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審決分類 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する B27N
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B27N
管理番号 1375246
審判番号 訂正2021-390002  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2021-01-06 
確定日 2021-04-28 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4134050号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4134050号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第4134050号は、平成17年1月14日に特許出願され、その請求項1ないし6に係る発明は、平成20年6月6日にその特許権の設定登録がされたものであって、特許権者であるハンディテクノ株式会社により令和3年1月6日に本件訂正審判が請求された。

第2 請求の趣旨及び訂正の内容
1 請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第4134050号の特許権全体に対し、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下のとおりである。(審決注:下線部分が訂正箇所である。)

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の前段における「多数の凹凸条が設けられており」という記載を、「多数の凹凸条が設けられてなる木質合成板建材の製造方法であって」に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の後段における「凹状谷部」という記載を、「凹条谷部」に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1の末尾の「木質合成板建材。」という記載を、「木質合成板建材の製造方法。」に訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2の前段における「多数の凹凸条が設けられており」という記載を、「多数の凹凸条が設けられてなる木質合成板建材の製造方法であって」に訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2の末尾の「木質合成板建材。」という記載を「木質合成板建材の製造方法。」に訂正する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3,4,5,6の末尾の「木質合成板建材。」という記載を、それぞれ「木質合成板建材の製造方法。」に訂正する。

第3 当審の判断
1 訂正事項1及び訂正事項3について
(1)訂正の目的について
訂正前の請求項1の記載は、「成形された基板の表面に・・・各凸条頂部の・・・色調と・・・凹状谷部の・・・色調とが対照的に表されていることを特徴とする木質合成板建材。」であるから、訂正前の請求項1に係る発明(以下「訂正前請求項1発明」という。)の対象は、「木質合成板建材」という「物」であることは明らかである。
そして、訂正前の請求項1には、「成形された基板の表面に、研削装置によって、前記凹凸条の表面に対する押圧力を調整しつつ凸条の頂部を切削することで、」及び「切削の強さ加減を調整することで」と特定されていることから、「木質合成板建材」を構成する「基板」に関し、その「製造方法」が記載されている。

ここで、「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう『発明が明確であること』という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である」(最高裁第二小法廷判決平成27年6月5日(平成24年(受)第1204号))と判示されている。

そこで、上記判示事項を踏まえて検討すると、訂正前の請求項1には、「成形された基板の表面に、研削装置によって、前記凹凸条の表面に対する押圧力を調整しつつ凸条の頂部を切削することで、」及び「切削の強さ加減を調整することで」という「木質合成板建材」を構成する「基板」の製造方法が記載されているから、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるものである。

そして、訂正事項1及び訂正事項3は、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがある訂正前の請求項1を、「熱可塑性合成樹脂と木粉の混合材を押出し成形して得た基板からなる木質合成板建材であり、基板の断面には、複数個の中空部が、間隔をおいて基板の長さ方向に沿って平行に貫通するように配列形成されているとともに、基板の表面には、基板の長さ方向に沿って、高さ、深さおよび幅間隔の不規則な、多数の凹凸条が設けられてなる木質合成板建材の製造方法」として、訂正前の請求項1の後段に記載の「成形された基板の表面に、研削装置によって、前記凹凸条の表面に対する押圧力を調整しつつ凸条の頂部を切削することで、各凸条頂部の切削された面における木粉の色と原料樹脂の色との混合した色調と、切削の強さ加減を調整することで露呈する凹状谷部の原料樹脂層の色調とが対照的に表されていること」を特定するものであって、「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
したがって、訂正事項1及び訂正事項3は、特許法126条1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
上記(1)のとおり、訂正事項1及び訂正事項3は、「木質合成板建材」という「物の発明」を、「木質合成板建材の製造方法」という「物の製造方法」に変更するものであり、本件の願書に添付した明細書の段落【0014】には、「本発明の木質合成板建材の成形に際しては、」「基板の表面には、基板の長さ方向に沿って、高さ、深さおよび幅間隔の不規則な、多数の凹凸条を設けて、その後研削装置により、この凹凸条の表面に対する押圧力を調整しつつ凸条の頂部を切削して、各凸条頂部の切削された面における木粉の色と原料樹脂の色との混合した色調と、切削の強さ加減を調整することで露呈する凹状谷部の原料樹脂層の色調とが対照的に表現されるようにする」と記載され、訂正後の請求項1に係る発明(以下「訂正後請求項1発明」という。)に対応する「木質合成板建材の製造方法」が記載されているから、訂正事項1及び訂正事項3は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項1及び訂正事項3は、特許法126条5項の規定に適合する。

