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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01M
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G01M
管理番号 1376446
審判番号 不服2020-14797  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-23 
確定日 2021-08-16 
事件の表示 特願2019- 29226「光パルス試験器及び光パルス試験器の表示方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月11日出願公開、特開2019-113561、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は、平成27年(2015年)12月8日を出願日とする特願2015-239753号の一部を、新たな出願として平成31年(2019年)2月21日に特許出願したものであって、令和元年11月29日付けで拒絶理由が通知され、令和2年2月6日に手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、同年7月20日付け(送達日:同年8月4日)で拒絶査定がなされたところ、これに対し、同年10月23日に拒絶査定不服審判請求がなされ、同時に手続補正(以下「本件補正」という)がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。

本願請求項1?7に係る発明は、以下の引用文献1?3に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1 AQ7280 OTDR ユーザーズマニュアル 2版 (2015年3月 発行)
横河メータ&インスツルメンツ株式会社 p.2-17?2-22,p.2-46?2-48
2 特開2013-134613号公報
3 特開平02-307032号公報
(以下、それぞれ「引用文献1」?「引用文献3」という。)

第3 本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1および7について,補正前の特定構成である「アイコン」について「該イベントの障害の種類に応じた図柄を付して」と限定することを含むものであって,特許法第17条の2第5項第2号に規定されている、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして,本願明細書の段落【0020】に「図2に、本実施形態に係る画面構成例を示す。イベント表示領域AIVに、被測定光ファイバ92上で連続する3以上のイベントIv18?Iv24のアイコンが表示されている。各アイコンは、光線路を示す直線で接続されている。アイコンには、障害の種類に応じた図柄が付される。これにより、被測定光ファイバ92におけるイベントの発生順及び障害の分類を同時に表示する。イベント表示領域AIVのうちの特定領域AATT内に配置されているイベントIv21のアイコンは、注目イベントとして、拡大表示されている。」と記載されていることからみて,本件補正は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり,同法第17条の2第3項の規定を満たしている。

してみると、本件補正は認められるから、本願の請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明7」という)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される発明であるところ、本願発明1および7は以下のとおりである。(なお,下線部が補正箇所である)
「【請求項1】
被測定光ファイバに光パルスを入射し、光パルスが前記被測定光ファイバで反射又は散乱された戻り光を受光してOTDR波形を測定する測定部と、
前記OTDR波形を解析して前記戻り光の強度が変化するイベントを検出するイベント検出部と、
前記イベントを示す複数個のアイコンを、イベント表示領域に前記被測定光ファイバにおけるイベントの発生順に、該イベントの障害の種類に応じた図柄を付して表示し、前記イベント表示領域内の特定領域に位置するアイコンが示すイベントの情報を情報表示領域に表示する表示部と、
前記イベント表示領域におけるスワイプ操作および前記アイコン上でのタップ操作を検出する操作検出部と、
前記操作検出部が検出したスワイプ操作で定められる方向に前記イベント表示領域に表示するアイコンを移動させるとともに、当該スワイプ操作に加えての操作なく前記特定領域に位置するアイコンが示すイベントごとに前記情報表示領域に表示する情報を変化させる注目イベント変更部と、
を備え、
前記注目イベント変更部はさらに、前記特定領域に位置していない所定のアイコンへのタップ操作が検出されたことを条件に、前記所定のアイコンを移動させて前記特定領域に移動させるとともに、前記所定のアイコンへの前記タップ操作に加えての操作なく前記所定のアイコンが示すイベントの情報を前記情報表示領域に表示する、
光パルス試験器。

