• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01L
管理番号 1374823
審判番号 不服2020-9227  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-02 
確定日 2021-06-09 
事件の表示 特願2018-516195「エンジン分配デバイスのためのブレーカアーム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年4月6日国際公開、WO2017/055734、平成30年11月22日国内公表、特表2018-534461〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)9月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年9月30日、フランス共和国)を国際出願日とする出願であって、平成31年4月10日付け(発送日:平成31年4月16日)で拒絶理由通知がされ、令和元年10月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年2月26日付け(発送日:令和2年3月3日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して令和2年7月2日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともにその審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和2年7月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年7月2日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を以下の理由により却下する。

[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「自動車の熱エンジンのシリンダヘッド内に配置されるカムシャフト(14)により、前記エンジンのシリンダヘッド内にあるバルブを作動させるためのデバイス(10)のブレーカアーム(20)であって、
前記ブレーカアームが、
- 枢動軸(22)を中心として第1の端部で枢動移動可能である、軸(23a)に沿って延びる作動アーム(23)と、
- 前記カムシャフトのカム(14)とバルブ(32)との間に配置され、前記第1の端部と反対側の第2の端部側にある接触ヘッド(24)と
を備え、
前記接触ヘッドが前記バルブ(32)の方を向く下側面(26)を備え、前記下側面(26)が、前記バルブ(32)に向かって凸形であり、前記枢動軸(22)に平行な軸(22a)を中心とする第1の曲率(27)及び前記作動アーム(23)の軸に平行な状態を維持しながら、第1の横方向端部から、対向する第2の横方向端部まで横方向に移動する曲率軸(28a)に沿う第2の曲率(28)を有し、
前記第2の曲率によって、前記バルブの軸に対して横向きの方向において前記バルブに力を加えることができ、それにより、前記ブレーカアームおよびバルブロッドに当接するように前記カムが移動する時に前記バルブロッドおよび前記バルブが前記バルブの軸を中心として回転し、
前記第2の曲率の曲率半径が前記第1の曲率の曲率半径より大きい、ことを特徴とする、ブレーカアーム(20)。」

(2)本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「自動車の熱エンジンのシリンダヘッド内に配置されるカムシャフト(14)により、前記エンジンのシリンダヘッド内にあるバルブを作動させるためのデバイス(10)のブレーカアーム(20)であって、
前記ブレーカアームが、
- 枢動軸(22)を中心として第1の端部で枢動移動可能である作動アーム(23)と、
- 前記カムシャフトのカム(14)とバルブ(32)との間に配置され、前記第1の端部と反対側の第2の端部側にある接触ヘッド(24)と
を備え、
前記接触ヘッドが前記バルブ(32)の方を向く下側面(26)を備え、前記下側面(26)が、前記バルブ(32)に向かって凸形であり、前記作動アーム(23)の軸に平行な軸(28a)を中心として変化する曲率(27)を有し、
前記曲率によって、前記バルブの軸に対して横向きの方向において前記バルブに力を加えることができ、それにより、前記ブレーカアームおよびバルブロッドに当接するように前記カムが移動する時に前記バルブロッドおよび前記バルブが前記バルブの軸を中心として回転する、ことを特徴とする、ブレーカアーム(20)。」

2.補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「作動アーム」及び「接触ヘッド」における「下側面」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明の認定
本件補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献、引用発明等
ア 引用文献1について
本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-38436号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「ブレーカアーム」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下、同様。)。

(ア)「【0029】
図1に示すように、自動二輪車1は、車体フレーム2と、車体フレーム2の前部に設けられバーハンドル3で操向されるフロントフォーク4と、フロントフォーク4の下端部に懸架されフロントフェンダ5に覆われた前輪6と、前輪6に設けられたディスクブレーキ7と、車体フレーム2の後部に揺動自在に設けられたスイングアーム8と、スイングアーム8の情報に設けられたリアフェンダ9と、スイングアーム8に懸架された後輪10と、を備える。車体フレーム2とスイングアーム8との間は、リアサスペンション(図示省略)が設けられる。」

(イ)「【0031】
車体フレーム2の中央内部空間には、エンジン13が搭載される。エンジン13の斜め上前方にはラジエータ14が配置される。
【0032】
エンジン13は、OHC式またはDOHC式のバルブ駆動形式を備えた内燃機関であり、クランクケース20と、シリンダブロック21の上方に設けられたシリンダヘッド22と、シリンダヘッド22を覆うヘッドカバー23と、を備える。」

