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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B65G
審判 一部申し立て 2項進歩性  B65G
管理番号 1375876
異議申立番号 異議2021-700220  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-01 
確定日 2021-07-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第6749008号発明「表示システム及び表示プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6749008号の請求項1、2及び8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6749008号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?8に係る特許についての出願は、令和1年10月17日に出願され、令和2年8月13日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日 令和2年9月2日)がされ、令和3年3月1日に特許異議申立人小菅あや子(以下、「異議申立人」という。)により請求項1、2及び8に対して特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6749008号の請求項1、2及び8の特許に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」及び「本件発明8」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2及び8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
荷物を運搬する運搬用車両を特定する運搬用車両情報と、前記運搬用車両が1か所ずつ訪れる複数の積卸箇所であって、前記荷物の積み込み又は荷卸しが行われる前記複数の積卸箇所各々における、前記荷物の積み込み又は荷卸しに関する前記運搬用車両の現在の状態を示す積卸箇所現在状態情報とが相互に関連付けられて格納されている第1格納手段と、
前記第1格納手段に格納されている前記運搬用車両情報及び前記積卸箇所現在状態情報に基づいて、前記運搬用車両を示す運搬用車両表示情報であって前記運搬用車両情報に対応する前記運搬用車両表示情報と、前記複数の積卸箇所各々における前記荷物の積み込み又は荷卸しに関する前記運搬用車両の現在の状態を示す積卸箇所現在状態表示情報であって前記積卸箇所現在状態情報に対応する前記積卸箇所現在状態表示情報と、を相互に関連付けて、第1画面に表示する表示制御手段と、
を備える表示システム。

【請求項2】
前記複数の積卸箇所は、当該複数の積卸箇所に対して前記運搬用車両を受け付けるための受付手続が行われた後に当該運搬用車両が訪れる積卸箇所であり、
前記表示システムは、
前記複数の積卸箇所へ訪れる前記運搬用車両について前記受付手続で入力される受付情報であって、少なくとも前記運搬用車両情報を含む前記受付情報が受付端末側に入力された場合に、入力された前記受付情報に含まれている前記運搬用車両情報と、前記受付情報に含まれている前記運搬用車両情報が示す前記運搬用車両に対応する前記積卸箇所現在状態情報とを相互に関連付けて前記第1格納手段に格納する格納制御手段、を備える、
請求項1に記載の表示システム。

【請求項8】
コンピュータを、
荷物を運搬する運搬用車両を特定する運搬用車両情報と、前記運搬用車両が1か所ずつ訪れる複数の積卸箇所であって、前記荷物の積み込み又は荷卸しが行われる前記複数の積卸箇所各々における、前記荷物の積み込み又は荷卸しに関する前記運搬用車両の現在の状態を示す積卸箇所現在状態情報とが相互に関連付けられて格納されている第1格納手段に格納されている前記運搬用車両情報及び前記積卸箇所現在状態情報に基づいて、前記運搬用車両を示す運搬用車両表示情報であって前記運搬用車両情報に対応する前記運搬用車両表示情報と、前記複数の積卸箇所各々における前記荷物の積み込み又は荷卸しに関する前記運搬用車両の現在の状態を示す積卸箇所現在状態表示情報であって前記積卸箇所現在状態情報に対応する前記積卸箇所現在状態表示情報と、を相互に関連付けて、第1画面に表示する表示制御手段、として機能させる、
表示プログラム。」

第3 申立理由の概要
異議申立人は、証拠として特開2019-133667号公報(以下、「引用文献1」という。)及び特開2013-20556号公報(以下、「引用文献2」という。)を提出し、本件発明1、2及び8は、引用文献1又は引用文献2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、引用文献1及び引用文献2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができた発明であって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1、2及び8に係る特許を取り消すべきである旨主張する。

第4 引用文献の記載
1 引用文献1・引用発明1
本件特許の出願前に頒布された引用文献1には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。以下同様。)
(1)「【0028】
図3は、入出庫予約装置3のハードウェア構成を例示する図である。
図3に例示するように、入出庫予約装置3は、CPU200、揮発性メモリ202、HDDメモリ204、ネットワークインタフェース206(ネットワークIF206)、表示装置208、及び入力装置210を有し、これらの構成はバス212を介して互いに接続している。
CPU200は、例えば、中央演算装置である。
揮発性メモリ202は、例えば、主記憶装置として機能する。
HDDメモリ204は、例えば、ハードディスクドライブ装置であり、不揮発性の記録装置としてコンピュータプログラム(例えば、図4の入出庫予約プログラム30)やその他のデータファイル(例えば、図4のID管理データベース600及び設定情報データベース610)を格納する。
ネットワークIF206は、無線で通信するためのインタフェースであり、電話回線又はインターネットを介した通信を実現する。
表示装置208は、例えば、例えば、液晶ディスプレイである。
入力装置210は、例えば、キーボード及びマウスである。」

