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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1376264
審判番号 不服2020-16031  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-20 
確定日 2021-08-03 
事件の表示 特願2018-551103「コロイドシリカ成長阻害剤及び関連する方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日国際公開,WO2017/172532,平成31年 4月25日国内公表,特表2019-511842,請求項の数(17)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2017年(平成29年)3月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年3月30日,米国(US) 2016年3月30日,米国(US) 2017年3月23日,米国(US))を国際出願日とする出願であって,令和2年3月17日に手続補正がされ,同年4月7日付けで拒絶理由通知がされ,同年7月6日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,同年7月13日で拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年11月20日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年7月13日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1?17に係る発明は,以下の引用文献1?6に記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2016-029717号公報
2.特開平9-275091号公報
3.特開2009-094455号公報
4.特開2001-023952号公報
5.特開2006-319171号公報
6.特表2014-532305号公報

第3 本願発明
本願請求項1?17に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明17」といいう。)は,令和2年7月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1,6,11は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
マイクロ電子基板上の構造体のウェットエッチング方法であって,
前記マイクロ電子基板を湿式化学処理システムに装填するステップであって,前記マイクロ電子基板が窒化ケイ素の第1の構造体及び酸化ケイ素の第2の構造体を有し,各々が露出した表面を有するステップと,
前記基板上にウェットエッチング溶液を分配するステップであって,ここで,前記ウェットエッチング溶液は,
水と,
リン酸と,
硫酸と,
コロイドシリカ成長阻害剤と,
を含むステップと,
前記基板上の前記第1の構造体又は第2の構造体の前記露出した表面上にコロイドシリカ堆積物の成長を生じさせることなく,前記マイクロ電子基板上の前記第2の構造体の上で(over),前記マイクロ電子基板上の前記第1の構造体を選択的にエッチングするステップと,
前記エッチング中にコロイドシリカの濃度と前記コロイドシリカ成長阻害剤の濃度とを監視し,且つコロイドシリカの濃度が増加するにつれて前記コロイドシリカ成長阻害剤の濃度を増加させるステップと,
を含む方法。」

「【請求項6】
マイクロ電子基板上の構造体のウェットエッチング方法であって,
前記マイクロ電子基板を湿式化学処理システムに装填するステップであって,前記マイクロ電子基板が窒化ケイ素の第1の構造体及び酸化ケイ素の第2の構造体を有し,各々が露出した表面を有するステップと, 前記酸化ケイ素の第2の構造体に対して前記窒化ケイ素の第1の構造体をエッチングするための目標エッチング速度及び目標エッチング選択性を選択するステップと,
前記基板上に,水と,リン酸と,コロイドシリカ成長阻害剤とを含むウェットエッチング溶液を分配するステップと,
前記第2の構造体の上で前記第1の構造体を選択的にエッチングするステップであって,ここで,前記ウェットエッチング溶液中のコロイドシリカ濃度は,前記窒化ケイ素の第1の構造体がエッチングされるにつれて増加し,且つここで,前記コロイドシリカ成長阻害剤は,前記露出した表面に堆積することなく溶液中に残るようにするため,コロイドシリカと反応する,ステップと,
前記第1の構造体を選択的にエッチングしながら,コロイドシリカの濃度と前記コロイドシリカ成長阻害剤の濃度とを監視し,且つ,前記露出した表面上に前記コロイドシリカを堆積させることなく前記第1の構造体が除去されるまで,前記目標エッチング速度及び前記目標エッチング選択性を達成する前記ウェットエッチング溶液の濃度プロファイルを維持するため,コロイドシリカの濃度が増加するにつれて前記コロイドシリカ成長阻害剤の濃度を増加させるステップと,
を含む方法。」