(ウ)「【0035】
シリンダヘッド22は、その内部に動弁装置34を備える。動弁装置34は、2つの吸気バルブ35と、2つの排気バルブ36と、吸気用カム軸37と、吸気用カム軸37に設けられた2つの吸気用カム38と、排気用カム軸39と、排気用カム軸39に設けられた2つの排気用カム40と、吸気用ロッカーシャフト41と、吸気用ロッカーシャフト41に揺動自在に軸支された2つの吸気用ロッカーアーム42と、排気用ロッカーシャフト43と、排気用ロッカーシャフト43に揺動自在に軸支された2つの排気用ロッカーアーム44と、を備える。」

(エ)「【0043】
2つの吸気用カム38は、それぞれの吸気バルブ35に対応させて吸気用カム軸37の適宜の位置に設けられる。吸気用カム38は、吸気用カム軸37と一体的に回転される。」

(オ)「【0045】
吸気用ロッカーシャフト41は、吸気用ロッカーアーム42の揺動軸であり、吸気用カム軸37および排気用カム軸39に挟まれた領域Aよりも外方に設けられる。また、吸気用ロッカーシャフト41は、吸気用カム軸37よりも下方に配置される。」

(カ)「【0049】
2つの吸気用ロッカーアーム42は、それぞれの吸気バルブ35に対応させて吸気用ロッカーシャフト41の適宜の位置に設けられる。吸気用ロッカーアーム42の上部には、吸気用カム38が配置され、吸気用ロッカーアーム42の下部には、吸気バルブ35が配置される。吸気用ロッカーアーム42は、吸気用カム38の周面に摺接されたカム摺接部59と、バルブステム35bの上部先端に設けられたシム60に摺接されたバルブ摺接部61と、を備える。すなわち、吸気用ロッカーアーム42は、吸気用カム38およびバルブステム35bに挟まれて配置される。」

(キ)「【0051】
吸気用カム38は、吸気用カム軸37と一体的に回転し、吸気用ロッカーシャフト41に軸支された吸気用ロッカーアーム42を介して吸気バルブ35を開かせる。他方、排気用カム40は、排気用カム軸39と一体的に回転し、排気用ロッカーシャフト43に軸支された排気用ロッカーアーム44を介して排気バルブ36を開かせる。」

(ク)「【0070】
図5および図6に示すように、吸排気ポート27、28を開閉させる動弁装置34のロッカーアーム42、44は、揺動軸であるロッカーシャフト41、43に揺動自在に軸支される。ロッカーアーム42、44の揺動方向視において一方側にはカム38、40が配置され、他方側には吸排気バルブ35、36が配置される。すなわち、ロッカーアーム42、44は、カム38、40およびバルブステム35b、36bに挟まれて配置される。ロッカーアーム42、44は、カム38、40の周面に摺接されたカム摺接部59、64と、バルブステム35b、36bの上部先端に設けられたシム60、65に摺接されたバルブ摺接部61、66と、を備える。カム38、40は、カム軸38、40によって回転されロッカーアーム42、44を揺動させる。
【0071】
バルブ摺接部61、66は、接触点Pにおいて吸排気バルブ35、36に摺接させた楕円形状の接触面90を有する。接触面90は、長軸Arを吸排気バルブ35、36の中心線(図5および図6中、一点鎖線Cv)に対し略平行な方向に指向させて位置された縦長楕円弧形状に形成される。具体的には、バルブ摺接部61、66は、吸排気バルブ35、36が吸気ポート27を全閉(バルブリフト量がゼロ)させたときの吸排気バルブ35、36と接触面90との接触点Pを楕円弧と長軸Arとの交点に位置させた楕円弧形状を有する。」

(ケ)「【0073】
このように構成されたロッカーアーム42、44は、吸排気バルブ35、36が開くにつれて接触面90の曲率半径が連続的に大きくなっていく。」

(コ)(オ)ないし(ク)の記載事項と併せて図2、図5及び図6を参酌すると、吸気用ロッカーアーム42における、吸気用ロッカーシャフト41が揺動自在に軸支される箇所は、カム摺接部59及びバルブ摺接部61が備えられる自由端側と反対側の端部であることを視認できる。

