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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R
管理番号 1374811
審判番号 不服2021-146  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-06 
確定日 2021-06-29 
事件の表示 特願2018-203375号「システム及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年4月25日出願公開、特開2019-64583号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年2月20日に出願した特願2012-34524号を原出願とし、さらに、その一部を特願2016?74058号(出願日:平成28年4月1日)、特願2017?159001号(出願日:平成29年8月22日)として新たな出願とした後に、同特願2017?159001号の一部を平成30年10月30日に新たな出願としたものであって、同日に上申書が提出され、令和1年8月2日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月26日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年2月27日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月8日に意見書が提出されたが、同年9月29日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされた。これに対し、令和3年1月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2000-348067号公報
2.特開平11-37766号公報

第3 本願発明
本願請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、令和3年1月6日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
車両の走行に関する情報に基づく所定の家出条件を満たした場合に、前記キャラクタが家出をする態様の処理を行うシステムであって、
前記車両の走行に関する情報に基づく所定の家出条件として、前記キャラクタによる警告を出力した後、当該警告に従っているか否かの条件を備え、前記キャラクタによる警告を出力した後、当該警告に従っていない場合には、前記キャラクタが家出をする態様の処理を行う機能を備えること
を特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムの処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与。以下同様。)。
「【請求項1】 車両データを検出する車両データ検出手段と、
該車両データ検出手段により検出された車両データに基づいて、車両環境データを求める車両環境データ算出手段と、
該車両環境データ算出手段により求められた車両環境データを記憶する車両環境データ記憶手段と、
該車両環境データ記憶手段に前記車両環境データを記憶させるように制御する第1の記憶制御手段とを備えた車両環境データ記憶システムであって、
前記車両環境データに応じた、複数のキャラクタやシンボル等の画像が記憶された画像記憶手段と、
前記車両環境データ算出手段により求められた車両環境データに応じた画像を、前記画像記憶手段から読み出し、読み出された前記画像を表示部に表示させるように制御する表示画像制御手段とを備えていることを特徴とする車両環境データ記憶システム。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両環境データ記憶システムに関し、より詳細には、車両の室内温度、振動、速度等の車両データに基づいて求められる車両環境データを記憶するための車両環境データ記憶システムに関する。」

「【0007】本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、車室内における温度変化等の車両環境データをメーカー側が十分に把握することのできる車両環境データ記憶システムを提供することを目的としている。」

「【0039】また、ここでは車両環境データとして、車速パルスに基づいて求めた走行距離sについてのみ説明しているが、温度情報や振動情報等を利用することによって求められる、車室内の温度変化や、温度の上限下限値や、急発進/急停止等の乱暴な運転の生じた回数等の車両環境データについても、上記と同様にして、車両環境データ記憶手段9に記憶させることができ、その車両環境データに応じたキャラクタを表示させることもできる。
【0040】例えば、急発進/急停止等の乱暴な運転の生じた回数が走行距離に対して、相対的に少ない場合には、図4に示したようなキャラクタを表示するようにし、一方、多い場合には、安全運転を促す意味でペナルティとして、キャラクタを表示しないようにしてもよい。」

(2)認定事項
上記(1)の記載事項から、以下のことが認定できる。
ア 段落【0039】及び段落【0040】の下線部の記載から、車両環境データは、急発進/急停止等の乱暴な運転の生じた回数であって、急発進/急停止等の乱暴な運転の生じた回数が走行距離に対して、相対的に少ない場合には、キャラクタを表示するようにし、一方、多い場合には、安全運転を促す意味でペナルティとして、キャラクタを表示しないようにすること。

(3)引用発明
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「車両データを検出する車両データ検出手段と、
該車両データ検出手段により検出された車両データに基づいて、車両環境データを求める車両環境データ算出手段と、
該車両環境データ算出手段により求められた車両環境データを記憶する車両環境データ記憶手段と、
該車両環境データ記憶手段に前記車両環境データを記憶させるように制御する第1の記憶制御手段とを備えた車両環境データ記憶システムであって、
前記車両環境データに応じた、複数のキャラクタやシンボル等の画像が記憶された画像記憶手段と、
前記車両環境データ算出手段により求められた車両環境データに応じた画像を、前記画像記憶手段から読み出し、読み出された前記画像を表示部に表示させるように制御する表示画像制御手段とを備えている車両環境データ記憶システムにおいて、
車両環境データは急発進/急停止等の乱暴な運転の生じた回数であって、
急発進/急停止等の乱暴な運転の生じた回数が走行距離に対して、相対的に少ない場合には、
キャラクタを表示するようにし、一方、多い場合には、安全運転を促す意味でペナルティとして、キャラクタを表示しないようにする車両環境データ記憶システム。」

2.引用文献2ついて
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 擬人化されたエージェントを車両内に出現させるエージェント出現手段と、車両の状況を判断する状況判断手段と、
この状況判断手段による所定状況を記憶することで学習する学習手段と、
この学習手段による学習結果と前記状況判断手段により判断された状況とから、エージェントの行為を決定する行為決定手段と、
この行為決定手段で決定された行為を前記エージェント出現手段により出現されるエージェントに行わせるエージェント制御手段と、を具備することを特徴とするエージェント装置。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エージェント装置に係り、例えば、擬人化されたエージェントを相手に車両内での会話等が可能なコミュニケーション機能を備えたエージェント装置に関する。」

