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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A61B
管理番号 1374975
異議申立番号 異議2020-700532  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-07-28 
確定日 2021-06-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第6640829号発明「経血管又は経室アクセス・ポートの閉鎖のための装置及び方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6640829号の請求項1、5、8、9に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6640829号(以下「本件特許」という。)の請求項1?28に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)3月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年3月27日 US(アメリカ合衆国) 2014年11月22日 US(アメリカ合衆国))を国際出願日とする出願であって、令和2年1月7日にその特許権の設定登録がされ、令和2年2月5日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1、5、8及び9に係る特許に対し、令和2年7月28日に特許異議申立人 北田保雄(以下「申立人」という。)より、特許異議の申立てがされた。


2 本件発明
本件特許の請求項1、5、8、9に係る発明(以下「本件発明1、5、8、9」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、5、8、9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
プロテーゼにおいて、
a)径方向に非拘束になったのち、自己拡張して、第一及び第二のディスクと首領域とになるよう構成された径方向拡張可能メッシュ本体を備え、前記径方向拡張可能メッシュ本体は、拡張したとき、そのなかに容積を画定し、前記首領域は、前記第一及び第二のディスクの間を接続し、
b)前記径方向拡張可能メッシュ本体のなかに配設され、前記プロテーゼの近位端部及び遠位端部に、前記プロテーゼの中心領域を画定する軸に沿って取り付けられた弾性部材を備え、前記弾性部材は、前記弾性部材によって囲まれ前記首領域を軸方向に貫通して前記第一及び第二のディスクにより画定された容積を接続する貫通領域を画定し、前記弾性部材が弛緩したとき、前記弾性部材により、前記径方向拡張可能メッシュ本体が前記軸に沿って短縮し、径方向に拡張するよう構成された、
プロテーゼ。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかのプロテーゼにおいて、前記プロテーゼは、
前記径方向拡張可能メッシュ本体のなかに配設され、血液に曝されたとき、凝固を促進するよう構成された凝固促進材料を含む、
プロテーゼ。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかのプロテーゼにおいて、
前記弾性部材は、引張コイルばねである、
プロテーゼ。
【請求項9】
請求項8のプロテーゼにおいて、
前記弾性部材により、前記プロテーゼが軸方向に潰れ、前記第一及び第二のディスクが径方向に拡張して、前記プロテーゼが配備されたのち、そのなかを通って送達された解剖学的開口から軸方向に引き抜かれるのを防止する、
プロテーゼ。」


3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として
甲第1号証:米国特許出願公開第2010/0211046号明細書(以下「甲1」という。)、
甲第2号証:特表2009-532123号公報(以下「甲2」という。)、
並びに従たる証拠として
甲第3号証:特表2007-504915号公報(以下「甲3」という。)
を提出し、本件発明1、5、8、9は、甲1?3に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張する。


4 甲各号証の記載事項
(1)甲1には、次の記載がある。
ア 「Accordingly, it would be advantageous to provide a medical device that is both easy to deploy through a lower profile catheter and that can be accurately placed in a target site, such as a PFO with minimal distortion of the PFO flap or tunnel, while providing improved clamping force for a more effective seal and fixation.」([0006])(和訳「したがって、より効果的なシールおよび固定のための改善されたクランプ力を提供する一方で、より低いプロファイルのカテーテルを介して展開することが容易であり、かつPFOフラップまたはトンネルの歪みを最小限に抑えてPFOのような標的部位に正確に配置することができる医療デバイスを提供することが有利であろう。」)(下線は当審で付与した。また、和訳については、申立人が特許異議申立書に添付した抄訳文を参照した(以下同様。)。)

イ 「FIG.1 illustrates a first embodiment of a medical device 10 for treating a target site, such as a PFO. In particular, the medical device 10 includes a tubular member 11 having a pair of end sections 12, 14 and a central portion 16 extending therebetween. The end sections 12, 14 typically have a larger cross-sectional dimension than that of the central portion 16. The end sections 12, 14 may be disk shaped or other shape sized and configured to overlie an opening of a target site.」([0052])(和訳「図1は、PFOなどの標的部位を治療するための医療装置10の第1の実施形態を示す。特に、医療装置10は、一対の端部セクション12、14と、その間に延びる中央部分16とを有する管状部材11を含む。端部セクション12、14は、典型的には、中央部分16の断面寸法よりも大きい断面寸法を有する。端部セクション12、14は、円盤状または他の形状の大きさを有し、標的部位の開口部を覆うように構成されていてもよい。」)