「【請求項11】
マイクロ電子基板上の構造体のウェットエッチング方法であって,
前記マイクロ電子基板を湿式化学処理システムに装填するステップであって,前記マイクロ電子基板が窒化ケイ素の第1の構造体及び酸化ケイ素の第2の構造体を有し,各々が露出した表面を有するステップと,
ウェットエッチング溶液を使用し,前記第1の構造体が除去されるまでの期間,酸化ケイ素の前記第2の構造体上で窒化ケイ素の前記第1の構造体を選択的にエッチングするステップであって,ここで,前記ウェットエッチング溶液は,水,リン酸,及び前記第1及び第2の構造体の前記露出した表面上のコロイドシリカ堆積物の成長を抑制するために初期濃度から最終のより高い濃度までの期間中に増加するコロイドシリカ成長阻害剤の濃度を含む,ステップと,
前記エッチング中にコロイドシリカの濃度と前記コロイドシリカ成長阻害剤の濃度とを監視し,且つコロイドシリカの濃度が増加するにつれて前記コロイドシリカ成長阻害剤の濃度を増加させるステップと,
を含む方法。」

なお,本願発明2?5は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明7?10は,本願発明6を減縮した発明であり,本願発明12?17は,本願発明11を減縮した発明である。

第3 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2016-029717号公報)には,次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下,同様である。)。
「【0160】
本発明の別の一実施例に係るエッチング用組成物は,第1無機酸と,第2無機酸と第2シラン化合物とを反応させて生成されたシラン無機酸塩と,第2シラン化合物と,溶媒とを含んでいる。
【0161】
前記エッチング用組成物は,前記シラン無機酸塩とともに前記第2シラン化合物をさらに含むことができる。前記エッチング用組成物が,前記第2シラン化合物をさらに含むことにより,前記第2シラン化合物は,前記エッチング用組成物を用いてエッチング工程を行う間に前記第1無機酸と反応して,新たなシラン無機酸塩を生成することができる。これにより,酸化膜のエッチング速度を最小限に抑えながら窒化膜を選択的に除去することができ,素子特性に悪影響を及ぼすパーティクル発生などの問題点を有することなく高選択比を有すると言う本発明の効果をより一層高めることができ,前記エッチング工程中に消耗する前記シラン無機酸塩を補充することもできる。
【0162】
前記第2シラン化合物としては,前記で例示された第2シラン化合物として用いることができるシラン化合物の全てを用いることができる。また,好ましくは,前記第2シラン化合物は,前記シラン無機酸塩の生成時に用いられるシラン化合物と同じシラン化合物を使用することができる。この場合,前記第2シラン化合物と前記シラン無機酸塩との成分が類似して,前記第2シラン化合物を添加する効果をさらに増加させることができ,前記シラン無機酸塩を生成した反応溶液を精製することなく前記エッチング用組成物に添加することにより,未反応の第2シラン化合物を,第2シラン化合物として前記エッチング用組成物に容易に添加することができる。
【0163】
前記第2シラン化合物の含有量は,前記エッチング用組成物の総重量に対して,0.001重量%?15重量%,好ましく0.005重量%?10重量%,より好ましくは0.01重量%?5重量%であってよい。前記第2シラン化合物が0.001重量%未満で含まれる場合は,少ない含量比により選択比の調節が困難な問題が生じることもあり,15重量%を超えて含まれる場合,結晶の析出,あるいは副産物が生成される問題が生じることがある。
【0164】
前記第1無機酸は,窒化膜をエッチングするエッチング剤として添加されるものであり,前記窒化膜をエッチングすることができるものであればいずれも使用可能である。例えば,硫酸,硝酸,リン酸,ケイ酸,フッ酸,ホウ酸,塩酸,過塩素酸,およびその混合物からなる群より選択されるいずれか一つを使用することができる。
【0165】
好ましくは,前記酸化膜に対する前記窒化膜のエッチング選択比を得るために,前記第1無機酸は,リン酸を使用することができる。前記リン酸は,前記エッチング用組成物内に水素イオンを提供して,エッチングを促進させる役割ができる。前記第1無機酸として前記リン酸を使用する場合,前記エッチング用組成物は,硫酸を添加物としてさらに含むことができる。前記硫酸は,前記リン酸を第1無機酸として含むエッチング用組成物の沸点を上昇させて窒化膜のエッチングを助けることができる。
【0166】
