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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61L
管理番号 1374644
審判番号 不服2020-9069  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-30 
確定日 2021-06-22 
事件の表示 特願2017-545468「殺菌方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月20日国際公開、WO2017/065235、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は,2016年(平成28年)10月13日(優先権主張2015年(平成27年)10月13日)を国際出願日とする出願であって,令和1年12月19日付けで拒絶理由が通知され,令和2年2月18日付けで意見書の提出及び手続補正がされ,同年3月31日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年6月30日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 令和2年6月30日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)の適否

1.本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)

「【請求項1】
活性酸素照射口の出口から活性酸素を予め照射した容器内に殺菌対象物を放置して殺菌することを特徴とし,活性酸素が,交流電流を用いてプラズマを発生させ,得られたプラズマを用いて発生させたものである,殺菌方法。
【請求項2】
容器内に殺菌対象物を搬入後,容器内を閉鎖空間とする,請求項1記載の殺菌方法。
【請求項3】
容器内に殺菌対象物を放置後,容器に蓋をして閉鎖空間を形成する,請求項1又は2記載の殺菌方法。
【請求項4】
活性酸素照射口の出口から活性酸素を凹部を有する殺菌対象物の該凹部内に照射後,殺菌対象物をその上に積み重ねて前記凹部に蓋をし,形成される閉鎖空間内を殺菌することを特徴とし,活性酸素が,交流電流を用いてプラズマを発生させ,得られたプラズマを用いて発生させたものである,殺菌方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,令和2年2月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
活性酸素を予め照射した容器内に殺菌対象物を放置して殺菌することを特徴とし,活性酸素が,交流電流を用いてプラズマを発生させ,得られたプラズマを用いて発生させたものである,殺菌方法。
【請求項2】
容器内に殺菌対象物を搬入後,容器内を閉鎖空間とする,請求項1記載の殺菌方法。
【請求項3】
容器内に殺菌対象物を放置後,容器に蓋をして閉鎖空間を形成する,請求項1又は2記載の殺菌方法。
【請求項4】
活性酸素を凹部を有する殺菌対象物の該凹部内に照射後,殺菌対象物をその上に積み重ねて前記凹部に蓋をし,形成される閉鎖空間内を殺菌することを特徴とし,活性酸素が,交流電流を用いてプラズマを発生させ,得られたプラズマを用いて発生させたものである,殺菌方法。」

2.補正の適否の検討
本件補正が,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるか,発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものか,また,本件補正の目的及び独立特許要件について,以下検討する。

(1)当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるかについて
本件補正は,請求項1,請求項1を引用する請求項2及び3並びに請求項4において,「活性酸素を照射」する手段について「活性酸素照射口の出口から」と限定するものである。そして,当初明細書等の【0020】には「・・・活性酸素照射口は,管状構造又は出口に向かって先細になる円錐構造を有するものであって,出口に至るまでのいずれかの部分に水蒸気供給ユニット6から含水気体を供給するための配管が接続されており,前記生成されたプラズマと反応して活性酸素が生成され,活性酸素照射口の出口から照射されることになる。」と記載されている。
そうすると,「活性酸素照射口の出口から」という事項は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(2)発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものかについて
本件補正前の請求項1乃至4に係る発明と,本件補正後の請求項1乃至4に係る発明は,発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものであることは明らかである。

(3)本件補正の目的について
ア 本件補正後の請求項1乃至3について
本件補正の補正事項は,本件補正前の請求項1乃至3に記載した発明における「活性酸素を予め照射」する手段を限定するものであり,本件補正前の請求項1乃至3に記載された発明と本件補正後の請求項1乃至3に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって,本件補正のうち請求項1乃至3についてする補正はいわゆる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。
イ 本件補正後の請求項4について
本件補正の補正事項は,本件補正前の請求項4に記載した発明における「活性酸素を凹部を有する殺菌対象物の該凹部内に照射」する手段を限定するものであり,本件補正前の請求項4に記載された発明と本件補正後の請求項4に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって,本件補正のうち請求項4についてする補正はいわゆる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。

(4)独立特許要件について
本件補正は,上記(3)のとおり特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるので,本件補正後の前記請求項1乃至3に記載された発明(以下,それぞれ「補正発明1」乃至「補正発明3」という。)及び本件補正後の前記請求項4に記載された発明(以下,「補正発明4」という。)が独立特許要件を満たすかについて以下検討する。

ア 補正発明1乃至3について
(ア)補正発明1乃至3
補正発明1乃至3は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(イ)引用文献,引用発明等
a 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった特開2006-331763号公報(以下,引用文献1という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。なお,下線部は当審が付与した。

