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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E03D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E03D
審判 全部申し立て 2項進歩性  E03D
管理番号 1374976
異議申立番号 異議2021-700173  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-02-18 
確定日 2021-06-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第6742663号発明「便器装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6742663号の請求項1?6に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6742663号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成28年2月4日に出願され、令和2年7月31日にその特許権の設定登録がされ、同年8月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年2月18日に特許異議申立人 TOTO株式会社(以下「申立人」という。)は、その請求項1?6に係る特許に対し特許異議の申立てを行った。

2 本件発明
特許第6742663号の請求項1?6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
便鉢部を有する便器本体と、
前記便鉢部内に排泄された落下中の大便を時系列に撮影して複数の静止画像を取得するカメラと、
前記カメラにより取得された複数の静止画像から大便の性状の変化を推定する便性推定部と、を備えることを特徴とする便器装置。
【請求項2】
前記便性推定部は、前記大便の性状を1つの前記静止画像毎に推定することを特徴とする請求項1記載の便器装置。
【請求項3】
前記便性推定部は、予め複数に分類された所定の性状パターンのうちの1つに前記大便の性状を推定することを特徴とする請求項2記載の便器装置。
【請求項4】
前記カメラは、前記便鉢部の上方に配置された便座装置に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の便器装置。
【請求項5】
前記カメラは、前記便鉢部の上部に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の便器装置。
【請求項6】
前記便性推定部は、前記静止画像に使用者の身体が写り込んでいる場合には、前記静止画像内の前記身体に相当する画像領域を含む部分についてマスキング処理を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の便器装置。」

3 申立理由の概要
(1)申立ての理由1(特許法第29条第1項第3号)
申立人は、主たる証拠として下記甲第1号証(以下「甲1」という。)を提出し、請求項1?5に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1?5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである旨主張する。
(2)申立ての理由2(特許法第29条第2項)
申立人は、主たる証拠として甲1及び従たる証拠として下記甲第2号証?甲第8号証(以下、それぞれ「甲2」?「甲8」という。)を提出し、請求項1?6に係る発明は、甲1及び甲2?甲8に記載された発明に基づき容易想到であるから、請求項1?6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨主張する。

甲第1号証:特開2007-252805号公報
甲第2号証:特開2009-229315号公報
甲第3号証:平塚秀雄「トイレで健康診断」光文社 第105頁 昭和61年5月31日発行
甲第4号証:櫻井重樹 他「漢方治療が奏功した脳血管障害による高体温症の二例」日本東洋医学雑誌 第39巻第4号 第19頁?第28頁 平成元年
甲第5号証:徳井教孝 他「便秘の定義と便秘体質」中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要 第5号 第49頁?第54頁 2012年9月1日発行
甲第6号証:登録実用新案第3065079号公報
甲第7号証:特開2008-202282号公報
甲第8号証:特開2015- 56103号公報

(3)申立ての理由3(特許法第36条第6項第1号)
申立人は、本件明細書に開示された内容を請求項1に記載された発明まで拡張又は一般化することはでず、請求項1に記載された発明は発明の詳細な説明に記載されたものでないから、請求項1に係る特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張する。

(4)申立ての理由4(特許法第36条第6項第2号)
申立人は、請求項1に記載された発明は明確でなく、請求項1に係る特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張する。

4 甲号証の記載
(1)甲1
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付与したものである。以下、同様。
(ア)「【0010】
本発明は上述した点に鑑み、非接触・非侵襲的に生体データを取得して生体の健康状態を推定することを可能とするデータ検出装置及びデータ検出方法を提供することを目的とする。」
(イ)「【0040】
また、図2に示すように、シャワーノズル4の先端部付近には、洗浄用の水を噴出するためのノズル孔5が形成されている。また、シャワーノズル4の先端部付近の側面には、画像撮影部6として4つのカメラが設けられている。なお、画像撮影部6としてのカメラの個数は4つに限られるものではなく、例えば、図3に示すように、シャワーノズル4の先端部に2つのカメラを設ける構成としてもよい。」
(ウ)「【0047】
また、図6及び図7に示すように、画像撮影部6及び照明部7をトイレ2の便器3に直接取り付けてもよい。図6は、トイレ2が洋式トイレである場合の例である。図6の例では、便器3の水溜り部3aの両側及び便器3の縁(へり)3bを画像撮影部6及び照明部7の取り付け位置として示している。このうち水溜り部3aに取り付けられた画像撮影部6及び照明部7は、水溜り部3aに溜まった水の透過光を撮影するために使用される。
【0048】
また、図7は、トイレ2が和式トイレである場合の例である。図7の例では、便器3のうち水溜り部3aの両側、便器3の縁部3bの側面及び便器3の給水孔3cの上部を画像撮影部6及び照明部7の取り付け位置として示している。画像撮影は目立たないように行うことが望ましいため、画像撮影部6及び照明部7は、特に、給水孔3cの上部に設置することが好ましい。また、水溜り部3aに取り付けられた画像撮影部6及び照明部7は、水溜り部3aに溜まった水の透過光を撮影するために使用される。
【0049】
なお、トイレ2が洋式トイレのとき及び和式トイレのとき共に、便器3の各部に複数の画像撮影部6及び照明部7を取り付けることも可能である。
【0050】
また、画像撮影部6は、便器3やシャワーノズル4のアタッチメントとすることにより、交換しやすいように設計しておくことが望ましい。」
(エ)「【0066】
また、画像撮影部6は、被験者による排泄行為中に、被験者の肛門とその周辺、局部とその周辺及び排泄物を含む便器3の水溜り部3aを被写体として、静止画及び動画で熱画像又は画像を撮影し、撮影画像をデータ処理・解析部18に転送するようになっている。」
(オ)「【0083】
また、データ処理・解析部18は、大便の画像について以下のように解析を行う。
【0084】
すなわち、データ処理・解析部18は、排泄物が大便であると判断した場合は、大便の画像解析により、便が排出されるときの便の形状や性状、色を計測するようになっている。また、その際、肛門の状態を定量化するようになっている。これにより、出血や炎症、痔などの疾病の存在を確認することが可能となる。
【0085】
大便の形状・性状の計測としては、例えば、動画像における排泄時の同点追跡により、大便の排出速度や長さ・大きさを計測し、そのデータから便の固さを推定する。そして、予め作成した大便の排出速度、固さ又は大きさと大便のスケールとの対応テーブルを用いて、便の形状・性状を抽出するようになっている。
【0086】
大便のスケールとしては、例えば、大便を木の実のようなコロコロした硬い塊の便(兎糞便)、短いソーセージのような塊の便(塊便)、表面にひび割れのあるソーセージのような便、表面がなめらかで柔らかいソーセージ、あるいは蛇のようなとぐろを巻く便(普通便)、はっきりとした境界のある柔らかい半分固形の便(軟便)、境界がほぐれてふわふわと柔らかいお粥のような便(泥状便)又は塊のない水のような便(水様便)に分類するブリストル便性状スケールなどがある。」
(カ)図1,6,7