前記第1無機酸の含有量は,前記エッチング用組成物の総重量に対して70重量%?99重量%,好ましくは70重量%?90重量%,より好ましくは75重量%?85重量%であってよい。前記第1無機酸が70重量%未満で含まれる場合は,窒化膜が容易に除去されない可能性がありパーティクルが発生する恐れがあり,99重量%を超えて含まれる場合,窒化膜に対する高い選択比を得ることができない。
【0167】
前記の通り,前記エッチング用組成物は,上述の成分を除いた含有量で溶媒を含むことができる。前記溶媒は,具体的には,水または脱イオン水などであってよい。
・・・
【0171】
前記エッチング用組成物は,前記エッチング用組成物全体に対してフッ素系化合物を0.01重量%?1重量%でさらに含むことができる。前記フッ素系化合物が0.01重量%未満で添加される場合,窒化膜のエッチング速度が小さくなって,窒化膜の除去が容易ではない場合があり,1重量%を超える場合は,窒化膜のエッチング速度は大幅に向上するが,酸化膜もまた,エッチングされるという短所がある。
【0172】
前記フッ素系化合物は,フッ化水素,フッ化アンモニウム,フッ化水素アンモニウムから選択されるいずれか一つまたは複数の混合物を用いることができる。より好ましくは,フッ化水素アンモニウムを用いることが,長期使用時の選択度も維持できるので良い。
・・・
【0176】
本発明の他の一実施例に係る半導体素子の製造方法は,前記エッチング用組成物を用いて行われるエッチング工程を含む。
【0177】
一実施例において,このようなエッチング工程は,窒化膜をエッチングすることを特徴とし,特に,酸化膜に対して窒化膜を選択的にエッチングすることを特徴とする。
【0178】
前記窒化膜は,シリコン窒化膜,例えばSiN膜,SiON膜などを含むことができる。
【0179】
また,前記酸化膜は,シリコン酸化膜,例えばSOD(Spin On Dielectric)膜,HDP(High Density Plasma)膜,熱酸化膜(thermal oxide),BPSG(Borophosphate Silicate Glass)膜,PSG(Phospho Silicate Glass)膜,BSG( Boro Silicate Glass)膜,PSZ(Polysilazane)膜,FSG(Fluorinated Silicate Glass)膜,LPTEOS(Low Pressure Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜,PETEOS(Plasma Enhanced Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜,HTO(High Temperature Oxide)膜,MTO(Medium Temperature Oxide)膜,USG(Undopped Silicate Glass)膜,SOG(Spin On Glass)膜,APL(Advanced Planarization Layer)膜,ALD(Atomic Layer Deposition)膜,PE-酸化膜(Plasma Enhanced oxide),O3-TEOS(O3-Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜およびその組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つ以上の膜であり得る。
・・・
【0184】 図2a?2cは、本発明の一実施例に係るエッチング用組成物(例えば、高選択比のエッチング用組成物)を用いたエッチング工程を含む、フラッシュメモリ素子の素子分離工程を説明するための工程断面図である。
【0185】 一実施形態における図2aを参照すると、基板(20)上にトンネル酸化膜(21)、ポリシリコン膜(22)、バッファ酸化膜(23)及び/またはパッド窒化膜(24)を形成する。例えば、一実施形態において、基板20上にトンネル酸化膜21、ポリシリコン膜22、バッファ酸化膜23及び/またはパッド窒化膜24を順次形成することができる。
・・・
【0192】 図3a?3fは、本発明の他の一実施例に係るエッチング用組成物を用いたエッチング工程を含むフラッシュメモリ素子のチャネル形成工程を説明するための工程断面図である。ここで、チャネル形成工程は、本実施形態によるエッチング用組成物(例えば、高選択比エッチング用組成物)を用いたエッチングプロセスを含んでもよい。
【0193】 図3aを参照すると、一実施例において、基板(30)上にパイプゲート電極膜(31)を形成されてもよい。この場合、パイプチャンネルを形成するために、パイプゲート電極膜(31)に窒化膜(32)が埋め込まれてもよい。ここで、パイプゲート電極膜(31)は、第1及び/または第2導電膜(31A及び/または31B)を含む。例えば、第1及び/または第2導電膜(31A及び/または31B)は、不純物がドーピングされたポリシリコンを含むことができる。」

