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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L |
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管理番号 | 1375641 |
審判番号 | 不服2020-9407 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-07-06 |
確定日 | 2021-07-20 |
事件の表示 | 特願2016-143118「通信装置及び通信経路切替方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月25日出願公開、特開2018- 14621、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年7月21日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和元年10月17日付け:拒絶理由通知 令和元年12月26日 :意見書、手続補正書の提出 令和2年 4月 3日付け:拒絶査定(原査定) 令和2年 7月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和2年4月3日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1ないし5及び8ないし14に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、また、本願請求項6及び7に係る発明は、以下の引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 [引用文献等一覧] 1 特開2007-067601号公報 2 特開昭62-005759号公報 3 特開2003-244179号公報 4 特開2007-36926号公報 第3 本願発明 本願請求項1ないし14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明14」という。)は、令和2年7月6日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される発明であり、このうち、本願発明1は、以下のとおりの発明である。 「 通信信号を出力する現用系インタフェース部と、 予備系インタフェース部と、 前記現用系インタフェース部と前記予備系インタフェース部との間で前記通信信号の通信経路の切り替えを制御するための切替制御信号を送信する制御部と を備え、 前記現用系インタフェース部は、 第1のメモリと、 前記制御部からの前記切替制御信号に従ってデータ転送の指示を出す第1の中央処理装置と、 前記第1の中央処理装置とは異なる少なくとも1つのハードウェアで構成された第1の通信制御部と を有し、 前記第1の通信制御部は、 ダイレクトメモリアクセス方式によってデータの転送を行う第1の制御回路と、 前記第1の中央処理装置とは異なるハードウェアで構成されたフレーム送信部と を有し、 前記通信経路の切り替えのとき、前記第1の制御回路は、前記第1の中央処理装置からの前記指示に従って前記第1のメモリに記憶されたデータを読み出し、前記読み出した前記データを前記フレーム送信部に転送し、前記フレーム送信部は、前記第1の制御回路から入力された前記データを、前記制御部を経由せずに前記予備系インタフェース部に向けて転送する ことを特徴とする通信装置。」 なお、本願発明2ないし13は、本願発明1を減縮したものであり、本願発明14は、本願発明1を方法の発明として特定したものである。 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)引用文献1記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2007-067601号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のために当審が付与した。(以降の記載においても同様。) 「【0011】 図1は、本発明の一実施例の概略構成ブロック図を示す。センター局において、現用の光終端装置(OLT:Optical Line Terminal)10aと、予備の光終端装置(OLT)10bと、現用OLT10aから予備OLT10bへの切替えを制御する制御装置30が、同一のラックに収容される。