(2)「【0030】
車両情報受付部300は、荷物の配送に用いる車両の属性と、車両が荷物を入出庫する物流センターに入庫または出庫する入庫予定時刻とを車両情報として受信する。車両の属性には、少なくとも、車両を識別する識別番号(車番)、車種、配送する荷物の種類(カテゴリー)、荷物量、作業予定時間、及びドライバー端末11の連絡先を含む。
入庫予約部302は、車両情報受付部300により受信した車両の属性と入庫予定時刻とに基づいて、車両が接車するバースとバースにおける作業時間とを入庫予約として確保する。
バース状況受付部304は、物流センターにおいて、荷下ろし及び積み込みを行うバースの状況を受け付ける。具体的には、バース状況受付部304は、各バースへの車両の接続状況、及びバースの開放待ち車両の有無をバース状況として受け付ける。
バース提示部306は、バース状況受付部304により受け付けたバースの状況と、入庫予約部302により確保された入庫予約とに基づいて、車両が接車するバースをドライバーに提示する。具体的には、バース提示部306は、着車検知部308により車両が入構したことを検知した場合に、入構した車両に関連付けられる入庫予約と、バース状況受付部304により受け付けたバースの空き状況とに基づいて、入構した車両が接車するバースを決定する。
【0031】
着車検知部308は、車両が物流センター内に入構したことを検知する。
送信部310は、バース提示部306により提示されたバースを入構した車両のドライバーの端末に送信する。具体的には、バース提示部306により決定されたバースの識別情報をドライバー端末11の連絡先へ送信する。
表示部312は、バース状況受付部304が受信するバース状況及び入庫予約部302により確保された入庫予約を表示する。具体的には、表示部312は、少なくとも、車両の入構待ちの状態、車両が着車した状態、車両がバースに接車した状態、及び車両がバースから退車した状態に応じて入庫予約の表示を識別する。(以下省略)」

(3)「【0033】
図5は、入出庫予約システム1における入庫予約画面を例示する図である。
図6は、入出庫予約システム1における入庫予約の表示を例示する図である。
入出庫予約システム1における入庫予約において、ユーザは、基本情報と車両情報とを登録する。具体的には、ユーザは、基本情報として、会社名、便区分、営業日(物流センターへの着車日)、時刻(入庫予定時刻)、車種、カテゴリー(商品の種類)、作業種別、荷物量、作業時間(作業予定時間)を入力する。さらに、ユーザは、車両情報として、運送会社名、ドライバー名、ドライバーの操作するドライバー端末11の携帯番号、物流センターへ着車する車両の車番、積み荷のメーカー名等、発地(出発地)の住所、ドライバーの操作するドライバー端末11のメールアドレスを入力する。また、ユーザは、入庫予約の登録の際、添付ファイルのアップロード、削除、及びダウンロードができる。例えば、添付ファイルは、配送車両大きさ、形状を認識できる写真、又は、荷物の形状、量を認識できる写真等である。さらに、配送伝票の写真を添付ファイルとすることもできる。これにより、物流センターにおける事前準備と他システムへのデータ作成準備との効率が上がる。
【0034】
入庫予約部302は、登録された基本情報及び車両情報基づいて、入庫予約を確保し、予約番号を発行する。具体的には、入庫予約部302は、基本情報と、車両情報と、現在の入庫予約状況と基づいて入庫予約を取得する。図5に例示するように、入庫予約が取得されると、予約番号と、ユーザにより登録された基本情報と、車両情報とが表示される。また、入庫予約部302は、ユーザにより添付されたデータに基づいて、入庫予約を確保してもよい。図6に例示するように、入庫予約が確保されると、表示部312は、入庫予約をタイムテーブル上に表示する。また、バースロック(後述)または優先バース(後述)が設定されている場合に、入庫予約部302は、バースロックまたは優先バースに設定されているバース及び時間を予約対象から除外して入庫予約を確保する。
【0035】
図7は、入出庫予約システム1におけるタイムテーブルとステータス表示を例示する図である。バースモニタは、タイムテーブルとプールエリアとを有し、図7に例示するように、タイムテーブルは、入庫予約を配置及び入庫予約の時間を管理し、縦軸が時間、横軸がバース識別情報(バース番号又はバース名)を表す。タイムテーブルは、各入庫予約と入庫予約の状態とを識別して表示する。入庫予約はBOX単位で表示され、入庫予約のステータスに応じて表示方法が分かれている。具体的には、入庫予約のBOXは、入庫予約した車両が未着車の場合、車両が着車した場合、車両がバースに接車した場合、車両がバースから退車した場合、車両が到着遅れしている場合、及び、積み込み又は荷下ろしが遅れている場合に応じて表示方法が分かれている。より具体的には、バースモニタでは、未着車、着車、接車、及び到着遅れ、作業遅れを、色を分けて表示し、退車は、入庫予約BOXを削除することで表す。これにより、バースモニタのオペレータ(ユーザ)は、視覚的にバースの状況を把握することが可能である。また、タイムテーブルには現在時刻線が表示され、入庫予約時間に近づいてきたこと、入庫予約時間を過ぎたことを視覚的に把握できる。
また、バースモニタのタイムテーブルは、日またがりで表示可能であり、入庫予約も日をまたいだ入庫予約が可能である。これにより、物流センターの運営時間が深夜0:00をまたがっている場合にも対応可能である。 」