(サ)図3及び図4を参酌すると、吸気用ロッカーアーム42が長手方向に延びる形状であることを視認できる。

したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「自動二輪車1に搭載されたエンジン13が備えているシリンダヘッド22は、その内部に動弁装置34を備え、動弁装置34は、吸気バルブ35と、吸気用カム軸37と、吸気用カム軸37に設けられた吸気用カム38と、吸気用ロッカーシャフト41と、吸気用ロッカーシャフト41に揺動自在に軸支された吸気用ロッカーアーム42とを備え、
吸気用カム38は、吸気用カム軸37と一体的に回転し、吸気用ロッカーシャフト41に軸支された吸気用ロッカーアーム42を介して吸気バルブ35を開かせるものであり、
吸気用ロッカーアーム42は、揺動軸である吸気用ロッカーシャフト41に自由端側と反対側の端部で揺動自在に軸支され、長手方向に延びる形状であり、吸気用カム38およびバルブステム35bに挟まれて配置され、吸気用ロッカーアーム42の自由端側に、吸気用カム38の周面に摺接されたカム摺接部59と、バルブステム35bの上部先端に設けられたシム60に摺接されたバルブ摺接部61と、を備えるものであり、
バルブ摺接部61は接触点Pにおいて吸気バルブ35に摺接させた楕円形状であり、連続的に大きくなる曲率半径からなる接触面90を有した
動弁装置34。」

イ 引用文献2について
本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として例示された特開2005-264736号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0029】
以下に、図面を用いて本発明のバルブ開閉機構にかかる実施例につき説明する。
(実施例1)
本例のバルブ開閉機構1は、図1に示すごとく、エンジン(レシプロエンジン)6の吸排気口(吸気口又は排気口)611に配設されたバルブ3と、上記エンジン6のカムシャフト62に設けられたカム63の回転を受けて揺動し、上記バルブ3をスライドさせて開閉させるロッカアーム2と、上記バルブ3を閉方向に付勢するコイルバネ35とを有してなる。そして、上記バルブ3のバルブステム部31における先端部311には、上記ロッカアーム2に形成された支承部21によって支承されるバルブキャップ4が配設されている。」

(イ)「【0031】
図1、図4に示すごとく、本例のロッカアーム2は、平板を折り曲げて互いに対向するよう形成された一対の側壁部23と、この一対の側壁部23を連結する支承部21としての第1連結部21及び第2連結部22と、上記第1連結部21及び上記第2連結部22との間に形成された中空穴24とを有している。 また、上記支承部21は、上記バルブ3の配設方向に対向する側に上記凸状第1当接面211を有している。この支承部21は、図2に示すごとく、ロッカアーム2の幅方向Wに向けて切断した断面である幅方向Wの断面において、上記バルブ3の配設方向に向けて円弧状に突出している。また、支承部21は、図1に示すごとく、ロッカアーム2の長手方向Lに向けて切断した断面である長手方向Lの断面においても、上記バルブ3の配設方向に向けて円弧状に突出している。

(ウ)「【0045】
そして、図6に示すごとく、上記ロッカアーム2が上記カム63の回転を受けて押し下げられ上記バルブ3を開けるときには、図3に示すごとく、バルブキャップ4には、その軸中心X2から上記幅方向Wにオフセットした位置に、ロッカアーム2による押圧力F1がロッカアーム2の長手方向Lに向けて作用する。これにより、バルブキャップ4には、これを回転させようとする回転力F2が加わり、ロッカアーム2に対して、バルブキャップ4は、その軸中心X2回りに若干回転することができる。
【0046】
そのため、バルブキャップ4は、ロッカアーム2が揺動を行う度に、ロッカアーム2の支承部21の凸状第1当接面211における頂点部P1に対する当接箇所を逐次変更していくことができる。そのため、ロッカアーム2とバルブキャップ4との間に摩耗が発生することを抑制することができる。 また、上記バルブキャップ4の回転に伴って、上記バルブ3もバルブステム部31の軸中心X1回りに若干回転することができる。」