【請求項7】
被測定光ファイバに光パルスを入射し、光パルスが前記被測定光ファイバで反射又は散乱された戻り光を受光してOTDR波形を測定する測定手順と、
前記測定手順のOTDR波形を解析して、前記戻り光の強度が変化するイベントを検出するイベント検出手順と、
前記イベントを示す複数個のアイコンを、表示部のイベント表示領域に前記被測定光ファイバにおけるイベントの発生順に、該イベントの障害の種類に応じた図柄を付して表示し、前記イベント表示領域内の特定領域に位置するイベントの情報を前記表示部の情報表示領域に表示する表示手順と、
前記イベント表示領域におけるスワイプ操作を検出すると、前記スワイプ操作で定められる方向に前記イベント表示領域に表示するイベントを移動させるとともに、当該スワイプ操作に加えての操作なく前記特定領域に位置するイベントごとに前記情報表示領域に表示する情報を変化させる、
且つ、前記特定領域に位置していない所定のアイコンへのタップ操作を検出すると、前記所定のアイコンを移動させて前記特定領域に移動させるとともに、前記所定のアイコンへの前記タップ操作に加えての操作なく前記所定のアイコンが示すイベントの情報を前記情報表示領域に表示する注目イベント変更手順と、
を有する光パルス試験器の表示方法。」

なお、本願発明2?6は、本願発明1を限定的に減縮した発明である。

第3 引用文献の記載事項
1 本願の原出願の出願前に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には、下記の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下、同様)。

(1-ア)
「はじめに
このたびは、AQ7280 OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)をお買い上げ いただきましてありがとうございます。
このユーザーマニュアルは、本機器の機能、操作方法、取り扱い上の注意などについて 説明したものです。・・・・・」(i頁1?5行)

(1-イ)
「OTDR機能の平均化測定を実行して、測定終了後に自動的にOTDR機能のイベント解析をすることにより、光ファイバーケーブルの経路上の各種イベントを検出してアイコン表示する機能です。各イベントのアイコンと一緒にイベント解析結果が表示されます。」(2-17頁9?11行)

(1-ウ)
「測定の実行/停止
3.AVGキーを押します。平均化測定が開始され、測定実行中を示す画面が表示されます。平均化測定が終了すると自動的に各イベントのアイコンと解析結果が表示されます。
4.ロータリノブ& ENTER で、詳細表示するイベントのアイコンを選択します。選択されたイベントのアイコンが画面の中央に表示されます。」(2-19頁3?7行)

(1-エ)
「イベントのアイコン画面
イベント画面で選択されているイベントを中央に表示し、接続損失と反射減衰量を表示」(2-19頁下図右下)


(1-オ)

「イベントのアイコン表示
次のイベントをアイコン表示します。アイコンを囲む線の色は通常は灰色です。」(2-21頁2?3行)




(1-カ)
「本機器の表示画面はタッチ操作に対応しています。画面上にはことタッチ操作で使用できる設定メニューや測定機能がいくつかあります。1つの測定機能を起動していながら、同時に別の機能を起動したり、表示領域を広げて波形観測ができたりします。」(2-46頁2?4行)


(1-キ)
「表示レンジの設定
フリックすると、メニュー表示がスクロールします。」(2-47頁下図上)

(1-ク)
「その他の便利な機能
カーソル移動
波形表示領域をシングルタップすると、タップした位置に直接カーソルを移動できます。また、カーソルをドラッグしても移動できます。
マーカー設定
カーソルをドラッグやシングルタップで移動すると、マーカーのショートカットアイコン(4点法)が表示されます。イベント解析画面では同様の操作をすると、イベントの追加/削除をするショートカットアイコンが表示されます。マーカーのソフトキーメニューを表示せず、直接マーカーの設定ができます。
拡大・縮小
波形表示領域をダブルタップすると、タップした位置を中心として波形表示を拡大できます。ダブルタップでは縦軸と横軸が同じ比率で拡大します。
波形表示領域をピンチアウトすると、指を動かす方向により縦軸または横軸のどちらかを拡大できます。波形表示領域をピンチインすると、指を動かす方向により縦軸または横軸のどちらかを縮小できます。
ショートカットの実行
測定の実行/停止や、ファイルの保存などの機能をそれぞれの機能のソフトキーメニューを表示せずに、ショートカットのアイコン表示のタップで実行することができます。ショートカットのアイコン表示については、3.1節をご覧ください。」(2-48頁 1?19行)