ウ 「The end sections 12, 14 and central portion 16 may be formed from a single tubular member 11. As described above, the tubular member 11 may be formed from one or more layers of braided fabric with each layer including a plurality of strands. The proximal 18 and distal 20 ends of the medical device 10 may be secured with respective end clamps 22. For instance, FIGS.4A and 5 illustrate that an end clamp 22 having threads 36 for engagement with a delivery device 38 may be used to secure the terminating ends of the braided strands at the proximal end 18 of the medical device 10. In addition, FIG.4B depicts an end clamp 22 that may be employed to secure the terminating ends of the braided strands at the distal end 20 of the medical device 10. It is understood that either of the clamps 22 shown in FIGS.4A and 4B could be used at one or both ends of the medical device 10.」([0053])(和訳「端部セクション12、14および中央部16は、単一の管状部材11から形成されてもよい。上述したように、管状部材11は、複数のストランドを含む各層を有する1つ以上の編組布の層から形成されてもよい。医療装置10の近位端部18および遠位端部20は、それぞれの端部クランプ22で固定されてもよい。例えば、図4Aおよび図5は、送達装置38と係合するためのねじ山36を有する端部クランプ22が、医療装置10の近位端18における編組ストランドの末端を固定するために使用されてもよいことを例示している。さらに、図4Bは、医療装置10の遠位端20で編組ストランドの終端端を固定するために採用されてもよいエンドクランプ22を図示している。図4Aおよび図4Bに示されたクランプ22のいずれかが、医療装置10の一方の端部または両方の端部で使用され得ることが理解される。」)

エ 「FIG.1 also illustrates that the medical device 10 includes a stiffener wire 24 extending within and between the proximal 18 and distal 20 ends. The stiffener wire 24 may also be coupled at its free ends by respective end clamps 22, as shown in FIGS.4A and 4B. Thus, the clamps 22 may secure both the proximal 18 and distal 20 ends of the medical device 10, as well as the proximal and distal ends of the stiffener wire 24. The stiffener wire 24 may have a variety of configurations and as shown in FIGS.2 and 3, may have a predetermined configuration for facilitating fixation of the medical device at the target site. For example, the stiffener wire 24 may have a pair of looped, coiled, spiral, or irregular portions 26, 28 sized and configured to extend through each of the end sections 12, 14, and a central portion 30 extending between the looped portions 26, 28. Thus, the tubular member 11 and stiffener wire 24 may have similar configurations in a preset, expanded configuration. Similar to the end sections 12, 14, the looped portion 26, 28 may have a larger cross-sectional dimension at its ends than that of the central portion 16 and at least partially radially surround a target site (e.g., the looped portions 26, 28 may be circular, partially circular, or any other shape configured to do so).」([0054])(和訳「図1はまた、医療装置10が、近位端部18および遠位端部20内およびその間に延びるスティフナーワイヤ24を含むことを例示する。スティフナーワイヤ24はまた、図4Aおよび図4Bに示されるように、それぞれの端部クランプ22によってその自由端で結合されてもよい。このように、クランプ22は、スティフナーワイヤ24の近位端および遠位端と同様に、医療装置10の近位端18および遠位端20の両方を固定してもよい。スティフナーワイヤ24は、様々な構成を有してもよく、図2および図3に示すように、標的部位における医療デバイスの固定を容易にするための所定の構成を有してもよい。例えば、スティフナーワイヤ24は、一対のループ状、コイル状、螺旋状、または不規則な部分26、28を有してもよく、端部セクション12、14の各々を通って延びるようにサイズ付けされて構成された部分26、28と、ループ状の部分26、28の間に延びる中央部分30とを有してもよい。したがって、管状部材11およびスティフナーワイヤ24は、予め設定された拡張された構成において類似の構成を有していてもよい。端部部分12、14と同様に、ループ状部分26、28は、その端部において中央部分16の断面寸法よりも大きい断面寸法を有してもよく、少なくとも部分的に標的部位を半径方向に取り囲む(例えば、ループ状部分26、28は、円形、部分的に円形、またはそうするように構成された他の任意の形状であってもよい)。」)

オ 「Upon release from the catheter 40, the medical device 10 is configured to return to its preset, expanded configuration, and the delivery device 38 may be unscrewed from the threaded clamp 22 such that the device may be fully deployed. Moreover, the stiffener wire 24 is capable of applying a clamping force between the end sections 12, 14 to secure the medical device 10 at the target site.」([0056])(和訳「カテーテル40からの解放時に、医療装置10は、予め設定された拡張された構成に戻るように構成され、送達装置38は、装置が完全に展開されてもよいように、ねじクランプ22から緩められてもよい。さらに、スティフナーワイヤ24は、医療デバイス10を標的部位に固定するために、端部セクション12、14の間にクランプ力を加えることができる。」)

カ 「





キ 上記エ、オと、上記カの図1、5の記載を併せみれば、管状部材11およびスティフナーワイヤ24は、予め設定された拡張された構成を有し、医療装置10のカテーテル40からの解放時に、管状部材11は、予め設定された拡張された構成に戻るスティフナーワイヤ24により、端部セクション12、14において円盤状となるように径方向に拡張するといえる。

