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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1375804 |
審判番号 | 不服2019-14971 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-11-07 |
確定日 | 2021-07-27 |
事件の表示 | 特願2017-502569「種々の冗長レベルを有するUPSグループの設定を監視するシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日国際公開、WO2015/147883、平成29年 6月15日国内公表、特表2017-516244、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、2014年(平成26年)3月28日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年12月 7日付け :拒絶理由通知 平成30年 6月 8日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年10月 3日付け :拒絶理由通知 平成31年 4月 4日 :意見書、手続補正書の提出 令和元年 7月 1日付け :拒絶査定(以下、「原査定」という。) 令和元年 11月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和2年 12月16日付け :拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通 知」という。) 令和3年 4月 6日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1?15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明15」という。)は、令和3年4月6日になされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される発明であり、このうち、本願発明1は、以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 第1の冗長レベルを有する第1のUPSグループと、前記第1の冗長レベルとは異なる第2の冗長レベルを有する第2のUPSグループとを監視する監視システムであって、当該監視システムが、 少なくとも1つのシャットダウン条件と前記少なくとも1つのシャットダウン条件の発生に応答して実行されるシャットダウン命令ファイルとを含む設定をユーザに表示するように構成されたグラフィカルユーザインタフェースと、 処理回路であって、 前記ユーザによって選択された設定を受信し、 第1のデバイスに電力を供給するように構成された前記第1のUPSグループと第2のデバイスに電力を供給するように構成された前記第2のUPSグループとを監視し、 前記選択された設定に基づいて、前記少なくとも1つのシャットダウン条件が存在していることを検出し、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの少なくとも1つをシャットダウンさせる制御信号を選択的に生じるように構成された処理回路と、を具え、 前記処理回路が更に、前記第1のUPSグループの少なくとも1つのUPSと、前記第2のUPSグループの少なくとも1つのUPSとを電源オフ状態にする制御信号を生じるように構成されている、監視システム。」 また、本願発明4及び11は、それぞれ本願発明1を「監視方法」及び「コンピュータ記録媒体」の発明として特定したものであって、本願発明1とはカテゴリ表現が異なるだけの発明であり、本願発明2及び3は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明5?10は、本願発明4を減縮した発明であり、本願発明12?15は、本願発明11を減縮した発明である。 第3 引用文献、引用発明等 1.引用文献1の記載事項について (1)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2006-172276号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審付与。以下同様。)。 ア 「【0005】 本発明の目的は、無停電電源装置に異常が発生した場合でも、すべての情報処理装置を停止することなく、影響が及ぶ情報処理装置を安全にシャットダウンする無停電電源システム及びプログラムを得ることにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明のプログラムは、コンピュータを、複数の無停電電源装置を無停電電源装置が電力を供給する給電負荷装置ごとにグループ化するグループ化手段と、複数の無停電電源装置の異常を検出する検出手段と、異常を検出した無停電電源装置シャットダウン信号を送信する送信手段として機能させる。」 イ 「【0010】 図1において、無停電電源システム1000は、電力供給源であるM台の無停電電源装置300と、電力供給の対象である2台のコンピュータ100および(N-2)台のディスクアレイ装置200からなるN台の情報処理装置、図示しないハブ、ルータから構成される。コンピュータ100は、それぞれ冗長化された電源120-1、120-2を有する。また、ディスクアレイ装置200も、それぞれ冗長化された電源220-1、220-2を持っている。ハブ、ルータも電源は冗長化され、無停電電源装置に接続されている。また、無停電電源装置300、コンピュータ100およびディスクアレイ装置200は、ネットワーク400に接続されている。 【0011】 また、コンピュータ100には、無停電電源装置300を管理するための管理ソフトウェア110を予め格納(インストール)しておく。実行された管理ソフトウェア110は、M台の無停電電源装置300に対して、ネットワーク400経由で状態読み出しコマンドを送り、そのレスポンス(応答)により、それぞれの無停電電源装置300の状態を収集する。ここで、状態読み出しコマンドは、所定のタイミングで定期的に送出する。 【0012】 さらに、管理ソフトウェア110は、予め、M台の無停電電源装置がどの情報処理装置に対して電力を給電しているかが記された無停電電源装置の接続情報111および2台のコンピュータの順位情報である管理コンピュータ情報112を、図示しないメモリに記憶させておく。」 ウ 「【0013】 ここで、図2を用いて接続情報を、図3を用いて管理コンピュータ情報を説明する。なお、以下の説明では無停電電源装置をUPS(UninterruptiblePowerSystem)と略記する。なお、図2ではN=5、M=14である。 図2において、UPS#欄21はUPS番号、給電負荷機器欄22はUPSが接続されている機器の種別、電源欄23は電源番号を記載している。同一の給電負荷機器(たとえば、コンピュータA)に電源欄23に「1」「2」があることで、冗長化されていることを示している。