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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1374912
異議申立番号 異議2020-700530  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-07-28 
確定日 2021-04-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6638823号発明「半導体装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6638823号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について」)訂正することを認める。 特許第6638823号の請求項1、5ないし13に係る特許を維持する。 特許第6638823号の請求項2ないし4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6638823号の請求項1ないし13に係る発明についての出願は、平成28年10月24日に出願されたものであって、令和2年1月7日にその特許権が設定登録され、令和2年1月29日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 2年 7月28日 :特許異議申立人 橋本 清(以下、「申立人」という。)により請求項1ないし13に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 2年10月20日付け:取消理由通知
令和 2年12月10日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、令和3年1月6日付けで、特許権者により訂正の請求があった旨の通知をし申立人に意見を求めたが、申立人から応答はなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨及び内容
令和2年12月10日にされた訂正請求の趣旨は、特許第6638823号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「少なくとも前記キャップ基板を覆うモールド樹脂と、を備えた半導体装置。」を「少なくとも前記キャップ基板を覆うモールド樹脂と、を備え、前記基板上に、前記発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、前記中空部が、前記絶縁膜と前記キャップ基板との間に形成され、前記反射膜が、前記絶縁膜上に形成された半導体装置。」に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項5ないし13も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の「前記基板上に形成された発熱部と、前記基板の上方に、前基板との間に中空部を持つように形成されたギャップ基板」を「前記基板上に形成された発熱部と、前記基板の上方に、前記基板との間に中空部を持つように形成されたギャップ基板」に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項5ないし13も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5の「前記反射膜が、平面視で前記発熱部の中心の少なくとも6割の面積を覆うことを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の半導体装置。」を「前記反射膜が、平面視で前記発熱部の中心の少なくとも6割の面積を覆うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。」と訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7の「前記反射膜の中波長赤外線に対する反射率が0.9以上であることを特徴とする請求項1?6のいずれか1項に記載の半導体装置。」を「前記反射膜の中波長赤外線に対する反射率が0.9以上であることを特徴とする請求項1,5?6のいずれか1項に記載の半導体装置。」と訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9の「前記反射膜が金属で出来た層を含むことを特徴とする請求項1?8のいずれか1項に記載の半導体装置。」を「前記反射膜が金属で出来た層を含むことを特徴とする請求項1,5?8のいずれか1項に記載の半導体装置。」と訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項11の「前記中空部が真空であることを特徴とする請求項1?10のいずれか1項に記載の半導体装置。」を「前記中空部が真空であることを特徴とする請求項1,5?10のいずれか1項に記載の半導体装置。」と訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項12の「前記キャップ基板の熱伝導率が前記基板より低いことを特徴とする請求項1?11のいずれか1項に記載の半導体装置。」を「前記キャップ基板の熱伝導率が前記基板より低いことを特徴とする請求項1,5?11のいずれか1項に記載の半導体装置。」と訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項13の「前記基板がSiCで出来ていることを特徴とする請求項1?12のいずれか1項に記載の半導体装置。」を「前記基板がSiCで出来ていることを特徴とする請求項1,5?12のいずれか1項に記載の半導体装置。」と訂正する。

(12)訂正事項12
明細書の段落【0007】に「この発明の半導体装置は、基板と、基板上に形成された発熱部と、基板の上方に、基板との間に中空部を持つように形成されたキャップ基板と、発熱部の上方に、赤外線を反射する反射膜と、少なくとも前記キャップ基板を覆うモールド樹脂と、を備える。」と記載されているのを、「この発明の半導体装置は、基板と、前記基板上に形成された発熱部と、前記基板の上方に、前記基板との間に中空部を持つように形成されたキャップ基板と、前記発熱部の上方に中波長赤外線を反射する反射膜と、少なくとも前記キャップ基板を覆うモールド樹脂と、を備え、前記基板上に、前記発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、前記中空部が、前記絶縁膜と前記ギャップ基板との間に形成され、前記反射膜が、前記絶縁膜上に形成された。」に訂正する。

2 訂正要件についての判断
(1)一群の請求項
本件訂正前の請求項1ないし13について、請求項2ないし13は請求項1を直接又は間接的に引用しているから、本件訂正前の請求項1ないし13に対応する本件訂正後の請求項1ないし13は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「基板」、「発熱部」、「中空部」、「キャップ基板」、「反射膜」について、「前記基板上に、前記発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、前記中空部が、前記絶縁膜と前記キャップ基板との間に形成され、前記反射膜が、前記絶縁膜上に形成された」と限定するものである。
よって、訂正事項1は、請求項1について、特許請求の範囲を減縮するものである。
また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項5ないし13も同様に、特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正前の請求項2には、「前記基板上に、前記発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、前記中空部が、前記絶縁膜と前記キャップ基板との間に形成され、前記反射膜が、前記絶縁膜上に形成された」と記載されている。また、明細書の段落【0014】に「基板2の上には発熱部4を覆うように絶縁膜8が形成されている」と、段落【0016】に「中空部10は絶縁膜8、封止枠18、キャップ基板3によって囲まれており、気密性が保たれている」と、段落【0015】に「絶縁膜8の上には反射膜9が設けられている」と記載されており、明細書には、基板上に発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、中空部が絶縁膜とキャップ基板との間に形成され、反射膜が絶縁膜上に形成されることが記載されている。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載されていた「前記基板上に形成された発熱部と、前記基板の上方に、前基板との間に中空部を持つように形成されたギャップ基板」を「前記基板上に形成された発熱部と、前記基板の上方に、前記基板との間に中空部を持つように形成されたギャップ基板」と訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。

(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
明細書の段落【0011】に「図1および図2に示すように、基板2の上に発熱部4が形成されている」と、段落【0016】に「基板2とキャップ基板3の間には中空部10があり、その高さは10μm程度である」と記載されており、明細書には、キャップ基板3との間に中空部10を形成する基板は発熱部4が形成された基板2であることが記載されている。
よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9条で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

エ 訂正事項4について
訂正事項4は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9条で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

オ 訂正事項5について
訂正事項5は、請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9条で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

カ 訂正事項6について
訂正事項6は、請求項5が引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、訂正事項3ないし5により削除された請求項2ないし4の引用を解消するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
そして、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号および第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9条で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

キ 訂正事項7について
訂正事項7は、請求項7が引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、訂正事項3ないし5により削除された請求項2ないし4の引用を解消するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
そして、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号および第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9条で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

ク 訂正事項8について
訂正事項8は、請求項9が引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、訂正事項3ないし5により削除された請求項2ないし4の引用を解消するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
そして、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号および第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9条で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

ケ 訂正事項9について
訂正事項9は、請求項11が引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、訂正事項3ないし5により削除された請求項2ないし4の引用を解消するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
そして、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号および第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9条で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

コ 訂正事項10について
訂正事項10は、請求項12が引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、訂正事項3ないし5により削除された請求項2ないし4の引用を解消するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
そして、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号および第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9条で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

サ 訂正事項11について
訂正事項11は、請求項13が引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、訂正事項3ないし5により削除された請求項2ないし4の引用を解消するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
そして、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号および第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9条で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

シ 訂正事項12について
(ア)訂正の目的
訂正事項12は、訂正前の明細書の段落【0007】に記載されていた「この発明の半導体装置は、基板と、基板上に形成された発熱部と、基板の上方に、基板との間に中空部を持つように形成されたキャップ基板と、発熱部の上方に、赤外線を反射する反射膜と、少なくとも前記キャップ基板を覆うモールド樹脂と、を備える。」を「この発明の半導体装置は、基板と、前記基板上に形成された発熱部と、前記基板の上方に、前記基板との間に中空部を持つように形成されたキャップ基板と、前記発熱部の上方に中波長赤外線を反射する反射膜と、少なくとも前記キャップ基板を覆うモールド樹脂と、を備え、前記基板上に、前記発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、前記中空部が、前記絶縁膜と前記ギャップ基板との間に形成され、前記反射膜が、前記絶縁膜上に形成された。」と訂正するものであり、上記訂正事項1及び2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の段落【0007】の記載との整合を図るものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。

(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
明細書の段落【0047】に「すなわち、反射膜9の反射率を大きくすればよい。よって、中波長赤外線領域における反射率が0.9以上であるのが望ましい。」と記載されており、明細書には、反射膜は中波長赤外線を反射することが記載されている。
また、明細書の段落【0014】に「基板2の上には発熱部4を覆うように絶縁膜8が形成されている」と、段落【0016】に「中空部10は絶縁膜8、封止枠18、キャップ基板3によって囲まれており、気密性が保たれている」と、段落【0015】に「絶縁膜8の上には反射膜9が設けられている」と記載されており、明細書には、基板上に発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、中空部が絶縁膜とギャップ基板との間に形成され、反射膜が絶縁膜上に形成されることが記載されている。
よって、訂正事項12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記「第2」のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし13に係る発明(以下、「本件発明1ないし13」という。)は、その訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された次の事項により特定されるものである。なお、訂正部分について、当審で下線を付与した。
「【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された発熱部と、
前記基板の上方に、前記基板との間に中空部を持つように形成されたキャップ基板と、
前記発熱部の上方に中波長赤外線を反射する反射膜と、
少なくとも前記キャップ基板を覆うモールド樹脂と、
を備え、
前記基板上に、前記発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、前記中空部が、前記絶縁膜と前記キャップ基板との間に形成され、前記反射膜が、前記絶縁膜上に形成された半導体装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記反射膜が、平面視で前記発熱部の中心の少なくとも6割の面積を覆うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記反射膜が、平面視で前記発熱部の少なくとも全面を覆うことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記反射膜の中波長赤外線に対する反射率が0.9以上であることを特徴とする請求項1,5?6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記反射膜の、波長範囲が5.1?7.8μmの赤外線に対する反射率が0.9以上であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記反射膜が金属で出来た層を含むことを特徴とする請求項1,5?8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記反射膜が、Al、黄銅、Cu、Au、Ni、Pt、Ag、Zn、Pdのいずれかの金属で出来た層を含むことを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記中空部が真空であることを特徴とする請求項1,5?10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記キャップ基板の熱伝導率が前記基板より低いことを特徴とする請求項1,5?11のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記基板がSiCで出来ていることを特徴とする請求項1,5?12のいずれか1項に記載の半導体装置。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和2年10月20日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由1(新規性について)
ア 引用文献1に記載された発明に基づく新規性について
請求項3ないし13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項3ないし13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