(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)の記載から,引用文献1には,以下の事項(以下,「引用文献1に記載された事項」という。)が形式的には記載されているといえる。
「エッチング用組成物を用いてシリコン酸化膜に対してシリコン窒化膜を選択的にエッチングするエッチング工程を含む半導体素子の製造方法であって,
前記エッチング用組成物は,第1無機酸と,第2無機酸と第2シラン化合物とを反応させて生成されたシラン無機酸塩と,第2シラン化合物と,溶媒とを含んでおり,
前記第1無機酸として,リン酸を使用し,硫酸を添加物としてさらに含み,
前記溶媒は水であり,
前記エッチング組成物全体に対して,フッ素系化合物を0.01重量%?1重量%でさらに含み,前記フッ素系化合物はフッ化アンモニウムを用いる半導体素子の製造方法。」
ここで,引用文献1には,上記のように,リン酸,硫酸,水及びフッ化アンモニウムを含むエッチング用組成物は形式的には記載されているものの,当該エッチング用組成物として,第1無機酸としてリン酸を選択し,更に,フッ素系化合物としてフッ化アンモニウムを選択する具体例は記載されていないから,上記引用文献1に記載された事項を,引用文献1に記載された発明として認定することには疑義がある。
しかし,原審における拒絶理由及び原査定では,上記引用文献1に記載された事項を,引用文献1に記載されたとして認定しているといえるから,以下,上記引用文献1に記載された事項を,引用文献1に記載された発明(以下,「引用発明」という。)として検討する。

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平9-275091号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0052】しかしながら,熱燐酸を主剤とする薬液において含有されるシリコン濃度を調整しようとするこの実施の形態においては,薬液は燐酸溶液中に弗化アンモンまたはバッファード弗酸だけを含むものに限られるものではない。薬液は,熱燐酸単独であってもよく,また熱燐酸に弗化水素酸を加えたものであってもよい。この発明は,このような熱燐酸系ウェット処理装置において,シリコンまたはシリコン化合物を加え,また,その濃度を制御しようとするものである。また,シリコンの添加は,SiO_(2)の粒状,粉末状,ないし純水に溶解させたものでもよいが,コロイダルシリコンの形で添加するのが反応しやすく好適である。」

「【0056】実施の形態3.次に,薬液の排出・注入とシリコン濃度の調整を中心としたこの発明の第3の実施の形態について説明する。図12は,この発明によるエッチング装置(ウエット処理装置)の実施の形態3の構成図である。図12に示すように,このウエット処理装置は,処理槽1と,この処理槽1に薬液を循環させるポンプ2と,薬液中の不純物を取り除くためのフィルター3と,薬液を処理温度に戻すための加熱装置4と,蒸発する水分を補う純水滴下装置5とを備えている。
・・・
【0058】さらにこの実施の形態3のウエット処理装置では,薬液の循環路の一部からドレイン15へ熱交換器16を通して薬液を排出するとともに,熱交換器16を通して燐酸添加管17により燐酸を添加できるように構成されている。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2009-094455号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0022】
また,循環ライン20には,フィルター22の下流にヒータ23が付設されている。ヒータ23は,循環ライン20のうちの比較的内槽11に近い位置に設けられており,循環ライン20を流れるリン酸水溶液を所定の処理温度(本実施形態では150℃)にまで再加熱する。なお,浸漬処理槽10にも図示省略のヒータが設けられており,浸漬処理槽10に貯留されているリン酸水溶液も所定の処理温度を維持するように加熱されている。」

