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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1374854
審判番号 不服2020-9558  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-07 
確定日 2021-06-29 
事件の表示 特願2016-568348「端末装置、基地局装置、無線通信方法および集積回路」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月14日国際公開、WO2016/111222、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)12月28日(優先権主張 平成27年1月8日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年12月 3日 上申書、手続補正書の提出
令和 元年 8月30日付け 拒絶理由通知書
令和 元年11月11日 意見書、手続補正書の提出
令和 2年 3月26日付け 拒絶査定
令和 2年 7月 7日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提

令和 2年10月 1日 上申書の提出
令和 3年 1月28日付け 拒絶理由通知書(当審)
令和 3年 3月24日 意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年3月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1ないし8に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1:CATT,"PRACH coverage enhancement",3GPP TSG-RAN WG1 Meeting #79 R1-144623,[online],2014年11月8日,pages 1-5,[検索日 2019.08.29],URL,https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_79/Docs/R1-144623.zip
引用例2:MediaTek Inc.,"Impact of Enhanced coverage on other physical Channels",3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #85 R2-140526,[online],2014年 1月31日,pages 1-5,[検索日 2019.08.29],URL,https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_85/Docs/R2-140526.zip
引用例3:米国特許出願公開第2010/0074204号明細書
引用例4:Samsung,"RACH Parameters Optimisation",3GPP TSG-RAN WG3 Meeting #64 R3-091417,[online],2009年5月7日,pages 1-3,[検索日 2020.03.26],URL,https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG3_Iu/TSGR3_64/Docs/R3-091417.zip


第3 本願発明について
本願の請求項1ないし8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、令和3年3月24日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし8は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
基地局装置と通信を行う端末装置であって、
前記基地局装置から、(i)ランダムアクセスレスポンス受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、および、(ii)コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、を含んだランダムアクセス共通情報を受信し、前記コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報の各々は、コンテンションレゾリューションタイマーの値を含み、
前記ランダムアクセス共通情報に基づいて、選択されたレピティションレベルに対応したコンテンションレゾリューションタイマーの値を選択する、端末装置。
【請求項2】
請求項1に記載の端末装置であって、
前記ランダムアクセス共通情報をレピティションレベル毎のランダムアクセス手順に対応したセルのシステム情報から取得する端末装置。
【請求項3】
端末装置と通信を行う基地局装置であって、
(i)ランダムアクセスレスポンス受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、および、(ii)コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、を含んだランダムアクセス共通情報を生成し、前記コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報の各々は、コンテンションレゾリューションタイマーの値を含み、
前記ランダムアクセス共通情報を前記端末装置に送信する、基地局装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基地局装置であって、
前記ランダムアクセス共通情報をレピティションレベル毎のランダムアクセス手順に対応した前記端末装置に対するシステム情報に含めて送信する基地局装置。
【請求項5】
基地局装置と通信を行う端末装置の通信方法であって、
前記基地局装置から、(i)ランダムアクセスレスポンス受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、および、(ii)コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、を含んだランダムアクセス共通情報を受信し、前記コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報の各々は、コンテンションレゾリューションタイマーの値を含み、
前記ランダムアクセス共通情報に基づいて、選択されたレピティションレベルに対応したコンテンションレゾリューションタイマーの値を選択すること
を含む通信方法。
【請求項6】
端末装置と通信を行う基地局装置の通信方法であって、
(i)ランダムアクセスレスポンス受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、および、(ii)コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、を含んだランダムアクセス共通情報を生成し、前記コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報の各々は、コンテンションレゾリューションタイマーの値を含み、
前記ランダムアクセス共通情報を前記端末装置に送信することを有する通信方法。
【請求項7】
基地局装置と通信を行う端末装置に適用される集積回路であって、
前記基地局装置から、(i)ランダムアクセスレスポンス受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、および、(ii)コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、を含んだランダムアクセス共通情報を受信する手段と、
前記ランダムアクセス共通情報に基づいて、選択されたレピティションレベルに対応したコンテンションレゾリューションタイマーの値を選択する手段と
を有し、
前記コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報の各々は、コンテンションレゾリューションタイマーの値を含む、集積回路。
【請求項8】
端末装置と通信を行う基地局装置に適用される集積回路であって、
(i)ランダムアクセスレスポンス受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、および、(ii)コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、を含んだランダムアクセス共通情報を生成する手段と、
前記ランダムアクセス共通情報を前記端末装置に送信する手段と
を有し、
前記コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報の各々は、コンテンションレゾリューションタイマーの値を含む、集積回路。」