イ 引用文献2に記載された発明に基づく新規性について
請求項3、5ないし11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項3、5ないし11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(2)取消理由2(進歩性について)
ア 引用文献1に記載された発明に基づく進歩性について
請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明及び引用文献3ないし5に記載された周知技術に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

イ 引用文献2に記載された発明に基づく進歩性について
請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献2に記載された発明及び引用文献3ないし5に記載された周知技術に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)引用文献一覧
引用文献1:特開2016-143782号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開2016-167659号公報(甲第2号証)
引用文献3:実願昭63-40783号(実開平1-145133号)のマイクロフィルム(甲第3号証)
引用文献4:特開2006-237405号公報(甲第4号証)
引用文献5:特開2011-18671号公報(甲第5号証)

(4)取消理由3(サポート要件について)
本件の明細書の段落【0005】、【0006】の記載によれば、本件発明は「発熱部から放射される赤外線が中空部を介してモールド樹脂に吸収され、モールド樹脂の温度が高くなるという問題」を解決し「モールド樹脂の温度上昇を抑えた半導体装置を提供することを目的」とするものであるのに対して、本件の請求項3および4には「モールド樹脂」が構成要件として特定されておらず、本件の請求項3および4に係る発明は、「モールド樹脂」を有さない半導体装置を含むものである。
そして、「モールド樹脂」を有さない半導体装置において、「モールド樹脂の温度上昇を抑えた半導体装置を提供」できると当業者が認識できるものとは認められない。
してみると、請求項3および4に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えており、出願時の技術常識に照らしても、請求項3および4に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
請求項3または4を引用する請求項5ないし13についても同様である。
したがって、請求項3ないし13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、請求項3ないし13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(5)取消理由4(明確性について)
本件の請求項1、3および4には「前基板」が構成要件として特定されているのに対して、本件の明細書に「前基板」は記載されておらず、「前基板」が如何なるものであるのか特定できない。また、技術常識に照らしても「前基板」が如何なるものであるのか、当業者に明らかであるとはいえない。
したがって、構成要件として「前基板」を有する請求項1、3および4に係る発明は、明確でない。
請求項1、3、4のいずれかに従属する請求項2、5ないし13についても同様である。
よって、請求項1ないし13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 引用文献の記載事項、引用発明等
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)
「【0060】
図1?図3は、本発明の第1実施形態に基づく電子装置を示している。本実施形態の電子装置A1は、基板1、絶縁層2、導電層3、シールチップ4、シールチップ電極パッド341および電子素子7を備えている。図1は電子装置A1を示す断面図である。図2は、電子装置A1を示す要部拡大断面図である。図3は、電子装置A1を示す要部断面図である。
【0061】
基板1は、半導体材料の単結晶よりなる。本実施形態においては、基板1は、Si単結晶からなる。基板1の材質は、Siに限定されず、たとえば、SiCであってもよい。基板1の厚さは、たとえば、200?550μmである。基板1には、電子素子7が配置されている。
【0062】
基板1は、主面111と、裏面112と、を有する。」

「【0065】
基板1には、素子配置用凹部14が形成されている。
【0066】
素子配置用凹部14は、主面111から凹んでいる。素子配置用凹部14には、電子素子7が配置されている。素子配置用凹部14の深さ(主面111と後述の素子配置用凹部底面142との、厚さ方向における離間寸法)は、たとえば、100?300μmである。素子配置用凹部14は、厚さ方向視において矩形状である。素子配置用凹部14の形状は、主面111として(100)面を採用したことに依存している。」

「【0074】
シールチップ4は、厚さ方向において主面111と同じ側を向くシールチップ主面41およびシールチップ主面41とは反対側を向くシールチップ裏面42を有している。シールチップ4は、主面111側において素子配置用凹部14の少なくとも一部を覆っている。本実施形態においては、シールチップ4は、素子配置用凹部14のすべてを覆っている。シールチップ4は、たとえばSiからなる。また、シールチップ4には、電子装置A1の機能の一部を果たす集積回路が作りこまれていてもよい。」

「【0076】
本実施形態においては、素子配置用凹部14は、シールチップ4によって密閉状態とされている。また、素子配置用凹部14は、空隙領域145を含んでいる。空隙領域145は、不活性ガスなどの気体または真空とされた空間である。本実施形態においては、素子配置用凹部14は、そのすべてが空隙領域145によって占められている。空隙領域145は、電子素子7に接している。また、電子素子7とシールチップ4との間には、空隙領域145が介在している。」

「【0087】
電子素子7は、素子配置用凹部底面142に搭載されている。電子素子7の一例としては、たとえば集積回路素子が挙げられ、具体的には、いわゆるASIC(Application Specific Integrated Circuit)素子である。あるいは、電子素子7の他の例としては、インダクタやキャパシタなどの受動素子が挙げられる。」

「【0126】
図18は、本発明の第5実施形態に基づく電子装置を示している。本実施形態の電子装置A5は、シールチップ4にシールチップシールド層44が形成されている。また、基板1に基板シールド層18が形成されている。
【0127】
シールチップシールド層44は、たとえばCuに代表される金属などの導電性材料からなる層である。本実施形態においては、シールチップシールド層44は、シールチップ4のシールチップ裏面42に形成されている。また、シールチップシールド層44は、シールチップ裏面42のすべてを覆っている。シールチップシールド層44は、電子装置A1内に設けられたグランドラインに導通することが好ましい。
【0128】
基板シールド層18は、たとえばCuに代表される金属などの導電性材料からなる層である。基板シールド層18は、基板1の裏面112に形成されている。また、基板シールド層18は、裏面112のすべてを覆っている。基板シールド層18は、電子装置A1内に設けられたグランドラインに導通することが好ましい。
【0129】
このような実施形態によっても、素子配置用凹部14に収容された電子素子7をシールチップ4によってより適切に保護することができる。また、基板シールド層18およびシールチップシールド層44によって、電子素子7から発せられる電磁波が外部に漏れてしまうことや、外部からノイズとしての電磁波が電子素子7に到達することを回避することができる。
【0130】
図19および図20は、本発明の第6実施形態に基づく電子装置を示している。本実施形態の電子装置A6は、基板1、絶縁層2、導電層3、シールチップ4、裏面電極パッド342および電子素子7を備えている。図19は、電子装置A6の厚さ方向に沿う断面における断面図である。図20は、電子装置A6の要部拡大断面図である。
【0131】
基板1は、半導体材料の単結晶よりなる。本実施形態においては、基板1は、Si単結晶からなる。基板1の材質は、Siに限定されず、たとえば、SiCであってもよい。基板1の厚さは、たとえば、200?550μmである。基板1には、電子素子7が配置されている。」

「【0135】
基板1には、素子配置用凹部14および2つの貫通孔17が形成されている。
【0136】
素子配置用凹部14は、主面111から凹んでいる。素子配置用凹部14には、電子素子7が配置されている。素子配置用凹部14の深さ(主面111と後述の素子配置用凹部底面142との、厚さ方向における離間寸法)は、たとえば、100?300μmである。素子配置用凹部14は、厚さ方向視において矩形状である。素子配置用凹部14の形状は、主面111として(100)面を採用したことに依存している。」

「【0150】
シールチップ4は、厚さ方向において主面111と同じ側を向くシールチップ主面41およびシールチップ主面41とは反対側を向くシールチップ裏面42を有している。シールチップ4は、主面111側において素子配置用凹部14の少なくとも一部を覆っている。本実施形態においては、シールチップ4は、素子配置用凹部14のすべてを覆っている。シールチップ4は、たとえばSiからなる。また、シールチップ4には、電子装置A6の機能の一部を果たす集積回路が作りこまれていてもよい。シールチップ4は、主面111に接合層45によって接合されている。接合層45は、導電性材料でも絶縁性材料であってもよい。
【0151】
本実施形態においては、素子配置用凹部14は、シールチップ4によって密閉状態とされている。また、素子配置用凹部14は、空隙領域145を含んでいる。空隙領域145は、不活性ガスなどの気体または真空とされた空間である。本実施形態においては、素子配置用凹部14は、そのすべてが空隙領域145によって占められている。空隙領域145は、電子素子7に接している。また、電子素子7とシールチップ4との間には、空隙領域145が介在している。」

「【0163】
電子素子7は、素子配置用凹部底面142に搭載されている。電子素子7の一例としては、たとえば集積回路素子が挙げられ、具体的には、いわゆるASIC(Application Specific Integrated Circuit)素子である。あるいは、電子素子7の他の例としては、インダクタやキャパシタなどの受動素子が挙げられる。」

「【0175】
図23は、本発明の第8実施形態に基づく電子装置を示している。本実施形態の電子装置A8は、シールチップ4にシールチップシールド層44が形成されている。
【0176】
シールチップシールド層44は、たとえばCuに代表される金属などの導電性材料からなる層である。本実施形態においては、シールチップシールド層44は、シールチップ4のシールチップ裏面42に形成されている。また、シールチップシールド層44は、シールチップ裏面42のすべてを覆っている。シールチップシールド層44は、電子装置A1内に設けられたグランドラインに導通することが好ましい。
【0177】
このような実施形態によっても、素子配置用凹部14に収容された電子素子7をシールチップ4によってより適切に保護することができる。
【0178】
図24は、電子装置A8の変形例を示している。本変形例においては、シールチップ4のシールチップ主面41にシールチップシールド層44が形成されている。
【0179】
このような変形例によっても、素子配置用凹部14に収容された電子素子7をシールチップ4によってより適切に保護することができる。」