「【0049】
<2.第2実施形態>
次に,本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の基板処理装置の構成は第1実施形態の基板処理装置1と全く同じである。第2実施形態が第1実施形態と異なるのは,トラップ剤を投入するタイミングである。第1実施形態においては,所定枚数の基板Wからなるロットのエッチング処理を行う毎にトラップ剤を投入していたが,第2実施形態では濃度計24によって測定されたシロキサンの濃度に基づいてトラップ剤を投入するようにしている。
【0050】
第2実施形態においても,シリコン窒化膜のエッチング選択比を高めるべく,ヘキサフルオロケイ酸水溶液を含む添加剤を初期投入するとともに一定間隔で逐次投入するように制御部60が添加剤投入機構30を制御している。添加剤を逐次投入することによって浸漬処理槽10内のリン酸水溶液中にはF-が適宜補充されることとなり,シリコン窒化膜のエッチングレートについては初期状態を維持することができるものの,シロキサンが過剰にリン酸水溶液中に蓄積してシリコン酸化膜のエッチングレートが急速に低下することは既述した通りである。そして,所定時間経過後には過剰に蓄積されたシロキサンが逆にシリコン酸化膜に析出して膜厚が増加する。
【0051】
そこで,第2実施形態においては,添加剤投入機構30がヘキサフルオロケイ酸水溶液を含む添加剤を一定間隔で逐次投入するとともに,濃度計24によって測定されたリン酸水溶液のシロキサン濃度が所定の閾値以上のときにトラップ剤投入機構40がトラップ剤を投入している。具体的には,循環ライン20によるリン酸水溶液の循環プロセスを実行している間は,浸漬処理槽10のリン酸水溶液中のシロキサン濃度が濃度計24によって常時監視されており,その測定結果が制御部60に伝達される。制御部60のメモリ内には予め濃度の閾値が格納されている。そして,濃度計24によって測定されたシロキサン濃度が当該閾値以上のときにトラップ剤を投入するように制御部60がトラップ剤投入機構40を制御しているのである。
【0052】
第1実施形態と同様に,トラップ剤投入機構40が投入するトラップ剤はホウフッ化水素酸水溶液とリン酸水溶液との混合液である。トラップ剤を浸漬処理槽10のリン酸水溶液中に投入することによって生じる反応も第1実施形態と同じである。すなわち,添加剤の逐次投入によって生じるシロキサンは,トラップ剤に含まれるホウフッ化水素酸が分解して生成されるフッ酸によってエッチングされる。
【0053】
ヘキサフルオロケイ酸水溶液を含む添加剤を逐次投入することによって初期状態のシリコン窒化膜のエッチングレートを維持することができるとともに,添加剤の逐次投入によって生じるシロキサンはトラップ剤によってトラップされることとなり,リン酸水溶液中にてシロキサン濃度が上昇することが抑制され,シリコン酸化膜のエッチングレートについても初期状態を維持することができる。その結果,第1実施形態と同様に,シリコン窒化膜およびシリコン酸化膜の双方のエッチングレートについて初期の良好なレートを維持することができる。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2001-023952号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0025】また,エッチング液中の所定物質の濃度を調整すると共に,被処理体のエッチング量をコントロールすることにより,被処理体の膜厚のコントロールを容易にすることができると共に,製品歩留まりの向上を図ることができる。
【0026】更に,所定量のエッチング液を排出した後に残る高温のエッチング液に,新規エッチング液を補充するので,エッチング液をエッチングが可能な所定温度に上昇させるまでの時間を短縮することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下に,この発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。この実施形態では,この発明に係るエッチング装置を,下地にシリコン酸化膜を有するシリコン窒化膜を有する半導体ウエハのエッチングに適用した場合について説明する。
【0028】図1はこの発明に係るエッチング装置の一例を示す概略断面図,図2はエッチング装置の処理槽の取付状態を示す斜視図である。
