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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25D
管理番号 1376177
審判番号 不服2020-11931  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-26 
確定日 2021-07-15 
事件の表示 特願2016- 28864「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月24日出願公開、特開2017-146039〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成28年2月18日に出願されたものであって、令和1年11月27日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年1月29日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和2年6月2日付け(発送日:令和2年6月9日)で拒絶査定がなされ、それに対して、令和2年8月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、令和3年3月12日付けで拒絶の理由が通知され、令和3年4月6日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1?9に係る発明は、令和3年4月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
冷蔵庫を制御する制御部と、
冷蔵庫に設けられ、外部の記憶媒体と接続するインターフェース部と、を備え、
前記制御部と前記記憶媒体との間で通信可能にし、
前記インターフェース部は、冷蔵庫が備える貯蔵室の前面開口を開閉する扉の下面に設けられており、
前記インターフェース部の前記記憶媒体が挿入される挿入口は、上下に並んだ貯蔵室のうち上段の貯蔵室の扉の下面に冷蔵庫に対して下向きに開口した状態で、当該挿入口が設けられている部位の表面から窪んで形成されている凹部内に位置して、通常の使用時には開口部分がユーザの視野に入ることがない状態で設けられており、
前記凹部は、前記挿入口に前記記憶媒体を挿入した状態において、当該記憶媒体が当該凹部から突出しない深さとなるように形成されている冷蔵庫。」

3 拒絶の理由
令和3年3月12日付けで当審が通知した拒絶の理由における理由1(進歩性)は次のとおりである。
(1)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)この出願の請求項2、3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1、2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)この出願の請求項4?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1?3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例等一覧
1.米国特許出願公開第2013/0098083号明細書
2.特開2006-46747号公報
3.特開2012-220186号公報

4 引用例
(1)引用例1
当審の拒絶の理由に引用例1として引用された米国特許出願公開第2013/0098083号明細書には、次の事項が図面とともに記載されている(下線は当審にて付した。また()内は当審による訳文である。以下同様)。

(1-a)「[0011] Embodiments provide a refrigerator including a detachable portable memory unit for accumulating data about operations and states of the refrigerator. The portable memory unit can be detached from the refrigerator and connected to a personal computer (PC) to analyze reasons of errors of the refrigerator and find out potential errors of the refrigerator for easy maintenance of the refrigerator.」
(実施形態は、冷蔵庫の動作及び状態に関するデータを蓄積するための着脱可能な携帯型記憶装置を備えた冷蔵庫を提供する。携帯型記憶装置は、冷蔵庫から取り外し、パーソナルコンピュータ(PC)に接続されている冷蔵庫のエラーの理由を分析し、冷蔵庫のメンテナンスを容易にするための潜在的なエラーを発見することができる。)

(1-b)「[0060] Referring to FIG. 3, the refrigerator 1 of the other embodiment includes a control unit 300. The control unit 300 controls operations of the refrigerator 1. A load unit 120, a detection unit 130, and an output unit 140 are connected to the control unit 300. The control unit 300 includes a memory unit 310 on which a program is installed for operating the refrigerator 1. The control unit 300 is connected to a history data memory unit 500. The history data memory unit 500 includes a portable memory unit 510 for storing data of the memory unit 310.」
(図3を参照すると、他の実施形態の冷凍機1は、制御部300を備えている。制御部300は、冷蔵庫1の動作を制御する。ロード部120、検出部130、及び出力部140は、制御部300に接続されている。制御部300は、冷凍機1を操作するために実装されたプログラム記憶部310を備えている。制御部300は、履歴データ記憶部500に接続されている。履歴データ記憶部500は、記憶部310のデータを記憶するための携帯メモリユニット510を含む。)

(1-c)「[0075] FIG. 6 is a view illustrating the history data storage unit 500 provided at a door deco 240 according to an embodiment.」
(図6は、本実施形態に係るドアパネル240に設けた履歴データ記憶部500を示す図である。)

(1-d)「[0079] The history data memory unit 500 may be disposed in the door deco 240. The history data memory unit 500 may be disposed at the rear side of the door deco 240, and a slot 242 may be formed in a side of the door deco 240 at a position corresponding to the history data memory unit 500 so that the portable memory unit 510 can be inserted through the slot 242. The slot 242 may be formed in the topside or bottom side of the door 200 that is not easily exposed to the outside of the refrigerator 1.」
(履歴データ記憶部500は、ドアパネル240に配置してもよい。履歴データ記憶部500は、ドアパネル240の背面側に配置することができ、携帯メモリユニット510がスロット242を通して挿入することができるように、スロット242は、履歴データ記憶部500に対応する位置には、ドアパネル240の側に形成されてもよい。スロット242は、冷蔵庫1の外部に容易に露出されないように、ドア200の上部または底部に形成されてもよい。)