(4)上記(1)の入出庫予約装置3のハードウェア構成に関する記載に照らせば、車両の車番及び予約番号や、バースの各々における、未着車、着車、接車、及び到着遅れ、作業遅れの状態が格納されるのは、入出庫予約装置3のうち、主記憶装置である揮発性メモリ202及び不揮発性の記録装置であるHDDメモリ204であり、バースモニターのタイムテーブルに入庫予約のBOXを表示するのは、入出庫予約装置3のうち、中央演算装置であるCPU200と、液晶ディスプレイである表示装置208であると認められる。

(5)【図5】の「予約NO.」の欄には「FRR45」と記載され、「車番」の欄には「1234」と記載されているから、【図6】の入庫予約のボックス内の左上の「FRR45」は予約番号であり、その下の「1234」は車番であることが理解できる。そして、【図7】の複数のバース各々のタイムテーブル内の入庫予約のBOXそれぞれの左上のローマ字3桁とアラビア数字2桁の表示は、【図6】のBOXとの類似性から、予約番号であることが理解できる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本件発明1の記載振りに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明1]
「荷物の配送に用いる車両の車番及び予約番号と、複数のバースであって、前記荷物の積み込み又は荷下ろしが行われる前記複数のバースの各々における、未着車、着車、接車、及び到着遅れ、作業遅れの状態とが、格納されている揮発性メモリ202及びHDDメモリ204と、
前記揮発性メモリ202及びHDDメモリ204に格納されている車番及び予約番号並びに未着車、着車、接車、及び到着遅れ、作業遅れの状態に基づいて、前記予約番号の表示と、前記荷物の積み込み又は荷下ろしが行われる前記複数のバース各々における、未着車、着車、接車、及び到着遅れ、作業遅れの状態に応じた色分け表示とが行われる入庫予約のBOXを、バースモニタのタイムテーブルに表示するCPU200及び表示装置208と、
を備える入出庫予約装置3。」

2 引用文献2、引用発明2
本件特許の出願前に頒布された引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0016】
<車両誘導システム:システム構成例>
まず、本実施形態における車両誘導システムのシステム構成例について図を用いて説明する。図1は、本実施形態における車両誘導システムの一構成例を示す図である。図1に示す車両誘導システム1は、構内エリア10内に、入口ゲート11と、待機場12と、ドライバー休憩室13と、作業場14と、仕分け装置15と、構内車両誘導装置16と、出力ゲート17とを有する。(中略)

【0018】
待機場(荷降車両用)12-1は、表示装置である誘導状況掲示板(誘導状況掲示手段(第2の誘導表示手段))24-1を有する。(中略)