・段落【0060】によれば、電子装置は、基板1、シールチップ4、電子素子7を備える。
・段落【0061】によれば、基材1の材質はSiであり、段落【0065】によれば、基材1には素子配置用凹部14が形成されるから、基板1は、素子配置用凹部14が形成され、材質はSiCである。
・段落【0066】によれば、素子配置用凹部14には電子素子7が配置され、段落【0087】によれば、電子素子7はASIC素子であるから、電子素子7は、素子配置用凹部14に配置されたASIC素子である。
・段落【0074】によれば、シールチップ4は、素子配置用凹部14のすべてを覆っており、Siからなる。
・段落【0076】によれば、素子配置用凹部14は、真空とされた空間である空隙領域145を含んでいる。
・段落【0127】によれば、第5実施形態のシールチップシールド層44は、Cuからなる層であり、シールチップ4のシールチップ裏面42に形成され、シールチップ裏面42のすべてを覆っている。また、図18からは、シールチップ裏面42は素子配置用凹部14側の面であることが見てとれる。
してみると、素子配置用凹部14側の面であるシールチップ4のシールチップ裏面42のすべてを覆って、Cuからなる層であるシールチップシールド層44が形成されるといえる。
・段落【0176】によれば、第8実施形態のシールチップシールド層44は、Cuからなる層であり、段落【0178】によれば、シールチップ4のシールチップ主面41にシールチップシールド層44が形成される。図24からは、シールチップ主面41は素子配置用凹部14と反対側の面であること、及び、シールチップシールド層44がシールチップ主面41のすべてを覆って設けられることが見てとれる。
してみると、素子配置用凹部14側と反対側の面であるシールチップ4のシールチップ主面41のすべてを覆って、Cuからなる層であるシールチップシールド層44が形成されるといえる。

イ 引用文献1に記載された発明
以上のことから、引用文献1には、第5実施形態または第8実施形態の「電子装置」として、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「素子配置用凹部14が形成され、材質はSiCである基板1、
素子配置用凹部14に配置されたASIC素子である電子素子7、
素子配置用凹部14のすべてを覆っているSiからなるシールチップ4を備え、
素子配置用凹部14は、真空とされた空間である空隙領域145を含み、
素子配置用凹部14側の面であるシールチップ4のシールチップ裏面42のすべてを覆って、Cuからなる層であるシールチップシールド層44が形成された、または、素子配置用凹部14側と反対側の面であるシールチップ4のシールチップ主面41のすべてを覆って、Cuからなる層であるシールチップシールド層44が形成された、
電子装置。」

(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)
「【0032】
電子部品100は、図1および図2に示すように、容器10と、振動片20と、発熱体30と、遮蔽板40(第1遮蔽板の一例)と、電子素子50と、を含む。
【0033】
容器10は、図1および図2に示すように、振動片20、発熱体30、遮蔽板40、および電子素子50を収容している。なお、容器10は、電子部品100を構成するその他の部材を収容していてもよい。容器10は、基板12と、リッド14と、を含んで構成されている。なお、図2では、便宜上、リッド14の図示を省略し、基板12を簡略化して図示している。
【0034】
基板12は、例えば、セラミックパッケージである。図示の例では、基板12は、セラミックグリーンシートを成形して積層した後、焼成して形成されたセラミック積層パッケージである。基板12は凹部を有し、凹部内の空間(収容室)16に振動片20、発熱体30、遮蔽板40、および電子素子50が収容されている。図示の例では、基板12の上部には開口部が設けられ、当該開口部をリッド14で覆うことにより収容室16が形成されている。収容室16は、例えば、減圧雰囲気(真空状態)である。なお、収容室16は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気であってもよい。」

「【0036】
リッド14は、基板12の開口部を覆っている。リッド14の形状は、例えば、板状である。リッド14としては、例えば、基板12と同じ材質の板部材(例えばセラミックスプレート)や、コバール、42アロイ、ステンレス鋼などの金属板を用いることができる。リッド14は、例えば、シールリング、低融点ガラス、接着剤などの接続部材18を介して、基板12に接続されている。」

「【0043】
発熱体30は、容器10に収容されている。これにより、発熱体30が容器10の外に配置されている場合と比べて、振動片20を効率よく加熱することができ、低消費電力化を図ることができる。また、装置を小型化することができる。発熱体30は、基板12に配置(搭載)されている。図示の例では、発熱体30は、基板12を構成する8つの層のうちの下から4層目の層の上面に配置されている。発熱体30は、パッド(ランド)64を介して、基板12上に配置されている。発熱体30は、ボンディングワイヤー74を介して、基板12上に設けられた電極(図示せず)と電気的に接続されている。」

「【0046】
発熱体30は、例えば、発熱用ICである。発熱用ICには、例えば、発熱回路と温度センサーとを備えている。発熱回路は、抵抗に電流が流れることで発熱する回路である。なお、発熱回路は、パワートランジスター等の電力を入力することで発熱する素子であってもよい。温度センサーは、振動片20に近在して設置され、温度に応じた信号を出力する。温度センサーは、例えば、ダイオードやサーミスターによって構成されている。」

「【0053】
第2層44は、第1層42上に形成されている。図示の例では、第2層44は、第1層42の全面を覆っている。第2層44は、振動片20から放射される熱(赤外線)を反射させることができる。なお、赤外線とは、波長が0.7μm以上1000μm以下の電磁波をいう。なお、第2層44は、第1層42の上面43aのみに配置されていてもよい。また、第1層42が赤外線に対して透明な部材である場合、第2層44は、第1層42の下面43b(上面43aとは反対側の面)のみに配置されていてもよい。
【0054】
第2層44の材質は、赤外線に対する反射率が大きい材料であることが好ましい。具体的には、第2層44の材質は、例えば、Au(0.98)、Ag(0.97?0.98(純粋な磨いた銀))、Cu(0.93(工業用の磨いた銅))、Al(0.94?0.96(磨いた面))のいずれかの金属、またはAu、Ag、Cu、Alのいずれかを主成分とする合金である。なお、括弧内の数値は、8?14μmの波長の電磁波に対する各元素の反射率を示している。第2層44の材質がAu、Ag、Cu、Alのいずれかを主成分とする合金である場合、副成分は、例えば、主成分以外の金属である。第2層44は、例えば、めっきや、スパッタ法、真空蒸着法により形成される。なお、第1層42を水晶とし、第2層44をAuとした場合、下地層としてCrやNiを用いてもよい。すなわち、Auで構成されている第2層44を、CrまたはNiで構成された下地層を介して第1層42上に形成してもよい。」

「【0057】
電子素子50は、基板12に配置(搭載)されている。図示の例では、電子素子50は、基板12を構成する7つの層のうちの下から2層目の層の上面に配置されている。電子素子50は、基板12の凹部の内底面に配置されている。電子素子50は、接着剤等の接続部材(図示せず)で基板12に接続されている。電子素子50の上面には、複数の電極パッド(図示せず)が設けられている。電子素子50の上面に設けられた各電極パッドと、基板12に設けられている各電極とは、ボンディングワイヤー76を介して、電気的に接続されている。
【0058】
電子素子50は、温度特性を持つ(温度により出力信号が変動する)素子である。電子素子50は、例えば、発振用ICである。発振用ICには、例えば、発振用回路と温度制御用回路とが含まれている。」

「【0073】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係る電子部品について、図面を参照しながら説明する。図6は、第3実施形態に係る電子部品300を模式的に示す断面図である。以下、第3実施形態に係る電子部品300において、第1実施形態に係る電子部品100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、以下の説明では、図6中の上側を「上」、下側を「下」として説明する。また、図6中の各部材の上側にある面を「上面」、下側にある面を「下面」として説明する。
【0074】
電子部品300は、図6に示すように、反射部310を含んで構成されている。
【0075】
反射部310は、容器10(リッド14)と振動片20との間に配置されている。反射部310は、容器10の、振動片20の上面(遮蔽板40が配置されている側の面と反対の面)と向き合う面、すなわち、図示の例では、リッド14の下面(収容室16を規定する面)に配置されている。反射部310は、例えば、リッド14の下面の全面に形成されている。
【0076】
反射部310と振動片20との間には、空隙が設けられている。反射部310は、振動片20に向き合って配置されている。図示の例では、振動片20の上面と反射部310とが向き合って(対向して)いる。
【0077】
反射部310は、平面視で振動片20と重なるように配置されている。振動片20は、平面視で反射部310の外周以内に配置されている。なお、振動片20が、平面視で反射部310の外周以内に配置されているとは、振動片20の外周の全部が平面視で反射部310よりも内側にある場合と、振動片20の外周の一部が平面視で反射部310の外周の一部と重なり、かつ、振動片20の外周の他の一部が平面視で反射部310の内側にある場合と、振動片20の外周の全部が平面視で反射部310の外周と重なるとともに、振動片20の外周よりも内側の領域が反射部310の外周の内側にある場合と、を含む。
【0078】
反射部310の赤外線の反射率は、リッド14の赤外線の反射率よりも大きい。ここで、リッド14の赤外線の反射率は、リッド14の、振動片20側を向く面(リッド14の下面)であって、平面視で反射部310と重なる領域の赤外線の反射率である。
【0079】
反射部310の材質は、赤外線に対する反射率が大きい材料であることが好ましい。反射部310の材質としては、例えば、遮蔽板40の第2層44の材質として例示したものを用いることができる。反射部310は、例えば、めっきや、スパッタ法、真空蒸着法により形成される。反射部310は、例えば、リッド14を金めっきすることで形成された金めっき膜であってもよい。
【0080】
電子部品300では、振動片20から放射された赤外線の少なくとも一部は、反射部310によって反射されるため、容器10を介して電子素子50に伝わる熱を低減させることができる。これにより、電子素子50の温度上昇を低減させることができ、周波数安定度をより向上させることができる。」