ミラー欄24は、ディスクアレイ装置について、ミラー(RAID1:RedundantArraysofInexpensiveDisks1)の有無であり、「なし」またはミラーのディスクアレイ装置符号を記載する。したがって、他の機器ではN/A(NotApplicable)である。運用/障害欄25は、当該UPS番号の運用(W:Working)または障害(F:Failure)を記載する。図2の接続情報は、全てのコンピュータ100が保有し、適宜更新する。」 エ 「【0020】 図4において、管理ソフトウェア110が、UPS300-5の異常を検出(S11)したとき、接続情報である図2のUPS#欄の「5」の行の運用/障害のセルを「F」に書き換え、給電負荷機器欄からディスクアレイ装置であることを判断(S13)し、S15の処理Bを実行する。 【0021】 図6に示す処理Bにおいて、管理ソフトウェア110は、図2の接続情報を参照(S31)し、ディスクアレイ装置Aの冗長化された他方のUPS300-6の状態を確認し(S32)、状態が正常(UPS#「6」の行の運用/障害のセルが「W」)であれば、ディスクアレイ装置Aに影響なしと判断し、何ら動作を開始しない。 【0022】 これに対し、UPS300-5とUPS300-6の両方に異常が生じた場合には、管理ソフトウェア110は、ディスクアレイ装置Aに影響ありと判断し、再び図2を参照して、ディスクアレイ装置Aのミラー欄を参照し、ミラー有無を確認する(S33)。ディスクアレイ装置A200-1に、ミラーが無い場合は、ネットワーク400を介してディスクアレイ装置Aにデータの退避処理を行わせる信号を送信する(S35)。ここで、退避処理とは、バッファに貯まったデータをディスクに書き込む処理である。データ退避処理の信号を受信したディスクアレイ装置A200-1は、データの退避処理完了後に管理ソフトウェア110に対してデータの退避処理完了通知を送信する。管理ソフトウェア110は、これを受信(S36)後、UPS300-5、UPS300-6に対し、シャットダウン通知を送信する(S37)。シャットダウン通知を受信したUPS300-5、UPS300-6は、予め設定された時間経過後、給電を中止する。この給電中止により、データ退避処理を完了したディスクアレイ装置A200-1は、停止する。コンピュータ100は、図2に示す接続情報を監視し、全ての電源の運用/障害欄が、「F」のディスクアレイ装置200には、書込/読出を行わない。 【0023】 本実施例では、UPS300-5とUPS300-6とを仮想的なグループとし、このグループ単位で電源供給ができないと判断したとき、UPS300-5とUPS300-6との給電を中止し、ディスクアレイ装置A200-1をシャットダウン(電源OFF)している訳である。 【0024】 UPS300-5、UPS300-6は、停電が回復した後、給電を自動で再開する。これを検出した管理ソフトウェア110は、当該電源の運用/障害欄を「W」に書き換える。ディスクアレイ装置A200-1は、給電の再開と受けて起動(電源ON)する。本明細書では、電源のON/OFF制御を電源管理と称する。 【0025】 図1の複数のディスクアレイ装置200が相互にミラー化されたディスクアレイ装置がある場合には、少なくとも1台のディスクアレイ装置が正常に稼動していれば、コンピュータは継続して動作することができる。そのため、図6のステップS34において、ミラー化されたディスクアレイ装置に給電しているUPSの状態情報を調べ、全てに異常が検出された場合には、ステップS35?S37の処理を行い、当該ディスクアレイ装置を停止させる。一方、ステップ34において、少なくとも1台の正常なディスクアレイ装置が確認できた場合には、S38?S40の処理を行い、当該ディスクアレイのみ停止処理を行う。 【0026】 図6では、UPSがいずれも異常な場合、ミラーの有無に関わらず同じ動作となっている。しかし、ミラーを組んだ相手のディスクアレイ装置が正常なら、図示しないRAIDコントローラの働きにより、相手のディスクアレイ装置を用いて、データの書込/読取が可能である。これに対し、ミラー構成が無い場合、データの書込/読取とも不可能である。」 「【図1】 」 「【図2】 」 上記段落【0013】によりN=5、M=14であることを踏まえると、上記段落【0010】及び図1及び図2には、「ディスクアレイ装置B200-2は冗長化されたUPS300-7とUPS300-8により電源供給され、ディスクアレイ装置C200-3は冗長化されたUPS300-9とUPS300-10により電源供給されている」ことが見て取れる。 また、引用文献1の段落【0022】、図1及び図2を参照すると、「ミラー欄24は、ディスクアレイ装置について、ミラー(RAID1:Redundant Arrays of Inexpensive Disks 1)の有無であり、「なし」またはミラーのディスクアレイ装置符号を記載し」ていることから、「ディスクアレイ装置B200-2とディスクアレイ装置C200-3は、互いにミラー化された関係である」ことが見て取れる。 (2)引用発明 上記(1)の記載からみて、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 コンピュータを、複数の無停電電源装置を無停電電源装置が電力を供給する給電負荷装置ごとにグループ化するグループ化手段と、複数の無停電電源装置の異常を検出する検出手段と、異常を検出した無停電電源装置シャットダウン信号を送信する送信手段として機能させ、無停電電源装置に異常が発生した場合でも、すべての情報処理装置を停止することなく、影響が及ぶ情報処理装置を安全にシャットダウンする無停電電源システムであって、 無停電電源システム1000は、電力供給源であるM台の無停電電源装置300と、電力供給の対象である2台のコンピュータ100および(N-2)台のディスクアレイ装置200からなるN台の情報処理装置、ハブ、ルータから構成され、 コンピュータ100は、それぞれ冗長化された電源120-1、120-2を有し、また、ディスクアレイ装置200も、それぞれ冗長化された電源220-1、220-2を持ち、無停電電源装置300、コンピュータ100およびディスクアレイ装置200は、ネットワーク400に接続されており、 コンピュータ100には、無停電電源装置300を管理するための管理ソフトウェア110を予め格納(インストール)しておき、実行された管理ソフトウェア110は、M台の無停電電源装置300に対して、ネットワーク400経由で状態読み出しコマンドを送り、そのレスポンス(応答)により、それぞれの無停電電源装置300の状態を収集し、 さらに、管理ソフトウェア110は、予め、M台の無停電電源装置がどの情報処理装置に対して電力を給電しているかが記された無停電電源装置の接続情報111を、メモリに記憶させておき、 なお、以下では、無停電電源装置をUPS(Uninterruptible Power System)と略記し、N=5、M=14であり、 接続情報において、UPS#欄21はUPS番号、給電負荷機器欄22はUPSが接続されている機器の種別、電源欄23は電源番号を記載し、同一の給電負荷機器(たとえば、コンピュータA)に電源欄23に「1」「2」があることで、冗長化されていることを示し、ミラー欄24は、ディスクアレイ装置について、ミラー(RAID1:Redundant