2 本願の原出願の出願前に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された引用文献2には、下記の事項が記載されている。

(2-ア)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、及びファクシミリ送受信機能などの各種機能を兼ね備えた複合機(MFP;Multifunction Peripheral)において、タッチパネルディスプレイを備えるものが知られている。このような複合機では、上述のような各種機能を利用するに当たって、タッチパネルディスプレイ上での利用者操作により、各種パラメータの設定変更を行うことができる。」

(2-イ)
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術では、画像処理装置の表示画面を有効に活用することが困難である。本明細書では、表示画面を有効に利用することができる技術を提供する。

(2-ウ)
「【0031】
タッチパネル部16Cは、周知の方式(例えば静電容量方式など)で指先や操作子によるタッチ操作を検出可能な透明なフィルム状の入力デバイスである。このタッチパネル部16Cは、液晶ディスプレイ部16A及び内照式表示部16Bの表示面に重ねて配置されている。本実施形態においては、タッチパネル部16Cによってタッチ操作が検出された際、タッチ操作されたタッチ位置に応じた出力信号が、タッチパネル部16Cから制御部11に出力される。制御部11は、出力信号に基づいて、そのタッチ操作が、ドラッグ操作やフリック操作などのスライド操作なのか、あるいはシングルタップ操作やダブルタップ操作などのタップ操作なのか、ピンチ操作なのか、を判断する。制御部11は、また、液晶ディスプレイ部16Aの表示面と重なる範囲、及び内照式表示部16Bによって表示される画像と重なる位置に対するタッチ操作であるか否かも判断する。制御部11は、判断したタッチ操作の種類と位置とに対応する処理を実行する。」

(2-エ)
【0034】

図10に、プリセット設定組選択画面P2の表示例を示す。プリセット設定組選択画面P2は、基本画面P1の「コピー」アイコンB12がタッチされた場合に、液晶ディスプレイ部16Aに表示される画面である。プリセット設定組選択画面P2は、液晶ディスプレイ部16Aの表示領域を、三つの領域25A、25B、25Cに分割した画面である。上段の領域25Aには、各種情報が表示される。中段の領域25Bは、複数の設定組アイコンや、左スクロールボタンB71および右スクロールボタンB72を表示する領域である。下段の領域25Cには、コピー実行ボタンB61、詳細設定ボタンB63が表示される。
【0035】
領域25Bは、中央領域L1、右側近傍領域L3、左側近傍領域L2、を備える。中央領域L1の左側に左側近傍領域L2が位置しており、中央領域L1の右側に右側近傍領域L3が位置している。中央領域L1は、選択状態の設定組アイコンを表示する領域である。右側近傍領域L3および左側近傍領域L2は、非選択状態の設定組アイコンを表示する領域である。図10の表示例では、中央領域L1に設定組アイコンB44が表示されている。設定組アイコンB44の上側には、ROM42に記憶されている表示文字列C4=「標準コピー」が表示される。左側近傍領域L2には、設定組アイコンB43が表示されている。右側近傍領域L3には、設定組アイコンB45が表示されている。
【0036】
右側近傍領域L3および左側近傍領域L2に表示される設定組アイコンの背景色は、通常色(黒色)とされる。一方、中央領域L1に表示される設定組アイコンの背景色は、通常色(黒色)と異なる特定色(青色)とされる。また、中央領域L1に表示される設定組アイコンB44の上部には、表示文字列C4が表示される。これにより、中央領域L1に表示される設定組アイコンB44には、選択状態にあることを示すフォーカスが付与される。
【0037】
図11に、プリセット設定組選択画面P2aを示す。プリセット設定組選択画面P2aは、図10のプリセット設定組選択画面P2の領域25Bをスクロールした状態の画面の表示例である。図11のプリセット設定組選択画面P2aの表示例では、中央領域L1に設定組アイコンB45が表示される。設定組アイコンB45の上側には、表示文字列C5=「両面コピー(片面)」が表示される。左側近傍領域L2には、設定組アイコンB44が表示される。右側近傍領域L3には、設定組アイコンB46が表示される。
【0038】