イ 甲1発明
上記ア(カ)の図1、6、7の記載から、トイレ2の便器3は、底部に水溜り部3aを構成する容器部分、つまり便鉢部を有していることが見て取れる。
そして、上記アの記載事項から、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考のため、括弧内に、認定の根拠となる段落番号、図番号を記載する。

「(図1、6、7)トイレ2の便器3は、便鉢部を有し、
(【0040】)シャワーノズル4の先端部付近に、画像撮影部6としてのカメラが設けられ、
(【0066】)画像撮影部6は、被験者による排泄行為中に、被験者の肛門とその周辺、局部とその周辺及び排泄物を含む便器3の水溜り部3aを被写体として、静止画及び動画で熱画像又は画像を撮影し、撮影画像をデータ処理・解析部18に転送するようになっており、
(【0084】)データ処理・解析部18は、排泄物が大便であると判断した場合は、大便の画像解析により、便が排出されるときの便の形状や性状、色を計測する、
(【0010】)生体の健康状態を推定することを可能とするデータ検出装置。」

(2)甲2
ア 甲2の記載事項
(ア)【0016】
すなわち、この排泄物性状測定装置1は、被験者Pがリモコン装置11を操作することにより、装置本体部10に排泄された排泄物の排出や、排泄後の被験者Pの局部の洗浄や、局部の乾燥を行えるようにしており、また、装置本体部10にて被験者Pが排泄した排泄物の性状を測定し、リモコン装置11に備えられた表示部44にその測定結果を表示して、測定結果を被験者Pに知らせる機能を有している。」
(イ)「【0115】
図10に示すように、まず、排泄物性状測定処理では、被験者Pが便座15に着座した状態で、ある物体が放射温度分布計測手段60における温度検出素子62の計測領域64を通過すると、排泄物性状測定部20における排泄物性状測定制御回路27は、温度検出素子62における各受光素子62aを順次スキャンして得られる温度検出信号と、基準温度素子68からの温度検出信号とから各受光素子62a毎の全64個分の計測温度を算出し、これを1回のスキャン(1フレーム)分の温度データ、すなわち、全64個分の計測温度で形成する温度分布データを生成する(ステップS20)。」
(ウ)「【0121】
一方、排泄物性状測定制御回路27は、フレーム数が予め設定された回数に達したと判定すると(ステップS23:Yes)、便識別処理を行う(ステップS24)。換言すると、排泄物性状測定制御回路27は、予め設定されたフレーム数の温度分布データ及び量子化分布データが蓄積されて、それぞれ、温度分布データ群及び量子化分布データ群が形成されたと判断した場合には、便識別処理をおこなうようにしている。」
(エ)「【0126】
この便識別処理が終了すると、次に、排泄物性状測定制御回路27は、温度分布データ群に、便識別フラグの値と性状判定フラグの値と尿温計測値とを付して、装置本体制御部21のRAM34の所定アドレスに記憶させる(ステップS25)。」
(オ)「【0155】
そして、排泄物性状測定制御回路27は、決定した大便の性状に応じた値を性状判定フラグに設定する(ステップS37)。例えば、性状判定フラグの値としては、大便が「硬便」である場合には「1」を、「通常便」である場合には「2」を、「軟便」である場合には「3」をそれぞれ設定することができる。」
(カ)「【0176】
次いで、排泄物性状測定制御回路27は、読み出した温度分布データ群に付された性状判定フラグの値をカウントして最も多い値の性状判定フラグを抽出し、この性状判定フラグに応じた大便の性状(硬便、通常便、軟便)を、放射温度分布計測手段60の大便性状測定結果として確定し、これをRAM34に記憶させ(ステップS51)、分岐前の元のアドレスに復帰して処理を継続する。」
(キ)「【0182】
ここまで述べてきたように、本実施形態に係る排泄物性状測定装置1の排泄物性状測定制御回路27は、便識別処理を実行することで、放射温度分布計測手段60により計測される温度分布に基づいて計測領域64内に排泄される便の種類を識別する便識別手段として機能し、また、前述のステップS34?ステップS37の処理や大便性状測定処理を実行することで、便識別手段が大便と識別した場合の温度分布に対して予め用意された性状判定基準(性状判定テーブル)を適用することにより、その大便の性状を判定する大便性状判定手段として機能し、また、便識別手段が尿と識別した場合の前記温度分布に基づいて被験者が排泄した尿の温度である尿温を算出する尿温算出手段として機能する。」