Arrays of Inexpensive Disks 1)の有無であり、「なし」またはミラーのディスクアレイ装置符号を記載し、運用/障害欄25は、当該UPS番号の運用(W:Working)または障害(F:Failure)を記載し、接続情報は、全てのコンピュータ100が保有し、適宜更新し、 管理ソフトウェア110が、UPS300-5の異常を検出したとき、接続情報のUPS#欄の「5」の行の運用/障害のセルを「F」に書き換え、給電負荷機器欄からディスクアレイ装置であることを判断し、 管理ソフトウェア110は、接続情報を参照し、ディスクアレイ装置Aの冗長化された他方のUPS300-6の状態を確認し、状態が正常(UPS#「6」の行の運用/障害のセルが「W」)であれば、ディスクアレイ装置Aに影響なしと判断し、何ら動作を開始せず、 これに対し、UPS300-5とUPS300-6の両方に異常が生じた場合には、管理ソフトウェア110は、ディスクアレイ装置Aに影響ありと判断し、ディスクアレイ装置Aのミラー欄を参照し、ミラー有無を確認し、ディスクアレイ装置A200-1に、ミラーが無い場合は、ネットワーク400を介してディスクアレイ装置Aにデータの退避処理を行わせる信号を送信し、データ退避処理の信号を受信したディスクアレイ装置A200-1は、データの退避処理完了後に管理ソフトウェア110に対してデータの退避処理完了通知を送信し、管理ソフトウェア110は、これを受信(S36)後、UPS300-5、UPS300-6に対し、シャットダウン通知を送信し、シャットダウン通知を受信したUPS300-5、UPS300-6は、予め設定された時間経過後、給電を中止し、この給電中止により、データ退避処理を完了したディスクアレイ装置A200-1は、停止し、 UPS300-5とUPS300-6とを仮想的なグループとし、このグループ単位で電源供給ができないと判断したとき、UPS300-5とUPS300-6との給電を中止し、ディスクアレイ装置A200-1をシャットダウン(電源OFF)している訳であり、 ディスクアレイ装置B200-2は冗長化されたUPS300-7とUPS300-8により電源供給され、ディスクアレイ装置C200-3は冗長化されたUPS300-9とUPS300-10により電源供給されており、 ディスクアレイ装置B200-2とディスクアレイ装置C200-3は、互いにミラー化された関係であり、 複数のディスクアレイ装置200が相互にミラー化されたディスクアレイ装置がある場合には、少なくとも1台のディスクアレイ装置が正常に稼動していれば、コンピュータは継続して動作することができるため、ミラー化されたディスクアレイ装置に給電しているUPSの状態情報を調べ、全てに異常が検出された場合には、当該ディスクアレイ装置を停止させ、一方、少なくとも1台の正常なディスクアレイ装置が確認できた場合には、当該ディスクアレイのみ停止処理を行う、 無停電電源システム。」 2.引用文献2の記載事項について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2002-136000号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0012】無停電電源システムは、図1に示すように、電力供給源である複数の無停電電源装置(P)1、これらを制御監視する制御装置2を備える。また、電力供給の対象である複数のコンポーネント4は、コンピュータシステムを構成する。複数のコンポーネント4は、各々、1又は複数の電子装置からなる。電子装置は、例えば、コンピュータ41、磁気ディスク装置等である。各々のコンポーネント4を構成する電子装置の数は異なる(同一であってもよい)。この例では、コンポーネント4の数はn個(nは2以上の正の整数)とされる。この例のn個のコンポーネント4(C1 、C2 、・・Cn )は、例えばディスク共有型のクラスタシステム(コンピュータシステム)400を構成する。 【0013】複数の無停電電源装置1は、複数のコンポーネント4をバックアップする。即ち、電力を供給する。具体的には、無停電電源装置1は、対応するコンポーネント4を商用電源に接続し、商用電源10が停電した場合には予備電源11を用いて電力を供給する(図3参照)。 【0014】複数の無停電電源装置1の各々が、複数のコンポーネント4毎に定められた電源冗長度(又は多重度)m(mは2以上の正の整数)に従って、複数のコンポーネント4の各々に対応して設けられる。即ち、m個の無停電電源装置1が、1個のコンポーネント4に対応するように設けられる。例えば、無停電電源装置P11、P12、・・P1mはコンポーネントC1 に対応する(他についても同様である)。ここで、mはコンポーネントC1 の電源冗長度(当該コンポーネント4に接続すべき無停電電源装置の数)である。この例では、各コンポーネント4の電源冗長度はmで等しいものとする。従って、無停電電源装置1のクラスタ(クラスタ電源)100は、m×n個の無停電電源装置1の集合からなる。 【0015】無停電電源装置1の各々は、少なくとも当該対応するコンポーネント4をバックアップする。従って、1個の無停電電源装置1は、少なくとも当該対応するコンポーネント4、即ち、少なくともそのコンポーネント4の(に属する)1又は複数の電子装置の各々へ電力を供給し、バックアップする。逆に、1個のコンポーネント4は、当該対応するm個の無停電電源装置1により電力を供給され、バックアップされる。」 「【0055】例えば、複数のコンポーネント4の電源冗長度を異なる値としてもよい。即ち、図8(A)に示すように、コンポーネントC1 の電源冗長度をmとし、コンポーネントC2 の電源冗長度を(m-1)等としてもよい。なお、図8(A)は図1の無停電電源システムの一部を示す。これにより、コンポーネント4の種類によっては、電源冗長度を「1」とすることができる。従って、コンポーネントシステムの複雑化に対応して、より柔軟な無停電電源システムを構成することができる。 【0056】また、図1に示すクラスタシステム400とこれに対応する無停電電源装置1のクラスタ100とを一組とし、図8(B)に示すように、これらを複数組設けてもよい。但し、この場合でも、制御装置2は、複数組に共通に1個もうければよく、1個の制御装置2で全体を制御監視する。制御装置2は、各々の組毎に電源状態情報を形成し、宛て先のクラスタシステム400(の監視制御処理部42)のアドレス等の識別情報を付加してネットワーク3上に送出する。監視制御処理部42は、受信した電源状態情報に自己のアドレスが付加されていれば当該コンポーネント4のシャットダウン処理を行い、付加されていなければ当該電源状態情報を廃棄する。」 「【図1】 」 したがって、上記引用文献2には次の技術的事項が特定されていると認められる。 「 電力供給源である複数の無停電電源装置1、これらを制御監視する制御装置2を備える無停電電源システムであって、電力供給の対象である複数のコンポーネント4は、コンピュータシステムを構成し、複数のコンポーネント4は、各々、1又は複数の電子装置からなり、電子装置は、例えば、コンピュータ41、磁気ディスク装置等であり、 複数の無停電電源装置1の各々が、複数のコンポーネント4毎に定められた電源冗長度(又は多重度)m(mは2以上の正の整数)に従って、複数のコンポーネント4の各々に対応して設けられ、即ち、m個の無停電電源装置1が、1個のコンポーネント4に対応するように設けられ、1個のコンポーネント4は、当該対応するm個の無停電電源装置1により電力を供給され、バックアップされ、例えば、複数のコンポーネント4の電源冗長度を異なる値としてもよい無停電電源システム。」 