第4 引用例、引用発明等について
1.引用例1について
原査定の拒絶の理由に引用されたCATT,"PRACH coverage enhancement(当審訳:PRACH カバレッジ拡張)",3GPP TSG-RAN WG1 Meeting #79 R1-144623,[online],2014年11月 8日,pages 1-5,[検索日 2019.08.29],URL,https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_79/Docs/R1-144623.zip(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

「3.4. Determination of repetition levels during initial random access
1) Random Access Response generated by MAC on DL-SCH (Msg2)
The Msg2 is scheduled by PDCCH. In enhanced coverage mode, the eNB may repeat PDCCH many times to ensure that the UE can decode it correctly. A simple and possible way to determine the repetition level of PDCCH is to define some direct or indirect mapping or relationship between the PDCCH repetition level and the Msg1 repetition level, which can be semi-statically configured or predefined. Note that indirect mapping or relationship between the PDCCH repetition level and the Msg1 repetition level means that the PDCCH repetition level and the Msg1 repetition level can be separately mapped with the coverage enhancement level. The repetition level of Msg2 can be determined like its scheduling PDCCH, i.e. it can be semi-statically configured by SIB with association to the repetition level of Msg1.
(略)
3) Contention Resolution on DL (Msg4)
Similar with PDCCH scheduling Msg2 and PDSCH containing Msg2, the repetition levels for PDCCH scheduling Msg4 and the PDSCH containing Msg4 can semi-statically configured by SIB with association to the repetition level of Msg1.
Overall, based on the analysis above, we propose:
Proposal 6: During initial random access procedure, the repetition levels associated with the transmission of Msg2/3/4 should be semi-statically configured by SIB with association to the repetition level of Msg1.」(第3頁下から第7行目ないし第4頁第16行目)
(当審訳:
3.4. 初期ランダムアクセス中の繰り返しレベルの決定
1)DL-SCH(Msg2)でMACによって生成されたランダムアクセス応答
Msg2はPDCCHによってスケジュールされる。拡張カバレッジモードでは、eNBはPDCCHを何度も繰り返して、UEが正しくデコードできるようにする。PDCCHの繰り返しレベルを決定する簡単で可能な方法は、PDCCH繰り返しレベルとMsg1繰り返しレベルの間の直接又は間接のマッピング、又は関係を定義することである。これは半静的に構成又は事前定義である。PDCCH繰り返しレベルとMsg1繰り返しレベルの間の間接的なマッピング又は関係は、PDCCH繰り返しレベルとMsg1繰り返しレベルをカバレッジ拡張レベルと別々にマッピングできることを意味することに注意すべきである。Msg2の繰り返しレベルは、そのスケジューリングPDCCHのように決定できる。つまり、Msg1の繰り返しレベルに関連付けられたSIBによって半静的に構成できる。

(略)
3)DLの競合解決(Msg4)
PDCCHスケジューリングMsg2及びMsg2を含むPDSCHと同様に、PDCCHスケジューリングMsg4及びMsg4を含むPDSCHの繰り返しレベルは、Msg1の繰り返しレベルに関連付けられたSIBによって半静的に構成できる。
全体として、上記の分析に基づいて、次のことを提案する。
提案6:最初のランダムアクセス手順中に、Msg2/3/4の送信に関連する繰り返しレベルは、Msg1の繰り返しレベルに関連するSIBによって半静的に構成する必要がある。)