「【0005】本発明は、現在の車両・運転者の状況だけでなく、過去の履歴等に基づく学習結果から擬人化されたエージェントが状況に合わせた行為をし、運転者とのコミュニケーションをはかることができる車両を提供することを目的とする。」

「【0027】図2、図3では、イグニッションをONにした場合のコミュニケーション(挨拶)に関連する行為と選択条件について記載しているが、その他各種行為(行動と発声)を規定するプログラムを選択するためのプログラム番号と選択条件も種々規定されている。例えば、急ブレーキが踏まれたことを条件として、エージェントが『しりもち』をついたり、『たたら』を踏んだりする行動とったり、驚き声をだすようなプログラムも規定されている。エージェントによる各行動の選択は急ブレーキに対する学習によって変化するようにし、例えば、最初の急ブレーキから3回目までは『しりもち』をつき、4回目から10回目までは『たたら』を踏み、10回目以降は『片足を一歩前にだすだけで踏ん張る』行動を取るようにし、エージェントが急ブレーキに対して段階的に慣れるようにする。そして、最後の急ブレーキから1週間の間隔があいた場合には、1段階後退するようにする。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、その意味、機能からみて、
ア 後者の「急発進/急停止等の乱暴な運転の生じた回数」である「車両環境データ」は、前者の「車両の走行に関する情報」に相当する。

イ 前者の「家出」とは、本願明細書の段落【0210】の「6分間にわたり第三基準速度を超えた速度で走行した場合、キャラクタが怒っていなくなるようなキャラクタ情報の出力(キャラクタを表示しない)を合わせて取るようにするとよい。このようにすると、運転者は補正総走行距離が大きく減算して親密度が低下することに加え、キャラクタがあたかも家出したようにキャラクタ情報が出力されないので運転者はキャラクタに会えないので寂しくなる。」との記載によれば、キャラクタ情報が出力されないことを意味するから、後者の「キャラクタを表示しないようにする」ことは、前者の「家出をする」ことに相当する。

ウ 後者の「急発進/急停止等の乱暴な運転の生じた回数が走行距離に対して相対的に」「多い場合」は、前者の「所定の家出条件」に相当する。

エ 以上のア?ウより、後者の「急発進/急停止等の乱暴な運転の生じた回数が走行距離に対して、相対的に少ない場合には、キャラクタを表示するようにし、一方、多い場合には、安全運転を促す意味でペナルティとして、キャラクタを表示しないようにする車両環境データ記憶システム」は、前者の「車両の走行に関する情報に基づく所定の家出条件を満たした場合に、前記キャラクタが家出をする態様の処理を行うシステム」に相当する。

そうすると、両者は、本願発明1の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「車両の走行に関する情報に基づく所定の家出条件を満たした場合に、前記キャラクタが家出をする態様の処理を行うシステム。」

そして、両者は次の点で相違する。
[相違点]
本願発明1は、「前記車両の走行に関する情報に基づく所定の家出条件として、前記キャラクタによる警告を出力した後、当該警告に従っているか否かの条件を備え、前記キャラクタによる警告を出力した後、当該警告に従っていない場合には、前記キャラクタが家出をする態様の処理を行う機能を備えること」であるのに対し、
引用発明は、かかる事項が特定がされていない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
引用文献2には、上記「第4 2.」から、
「運転者とのコミュニケーションをはかることを目的とし、
急ブレーキが踏まれたことを条件として、エージェントが『しりもち』をついたり、『たたら』を踏んだりする行動とったり、驚き声をだすようなプログラムも規定され、エージェントによる各行動の選択は急ブレーキに対する学習によって変化するようにし、最初の急ブレーキから3回目までは『しりもち』をつき、4回目から10回目までは『たたら』を踏み、10回目以降は『片足を一歩前にだすだけで踏ん張る』行動を取るようにし、エージェントが急ブレーキに対して段階的に慣れるようにすること」が記載されている(以下、「引用文献2に記載された事項」という。)。
引用文献2に記載された事項の「急ブレーキが踏まれたこと」は、本願発明1の「車両の走行に関する情報」に相当し、引用文献2に記載された事項の「エージェントが」「しりもち」、「たたら」及び「片足を一歩前にだすだけで踏ん張る」との行動と、本願発明1の「キャラクタが家出をする態様」とは、「キャラクタの態様」の点で共通している。
しかしながら、引用文献2に記載された事項は、「10回目以降は『片足を一歩前にだすだけで踏ん張る』行動を取るようにし、エージェントが急ブレーキに対して段階的に慣れるようにする」と特定されているように、運転者とのコミュニケーションをはかることを目的としたものであって、急ブレーキが踏まれたことに基づいてエージェントによる警告を出力するものではないから、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用しても、キャラクタによる警告を出力した後、当該警告に従っていない場合には、安全運転を促す意味でペナルティとして、キャラクタを表示しないようにする態様(本願発明1の「家出する態様」に相当)にはならず、上記相違点に係る本願発明1の構成に至るものでない。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2は、請求項1に記載のシステムにおいて、その処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1、2は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-06-08 
出願番号 特願2018-203375(P2018-203375)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小河 了一  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
島田 信一
発明の名称 システム及びプログラム  

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