イ 甲2に記載の発明及び技術事項
(ア)上記アの記載事項から、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考のため、括弧内に、認定の根拠となる段落番号を記載する。
「(【0016】)排泄物性状測定装置1は、装置本体部10にて被験者Pが排泄した排泄物の性状を測定し、表示部44にその測定結果を表示するものであり、
(【0115】)排泄物性状測定処理では、被験者Pが便座15に着座した状態で、ある物体が放射温度分布計測手段60における温度検出素子62の計測領域64を通過すると、順次スキャンして温度分布データを生成し(ステップS20)、
(【0121】)排泄物性状測定制御回路27は、予め設定されたフレーム数の温度分布データ及び量子化分布データが蓄積されて、それぞれ、温度分布データ群及び量子化分布データ群が形成されたと判断した場合には、便識別処理をおこない、
(【0126】)この便識別処理が終了すると、次に、排泄物性状測定制御回路27は、温度分布データ群に、便識別フラグの値と性状判定フラグの値と尿温計測値とを付して、記憶させ(ステップS25)、
(【0155】)性状判定フラグの値としては、大便が「硬便」である場合には「1」を、「通常便」である場合には「2」を、「軟便」である場合には「3」をそれぞれ設定するものであり、
(【0176】)排泄物性状測定制御回路27は、読み出した温度分布データ群に付された性状判定フラグの値をカウントして最も多い値の性状判定フラグを抽出し、この性状判定フラグに応じた大便の性状(硬便、通常便、軟便)を、放射温度分布計測手段60の大便性状測定結果として確定する、
(【0016】)排泄物性状測定装置1。」

(イ)また、甲2の【0115】【0121】【0126】の記載から、以下の技術事項が読み取れる。
「温度分布データ群(予め設定されたフレーム数の温度分布データ)に性状判定フラグを付すこと。」

(ウ)さらに、甲2の【0182】から、以下の技術事項が読み取れる。
「予め用意された性状判定基準(性状判定テーブル)を適用することにより、その大便の性状を判定すること。」

(3)甲3
ア 甲3の記載事項
「健康なウンコの一種です。・・・このウンコは、トイレにはいったとき第二弾としてよく出るのが特徴です。はじめに褐色のバナナ状のウンコが出て、そのあとにこのウンコがスーッと出てきます。ときどき第一弾のウンコがあまりに立派なために、このやわらかいウンコを見て消化不良をおこしはじめているのではないか、と心配する人もいますが、そんなことはありません。このことはウンコの出方を考えると当然なのです。直腸にたまったウンコが出ると、大腸に、大きなうねりのような運動がおこり、ウンコの材料がどんどん直腸に送られます。このいきおいに、製造中のウンコがのると、やわらかいまま気持ちよく出てくるのです。できたてのホカホカのウンコですから、やわらかいのは当然でしょう。まったく心配はありませんから、どんどん食べて、どしどし出してやってください。」(105頁)

イ 甲3に記載の技術事項
「健康なウンコの一種として、はじめに褐色のバナナ状のウンコが出て、そのあとにやわらかいウンコがスーッと出てきます。」

(4)甲4
ア 甲4の記載事項
「便秘に対し調胃承気湯,小承気湯を使用し,最後には大承気湯を使用するに到った。大承気湯で2日間下痢した。先硬後軟で,最後は大量の泥状便であった。この時点で,数日間発熱が続いたが,このときの発熱を除けば,石膏を50gに増量して約1週間後には,体温は37?38℃でほぼ安定して推移した。」(26頁左欄下から5行目?右欄2行目)

イ 甲4に記載の技術事項
「大承気湯で2日間下痢した際、先硬後軟で,最後は大量の泥状便であった。」

(5)甲5
ア 甲5の記載事項
「4)気虚型便秘(表6)
気虚型便秘は・・・便の硬さは最初は硬いがあとは柔らかい先硬後軟がみられる。・・・」(53頁左欄)