3.引用文献3の記載事項について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2000-163385号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0030】UPS30aは、自己の利用している商用電源の電源系統に停電等の電源障害が発生すると、商用電源の側から内蔵するバッテリ(図示せず)の側に切り替えて継続して電力供給を行うと共に、信号線6aを介して、運転管理装置10aに電源異常信号S1を送出するようになっている。同様に、UPS30bは、その電源系統に電源障害が発生すると、内蔵するバッテリの側に切り替えて継続して電力供給を行うと共に、信号線6bを介して、運転管理装置10b,10cに電源異常信号(図示せず)を送出する。また、UPS20aにおいて、電源部20abは、その電源系統に障害が発生すると、内蔵するバッテリの側に切り替えて継続して電力供給を行うと共に、運転管理部20aaに電源異常信号(図示せず)を送る。運転管理装置10a?10cおよびUPS20aの運転管理部20aaは、それぞれ、電源異常信号を受け取ると、データ線5a?5dを介して自己の担当するサーバ2a?2dに対し、シャットダウン処理を実行させるためのシャットダウン命令S2を送出するようになっている。ここで、シャットダウン処理S2が本発明における「所定の終了処理」に対応し、シャットダウン命令が本発明における「終了処理要求」に対応する。」 「【図1】 」 したがって、上記引用文献3には次の技術的事項が特定されていると認められる。 「 UPS30aは、自己の利用している商用電源の電源系統に停電等の電源障害が発生すると、商用電源の側から内蔵するバッテリの側に切り替えて継続して電力供給を行うと共に、運転管理装置10aに電源異常信号S1を送出し、同様に、UPS30bは、その電源系統に電源障害が発生すると、内蔵するバッテリの側に切り替えて継続して電力供給を行うと共に、運転管理装置10b,10cに電源異常信号を送出し、また、UPS20aにおいて、電源部20abは、その電源系統に障害が発生すると、内蔵するバッテリの側に切り替えて継続して電力供給を行うと共に、運転管理部20aaに電源異常信号を送り、運転管理装置10a?10cおよびUPS20aの運転管理部20aaは、それぞれ、電源異常信号を受け取ると、自己の担当するサーバ2a?2dに対し、シャットダウン処理を実行させるためのシャットダウン命令S2を送出するようにすること。」 4.引用文献4の記載事項について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2003-36125号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0014】・・・(中略)・・・ (イ)ディスクアレイ装置(DF)2の無停電電源装置(UPS)3-2の障害が検出されると、無停電電源装置(UPS)3-2は、ホストコンピュータ1に対して、UPS障害信号を送出する。(d-1,d-2) (ロ)ホストコンピュータ1では、UPS障害信号を確認すると、ホストシャットダウン命令又はUPSシャットダウン命令を発生し、ホストコンピュータ1をシャットダウンするか、無停電電源装置(UPS)3-2に対してUPSシャットダウン信号を送出する(d-3,d-4,d-5) 。なお、ホストコンピュータ1をシャットダウンさせるか、無停電電源装置(UPS)3-2をシャットダウンさせるか、両者をシャットダウンさせるかは、ユーザーが適宜設定可能であるが、以下の説明は無停電電源装置(UPS)3-2をシャットダウンさせる場合について行う。」 「【図1】 」 したがって、上記引用文献4には次の技術的事項が特定されていると認められる。 「 ディスクアレイ装置(DF)2の無停電電源装置(UPS)3-2の障害が検出されると、無停電電源装置(UPS)3-2は、ホストコンピュータ1に対して、UPS障害信号を送出し、ホストコンピュータ1では、UPS障害信号を確認すると、ホストシャットダウン命令又はUPSシャットダウン命令を発生し、ホストコンピュータ1をシャットダウンするか、無停電電源装置(UPS)3-2に対してUPSシャットダウン信号を送出すること。」 5.引用文献5の記載事項について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2005-78174号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0024】 次に、このような構成の通信システムにおけるUPS11?13の電源異常検出時の動作を説明する。但し、サーバ21がマスタサーバ、サーバ31、41がスレーブサーバとして設定されているものとする。 まず、マスタサーバ21の電源異常検出部63によって、UPS11の電源異常が検出されたとする。これによって、メッセージ送信部65において、メッセージ記憶部64からOSシャットダウン命令及びUPS停止命令のメッセージデータが読み出され、これがLANインターフェース部61からLAN回線51を介してスレーブサーバ31,41へ送信される。 【0025】 また、マスタサーバ21では、電源異常検出時に従来と同機能によって、OSシャットダウンが実行されると共に、UPS停止命令がシリアル通信ケーブル25を介してUPS11へ送信される。この送信されたUPS停止命令が受信されたUPS11では、所定時間後に電源オフとなる。この電源オフによってUPS11に給電ケーブル20で接続された全てのサーバ21?23が電源オフとなる。 【0026】 一方、スレーブサーバ31では、LANインターフェース部61を介してメッセージ受信部67で、マスタサーバ21からのメッセージデータが受信される。この受信によって、当該サーバ31では、従来と同機能によってOSシャットダウンが実行され、また、OSシャットダウン命令通知部69によって、OSシャットダウン命令がLANインターフェース部61からLAN回線51を介して、当該サーバ31と同グループの他のサーバ32へ送信される。この送信されたOSシャットダウン命令を受けたサーバ32では、OSシャットダウンが実行される。 【0027】 また、先の受信によって、UPS通信接続確認部71では、当該サーバ31がUPS11に通信可能な状態に接続されているか否かが確認される。ここで、通信可能な状態に接続されていると確認された場合、UPS停止・起動送信部75によって、先に受信されたUPS停止命令が、UPSインターフェース部77からシリアル通信ケーブル35を介してUPS12へ送信される。この送信されたUPS停止命令が受信されたUPS12では、所定時間後にUPS12が電源オフとなる。この電源オフによってUPS12に給電ケーブル30で接続された全てのサーバ31,32が電源オフとなる。 