「【0024】
本実施の形態において用いられるプラズマ発生用ガス(軽量ガス)Gとしては,空気よりも軽量であり,励起電圧が低いガスであれば特に制限はないが,例えば,希ガス(ヘリウム,アルゴン,ネオン等),窒素ガス,酸素ガス,水素,空気(大気),塩素ガス,アンモニアガス,SF6,CF系ガス等を挙げることができる。・・・また,プラズマ発生用ガス(軽量ガス)に加えて,0.1?25%の酸素ガスをガス貯留手段に導入してもよい。このように構成することによって,酸素を活性化させ,酸素ラジカル,オゾンガスを生成させ,殺菌・滅菌用途や半導体ウエハー,ガラス上の有機物除去,表面改質等の処理に用いることができる。・・・」

「【0033】
図8(a)は,本発明のプラズマ処理装置における,被処理物としてシリンジ等の立体的器材を用い,電極として平行平板型電極を用いた場合であって,被処理物をセミバッチ的に処理することが可能な,第4の実施の形態を模式的に示す説明図であり,被処理物を搬入部で通過部の真下まで移動する状態を示し,図8(b)は,被処理物を通過部の真下から昇降部によって通過部まで移動する状態を示し,図8(c)は,被処理物を通過部(プラズマ発生手段)で処理する状態を示し,図8(d)は,被処理物を通過部から昇降部によって通過部の真下まで移動する状態を示し,図8(e)は,通過部の真下から搬出部で搬出する状態を示す。図9は,図8に示す第4の実施の形態の一の具体例を示す斜視図であり,図10は,図8に示す第4の実施の形態の他の具体例を示す斜視図である。」

「【0034】
図8?10に示すように,第4の実施の形態のプラズマ処理装置は,対向電極11,12の相互間のプラズマ発生用ガスGを含む雰囲気中でプラズマを発生させることが可能なプラズマ発生手段1と,被処理物S(シリンジ等の立体的器材S1)をプラズマ発生手段1に搬入させること,プラズマ発生手段1の内部を通過させること及びプラズマ発生手段1から搬出させることがそれぞれ可能であるとともに,被処理物S(シリンジ等の立体的器材S1)がプラズマ発生手段1中を通過する際に,被処理物S(シリンジ等の立体的器材S1)をプラズマ発生手段1で発生させたプラズマによって処理することが可能な搬送手段2とを備えたプラズマ処理装置10であって,プラズマ発生用ガスGとして空気よりも軽量な軽量ガスをプラズマ発生手段1及びその近傍に導入することが可能なプラズマ発生用ガス(軽量ガス)導入手段3,並びに,プラズマ発生手段1をその上部から覆蓋するように配設された,プラズマ発生用ガス(軽量ガス)導入手段3から導入されたプラズマ発生用ガス(軽量ガス)Gをプラズマ発生手段1及びその近傍に集中的に貯留させることが可能なガス貯留手段4をさらに備えてなることを特徴とする。」

「【0035】
また,搬送手段2は,図8(a)に示すように,被処理物S(シリンジ等の立体的器材S1)を後述する通過部22(図8(c)参照)の真下まで移動させてプラズマ発生手段1に搬入させることが可能な搬入部21と,図8(c)に示すように,プラズマ発生手段1の内部を通過させて,プラズマ発生手段1で発生したプラズマによって被処理物S(シリンジ等の立体的器材S1)を処理させることが可能な通過部22と,図8(e)に示すように,プラズマ発生手段1(通過部22(図8(c)参照))の真下から搬出させることが可能な搬出部23とを有し,プラズマ発生手段1,ガス貯留手段4及び搬送手段2の通過部22が,搬送手段2の搬入部21及び搬出部23よりもそれぞれ上方に配設されてなるとともに,図8(b),(d)に示すように,搬送手段2が,被処理物S(シリンジ等の立体的器材S1)を,搬入部21の配設位置(通過部22の真下の位置)から通過部22の配設位置まで上昇させること及び通過部22の配設位置から搬出部23の配設位置(通過部22の真下の位置)まで下降させることがそれぞれ可能な昇降部24をさらに有することが好ましい。」