上記記載及び当業者における技術常識からみて、以下の技術的事項が記載されている。
上記の「Msg2の繰り返しレベルは、・・・Msg1の繰り返しレベルに関連付けられたSIBによって半静的に構成できる。」との記載によれば、Msg1の繰り返しレベルに関する情報がSIBに含まれていることが記載されている。
また、上記の「PDCCHスケジューリングMsg4及びMsg4を含むPDSCHの繰り返しレベルは、Msg1の繰り返しレベルに関連付けられたSIBによって半静的に構成できる。」との記載からも、Msg1の繰り返しレベルに関する情報がSIBに含まれていることが記載されている。
そして、SIBとはeNBと通信するUEがeNBから受信する情報であることは技術常識である。
したがって、引用例1には、eNBと通信するUEは、eNBからSIBを受信し、SIBにはMsg1の繰り返しレベルに関する情報が含まれることが記載されている。

以上を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「eNBと通信するUEは、
eNBからSIBを受信し、当該SIBにはMsg1の繰り返しレベルに関する情報が含まれる、
UE。」

2.引用例2について
原査定の拒絶の理由に引用されたMediaTek Inc.,"Impact of Enhanced coverage on other physical Channels(当審訳:強化されたカバレッジが他の物理チャネルに与える影響)",3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #85 R2-140526,[online],2014年 1月31日,pages 1-5,[検索日 2019.08.29],URL,https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_85/Docs/R2-140526.zip(以下、「引用例2」という。)には、次の記載がある。(下線は当審が付与。)

「2.1.2 RAR Reception
It has been estimated in [2] that “The average repetition time to achieve the coverage improvement target is 100?200 for FDD and 200?300 for TDD” for PDSCH coverage improvement.
During random access procedure, RAR as well as the corresponding DL assignment through PDCCH are transmitted repeatedly in the time domain. The time duration between preamble transmission and reception of RAR as well as the RAR window needs to be extended accordingly. So the current timing relationship specified is not applicable.
Observation 4: The time duration between preamble transmission and reception of RAR as well as the RAR window needs to be extended for coverage limited UE.
2.1.3 Msg3 transmission and Contention Resolution
For contention based RA procedure with coverage limited UE, Msg 3 and Msg 4 will also be repeated to improve the coverage. The repetition level associated to the transmission of Msg3/4 can be semi-static configured, dynamically signalled or predefined. Once the repetitions associated to a transmission of Msg 3 are completed, the contention resolution timer is started. The contention resolution timer needs to be set to a large value to accommodate the repetition of Msg4, i.e. PDCCH addressed to C-RNTI or UE Contention Resolution Identity. If the RA procedure is triggered due to initial access or re-establishment, the contention resolution timer should also take the repetitions of PDCCH addressed to Temporary CRNTI into account.
Observation 5: Contention resolution timer should be extended to accommodate the repetitions of Msg 4, and additionally the repetitions of PDCCH addressed to Temporary CRNTI for DL assignment of Msg4 in the case of initial access and re-establishment.
Proposal 1: Random access procedure for coverage limited UE needs to be discussed in RAN2, especially the timing relationship between different Msgs.」(第2第5行目ないし同第27行目)
(当審訳:
2.1.2 RAR繰り返し
[2]では、PDSCHのカバレッジ改善について、「カバレッジ改善目標を達成するための平均繰り返し回数は、FDDで100?200、TDDで200?300」と推定されている。
ランダムアクセス手順中に、RAR及びPDCCHを介した対応するDL割り当てが、時間領域で繰り返し送信される。プリアンブルの送信からRARの受信までの時間、及びRARウィンドウはそれに応じて延長する必要がある。したがって、指定されている現在のタイミング関係は適用されない。
観察4:カバレッジが制限されたUEの場合、プリアンブルの送信からRARの受信までの時間、及びRARウィンドウを延長する必要がある。
2.1.3 Msg3送信及びコンテンションレゾリューション
カバレッジが制限されたUEの競合ベースのRA手順の場合、カバレッジを改善するためにMsg3とMsg4も繰り返される。Msg3/4の送信に関連する繰り返しレベルは、半静的に構成、動的に信号を送る、又は事前定義することができる。Msg3の送信に関連する繰り返しが完了すると、コンテンションレゾリューションタイマーが開始される。Msg4の繰り返しに対応するには、コンテンションレゾリューションタイマーを大きな値に設定する必要がある。つまり、C-RNTI又はUEコンテンションレゾリューション識別子にアドレス指定されたPDCCHである。初期アクセス又は再確立のためにRAプロシージャがトリガーされた場合、コンテンションレゾリューションタイマーは、一時的CRNTIにアドレス指定されたPDCCHの繰り返しも考慮に入れる必要がある。
観察6:Msg4の繰り返しに対応し、さらに、初期アクセスと再確立の場合にMsg4のDL割り当てのために一時的CRNTIにアドレス指定されたPDCCHの繰り返しに対応してコンテンションレゾリューションタイマーを延長する必要がある。
提案1:カバレッジが制限されたUEのランダムアクセス手順は、RAN2で、特に異なるメッセージ間のタイミング関係について議論する必要がある。)