L3(Layer 3)スイッチ40は、上流ネットワークとOLT10a,10bとの間で上りデータを仲介する。」 「【0013】 現用OLT10aと予備OLT10bは、同じ構成と機能からなる。基本的な動作を説明する。現用OLT10aの構成要素には、符号にaを付加し、予備OLT10bの構成要素には符号にbを付加する。」 「【0018】 CPU16aは、配下のONU68-1?69-nを管理するのに必要な情報、及び、種々の設定情報をメモリ26aに記憶する。設定情報は、予約等により設定される不変情報であり、例えば、LLID(論理リンク識別子)数、VLANモードの有効/無効、IGMP Snoopingの有効/無効、及び、各ONU68-1?68-n配下のホームゲートウエイの再認証間隔等を含む。管理情報は、動作状況に応じて変動する情報であり、具体的には、現に接続しているONU数、接続している各ONUを特定する情報、接続している各ONUに割り当てられている帯域割当量、IGMPスヌーピング(Snooping)テーブル、及びMACアドレス学習テーブルからなる。MACアドレス学習テーブルには、接続するONU及び配下の電子機器のサービス及びLANインターフェースに割り当てられ得る実際の又は仮想のMACアドレスが格納される。」 「【0021】 制御装置30は、現用OLT10aから予備OLT10bへの切替えを制御するCPU32と、切替えに際して現用OLT10aから予備OLT10bに転送される設定情報及び予備情報を一時記憶するメモリ34を具備する。」 「【0029】 図2乃至図4を参照して、本実施例における現用OLT10aから予備OLT10bへの切替え動作を説明する。図2は、制御装置30の動作フローチャートを示す。図3は、OLT10aの動作フローチャートを示す。図4は、OLT30bの動作フローチャートを示す。 【0030】 制御装置30は、予備OLLT10bを受動動作するスタンバイモードで起動し、上位ネットワークから現用OLT10aに供給する下りデータを、予備OLT10bにもミラーリングするようにL3スイッチ40に指示し、現用OLT10aに切替え処理開始を指示する(S1)。 …(中略)… 【0034】 制御装置30は、現用OLT10aの下りバッファ14aの使用サイズよりも、予備OLT10bの下りバッファ14bのサイズが一定マージン以上大きくなるように、下りバッファ14aの使用サイズを縮小するように現用OLT10aに指示する(S2)。現用OLT10aは、切替え処理開始の指示を受けると(S21)、切替えモードに入り、そして、下りバッファ14aのサイズを一定マージン分だけ縮小する(S22)。切替えモードでは、新たに参加するONUを探索する処理を休止する。 …(中略)… 【0036】 下りバッファサイズの調整の後、現用OLT10aは、管理情報と設定情報を制御装置30に送信し(S23)、L3スイッチ40からの特殊フレームの受信を待つ(S24)。先に説明したように、管理情報は、状況に応じて動的に変化する情報からなり、設定情報は、配下のPONシステムに予め設定される不変の情報からなる。 【0037】 制御装置30は、現用OLT10aからの管理情報と設定情報を予備OLT10bに転送する(S3)。予備OLT10bは、制御装置30からの管理情報と設定情報を受信し、メモリ26bに格納し(S41)、L3スイッチ40からの特殊フレームの受信を待つ(S42)。」 (当審注:【0030】の「予備OLLT10b」は「予備OLT10b」の誤記と認められる。) 「【図1】 」 (2)引用発明 引用文献1(特に、【0011】)より、「現用の光終端装置(OLT)10a」、「予備の光終端装置(OLT)10b」及び「制御装置30」により「センター局」を構成しているといえる。 よって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 現用の光終端装置(OLT)10a、予備の光終端装置(OLT)10b及び制御装置30から構成されるセンター局であって、 現用OLT10aと予備OLT10bは、同じ構成と機能からなり、現用OLT10aの構成要素には、符号にaを付加し、予備OLT10bの構成要素には符号にbを付加し、 CPU16aは、配下のONU68-1?69-nを管理するのに必要な情報、及び、種々の設定情報をメモリ26aに記憶し、 制御装置30は、現用OLT10aから予備OLT10bへの切替えを制御するCPU32と、切替えに際して現用OLT10aから予備OLT10bに転送される設定情報及び予備情報を一時記憶するメモリ34を具備し、 現用OLT10aから予備OLT10bへの切替え動作において、 制御装置30は、予備OLT10bを受動動作するスタンバイモードで起動し、上位ネットワークから現用OLT10aに供給する下りデータを、予備OLT10bにもミラーリングするようにL3スイッチ40に指示し、現用OLT10aに切替え処理開始を指示し、 現用OLT10aは、切替え処理開始の指示を受けると、切替えモードに入り、 現用OLT10aは、管理情報と設定情報を制御装置30に送信し、 制御装置30は、現用OLT10aからの管理情報と設定情報を予備OLT10bに転送し、 予備OLT10bは、制御装置30からの管理情報と設定情報を受信し、メモリ26bに格納する、 センター局。