【0021】
入力ゲート11は、構内エリア10内に進入する配車40を管理する。具体的には、入力ゲート11は、ゲート部21-1を通過する配車40-1について、カメラ22-1により配車40-1の車両ナンバープレートの画像を取得する。また、入力ゲート11は、カメラ22-1により撮影された画像に含まれる車両情報(例えば、陸運局、種別、事業種別、一連指定番号等)に基づいて、ゲート部21-1を通過した配車40-1が向かうべき場所(いわゆる行き先)を行先表23に表示する。行先表23が表示する行き先としては、例えば配車識別情報、向かい先情報(待機場(荷降車両用)12-1、待機場(積込車両用)12-2、作業場14)等である。 」

(2)「【0026】
作業場14は、構内エリア10内に入ってきた配車40に対する荷降ろし及び積み込みを行う場所である。例えば、仕分け装置15において、予め設定された仕分けスケジュールに基づいて荷降ろし及び積み込みを行うバースを設定し、各車両を配置してコンベア25等により荷物を搬送して、所定のバースに移動して各バースに割り当てた積み込み等を行う。なお、本実施形態における構内エリア10内の配車の誘導については、例えば構内車両誘導装置16により行われる。
【0027】
なお、荷降用バース領域26と、積込用バース領域27とは、それぞれが少なくとも1つのバースを有する。また、各バースは、所定の時刻に所定の荷物の荷降ろしや積み込みが行われる場所である。 」

(3)「【0052】
蓄積手段73は、車両情報取得手段74により得られる画像データ(車両ナンバープレート等)や車両情報、状況管理手段75により得られる、荷降ろし作業状況、積み込み作業状況、誘導制御手段76により得られる誘導状況、表示制御手段77により得られる表示状況等による各種データを蓄積する。また、蓄積手段73は、必要に応じて蓄積されている各種データを読み出すことができる。 」

(4)「【0060】
また、表示制御手段77は、例えば車両が所定の作業場に設置されたカメラ22により撮影された場合には、行先表23や誘導状況掲示板24-1?24-3における表示を消去する。また、表示制御手段77は、例えば行先表23や誘導状況掲示板24-1?24-3に表示させてから所定時間が経過後に削除してもよい。」

(5)「【0067】
出力装置82は、本発明における処理を行うためのコンピュータ本体を操作するのに必要な各種ウィンドウやデータ等を表示するディスプレイを有し、CPU86が有する制御プログラムによりプログラムの実行経過や結果等を表示することができる。 」

(6)「【0076】
入力ゲート11及び出力ゲート17は、カメラ22-1により撮影された車両ナンバープレートを文字認識することにより、例えば「陸運局」、「種別(車種)」、「事業種別」、「一連指定番号」等の項目を取得する。なお、上述した情報は、出力ゲート17に設置されたカメラ22-8からの取得することができる。これらの情報は、車両が入力ゲート11又は出力ゲート17の通過時に得られ、取得されたデータは構内車両誘導装置16に送信される。」

(7)「【0079】
また、構内車両誘導装置16は、例えば「構内車両データ」、「荷物データ」、「シュート割付データ」、「バース間マスタ」、「バース・車両履歴データ」、「バース状況データ」、「誘導優先地区管理マスタ」等を有する。
【0080】
「構内車両データ」の主な項目としては、例えば「車両番号」、「ステータス(未着・待機・・・)」、「荷物個数」、「エリア」、「積降区分」、「発店」、「着店」、「到着時刻」、「出発時刻」等を含む。なお、このデータは、主に配車管理装置30から得られる情報等に基づいて生成される。また、「荷物データ」の主な項目としては、例えば「車両番号」、「荷物識別番号」、「着店コード」等を含む。
【0081】
また、「シュート割付データ」の主な項目としては、例えば「積込バースNo」、「着店コード」等を含む。また、「バース間マスタ」の主な項目としては、例えば「荷降バースNo」、「積込パースNo」、「相対バース間距離」等を含む。また、「バース・車両履歴データ」の主な項目としては、例えば「バースNo」、「発店コード」、「車両番号」、「荷物個数」、「着車時間」、「出車時間」等を含む。
【0082】
また、「バース状況データ」の主な項目としては、例えば「バースNo」、「区分(積込・荷降ろし)」、「車両番号」、「状況区分(着車中、空車)」等を含む。また、「誘導優先地区管理マスタ」の主な項目としては、例えば「優先管理No」、「エリア」等を含む。
【0083】
なお、上述の「構内車両データ」は、主に配車管理装置30から得られる情報等に基づいて生成され、「シュート割付データ」、「荷物データ」は、主に仕分け装置15から得られる情報等に基づいて生成される。また、「誘導優先地区管理マスタ」として蓄積されるデータは、ユーザにより画面を用いたメンテナンス等の設定により生成される。なお、これらのデータは、構内車両誘導装置16における蓄積手段73に蓄積され、必要に応じて読み出すことができる。また、上述した各データの項目の数や順序、内容についてはこれに限定されるものではない。 」