(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
ア 発明が解決しようとする課題とその解決手段について
特許法126条6項は、1項に規定する訂正がいかなる場合にも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならない旨を規定したものである。
また、特許法36条4項1号の規定により委任された特許法施行規則の24条の2には、「特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と規定されているから、訂正前請求項1発明と訂正後請求項1発明において、発明が解決しようとする課題及びその解決手段が、実質的に変更されたものか否かにより、訂正後請求項1発明の技術的意義が、訂正前請求項1発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更されたものであるか否かについて検討する。

訂正前の本件特許明細書の段落【0004】、【0005】の記載から、訂正前請求項1発明の課題は、「合成板建材の表面に木目模様を印刷処理したり、塗料を塗布することなく、表面に明快な木質状の筋目が形成された木質感のある木質合成板を能率的に製造できるようにした木質合成板建材の提供」することであり、その解決手段は、同段落【0006】の記載から、「成形された基板の表面に、研削装置によって、前記凹凸条の表面に対する押圧力を調整しつつ凸条の頂部を切削することで、各凸条頂部の切削された面における木粉の色と原料樹脂の色との混合した色調と、切削の強さ加減を調整することで露呈する凹状谷部の原料樹脂層の色調とが対照的に表されていること」又は「成形された基板の表面に、研削装置によって、前記凹凸条の表面に対する押圧力を調整しつつ凸条の頂部及び両肩部を切削することで、各凸条頂部の切削された面における木粉の色と原料樹脂の色との混合した色調と、削り量が十分でないために木粉が見えたり見えないような樹脂層の色調と、切削力が及ばないために、木粉の露出が見られない樹脂層の色調とが対照的に表されている」ことである。
一方、訂正後の本件特許明細書の段落【0004】ないし【0006】の記載は、訂正前の段落【0004】ないし【0006】の記載と同様であり、訂正後請求項1発明の課題は、「合成板建材の表面に木目模様を印刷処理したり、塗料を塗布することなく、表面に明快な木質状の筋目が形成された木質感のある木質合成板を能率的に製造できるようにした木質合成板建材の提供」することであり、その解決手段は「成形された基板の表面に、研削装置によって、前記凹凸条の表面に対する押圧力を調整しつつ凸条の頂部を切削することで、各凸条頂部の切削された面における木粉の色と原料樹脂の色との混合した色調と、切削の強さ加減を調整することで露呈する凹状谷部の原料樹脂層の色調とが対照的に表されていること」又は「成形された基板の表面に、研削装置によって、前記凹凸条の表面に対する押圧力を調整しつつ凸条の頂部及び両肩部を切削することで、各凸条頂部の切削された面における木粉の色と原料樹脂の色との混合した色調と、削り量が十分でないために木粉が見えたり見えないような樹脂層の色調と、切削力が及ばないために、木粉の露出が見られない樹脂層の色調とが対照的に表されている」ことである。
してみると、訂正前請求項1発明と訂正後請求項1発明の課題には、何ら変更はなく、訂正前請求項1発明と訂正後請求項1発明における課題解決手段も、実質的な変更はない。
したがって、訂正後請求項1発明の技術的意義は、訂正前請求項1発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正による第三者の不測の不利益について
特許請求の範囲は、「特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべて」が記載されたもの(特許法36条5項)である。
また、特許法126条6項は、1項に規定する訂正がいかなる場合にも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならない旨を規定したものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、言い換えれば、訂正前の発明の「実施」に該当しないとされた行為が訂正後の発明の「実施」に該当する行為となる場合、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれがあるため、そうした事態が生じないことを担保したものである。
以上を踏まえ、訂正前請求項1発明と訂正後請求項1発明において、それぞれの発明の「実施」に該当する行為の異同により、訂正後請求項1発明の「実施」に該当する行為が、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものであるか否かについて検討する。