(エ)「【0048】
このように、本例のバルブ開閉機構1においては、上記ロッカアーム2の揺動に伴い、上記バルブ3には、ロッカアーム2とバルブキャップ4とのオフセット当接による回転力F2と、上記コイルバネ35による回転力F3とが合わさって作用する。そのため、バルブ3を、バルブステム部31の軸中心X1回りに一層円滑に回転させることができる。 また、バルブ3は、ロッカアーム2の揺動に伴って、上記エンジン6の吸排気口611に対する軸中心X1回りの位置を逐次変更していくことができる。そのため、バルブ3と上記シリンダケース61の吸排気口611との間に摩耗が発生することを抑制することができる。 それ故、本例のバルブ開閉機構1によれば、ロッカアーム2、バルブ3及びバルブキャップ4のいずれにおいても摩耗が発生することを効果的に抑制することができる。」

したがって、引用文献2には次の技術的事項(以下、「引用文献2技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

<引用文献2技術的事項>
「バルブ3とシリンダケース61の吸排気口611との間に摩耗が発生することを抑制するために、バルブ3をスライドさせて開閉させるロッカアーム2の支承部21は、ロッカアーム2の幅方向Wに向けて切断した断面である幅方向Wの断面において、バルブ3の配設方向に向けて円弧状に突出し、また、ロッカアーム2の長手方向Lに向けて切断した断面である長手方向Lの断面においても、バルブ3の配設方向に向けて円弧状に突出し、
ロッカアーム2がカム63の回転を受けて押し下げられバルブ3を開けるときには、バルブ3のバルブステム部31における先端部311に配設されたバルブキャップ4には、その軸中心X2から幅方向Wにオフセットした位置に、ロッカアーム2による押圧力F1がロッカアーム2の長手方向Lに向けて作用し、これにより、バルブキャップ4には、これを回転させようとする回転力F2が加わり、ロッカアーム2に対して、バルブキャップ4は、その軸中心X2回りに若干回転することができ、バルブキャップ4の回転に伴って、バルブ3もバルブステム部31の軸中心X1回りに若干回転すること。」

ウ 引用文献3について
本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として例示された特開平9-125917号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0015】この動弁装置は、縦形OHV型エンジン1に適用した構成を示している。この縦形OHV型エンジン1は、シリンダブロック(図示せず)にシリンダヘッド3を組付け、シリンダヘッド3にヘッドカバー4を組み付けている。ヘッドカバー4内はロッカーアーム室5とされ、ロッカアーム室5内にはロッカーアーム6を揺動自在に支持するスタッドボルト7が立設されている。ロッカーアーム6の入力端部8には、プッシュロッド9が当接するように配置され、プッシュロッド9はクランク軸に連動する動弁カム軸(図示せず)により昇降動作するように構成されている。吸排気弁12の開弁時には、ロッカーアーム6の出力端部10は吸排気弁12のバルブエンドケース11を下に押すように構成されている。」

(イ)「【0020】図2(A)はその様子を示す縦断面図、図2(B)は平面図である。図2(A)においてロッカアーム6の出力端部10が下方に移動すると、出力端部10が当接するバルブエンドケース11は図2(A)(B)において矢印Fで示す方向の圧接力を受ける。出力端部10が当接するバルブエンドケース11の位置Pは軸中心Oから偏心しているので、この圧接力はバルブ12を軸中心O回りに回転させる力となる。」

(ウ)「【0022】この作用により、従来のようにバルブスプリング24の上端とスプリングリテーナ16との間に発生する摩擦力によりバルブステム13の回転を抑止することが起こらず、吸排気バルブ12はロッカカーム6の揺動動作にしたがって、シリンダヘッド3に対して円滑に回転することになる。
【0023】即ち、図4に示すような従来の構成ならば、ロッカアーム6の出力端部10がバルブエンドケース11に当接して下押すだけでは、上記回転力は摩擦力に打ち勝つことができずバルブ12が回転することはできないが、本実施形態においては、スラストベアリング21の摩擦低減効果により、良好にバルブ12を回転させることができる。バルブ12が回転をすると、吸排気ポート28の弁座29と弁面30の接触箇所を変えることができ、局部的な偏磨耗が発生することを抑制することができる。」

(エ)図1を参酌すると、出力端部10はロッカアーム6における長手方向に湾曲した円弧形状を有していると視認できる。

(オ)(イ)の記載事項と併せて図2(B)を参酌すると、出力端部10が当接するバルブエンドケース11の位置Pは点接触していると視認できるから、出力端部10はロッカアーム6における幅方向に湾曲した円弧形状を有していると認められる。