【0028】 また、スレーブサーバ41においても、スレーブサーバ31と同様な動作が実行され、最終的にUPS13に給電ケーブル40で接続された全てのサーバ41?43が電源オフとなる。」 「【図1】 」 したがって、上記引用文献5には次の技術的事項が特定されていると認められる。 「 サーバ21がマスタサーバ、サーバ31,41がスレーブサーバとして設定されている通信システムにおいて、UPS11?13の電源異常検出時の動作として、 マスタサーバ21の電源異常検出部63によって、UPS11の電源異常が検出されたとするとOSシャットダウン命令及びUPS停止命令のメッセージデータがスレーブサーバ31,41へ送信され、 マスタサーバ21では、OSシャットダウンが実行されると共に、UPS停止命令がUPS11へ送信され、UPS11では、所定時間後に電源オフとなり、この電源オフによってUPS11に給電ケーブル20で接続された全てのサーバ21?23が電源オフとなり、 一方、スレーブサーバ31では、マスタサーバ21からのメッセージデータが受信され、当該サーバ31では、OSシャットダウンが実行され、また、OSシャットダウン命令が当該サーバ31と同グループの他のサーバ32へ送信され、この送信されたOSシャットダウン命令を受けたサーバ32では、OSシャットダウンが実行され、 UPS通信接続確認部71では、当該サーバ31がUPS11に通信可能な状態に接続されているか否かが確認され、ここで、通信可能な状態に接続されていると確認された場合、UPS停止・起動送信部75によって、先に受信されたUPS停止命令が、UPS12へ送信され、UPS12では、所定時間後にUPS12が電源オフとなり、この電源オフによってUPS12に給電ケーブル30で接続された全てのサーバ31,32が電源オフとなり、 また、スレーブサーバ41においても、スレーブサーバ31と同様な動作が実行され、最終的にUPS13に給電ケーブル40で接続された全てのサーバ41?43が電源オフとなる通信システム。」 6.引用文献6の記載事項について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開2005-92859号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0249】 ところで、上述した説明では、情報処理装置1(マスタ1-1)において、情報処理装置1を正常に動作させることが可能なUPS2の必要最低限の台数であるn台と、情報処理装置1に接続されているUPS2の全台数であるn+k台とが、予め設定されていることを前提として、シャットダウンおよびUPS制御の処理が行われている。この値nとn+kの設定方法としては、例えば、ユーザが入力部26を操作することにより値nとn+kを入力し、設定するユーザ入力方法がある。 【0250】 図13は、値nとn+kの設定方法として、ユーザ入力方法が採用されている場合の、情報処理装置1が有する機能のうちの、シャットダウン処理やUPS停止処理を制御する機能と、値nとn+kの設定を含む情報処理装置1に接続されているUPS2に関する設定を行う機能を示す機能ブロック図である。 【0251】 このような機能は、例えば、図13に示されるように、入力部26、出力部27、およびUPS通信部29といった、上述した図2に示されるハードウエア、並びに、UPS監視部51、設定部101、シャットダウン制御部102、およびUPS制御部103といった、上述した図2のCPU21により実行されるソフトウエアにより実現可能である。なお、図中、図3における場合と対応する部分については、同一の符号を付してあり、説明は繰り返しになるので省略する。」 「【0253】 入力部26は、ユーザにより操作され、ユーザの操作に応じた入力信号を、設定部101に供給する。ここで、例えば、出力部27がディスプレイで構成される場合、出力部27には、情報処理装置1に接続されているUPS2に関する設定を行う設定画面が表示されるようになっている。ユーザは、出力部27に表示された設定画面に対して、入力部26を操作することにより、UPS2に関する設定を行う。 【0254】 設定部101は、入力部26から供給される入力信号に基づいて、UPS2に関する設定を行う。設定部101は、UPS2に関する項目ごとに、パラメータを設定する。この項目には、UPS2ごとにパラメータが設定される個別項目と、情報処理装置1に接続されているすべてのUPS2に対してパラメータが共通に設定される共通項目とがある。例えば、共通項目では、値n+kがパラメータとして設定される。この個別項目と共通項目の詳細は、図14乃至図27で後述する。」 「【0275】 図17に示すように、「エージェント選択」という共通項目は、「UPS出力コンセント選択」、「待機時間」、「シャットダウン開始遅延」、「シャットダウンに必要な時間」、「外部コマンドライン」、「外部コマンド実行時間」、「OSの終了モード」という共通項目にさらに分かれている。「UPS出力コンセント選択」という共通項目では、所望の出力コンセントを選択することができる。図17では、「USP出力コンセント選択」という共通項目で「出力コンセントA(制御なし)」が選択されている。従って、以下で説明する「待機時間」、「シャットダウン開始遅延」、「シャットダウンに必要な時間」、「外部コマンドライン」、「外部コマンド実行時間」、「OSの終了モード」という共通項目のパラメータは、情報処理装置1に接続されている「出力コンセントA」のすべてのUPS2に対して設定される。 【0276】 「待機時間」という共通項目では、入力電源異常が発生してから、シャットダウン処理を開始するまでの時間を設定することができる。即ち、例えば、図5のステップS6で全てのUPS2に「入力電源異常」が発生していると判定された後、または図5のステップS9で「入力電源異常」が発生したUPS2を除く、全てのUPSの状態が停止状態であると判定された後、「待機時間」という共通項目で設定された時間(図17では、60秒)を越すまで、シャットダウン制御部102は、ステップS8のシャットダウン処理の実行を開始しない。 【0277】 「シャットダウン開始遅延」という共通項目では、「待機時間」という共通項目で設定された時間が経過した後、シャットダウン処理の実行が開始されるまでの時間を設定することができる。即ち、例えば、図5のステップS6で全てのUPS2に「入力電源異常」が発生していると判定された後、または図5のステップS9で「入力電源異常」が発生したUPS2を除く、全てのUPSの状態が停止状態であると判定された後、「待機時間」という共通項目で設定された時間(図17では、60秒)が経過してから、「シャットダウン開始遅延」という共通項目で設定された時間を越すまで、図5のステップS8でシャットダウン処理を実行しない。図17では、「シャットダウン開始遅延」という共通項目で「0秒」が設定されている。従って、シャットダウン制御部102は、図5のステップS6または図5のステップS9の判定後、「待機時間」という共通項目で設定された時間である60秒が経過したとき、ステップS8のシャットダウン処理が実行される。」 「【図6】 」 「【図13】 」 「【図17】 」 したがって、上記引用文献6には次の技術的事項が特定されていると認められる。 