図12に、詳細設定画面P3の表示例を示す。詳細設定画面P3は、プリセット設定組選択画面P2(図10)やP2a(図11)の詳細設定ボタンB63がタッチされた場合に、液晶ディスプレイ部16Aに表示される画面である。詳細設定画面P3は、三つの領域27A、27B、27Cを備える。右の領域27Cには、選択状態の設定組アイコンや、OKボタンB65が表示される。中央の領域27Bには、スクロールバーが表示される。左の領域27Aには、領域27Cに表示中の選択状態の設定組アイコンに対応する、複数の設定項目およびその設定値が表示される。領域27Aは、利用者操作に応じて上下方向(図12、矢印A3、A4方向)にスクロールする領域とされている。そして、このスクロールに伴って表示領域から外れた位置にある設定項目すべてを確認可能とされている。

(2-オ)
【0053】
S448?S456の処理例を、図10および図11の画面表示例を用いて説明する。図10において、右側近傍領域L3に表示されている設定組アイコンB45がタッチされた場合の処理例を説明する。制御部11は、中央領域L1に表示された選択状態の設定組アイコンB44の選択状態態様での表示を終了する(S450)。制御部11は、右側近傍領域L3に位置していた、タッチされた設定組アイコンB45を、中央領域L1に移動させる。同時に、中央領域L1に表示されていた選択状態の設定組アイコンB44を、設定組アイコンB45の移動方向(左方向)と同一方向に移動させることによって、左側近傍領域L2に位置させる。また右側近傍領域L3に、新たに設定組アイコンB46を表示する。これにより、タッチされた設定組アイコンB45が中央領域L1の位置に移動するように、設定組アイコンの列をスクロール表示する処理が行われる(S454)。制御部11は、選択された設定組アイコンB45を示す情報を、選択状態の設定組アイコンを示す情報としてRAM43に記憶させる。また設定組アイコンB45を、選択状態態様で表示する(S456)。よって、図10の表示画面から図11の表示画面へ遷移する。

(2-カ)
【0056】
S466において、タッチ位置の移動方向が、領域25B内の右方向である場合には、右方向のフリック操作が入力されたと判断され(S466:右方向)、S468へ進む。S468において制御部11は、領域25Bに表示されている設定組アイコンを、右方向にスクロール表示する。図10の表示例では、表示されている3つの設定組アイコンB43?B45が右側に移動して液晶ディスプレイ部16Aからフレームアウトするとともに、液晶ディスプレイ部16Aの左側から設定組アイコンB42、B41などがフレームインするように、スクロール表示が行われる。また、設定組アイコンの移動が開始される際の初期移動速度は、タッチ位置の移動速度に応じた速度とされる。

(2-キ)
【0075】
[効果] 以上説明したように、上記複合機1によれば、選択状態の設定組アイコンを中央領域L1に選択状態態様で表示することにより(S430、S432、S456、S480、S500、S520など)、その時点で選択されている設定組アイコンをユーザに認識させることが可能となる。また、中央領域L1に一つの設定組アイコンが表示されている状態で、残りの設定組アイコンのうちから設定組アイコンが選択されると、選択された設定組アイコンを中央領域L1に移動させるとともに(S454、S468、S470、S494、S496、S510など)、選択された設定組アイコンを示す情報(例:アイコンの識別ID)を、新たな選択状態の設定組アイコンを示す情報としてRAM43に記憶させるとともに、選択された設定組アイコンを選択状態態様で表示させることができる(S456、S480、S500、S520など)。これにより、選択状態の設定組アイコンおよび非選択状態の設定組アイコンのうちから何れかの設定組アイコンを選択する操作を受け付ける領域(領域25B、図10)を用いて、選択状態の設定組アイコンをユーザに認識させることができる。よって、設定組アイコンが選択状態である旨の情報を、他の領域に別途表示する場合などに比して、表示画面を有効に利用することが可能となる。