上記ア?キを総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

「PFOのような標的部位に正確に配置することができる医療装置10であって、
円盤状の形状を有する一対の端部セクション12、14と、その間に延びる中央部分16とを有する管状部材11を含み、
管状部材11は、複数のストランドを含む各層を有する1つ以上の編組布の層から形成され、
端部クランプ22が、近位端部18および遠位端部20において編組布の末端を固定するために使用され、
近位端部18および遠位端部20内およびその間に延びるスティフナーワイヤ24を含み、
スティフナーワイヤ24は、端部セクション12、14の各々を通って延びるようにサイズ付けされて構成されたループ状の部分26、28と、その間に延びる中央部分30とを有し、それぞれの端部クランプ22によってその自由端で編組布の層と結合され、
管状部材11およびスティフナーワイヤ24は、予め設定された拡張された構成を有し、カテーテル40からの解放時に、管状部材11は、予め設定された拡張された構成に戻るスティフナーワイヤ24により、端部セクション12、14において円盤状となるように径方向に拡張する
医療装置10。」

(2)甲2には、次の記載がある。
ア 「【0003】
[0003] 本発明は、概して、心房中隔欠損、卵円孔開存(PFO)、及び他の中隔及び血管欠損などの身体的異常を閉鎖する閉塞装置に関する。特に、本発明は、可変長中心継手がある閉塞装置に関する。本発明は、また、キャッチシステム及び送達システム及びこのような装置の技術にも関する。」

イ 「【0013】
[0013] 本発明の態様は、オクルーダ及びオクルーダのキャッチシステムを含むインプラント、さらに、インプラントを体内の所望の位置に送達し、インプラントを展開構成で固定する装置及び技術に関する。特定の実施形態では、インプラントには、送達及び展開構成を有するフィラメントによって画定されたポリマー管又は管状形態から作成される中隔オクルーダが含まれるが、これに限定されない。これらの送達技術は、中隔オクルーダとともに使用することに加えて、下にある管状構造から構築された他の拡張式装置などの他の医療装置にも適用することができる。
【0014】
[0014] 本発明の特定の実施形態はさらに、オクルーダを展開構成で固定するキャッチシステムを含む。いくつかの実施形態では、キャッチシステムは、好ましくは中隔オクルーダの軸方向中心部分に配置されたキャッチ部材を含む。キャッチ部材は、所望の大きさ及び方向の力をオクルーダ装置の指定された部分に加えて、オクルーダをインプラント位置に維持するように構築され、配置される。好ましい実施形態では、キャッチ部材は、少なくともその軸方向長さに沿って調整可能であり、これによって様々な寸法を有するPFOにオクルーダを植え込み、閉鎖することができる。」

ウ 「【0017】
[0017] ・・・オクルーダは、装置の軸方向長さを減少させることにより、展開構成で配置される。」

エ 「【0019】
[0019] 別の実施形態では、キャッチ部材は、軸方向に伸張可能なコイルばねである。いくつかの実施形態では、キャッチ部材の近位端部がオクルーダの中心通路より大きい直径を有する螺旋を形成し、したがってオクルーダが折りたたまれて送達構成になることが防止される。通路に凹部を設けることができ、したがって螺旋の少なくとも一部が凹部に配置される。これは、装置の端部で露出する材料を減少させ、血栓形成の防止に役立つ。」

オ 「【0043】
[0065] 本発明の種々の実施形態は、体組織内の開口部の閉鎖を容易にするように意図されたインプラントを提供する。」

カ 「【0052】
[0074] 図5から図8に示すように、オクルーダ70は管から形成され(押出成形であっても又は圧延であってもよい)、これは図5に示す切断パターンにしたがって管の遠位部分にスリット74を生成することによって、遠位ペタル72を形成する。図6に示すように、管の遠位部分20は、遠位ループ又はペタル72を形成する管の8つの延長セグメントを形成する8つのスリット74を含む。図から明白であるように、スリットは、中心管78と遠位端部76との間の管の遠位部分の距離全体に延び、したがって同じ断面のループが形成される。遠位端部76に力Fdを加えると、スリット74によって画定された拡張セグメントが外側に弓なりになって、捻れ、オクルーダ70の遠位側に遠位ペタル72を形成する。展開中にセグメントは、セグメントが装置の軸に対して直交する面で回転するように動作する。力Fdを加える間に中心管78を抑制することができるか、又は管の軸方向長さを縮小するのに十分な力の任意の組合せを加えることができる。各遠位ペタル72の一方端は、中心管78から開始し、他方端は遠位端部76から開始する(図6及び図7)。近位ペタル82は、図6から図8に示すように近位部分40に形成することができ、それにより中心管78と近位端部86の間にスリット84を作成する。それは、上述したものと同じ切断パターンを使用して、力Fpを加えるか、管の軸方向長さを短縮するのに十分な力の組合せを加え、それによりスリット84が外側に弓なりになって捻れ、オクルーダ70の近位部分40に近位ペタル82を形成する。各遠位ペタル82の一方端は、中心管78から開始し、他方端は近位端部86から開始する。」