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開昭62-005759号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (第1ページ左下欄第15-20行) 「〔発明の利用分野〕 本発明は、2重化系情報処理システムにおける情報救済方式に係り、特に2重化系交換処理システムにおいて系切替時に、旧現用系における呼情報を新現用系にて読み出すようにした情報救済方式に関するものである。」 (第2ページ右上欄第4行-左下欄第11行) 「〔発明の実施例〕 以下、本発明を2重化系電話交換処理システムに例を採り第1図から第4図により説明する。 先ずその一例でのシステム構成について説明すれば、第1図はその概略を示したものである。このシステムは現用系1と予備系2からなるが、現用系1においてはプロセッサ13、主メモリ14、通話路制御装置18および通信制御装置15はバス16を介し接続されたものとなっている。これと同様に予備系2においてもプロセッサ23、主メモリ24、通信路制御装置28および通信制御装置25はバス26を介し接続されるようになっている。この場合通信制御装置15、25は各々の系の主メモリ14,24をDMA(Direct Memory Access)にてアクセスすることが可能とされ、現用系1と予備系2とを接続する通信制御バス3を介し各々相手系の主メモリ24、14に格納されている内容をアクセスして、自系内のメモリ14、24に転送記憶させるための機能を備えている。また、主メモリ14、24にはプログラムおよび種々の処理データが格納されるが、特に、主メモリ14、24には第2図に示す如く呼情報格納エリア17、27が確保されており、 現用系のそのエリアには現用系と予備系間で交換処理に必要な情報、即ち、通話路情報、加入者収容位置、トランク収容位置、呼状態番号、課金情報等が格納されるようになっている。勿論、予備系2のエリア27には現用系1からのそれら呼情報が格納されるものである。」 (第2ページ右下欄第9行-第3ページ左上欄第5行) 「 さて、系の切替は、現用系1のプロセッサ13が通信制御装置15、25を介し予備系2のプロセッサ23に系切替信号を発することによって行なわれる。通常、この切替信号は現用系1のプロセッサ13等に障害が発生した場合に自動的に発せられるが、予傭系2ではこの切替信号が割込みとしてプロセッサ23に入力され、プロセッサ23はこれにもとづき主メモリ24内の再開処理プログラムを起動するところとなるものである。起動された再開処理プログラムは先ず初めに通信制御装置25,15を介し旧現用系1の主メモリ14に格納されている最新の呼情報を読み出しこれを自系(新現用系)2の主メモリ24の呼情報格納エリア27に格納するための一連の処理を行なった後、この最新の呼情報をもとにオンライン動作に必要な各種装置および主メモリ24上の各種データの初期設定を行なうようになっている。」 (第3ページ右上欄第18行-左下欄第4行) 「通信制御装置15ではプロセッサ13とは独立に主メモリ14の呼情報格納エリア17に格納されている呼情報をDMAにて読み出したうえバス16、通信制御バス3を介し通信制御装置25へ転送する一方、通信制御装置25ではバス26を介しその呼情報を主メモリ24の呼情報格納エリア27へ格納するところとなるものである。」 「第1図 」 以上より、引用文献2には、次の技術的事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「 2重化系情報処理システムにおける情報救済方式において、 このシステムは現用系1と予備系2からなり、 現用系1においてはプロセッサ13、主メモリ14、通話路制御装置18および通信制御装置15はバス16を介し接続されたものとなっており、 これと同様に予備系2においてもプロセッサ23、主メモリ24、通信路制御装置28および通信制御装置25はバス26を介し接続されるようになっており、 通信制御装置15、25は各々の系の主メモリ14、24をDMA(Direct Memory