(カ)(イ)の記載事項と併せて図2(B)を参酌すると、図2(B)において矢印Fで示す方向は、ロッカアーム6の長手方向であると視認できる。

したがって、引用文献3には次の技術的事項(以下、「引用文献3技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

<引用文献3技術的事項>
「吸排気ポート28の弁座29と弁面30の接触箇所を変えることができ、局部的な偏磨耗が発生することを抑制するため、吸排気弁12の開弁時には、ロッカーアーム6の長手方向及び幅方向に湾曲した円弧形状を有する出力端部10が吸排気弁12のバルブエンドケース11を下に押すように構成され、ロッカアーム6の出力端部10が下方に移動すると、出力端部10が当接するバルブエンドケース11はロッカアーム6の長手方向の圧接力を受け、出力端部10が当接するバルブエンドケース11の位置Pは軸中心Oから偏心しているので、この圧接力はバルブ12を軸中心O回りに回転させる力となり、吸排気バルブ12はロッカアーム6の揺動動作にしたがって、シリンダヘッド3に対して円滑に回転すること。」

エ 引用文献4について
本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものである特開平9-280016号公報(以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0023】すると、上記吸排気バルブ(12)は、上記ロッカアーム(6)の出力端部(10)によって押し下げられる一方で、そのロッカアーム(6)の出力端部(10)の下方への円弧状移動によって上記吸排気バルブ(12)の上端部(17)での接触点(P)に対して矢印(F)に示す方向[図4中での上記スタッドボルト(7)側]への力が加わる。
【0024】その矢印(F)方向への力によって上記吸排気バルブ(12)が軸中心(O)回りに回転する(図5中での矢印A方向)。なお、上記吸排気バルブ(12)は、上記シリンダヘッド(3)に設けたバルブステムガイド(19)によって昇降動と軸中心(O)回りの回転のみ可能に支持されている。」

(イ)「【0026】このように、上記吸排気バルブ(12)が軸中心(O)回りに回転するので、弁座(29)と上記吸排気バルブ(12)の弁面(30)との接触箇所を変えることができて、上記弁座(29)と上記吸排気バルブ(12)の弁面(30)との偏磨耗が抑制される。従って、上記吸排気バルブ(12)の閉弁状態で上記弁座(29)と上記弁面(30)との間に偏摩耗によって隙間が生じることが抑制され、燃焼室の気密性を長期間に亘って維持できる。」

(ウ)「【0032】次に、本発明にかかる頭上弁エンジンの動弁装置の第2の形態を図6と図7とを用いて説明する。この第2の形態では上述の第1の形態とほぼ同様の構成をなし、異なる点は上記ロッカアーム(6)の出力端部(10)を円環面状に構成した点のみである。
【0033】即ち、上記ロッカアーム(6)の出力端部(10)は、図6に示すように、上記ロッカアーム(6)の長手方向(図7中では矢印Bの方向)から見て(以下、正面視という。)下方へ円弧状に湾曲してある。また、図7に示すように、上記ロッカアーム(6)の出力端部(10)は、上記ロッカアーム(6)の側面(図6中では左右方向)から見て(以下、側面視という。)円弧状となるように湾曲してある。
【0034】このように、上記ロッカアーム(6)の出力端部(10)を円環面状にしても、上述の第1の形態と同様に吸排気バルブ(12)の軸中心(O)回りへの回転力を生じさせることができる。しかも、上記ロッカアーム(6)の出力端部(10)は正面視でも側面視でも円弧状に湾曲しているので、上記ロッカアーム(6)の出力端部(10)と上記吸排気バルブ(12)の上端部(17)とをより確実に点接触させることができる。従って、上記ロッカアーム(6)の出力端部(10)による上記吸排気バルブ(12)の上端部(17)への圧接力を確実に大きくして上記ロッカアーム(6)の出力端部(10)と上記吸排気バルブ(12)の上端部(17)とを確実に密着させて、上記吸排気バルブ(12)の軸中心(O)回りへの回転力をより十分に生じさせることができる。」

(エ)(ア)の記載事項と併せて図5を参酌すると、図5において矢印Fで示す方向は、ロッカアーム(6)の長手方向であると視認できる。

したがって、引用文献4には次の技術的事項(以下、「引用文献4技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