キ 「【0057】
[0079] オクルーダ70の変形可能な設計により、装置をロープロフィールの送達構成で送達し、容易に逆転することができる。すなわち、軸方向の長さを縮小することにより、所定の位置で高い輪郭の展開構成にすることができる。さらに、遠位端部76と近位端部86を強制的に一緒にすることによって、逆転を容易に実行することができる。例えば、オクルーダ70の遠位部分20及び近位部分40を別個のステップで展開するか、キャッチシステムと係合する前に、オクルーダ70の遠位部分20と近位部分40の両方を(例えば、送達カテーテルから)露出させ、キャッチ要素と係合するにつれて、一緒に展開することができる。遠位及び近位部分20及び40それぞれの用語の使用は、遠位及び近位側それぞれに形成されたループ又は他の幾何形状及び構成を含む。」

ク 「【0060】
[0082] 一般的に、本明細書で「オクルーダ70」に言及した場合、これは文脈に応じて、例えば、別個に列挙されているか、他に明言されていない限り、キャッチ部材50を含む。管の一方端、好ましくは管の近位端部は、キャッチ部材に(特にそれによって提供されるキャッチシステム)に対して移動することができ、したがって遠位及び近位ペタル72及び82が送達構成から展開構成へと移動することができる。管の内面はキャッチ部材50へと摺動することができ、したがってオクルーダ70の近位端部86がキャッチ部材50の近位側(例えば、近位側96又は近位棒296)にもたれかかると、オクルーダ70は展開構成で固定される。」

ケ 「【0062】
[0084] 本発明のキャッチシステムの一実施形態について、次に図9から図14に関して説明する。図9Aは、半径方向に同心であってよいオクルーダ70の軸方向通路に配置することができるキャッチ部材50を示す。キャッチ部材50は、オクルーダ70の遠位端部に配置された遠位フランジ92を含む。いくつかの実施形態では、キャッチ部材の遠位フランジ92はオクルーダ70に固定される。他の実施形態では、キャッチ部材50の遠位フランジ92がオクルーダ70に固定されず、それによりキャッチ部材50がオクルーダ70に対して回転することができる。1つの実施形態では、キャッチ部材50は、(以前のパラグラフで述べたように力Fp及びFdが加えられた場合に)オクルーダ70の遠位側が近位側に対して移動できるようにする遠位棚94を含む。通常、キャッチ部材50は、約50?30mmの軸方向長さ、及び約0.5?3mmの直径を有する。円形のシリンダが図示されているが、様々な断面形状を効果的に使用することができる。」

コ 「【0066】
[0088] 図9A及び図9Bに示す好ましい実施形態では、キャッチ部材50は、元の長さを越えて、例えば、元の長さの少なくとも2倍まで伸張することができる弾性生体適合性ポリマーで作成される。キャッチ部材50は、キャッチ部材の遠位フランジ92から近位側96へと延びるワイヤ95を含む。ワイヤ95は、キャッチ部材の本体部分98も形成する。引き続き図9Aを参照すると、本体部分98は、引っ張ると(張力を加えると)拡張することができるワイヤ95のコイルばね構成である。近位側96は、ワイヤ95の螺旋構成102を含む。キャッチ部材50の近位端部、すなわち、ワイヤ95の近位端部は、玉継手104を含み、したがってキャッチ部材50は、玉継手104を把持する留め金(図9A及び図9Bには図示せず)によって送達システムに接続される。図9Bは、図9Aの線9B-9Bに沿って切り取ったキャッチ部材50の端面図を示す。玉継手104は、(図示のように)キャッチ部材50の近位端部の中心に配置するか、中心から外れてもよい。
【0067】
[0089] 図10から図14は、オクルーダ70の展開プロセスを示す。図10から図14に示すように、送達システムは、送達シース(図示せず)内に摺動自在に配置される送達カテーテル130、及び送達カテーテル130内に摺動自在に配置される送達ワイヤ140を含む。送達ワイヤ140は、遠位端部に軸方向に突出するアーム146があるインナーワイヤ144を囲むワイヤシース142を含む。突出アーム146はそれぞれ、突出アーム146の遠位端部に配置されたカップ148を有する。2つの突出アーム146が図示されているが、本発明の一実施形態によれば、3,4、5、6又はそれ以上の突出アームを使用することができる。カップ148は、アームが146がワイヤシース142内に配置されると、キャッチ部材50の玉継手104を把持し、それを固定するようなサイズ及び形状である。代替実施形態では、送達ワイヤ140とキャッチ部材50の玉継手との接続は、Coupling System Useful in Placement of Implantsと題され、参照により全体を本明細書に組み込むものとする米国特許出願第10/389,471号に開示されているような玉爪フィーチャであってもよい。
【0068】
[0090] 図10は、送達アセンブリ124の遠位端部の断面図である。本発明の一実施形態によれば、オクルーダ70の近位部分は、ねじ接続で送達カテーテル130に固定され、玉継手104は、突出アーム146のカップ148で送達ワイヤ140のインナーワイヤ144に固定される。代替実施形態では、送達カテーテル130とオクルーダ70との接続は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/235,661号に記載されているような任意の他の適切な機構であってもよい。図10に図示されているように、送達アセンブリ124を所望の位置に挿入したら、送達シース(図示せず)を遠位方向に引き出して、オクルーダ70を露出させる。
【0069】
[0091] 図11を参照すると、オクルーダ70が植え込み位置に維持されている間に、キャッチ部材50の近位端部が軸方向の近位側に延びるように、力Fpが送達カテーテル130に加えられて、力Fdが送達ワイヤ140に加えられる。玉継手104を保持している送達ワイヤ140が近位方向に引っ張られると、螺旋区間102が図11に示すように、オクルーダ70の近位端部を越えて延びる。次に、力Fdを送達ワイヤ140に加えるのを停止することにより、キャッチ部材を弛緩することができる。図12に示すように、本発明の一実施形態によれば、螺旋区間102を載せ、キャッチ部材50がさらに後退するのを防止するために、オクルーダ70の近位端部の円錐形凹部110を、組み込むことができる。オクルーダ70を展開構成にロックすると、螺旋区間102及び遠位フランジ92は、オクルーダのペタル72及び82を中隔に押しつけた状態で維持するのに十分な力を提供する。」