イ 甲5に記載の技術事項
「気虚型便秘は、便の硬さは最初は硬いがあとは柔らかい先硬後軟がみられる。」

(6)甲6
ア 甲6の記載事項
(ア)「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、便器に装着して、患者本人が肛門あるいはその周辺の疾病の状態を確認するための便座装着用カメラに関するものである。」
(イ)「【0010】
図1,2に示すように、便座装着用カメラ10は、便座装着部20とカメラ及び照明器具からなるカメラ部60とを備えている。便座装着部20は、中心部にカメラ部60が装着される基板30と、略L字状に形成され、水平部が洋式便器本体の左右上端部あるいは便座の左右両端部に装着可能に構成された一対の装着板40と、略L字状に形成され、前記基板30の端部と前記装着板40の端部との間に介在する一対の連結板50とを有している。」
(ウ)「【0020】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案の便座装着用カメラによれば、便器の大小に合わせた幅調整ができるので、トイレの改造なしに家庭内で患者本人が自分の疾病部を簡単に撮影して観察することができ、かつ利用後は取り外しができるので他人に知られずに使用することができる。また、被写体に対するカメラの位置、傾斜角の調整ができるので、必要な箇所を確実に撮すことができるとともに、洗浄機能付きのトイレの場合、自分自身で洗浄効果を確認することもできる。」
(エ)【図3】


イ 甲6に記載の技術事項
「便器に装着して、患者本人が肛門あるいはその周辺の疾病の状態を確認するための便座装着用カメラ。」

(7)甲7
ア 甲7の記載事項
(ア)「【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、局部の状態を目視により確認することができる洗浄便座を提供することを課題としている。」
(イ)「【0013】
本発明に係る第一及び第二の洗浄便座用局部表示装置によれば、撮像手段や表示手段を洗浄便座本体とは別個に設け、洗浄便座に着脱自在な構成としたことにより、洗浄便座本体を取り替えるのではなく、既存の洗浄便座に取り付けることで、局部の状態を目視により確認することができる。よって、局部の衛生管理を確実に行うことができる洗浄便座をより低コストで実現することが可能となる。また、この洗浄便座用局部表示装置を使用者が携帯すれば、外出先でも局部の衛生管理が行えるため、局部の衛生管理をより確実に行うことが可能となる。
なお、本発明において携帯端末とは、外部情報を読み取り可能な携帯用の情報処理端末であれば特に限定されず、例えば、携帯電話、PHS、携帯型ノートパソコン等が挙げられる。」
(ウ)「【0040】
<第四実施形態>
図9は、本発明に係る洗浄便座用局部表示装置の一例を示し、(a)は斜視図、(b)は洗浄便座に取り付けた状態を示す平面図である。
この洗浄便座用局部表示装置9は、図9(a)に示すように、局部を洗浄する洗浄ノズル1を備えた洗浄便座10に着脱自在なクリップ部91と、蛇腹状のアーム92の先端に設けられ、局部を撮像して画像を生成するカメラ部(撮像手段)2と、使用者の有する携帯電話(携帯端末)8に画像を送信可能な送信装置(送信手段)と、この送信装置に携帯電話8を接続可能な接続端子7と、カメラ部2を操作する操作パネル4と、を備えており、装置内部に設けられたバッテリーで作動するように構成されている。」
(エ)【図9】

イ 甲7に記載の技術事項
「局部を撮像して画像を生成するカメラ部(撮像手段)を洗浄便座に着脱自在な構成とした。」

(8)甲8
ア 甲8の記載事項
(ア)「【0001】
本発明は、トレイにおいて、老人等の使用者に異常が発生した場合に所定の発報を行うトイレ見守り方法およびこれに用いるトイレ見守り装置に関する。」
(イ)「【0016】
また、本発明のトイレ見守り方法によれば、撮影したトイレ内の画像をそのまま用いるのではなく、これをマトリクスにおけるブロック画像に変換する画像処理を行うため、使用者のトレイ内の画像がそのまま外部で見られることがなく、使用者のプライバシーや人権を侵害することがなく、適切な見守り保護が実現される。」
(ウ)「【0024】
図3に示すように、トイレ見守り装置1は、上記LED2の他、トイレ内を撮影するCCD等のカメラ3と、人感センサ4と、カメラ3による撮影画像や人感センサ4による検出状況等に基づいて正常状態か異常状態かの判別を行って異常状態の場合には所定の発報を行う見守り実行部5等を有するものである。」
(エ)「【0028】
見守り実行部5は、見守りのための種々の処理を行う見守り演算処理部8と、カメラ3によるトイレ内の画像を記憶するトイレ画像記憶部9と、トイレ画像記憶部9に記憶された画像を加工するトイレ画像処理部11と、トイレ画像処理部11による処理画像や前記人感センサ4における距離計測手段7による使用者Uまでの距離やタイマー6によるトイレ入室時間等の情報を記憶する見守り用情報記憶部10と、見守り用情報記憶部10に記憶された情報に基づいて見守り演算処理部8を介して正常状態か異常状態かを判断する状況判断部12と、状況判断部12で異常状態と判断した際に所定の発報を行う発報部13等を有するものである。」
(オ)「【0030】
また、この際、図5(a)に示すように、トイレの天井Cに取り付けられた見守り装置1によって便座Bに腰を下ろした使用者Uを、その上方から監視する。具体的には、図5(b)に示すように、トイレ見守り装置1における人感センサ4によって使用者Uまでの(基準)距離Lを計測する(S4004)と共に、図5(c)に示すように、カメラ3による使用者Uの撮影を開始し(S4005)、そして、図5(d)に示すように、画像処理として、撮影画像の二値化・記号化を行って(S4006)、分割1ブロックを1ドットとみなして記号化したブロック画像Dを取得し、更に図5(e)に示すように、このブロック画像Dにおける縦横方向の(基準)長さX1・Y1とその各(基準)座標C1?Cnを取得し(S4007)、これを異常判断の基準データとして見守り用情報記憶部10に記憶しておく(S4008)。」
(カ)【図5】