【0029】上記エッチング装置は,被処理体である半導体ウエハW(以下にウエハWという)を収容すると共に,エッチング液E{例えば燐酸水溶液(H_(3)PO_(4))}を貯留する処理槽10と,処理槽10内にエッチング液Eを循環供給する循環管路20と,処理槽10内のエッチング液Eを排出する排出手段30と,処理槽10内に新規のエッチング液Eを供給する供給手段40とを具備してなる。
【0030】この場合,処理槽10は,図示しないウエハボートによって表面が垂直に保持されるウエハWを収容すると共に,エッチング液Eを貯留する石英製の内槽11と,この内槽11からオーバーフローするエッチング液Eを受け止める石英製の外槽12とで構成されている。このように構成される処理槽10の内槽11の側部及び底部にはパネルヒータ13が貼着されて,処理槽10内のエッチング液Eが所定温度例えば160?180℃に設定されるように構成されている。また,内槽11内の底部側には,下部から循環供給されるエッチング液 Eを均一にウエハWに案内する例えば互いに平行な長孔14aを設けた整流板14が配設されている。また,処理槽10の外方には,断熱材例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)にて形成される断熱壁15が立設されて,処理槽10内のエッチング液Eの温度低下が防止されると共に,処理槽10を配置するシンク領域への放射熱を防止している。なお,断熱壁15は,同じく断熱材例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)にて形成された枠板16の四周に起立した取付枠16aによって位置決めされた状態で取り付けられている。
【0031】一方,上記循環管路20は,内槽11の底部に設けられた排出口を兼用する供給口17と,外槽12の底部に設けられた排出口18に接続されている。この循環管路20には,排出口側から順に,循環ポンプ21,フィルタ23,温度コントローラ22が介設されており,かつ,温度コントローラ22の後には,エッチング液Eの濃度調整用の希釈液例えば純水の供給源24が流量調整可能な開閉弁25を介設する純水供給管路26を介して接続されている。したがって,処理槽10内に貯留されたエッチング液Eは,循環ポンプ21によって循環供給されると共に,温度コントローラ22によって所定の温度例えば160?180℃に調整されている。また,エッチング液Eが循環供給される際,純水供給源 24から純水が所定量供給されてエッチング液Eの濃度が所定濃度に維持されている。
【0032】また,循環管路20の供給口側には,処理槽10の内槽11内のエッチング液Eを排出する排出管路31が接続されて,排出管路31と循環管路20の一部とで排出手段30が構成されている。また,排出管路31には開閉手段例えば開閉弁32が介設されており,この開閉弁32を開放することにより,内槽11内のエッチング液Eが外部に排出されるようになっている。なお,排出手段30を排出管路31と循環管路20の一部とで構成せずに,内槽11の底部に設けられた排出口に直接排出管路31を接続して構成してもよい。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用文献1の前記第3 1(1)の【0184】,【0192】には,エッチング用組成物をフラッシュメモリ素子のエッチング工程で用いる旨が記載されているから,引用発明の「半導体素子」は,本願発明1の「マイクロ電子基板上の構造体」に相当し,また,引用発明の「半導体素子」は,「シリコン酸化膜」及び「シリコン窒化膜」を有しているから,当該「シリコン酸化膜」及び「シリコン窒化膜」は,それぞれ,本願発明1の「前記マイクロ電子基板」が有する「窒化ケイ素の第1構造体」及び「酸化ケイ素の第2構造体」に相当する。
そして,引用発明の「エッチング用組成物」は,「溶媒」として「水」を含んでいるから液体であり,また,引用発明は,「エッチング用組成物を用いてシリコン酸化膜に対してシリコン窒化膜を選択的にエッチングする」ものであるから,引用発明の「半導体素子の製造方法」における「エッチング工程」は,ウェットエッチング方法であるといえる。
以上から,引用発明の「エッチング用組成物を用いてシリコン酸化膜に対してシリコン窒化膜を選択的にエッチングするエッチング工程を含む半導体素子の製造方法」は,本願発明1の「マイクロ電子基板上の構造体のウェットエッチング方法」に相当する。