・段落【0032】によれば、電子部品は、容器10と、振動片20と、発熱体30と、を含み、段落【0033】によれば、容器10は、基板12と、リッド14と、を含んで構成されているから、電子部品は、基板12と、リッド14と、振動片20と、発熱体30と、を含む。
また、段落【0034】によれば、基板12は凹部を有し、凹部内の空間(収容室)16に振動片20、発熱体30が収容され、基板12の上部には開口部が設けられ、当該開口部をリッド14で覆うことにより収容室16が形成され、収容室16は、真空状態である。
してみると、電子部品は、凹部を有する基板12、凹部内の空間(収容室)16に収容される振動片20、発熱体30、基板12の上部には設けられた開口部を覆うことにより収容室16を形成するリッド14を有し、収容室16は真空状態であるといえる。
・段落【0043】によれば、発熱体30が振動片20を加熱し、段落【0046】によれば、発熱体30は発熱用ICであるから、発熱体30は発熱用ICであり振動片20を加熱する。
・段落【0075】によれば、反射部310は、リッド14の下面(収容室16を規定する面)の全面に形成され、段落【0080】によれば、振動片20から放射された赤外線は、反射部310によって反射されるから、振動片20から放射された赤外線を反射する反射部310がリッド14の下面(収容室16を規定する面)の全面に形成される。
・段落【0054】によれば、第2層44の材質は、Au、Ag、Cu、Alのいずれかであり、段落【0079】によれば、反射部310の材質としては、第2層44の材質として例示したものを用いることができるから、反射部310はAu、Ag、Cu、Alのいずれかから成る。
・段落【0074】によれば、電子部品300は、反射部310を含んで構成されている。

イ 引用文献2に記載された発明
以上のことから、引用文献2には、第3実施形態の「電子部品300」として、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

「凹部を有する基板12、
凹部内の空間(収容室)16に収容される振動片20、発熱体30、
基板12の上部に設けられた開口部を覆うことにより収容室16を形成するリッド14を有し、
収容室16は真空状態であり、
発熱体30は発熱用ICであり振動片20を加熱し、
振動片20から放射された赤外線を反射する反射部310がリッド14の下面(収容室16を規定する面)の全面に形成され、
反射部310はAu、Ag、Cu、Alのいずれかから成る、
電子部品300。」

(3)引用文献3
ア 引用文献3の記載事項
引用文献3には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)
「そして、第5図に示すように、キャップ5を取り付けた半導体装置を樹脂6によりモールドし、半導体装置のパッケージを終了する。この樹脂モールドにおいて、内部配線部1aはキャップ5により既に外部から隔絶されているため、樹脂6が上部の配線3bと下部の配線3aとの交差部の空間4内に侵入することはない。このため、樹脂モールドにおいても内部配線間に空間4を確保することができ、エアブリッジ構造による寄生容量低減機能を維持することができる。」(明細書第6頁第20行-第7頁第9行)

イ 引用文献3に記載された技術事項
上記記載事項から、引用文献3には、以下の技術(以下、「引用文献3記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「キャップを取り付けた半導体装置を樹脂によりモールドすること。」

(4)引用文献4
ア 引用文献4の記載事項
引用文献4には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)
「【0008】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子部品装置の断面を示す断面図である。
【0009】
同図に示す電子部品装置において、素子機能部1と、この素子機能部1と配線を介して接続された電極パッド2が、Si基板からなる素子基板3に形成されている。素子基板3はキャビティ構造を有し、素子機能部1の裏側には中空部4が設けられている。この中空部4を下から封止するようにして、回路基板5がエポキシ系のダイボンド材6で素子基板3と機械的(構造的に)接合されており、さらにボンディングワイヤ7を介して回路基板5と素子基板3とが電気的にも接続されている。一方、素子機能部1は、その周囲をダム8で取り囲まれている。このダム8にはキャップ9が接合されており、素子機能部1の上方に空隙10が形成されるように素子機能部1を封止している。そして、封止樹脂11によって、被覆されている。なお、回路基板5の裏面には、外部電極12が設けられており、ボンディングワイヤ7を介して素子機能部1と外部との電気信号の入出力が行われる。このような電子部品装置において、ダム8は、素子基板3とキャップ9とを構造的(機械的)に接合し、さらには封止樹脂11の進入を防止する。」

「【0015】
封止樹脂11は、素子基板3、キャップ9及び回路基板5で構成される複合体を環境ストレス及び機械的ストレスから保護する機能を有する保護膜である。封止樹脂11として、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を使用することができる。」

イ 引用文献4に記載された技術事項
上記記載事項から、引用文献4には、以下の技術(以下、「引用文献4記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「素子機能部と電極パッドが素子基板に形成され、回路基板が素子基板と機械的(構造的に)接合された電子部品装置において、素子機能部はその周囲をダムで取り囲まれ、ダムにキャップが接合されており、素子機能部の上方に空隙が形成されるように素子機能部を封止し、封止樹脂によって被覆され、素子基板、キャップ及び回路基板で構成される複合体を環境ストレス及び機械的ストレスから保護すること。」

(5)引用文献5
ア 引用文献5の記載事項
引用文献5には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)
「【0019】
図1に示すように、デバイス封止体1は、基板2と、基板2に実装された弾性表面波デバイス10と、弾性表面波デバイス10を封止するように基板2上に形成された樹脂層3と、樹脂層3に積層された接着層4と、接着層4に積層された耐湿層5とを備えている。
【0020】
弾性表面波デバイス10は、圧電基板である弾性表面波チップ11と、弾性表面波チップ11上に形成された電極指12と、電極指12を囲繞するように弾性表面波チップ11上に形成された中空構造体13とを有している。
中空構造体13は、例えば永久レジスト等を用いたパターニングによって弾性表面波チップ11上に形成することができる。また、中空構造体13によって形成された空間層Cの内部には、規則的に配置された電極指12を有するインターデジタル変換器(Inter Digital Transducer, IDT)が設けられ、弾性表面波の伝播領域になっている。」

「【0022】
樹脂層3は、弾性表面波デバイス10の外面に密着するように形成された樹脂による層であり、周知の樹脂モールドを適宜採用することができる。また、弾性表面波デバイス10が樹脂層3で封止された構造体が弾性表面波デバイス本体15である。」

イ 引用文献5に記載された技術事項
上記記載事項から、引用文献5には、以下の技術(以下、「引用文献5記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「基板と、弾性表面波チップと、電極指と電極指を囲繞するように弾性表面波チップ上に形成された中空構造体とを有し基板に実装された弾性表面波デバイスと、弾性表面波デバイスを封止するように基板上に形成された樹脂層を設けること。」

3 当審の判断
(1)取消理由1(新規性)について
本件訂正により、それぞれ独立形式で記載された請求項3および4は削除され、請求項3に係る取消理由1はその対象が存在しないものとなった。
また、本件訂正により、請求項5ないし13は請求項3および4に従属しない請求項となった。
したがって、請求項5ないし13は、取消理由1を通知していない請求項1のみに従属した請求項であり、本件発明5ないし13は取消理由1の対象外のものとなった。

(2)取消理由2(進歩性)について
ア 引用文献1に記載された発明に基づく進歩性について
(ア)本件発明1と引用発明1との対比
a 引用発明1の「素子配置用凹部14が形成され」た「基板1」は、本件発明1の「基板」に相当する。そして、引用発明1の「素子配置用凹部14に配置されたASIC素子である電子素子7」は作動中に発熱するのは明らかであるから、本件発明1の「前記基板上に形成された発熱部」に相当する。

b 引用発明1の「素子配置用凹部14は、真空とされた空間である空隙領域145を含」むから、引用発明1の「素子配置用凹部14のすべてを覆っている」「シールチップ4」は、本件発明1の「前記基板の上方に、前記基板との間に中空部を持つように形成されたキャップ基板」に相当する。

c 引用発明1の「シールチップシールド層44」は「シールチップ4」に設けられ「Cuからなる」から、「電子素子7」の上方に設けられたCu層である。
ここで、本件の明細書段落【0047】の「すなわち、反射膜9の反射率を大きくすればよい。よって、中波長赤外線領域における反射率が0.9以上であるのが望ましい。・・・具体的には、Al、黄銅、Cu・・・などである。」との記載を考慮すれば、Cu層は中波長赤外線を反射する。
してみると、引用発明1の「シールチップシールド層44」は、本件発明1の「前記発熱部の上方に中波長赤外線を反射する反射膜」に相当する。

d 本件発明1は「少なくとも前記キャップ基板を覆うモールド樹脂」を備えるのに対して、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。

e 本件発明1は「前記基板上に、前記発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、前記中空部が、前記絶縁膜と前記キャップ基板との間に形成され、前記反射膜が、前記絶縁膜上に形成された」のに対して、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。

f 引用発明1の「電子装置」は「ASCI素子である電子素子7」を有するものであるから、「半導体装置」といい得るものである。

(イ)一致点及び相違点
したがって、本件発明1と引用発明1とは、以下の一致点と相違点とを有する。
〈一致点〉
「基板と、
前記基板上に形成された発熱部と、
前記基板の上方に、前記基板との間に中空部を持つように形成されたキャップ基板と、
前記発熱部の上方に中波長赤外線を反射する反射膜と、
を備えた半導体装置。」

〈相違点1〉
本件発明1は「少なくとも前記キャップ基板を覆うモールド樹脂」を備えるのに対して、引用発明1はその旨特定されていない点

〈相違点2〉
本件発明1は「前記基板上に、前記発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、前記中空部が、前記絶縁膜と前記キャップ基板との間に形成され、前記反射膜が、前記絶縁膜上に形成された」のに対して、引用発明1はその旨特定されていない点