上記「Msg4の繰り返しに対応し・・・てコンテンションレゾリューションタイマーを延長する必要がある。」との記載によれば、引用例2には、次の技術的事項(以下、「技術的事項2」という。)が記載されていると認められる。

「Msg4の繰り返しに対応してコンテンションレゾリューションタイマーを延長する必要がある。」

3.引用例3及び引用例4について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された米国特許出願公開第2010/0074204号明細書(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

「[0057] Referring back to FIG. 2, the representative random access module 214 depicted in FIG. 3, can be employed to facilitate random access by UE 210, which is initiated to reacquire uplink synchronization. UE 210 can employ the random access configuration module 302 to initialize a random access procedure. In accordance with an example, the random access configuration module 302 can initialize a set of parameters that include parameters such as, but not limited, a set of physical random access channel (PRACH) resources available for transmission of preambles, groups of preambles and available preambles in each group, a number of message 3 HARQ transmissions, a contention resolution timer value, and the like. 」
(当審訳:
[0057]再び図2を参照すると、図3に示されている代表的なランダムアクセスモジュール214を使用して、アップリンク同期を再取得するために開始されるUE210によるランダムアクセスを容易にすることができる。UE210は、ランダムアクセス構成モジュール302を使用して、ランダムアクセス手順を初期化することができる。例によれば、ランダムアクセス構成モジュール302は、パラメータのセットを初期化することができる。これには、プリアンブルの送信に使用できる一連の物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)リソース、プリアンブルのグループ、及び各グループで使用可能なプリアンブル、メッセージ3 HARQ送信の数、コンテンションレゾリューションタイマー値などが含まれる。)

(2)原査定の拒絶の理由に引用されたSamsung,"RACH Parameters Optimisation(当審訳:RACHパラメータの最適化)",3GPP TSG-RAN WG3 Meeting #64 R3-091417,[online],2009年 5月 7日,pages 1-3,[検索日 2020.03.26],URL,https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG3_Iu/TSGR3_64/Docs/R3-091417.zip(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

「2 Information for optimization of RACH parameters





(当審訳:
2 RACHパラメータの最適化に関する情報
RACH関連のパラメータは次のようにブロードキャストされる[2]。
(略)
>mac-コンテンションレゾリューションタイマ ENUM{sf8,sf16,sf24,sf32,sf40,sf48,sf56,sf64}
(略))