イ 甲8に記載の技術事項
「撮影したトイレ内の画像をそのまま用いるのではなく、これをマトリクスにおけるブロック画像に変換する画像処理。」

5 申立ての理由1(特許法第29条第1項第3号)についての当審の判断
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「便鉢部を有する」「便器3」は、本件発明1の「便鉢部を有する便器本体」に相当する。
甲1発明において、画像撮影部6は、被験者による排泄行為中の排泄物を被写体としてしており、排泄物が大便であることを踏まえると、甲1発明の「排泄行為中の排泄物」は、本件発明1の「便鉢部内に排泄された落下中の大便」に相当する。
本件発明1において、「時系列に撮影して複数の静止画像を取得する」ことは、本件明細書の段落0019を参照すると、毎秒60枚で撮影することであり、一般に動画を撮影することに相当するものである。してみると、甲1発明の動画で撮影する画像撮影部6としてのカメラは、本件発明1の「時系列に撮影して複数の静止画像を取得するカメラ」に相当する。
甲1発明の「排泄物が大便であると判断した場合は、大便の画像解析により、便が排出されるときの便の形状や性状、色を計測する」「データ処理・解析部18」と、本件発明1の「前記カメラにより取得された複数の静止画像から大便の性状の変化を推定する便性推定部」とは、共に「カメラにより取得された複数の静止画像から大便の性状の変化を推定する便性推定部」の点で共通する。

以上の相当関係を踏まえると、甲1発明の、「トイレ2の便器3」「画像撮影部6としてのカメラ」「データ処理・解析部18」と、本件発明1の「便器本体」「カメラ」「便性推定部」はそれぞれ対応することから、「トイレ2の便器3」「画像撮影部6としてのカメラ」「データ処理・解析部18」からなる「データ検出装置」と、本件発明1の「便器本体」「カメラ」「便性推定部」を備える「便器装置」は対応する。

(一致点)
便鉢部を有する便器本体と、
前記便鉢部内に排泄された落下中の大便を時系列に撮影して複数の静止画像を取得するカメラと、
前記カメラにより取得された複数の静止画像から大便の性状を推定する便性推定部と、を備える便器装置。

(相違点)
「画像から大便の性状を推定する」にあたり、本件発明1は、「性状の変化を推定する」のに対し、甲1発明は、性状の変化を推定するものではない点。

そして、上記相違点は、実質的に相違点であるから、本件発明1は、甲1発明ではない。

(2)本件発明2ないし5について
本件発明2ないし5は、本件発明1の「大便の性状の変化を推定する」構成を含むものであるから、甲1発明との対比における相違点と同じ相違点を有する。
よって、本件発明2ないし5は、甲1発明ではない。

(3) 小括
以上のとおり、本件発明1ないし5は、甲1発明ではないから、請求項1?5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

6 申立ての理由2(特許法第29条第2項)についての当審の判断
(1)本件発明1について
以下、上記相違点について検討する。

上記甲1の記載事項から、甲1発明の大便の画像解析は、「大便の形状や性状、色」を計測することにとどまり、大便の「性状の変化」を推定するものではないから、甲1から「性状の変化を推定する」動機付けは読み取れない。

甲2には、「(【0016】)排泄物性状測定装置1は、装置本体部10にて被験者Pが排泄した排泄物の性状を測定し、表示部44にその測定結果を表示するものであり、
(【0115】)排泄物性状測定処理では、被験者Pが便座15に着座した状態で、ある物体が放射温度分布計測手段60における温度検出素子62の計測領域64を通過すると、順次スキャンして温度分布データを生成し(ステップS20)、
(【0121】)排泄物性状測定制御回路27は、予め設定されたフレーム数の温度分布データ及び量子化分布データが蓄積されて、それぞれ、温度分布データ群及び量子化分布データ群が形成されたと判断した場合には、便識別処理をおこない、
(【0126】)この便識別処理が終了すると、次に、排泄物性状測定制御回路27は、温度分布データ群に、便識別フラグの値と性状判定フラグの値と尿温計測値とを付して、記憶させ(ステップS25)、
(【0155】)性状判定フラグの値としては、大便が「硬便」である場合には「1」を、「通常便」である場合には「2」を、「軟便」である場合には「3」をそれぞれ設定するものであり、
(【0176】)排泄物性状測定制御回路27は、読み出した温度分布データ群に付された性状判定フラグの値をカウントして最も多い値の性状判定フラグを抽出し、この性状判定フラグに応じた大便の性状(硬便、通常便、軟便)を、放射温度分布計測手段60の大便性状測定結果として確定する、
(【0016】)排泄物性状測定装置1。」の発明が記載されている。
そして、(【0115】【0121】【0126】)「温度分布データ群(予め設定されたフレーム数の温度分布データ)に性状判定フラグを付すこと」から、複数フレーム毎に大便の性状を取得することが読み取れる。
しかしながら、甲2には、複数フレーム毎に大便の性状を取得しても、「性状の変化を推定する」ことについては、記載も示唆もされていない。