(1-e)「



上記(1-a)?(1-e)の事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「冷蔵庫1の動作を制御する制御部300と、
履歴データ記憶部500のスロット242と、を備え、
履歴データ記憶部500は携帯メモリユニット510を含み、
制御部300は、履歴データ記憶部500に接続され、
履歴データ記憶部500はドアパネル240に設けられ、
携帯メモリユニット510は、履歴データ記憶部500のスロット242を通して挿入することができ、スロット242は、冷蔵庫1の外部に容易に露出されないように、ドアパネル240の上部または底部に形成される冷蔵庫1。」

5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「冷蔵庫1の動作を制御する制御部300」は、本願発明の「冷蔵庫を制御する制御部」に相当する。

イ 引用発明の「携帯メモリユニット510」は、本願発明の「外部記憶媒体」に相当し、「携帯メモリユニット510は、履歴データ記憶部500のスロット242を通して挿入する」ものである。
よって、引用発明の「履歴データ記憶部500のスロット242」は、本願発明の「冷蔵庫に設けられ、外部の記憶媒体と接続するインターフェース部」に相当する。

ウ 引用発明の履歴データ記憶部500は、携帯メモリユニット510を含むものであり、「制御部300」が、「履歴データ記憶部500に接続され」れば、携帯メモリユニット510と制御部300とが通信可能であることは明らかである。
よって、引用発明の「制御部300は、履歴データ記憶部500に接続され」る点は、本願発明の「制御部と記憶媒体との間で通信可能」である点に相当する。

エ 引用発明の「スロット242」は、冷蔵庫1の外部に容易に露出されないように、ドアパネル240の底部に形成されるから、スロット242は、挿入口がドアパネル240の下面に冷蔵庫1に対して下向きに開口した状態で、通常の使用時には開口部分がユーザの視野に入ることがない状態で設けられることは明らかである。
よって、引用発明の「履歴データ記憶部500はドアパネル240に設けられ、携帯メモリユニット510は、履歴データ記憶部500のスロット242を通して挿入することができ、スロット242は、冷蔵庫1の外部に容易に露出されないように、ドアパネル240の上部または底部に形成される」点と、
本願発明の「インターフェース部は、冷蔵庫が備える貯蔵室の前面開口を開閉する扉の下面に設けられ、前記インターフェース部の前記記憶媒体が挿入される挿入口は、上下に並んだ貯蔵室のうち上段の貯蔵室の扉の下面に冷蔵庫に対して下向きに開口した状態で、当該挿入口が設けられている部位の表面から窪んで形成されている凹部内に位置して、通常の使用時には開口部分がユーザの視野に入ることがない状態で設けられ」る点とは、
「インターフェース部は、冷蔵庫が備える貯蔵室の前面開口を開閉する扉の下面に設けられ、前記インターフェース部の前記記憶媒体が挿入される挿入口は、貯蔵室の扉の下面に冷蔵庫に対して下向きに開口した状態で、通常の使用時には開口部分がユーザの視野に入ることがない状態で設けられ」る点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「冷蔵庫を制御する制御部と、
冷蔵庫に設けられ、外部の記憶媒体と接続するインターフェース部と、を備え、
前記制御部と前記記憶媒体との間で通信可能にし、
前記インターフェース部は、冷蔵庫が備える貯蔵室の前面開口を開閉する扉の下面に設けられており、
前記インターフェース部の前記記憶媒体が挿入される挿入口は、貯蔵室の扉の下面に冷蔵庫に対して下向きに開口した状態で、通常の使用時には開口部分がユーザの視野に入ることがない状態で設けられている冷蔵庫。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明の「インターフェース部の記憶媒体が挿入される挿入口」は、「上下に並んだ貯蔵室のうち上段の貯蔵室の扉の下面に」設けられるのに対し、引用発明は、「ドアパネル240の」「底部に形成される」点。

[相違点2]
本願発明の「インターフェース部の記憶媒体が挿入される挿入口」は、「当該挿入口が設けられている部位の表面から窪んで形成されている凹部内に位置し」、「前記凹部は、前記挿入口に前記記憶媒体を挿入した状態において、当該記憶媒体が当該凹部から突出しない深さとなるように形成されている」のに対し、引用発明は、挿入口(スロット242)についてそのような構成を有していない点。