Access)にてアクセスすることが可能とされ、現用系1と予備系2とを接続する通信制御バス3を介し各々相手系の主メモリ24、14に格納されている内容をアクセスして、自系内のメモリ14、24に転送記憶させるための機能を備え、 主メモリ14、24には呼情報格納エリア17、27が確保され、 系の切替は、現用系1のプロセッサ13が通信制御装置15、25を介し予備系2のプロセッサ23に系切替信号を発することによって行なわれ、この切替信号は現用系1のプロセッサ13等に障害が発生した場合に自動的に発せられ、 予傭系2ではこの切替信号が割込みとしてプロセッサ23に入力され、プロセッサ23はこれにもとづき主メモリ24内の再開処理プログラムを起動し、起動された再開処理プログラムは先ず初めに通信制御装置25,15を介し旧現用系1の主メモリ14に格納されている最新の呼情報を読み出しこれを自系(新現用系)2の主メモリ24の呼情報格納エリア27に格納するための一連の処理を行なった後、この最新の呼情報をもとにオンライン動作に必要な各種装置および主メモリ24上の各種データの初期設定を行い、 通信制御装置15ではプロセッサ13とは独立に主メモリ14の呼情報格納エリア17に格納されている呼情報をDMAにて読み出したうえバス16、通信制御バス3を介し通信制御装置25へ転送する一方、通信制御装置25ではバス26を介しその呼情報を主メモリ24の呼情報格納エリア27へ格納すること。」 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2003-244179号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、光多分岐(PON:Passive Optical Network)通信システム、加入者装置および局内装置に関し、特にPON区間が2重化された光多分岐通信システム、加入者装置および局内装置に関するものである。」 「【0052】 【発明が解決しようとする課題】従来の加入者装置情報管理方法では、局内装置側信号終端部104、105が加入者装置側信号終端部106、107を一意に識別するシリアル番号は、加入者装置側信号終端部106、107に1つ保持される。このため、前記加入者装置側信号終端部106、107を2重化する場合には、各加入者装置側信号終端部106、107毎にシリアル番号を保持する必要があった。そのため、加入者装置側信号終端部106、107を保守目的等で交換する場合には、シリアル番号も変更する必要があった。」 「【0083】局内装置1では、唯一の加入者装置2から肯定応答を受信するまでシリアル番号マスクを1ビットづつ増加し、同様の操作を繰り返し、最終的には、局内装置1と加入者装置2の接続が完了する。この繰り返し動作のことをバイナリーツリーメカニズムと呼び、ITU-T勧告G.983.1には、この動作が記載されている。また、加入者装置情報保持部30、31は本動作で自動取得したシリアル番号をお互いに共有する。つまり、現用系のシリアル番号制御部26が自動取得したシリアル番号は、現用系の加入者装置情報保持部30が保持し、予備系の加入者装置情報保持部31へも転送することにより自動取得したシリアル番号をお互いに共有する。」 以上より、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 「 PON区間が2重化された光多分岐通信システムにおいて、 局内装置1では、バイナリーツリーメカニズムにおいて、現用系のシリアル番号制御部26が自動取得したシリアル番号(加入者装置側信号終端部を一意に識別するもの)は、現用系の加入者装置情報保持部30が保持し、予備系の加入者装置情報保持部31へも転送することにより自動取得したシリアル番号をお互いに共有すること。」 4 引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2007-36926号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、光伝送システムの冗長構成を有する光終端システムに関する。」 「【0024】 図2は、制御装置12のOLT切り替えのフローチャートを示す。例えば、OLT10aで障害が発生したとする。制御装置12は、OLT10aからの警告、又は、光パワーモニタ26からの通知に従い、OLT10aの障害発生を検出すると(S1)、OLT10aにRAM54に保存されている管理情報の転送を要求する(S2)。制御装置12は、OLT10aからの管理情報を記憶装置13に格納する。」 