(8)「【0109】
<構内車両データの変更、更新例>
ここで、本実施形態における構内車両データの変更、更新例について図を用いて説明する。図13は、本実施形態における構内車両データの変更、更新例を説明するための図である。図13の例では、構内車両データの変更、更新のタイミングとして、例えば(1)車両到着前、(2)車両到着、(3)誘導先指示、(4)バース到着、(5)バース出発の各段階において、データの変更、更新が行われる。 」

(9)「【0111】
また、図13における構内車両データにおいて、ステータスが「未着」の場合は、車両が未到着の状態を示し、「到着」の場合は、「車両」が構内エリア10に到着した状態を示し、「待機」の場合は、待機場に待機中の状態を示し、「バース移動中」の場合は、入口ゲート又は待機場から所定のバースに移動中の状態を示し、「積込中」の場合は、積込バースで作業中の状態を示し、「荷降中」の場合は、荷降バースで作業中の状態を示し、「出発」の場合は、車両が構内エリア10を出発した状態を示す。なお、本実施形態におけるステータスの種類については、上記の内容に限定されるものではない。」

(10)「【0115】
例えば図14の例では、行先表23に「荷降-03」、「積込-15」、「待機場」の何れかが表示される。これにより、入口ゲートを通過した車両のドライバーは、即座に自分の行き先を把握することができる。「荷降」及び「積込」と共に表示される番号は、バース番号を示すが、本実施形態においてはこれに限定されるものではなく、行き先を特定できる他の情報であってもよい。
【0116】
なお、本実施形態では、行先表23による表示と共に、行先表に予め設けられている音声出力手段により表示されている内容を音声出力してドライバーに通知してもよい。例えば、「荷降-03」である場合には、「荷降用バース領域の3番バースへ行ってください」等の音声表示を行うこともできる。
【0117】
<誘導状況掲示板24における表示動作の具体例>
次に、誘導状況掲示板24における表示動作の具体例について図を用いて説明する。図15は、誘導状況掲示板における表示動作の具体例を説明するための図である。本実施形態では、待機場に待機している車両に対して構内エリア10の行き先情報を誘導状況掲示板24により表示する。
【0118】
誘導状況掲示板24における表示動作は、まず誘導先検索として、配車管理装置30及び仕分け装置15から事前に取得している各種情報に基づいて、誘導車両の誘導先を検索し、検索された誘導先(行き先)が誘導状況掲示板24にデータ送信されて表示が行われる。
【0119】
なお、図15の例では、誘導状況掲示板24に「路線会社名」と「車両番号」と、「待機車両」が表示されており、例えば、「路線会社名」及び「車両番号」として、例えば「(1)○○○運送 品川○○あ4649」が表示され、「待機車両」として、例えば「品川 ○○ あ0001」が表示される。なお、本実施形態では、これらの情報が、誘導状況掲示板24-1?24-3で表示される。したがって、待機場12-1,12-2及びドライバー休憩室13にいるドライバーに迅速に誘導状況を通知することができる。 」

(11)「【0151】
なお、上述した実施形態では、主に自動車における車両誘導について説明したが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、例えば船やコンテナ等における配送業務全般に対して適用することができる。具体的には、船内やコンテナ内の荷物に対する荷降ろしや積み込み作業を行う場合に、船の船着場への誘導や、コンテナの倉庫への誘導等にも広く適用することができる。なお、上述した船やコンテナを識別する場合には、上述したナンバープレートの代わりに、船の側面やコンテナの側面に記述された識別情報(例えば、船名、コンテナ番号等)をカメラで撮影し、撮影した画像を解析して識別情報を取得することで、上述した車両情報と同様の情報を取得することができる。 」


上記記載事項、図示内容及び認定事項を総合し、本件発明1の記載振りに則って整理すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明2]
「荷物を配送する車両から取得される車両番号を含む車両情報と、前記車両が訪れるバースであって、前記荷物の積み込み及び荷降ろしが行われる前記バース各々における、バース移動中、積込中及び荷降中を含む構内車両データ並びに状況区分(着車中、空車)を含むバース状況データを蓄積する蓄積手段73と、
前記蓄積手段73に蓄積された車両情報並びに構内車両データ及びバース状況データに基づいて、車両番号と、誘導先のバースとを誘導状況掲示板24に表示する表示制御手段77と、
を備える車両誘導システム1」