サ 「



これらア?サの記載を総合すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

「オクルーダ及びオクルーダを展開構成で固定するキャッチシステムを含むインプラントであって、
装置をロープロフィールの送達構成で送達し、軸方向の長さを縮小することにより、所定の位置で展開構成にするものであり、
オクルーダ70は、管から形成され、
中心管78と、スリット74、84を有する遠位部分20及び近位部分40とを有し、
オクルーダ70の軸方向中心部分に配置されたキャッチ部材50を含み、
キャッチ部材50は、オクルーダ70の遠位端部に配置された遠位フランジ92を含み、
キャッチ部材50は、キャッチ部材の遠位フランジ92から近位側96へと延びる、コイルばね構成と螺旋構成102とを含むワイヤ95を含み、
ワイヤ95の近位端部は、玉継手104を含み、
キャッチ部材の遠位フランジ92はオクルーダ70に固定され、
管の近位端部は、キャッチ部材に対して移動することができ、
送達システムは、送達シース内に摺動自在に配置される送達カテーテル130、及び送達カテーテル130内に摺動自在に配置される送達ワイヤ140を含み、
オクルーダ70の近位部分は、ねじ接続で送達カテーテル130に固定され、送達ワイヤ140は、キャッチ部材50の玉継手104を把持し、
送達システムは、送達シースを引き出してオクルーダの遠位部分20と近位部分40の両方を送達カテーテルから露出させ、
キャッチ部材50の近位端部が軸方向の近位側に延びるように力Fpが送達カテーテル130に加えられ、力Fdが送達ワイヤ140に加えられ、
オクルーダ70の遠位端部76に力Fdが加わると、スリット74によって画定された拡張セグメントが外側に弓なりになって、捻れ、オクルーダ70の遠位側に遠位ペタル72を形成し、力Fpが加わると、スリット84が外側に弓なりになって捻れ、近位部分40に近位ペタル82を形成し、力Fdを送達ワイヤ140に加えるのを停止することにより、キャッチ部材が弛緩し、
キャッチ部材50がさらに後退するのを防止するために、オクルーダ70の近位端部の円錐形凹部110にキャッチ部材50の螺旋区間102を配置し、オクルーダ70を展開構成にロックする
インプラント。」

(3)甲3には、次の記載がある。
ア 「【請求項12】
前記少なくとも1つの中心継手が、前記中隔組織の欠損の閉鎖を促進する材料を含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの中心継手が、血栓形成性材料、炎症性材料、薬物滲出材料、および、これらの材料の組合せからなる群から選択される材料を含む、請求項12に記載のデバイス。」

イ 「【0011】
発明の実施形態の簡単な概要
本発明の様々な実施形態は、PFOなどの中隔欠損を閉鎖するためのデバイスに関する。閉鎖デバイスは、一般に、近位アンカー部材、遠位アンカー部材、および2つのアンカー部材を接続する可撓性中心継手を具備する。中心継手は、1つ以上の縫合糸であってもよい。或いは、中心継手は、組織の内方成長(ingrowth)を促進し得る又は薬物を送達し得る可撓性エラストマー層であってもよい。また、可撓性材料は、組織への接着を促進する生体適合性材料、又は組織の内方成長を加速する成長因子で被覆されてもよい。」

ウ 「【0017】
図2に示すように、本発明の1つ以上の実施形態によるPFO閉鎖デバイス18は、(PFOの左心房側に配置することができる)遠位アンカー構成要素又は部材20、(デバイスを所定の位置に固定するための)近位アンカー部材22、(取り付けおよびカテーテルからの放出のための)近位取り付け点24、および(例えば、この実施形態による普通の縫合糸とすることができる)中心接続部材26を具備する。」