甲3に「健康なウンコの一種として、はじめに褐色のバナナ状のウンコが出て、そのあとにやわらかいウンコがスーッと出てきます。」との技術事項が、甲4に「大承気湯で2日間下痢した際、先硬後軟で,最後は大量の泥状便であった。」との技術事項が、甲5に「気虚型便秘は、便の硬さは最初は硬いがあとは柔らかい先硬後軟がみられる。」との技術事項が、記載されている。
しかしながら、甲3ないし甲5は、いずれも症状(健康、下痢、便秘)によって、先硬後軟など性状が変化する便がでることが開示されているにとどまり、画像から便の性状の変化を推定することが記載も示唆もされていない。

また、甲6及び甲7は、便座へのカメラの着脱に関する文献であり、甲8は、撮影したトイレ内の画像をそのまま用いるのではなく、これをマトリクスにおけるブロック画像に変換する画像処理に関する文献であり、甲6ないし甲8には、便の性状の変化を画像から推定することが記載も示唆もされていない。

そして、甲3ないし甲5に記載されているように、1回の排便において大便の性状が変化する場合、甲1発明に甲2発明を適用しても、甲2発明は、性状判定フラグの値をカウントして最も多い値の性状判定フラグを抽出し、この性状判定フラグに応じた大便の性状(硬便、通常便、軟便)を結果として確定するものであるから、大便の性状の1つが出力されるだけで大便の性状の変化を推定することにはならない。

よって、甲1発明に甲2発明、及び甲3ないし甲8記載の技術事項を適用しても本件発明1にはならない。
したがって、本件発明1は、甲1発明、甲2発明、及び甲3ないし甲8記載の技術事項に基づき容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2ないし6について
本件発明2ないし6は、本件発明1の「大便の性状の変化を推定する」構成を含むものであるから、甲1発明との対比における相違点と同じ相違点を有する。
そして、相違点についての判断は、上記(1)で説示したとおりであるから、本件発明2ないし6は、本件発明1と同様に、甲1発明、甲2発明、及び甲3ないし甲8記載の技術事項に基づき容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3) 小括
以上のとおり、本件発明1ないし6は、甲1発明、甲2発明、及び甲3ないし甲8記載の技術事項に基づき容易に発明をすることができたものとはいえず、請求項1?6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

7 申立ての理由3(特許法第36条第6項第1号)についての当審の判断
(1)本件明細書の記載
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体等の生体の排泄物には、その生体の健康状態が反映される。特に、大便には、消化器系の健康状態(腸内環境)が反映される。したがって、大便の性状を把握することは、腸内環境の把握に役立てられる。このため、カメラで大便を撮影し、その性状を推定することが従来行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の装置は、生体データを取得して健康状態を推定する。この装置は、画像撮影部と、データ解析部と、を備えている。画像撮影部は、トイレの便器に設けられ、生体の排泄物を撮影する。データ解析部は、画像撮影部による撮影画像を解析する。また、データ解析部は、撮影画像の解析により排泄物の性状に関する生体データを取得し、この取得した生体データから生体の健康状態を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-252805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の装置では、得られるデータが十分なものであるとは言い難かった。このため、更に詳細に推定できる技術が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、健康状態(腸内環境)のより精緻な推定結果が得られる便器装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の便器装置は、便鉢部を有する便器本体と、
前記便鉢部内に排泄された落下中の大便を時系列に撮影して複数の静止画像を取得するカメラと、
前記カメラにより取得された複数の静止画像から大便の性状の変化を推定する便性推定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この便器装置は、カメラにより大便の静止画像を時系列に複数撮影する。そして、これら複数の静止画像から、大便の性状の変化を推定している。すなわち、便器装置は、1回の排便における大便の性状の時系列変化を推定する。このため、使用者の健康状態、特に、消化器系の健康状態(腸内環境)のより精緻な情報を得ることができる。
なお、上記「落下中」とは、大便が体外に放出されてから、便鉢部下部に設けられた溜水部の水面に到達するまで、又は便鉢部の壁面に到達するまでの間をいう。」