b 引用発明
上記引用文献1の上記記載事項の下線部を整理すると,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「プラズマ発生用ガス(軽量ガス)導入手段3と,対向電極11,12の相互間のプラズマ発生用ガス(軽量ガス)を含む雰囲気中でプラズマを発生させることが可能なプラズマ発生手段1と,プラズマ発生手段1をその上部から覆蓋するように配設された,プラズマ発生用ガス(軽量ガス)導入手段3から導入されたプラズマ発生用ガス(軽量ガス)をプラズマ発生手段1及びその近傍に集中的に貯留させることが可能なガス貯留手段4とを備えてなるプラズマ処理装置において,プラズマ発生用ガス(軽量ガス)に加えて,0.1?25%の酸素ガスをガス貯留手段に導入することによって,酸素を活性化させ,酸素ラジカル,オゾンガスを生成させ,被処理物Sをプラズマ発生手段1の内部を通過させて,被処理物Sを処理させる,被処理物Sを殺菌する方法。」

(ウ)対比・判断
a 対比
補正発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

引用発明における「ガス貯留手段4」は補正発明1の「容器」に相当し,引用発明における「被処理物S」は補正発明1の「殺菌対象物」に相当し,引用発明の「酸素ラジカル,オゾンガス」は補正発明1の「活性酸素」に相当する。そして,引用発明はガス貯留手段4においてプラズマ発生用ガス(軽量ガス)に加えて酸素ガスを導入することによって酸素を活性化させ,酸素ラジカル,オゾンガスを生成させるものであり,補正発明1は容器内に予め活性酸素を照射し,該活性酸素が,交流電流を用いてプラズマを発生させ,得られたプラズマを用いて発生させたものであるものであるから,引用発明も補正発明1も「活性酸素が存在する容器内に殺菌対象物を放置して殺菌する殺菌方法」の限りにおいて一致するといえる。

したがって,補正発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「活性酸素が存在する容器内に殺菌対象物を放置して殺菌する殺菌方法において,活性酸素がプラズマを用いて発生させたものである殺菌方法。」

(相違点)
(相違点1)容器内に活性酸素を存在させる手段について,補正発明1は「活性酸素照射口の出口から活性酸素を予め照射」するものであるのに対し,引用発明は,「プラズマ発生用ガス(軽量ガス)導入手段3と,対向電極11,12の相互間のプラズマ発生用ガス(軽量ガス)を含む雰囲気中でプラズマを発生させることが可能なプラズマ発生手段1と,プラズマ発生手段1をその上部から覆蓋するように配設された,プラズマ発生用ガス(軽量ガス)導入手段3から導入されたプラズマ発生用ガス(軽量ガス)をプラズマ発生手段1及びその近傍に集中的に貯留させることが可能なガス貯留手段4とを備えてなるプラズマ処理装置において,プラズマ発生用ガス(軽量ガス)に加えて,0.1?25%の酸素ガスをガス貯留手段に導入することによって,酸素を活性化させ,酸素ラジカル,オゾンガスを生成させ」るものである点。
(相違点2)プラズマを発生させる手段について,補正発明1は「交流電流を用いてプラズマを発生させ」るものであるのに対し,引用発明は,そのような特定がされていない点。

b 相違点についての判断
上記相違点1について検討すると,引用発明における酸素ラジカル,オゾンガスは,プラズマ発生手段1をその上部から覆蓋するように配設された,プラズマ発生用ガス(軽量ガス)をプラズマ発生手段1及びその近傍に集中的に貯留させることが可能なガス貯留手段4中で生成するものであり,プラズマ発生用ガス(軽量ガス)導入手段3から導入された時点で,プラズマ発生用ガス(軽量ガス)中に酸素ラジカル,オゾンガスは存在するとはいえないから,相違点1は実質的な相違点である。
そして,引用発明では,プラズマ発生用ガス(軽量ガス)をプラズマ発生手段1及びその近傍に集中的に貯留させて被処理物を処理するものであるから,プラズマ発生用ガス(軽量ガス)中に酸素ラジカル,オゾンガスを生成させてからプラズマ発生用ガス(軽量ガス)導入手段3を通してガス貯留手段4に導入し,酸素ラジカル,オゾンガスを予めガス貯留手段4に照射した構成を採用する動機付けはない。
したがって,相違点1に係る事項は当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして,引用文献1の記載を参酌しても,上記構成を採用したことによる,菌に活性酸素を直接照射しない場合でも優れた殺菌効果が得られるという効果を予測することはできない。
したがって,上記相違点2について判断するまでもなく,補正発明1は,引用発明ではないし,当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。

c 補正発明2,3について
補正発明2,3は請求項1を直接又は間接的に引用するものであり,補正発明1の発明特定事項を全て有するものであるから,補正発明1と同様に,引用発明ではないし,当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。