エ 「【0031】
図6のデバイスの中心継手56(並びに、図7?図10、図12?図18、および図21?図24に示すデバイスの中心継手)は、好ましくは、エラストマー性および弾性があり、例えば、ポリエステル、生体組織、生体吸収性ポリマー、直径の小さいばね(例えば、ニチノールばね)、又は海綿状ポリマー材料を含む血栓形成性又は炎症性材料から製造される。或いは、中心継手は、図7Aおよび図7Bの閉鎖デバイス60に示すように、例えば、ポリマー繊維などの材料の複数のストランド58で製造することができる。中心継手は、テクスチャ加工されたもの、多孔質、又はベルクロなどの一面又は両面フック材料の形態とすることができる。これらの種類の表面では炎症反応が起こり、そのため、より速い組織の内方成長と、より速い欠損閉鎖が促進される。デバイス全体又はその一部は、生体吸収性ポリマーから製造することができる。」

オ 「【0053】
遠位アンカー部材252と近位アンカー部材254を可撓性中心継手259で接続してもよい(図25)。前述のように、少なくとも幾つかの実施形態では、中心継手259は、延伸性エラストマー性材料を含む。少なくとも幾つかの実施形態では、中心継手259は、ポリエステル、生体組織、生体吸収性ポリマー、直径の小さいばね(例えば、ニチノールばね)、海綿状ポリマー材料、又はこれらの材料の組み合わせなどの血栓形成性又は炎症性材料を含む。」


5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比・判断
(ア)対比
甲1発明の「PFOのような標的部位に正確に配置することができる医療装置10」は、その機能及び構造からみて、本件発明1の「プロテーゼ」に相当する。
甲1発明の「管状部材11」は、複数のストランドを含む各層を有する1つ以上の編組布の層から形成され、予め設定された拡張された構成を有し、カテーテル40からの解放時に拡張して、予め設定された拡張された構成に戻るスティフナーワイヤ24により、端部セクション12、14において円盤状となるように径方向に拡張するものであり、径方向に非拘束になったのち、自己拡張し、径方向に拡張したとき、そのなかに容積を画定するよう構成されたものであるといえるから、本件発明1の「径方向拡張可能メッシュ本体」に相当する。
そして、甲1発明の管状部材11の「円盤状の形状を有する一対の端部セクション12、14」及び「その間に延びる中央部分16」は、その構造からみて、それぞれ、本件発明1の「第一及び第二のディスク」及び「前記第一及び第二のディスクの間を接続」する「首領域」に相当する。
そして、甲1発明の「スティフナーワイヤ24」は、近位端部18および遠位端部20内およびその間に延び、端部セクション12、14の各々を通って延びるようにサイズ付けされて構成されたループ状の部分26、28と、その間に延びる中央部分30とを有するものであり、スティフナーワイヤ24が管状部材11のなかを通って延びるものであるといえることから、本件発明1の「弾性部材」と、径方向拡張可能メッシュ本体のなかに配設される部材である点で共通する。
また、甲1発明の「スティフナーワイヤ24」は、それぞれの端部クランプ22によってその自由端で編組布の層と結合され、予め設定された拡張された構成を有するものであり、当該スティフナーワイヤ24が医療装置10の近位端部及び遠位端部に取り付けられるといえることから、本件発明1の「弾性部材」と、プロテーゼの近位端部及び遠位端部に取り付けられた部材である点で共通する。

(イ)一致点
そうすると、両者は、
「プロテーゼにおいて、
a)径方向に非拘束になったのち、自己拡張して、第一及び第二のディスクと首領域とになるよう構成された径方向拡張可能メッシュ本体を備え、前記径方向拡張可能メッシュ本体は、拡張したとき、そのなかに容積を画定し、前記首領域は、前記第一及び第二のディスクの間を接続し、
b)前記径方向拡張可能メッシュ本体のなかに配設され、前記プロテーゼの近位端部及び遠位端部に取り付けられた部材を備える
プロテーゼ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(ウ)相違点
[相違点1]
径方向拡張可能メッシュ本体のなかに配設され、プロテーゼの近位端部及び遠位端部に取り付けられた部材について、本件発明1では、弾性部材であり、当該弾性部材は、前記プロテーゼの中心領域を画定する軸に沿って取り付けられ、前記弾性部材によって囲まれ首領域を軸方向に貫通して前記第一及び第二のディスクにより画定された容積を接続する貫通領域を画定し、前記弾性部材が弛緩したとき、前記弾性部材により、前記径方向拡張可能メッシュ本体が前記軸に沿って短縮し、径方向に拡張するよう構成されているのに対し、甲1発明では、スティフナーワイヤ24であり、当該ワイヤは、端部セクション12、14の各々を通って延びるようにサイズ付けされて構成されたループ状の部分26、28と、その間に延びる中央部分30とを有し、予め設定された拡張された構成を有し、カテーテル40からの解放時に、予め設定された拡張された構成に戻るように構成されている点。