<引用文献4技術的事項>
「弁座(29)と吸排気バルブ(12)の弁面(30)との接触箇所を変えることができて、弁座(29)と吸排気バルブ(12)の弁面(30)との偏磨耗を抑制するため、
ロッカアーム(6)の出力端部(10)は、ロッカアーム(6)の長手方向から見て下方へ円弧状に湾曲してあると共に、ロッカアーム(6)の側面から見て円弧状となるように湾曲してあり、
吸排気バルブ(12)は、ロッカアーム(6)の出力端部(10)によって押し下げられる一方で、そのロッカアーム(6)の出力端部(10)の下方への円弧状移動によって吸排気バルブ(12)の上端部(17)での接触点(P)に対してロッカアーム(6)の長手方向への力が加わり、その力によって吸排気バルブ(12)が軸中心(O)回りに回転すること。」

オ 引用文献5について
本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるあって、原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として例示された特開2003-269116号公報(以下、「引用文献5」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0035】接触部10はロッカアーム8の製造時にプレス加工によって形成され、これにより同接触部10のエンドキャップ4との接触面10aが凸型曲面形状にされる。即ち、接触面10aは、図2の左右方向、及び図1の左右方向について、凸型の略円弧状に形成されている。そして、接触面10aにおいて、図2の左右方向についての曲率半径は、例えば図1の左右方向についての曲率半径よりも大きいものとなっている。
【0036】このような形状に接触面10aを形成するのは、以下の理由による。
・ロッカアーム8の揺動により接触部10で吸気バルブ2のステムエンド2b(エンドキャップ4)を押すとき、接触部10とエンドキャップ4との接触部分がステム2aの径方向に変位する。即ち、当該接触部分が図1の左右方向や紙面と直交する方向について往復する。その際の上記接触部分の変位が滑らかに行われるよう、接触面10aが上記凸型曲面形状とされる。」

(イ)(ア)の記載事項と併せて図1及び図2を参酌すると、図1の左右方向はロッカアーム8の長手方向であり、図2の左右方向はロッカアーム8の幅方向であると視認できる。

したがって、引用文献5には次の技術的事項(以下、「引用文献5技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

<引用文献5技術的事項>
「ロッカアーム8の揺動により接触部10で吸気バルブ2のステムエンド2b(エンドキャップ4)を押すとき、接触部10とエンドキャップ4との接触部分の変位が滑らかに行われるように、接触部10のエンドキャップ4との接触面10aが、ロッカアーム8の幅方向、及びロッカアーム8の長手方向について、凸型の略円弧状に形成されて、接触面10aにおいて、ロッカアーム8の幅方向についての曲率半径は、ロッカアーム8の長手方向についての曲率半径よりも大きいものとなっていること。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
第1に、引用発明における「自動二輪車1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件補正発明における「自動車」に相当し、以下同様に、「エンジン13」は「熱エンジン」に、「シリンダヘッド22」は「シリンダヘッド」にそれぞれ相当する。
第2に、引用発明における「動弁装置34」は「シリンダヘッド22」の内部に備えられ、その「動弁装置34」に備えられた「吸気用カム38は、吸気用カム軸37と一体的に回転し、吸気用ロッカーシャフト41に軸支された吸気用ロッカーアーム42を介して吸気バルブ35を開かせるもの」であるから、引用発明における「吸気用カム軸37」、「吸気バルブ35」、「動弁装置34」及び「吸気用ロッカーアーム42」は、それぞれ本件補正発明における「カムシャフト」、「バルブ」、「デバイス」及び「ブレーカアーム」に相当する。
第3に、引用発明における「吸気用ロッカーアーム42」は、「揺動軸である吸気用ロッカーシャフト41」に自由端側と反対側の端部で揺動自在に軸支され、長手方向に延びる形状」であるから、本件補正発明における「枢動軸を中心として第1の端部で枢動移動可能である、軸に沿って延びる作動アーム」に相当する事項を備えている。
第4に、本件補正発明における「接触ヘッド」は、「カムシャフトのカムとバルブとの間に配置され、第1の端部と反対側の第2の端部側にある」ものであり、さらに、本願の発明の詳細な説明における段落【0049】及び【0050】、【0055】を参酌すると、カム14に接触する上側接触面25と、バルブロッド31のヘッド30に接触する下側当接面26とを備えたものであると把握できる。
そうすると、引用発明における「吸気用ロッカーアーム42」は、「吸気用カム38およびバルブステム35bに挟まれて配置され、吸気用ロッカーアーム42の自由端側に、吸気用カム38の周面に摺接されたカム摺接部59と、バルブステム35bの上部先端に設けられたシム60に摺接されたバルブ摺接部61と、を備えるもの」であるから、本件補正発明における「カムシャフトのカムとバルブとの間に配置され、第1の端部と反対側の第2の端部側にある接触ヘッド」に相当する事項を備えている。
第5に、引用発明における「バルブ摺接部61」は、「接触点Pにおいて吸気バルブ35に摺接させた楕円形状」であるから、本件補正発明における「接触ヘッドがバルブ(32)の方を向く下側面(26)を備え、下側面(26)が、バルブ(32)に向かって凸形」に相当する事項を備えている。
第6に、「バルブ摺接部61」は、「連続的に大きくなる曲率半径からなる接触面90」を有しているから、図5を参酌すると、「接触面90」が少なくとも「吸気用ロッカーシャフト41」と平行な軸を中心とする曲率半径を有していることは自明であるといえる。
そうすると、「バルブ摺接部61」は、本件補正発明における「枢動軸に平行な軸を中心とする第1の曲率」に相当する事項を備えている。
したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「自動車の熱エンジンのシリンダヘッド内に配置されるカムシャフトにより、前記エンジンのシリンダヘッド内にあるバルブを作動させるためのデバイスのブレーカアームであって、
前記ブレーカアームが、
- 枢動軸を中心として第1の端部で枢動移動可能である、軸に沿って延びる作動アームと、
- 前記カムシャフトのカムとバルブとの間に配置され、前記第1の端部と反対側の第2の端部側にある接触ヘッドと
を備え、
前記接触ヘッドが前記バルブの方を向く下側面を備え、前記下側面が、前記バルブに向かって凸形であり、前記枢動軸に平行な軸を中心とする第1の曲率を有するブレーカアーム。」