(2-ク)
【0080】
上記複合機1によれば、詳細設定ボタンB63(図10、図11)がタッチされることに応じて、選択状態の設定組アイコンを、中央領域L1から退避位置L4へ移動させることができる(S548、図12)。これにより、表示手段の表示画面の中央付近に、設定項目および設定値を一覧表示させるためのスペースを形成することが可能となる。

(2-ケ)
【0089】
また、上記実施形態では、複合機1が備える制御部11及び操作パネル部16により、上述の各種表示及び各種入力の受け付けを実現する例を示したが、複合機1とパーソナルコンピュータ(PC)やスマートフォンなどの情報処理装置とを接続した場合は、それらの情報処理装置が備える制御部、表示部、及び入力部を利用して、上述の各種表示及び各種入力の受け付けを実現することも可能である。

第4 引用発明
1 引用発明1
(1)本願明細書の段落【0002】に「光ファイバ線路の障害点を検出する光パルス試験器として、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)が用いられている。」と記載されており、上記記載事項(1-ア)の「AQ7280 OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)」からみて、引用文献1には「光パルス試験器」が記載されているといえる。

(2)上記記載事項(1-イ)の「OTDR機能の平均化測定を実行して、測定終了後に自動的にOTDR機能のイベント解析をすることにより、光ファイバーケーブルの経路上の各種イベントを検出してアイコン表示する機能です。各イベントのアイコンと一緒にイベント解析結果が表示されます。」からみて,「光パルス試験器」についての技術常識を考慮すると、引用文献1には「光ファイバーケーブルに光パルスを入射し、光パルスが前記光ファイバーケーブルで反射又は散乱された戻り光を受光してOTDR波形を測定する測定部」と「前記OTDR波形を解析して前記戻り光の強度が変化するイベントを検出するイベント検出部」とが記載されているといえる。

(3)上記記載事項(1-ウ)の「平均化測定が終了すると自動的に各イベントのアイコンと解析結果が表示されます。」,同(1-エ)の「イベントのアイコン画面 イベント画面で選択されているイベントを中央に表示し、接続損失と反射減衰量を表示」および2-19頁下図からみて,引用文献1には「イベントを示す複数個のアイコンを、アイコン画面に光ファイバーケーブルにおけるイベントの発生順に、該イベントの種類に応じた図柄を付して表示し、前記アイコン画面内の中央に位置するアイコンが示すイベントの接続損出と反射減衰量をアイコン画面の中央下方に表示する表示部」が記載されているといえる。

(4)上記記載事項(1-カ)の「本機器の表示画面はタッチ操作に対応しています。画面上にはことタッチ操作で使用できる設定メニューや測定機能がいくつかあります。」、同(1-キ)の「フリックすると、メニュー表示がスクロールします。」および2-46?47頁の各図からみて,引用文献1には「表示画面におけるタップあるいはフリックのタッチ操作を検出する操作検出部」が記載されているといえる。

(5)上記記載事項(1-ウ)の「ロータリノブ& ENTER で、詳細表示するイベントのアイコンを選択します。選択されたイベントのアイコンが画面の中央に表示されます。」、同(1-エ)の「イベントのアイコン画面 イベント画面で選択されているイベントを中央に表示し、接続損失と反射減衰量を表示」および2-19頁下図からみて,引用文献1には「ロータリノブ& ENTERの操作により、イベント画面にて選択されるイベントおよびアイコン画面に表示するアイコンを移動させるとともに、前記アイコン画面の中央に位置するアイコンが示すイベントごとに前記アイコン画面の中央下方に表示する接続損失と反射減衰量を変化させる変更部」が記載されているといえる。