(エ)判断
上記相違点1について検討する。
甲1発明は、管状部材11の拡張動作に関し、管状部材11のなかに配設されたスティフナーワイヤ14がカテーテル40からの解放時に予め設定された拡張された構成に戻ることにより、当該管状部材11に端部セクション12、14と中央部分30とを形成するものである。そして、甲1には、管状部材11の拡張動作の機序を他のものに変更することを示唆するような記載はなく、当該機序を他のものに変更しようとする動機づけは見あたらない。
ここで、上記4(2)のとおり、甲2には、オクルーダ70のなかに配設される、弾性部材としてのキャッチ部材50が開示されている。しかしながら、上記4(2)のイ、ウ、カ、コの記載のとおり、甲2のオクルーダ70は、術者がその遠位端部76及び近位端部86に力Fd及び力Fpをそれぞれ加えることで、軸方向長さを減少させることにより展開構成とされるものであって、キャッチ部材50は、その弛緩によりオクルーダ70を展開構成で固定するのに用いられる。つまり、弾性部材が弛緩することによってオクルーダ70が展開するものではない。
そうすると、弾性部材としての果たす役割が、甲2のキャッチ部材50と甲1発明のスティフナーワイヤ24とでは異なっているから、当該スティフナーワイヤ24に代えて、あるいは加えてキャッチ部材50を用いる余地はなく、当業者は、甲1発明への甲2の記載事項の適用を試みることはないというべきである。
なお、甲3には、PFOなどの中隔欠損を閉鎖するためのデバイスとして、近位アンカー部材、遠位アンカー部材、および2つのアンカー部材を接続する可撓性中心継手を具備するものが記載されているが、当該中心継手は、直径の小さいばね等を含む材料から製造されるものの、その表面で炎症反応が起きることにより、より速い組織の内方成長と、より速い欠損閉鎖を促進するための構成であって(上記4(3)のイ、エ参照)、ばねが弛緩することによって近位アンカー部材や遠位アンカー部材を径方向に拡張するものではない。
よって、上記相違点1における本件発明1に係る構成は、甲1発明及び甲1?3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
そして、上記相違点1における本件発明1に係る構成により、例えば本件特許明細書記載の「理解され得るように、コイルばね101により、内部にグラフト材料を伴う外部メッシュを含む各葉又はディスクが、管(又は、用途によっては室)の壁を平らにして、もっとよく並置し、これにより、止血をもっとよく達成する。」(【0046】)という顕著な効果を奏するものとなっている。

(オ)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明並びに甲1?3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明1と甲2発明との対比・判断
(ア)対比
甲2発明の「オクルーダ及びオクルーダを展開構成で固定するキャッチシステムを含むンプラント」は、その機能及び構造からみて、本件発明1の「プロテーゼ」に相当する。
そして、甲2発明のオクルーダ70の「遠位ペタル72」及び「近位ペタル82」は本件発明1の「第一及び第二のディスク」に相当し、「中心管78」は、「前記第一及び第二のディスクの間を接続」する「首領域」に相当する。
甲2発明の「管から形成され、中心管78と、スリット74、84を有する遠位部分及び近位部分とを有」し、「送達システムは、送達シースを引き出して」「遠位部分20と近位部分40の両方を送達カテーテルから露出させ、」「遠位側に遠位ペタル72を形成し、近位部分40に近位ペタル82を形成」する「オクルーダ」は、本件発明1の「径方向に非拘束になったのち、」「拡張し」、「拡張したとき、そのなかに容積を画定」する「よう構成された径方向拡張可能メッシュ本体」に相当する。
また、甲2発明の「キャッチ部材50」は、その構造上、本件発明1の「弾性部材」に相当する。
そして、甲2発明のキャッチ部材50は、「オクルーダ70の軸方向中心部分に配置され」ており、「キャッチ部材の遠位フランジ92はオクルーダ70に固定され」、「オクルーダ70の近位端部の円錐形凹部110にキャッチ部材50の螺旋構成102を配置」するものであるから、上記4(2)サの図14の記載も併せみれば、当該キャッチ部材は、本件発明1の「前記径方向拡張可能メッシュ本体のなかに配設され、前記プロテーゼの近位端部及び遠位端部に、前記プロテーゼの中心領域を画定する軸に沿って取り付けられ」、「前記弾性部材によって囲まれ前記首領域を軸方向に貫通して前記第一及び第二のディスクにより画定された容積を接続する貫通領域を画定」する弾性部材に相当するといえる。

(イ)一致点
そうすると、両者は、
「プロテーゼにおいて、
a)径方向に非拘束になったのち、拡張して、第一及び第二のディスクと首領域とになるよう構成された径方向拡張可能メッシュ本体を備え、前記径方向拡張可能メッシュ本体は、拡張したとき、そのなかに容積を画定し、前記首領域は、前記第一及び第二のディスクの間を接続し、
b)前記径方向拡張可能メッシュ本体のなかに配設され、前記プロテーゼの近位端部及び遠位端部に、前記プロテーゼの中心領域を画定する軸に沿って取り付けられた弾性部材を備え、前記弾性部材は、前記弾性部材によって囲まれ前記首領域を軸方向に貫通して前記第一及び第二のディスクにより画定された容積を接続する貫通領域を画定する、
プロテーゼ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(ウ)相違点
[相違点2]
本件発明1では、径方向拡張可能メッシュ本体は、前記弾性部材が弛緩したとき、前記弾性部材により、前記径方向拡張可能メッシュ本体が前記軸に沿って短縮し、径方向に拡張するよう構成され、当該拡張は自己拡張であるのに対して、甲2発明では、オクルーダ70は、キャッチ部材50の近位端部が軸方向の近位側に延びるように、力Fpが送達カテーテル130に加えられて、力Fdが送達ワイヤ140に加えられ、オクルーダ70の遠位端部76に力Fdが加わると、スリット74によって画定された拡張セグメントが外側に弓なりになって、捻れ、オクルーダ70の遠位側に遠位ペタル72を形成し、力Fpが加わると、スリット84が外側に弓なりになって捻れ、近位部分40に近位ペタル82を形成し、軸方向長さを減少させることにより、展開構成となるものである点。