第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)引用発明1との対比、検討
本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「荷物の配送に用いる車両」は、本件発明1の「荷物を運搬する運搬用車両」に相当し、以下同様に、
「車番及び予約番号」は運搬用車両を特定する「運搬用車両情報」に、
「バース」は「積卸箇所」に、
「積み込み又は荷下ろし」は「積み込み又は荷卸し」に、
「未着車、着車、接車、及び到着遅れ、作業遅れの状態」は「前記荷物の積み込み又は荷卸しに関する前記運搬用車両の現在の状態を示す積卸箇所現在状態情報」に、
「揮発性メモリ202及びHDDメモリ204」は「第1格納手段」に、
「予約番号の表示」は「運搬用車両表示情報」を「表示する」ことに
「未着車、着車、接車、及び到着遅れ、作業遅れの状態に応じた色分け表示」は「積卸箇所現在状態情報に対応する」「積卸箇所現在状態表示情報」を「表示する」ことに、
「バースモニタ」は「第1画面」 に、
「CPU200及び表示装置208」は「表示制御手段」に、
「入出庫予約装置3」は「表示システム」に、それぞれ相当する。

そして、引用発明1の「前記予約番号の表示」と、「色分け表示とが行われる入庫予約のBOXを、バースモニタのタイムテーブルに表示する」ことは、本件発明1の「運搬用車両表示情報」と、「積卸箇所現在状態表示情報と、を第1画面に表示する」ことに相当する。

したがって、本件発明1と引用発明1とは、以下の一致点1で一致し、相違点1で相違する。

[一致点1]
「荷物を運搬する運搬用車両を特定する運搬用車両情報と、複数の積卸箇所であって、前記荷物の積み込み又は荷卸しが行われる前記複数の積卸箇所各々における、前記荷物の積み込み又は荷卸しに関する前記運搬用車両の現在の状態を示す積卸箇所現在状態情報とが格納されている第1格納手段と、
前記第1格納手段に格納されている前記運搬用車両情報及び前記積卸箇所現在状態情報に基づいて、前記運搬用車両を示す運搬用車両表示情報であって前記運搬用車両情報に対応する前記運搬用車両表示情報と、前記複数の積卸箇所各々における前記荷物の積み込み又は荷卸しに関する前記運搬用車両の現在の状態を示す積卸箇所現在状態表示情報であって前記積卸箇所現在状態情報に対応する前記積卸箇所現在状態表示情報と、を第1画面に表示する表示制御手段と、
を備える表示システム。」

[相違点1]
本件発明1は、「複数の積卸箇所」が「運搬用車両が1か所ずつ訪れる複数の積卸箇所」であることを前提として、「第1格納手段」は「運搬用車両情報」と複数の「積卸箇所現在状態情報」とを相互に関連付けて格納し、「第1画面」は「運搬用車両表示情報」と複数の「積卸箇所現在状態表示情報」とを相互に関連付けて表示する構成を有するのに対し、引用発明1は、このような構成を有しない点。

以下、上記相違点1について検討する。

本件発明1は、「物流施設内の複数箇所(例えば、複数の倉庫等)で荷物の積卸を行う場合があるが、この場合、各箇所が相互に離れて設けられていたので、各箇所における車両の荷物の積卸の現在の状態を確認することが困難となっていた。」という従来技術の課題(本件特許の明細書の段落【0004】参照)を解決するために、上記相違点1に係る本件発明1の構成によって、「複数の積卸箇所各々における荷物の積み込み又は荷卸しに関する運搬用車両の現在の状態を確認させることが可能となる」(同【0014】参照)という作用・効果を奏するものであるから、上記相違点1は実質的なものといえる。
したがって、本件発明1は引用発明1ではない。

また、「運搬用車両が1か所ずつ訪れる複数の積卸箇所」を前提として、運搬用車両表示情報と複数の積卸箇所現在状態表示情報とを「相互に関連付けて第1画面に表示する」ことについて、引用文献1及び2には記載も示唆もされていないので、引用文献1及び2に記載された事項を組み合わせても、上記相違点1に係る本件発明1の構成に至らないし、本件発明1の作用・効果も、引用発明1並びに引用文献1及び2に記載された事項から当業者が予測し得たものではない。

