点で共通する。

エ 引用発明における「情報収集処理者装置」は、個人情報及び位置情報を処理・加工した結果を情報要求者に提供するものであるから、本願発明1と同様の「提供装置」であるといえる。

オ 以上、上記ア?エによると、本願発明1と引用発明とは次の一致点、相違点を有する。
[一致点]
ユーザの位置情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された位置情報を利用するデータ利用者から、当該位置情報の利用要求を受け付ける受付部と、
加工が施された位置情報である加工後位置情報を前記データ利用者に提供する提供部と、
を備えたことを特徴とする提供装置。

[相違点1]
「ユーザの位置情報を取得する取得部」が、本願発明1では、「ユーザの位置情報とともに、当該位置情報が取得された日時を取得する」のに対し、引用発明では、ユーザの位置情報を取得するものの日時を取得するものではない点。
[相違点2]
「前記取得部によって取得された位置情報を利用するデータ利用者から、当該位置情報の利用要求を受け付ける受付部」が、本願発明1では、「当該データ利用者が当該位置情報及び当該日時を利用する際の態様に関する情報を受け付ける」のに対し、引用発明では、そのような特定のない点。
[相違点3]
「加工後位置情報」が、本願発明1では、「前記受付部によって受け付けられた前記態様に関する情報に基づいて、利用を所望する日時以外に取得された位置情報についてはノイズを追加し、利用を所望する日時の位置情報にはノイズを追加しない加工が施された」ものであるのに対し、引用発明では、そのような特定のない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
事案に鑑みて、相違点3を先に検討する。

引用発明は、データ利用者が位置情報及び日時を利用する際の態様に関する情報を受け付けるものでなく、また、個人情報の保護等を課題としたものでないから、当業者が、引用発明に基づいて、受け付けられた態様に関する情報に基づいて、利用を所望する日時以外に取得された位置情報についてはノイズを追加し、利用を所望する日時の位置情報にはノイズを追加しない加工を施すことを容易に想到し得たということはできない。
また、引用文献2、引用文献3、引用文献4は、いずれも、相違点3に係る構成を開示するものではない。
したがって、引用発明、及び、拒絶査定において引用された引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が上記相違点3に係る構成を容易に想到し得たということはできない。
したがって、その他の相違点については検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2-6について
本願発明2-6は、本願発明1を減縮した発明であり、上記相違点1-3に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同様に、当業者であっても、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明8、9について
本願発明8、9は、本願発明1を減縮するか、原査定において拒絶の理由がないとされた本願発明7を減縮した発明であるから、当業者であっても、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明10について
本願発明10は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「受付部によって受け付けられた前記態様に関する情報に基づいて、利用を所望する日時以外に取得された位置情報についてはノイズを追加し、利用を所望する日時の位置情報にはノイズを追加しない加工が施された位置情報である加工後位置情報を前記データ利用者に提供する」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者が、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本願発明11について
本願発明11は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明1の「受付部によって受け付けられた前記態様に関する情報に基づいて、利用を所望する日時以外に取得された位置情報についてはノイズを追加し、利用を所望する日時の位置情報にはノイズを追加しない加工が施された位置情報である加工後位置情報を前記データ利用者に提供する」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者が、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1 理由1(特許法29条2項)について
本件補正により、本願発明1-6、10、11、及び、請求項1-6のいずれかを引用する本願発明8、9は、第5の1(2)で検討した相違点3に係る「受け付けられた」「態様に関する情報に基づいて、利用を所望する日時以外に取得された位置情報についてはノイズを追加し、利用を所望する日時の位置情報にはノイズを追加しない加工が施された位置情報である加工後位置情報を」「データ利用者に提供する」という事項を有するものとなっており、本願発明1-6、10、11、及び、請求項1-6のいずれかを引用する本願発明8、9は、当業者が、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明7、12、13は、原査定において、拒絶の理由を発見しないとされたものであり、請求項7を引用する本願発明8、9は、拒絶の理由を発見しないとされたものである。
したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-06-03 
出願番号 特願2018-24423(P2018-24423)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松田 岳士  
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 中野 浩昌
吉田 誠
発明の名称 提供装置、提供方法及び提供プログラム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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