以上を総合すると、引用例3及び4には、次の技術的事項(以下、「技術的事項3」という。)が記載されていると認められる。

「パラメータとしてコンテンションレゾリューションタイマの値が含まれる。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
a.引用発明の「eNB」と「UE」はそれぞれ、本願発明1の「基地局装置」と「端末装置」に相当する。そして、引用発明の「eNBと通信するUE」は、本願発明1の「基地局と通信を行うUE」に相当する。

b.本願発明1の「ランダムアクセス共通情報」はランダムアクセスに関する情報といえる。
一方、引用発明の「Msg1」はランダムアクセス手順のメッセージであることは技術常識であるから、引用発明のSIBに含まれる「Msg1の繰り返しレベルに関する情報」はランダムアクセスに関する情報といえる。
よって、本願発明1の「ランダムアクセス共通情報」と、引用発明のSIBに含まれる「Msg1の繰り返しレベルに関する情報」とは、「ランダムアクセスに関する情報」として共通する。
したがって、本願発明1の「前記基地局装置から、(i)ランダムアクセスレスポンス受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、および、(ii)コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、を含んだランダムアクセス共通情報を受信」と、引用発明の「eNBからSIBを受信し、SIBにはMsg1の繰り返しレベルに関する情報が含まれる」とは、「基地局装置から、ランダムアクセスに関する情報を受信」する点で共通する。

以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 基地局装置と通信を行う端末装置であって、
前記基地局装置から、ランダムアクセスに関する情報を受信する、端末装置。」

(相違点)
本願発明1では、「前記基地局装置から、(i)ランダムアクセスレスポンス受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、および、(ii)コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報、を含んだランダムアクセス共通情報を受信し、前記コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報の各々は、コンテンションレゾリューションタイマーの値を含み」、「前記ランダムアクセス共通情報に基づいて、選択されたレピティションレベルに対応したコンテンションレゾリューションタイマーの値を選択する」のに対し、引用発明では「eNBからSIBを受信し、当該SIBにはMsg1の繰り返しレベルに関する情報が含まれる」が、当該発明特定事項が特定されていない点。

(2)相違点についての判断
相違点に関する発明特定事項の一部である「(ii)コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報」であり、「前記コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報の各々は、コンテンションレゾリューションタイマーの値を含」むことは、技術的事項2及び技術的事項3においても示されておらず、本願優先日前において周知技術でもない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び技術的事項2、3に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし8について
本願発明2ないし8も、本願発明1の「(ii)コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報」であり、「前記コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報の各々は、コンテンションレゾリューションタイマーの値を含」むという発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び技術的事項2、3に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定についての判断
令和3年3月24日の手続補正により補正された本願発明1ないし8は「(ii)コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報であって、各情報は各レピティションレベルに対応する当該複数の情報」であり、「前記コンテンションレゾリューションメッセージ受信に関する複数の情報の各々は、コンテンションレゾリューションタイマーの値を含」むという発明特定事項を備えるものであるから、上記「第5」のとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用例1ないし4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

したがって、原査定を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由(令和3年1月28日付け拒絶理由通知書)の概要は次のとおりである。

(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(1)請求項3に「端末装置と通信を行う基地局装置であって、・・・ランダムアクセス共通情報を受信し、・・・前記ランダムアクセス共通情報を前記端末装置に送信する、基地局装置」と記載されており、ランダムアクセス共通情報を受信するのか送信するのか不明瞭である。「ランダムアクセス共通情報を受信し」は「ランダムアクセス共通情報を生成し」の誤記と認められる。
請求項6及び請求項3を引用する請求項4も同様である。
よって、請求項3、4、6に係る発明は不明確である。

2.当審拒絶理由についての判断
令和3年3月24日の手続補正により、請求項3、6の「ランダムアクセス共通情報を受信し」を「ランダムアクセス共通情報を生成し」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-06-09 
出願番号 特願2016-568348(P2016-568348)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田畑 利幸  
特許庁審判長 廣川 浩
特許庁審判官 望月 章俊
中木 努
発明の名称 端末装置、基地局装置、無線通信方法および集積回路  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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