したがって、本件発明1は、引用発明1でなく、また、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(2)引用発明2との対比、検討
本件発明1と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「荷物を配送する車両」は、本件発明1の「荷物を運搬する運搬用車両」に相当し、以下同様に、
「車両から取得される車両番号を含む車両情報」は「運搬用車両を特定する運搬用車両情報」に、
「バース」は「積卸箇所」に
「積み込み及び荷降ろし」は「積み込み又は荷卸し」に、
「バース移動中、積込中及び荷降中を含む構内車両データ並びに状況区分(着車中、空車)を含むバース状況データ」は「前記荷物の積み込み又は荷卸しに関する前記運搬用車両の現在の状態を示す積卸箇所現在状態情報」に、
「蓄積」することは「格納」することに、
「蓄積手段73」は「第1格納手段」に、
「車両番号」は、車両情報に含まれるものなので、「車両番号」を「表示する」ことは、「運搬用車両情報に対応する運搬用車両表示情報」を「表示する」ことに、
「誘導状況掲示板24」は「第1画面」に
「表示制御手段77」は「表示制御手段」に、
「車両誘導システム1」は「表示システム」に、それぞれ相当する。

また、引用発明2の「車両番号と、誘導先のバースとを」表示することと、本件発明1の「前記運搬用車両を示す運搬用車両表示情報であって前記運搬用車両情報に対応する前記運搬用車両表示情報と、前記複数の積卸箇所各々における前記荷物の積み込み又は荷卸しに関する前記運搬用車両の現在の状態を示す積卸箇所現在状態表示情報であって前記積卸箇所現在状態情報に対応する前記積卸箇所現在状態表示情報と、を相互に関連付けて」表示することとは、「前記運搬用車両を示す運搬用車両表示情報であって前記運搬用車両情報に対応する前記運搬用車両表示情報」を表示することに限り共通する。

したがって、本件発明1と引用発明2とは、以下の一致点2で一致し、相違点2で相違する。

[一致点2]
「荷物を運搬する運搬用車両を特定する運搬用車両情報と、前記運搬用車両が訪れる複数の積卸箇所であって、前記荷物の積み込み又は荷卸しが行われる前記複数の積卸箇所各々における、前記荷物の積み込み又は荷卸しに関する前記運搬用車両の現在の状態を示す積卸箇所現在状態情報とが相互に関連付けられて格納されている第1格納手段と、
前記第1格納手段に格納されている前記運搬用車両情報及び前記積卸箇所現在状態情報に基づいて、前記運搬用車両を示す運搬用車両表示情報であって前記運搬用車両情報に対応する前記運搬用車両表示情報を、第1画面に表示する表示制御手段と、
を備える表示システム。」

[相違点2]
本件発明1は、「運搬用車両が1か所ずつ訪れる複数の積卸箇所」を有し、表示制御手段は、「前記第1格納手段に格納されている前記運搬用車両情報及び前記積卸箇所現在状態情報に基づいて、前記運搬用車両を示す運搬用車両表示情報であって前記運搬用車両情報に対応する前記運搬用車両表示情報と、前記複数の積卸箇所各々における前記荷物の積み込み又は荷卸しに関する前記運搬用車両の現在の状態を示す積卸箇所現在状態表示情報であって前記積卸箇所現在状態情報に対応する前記積卸箇所現在状態表示情報と、を相互に関連付けて、第1画面に表示する」のに対し、引用発明2は、このような構成を有しない点。

以下、上記相違点2について検討する。

本件発明1は、上記相違点2に係る本件発明1の構成によって「複数の積卸箇所各々における荷物の積み込み又は荷卸しに関する運搬用車両の現在の状態を確認させることが可能となる」という作用・効果を奏するものであるから、上記相違点2は実質的なものといえる。
したがって、本件発明1は引用発明2ではない。

また、「運搬用車両が1か所ずつ訪れる複数の積卸箇所」に関して、運搬用車両表示情報と積卸箇所現在状態表示情報とを「相互に関連付けて第1画面に表示する」ことについて、引用文献1及び2には記載も示唆もされていないので、引用発明2に引用文献1及び2に記載された事項を組み合わせても、上記相違点2に係る本件発明1の構成に至らないし、本件発明1の作用・効果も、引用発明2並びに引用文献1及び2に記載された事項から当業者が予測し得たものではない。