「 シャットダウンおよびUPS制御の処理が行われている情報処理装置1において、 シャットダウン処理やUPS停止処理を制御する機能と、値nとn+kの設定を含む情報処理装置1に接続されているUPS2に関する設定を行う機能を、実現可能であり、 入力部26は、ユーザにより操作され、ユーザの操作に応じた入力信号を、設定部101に供給し、出力部27には、情報処理装置1に接続されているUPS2に関する設定を行う設定画面が表示され、 設定部101は、入力部26から供給される入力信号に基づいて、UPS2に関する設定を行い、UPS2に関する項目ごとに、パラメータを設定し、 図17に示すように、「待機時間」、「シャットダウン開始遅延」、という共通項目のパラメータは、情報処理装置1に接続されている「出力コンセントA」のすべてのUPS2に対して設定され、 「待機時間」という共通項目では、入力電源異常が発生してから、シャットダウン処理を開始するまでの時間を設定することができ、 「シャットダウン開始遅延」という共通項目では、「待機時間」という共通項目で設定された時間が経過した後、シャットダウン処理の実行が開始されるまでの時間を設定することができる、 設定画面を備えた情報処理装置1。」 7.引用文献7の記載事項について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7(特開2008-140029号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0065】 なお、このような冗長電源制御を実行させる機能は、一般的に、n+k冗長電源機能と称される。即ち、n+k冗長電源機能とは、i(=n+k)台の電源ユニット24-1乃至24-iのうちの少なくともn台が正常に動作していれば、サーバ1が正常に動作可能な電力を供給することができる機能である。」 「【0108】 次に、図6は、サーバ1の出力部17に表示される、シャットダウンおよびUPS停止制御処理に関する各種の設定を入力するための設定画面の表示例を示している。この設定画面100に対するユーザからの入力には、入力部16が用いられる。なお、この設定画面100は、サーバ1にLAN3を介して接続されているUPS制御装置4の数が2台である場合の表示例である。 【0109】 設定画面100の設定欄101は、サーバ1に接続されているUPS制御装置4の機種を選択入力するためのものである。設定欄102は、サーバ1が有する冗長電源機能を有効にするか無効にするかを選択入力するためのものである。設定欄103,104は、接続されている2台のUPS制御装置4それぞれのIPアドレスを入力するためのものである。なお、設定欄103,104には、横に設けられた検索ボタンを押下することにより、LAN3に接続されているUPS制御装置4を検索し、検索されたUPS制御装置4から取得したIPアドレスを自動的に入力させることができる。設定欄105は、UPS2の異常発生などに対応して、その旨をユーザに通知するためのポップアップメッセージ(エラー出力)を表示するか否か選択入力するためのものである。 【0110】 設定欄106,107は、2台のUPS制御装置4にそれぞれ接続されているUPS2の出力コンセントを選択入力するためのものである。設定欄108は、LAN3におけるサーバ1の名称を入力するためのものである。設定欄109は、シャットダウン処理命令が所定の数よりも多いと判断された後、サーバ1自身がシャットダウン処理を開始するまでの遅延時間を入力するためのものである。」 「【0112】 ユーザは、設定画面100においてサーバ1に関する設定の他、UPS制御装置4およびUPS2に関する設定までも、サーバ1の入力部16および出力部17を用いて設定することができる。」 「【図1】 」 「【図5】 」 「【図6】 」 したがって、上記引用文献7には次の技術的事項が特定されていると認められる。 「 i(=n+k)台の電源ユニット24-1乃至24-iのうちの少なくともn台が正常に動作していれば、サーバ1が正常に動作可能な電力を供給することができるn+k冗長電源機能を備えるサーバ1において、 図6に表示される、シャットダウンおよびUPS停止制御処理に関する各種の設定を入力するための設定画面100に対するユーザからの入力には、入力部16が用いられ、この設定画面100は、サーバ1にLAN3を介して接続されているUPS制御装置4の数が2台である場合の表示例であり、 設定画面100の設定欄109は、シャットダウン処理命令が所定の数よりも多いと判断された後、サーバ1自身がシャットダウン処理を開始するまでの遅延時間を入力するためのものである、 設定画面100を備えるサーバ1。」 第4 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 上記本願発明1と上記引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明においては、「無停電電源装置をUPS(Uninterruptible Power System)と略記」していることから、引用発明の当該「無停電電源装置」及び「UPS」は、いずれも本願発明1の「UPS」に相当する。 イ 引用発明の「冗長化されたUPS300-7とUPS300-8」は「仮想的なグループ」といえることから、本願発明1の「第1のUPSグループ」(「第1の」と呼称するのは任意。)に相当し、同じく、引用発明の前記「冗長化されたUPS300-9とUPS300-10」は同じく「仮想的なグループ」といえることから、本願発明1の「第2のUPSグループ」(「第2の」と呼称するのは任意。)に相当するといえる。 ウ 引用発明の「N台の情報処理装置」(N=5)のいずれも、それぞれ2台の「冗長化」された「UPS」により「電源供給」されていることから、特に、前記「UPS300-7とUPS300-8」による「仮想的なグループ」の「冗長化」の度合いも2台であって、これは、本願発明1の「第1の冗長レベル」(「第1の」と呼称するのは任意。)に相当する。同様に、前記「UPS300-9とUPS300-10」による「仮想的なグループ」の「冗長化」の度合いも同じく2台であって、これは、本願発明1の「前記第1の冗長レベルとは異なる第2の冗長レベル」とは、「第2の冗長レベル」(「第2の」と呼称するのは任意。)である点で共通している。 エ 引用発明の「無停電電源システム」は、「コンピュータ」が「複数の無停電電源装置の異常を検出する検出手段」を備えることから、後述する相違点を除き、本願発明1の「監視システム」に相当する。 オ 上記ア?エから、引用発明の「無停電電源システム」と本願発明1の「第1の冗長レベルを有する第1のUPSグループと、前記第1の冗長レベルとは異なる第2の冗長レベルを有する第2のUPSグループとを監視する監視システム」とは、「第1の冗長レベルを有する第1のUPSグループと、第2の冗長レベルを有する第2のUPSグループとを監視する監視システム」である点で共通している。 カ 引用発明の「シャットダウン(電源OFF)」は、本願発明1の「シャットダウン」に相当する。