イ「【0024】
このような構成を有する便器装置1は、次に示すように大便の性状の変化を推定する。
【0025】
大便の性状の変化を推定するに当たっては、まず、カメラ20により時系列に取得した各静止画像における大便の性状を推定する。本実施例における大便の性状とは、硬さ(軟らかさ)である。本実施例の場合、大便の性状としての硬さを、6つに大別された性状パターンのいずれかに分類する。すなわち、本実施例の場合、便性推定部30は、予め複数に分類された所定の性状パターンのうちの1つに大便の性状を推定する。この大便の性状の推定は、各静止画像について行われる。
【0026】
6つの性状パターンとは、(1)コロコロ、(2)カチカチ俵、(3)バナナ、(4)半練り、(5)泥状、(6)水状である。なお、これらの性状のうち、(1)及び(2)は便秘、(3)及び(4)は健康、(5)及び(6)は下痢の各状態において排泄される大便の性状と定義している。また、上記性状のうち、(1)?(3)は硬便、(4)?(6)は軟便とも定義している。図3はこれら6つに分類した各性状パターンの例である。
【0027】
大便の硬さ(軟らかさ)を推定するに当たっては大便の形状に注目する。具体的には、撮影された静止画像から形状に関する特徴を抽出する。すなわち、カメラ20により撮影された静止画像内の大便の形状に関連する複数の特徴量を抽出し、これら複数の特徴量に基づいて、大便の性状を推定する。抽出する特徴量は、例えば、静止画像内の大便に相当する画像領域の横幅や縦幅、画像領域を構成する画素の数等である。
【0028】
抽出した特徴量からの大便の性状の推定は、例えば以下のように行うことができる。最初に、予め性状パターンが既知の複数の大便について特徴量を抽出する。これにより、各性状パターンにおける特徴量の傾向が把握できる。そして、この傾向と、大便性状の推定対象画像から抽出した特徴量が示す傾向と、を比較することで、上記(1)?(6)の性状パターンのいずれであるかを推定する。
【0029】
時系列に撮影された各静止画像内の大便についての性状を推定したのち、便性推定部30は、大便の性状の変化を推定する。図10は、1回の排泄における大便の時系列変化の推定例を示している。同図からは、1回の排便で、大便の性状が、(1)コロコロ、(3)バナナ、(6)水状の3段階に変化したと推定される。また、(1)コロコロ、及び(3)バナナの性状パターンで排泄された時間と比較して、(6)水状の性状パターンで排泄された時間が大部分であると推定される。このように、便性推定部30は、1回の排便における大便の性状の時系列変化を推定することができる。
【0030】
したがって、実施例の便器装置は、使用者の健康状態のより精緻な推定結果を得ることができる。
【0031】
なお、上述のように、本実施例の便器装置1では、健康状態の推定結果は、図示しない表示端末に表示される。また、本実施例の便器装置1では、健康状態の推定結果の他に、大便性状を改善するためのアドバイスも行われる。便性改善アドバイスは、推定結果と同様に表示端末に表示される。
【0032】
便性改善アドバイスとしては、例えば、1回の排便において、(1)コロコロから(2)カチカチ俵の性状に変化した大便が排泄されたと推定された場合には、「肉類の食べ過ぎの可能性があります。野菜も摂取してバランス良い食事を心がけましょう」や、「トイレを我慢すると排便タイミングを逃し、便秘に繋がります。便意を催した際にはなるべく素早くトイレに行きましょう」など、便性変化の推定結果に基づく便性改善アドバイスを表示する。このように、便器装置1では、食事を含むライフスタイル全般に関わるアドバイスが表示端末に表示される。また、アドバイスの情報は、推定結果データと併せて記憶させるようにして、随時確認できるようにしてもよい。」

(2)本件発明の課題
前記(1)の本件明細書の記載からすると、背景技術を踏まえた本件発明の課題は、次のとおり認められる。

大便には、消化器系の健康状態(腸内環境)が反映され、大便の性状を把握することは、腸内環境の把握に役立てられる。このため、カメラで大便を撮影し、その性状を推定することが従来行われており、特許文献1の装置は、画像撮影部とデータ解析部とを備え、データ解析部は、撮影画像の解析により排泄物の性状に関する生体データを取得し、この取得した生体データから生体の健康状態を推定しているが、特許文献1の装置では、得られるデータが十分なものであるとは言い難かったとの技術背景がある。(【0002】?【0005】)
そして、本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、1回の排便における大便の性状の時系列変化を推定することで(【0008】、【0029】)、健康状態(腸内環境)のより精緻な推定結果が得られる便器装置を提供することを解決すべき課題としている(【0006】、【0008】、【0030】)。

(3)判断
発明の詳細な説明に記載された発明は、従来の撮影画像の解析により取得される排泄物の性状に関する生体データが十分ではないことから、より精緻な推定結果を得るため、「1回の排便における大便の性状の時系列変化を推定すること」としたものであるといえる。
そして、本件発明1において、「前記便鉢部内に排泄された落下中の大便を時系列に撮影して複数の静止画像を取得するカメラと、前記カメラにより取得された複数の静止画像から大便の性状の変化を推定する便性推定部と、を備えること」は、「1回の排便における大便の性状の時系列変化を推定する」手段を備えることであるといえ、健康状態(腸内環境)のより精緻な推定結果が得られる便器装置を提供することという課題を解決できると当業者が認識できるものである。
以上のとおりであるから、本件発明1について、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、当業者であれば、発明の詳細な説明に開示された内容を、本件発明1まで拡張又は一般化できると認識できるから、上記申立ての理由3に理由はない。

(4)申立人の主張について
ア 申立人は、本件発明1の「前記カメラにより取得された複数の静止画像から大便の性状の変化を推定する便性推定部」について以下のとおり主張する。
(ア)「大便の性状を1つの静止画像毎に推定」について
申立人は、本件発明1のサポート要件違反1として「本件明細書には、「大便の性状を1つの静止画像毎に推定」した後、大便の性状の変化を推定することのみが記載されており、他の態様は何ら記載されていない。また、本願の出願当時の技術常識に照らし、「大便の性状を1つの静止画像毎に推定」した後、大便の性状の変化を推定する以外の実施態様が、当業者には明らかであると言うこともできない。よって、本件明細書に記載された発明を、本件発明1に記載された範囲まで拡張又は一般化することはできず、本件発明1は、サポート要件(特許法第36条第6項1号)に違反するものであり、取り消されるべきものである。」(申立書48?49頁)と主張する。