イ 引用発明において,「半導体素子」にウェットエッチングを行う際に,当該「半導体素子」を湿式化学処理システムに装填することは技術常識である。
また,引用発明では「エッチング用組成物を用いてシリコン酸化膜に対してシリコン窒化膜を選択的にエッチング」しているから,「シリコン酸化膜」及び「シリコン窒化膜」の各々は露出した表面を有しているといえる。
以上から,引用発明は,「半導体素子」を湿式化学処理システムに装填するステップであって,前記「半導体素子」が「窒化ケイ素膜」及び「酸化ケイ素膜」を有し,各々が露出した表面を有するステップを有しているといえる。

ウ 上記アにおける検討を参照すると,引用発明の「エッチング用組成物」はウェットエッチング液であるといえるから,本願発明1の「ウェットエッチング溶液」に相当する。
そして,引用発明において,「エッチング工程」の際に,「半導体素子」の基板上に「エッチング用組成物」を分配することは技術常識である。
また,引用発明の「エッチング用組成物」は,「リン酸」と,「硫酸」と,「水」と,「フッ化アンモニウム」とを含んでいるのに対し,本願発明1の「エッチング液」は,「水と,リン酸と,硫酸と,コロイドシリカ成長阻害剤と,を含」んでいるから,両者は,水と,リン酸と,硫酸とを含んでいる点で共通する。
ここで,引用発明の「フッ化アンモニウム」と,本願発明1の「コロイドシリカ成長阻害剤」とを対比する。
本願発明1の「コロイドシリカ成長阻害剤」は,ウェットエッチング中のコロイドシリカの成長を阻害するものであるところ,本願明細書【0018】には,コロイドシリカ成長阻害剤としてフッ化アンモニウムを使用することができる旨記載されている。
一方,引用文献1の上記第3の1(1)の【0172】には,フッ素系化合物は,フッ化アンモニウムを用いることができると記載されており,また,同【0171】には,「フッ素系化合物が0.01重量%未満で添加される場合,窒化膜のエッチング速度が小さくなって,窒化膜の除去が容易ではない場合があり,1重量%を超える場合は,窒化膜のエッチング速度は大幅に向上するが,酸化膜もまた,エッチングされるという短所がある」と記載されていることからすると,引用発明の「フッ化アンモニウム」は,シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜のエッチング速度を調整するためにエッチング用組成物に含ませるものであって,ウェットエッチング中のコロイドシリカの成長を阻害するためにエッチング用組成物に含ませるものではない。
したがって,引用発明の「フッ化アンモニウム」は,本願発明1の「コロイドシリカ成長阻害剤」に相当しない。
以上から,引用発明は,「半導体素子」上に「エッチング用組成物」を分配するステップであって,ここで,前記「エッチング用組成物」は,「水」と,「リン酸」と,「硫酸」と,を含むステップを有しているといえる。

エ 以上から,本願発明1と引用発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「マイクロ電子基板上の構造体のウェットエッチング方法であって,
前記マイクロ電子基板を湿式化学処理システムに装填するステップであって,前記マイクロ電子基板が窒化ケイ素の第1の構造体及び酸化ケイ素の第2の構造体を有し,各々が露出した表面を有するステップと,
前記基板上にウェットエッチング溶液を分配するステップであって,ここで,前記ウェットエッチング溶液は,
水と,
リン酸と,
硫酸と,
を含むステップと,
を含む方法。」

<相違点>
相違点1:本願発明1は,「ウェットエッチング溶液」が「コロイドシリカ成長阻害剤」を含んでおり,「前記基板上の前記第1の構造体又は第2の構造体の前記露出した表面上にコロイドシリカ堆積物の成長を生じさせることなく,前記マイクロ電子基板上の前記第2の構造体の上で(over),前記マイクロ電子基板上の前記第1の構造体を選択的にエッチングするステップと,前記エッチング中にコロイドシリカの濃度と前記コロイドシリカ成長阻害剤の濃度とを監視し,且つコロイドシリカの濃度が増加するにつれて前記コロイドシリカ成長阻害剤の濃度を増加させるステップと,を含む」のに対し,引用発明は,「エッチング用組成物」が,コロイドシリカ成長阻害剤を含んでおらず,上記各ステップを含んでいない点。

(2)判断
相違点1について検討すると,引用文献2?6には,ウェットエッチング中のコロイドシリカの成長を阻害するために,ウェットエッチング液にコロイドシリカ成長阻害剤を含ませることは,何ら記載も示唆もされておらず,このことが本願の優先日において技術常識であったともいえないから,引用発明及び引用文献2?6に記載された発明から,相違点1に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
したがって,本願発明1は,引用発明及び引用文献2?6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものともいえない。

2 本願発明2?5について
本願発明2?5は,本願発明1を減縮した発明であり,いずれも本願発明1の全ての発明特定事項を有しているから,前記1(2)で検討したのと同様の理由により,引用発明及び引用文献2?6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明6について
(1)対比
前記1(1)における検討を参照すると,本願発明6と引用発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「マイクロ電子基板上の構造体のウェットエッチング方法であって,
前記マイクロ電子基板を湿式化学処理システムに装填するステップであって,前記マイクロ電子基板が窒化ケイ素の第1の構造体及び酸化ケイ素の第2の構造体を有し,各々が露出した表面を有するステップと,
前記基板上に,水と,リン酸とを含むウェットエッチング溶液を分配するステップと,
を含む方法。」

<相違点>
相違点2:本願発明6は,「前記酸化ケイ素の第2の構造体に対して前記窒化ケイ素の第1の構造体をエッチングするための目標エッチング速度及び目標エッチング選択性を選択するステップ」を含むのに対し,引用発明は,そのようなステップを含んでいない点。