また、引用発明においては、「複数のディスクアレイ装置200が相互にミラー化されたディスクアレイ装置がある場合には、少なくとも1台のディスクアレイ装置が正常に稼動していれば、コンピュータは継続して動作することができるため、ミラー化されたディスクアレイ装置に給電しているUPSの状態情報を調べ、全てに異常が検出された場合には、当該ディスクアレイ装置を停止させ、一方、少なくとも1台の正常なディスクアレイ装置が確認できた場合には、当該ディスクアレイのみ停止処理を行う」ことから、「互いにミラー化された関係」である「ディスクアレイ装置B200-2」及び「ディスクアレイ装置C200-3」を「シャットダウン(電源OFF)」するのは、これら「ミラー化されたディスクアレイ装置に給電しているUPSの状態情報を調べ、全てに異常が検出された場合」であり、この「場合」は、本願発明1の「少なくとも1つのシャットダウン条件」に相当する。 キ 引用発明の「コンピュータ」は、「複数の無停電電源装置を無停電電源装置が電力を供給する給電負荷装置ごとにグループ化するグループ化手段」と、「複数の無停電電源装置の異常を検出する検出手段」とを備え、当該「コンピュータ100」は、「無停電電源装置300を管理するための管理ソフトウェア110を予め格納(インストール)」し、当該「管理ソフトウェア110」は、「M台の無停電電源装置300に対して、ネットワーク400経由で状態読み出しコマンドを送り、そのレスポンス(応答)により、それぞれの無停電電源装置300の状態を収集」することで、「異常を検出」していることから、上記イで示した「ディスクアレイ装置B200-2」に「電力供給」する「UPS300-7とUPS300-8」による「仮想的なグループ」と、「ディスクアレイ装置C200-3」に「電力供給」する「UPS300-9とUPS300-10」による「仮想的なグループ」とを「監視」しているといえる。 したがって、引用発明の上記「監視」をする「コンピュータ」は、本願発明1の「第1のデバイスに電力を供給するように構成された前記第1のUPSグループと第2のデバイスに電力を供給するように構成された前記第2のUPSグループとを監視」する「処理回路」に相当する。 ク 引用発明の「無停電電源装置シャットダウン信号」は、本願発明1の「シャットダウンさせる制御信号」に相当する。そして、上記カ及びキで示したように、引用発明の「コンピュータ」は、「ミラー化されたディスクアレイ装置に給電しているUPSの状態情報を調べ、全てに異常が検出された場合」に、「ミラー化」された「ディスクアレイ装置B200-2」及び「ディスクアレイ装置C200-3」を「シャットダウン(電源OFF)」することから、本願発明1の「前記選択された設定に基づいて、前記少なくとも1つのシャットダウン条件が存在していることを検出し、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの少なくとも1つをシャットダウンさせる制御信号を選択的に生じるように構成された処理回路」とは、「前記少なくとも1つのシャットダウン条件が存在していることを検出し、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの少なくとも1つをシャットダウンさせる制御信号を生じるように構成された処理回路」である点で共通している。 ケ 上記クで示したように、引用発明の「コンピュータ」は、「ミラー化されたディスクアレイ装置に給電しているUPSの状態情報を調べ、全てに異常が検出された場合」、「ミラー化」された「ディスクアレイ装置B200-2」及び「ディスクアレイ装置C200-3」を「シャットダウン(電源OFF)」することから、換言すれば、「仮想的なグループ」である「UPS300-7とUPS300-8」、及び、別の「仮想的なグループ」である「UPS300-9とUPS300-10」を「シャットダウン(電源OFF)」するための「無停電電源装置シャットダウン信号」を「送信する」といえる。 したがって、引用発明における当該「仮想的なグループ」である「UPS300-7とUPS300-8」と、別の「仮想的なグループ」である「UPS300-9とUPS300-10」を「シャットダウン(電源OFF)」するための「無停電電源装置シャットダウン信号」を「送信する」「コンピュータ」は、本願発明1の「前記第1のUPSグループの少なくとも1つのUPSと、前記第2のUPSグループの少なくとも1つのUPSとを電源オフ状態にする制御信号を生じる」「処理回路」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「 第1の冗長レベルを有する第1のUPSグループと、第2の冗長レベルを有する第2のUPSグループとを監視する監視システムであって、当該監視システムが、 少なくとも1つのシャットダウン条件を有し、 処理回路であって、 第1のデバイスに電力を供給するように構成された前記第1のUPSグループと第2のデバイスに電力を供給するように構成された前記第2のUPSグループとを監視し、 前記少なくとも1つのシャットダウン条件が存在していることを検出し、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの少なくとも1つをシャットダウンさせる制御信号を生じるように構成された処理回路と、を具え、 前記処理回路が更に、前記第1のUPSグループの少なくとも1つのUPSと、前記第2のUPSグループの少なくとも1つのUPSとを電源オフ状態にする制御信号を生じるように構成されている、監視システム。」 <相違点> (相違点1)「第1のUPSグループ」と「第2のUPSグループ」のそれぞれの冗長レベルである「第1の冗長レベル」と「第2の冗長レベル」は、本願発明1では、「異なる」のに対し、引用発明ではいずれも2台であって、「異なる」ものではない点。 (相違点2)本願発明1では、「少なくとも1つのシャットダウン条件と前記少なくとも1つのシャットダウン条件の発生に応答して実行されるシャットダウン命令ファイルとを含む設定をユーザに表示するように構成されたグラフィカルユーザインタフェース」を備えるのに対し、引用発明には、そのような構成がない点。 (相違点3)「処理回路」において、本願発明1では、「前記ユーザによって選択された設定を受信」するのに対し、引用発明では、そのような構成がない点。 (相違点4)「第1のデバイスに電力を供給するように構成された前記第1のUPSグループと第2のデバイスに電力を供給するように構成された前記第2のUPSグループとを監視」する「処理回路」において、本願発明1では、「前記選択された設定に基づいて、前記少なくとも1つのシャットダウン条件が存在していることを検出し、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの少なくとも1つをシャットダウンさせる制御信号を選択的に生じる」のに対し、引用発明では、「前記少なくとも1つのシャットダウン条件が存在していることを検出し、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの少なくとも1つをシャットダウンさせる制御信号を生じる」ものの、本願発明1のような「前記ユーザによって選択された設定を受信」する構成がないため、前記「制御信号を生じる」のに「前記選択された設定に基づく」ものではなく、また、当該制御信号を「選択的に」生じるものでもない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点4について検討する。 