(イ)「大便の性状を予め複数に分類された所定の性状パターンに分類された所定の性状パターンのうちの1つに推定」について
また、申立人は、本件発明1のサポート要件違反2として「本件明細書には、「大便の性状を予め複数に分類された所定の性状パターンに分類された所定の性状パターンのうちの1つに推定」した後、大便の性状の変化を推定することのみが記載されており、他の態様は何ら記載されていない。また、本願の出願当時の技術常識に照らし、「大便の性状を予め複数に分類された所定の性状パターンに分類された所定の性状パターンのうちの1つに推定」した後、大便の性状の変化を推定する以外の実施態様が、当業者には明らかであると言うこともできない。よって、本件明細書に記載された発明を、本件発明1に記載された範囲まで拡張又は一般化することはできず、本件発明1は、サポート要件(特許法第36条第6項1号)に違反するものであり、取り消されるべきものである。」(申立書49?50頁)と主張する。

イ 申立人の主張についての判断
(ア)「大便の性状を1つの静止画像毎に推定」について
本件発明1は、「大便の性状の変化を推定する」ために、時系列的に大便の性状を取得するものであるが、時系列的に取得する手段として、発明の詳細な説明に記載された「1つの静止画像毎」に取得することだけでなく、複数のフレーム画像毎に取得する(例えば、甲2(【0115】【0116】【0121】)には、温度分布データ群(予め設定されたフレーム数の温度分布データ)に性状判定フラグを付すことが記載されており、複数フレーム毎に大便の性状を取得しているといえる。)手段等を、当業者であれば具体的に想起し得るものである。

(イ)「大便の性状を予め複数に分類された所定の性状パターンに分類された所定の性状パターンのうちの1つに推定」について
本件明細書の発明の詳細な説明に記載された「大便の性状を予め複数に分類された所定の性状パターンに分類された所定の性状パターンのうちの1つに推定」することは、甲1の「対応テーブルを用いて、便の形状・性状を抽出すること」(【0085】)との記載、及び、甲2の「予め用意された性状判定基準(性状判定テーブル)を適用することにより、その大便の性状を判定する」(【0182】)との記載から、大便の性状判定における、本願の出願当時の技術常識であったといえる。

(ウ)小括
したがって、本件発明1の「前記カメラにより取得された複数の静止画像から大便の性状の変化を推定する便性推定部」について、「大便の性状を1つの静止画像毎に推定」する事項、及び「大便の性状を予め複数に分類された所定の性状パターンに分類された所定の性状パターンのうちの1つに推定」する事項が特定されてないとしても、それらの事項は、当業者であれば具体的に想起し得る事項、又は、本願の出願当時の技術常識であるから、発明の詳細な説明に開示された内容を、本件発明1に記載された範囲まで拡張又は一般化することはできないとはいえない。

8 申立ての理由4(特許法第36条第6項第2号)についての当審の判断
申立人は「本件発明1の構成要件Cは、便性推定部が「前記カメラにより取得された複数の静止画像から大便の性状の変化を推定する」ことを規定している。ここで、本件発明1における「大便の性状の変化を推定する」とは、「大便の性状が、今後どのように変化していくかを推定する」ものであるとして、日本語としてそれ自体で明確に解釈することができる。」と主張している。
ここで「推定」の意味は、「(1)推測して決定すること。おしはかってきめること。「年代を?する」(2)法律関係または事実が明瞭でない場合、争いや不確定な状態を避けるために法が一応下す判断。当事者がこれに異なることを証明したときは効果を失う。」(広辞苑)であり、本件発明1の「推定」は、前者の意味に相当する。
よって、本件発明1における「大便の性状の変化を推定する」とは、「大便の性状の変化を推測して決定する」ことであるとして、日本語としてそれ自体で明確に解釈することができる(以下「解釈1」という。)。
なお、申立人の主張する「大便の性状が、今後どのように変化していくかを推定する」との解釈(以下「解釈2」という。)は、「推定」が「予測」(将来の出来事や有様をあらかじめ推測すること。前もっておしはかること。「景気を?する」「?がつかない」)(広辞苑)であれば、成り立つことに鑑みるに、申立人の主張する「解釈2」は、「推定」を「予測」の意味に誤って解釈したものと考えられる。
また、本件明細書に「【0022】便性推定部30は、カメラ20により取得された複数の静止画像から大便の性状の変化を推定する。具体的には、便性推定部30は、時系列に撮影された複数の静止画像に基づいて、排泄開始から終了までの大便の性状の変化を推定する。」と記載されているように、「排泄開始から終了まで」の変化を推定するものであり、「今後どのように変化していくか」を推定するものではないから、本件発明1における「大便の性状の変化を推定する」ことを、本件明細書の記載を考慮しても「解釈2」のように解釈することにはならない。

以上のとおりであるから、本件発明1は明確であり、請求項1に係る特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

9 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
異議決定日 2021-06-09 
出願番号 特願2016-19763(P2016-19763)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (E03D)
P 1 651・ 121- Y (E03D)
P 1 651・ 537- Y (E03D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 横尾 雅一  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 渡戸 正義
森 竜介
登録日 2020-07-31 
登録番号 特許第6742663号(P6742663)
権利者 株式会社LIXIL
発明の名称 便器装置  
代理人 特許業務法人グランダム特許事務所  
代理人 弟子丸 健  
代理人 渡邊 誠  
代理人 田中 伸一郎  
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