ここで、特許法2条3項1号に規定された「物の発明」(訂正前請求項1発明)及び3号に規定された「物を生産する方法の発明」(訂正後請求項1発明)の実施について比較する。
「物の発明」の実施(1号)とは、「その物の生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」であり、「物を生産する方法」の実施(第3号)とは、「その方法の使用をする行為」(2号)のほか、その方法により生産した「物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」である。ここで、「物を生産する方法」の実施における「その方法の使用をする行為」とは、「その方法の使用により生産される物の生産をする行為」と解されることから、「物の発明」の実施における「その物の生産」をする行為に相当する。

すると、「物の発明」の実施においては、物の生産方法を特定するものではないのに対して、「物を生産する方法の発明」の実施においては、物の生産方法を「その方法」に特定している点で相違するが、その実施行為の各態様については、全て対応するものである。

そして、訂正前請求項1発明は、「成形された基板の表面に、研削装置によって、前記凹凸条の表面に対する押圧力を調整しつつ凸条の頂部を切削することで、」及び「切削の強さ加減を調整することで」という製造方法(以下「特定の製造方法」という。)により「木質合成板建材」という物が特定された「物の発明」であるから、前記特定の製造方法により製造された「木質合成板建材」に加え、前記特定の製造方法により製造された「木質合成板建材」と同一の構造・特性を有する物も、特許発明の実施に含むものである。
一方、訂正後請求項1発明は、上記特定の製造方法により「木質合成板建材の製造方法」という方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから、前記特定の製造方法により製造された「木質合成板建材」を、特許発明の実施に含むものである。

したがって、訂正後請求項1発明の「実施」に該当する行為は、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものとはいえない。

ウ 小括
以上のとおり、訂正後請求項1発明の技術的意義は、訂正前請求項1発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更するものではなく、訂正後請求項1発明の「実施」に該当する行為は、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものとはいえないから、訂正事項1及び訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法126条6項の規定に適合する。

2 訂正事項2について
(1)訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1における「凹状谷部」との記載を「凹条谷部」に訂正するものであるところ、当該「凹状谷部」との記載は、訂正前の請求項1における「凸条頂部」との記載に対応するものであること、願書に添付した明細書の段落【0011】に「凹条谷部」との記載、同段落【0025】及び【0026】に「凹条5の谷部」との記載があること、また、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には「凹条谷部」との記載しかなく「凹状谷部」との記載がないことからみて、訂正前の請求項1における「凹状谷部」が「凹条谷部」の誤記であることは明らかである。
したがって、訂正事項2は、特許法126条1項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものに該当する。

(2)願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
上記(1)のとおり、訂正事項2は、特許法126条1項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものであるから、訂正事項2は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
そして、訂正後の「凹条谷部」については、本件の願書に最初に添付した明細書の段落【0011】に「凹条谷部」との記載、同段落【0025】及び【0026】に「凹条5の谷部」との記載があり、訂正事項2は、本件の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項2は、特許法126条5項の規定に適合する。

(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項2は、訂正前の請求項1に「凹状谷部」との誤記があったのを「凹条谷部」と訂正するものであり、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するといった事情も認められない。
したがって、訂正事項2は、特許法126条6項の規定に適合する。

(4)訂正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて
訂正事項2は、「誤記の訂正」を目的とするものであるから、特許法126条7項の規定により訂正後請求項1発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることを要する。そして、訂正後請求項1発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、訂正事項2は、特許法126条7項の規定に適合する。