「第1のデバイスに電力を供給するように構成された前記第1のUPSグループと第2のデバイスに電力を供給するように構成された前記第2のUPSグループとを監視」する「処理回路」において、「前記選択された設定に基づいて、前記少なくとも1つのシャットダウン条件が存在していることを検出し、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの少なくとも1つをシャットダウンさせる制御信号を選択的に生じる」構成は、引用文献2?7のいずれにも記載されておらず、また、周知技術であるとも認められない。 特に、「設定画面」に関連する引用文献6と引用文献7を参照すると、引用文献6に特定された技術的事項における「情報処理装置1」は、「設定画面」において、引用文献6の図17に示されるように、「待機時間」及び「シャットダウン開始遅延」という「共通項目」により、「ユーザの操作に応じた」「パラメータ」を「設定」するものであり、前者の「待機時間」は、「入力電源異常が発生してから、シャットダウン処理を開始するまでの時間を設定することができ」る項目であり、後者の「シャットダウン開始遅延」は、「「待機時間」という共通項目で設定された時間が経過した後、シャットダウン処理の実行が開始されるまでの時間を設定することができ」ることから、これらの「共通項目」は、「シャットダウン」のための時間的な「条件」と言い得るものであり、本願発明1の「ユーザによって選択された設定」である「シャットダウン条件」に相当するといえる。 しかしながら、当該引用文献6の「共通項目」を設定する「設定画面」は、「情報処理装置1に接続されているUPS2に関する設定を行う」ものであることから、当該「設定画面」を備える「情報処理装置1」は、本願発明1のような、「第1のデバイスに電力を供給するように構成された前記第1のUPSグループと第2のデバイスに電力を供給するように構成された前記第2のUPSグループとを監視」するものとは相違するものである。 また、特に、引用文献7に特定された技術的事項における「サーバ1」は、「シャットダウンおよびUPS停止制御処理に関する各種の設定を入力するための設定画面」において、引用文献7の図6に示されるように、「設定欄109」は、「ユーザからの入力」として、「シャットダウン処理命令が所定の数よりも多いと判断された後、サーバ1自身がシャットダウン処理を開始するまでの遅延時間を入力するためのもの」であることから、「シャットダウン」のための時間的な「条件」と言い得るものであり、本願発明1の「ユーザによって選択された設定」である「シャットダウン条件」に相当するといえる。 しかしながら、当該引用文献7の「各種の設定を入力するための設定画面」は、「サーバ1」に「LAN3を介して接続されているUPS制御装置4」に対する「UPS制御設定」の画面であることから、当該「UPS制御装置4」の「設定画面」を備える「サーバ1」は、本願発明1のような、「第1のデバイスに電力を供給するように構成された前記第1のUPSグループと第2のデバイスに電力を供給するように構成された前記第2のUPSグループとを監視」するものとは相違するものである。 したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2?7に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2及び3について 本願発明2及び3は、本願発明1の上記相違点1?4に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び引用文献2?7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 3.本願発明4?15について 本願発明4及び11は、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であって、本願発明1の構成に対する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 また、本願発明5?10及び、本願発明12?15は、それぞれ本願発明4及び11を減縮した発明であるから、本願発明4及び11と同様に、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は、請求項1?5、7?11、13?15について、上記引用文献1?6に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、また、請求項6及び12について、上記引用文献1?7に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、令和3年4月6日に提出された手続補正により補正された請求項1?15は、上記相違点4に対応する構成を有するものとなっていることから、本願発明1?15は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2?7に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 当審では、請求項1、4及び11において記載された、「第1のUPSグループと第2のUPSグループとの関係に対応する」設定については、本願の国際出願日における国際特許出願の翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、本願の請求項1?15は、特許法第184条の12第2項の規定により読み替えて適用する同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、 また、上記下線部は、本願の翻訳文等における発明の詳細な説明、又は図面を参照しても、その根拠となる記載はされていないから、本願の請求項1?15は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、 また、上記下線部は、本願の翻訳文等における発明の詳細な説明、又は図面を参照しても、技術内容が不明確であるから、本願の請求項1?15は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知しているが、 令和3年4月6日に提出された手続補正書において、上記下線部の記載が削除された結果、この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1?15は、当業者が引用文献1に記載された発明、及び引用文献2?7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-07-06 |
出願番号 | 特願2017-502569(P2017-502569) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F) P 1 8・ 55- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 征矢 崇 |
特許庁審判長 |
稲葉 和生 |
特許庁審判官 |
角田 慎治 小田 浩 |
発明の名称 | 種々の冗長レベルを有するUPSグループの設定を監視するシステム及び方法 |
代理人 | 粟野 晴夫 |