以上より、引用文献4には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 「 光伝送システムの冗長構成を有する光終端システムにおいて、 OLT10aで障害が発生したとすると、制御装置12は、OLT10aからの警告、又は、光パワーモニタ26からの通知に従い、OLT10aの障害発生を検出し、OLT10aにRAM54に保存されている管理情報の転送を要求し、制御装置12は、OLT10aからの管理情報を記憶装置13に格納すること。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「OLT」(光終端装置)である「現用OLT10a」及び「予備OLT10b」は、上位ネットワークと下位ネットワークとの間で通信信号を出力ないし受信する通信インタフェース部として機能するものであることはこの技術分野における技術常識である。 また、引用発明の「現用OLT10a」は「現用系」として、また、引用発明の「予備OLT10b」は、「予備系」として機能することは自明である。 よって、引用発明の「現用OLT10a」及び「予備OLT10b」はそれぞれ、本願発明1の「通信信号を出力する現用系インタフェース部」及び「予備系インタフェース部」に相当する。 イ 引用発明は、「現用OLT10aから予備OLT10bへの切替え動作」において、「制御装置30」は、「予備OLLT10bを受動動作するスタンバイモードで起動し、上位ネットワークから現用OLT10aに供給する下りデータを、予備OLT10bにもミラーリングするようにL3スイッチ40に指示し、現用OLT10aに切替え処理開始を指示」するものである。 ここで、引用発明の「現用OLT10aから予備OLT10bへの切替え」は、本願発明1の「前記現用系インタフェース部と前記予備系インタフェース部との間で前記通信信号の通信経路の切り替え」に相当する。 よって、引用発明において、「制御装置30」が「現用OLT10a」に「切替え処理開始」を指示するために「現用OLT10a」に送信する制御信号は、本願発明1の「切替制御信号」に相当する。 したがって、引用発明の「制御装置30」は、本願発明1の「前記現用系インタフェース部と前記予備系インタフェース部との間で前記通信信号の通信経路の切り替えを制御するための切替制御信号を送信する制御部」に相当する。 ウ 引用発明において、「現用OLT10a」が備える「メモリ26a」は、本願発明1の「第1のメモリ」に相当する。 エ 引用発明において、「現用OLT10a」が備える「CPU16a」は、本願発明1の「第1の中央処理装置」に相当する。 また、引用発明は、 「現用OLT10aは、切替え処理開始の指示を受けると、切替えモードに入り、 現用OLT10aは、管理情報と設定情報を制御装置30に送信し、」 との構成を備え、また、CPUがこれを含むモジュール全体の制御をすることは技術常識であることからすれば、「現用OLT10a」の「CPU16a」は、「切替え処理開始の指示」に従って、「管理情報と設定情報を制御装置30に送信」すなわち「データ転送」の指示を出すものといえる。 よって、引用発明の「CPU16a」は、本願発明1の「前記制御部からの前記切替制御信号に従ってデータ転送の指示を出す第1の中央処理装置」に相当する。 オ 前記ウ及びエを参酌すれば、引用発明の「現用OLT10a」と、本願発明1の 「前記現用系インタフェース部は、 第1のメモリと、 前記制御部からの前記切替制御信号に従ってデータ転送の指示を出す第1の中央処理装置と、 前記第1の中央処理装置とは異なる少なくとも1つのハードウェアで構成された第1の通信制御部と を有し、」 とは、 「前記現用系インタフェース部は、 第1のメモリと、 前記制御部からの前記切替制御信号に従ってデータ転送の指示を出す第1の中央処理装置と、 を有し、」 との構成を備える点において共通する。 カ 引用発明は、 「 CPU16aは、配下のONU68-1?69-nを管理するのに必要な情報、及び、種々の設定情報をメモリ26aに記憶し、」、 「現用OLT10aから予備OLT10bへの切替え動作」において、「現用OLT10aは、管理情報と設定情報を制御装置30に送信し、」及び 「 制御装置30は、現用OLT10aからの管理情報と設定情報を予備OLT10bに転送し、」 との構成を備えることからすれば、「現用OLT10aから予備OLT10bへの切替え動作」のときに「CPU16a」は、「メモリ26a」に記憶された管理情報と設定情報といったデータを読み出して、「制御装置30」を介して「予備OLT10b」に向けて転送するものといえる。 