(ウ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
引用発明1は、反射膜(Cuからなる層であるシールチップシールド層44)がキャップ基板(シールチップ4)の裏面42または主面41に形成されたものであり、引用発明1において、あえて発熱部(電子素子7)が形成された基板(基板1)上に発熱部を覆うように絶縁膜を形成し、反射膜を絶縁膜上に形成する理由は存在しない。
また、基板上に発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、反射膜が前記絶縁膜上に形成された構成とすることは、引用文献3ないし5には記載されておらず周知技術であるとも認められない。
よって、相違点2に係る本件発明1の構成は、引用発明1に基づいて当業者が容易に採用し得たものではない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1及び引用文献3ないし5に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 引用文献2に記載された発明に基づく進歩性について
(ア)本件発明1と引用発明2との対比
a 引用発明2の「凹部を有する基板12」は、本件発明1の「基板」に相当する。そして、引用発明2の「凹部内の空間(収容室)16に収容される振動片20」は、「発熱体30」により加熱されるものであり発熱しているのは明らかであるから、本件発明1の「前記基板上に形成された発熱部」に相当する。

b 引用発明2の「基板12の上部に設けられた開口部を覆うことにより収容室16を形成するリッド14」は、本件発明1の「前記基板の上方に、前記基板との間に中空部を持つように形成されたキャップ基板」に相当する。

c 引用発明2の「赤外線を反射する反射部310」は「リッド14」に形成され「Au、Ag、Cu、Alからなる」から、「振動片20」の上方に設けられたAu、Ag、Cu、Alからなる層である。
ここで、本件の明細書段落【0047】の「すなわち、反射膜9の反射率を大きくすればよい。よって、中波長赤外線領域における反射率が0.9以上であるのが望ましい。・・・具体的には、Al、黄銅、Cu・・・などである。」との記載を考慮すれば、Au、Ag、Cu、Alからなる層は中波長赤外線を反射する。
してみると、引用発明2の「赤外線を反射する反射部310」は、本件発明1の「前記発熱部の上方に中波長赤外線を反射する反射膜」に相当する。

d 本件発明1は「少なくとも前記キャップ基板を覆うモールド樹脂」を備えるのに対して、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。

e 本件発明1は「前記基板上に、前記発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、前記中空部が、前記絶縁膜と前記キャップ基板との間に形成され、前記反射膜が、前記絶縁膜上に形成された」のに対して、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。

f 引用発明2の「電子部品300」は「発熱用IC」である「発熱体30」を有するものであるから、「半導体装置」といい得るものである。

(イ)一致点及び相違点
したがって、本件発明1と引用発明2とは、以下の一致点と相違点とを有する。
〈一致点〉
「基板と、
前記基板上に形成された発熱部と、
前記基板の上方に、前記基板との間に中空部を持つように形成されたキャップ基板と、
前記発熱部の上方に中波長赤外線を反射する反射膜と、
を備えた半導体装置。」

〈相違点3〉
本件発明1は「少なくとも前記キャップ基板を覆うモールド樹脂」を備えるのに対して、引用発明2はその旨特定されていない点

〈相違点4〉
本件発明1は「前記基板上に、前記発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、前記中空部が、前記絶縁膜と前記キャップ基板との間に形成され、前記反射膜が、前記絶縁膜上に形成された」のに対して、引用発明2はその旨特定されていない点

(ウ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点4について検討する。
引用発明2は、反射膜(反射部310)がキャップ基板(リッド14)の下面に形成されたものであり、引用発明2において、あえて発熱部(振動片20)が収容される基板(凹部を有する基板12)上に発熱部を覆うように絶縁膜を形成し、反射膜を絶縁膜上に形成する理由は存在しない。
また、基板上に発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、反射膜が前記絶縁膜上に形成された構成とすることは、引用文献3ないし5には記載されておらず周知技術であるとも認められない。
よって、相違点4に係る本件発明1の構成は、引用発明2に基づいて当業者が容易に採用し得たものではない。
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2及び引用文献3ないし5に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)取消理由3について
本件訂正により、請求項3および4は削除され、請求項3および4に係る取消理由3はその対象が存在しないものとなった。
また、本件訂正により、請求項5ないし13は請求項3および4に従属しない請求項となった。
したがって、本件発明5ないし13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

(4)取消理由4について
本件訂正により、請求項1の「前基板」との記載は「前記基板」となり、本件発明1は明確なものとなったから、請求項1および請求項1に直接又は間接的に従属する請求項5ないし13に係る取消理由4は解消した。
また、本件訂正により、請求項3および4は削除されるとともに、請求項5ないし13は請求項3および4に従属しない請求項となったので、請求項3、4および、請求項3、4に直接又は間接的に従属する請求項5ないし13に係る取消理由4はその対象が存在しないものとなった。
したがって、本件発明1および本件発明5ないし13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立て理由の概要
(1)申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性について)
訂正前の請求項2、10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2、10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)申立理由2(甲第2号証に基づく進歩性について)
訂正前の請求項2、10、13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2、10、13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
また、訂正前の請求項12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証および甲第6号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)申立理由3(サポート要件について)
訂正前の請求項1、3、4には、「前記発熱部の上方に中波長赤外線を反射する反射膜と、」の記載がある。
この記載によれば、「反射膜」は、中波長赤外線を、「発熱部」の上方に向けて反射するものと解され、請求項1、3、4に係る「反射膜」は、「発熱部」の上方に配された「モールド樹脂」に向けて、中波長赤外線を反射する態様を含み、「モールド樹脂」の温度は上昇すると考えられる。
このため、請求項1、3、4の記載は、本件明細書の段落【0006】に記載された「モールド樹脂の温度上昇を抑えた半導体装置を提供する」ための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。

(4)申立理由4(明確性について)
訂正前の請求項1、3、4には、「前記発熱部の上方に中波長赤外線を反射する反射膜と、」の記載がある。
当該記載は、「上方に」が「反射する」を修飾して中波長赤外線の反射方向を特定するのか、「反射膜」を修飾して「反射膜」が形成された位置を特定するのか不明確である。

(5)証拠一覧
甲第1号証:特開2016-143782号公報(引用文献1)
甲第2号証:特開2016-167659号公報(引用文献2)
甲第6号証:熱物性ハンドブック、日本熱物性学会編、株式会社養賢堂発行、第1版、1990年5月30日、24?25頁、192?193頁、262?263頁

2 各甲号証の記載事項
(1)甲第1号証
甲第1号証の記載事項に関しては、上記「第4」の「2(1)ア」の「引用文献1の記載事項」に記載したとおりである。
そして、甲第1号証に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)は、上記「第4」の「2(1)イ」の「引用発明1」と同一である。

(2)甲第2号証
甲第2号証の記載事項に関しては、上記「第4」の「2(2)ア」の「引用文献2の記載事項」に記載したとおりである。
そして、甲第2号証に記載された発明(以下、「甲2発明」という。)は、上記「第4」の「2(2)イ」の「引用発明2」と同一である。

(3)甲第6号証
ア 甲第6号証の記載事項
甲第6号証の192?193頁には、ステンレス鋼の熱伝導率が10.9?29.3W/(m・K)であることが、263頁には、炭化ケイ素の熱伝導率が47?270W/(m・K)であることが記載されている。

イ 甲第6号証に記載された技術事項
上記記載事項から、甲第6号証には、以下の技術(以下、「甲第6号証記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「ステンレス鋼の熱伝導率は炭化ケイ素の熱伝導率より低いこと。」

3 当審の判断
(1)申立理由1について
ア 請求項2について
本件訂正により、請求項2は削除され、請求項2に係る申立てはその対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。

イ 請求項10について
請求項10は、請求項9に従属する請求項であるから、本件訂正により訂正された請求項1に間接的に従属する請求項である。
ここで、上記「第4」の「3(2)ア(イ)」のとおり、本件発明1と引用発明1とは相違点2を有するから、本件発明10と甲1発明とは、相違点2を有する。
そして、上記「第4」の「3(2)ア(ウ)」で検討したように、相違点2に係る本件発明10の構成は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)申立理由2について
ア 請求項2について
本件訂正により、請求項2は削除され、請求項2に係る申立てはその対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。

イ 請求項10、13について
請求項10は、請求項9に従属する請求項であり、請求項13は、請求項1、5?12に従属する請求項であるから、請求項10および13はいずれも、令和2年12月10日にされた訂正請求により訂正された請求項1に直接または間接的に従属する請求項である。
ここで、上記「第4」の「3(2)イ(イ)」のとおり、本件発明1と引用発明2とは、相違点4を有するから、本件発明10および本件発明13と甲2発明とはそれぞれ、相違点4を有する。
そして、上記「第4」の「3(2)イ(ウ)」で検討したように、相違点4に係る本件発明10および本件発明13の構成は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 請求項12について
請求項12は、請求項1、5?11に従属する請求項であるから、本件訂正により訂正された請求項1に直接または間接的に従属する請求項である。
ここで、上記「第4」の「3(2)イ(イ)」のとおり、本件発明1と引用発明2とは、相違点4を有するから、本件発明12と甲2発明とは、相違点4を有する。
また、上記「2(3)イ」のように、甲第6号証には、ステンレス鋼の熱伝導率は炭化ケイ素の熱伝導率より低いことが記載されるものの、「前記基板上に、前記発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、前記中空部が、前記絶縁膜と前記キャップ基板との間に形成され、前記反射膜が、前記絶縁膜上に形成された」構成(相違点4に係る構成)とすることは、甲第6号証には記載されていない。
以上のことより、上記「第4」の「3(2)イ(ウ)」での検討を考慮すると、相違点4に係る本件発明12の構成は、甲2発明および甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立理由3について
ア 請求項1について
本件訂正により訂正された請求項1には、「前記発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、・・・中略・・・前記反射膜が、前記絶縁膜上に形成された」と記載されている。
当該記載によれば、「反射膜」が「絶縁膜」の上方に形成されていることが明らかである。
してみると、訂正された請求項1の「前記発熱部の上方に中波長赤外線を反射する反射膜と、」の記載は、「中波長赤外線を反射する反射膜」が「発熱部」の上方に位置することを表しているものと認められる。
そして、「発熱部」の上方に位置する「反射膜」により中波長赤外線は反射されるから、「発熱部」の上方に配された「モールド樹脂」の温度が反射された中波長赤外線により上昇するとは認められない。
したがって、請求項1は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものではない。