(エ)判断
上記相違点2について検討する。
甲2発明は、オクルーダ70の拡張動作に関し、オクルーダ70の管のなかに配設されたキャッチ部材50の近位端部の玉継手104を送達ワイヤ140で把持した状態において、力Fpを送達カテーテル130に加えるとともに、送達ワイヤ140を近位側に引いて当該キャッチ部材50を伸張させることでオクルーダ70の遠位端部に力Fdをも加えることにより、遠位ペタル72及び近位ペタル82を形成し、すなわち、オクルーダ70の管を拡張構成とし、力Fdを送達ワイヤ140に加えるのを停止した後、伸張させたキャッチ部材50が弛緩して、オクルーダ70の近位端部の円錐形凹部110にキャッチ部材50の螺旋区間102を配置し、オクルーダ70を展開構成にロックするものである。このことを踏まえると、キャッチ部材50は、オクルーダ70を拡張させる力Fdの発生に関係する部材ではあるものの、オクルーダ70の拡張動作に寄与するものではなく、術者の及ぼす力Fd及び力Fpによって軸方向に短縮され、拡張構成とされたオクルーダ70を展開構成のロックに寄与するものであるといえる。
一方、本件発明1は、径方向拡張可能メッシュ本体の拡張動作に関し、前記弾性部材が弛緩したとき、前記弾性部材により、前記径方向拡張可能メッシュ本体が前記軸に沿って短縮し、径方向に自己拡張するものであって、弛緩する弾性部材は、径方向拡張可能メッシュ本体の拡張動作に寄与するものである。
このように、甲2発明と本件発明1とは、径方向拡張可能メッシュ本体(オクルーダ70)のなかに配設された弾性部材(キャッチ部材)を備える点では共通するものの、当該径方向拡張可能メッシュ本体(オクルーダ70)の拡張動作の機序が異なっており、その機序における弾性部材(キャッチ部材)の果たす役割についても相違があるものである。そして、甲2には、本件発明1の径方向拡張可能メッシュ本体の拡張動作の機序を他のものに変更することを示唆するような記載はみられない。したがって、当該機序を他のものに変更しようとする動機づけは見あたらない。
そして、上記アにおいて検討したとおり、甲1は、管状部材11の端部セクション12、14(径方向拡張可能メッシュ本体)のなかに配設される部材はスティフナーワイヤ24であって、構造及び機能が異なる甲2発明のキャッチ部材50に対して適用できるものではない。
また、甲3は、上記ア(エ)に記載したとおりの構造を有するデバイスであって、その可撓性中心継手を甲2発明のキャッチ部材50に対して適用できるものではない。
よって、上記相違点2における本件発明1に係る構成は、甲2発明及び甲1?3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
そして、上記相違点2における本件発明1に係る構成により、例えば本件特許明細書記載の「理解され得るように、コイルばね101により、内部にグラフト材料を伴う外部メッシュを含む各葉又はディスクが、管(又は、用途によっては室)の壁を平らにして、もっとよく並置し、これにより、止血をもっとよく達成する。」(【0046】)という顕著な効果を奏するものとなっている。

(オ)小括
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲1?3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明5、8、9について
本件発明5、8、9は、本件発明1にさらに発明特定事項を付加し、限定したものである。
そうすると、上記(1)のとおり、本件発明1は、甲1発明又は甲2発明、並びに甲1?3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないので、本件発明5、8、9についても、甲1発明又は甲2発明、並びに甲1?3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)まとめ
本件発明1、5、8、9は、甲1発明及び甲1?3に記載された技術的事項に基いて、又は甲2発明及び甲1?3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、これらの発明に係る特許は特許法第29条第2項に違反してされたものとすることはできない。


7 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1、5、8、9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、5、8、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-06-15 
出願番号 特願2017-502929(P2017-502929)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (A61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 後藤 健志  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 加藤 啓
栗山 卓也
登録日 2020-01-07 
登録番号 特許第6640829号(P6640829)
権利者 アメリカ合衆国 トランスミューラル システムズ エルエルシー
発明の名称 経血管又は経室アクセス・ポートの閉鎖のための装置及び方法  
代理人 特許業務法人東京アルパ特許事務所  
代理人 特許業務法人東京アルパ特許事務所  
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