したがって、本件発明1は、引用発明2及び引用文献1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

2 本件発明2及び8について
本件発明2は、本件発明1の構成を全て含む発明であるから、上記1と同様の理由により、引用発明1又は2でなく、また、引用発明1及び2並びに引用文献1及び2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、本件発明8は、本件発明1をプログラムの発明として記載したものと認められ、本件発明1と同一又は対応する技術的特徴を有するから、上記1と同様の理由により、本件発明8は、引用発明1又は2でなく、また、引用発明1及び2並びに引用文献1及び2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

3 小括
上記1及び2のとおりであるから、本件発明1、2及び8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号及び第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

4 採用しなかった異議申立人の主張について
(1)引用文献1に記載された発明について
異議申立人は、特許異議申立書の(4-3-1)イ(24頁第14?20行)において「甲1には、バースモニタのタイムテーブルにおいてバースごとの入庫予約が示されること、及び本件特許明細書には、『物流施設内の複数個所(例えば、複数の倉庫等)で荷物の積卸を行う場合がある』との記載があることからして(段落0004)、本件特許の特許出願当時に、物流センター等の構内エリアに入った車両が複数のバースを訪れることは、当業者にとって自明な事項又は甲1に記載されているに等しい事項であるといえる。」と主張している。

また、特許異議申立書の(4-5-1)イ(37頁第21?24行)において「加えて、甲1発明において、車両が複数のバースを1か所ずつ訪れる場合に、バースモニタにおける異なるバースでの入庫予約BOXが同一の車両のものであることは何ら矛盾するものでなく、そのように入庫予約を確保することは可能であると容易に推認できる。」と主張している。

しかしながら、引用文献1(甲1)の【図7】および【図8】に記載されたタイムテーブルは、バースNOないしバース名称が「東413-1」、「東413-2」、「東414-1」、「東415」、「東416-2」のバースについてのタイムテーブルであるが、このタイムテーブルに表示されているバース内で、1つの車両が複数のバースを訪れる状況は記載されていない。
また、本件特許の明細書は、本件特許の出願時における当業者の技術水準を知るための客観的な証拠とは認められない。また、ほかに本件特許の出願時における当業者の技術水準を知るための客観的な証拠は示されていないから、物流センター等の構内エリアに入った車両が複数のバースを訪れることは、当業者にとって自明な事項とまではいえない。

したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。

(2)引用文献2に記載された発明について
異議申立人は、特許異議申立書の(4-4-1)ア(イ)(33頁第2?16行)において、「前記した甲2の記載から、甲2発明は以下の構成a及びbを含むものと認定することができる。
(中略)
構成b 前記蓄積手段に格納されている前記車両情報及び前記バース状況データに基づいて、前記車両を示す車両番号であって前記車両情報に対応する前記車両番号と、前記複数のバース各々における前記荷物の積み込み又は荷降ろしに関する前記車両の現在の状態を示すステータスであって前記バース状況データに対応する前記ステータスと、を相互に関連付けて、出力装置のウィンドウに表示する制御手段と、
を備える車両誘導システム。」
と主張している。

しかしながら、引用文献2(甲2)に記載された出力装置(82)は「コンピュータ本体を操作するのに必要な」ウィンドウを表示するものであって「CPU86が有する制御プログラムによりプログラムの実行経過や結果等を表示する」もの(段落【0067】参照。)であり、プログラムの動作確認やデバッグ等のためのものに過ぎないから、車両番号とステータスとを相互に関連付けて表示するものとはいえない。

また、引用文献2の【図13】は、「構内車両データの変更、更新のタイミング」(段落【0109】参照。)を示すための略図であり、「積込」と「荷降」が続けて1つずつ行われることを示すものではない。そうすると、上記の段落【0067】の記載を参酌しても、この【図13】から、構内車両データの積降区分が「積込」の表と、「荷降」の表とを抽出し、かつ、これら2つの表の各々を相互に関連付けてウィンドウに表示することが、引用文献2に開示ないし示唆されているとまでは認められない。

したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2及び8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2及び8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-06-04 
出願番号 特願2019-190452(P2019-190452)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (B65G)
P 1 652・ 113- Y (B65G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 福島 和幸  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 内田 博之
尾崎 和寛
登録日 2020-08-13 
登録番号 特許第6749008号(P6749008)
権利者 株式会社モノフル
発明の名称 表示システム及び表示プログラム  
代理人 塩谷 英明  
代理人 斉藤 達也  

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