イ 請求項3および4について
本件訂正により、請求項3および4は削除され、請求項3および4に係る申立てはその対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。

(4)申立理由4について
ア 請求項1について
上記「(3)ア」で検討したように、訂正された請求項1の「前記発熱部の上方に中波長赤外線を反射する反射膜と、」の記載は、「中波長赤外線を反射する反射膜」が「発熱部」の上方に位置することを表しているものと認められる。
したがって、当該記載が不明瞭であるとはいえない。

イ 請求項3および4について
本件訂正により、請求項3および4は削除され、請求項3および4に係る申立てはその対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。

第6 むすび
以上のとおり、請求項1、5ないし13に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1、5ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2ないし4に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項2ないし4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論とのとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体装置
【技術分野】
【0001】
この発明は中空部を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを内蔵するパッケージとして、モールド樹脂で封止するプラスチックパッケージが利用されている。プラスチックパッケージは、セラミックを用いて封止するセラミックパッケージに比べて廉価であるという利点がある。しかし、モールド樹脂はセラミックに比べて耐熱温度が低いため、半導体チップ内の発熱部からの発熱により、半導体チップと接するモールド樹脂の温度が耐熱温度付近以上に上がることがある。その結果、モールド樹脂が炭化して、半導体チップとの界面から剥離するなどの問題があった。
【0003】
モールド樹脂の温度上昇を抑えるために、特許文献1?3に例示された中空部を有した封止構造を用いることは有効である。中空部が半導体チップの発熱部分とモールド樹脂との間を断熱するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 実開平1-145133号公報
【特許文献2】 特開2006-237405号公報
【特許文献3】 特開2011-18671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、半導体チップからの発熱量が多い場合には、中空部を有した封止構造を用いたとしても、発熱部から放射される赤外線が中空部を介してモールド樹脂に吸収され、モールド樹脂の温度が高くなるという問題がある。このため、発熱量が多い高出力半導体デバイスなどではモールド樹脂を用いたプラスチックパッケージが使えず、中空部を有したセラミックパッケージを使わなければならない場合があり、パッケージ価格がプラスチックパッケージに比べて高くなってしまう。
【0006】
この発明は上述した問題を解決するためになされたもので、モールド樹脂の温度上昇を抑えた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の半導体装置は、基板と、前記基板上に形成された発熱部と、前記基板の上方に、前記基板との間に中空部を持つように形成されたキャップ基板と、前記発熱部の上方に中波長赤外線を反射する反射膜と、少なくとも前記キャップ基板を覆うモールド樹脂と、を備え、前記基板上に、前記発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、前記中空部が、前記絶縁膜と前記キャップ基板との間に形成され、前記反射膜が、前記絶縁膜上に形成された。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、中空部を有する半導体装置において、モールド樹脂の温度上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1の半導体装置を示す断面図である。
【図2】実施の形態1の半導体装置を示す断面図である。
【図3】実施の形態1の半導体装置を示す上面図である。
【図4】実施の形態1の半導体装置の変形例を示す断面図である。
【図5】実施の形態1の半導体装置をパッケージ化した状態を示す断面図である。
【図6】実施の形態1の半導体装置に使用する基板を加工する工程を示す断面図である。
【図7】実施の形態1の半導体装置に使用するキャップ基板を加工する工程を示す断面図である。
【図8】実施の形態1の半導体装置をパッケージ化する工程を示す断面図である。
【図9】シミュレーションに用いた中空部を有しない構造を示す斜視図である。
【図10】シミュレーションに用いた中空部を有しない構造を示す断面図である。
【図11】シミュレーションに用いた中空部を有する構造を示す断面図である。
【図12】中空部を有する構造の発熱部の温度分布を示すグラフである。
【図13】実施の形態2の半導体装置を示す断面図である。
【図14】実施の形態3の半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
[構成]
実施の形態1の半導体装置1の構成について説明する。図1および図2は半導体装置1の断面図であり、それぞれ図3におけるAA断面およびBB断面である。図3は半導体装置1の上面図である。ただし図3ではキャップ基板3や反射膜9等の図示を省略している。
【0011】
図1および図2に示すように、基板2の上に発熱部4が形成されている。基板2は材料がSiCであり、厚さが100μm程度である。図示していないが、鏡面にした基板2の上面にエピタキシャル成長させたGaN層やAlGaN層を用いて能動素子であるHEMT(High Electron Mobility Transistor)が形成されており、GaN層とAlGaN層の界面にはチャネルが形成されている。ここでは発熱部4はこのチャネルである。HEMTには、ゲート電極5、ソース電極6、ドレイン電極7が形成されており、それぞれ電極パッド13?15に電気的に接続されている。これらの電極の長さは50?100μm程度であり、幅はゲート電極5が1本当たり1?5μm程度、ソース電極6とドレイン電極7がどちらも10?50μm程度である。
【0012】
なお、ここでは半導体装置にはHEMTが1つのみ含まれる場合を示したが、HEMTが2つ以上含まれてもよい。また、基板2はSiC基板である必要はなく、GaAsやSi、SiGe、GaN、InPなどの基板でもよい。また能動素子はMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やHFET(Heterostructure Field Effect Transistor)、バイポーラトランジスタなどであってもよい。また、抵抗やキャパシタ、インダクタなどの受動素子を含み、それらと能動素子が電気回路を構成してもよい。
【0013】
基板2にはビア22が形成されている。ビア22はソース電極パッド14および裏面電極21と電気的に接続されている。基板2の上には接合パッド11が発熱部4を囲むように設けられ、接合パッド11の上に封止枠18が設けられている。さらに、ゲート電極パッド13、ドレイン電極パッド15の上にはバンプ19が設けられている。
【0014】
基板2の上には発熱部4を覆うように絶縁膜8が形成されている。ここでは絶縁膜8はバンプ19、封止枠18を除いた全領域に形成されている。
【0015】
絶縁膜8の上には反射膜9が設けられている。平面視で、反射膜9は絶縁膜8よりも狭い領域に形成されている。反射膜8は赤外線を反射する性質を持ち、平面視で、発熱部4とほぼ重なるように配置されている。
【0016】
封止枠18、バンプ19に支えられるようにしてキャップ基板3が設けられている。キャップ基板3は材料がSiであり、厚さが100μm程度である。キャップ基板3にはビア23が形成されている。ゲート電極5およびドレイン電極7はバンプ19、電極パッド16を介して、キャップ基板3の上面に設けられた電極24に取り出されている。基板2とキャップ基板3の間には中空部10があり、その高さは10μm程度である。中空部10は絶縁膜8、封止枠18、キャップ基板3によって囲まれており、気密性が保たれている。
【0017】
なお、実施の形態1の半導体装置1ではキャップ基板3の下面は全面が平面になっているが、封止枠18の高さが十分に取れない場合には、図4に示すようにキャップ基板3を凹形状にすることで中空部10を確保する構造でもよい。ここではキャップ基板3は基板2の上に設けた封止材25上に載っており、封止材25は樹脂で出来ている。
【0018】
また、実施の形態1の半導体装置1ではキャップ基板3は基板2の表面を全て覆うように形成されているが、必ずしも全面を覆っている必要はなく、発熱部4の上方に密閉された中空部10を持つ構造であればよい。
【0019】
また、キャップ基板3に配線以外のエレメントを形成してもよく、例えば基板2の上に形成したHEMTを含む電気回路用の整合回路を形成してもよい。さらに、キャップ基板3の材料としてエピタキシャル成長面のある半導体基板を用いてもよく、キャップ基板3にトランジスタ等の能動素子やエピタキシャル抵抗を形成し、これらを用いて電気回路を構成してもよい。
【0020】
次に、半導体装置1をパッケージ化した構成について説明する。図5は半導体装置1がパッケージ化された状態を示す断面図である。裏面電極21の下にAuSnはんだ等によるダイボンド材30を介してベース26が接合されている。ベース26はソース電極6を電気的に外部に接続するために用いられる。ベース26には放熱材としての役目もあるため、放熱特性のよい部材が適しており、材料として例えばCuWを用いる。また、ドレイン電極7、ソース電極6を電気的に外部に接続するために、リード27がワイヤ28を介して、キャップ基板3の上面に形成された電極24と電気的に接続されている。
【0021】
半導体装置1の周囲には、半導体装置1を封止したモールド樹脂29が形成されている。モールド樹脂29によって封止されることで、半導体装置1が外部から保護される。
【0022】
ここで、100W程度の発熱が想定される半導体装置の場合について述べる。図3ではゲート電極5が2本の場合を示しているが、100W程度の発熱が想定される半導体装置の場合は、ゲート電極の長さが500μm程度、ゲート電極の本数が50?100本程度となる。そうするとHEMTの幅は2?4mmとなる。
【0023】
上記のように100W程度の発熱がある場合、発熱部の温度は100?300℃程度となる場合がある。ウィーンの変位則によると、黒体放射のピーク波長λ(μm)はTを温度(℃)として次式で与えられる。
λ=2896/(T+273)