6 判断
ア 上記相違点1について検討する。
冷蔵庫において、貯蔵室を上下に並べて配置して、上段の貯蔵室に扉を設けることは、よく知られた慣用技術であるといえる。
よって、引用発明において、上記慣用技術を採用し、上下に並んだ貯蔵室のうち上段の貯蔵室の扉の下面にインターフェース部の記憶媒体が挿入される挿入口を設けることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 上記相違点2について検討する。
メモリカード等の記憶媒体が挿入される挿入口を、当該挿入口が設けられている部位に形成されている凹部内に位置して設けることは、本願の出願前において周知の技術(以下、「周知の技術」という。)である。
(例えば、特開2002-32715号公報の【0045】【0061】、図14、17に記載された凹面部42aに挿入口43aと挿入口44aを設けた点、又はえぐり状の凹部53aと53bに装着保持部53と54のそれぞれの挿入口を設けた点、特開2008-263496号公報の段落【0040】?【0044】、図13、14に記載されたメモリーカード挿入口51の周囲に凹面(窪部)52が形成された点、特開2000-286024号公報の【0029】、図6に記載された円弧状の凹部52にメモリカード30が挿入されるスリット53を形成した点を参照のこと。)
そして、挿入口に記憶媒体を挿入した状態における、凹部と記憶媒体との配置については、当業者が適宜設定できるものであり、その状態において、記憶媒体が凹部から突出しない深さに形成することは、当業者にとって格別困難なことではない。
(周知の技術として例示した特開2002-32715号公報の段落【0047】、図16、及び特開2008-263496号公報の段落【0044】、図14には、挿入口に記憶媒体を挿入した状態において、記憶媒体が凹部から突出しない深さに形成することが記載されている。)
よって、引用発明に周知の技術を適用し、記憶媒体が挿入される挿入口を、挿入口が設けられている部位の表面から窪んで形成されている凹部内に位置するように構成するとともに、挿入口に前記記憶媒体を挿入した状態において、当該記憶媒体が当該凹部から突出しない深さとなるように形成することは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 本願発明が奏する効果について
上記相違点1、2によって本願発明が奏する効果は、当業者が引用発明、慣用技術及び周知の技術から予測しうる程度のものであって、格別のものではない。

エ 請求人の主張について
請求人は、令和3年4月6日付け意見書において、「さらに、特開2002-32715号公報のものは、図11、図12に記載されていますように記憶媒体のスロットが設けられている部位に(スロット全体を収容する形状の)凹部が形成されている構成ではなく、また、引用文献3のものも同様に、スロットが設けられている面に凹部が形成されているものではありません。つまり、引用文献1-3あるいは提示された特開2002-32715号公報のものは、いずれも、「スロットが形成されている面」に凹部が設けられた構成にはなっていませんので、本願発明の構成とは全く異なっています。
また、特開2000-286024号公報のものは、「スロットが形成されている面」に凹部が設けられている構成にはなっていますが、上記しましたようにメモリカードが凹部から突出する状態で収容される構成ですので、やはり本願発明の構成とは全く異なっています。
したがいまして、これらの各文献からは、旧請求項8の構成が想起あるいは導出されることもありません。すなわち、旧請求項8の構成要件を全て含んでいる本願発明が引用文献1-3および提示された他の文献に基づいて容易に発明できたものであるとする論理付けはできません。
そして、本願発明は、上記した特徴的な構成を備えることにより、冷蔵庫に水滴などが掛かる可能性がある場合において、下面から窪んだ凹部、つまりは、下面から上方に窪んでいる凹部内に挿入口を設けていますので、水滴等の液体の侵入を抑制することができます。」(「3.本願が特許されるべき理由」)と主張する。
しかしながら、上記「6 イ」で検討したとおり、メモリカード等の記憶媒体が挿入される挿入口を、当該挿入口が設けられている部位に形成されている凹部内に位置して設けることは、本願の出願前において周知の技術であることに変わりはない(特開2002-32715号公報については【0045】【0061】、図14、17を参照されたい。)。
そして、引用発明には「スロット242は、冷蔵庫1の外部に容易に露出されないように、ドアパネル240の」「底部に形成される」ことが開示されているから、スロット242外部に露出しないように下方に開口した状態で配置されることは明らかであり、引用発明に周知の技術を適用し、下面から窪んだ凹部、つまりは、下面から上方に窪んでいる凹部内に挿入口を設けることで、水滴等の液体の侵入を抑制することも、当業者が容易になし得たことである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

オ まとめ
よって、本願発明は、引用発明、慣用技術及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2021-04-28 
結審通知日 2021-05-11 
審決日 2021-05-28 
出願番号 特願2016-28864(P2016-28864)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (F25D)
P 1 8・ 121- WZ (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森山 拓哉  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 槙原 進
平城 俊雅
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  

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