3 訂正事項4及び訂正事項5について
(1)訂正の目的について
訂正前の請求項2の記載は、「成形された基板の表面に・・・各凸条頂部の・・・色調と・・・木粉が見えたり見えないような樹脂層の色調と・・・木粉の露出が見られない樹脂層の色調とが対照的に表されていることを特徴とする木質合成板建材。」であるから、訂正前の請求項2に係る発明(「訂正前請求項2発明」という。)の対象は、「木質合成板建材」という「物」であることは明らかである。
そして、訂正前の請求項2には、「成形された基板の表面に、研削装置によって、前記凹凸条の表面に対する押圧力を調整しつつ凸条の頂部及び両肩部を切削することで、」と特定されていることから、「木質合成板建材」を構成する「基板」に関し、その「製造方法」が記載されている。

そうすると、上記「1(1)」で述べたのと同様の理由により、訂正事項4及び訂正事項5は、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがある訂正前の請求項2を、「熱可塑性合成樹脂と木粉の混合材を押出し成形して得た基板からなる木質合成板建材であり、基板の断面には、複数個の中空部が、間隔をおいて基板の長さ方向に沿って平行に貫通するように配列形成されているとともに、基板の表面には、基板の長さ方向に沿って、高さ、深さおよび幅間隔の不規則な、多数の凹凸条が設けられてなる木質合成板建材の製造方法」として、訂正前の請求項2の後段に記載の「成形された基板の表面に、研削装置によって、前記凹凸条の表面に対する押圧力を調整しつつ凸条の頂部及び両肩部を切削することで、各凸条頂部の切削された面における木粉の色と原料樹脂の色との混合した色調と、削り量が十分でないために木粉が見えたり見えないような樹脂層の色調と、切削力が及ばないために、木粉の露出が見られない樹脂層の色調とが対照的に表されていること」を特定するものであって、「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
したがって、訂正事項4及び訂正事項5は、特許法126条1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
上記(1)のとおり、訂正事項4及び訂正事項5は、「木質合成板建材」という「物の発明」を、「木質合成板建材の製造方法」という「物の製造方法」に変更するものであり、本件の願書に添付した明細書の段落【0025】には、「成形された基板1が十分に冷却して硬化した後、例えばワイヤブラシ等の研削装置によって、基板1の表面を、押圧力を調整しつつ凸条6の頂部およびその両肩部が削られるように切削する。その結果、図5に示すように、凸条6の頂部は木粉3が多量に露出した原料樹脂層2cの色調と、また、凸条頂部の両肩部、つまり凸条6と凹条5の中間の傾斜部6aでは、削り量が十分でないために木粉3が見えたり見えないような樹脂層2bの色調と、さらに、凹条5の谷部では、切削力が及ばないために、木粉3の露出が見られない濃度のある樹脂層2aの色調とが、対照的に表される」と記載され、訂正後の請求項2に係る発明(以下「訂正後請求項2発明」という。)に対応する「木質合成板建材の製造方法」が記載されているから、訂正事項4及び訂正事項5は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項4及び訂正事項5は、特許法126条5項の規定に適合する。

(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
ア 発明が解決しようとする課題とその解決手段について
上記「1(3)ア」と同様の理由により、訂正前請求項2発明と訂正後請求項2発明の課題には、何ら変更はなく、訂正前請求項2発明と訂正後請求項2発明における課題解決手段も、実質的な変更はない。
したがって、訂正後請求項2発明の技術的意義は、訂正前請求項2発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正による第三者の不測の不利益について
上記「1(3)イ」と同様の理由により、訂正前請求項2発明は、「成形された基板の表面に、研削装置によって、前記凹凸条の表面に対する押圧力を調整しつつ凸条の頂部及び両肩部を切削することで、」という製造方法(以下「特定の製造方法」という。)により「木質合成板建材」という物が特定された「物の発明」であるから、前記特定の製造方法により製造された「木質合成板建材」に加え、前記特定の製造方法により製造された「木質合成板建材」と同一の構造・特性を有する物も、特許発明の実施に含むものである。
一方、訂正後請求項2発明は、上記特定の製造方法により「木質合成板建材の製造方法」という方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから、前記特定の製造方法により製造された「木質合成板建材」を、特許発明の実施に含むものである。
したがって、訂正後請求項2発明の「実施」に該当する行為は、訂正前請求項2発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから、訂正前請求項2発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものとはいえない。