発熱部4からの放射のピーク波長も近似的にこの式に従うとすると、温度が100?300℃の場合にはピーク波長は5.1?7.8μmである。この範囲の波長は中波長赤外線(3?8μm)に分類される。
【0024】
[製造方法]
実施の形態1の半導体装置1の製造方法、および、半導体装置1をモールド樹脂で封止する方法について説明する。
【0025】
基板2対する加工を図6に沿って説明する。図6は図3におけるBB断面である。基板2の上には、図示していないが、すでにGaN層やAlGaN層が積層されているものとする。まず、図6(a)のように基板2上面に、ゲート電極5、ソース電極6、ドレイン電極7、接合パッド11、電極パッド13?15を形成する。ただし、図2では断面に電極パッド13および15が現れないため、これらの電極パッドを図示していない。接合パッド11、電極パッド13?15は、封止枠18やバンプ19が、基板2に対して密着性が悪い場合や、基板2に拡散する材料である場合に、その対策のために形成するものである。例えば、封止枠18やバンプ19の材料がAuである場合には、それらとのコンタクト面をAuにしておくのがよいため、レジストパターニング後に、蒸着でTi、Auを順次形成したあと、リフトオフによりパターンを形成する。金属の構成は、例えばTiを50nm形成したあとAuを500nm形成したものとする。Tiはキャップ基板3との密着性とバリア性の確保、Auは封止枠18やバンプ19との密着性確保のために用いる。ここでは、AuやAuSnを封止枠18やバンプ19の材料とした場合で説明を行うため、接合パッド12、電極パッド16の表面もAuとしているが、封止枠18やバンプ19の材料に他の金属を用いる場合には、それに合わせて接合パッド11、電極パッド13?15の最表面の金属材料を選択する必要がある。
【0026】
次に、図6(b)のように絶縁膜8と反射膜9を形成する。絶縁膜8の形成のために、まず感光性のポリイミド材をウェハ全面に塗布し、フォトマスクで露光、現像をして、封止枠18およびバンプ19の形成箇所に開口を作製する。その後、窒素雰囲気中、200℃?300℃で1時間程度ベークを行うとポリイミド材の溶媒が抜け、同時に架橋反応によりイミド化し、永久膜としての絶縁膜8が形成される。次に、反射膜9を発熱部4の上方、絶縁膜の上に形成する。反射膜9はAuを材料として蒸着リフトオフにより形成する。あるいは、メタルスパッタリング法により全面に形成したのち、レジストパターニングを行い、イオンミリング法などにより不要部分を除去する方法などで形成してもよい。
【0027】
次に、図6(c)のように基板2の裏面側を削って薄板化する。基板2を研削したのち、ダメージ層をポリッシュにより除去する。基板2の厚さは例えば100μm程度にする。
【0028】
次に、図6(d)のようにビア22と裏面電極21の形成を行う。基板2の薄板化加工した面にレジストパターニングし、ウェットまたはドライエッチングによりビア22の形成を行う。そして、基板2の下面に裏面電極21を形成する。スパッタや蒸着ではビア22の中に厚い金属膜を得ることが困難であるため、例えば、スパッタでTi、Auを連続成膜してから、さらにAuを電気めっきにより数μm程度めっきする。パターニングは、例えば、めっき後にレジストでパターニングし、ウェットエッチングやミリングにより、不要部分を取り除く。
【0029】
次に、図6(e)のようにAuを材料として封止枠18およびバンプ19を同時に形成する。ただし図6(e)では、断面上にバンプ19が存在しないため、バンプ19は図示していない。レジストで封止枠18の箇所とバンプ19の箇所を除いてパターニングしてから、スパッタでシード層としてAuを300nmの厚さに形成して、さらにもう1層レジストで封止枠18の箇所とバンプ19の箇所を除いてパターニングし、封止枠18とバンプ19のシード層を露出する。露出部に対して電解Auめっきを行い、同じ高さの封止枠18およびバンプ19を形成する。その後、レジスト除去、ミリング、レジスト除去を順次行うと、封止枠18およびバンプ19が完成する。なお、封止枠18とバンプ19は別々に形成してもよく、そうした場合、封止枠18は導電性の金属である必然性はないため、ポリイミドなどの有機素材や、ガラスなどの無機素材で作製してもよい。また形成方法も、無電解めっきでもよいし、金属粒子等の材料を溶媒に混ぜたものを印刷法やインクジェット法によりパターニングしてもよい。
【0030】
以上で基板2に対する加工が完了する。
【0031】
キャップ基板3に対する加工を図7に沿って説明する。図7は図3におけるAA断面である。まず、図7(a)のように接合パッド12、電極パッド16の形成を行う。形成方法として、レジストパターニング後、蒸着リフトオフにより形成する方法やメタルスパッタリング法により全面に形成したのち、レジストパターニングを行い、イオンミリング法などにより不要部分を除去する方法などがある。金属の構成は、例えばTiを50nm形成したあとAuを500nm形成したものとする。Tiはキャップ基板3との密着性とバリア性の確保、Auは封止枠18やバンプ19との密着性確保のために用いる。ここでは、AuやAuSnを封止枠18やバンプ19の材料とした場合で説明を行うため、接合パッド12、電極パッド16の表面もAuとしているが、封止枠18やバンプ19の材料に他の金属を用いる場合には、それに合わせて接合パッド12、電極パッド16の最表面の金属材料を選択する必要がある。
【0032】
次に、図7(b)のようにキャップ基板3の上面側を削って薄板化する。キャップ基板3を研削したのち、ダメージ層をポリッシュにより除去する。キャップ基板3の厚さは例えば100μm程度にする。
【0033】
次に、図7(c)のようにビア23と電極24の形成を行う。キャップ基板3の薄板化加工した面にレジストパターニングし、ウェットまたはドライエッチングによりビア23の形成を行う。キャップ基板3の材質によってはレジストとの加工選択比がないため、Ni等の金属材料をレジストの代わりにパターニングする場合もある。そして、キャップ基板3の上面にスパッタでTi、Auを連続成膜してから、Auを電気めっきによりさらに数μm程度めっきすることで電極24を形成する。
【0034】
以上でキャップ基板3に対する加工が完了する。
【0035】
加工が完了した基板2とキャップ基板3をアライメントしてから、昇温、加圧して接合する。ここで示したようにどちらもAuを材料とする封止枠18、バンプ19を、接合パッド12、電極パッド16と接合する場合、両方の接合面にArプラズマを照射して表面を削り、活性化させた状態で接合すると、Au同士の界面が消滅して接合された状態となる。接合状態は、接合面の平坦性が高いほど、接合時の温度が高いほど、接合時の圧力が高いほど良好であり、例えば、平坦性はRa=2?3nm、温度は300℃、圧力は100MPaなどとするとよい。
【0036】
こうして接合された基板2とキャップ基板3をダイシングして中空部10を有する半導体装置1が完成する。
【0037】
さらに、半導体装置1をモールド樹脂29で封止する方法を図8に沿って説明する。まず、図8(a)のように半導体装置1をCuWなどで出来たベース26上にダイボンドする。そして、電極24とリード27の間にワイヤ28で配線をする。ダイボンド材30としては、耐熱性、放熱性の良い材料を選択するとよく、AuSnのはんだや、さらに放熱性の高い焼結Agなどを用いるとよい。
【0038】
次に、図8(b)のようにダイボンドした半導体装置1を金型31にセットして、金型31の中にモールド樹脂29をモールド樹脂注入口32から流し込む。モールド樹脂29は高圧で流し込むことで半導体装置1や金型31との間に隙間なく注入できて、成形を安定化させることができる。
【0039】
最後に図8(c)のように金型31を外して、モールド樹脂29による封止が完了する。
【0040】
[効果]
実施の形態1の半導体装置1に適用した発明による効果を説明する。中空部10は、発熱部4と、キャップ基板3やモールド樹脂29との間を断熱する。そのため中空部10は、発熱部4からの熱がモールド樹脂29に伝わるのを防ぐ役割を持ち、モールド樹脂29の温度上昇を抑える。しかし上述したように、発熱部4からの発熱量が100W程度の場合、発熱部4の温度は100?300℃に達する。温度が100?300℃に達した発熱部4から放射される赤外線がキャップ基板3やモールド樹脂29に吸収され、モールド樹脂29の温度上昇が起こる。
【0041】
ここで、中空部10を設けることによりモールド樹脂29の温度上昇が抑えられることを確認したシミュレーションについて説明する。シミュレーションのモデルとして中空部を有しない構造と、中空部を有する構造を用いた。
【0042】
シミュレーションに用いた中空部を有しない構造について説明する。図9は中空部を有しない構造の斜視図であり、図10は中空部を有しない構造の断面図である。中空部を有しない構造では、85℃に固定したアルミブロック33の上に1mm厚のCuWベース26を配置している。そしてベース26の上に100μm厚のSiC基板2が10μm厚のAuSnダイボンド材30でダイボンドされている。基板2上にはGaN HEMTが形成されており、このHEMTのチャネルを発熱部4としている。なお、HEMTが形成されている層の厚さは薄いとして、基板2の上に本来形成されるエピタキシャル層は省いており、発熱部4は基板2上面の一部に形成されているとしている。HEMTはゲート幅が50.4mm、ゲートフィンガー数が120とし、動作時の発熱量を97Wとした。ベース26および基板2の上部はモールド樹脂29で覆われている。
【0043】
シミュレーションに用いた中空部を有する構造について説明する。図11は中空部を有する構造の断面図である。この構造では、基板2の上部に10μm厚の中空部10を挟んで100μm厚のSiキャップ基板3が形成されている。中空部10には窒素が充満されているとしている。その他の条件は中空部を有しない構造と同一である。
【0044】
シミュレーションを実施した結果、モールド樹脂の最高温度は、中空部を有しない構造では187.97℃、中空部を有する構造では143.00℃であり、中空部を有する構造のほうが大幅に低くなることが分かった。しかし、一般的なモールド樹脂の耐熱温度である150℃に対してマージンがない。ゆえに、モールド樹脂の温度上昇を抑えるためのさらなる対策が必要である。その対策である反射膜の導入による効果を以下に述べる。
【0045】
実施の形態1の半導体装置1のように、反射膜9があれば、発熱部4から放射される赤外線が反射されるため、キャップ基板3やモールド樹脂29で赤外線が吸収される割合が小さくなり、モールド樹脂29の温度上昇がさらに抑えられる。
【0046】