よって、前記アないしエを参酌すれば、引用発明と本願発明1の「前記通信経路の切り替えのとき、前記第1の制御回路は、前記第1の中央処理装置からの前記指示に従って前記第1のメモリに記憶されたデータを読み出し、前記読み出した前記データを前記フレーム送信部に転送し、前記フレーム送信部は、前記第1の制御回路から入力された前記データを、前記制御部を経由せずに前記予備系インタフェース部に向けて転送する」とは、「前記通信経路の切り替えのとき、前記第1のメモリに記憶されたデータを読み出し、前記データを、前記予備系インタフェース部に向けて転送する」との共通の構成を備える。 キ 引用発明の「センター局」は、後述する相違点を除くと本願発明1の「通信装置」に相当する。 (2)一致点、相違点 前記(1)より、本願発明1と引用発明は、次の点において一致ないし相違するといえる。 [一致点] 「 通信信号を出力する現用系インタフェース部と、 予備系インタフェース部と、 前記現用系インタフェース部と前記予備系インタフェース部との間で前記通信信号の通信経路の切り替えを制御するための切替制御信号を送信する制御部と を備え、 前記現用系インタフェース部は、 第1のメモリと、 前記制御部からの前記切替制御信号に従ってデータ転送の指示を出す第1の中央処理装置と、 を有し、 前記通信経路の切り替えのとき、前記第1のメモリに記憶されたデータを読み出し、前記データを、前記予備系インタフェース部に向けて転送する ことを特徴とする通信装置。」 [相違点] <相違点1> 本願発明1は、「前記現用系インタフェース部」が「ダイレクトメモリアクセス方式によってデータの転送を行う第1の制御回路」と、「前記第1の中央処理装置とは異なるハードウェアで構成されたフレーム送信部」とを有する、「前記第1の中央処理装置とは異なる少なくとも1つのハードウェアで構成された第1の通信制御部」を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。 <相違点2> 「通信経路の切り替えのとき」の動作として、本願発明1は、「前記第1の制御回路」が、「前記第1の中央処理装置からの前記指示に従って前記第1のメモリに記憶されたデータを読み出し、前記読み出した前記データを前記フレーム送信部に転送し」、「記フレーム送信部」が、「前記第1の制御回路から入力された前記データを、前記制御部を経由せずに前記予備系インタフェース部に向けて転送する」という構成を備えるのに対し、引用発明は、「CPU16a」が、「メモリ26a」に記憶されたデータを読み出して、当該データを「制御装置30」を介して「予備OLT10b」に向けて転送する点。 (3)相違点についての判断 上記相違点1と相違点2は連関するため、まとめて判断する。 引用文献2記載事項にあるように、2重系システムにおいて、現用系から予備系にデータを転送するにあたり、予備系のプロセッサとは独立した予備系の通信制御装置が、DMA(ダイレクトメモリアクセス)方式により現用系のメモリからデータを読み出して予備系のメモリに格納することは、本願出願時の周知技術といえる。 しかしながら、2重系システムにおいて、現用系が、DMA方式により「フレーム送信部」を用いて予備系に向けてデータ転送を行うことは、引用文献2ないし4には記載されておらず、本願出願時の技術常識であったともいえない。 したがって、本願発明1は、当業者であっても引用文献1ないし4に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし13について 本願発明2ないし13も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし4に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 本願発明14について 本願発明14は、本願発明1を方法の発明として特定したものであって、本願発明1に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし4に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 原査定について 前記第5で述べたとおり、本願発明1ないし14は、当業者が、拒絶査定において引用された引用文献1ないし4に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-06-29 |
出願番号 | 特願2016-143118(P2016-143118) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大石 博見 |
特許庁審判長 |
稲葉 和生 |
特許庁審判官 |
林 毅 富澤 哲生 |
発明の名称 | 通信装置及び通信経路切替方法 |
代理人 | 前田 実 |
代理人 | 山形 洋一 |
代理人 | 篠原 昌彦 |
代理人 | 佐藤 賢改 |