ウ 小括
以上のとおり、訂正後請求項2発明の技術的意義は、訂正前請求項2発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更するものではなく、訂正後請求項2発明の「実施」に該当する行為は、訂正前請求項2発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものとはいえないから、訂正事項4及び訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法126条6項の規定に適合する。

4 訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項3ないし6の末尾の「木質合成板建材。」という記載を、それぞれ「木質合成板建材の製造方法。」に訂正するものである。
上記「1」及び「3」で述べたのと同様の理由により、訂正事項6は、特許法126条1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、また、特許法126条5項、6項の規定に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求に係る訂正事項1ないし6は、特許法126条1項ただし書第2号、及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条5項、6項及び7項の規定に適合するものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性合成樹脂と木粉の混合材を押出し成形して得た基板からなる木質合成板建材であり、基板の断面には、複数個の中空部が、間隔をおいて基板の長さ方向に沿って平行に貫通するように配列形成されているとともに、基板の表面には、基板の長さ方向に沿って、高さ、深さおよび幅間隔の不規則な、多数の凹凸条が設けられてなる木質合成板建材の製造方法であって、
成形された基板の表面に、研削装置によって、前記凹凸条の表面に対する押圧力を調整しつつ凸条の頂部を切削することで、各凸条頂部の切削された面における木粉の色と原料樹脂の色との混合した色調と、切削の強さ加減を調整することで露呈する凹条谷部の原料樹脂層の色調とが対照的に表されていることを特徴とする木質合成板建材の製造方法。
【請求項2】
熱可塑性合成樹脂と木粉の混合材を押出し成形して得た基板からなる木質合成板建材であり、基板の断面には、複数個の中空部が、間隔をおいて基板の長さ方向に沿って平行に貫通するように配列形成されているとともに、基板の表面には、基板の長さ方向に沿って、高さ、深さおよび幅間隔の不規則な、多数の凹凸条が設けられてなる木質合成板建材の製造方法であって、
成形された基板の表面に、研削装置によって、前記凹凸条の表面に対する押圧力を調整しつつ凸条の頂部及び両肩部を切削することで、各凸条頂部の切削された面における木粉の色と原料樹脂の色との混合した色調と、削り量が十分でないために木粉が見えたり見えないような樹脂層の色調と、切削力が及ばないために、木粉の露出が見られない樹脂層の色調とが対照的に表されていることを特徴とする木質合成板建材の製造方法。
【請求項3】
成形の過程で基板の表面に発生する凹凸面を抑制するため、ヒケによる凹部が発生する部分には、凸条および凹条の高さ位置を高めに設け、また、膨らみが発生する部分には、凸条および凹条の高さ位置を低めに設けて、それぞれ凸条の頂部を研削装置により切削することで、基板の表面を木質感のある均一な平面とした請求項1又は請求項2に記載の木質合成板建材の製造方法。
【請求項4】
基板の断面に設けられる複数個の貫通中空部が、基板の長さ方向に沿って、間隔をおいて平行に貫通するように配列された縦長のI形孔と、隣接する一対のI形孔の中間部を横孔により水平に連結したH形孔との組合わせから構成される請求項1?請求項3のいずれかに記載の木質合成板建材の製造方法。
【請求項5】
基板の両側面に、基板を根太などに固定金具を介して係合するための凹溝が基板の長さ方向に沿って設けられている請求項1?請求項4のいずれかに記載の木質合成板建材の製造方法。
【請求項6】
基板の長さ方向に沿った両側面が、凹溝を有しない平坦面となっている請求項1?請求項4のいずれかに記載の木質合成板建材の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2021-03-26 
結審通知日 2021-03-31 
審決日 2021-04-19 
出願番号 特願2005-7203(P2005-7203)
審決分類 P 1 41・ 853- Y (B27N)
P 1 41・ 854- Y (B27N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 隆一  
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 袴田 知弘
長井 真一
登録日 2008-06-06 
登録番号 特許第4134050号(P4134050)
発明の名称 木質合成板建材  
代理人 武田 明広  
代理人 武田 明広  

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