相違点3:本願発明6は,「ウェットエッチング溶液」が「コロイドシリカ成長阻害剤」を含んでおり,「前記第2の構造体の上で前記第1の構造体を選択的にエッチングするステップであって,ここで,前記ウェットエッチング溶液中のコロイドシリカ濃度は,前記窒化ケイ素の第1の構造体がエッチングされるにつれて増加し,且つここで,前記コロイドシリカ成長阻害剤は,前記露出した表面に堆積することなく溶液中に残るようにするため,コロイドシリカと反応する,ステップと,前記第1の構造体を選択的にエッチングしながら,コロイドシリカの濃度と前記コロイドシリカ成長阻害剤の濃度とを監視し,且つ,前記露出した表面上に前記コロイドシリカを堆積させることなく前記第1の構造体が除去されるまで,前記目標エッチング速度及び前記目標エッチング選択性を達成する前記ウェットエッチング溶液の濃度プロファイルを維持するため,コロイドシリカの濃度が増加するにつれて前記コロイドシリカ成長阻害剤の濃度を増加させるステップと,を含む」のに対し,引用発明は,「エッチング用組成物」が,コロイドシリカ成長阻害剤を含んでおらず,上記各ステップを含んでいない点。

(2)判断
事案に鑑み相違点3から検討すると,引用文献2?6には,ウェットエッチング中のコロイドシリカの成長を阻害するために,ウェットエッチング液にコロイドシリカ成長阻害剤を含ませることは,何ら記載も示唆もされておらず,このことが本願の優先日において技術常識であったともいえないから,引用発明及び引用文献2?6に記載された発明から,相違点3に係る本願発明6の構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
したがって,相違点2について判断するまでもなく,本願発明6は,引用発明及び引用文献2?6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものともいえない。

4 本願発明7?10について
本願発明7?10は,本願発明6を減縮した発明であり,いずれも本願発明6の全ての発明特定事項を有しているから,前記3(2)で検討したのと同様の理由により,引用発明及び引用文献2?6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

5 本願発明11について
(1)対比
前記1(1)における検討を参照すると,本願発明11と引用発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「マイクロ電子基板上の構造体のウェットエッチング方法であって,
前記マイクロ電子基板を湿式化学処理システムに装填するステップであって,前記マイクロ電子基板が窒化ケイ素の第1の構造体及び酸化ケイ素の第2の構造体を有し,各々が露出した表面を有するステップと,
ウェットエッチング溶液を使用し,前記第1の構造体が除去されるまでの期間,酸化ケイ素の前記第2の構造体上で窒化ケイ素の前記第1の構造体を選択的にエッチングするステップであって,ここで,前記ウェットエッチング溶液は,水,リン酸を含む,ステップと,
を含む方法。」

<相違点>
相違点4:本願発明11は,「ウェットエッチング溶液」が「前記第1及び第2の構造体の前記露出した表面上のコロイドシリカ堆積物の成長を抑制するために初期濃度から最終のより高い濃度までの期間中に増加するコロイドシリカ成長阻害剤の濃度を含」んでおり,「前記エッチング中にコロイドシリカの濃度と前記コロイドシリカ成長阻害剤の濃度とを監視し,且つコロイドシリカの濃度が増加するにつれて前記コロイドシリカ成長阻害剤の濃度を増加させるステップ」を含んでいるのに対し,引用発明は,「エッチング用組成物」が,コロイドシリカ成長阻害剤を含んでおらず,上記ステップを含んでいない点。

(2)判断
相違点4について検討すると,引用文献2?6には,ウェットエッチング中のコロイドシリカの成長を阻害するために,ウェットエッチング液にコロイドシリカ成長阻害剤を含ませることは,何ら記載も示唆もされておらず,このことが本願の優先日において技術常識であったともいえないから,引用発明及び引用文献2?6に記載された発明から,相違点4に係る本願発明11の構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
したがって,本願発明11は,引用発明及び引用文献2?6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものともいえない。

6 本願発明12?17について
本願発明12?17は,本願発明11を減縮した発明であり,いずれも本願発明11の全ての発明特定事項を有しているから,前記5(2)で検討したのと同様の理由により,引用発明及び引用文献2?6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり,本願発明1?17は,引用文献1?6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-07-14 
出願番号 特願2018-551103(P2018-551103)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 智之  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 河本 充雄
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 コロイドシリカ成長阻害剤及び関連する方法及びシステム  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 大貫 進介  
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