<相違点>
「接触ヘッド」における「下側面」の形状に関して、本件補正発明は「前記作動アーム(23)の軸に平行な状態を維持しながら、第1の横方向端部から、対向する第2の横方向端部まで横方向に移動する曲率軸(28a)に沿う第2の曲率(28)を有し、前記第2の曲率によって、前記バルブの軸に対して横向きの方向において前記バルブに力を加えることができ、それにより、前記ブレーカアームおよびバルブロッドに当接するように前記カムが移動する時に前記バルブロッドおよび前記バルブが前記バルブの軸を中心として回転し、前記第2の曲率の曲率半径が前記第1の曲率の曲率半径より大きい」のに対して、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(4)判断
ア 相違点について
まず、上記相違点に係る事項のうち、「前記作動アーム(23)の軸に平行な状態を維持しながら、第1の横方向端部から、対向する第2の横方向端部まで横方向に移動する曲率軸(28a)に沿う第2の曲率(28)を有し」という事項について、本願の発明の詳細な説明における段落【0059】及び【0060】、図3を参酌すると、作動アーム23の軸23aに実質的に平行な曲率の軸28aを中心として、下側面26の幅方向端部である第1の横方向端部から反対側の第2の横方向端部まで、下側面26の幅方向の曲率半径である、第2の曲率の曲率半径が変化することと把握できる。
また、上記相違点に係る事項のうち、「前記第2の曲率によって、前記バルブの軸に対して横向きの方向において前記バルブに力を加えることができ、それにより、前記ブレーカアームおよびバルブロッドに当接するように前記カムが移動する時に前記バルブロッドおよび前記バルブが前記バルブの軸を中心として回転し」という事項について、本願の発明の詳細な説明における段落【0073】及び【0074】、図5を参酌すると、カム14がブレーカアーム20における接触ヘッド24に当接されるように移動し、接触ヘッド24をバルブロッド31の方向に付勢するとき、下側面26の幅方向の曲率半径である、第2の曲率の曲率半径からなる円弧形状により、バルブロッド31の軸を基準として横方向の荷重、より厳密にいうと、バルブロッド31の軸を中心とした周方向の荷重を発生させ、バルブロッド31およびバルブ32を回転させることと把握できる。
引用文献2ないし引用文献4技術的事項より、エンジンのシリンダヘッドに設けた弁座と吸気バルブの弁面における摩耗を抑制するため、ロッカーアームの出力端部に長手方向及び幅方向に湾曲した円弧形状を備え、ロッカーアームが押し下げられ吸気バルブを開けるときに、吸気バルブを軸中心回りに回転させる力を発生させ、吸気バルブをバルブステムの軸中心回りに回転させるという技術的事項は、本願の優先日前において周知技術(以下、「周知技術1」という。)であったといえる。
また、引用文献5技術的事項より、ロッカアームの揺動により接触部で吸気バルブのステムエンドを押すとき、接触部とエンドキャップとの接触部分の変位が滑らかに行われるように、接触部をロッカアームの幅方向及び長手方向について凸型の略円弧状に形成し、ロッカアームの幅方向についての曲率半径は、ロッカアームの長手方向についての曲率半径よりも大きくするという技術的事項は、本願の優先日前において周知技術(以下、「周知技術2」という。)であったといえる。
そうすると、上記相違点に係る事項のうち、「前記第2の曲率によって、前記バルブの軸に対して横向きの方向において前記バルブに力を加えることができ、それにより、前記ブレーカアームおよびバルブロッドに当接するように前記カムが移動する時に前記バルブロッドおよび前記バルブが前記バルブの軸を中心として回転し」という事項は、周知技術1であるといえる。
さらに、上記相違点に係る事項のうち、「前記第2の曲率の曲率半径が前記第1の曲率の曲率半径より大きい」という事項については、バルブロッド及びバルブを回転させるのに適した、第1の曲率の曲率半径(「下側面」の長手方向の曲率半径)及び第2の曲率の曲率半径(「下側面」の幅方向の曲率半径)の大小関係の中から、当業者が適宜に決定し得ることである。また、前述のように、「前記第2の曲率の曲率半径が前記第1の曲率の曲率半径より大きい」という事項は、周知技術2であるといえる。
なお、上記相違点に係る事項のうち、「前記作動アーム(23)の軸に平行な状態を維持しながら、第1の横方向端部から、対向する第2の横方向端部まで横方向に移動する曲率軸(28a)に沿う第2の曲率(28)を有し」という事項は、前述のとおりに把握できるから、第2の曲率の曲率半径を変化させるかどうかは、バルブロッド及びバルブを回転させるのに最適な形状を考慮して、当業者が適宜に決定し得ることである。