(エ)小括
以上のとおりであるから,補正発明1乃至3は,引用発明ではないし,引用発明に基づく理由で拒絶することはできない。また,他に補正発明1乃至3を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,補正発明1乃至3は,独立特許要件を満たすものである。

イ 補正発明4について
(ア)補正発明4
補正発明4は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(イ)引用文献,引用発明等
a 引用文献1について
引用文献1に記載された事項は,上記3(1)イ(ア)に記載したとおりのものである。

b 引用発明
上記引用文献1に記載された引用発明は,上記3(1)イ(イ)に記載されたとおりのものである。

(ウ)対比・判断
a 対比
補正発明4と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「活性酸素を用いて殺菌する殺菌方法において,活性酸素をプラズマにより発生させてなる殺菌方法。」

(相違点)
(相違点3)殺菌方法について,補正発明4は「活性酸素照射口の出口から活性酸素を凹部を有する殺菌対象物の該凹部内に照射後,殺菌対象物をその上に積み重ねて前記凹部に蓋をし,形成される閉鎖空間内を殺菌するものであり,活性酸素がプラズマを発生させ,得られたプラズマを用いて発生させたものである」のに対し,引用発明は,「プラズマ処理装置において,プラズマ発生用ガス(軽量ガス)に加えて,0.1?25%の酸素ガスをガス貯留手段に導入することによって,酸素を活性化させ,酸素ラジカル,オゾンガスを生成させ,被処理物Sをプラズマ発生手段1の内部を通過させて,被処理物Sを処理させる,被処理物Sを殺菌する」ものである点。
(相違点4)プラズマを発生させる手段について,補正発明4は「交流電流を用いてプラズマを発生させ」るものであるのに対し,引用発明は,そのような特定がされていない点。

b 相違点についての判断
上記相違点3について検討すると,引用発明はガス貯留手段4においてプラズマ発生用ガス(軽量ガス)をプラズマ発生手段1及びその近傍に集中的に貯留させて被処理物を処理するものであり,活性酸素照射口の出口から活性酸素を凹部を有する殺菌対象物の該凹部内に照射後,殺菌対象物をその上に積み重ねて前記凹部に蓋をし,形成される閉鎖空間内を殺菌するという構成を有するものではないから,相違点3は実質的な相違点である。そして,上記構成を採用する動機付けもない。
したがって,相違点3に係る事項は当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして,引用文献1の記載を参酌しても,上記構成を採用したことによる,菌に活性酸素を直接照射しない場合でも優れた殺菌効果が得られるという効果を予測することはできない。
したがって,上記相違点4について判断するまでもなく,補正発明4は,引用発明ではないし,引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。

(エ)小括
以上のとおりであるから,補正発明4は,引用発明ではないし,引用発明に基づく理由で拒絶することはできない。また,他に補正発明4を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,補正発明4は,独立特許要件を満たすものである。

(5)補正の適否の結論
本件補正は上記のとおり,特許法第17条の2第3項乃至第6項の規定に適合するから,本件補正を認める。

第3 本願発明
上記第2のとおりであるから,本願請求項1乃至4に係る発明は,(以下,それぞれ「本願発明1」乃至「本願発明4」という。)は,第2 1(1)に記載したとおりのものである。

第4 原査定の拒絶の理由について
1.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。

(1)理由1
本願請求項1乃至3に係る発明は,本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった下記の引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

(2)理由2
本願請求項1乃至3に係る発明は,引用文献1に記載された事項に基づいて,その優先日前にその発明の属する分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:特開2006-331763号公報

2.理由1(特許法第29条第1項第3号)について
本件補正により,本願発明1乃至3は「活性酸素照射口の出口から活性酸素を予め照射する」という上記第2 2.(4)ア(ウ)aで述べた相違点である事項を有するものとなっているから,上記第2 2.(4)のとおり引用発明とはいえない。
したがって,原査定の拒絶の理由1を維持することができない。

3.理由2(特許法第29条第2項)について
本件補正により,本願発明1乃至3は「活性酸素照射口の出口から活性酸素を予め照射する」という事項を有するものとなっているから,上記第2 2.(4)ア(ウ)b及びcで述べたとおり,当業者であっても,引用発明に基づいて,容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の拒絶の理由2を維持することができない。

第5 むすび

以上のとおり,原査定の拒絶の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-06-07 
出願番号 特願2017-545468(P2017-545468)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (A61L)
P 1 8・ 121- WY (A61L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴田 啓二  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 相田 元
細井 龍史
発明の名称 殺菌方法  
代理人 細田 芳徳  

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