通常、発熱部4の温度はその中心付近が最も高く、周辺に行くに従って温度が低くなる。ステファン・ボルツマンの法則によると、黒体からの放射エネルギーは絶対温度(K)の4乗に比例する。発熱部4からの放射エネルギーも近似的に絶対温度の4乗に比例しているとすると、中心付近からの放射エネルギーが最も大きく、周辺に行くに従って放射エネルギーが小さくなることがわかる。したがって反射膜9は平面視で発熱部4の中心を覆うように配置されるのが望ましい。図12は中空部を有する構造における発熱部4の温度分布をシミュレーションで計算した結果である。この図を見ると、発熱部4のうち温度が高い領域は、発熱部4の中心の8割程度の長さの領域であることが分かる。平面に換算すると温度が高い領域は8割×8割=6.4割程度の面積の領域である。すなわち反射膜9は平面視で少なくとも発熱部4の中心部の6割程度の面積を覆うように配置されているのが望ましい。さらに、少なくとも発熱部4の全面を覆っているのが望ましい。
【0047】
また、反射膜9が効率よく赤外線を反射するのが望ましいため、反射膜9の反射率は高いほうがよい。また、反射率と吸収率の関係は、透過がないとすると、
反射率=1-吸収率
である。さらに、放射に関するキルヒホッフの法則から
吸収率=放射率
である。つまり、
反射率=1-放射率
である。発熱部4からの熱伝導により反射膜9の温度も高くなっているため、反射膜9に放射率の高い材料が使われた場合、反射膜9からの赤外線放射のエネルギーが高くなり、モールド樹脂29の温度上昇が起こる。したがって、この温度上昇を抑えるためには反射膜9の放射率を小さくすればよい。すなわち、反射膜9の反射率を大きくすればよい。よって、中波長赤外線領域における反射率が0.9以上であるのが望ましい。そして、反射膜9の材料として適しているのは、中波長赤外線の反射率が高く、透過率および吸収率の低い金属などである。具体的には、Al、黄銅、Cu、Au、Ni、Pt、Ag、Zn、Pdなどである。また反射膜9として、反射率の高い物質層を含む多層膜を用いてもよい。
【0048】
また、金属に赤外線が入射された場合、赤外線は金属の表面から深さ0.03μm以上にはほとんど到達しないため、反射膜9の材料として金属を用いる場合に、その厚さを0.03μm以上にするのがよい。
【0049】
また反射膜9はその上面も下面(絶縁膜との接着面)も反射率が高いことが望ましいが、どちらかの面のみの反射率が高い場合でも効果を得ることができる。例えば下面のみ反射率が高い場合には、発熱部4から放射される赤外線が反射されるため、モールド樹脂29の温度上昇を抑えることができる。また上面のみ反射率が高い場合には、反射膜9の上面の温度が高くなった場合でも、反射膜9の上面からの赤外線放射のエネルギーが抑えられるため、モールド樹脂29の温度上昇を抑えることができる。反射膜の上面あるいは下面のどちらかの面のみ反射率が高い状況は、反射膜のどちらかの面のみが酸化して層が形成されているような場合に実現される。
【0050】
なお、反射率は反射膜9の下面の表面状態にも依存し、この面が光沢面、鏡面、研磨面などと呼ばれる、表面粗さ(Ra)が数nm?数十nm以下の面であることが望ましい。逆に表面が粗くなるほど反射率は低下するため、表面が酸化するのを防止する目的で、中波長赤外線を透過しやすい絶縁膜(SiOなど)で反射膜9の下面をコーティングしてもよい。
【0051】
また、中空部10は、例えば窒素などの乾燥空気を充満させてもよいが、真空状態とするほうがさらによい。窒素の熱伝導率は0.024W/m・K程度であり、半導体のSiの熱伝導率は168W/m・K程度であるため、窒素の熱伝導率はSiに比べて4桁ほど低くなる。真空状態ではそれより熱伝導率が低くなり、発熱部4からモールド樹脂29への熱伝導がさらに少なくなる。
【0052】
基板2の材料は熱伝導率の高い物が望ましい。発熱部からの放熱経路は基板2の裏面からダイボンド材30を経てベース26へと至る経路であるため、基板2の熱伝導率が高いほど、放熱効率が高くなる。半導体基板の中でもSiC基板は熱伝導率が高く、材料として適している。
【0053】
キャップ基板3の熱伝導率は基板2より低いことが望ましい。発熱部4で発生した熱の一部は熱伝導と放射によりキャップ基板3に到達するが、キャップ基板3の熱伝導率が基板2よりも低いことにより、発熱部4で発生した熱が基板2からベース26へと選択的に多くの熱を逃がすことが可能になり、モールド樹脂29の温度上昇が抑えられる。
【0054】
実施の形態2.
実施の形態2の半導体装置について説明する。実施の形態2の半導体装置と実施の形態1の半導体装置の主な違いは、反射膜が形成された場所にある。ここでは主にその違いを説明する。
【0055】
図13は半導体装置101の断面図である。反射膜9はキャップ基板3の基板2に対向する面上に形成されている。このため、実施の形態1で説明したように反射膜9が、発熱部4から放射される赤外線がキャップ基板3やモールド樹脂29に届くのを防ぐため、モールド樹脂29の温度上昇が抑えられる。ここでは実施の形態1の絶縁膜8が省かれているが、絶縁膜があってもかまわない。
【0056】
なお、反射膜9は反射率の高い物質層を含む2層以上の積層膜でもよく、基板2に最も近い層のみが反射の機能を持てばよい。例えば、キャップ基板3との密着性のよいTiをキャップ基板3と接着する層の材料とし、Tiとの密着性がよく赤外線の反射率も高いAuを基板2に近い層の材料として用いた2層構造にしてもよい。
【0057】
実施の形態3.
実施の形態3の半導体装置について説明する。実施の形態3の半導体装置と実施の形態1の半導体装置の主な違いは、反射膜が形成された場所にある。ここでは主にその違いを説明する。
【0058】
図14は半導体装置201の断面図である。反射膜9はキャップ基板3の基板2に対向する面の反対の面上に形成されている。このため、実施の形態1で説明したように反射膜9が、発熱部4から放射される赤外線がモールド樹脂29に届くのを防ぐため、モールド樹脂29の温度上昇が抑えられる。ここでは実施の形態1の絶縁膜8が省かれているが、絶縁膜があってもかまわない。
【0059】
なお、キャップ基板3はSiで出来ているため、赤外線の吸収は少なく、発熱部4から放射される赤外線の多くを透過する。このため、発熱部4からの赤外線の多くが反射膜9に到達し、基板2側に向かって反射される。このようにキャップ基板3は赤外線の吸収率が低いことが望ましく、材料としてはSiのほか、SiC、GaAs、Si、SiGe、GaN、InPなどでもよい。
【0060】
また、反射膜9は反射率の高い物質層を含む2層以上の積層膜でもよく、基板2から最も遠い層のみが反射の機能を持てばよい。例えば、キャップ基板3との密着性のよいTiをキャップ基板3と接着する層の材料とし、Tiとの密着性がよく赤外線の反射率も高いAuを基板2から遠い層の材料として用いた2層構造にしてもよい。
【0061】
[実施の形態1?3について]
なお、実施の形態1?3にそれぞれ適用した発明は、上記のようにそれぞれ単独で使用してもよいが、それらの発明を組み合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1,101,201 半導体装置、2 基板、3 キャップ基板、4 発熱部、5 ゲート電極、6 ソース電極、7 ドレイン電極、8 絶縁膜、9 反射膜、10 中空部、11,12 接合パッド、13,14,15,16 電極パッド、18 封止枠、19 バンプ、21 裏面電極、22,23 ビア、24 電極、25 封止材、26 ベース、27 リード、28 ワイヤ、29 モールド樹脂、30 ダイボンド材、31 金型、32 モールド樹脂注入口、33 アルミブロック
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された発熱部と、
前記基板の上方に、前記基板との間に中空部を持つように形成されたキャップ基板と、
前記発熱部の上方に中波長赤外線を反射する反射膜と、
少なくとも前記キャップ基板を覆うモールド樹脂と、
を備え、
前記基板上に、前記発熱部を覆うように形成された絶縁膜を備え、前記中空部が、前記絶縁膜と前記キャップ基板との間に形成され、前記反射膜が、前記絶縁膜上に形成された半導体装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記反射膜が、平面視で前記発熱部の中心の少なくとも6割の面積を覆うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記反射膜が、平面視で前記発熱部の少なくとも全面を覆うことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記反射膜の中波長赤外線に対する反射率が0.9以上であることを特徴とする請求項1,5?6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記反射膜の、波長範囲が5.1?7.8μmの赤外線に対する反射率が0.9以上であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記反射膜が金属で出来た層を含むことを特徴とする請求項1,5?8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記反射膜が、Al、黄銅、Cu、Au、Ni、Pt、Ag、Zn、Pdのいずれかの金属で出来た層を含むことを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記中空部が真空であることを特徴とする請求項1,5?10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記キャップ基板の熱伝導率が前記基板より低いことを特徴とする請求項1,5?11のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記基板がSiCで出来ていることを特徴とする請求項1,5?12のいずれか1項に記載の半導体装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-30 
出願番号 特願2018-546940(P2018-546940)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H01L)
P 1 651・ 121- YAA (H01L)
P 1 651・ 113- YAA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 正山 旭  
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 山田 正文
畑中 博幸
登録日 2020-01-07 
登録番号 特許第6638823号(P6638823)
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 半導体装置  
代理人 小泉 康男  
代理人 倉谷 泰孝  
代理人 久野 淑己  
代理人 村上 加奈子  
代理人 倉谷 泰孝  
代理人 松井 重明  
代理人 高橋 英樹  
代理人 小澤 次郎  
代理人 高橋 英樹  
代理人 久野 淑己  
代理人 松井 重明  
代理人 小泉 康男  
代理人 村上 加奈子  
代理人 小澤 次郎  
代理人 高田 守  
代理人 高田 守  

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