イ そして、相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術1、又は、引用発明並びに周知技術1及び周知技術2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1、又は、引用発明並びに周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、令和元年10月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1.(2)に記載のとおりのものである。

2.原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の下記の請求項に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

・請求項 1ないし5
・引用文献等 1ないし4

・請求項 6
・引用文献等 1ないし5

・請求項 7
・引用文献等 1ないし7

・請求項 8及び9
・引用文献等 1ないし8

・請求項 10
・引用文献等 1ないし9

<引用文献等一覧>
1.特開2011-38436号公報(本審決の引用文献1)
2.特開2003-269116号公報(本審決の引用文献5;周知技術を示す文献)
3.特開2005-264736号公報(本審決の引用文献2;周知技術を示す文献)
4.特開平9-125917号公報(本審決の引用文献3;周知技術を示す文献)
5.国際公開第2013/51111号
6.特開2003-112225号公報(周知技術を示す文献)
7.米国特許出願公開第2013/167788号明細書(周知技術を示す文献)
8.特開2013-144941号公報
9.特開2004-68834号公報(周知技術を示す文献)

3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし4及びその記載事項は、前記第2の[理由]2.(2)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、「作動アーム(23)」については「軸(23a)に沿って延びる」という限定を、「下側面(26)」が有する「曲率」については「前記枢動軸(22)に平行な軸(22a)を中心とする第1の曲率(27)」、「(前記作動アーム(23)の軸に平行な)状態を維持しながら、第1の横方向端部から、対向する第2の横方向端部まで横方向に移動する曲率(軸(28a))に沿う第2の(曲率(28))」及び「前記第2の曲率の曲率半径が前記第1の曲率の曲率半径より大きい」という限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2.(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術1、又は、引用発明並びに周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-12-24 
結審通知日 2021-01-05 
審決日 2021-01-19 
出願番号 特願2018-516195(P2018-516195)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F01L)
P 1 8・ 121- Z (F01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅野 京一小笠原 恵理村山 禎恒  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 高島 壮基
鈴木 充
発明の名称 エンジン分配デバイスのためのブレーカアーム  
代理人 園田・小林特許業務法人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