(6)上記(1)?(5)によれば,引用文献1には,次の発明が記載されているものと認められる。
「光ファイバーケーブルに光パルスを入射し、該光パルスが前記光ファイバーケーブルで反射又は散乱された戻り光を受光してOTDR波形を測定する測定部と、
前記OTDR波形を解析して前記戻り光の強度が変化するイベントを検出するイベント検出部と、
前記イベントを示す複数個のアイコンを、アイコン画面に光ファイバーケーブルにおけるイベントの発生順に、該イベントの種類に応じた図柄を付して表示し、前記アイコン画面内の中央に位置するアイコンが示すイベントの接続損出と反射減衰量をアイコン画面の中央下方に表示する表示部と、
表示画面におけるタップあるいはフリックのタッチ操作を検出する操作検出部と、
ロータリノブ& ENTERの操作により、イベント画面にて選択されるイベントおよび前記アイコン画面に表示するアイコンを移動させるとともに、前記アイコン画面の中央に位置するアイコンが示すイベントごとに前記アイコン画面の中央下方に表示する接続損失と反射減衰量を変化させる変更部を備える
光パルス試験器。」(以下「引用発明1」という。)

2 引用発明2
(1)上記記載事項(2-ア)の「【0001】本発明は、画像処理装置及びプログラムに関する。」および「【0002】・・・・・このような複合機では、上述のような各種機能を利用するに当たって、タッチパネルディスプレイ上での利用者操作により、各種パラメータの設定変更を行うことができる」からみて,引用文献2には「タッチパネルディスプレイ上での利用者操作により各種パラメータの設定変更を行う画像処理装置」が記載されているといえる。

(2)上記記載事項(2-ウ)の「制御部11は、出力信号に基づいて、そのタッチ操作が、ドラッグ操作やフリック操作などのスライド操作なのか、あるいはシングルタップ操作やダブルタップ操作などのタップ操作なのか、ピンチ操作なのか、を判断する。・・・・・制御部11は、判断したタッチ操作の種類と位置とに対応する処理を実行する。」からみて,引用文献2には「タッチパネルの出力信号に基づいて、そのタッチ操作が、ドラッグ操作やフリック操作などのスライド操作なのか、あるいはシングルタップ操作やダブルタップ操作などのタップ操作なのか、ピンチ操作なのか、を判断し,判断したタッチ操作の種類と位置とに対応する処理を実行する制御部」が記載されているといえる。

(3)上記記載事項(2-エ)の「【0034】・・・・・中段の領域25Bは、複数の設定組アイコンや、左スクロールボタンB71および右スクロールボタンB72を表示する領域である」、「【0035】・・・・・図10の表示例では、中央領域L1に設定組アイコンB44が表示されている。設定組アイコンB44の上側には、ROM42に記憶されている表示文字列C4=「標準コピー」が表示される」、「【0036】・・・・・また、中央領域L1に表示される設定組アイコンB44の上部には、表示文字列C4が表示される。これにより、中央領域L1に表示される設定組アイコンB44には、選択状態にあることを示すフォーカスが付与される。」および図10,11からみて,引用文献2には「プリセット設定組選択画面において、中段の領域に複数の設定組アイコンや左スクロールボタンおよび右スクロールボタンを表示し、該中段の領域の中央領域に表示される設定組アイコンの上部に表示文字列が表示される」が記載されているといえる。

(4)上記記載事項(2-オ)の「右側近傍領域L3に表示されている設定組アイコンB45がタッチされた場合」、「制御部11は、右側近傍領域L3に位置していた、タッチされた設定組アイコンB45を、中央領域L1に移動させる。」、「タッチされた設定組アイコンB45が中央領域L1の位置に移動するように、設定組アイコンの列をスクロール表示する」および「図10の表示画面から図11の表示画面へ遷移する。」からみて,引用文献2には「タッチされた設定組アイコンが中央領域の位置に移動するように、設定組アイコンの列をスクロール表示するとともに、表示文字列を変更する」ことが記載されているといえる。

(5)上記記載事項(2-カ)の「タッチ位置の移動方向が、領域25B内の右方向である場合には、右方向のフリック操作が入力されたと判断され・・・・・制御部11は、領域25Bに表示されている設定組アイコンを、右方向にスクロール表示する。」からみて,引用文献2には「フリック操作が入力されたと判断されると、中断の領域に表示されている設定組アイコンを、該フリック操作の方向にスクロール表示する」ことが記載されているといえる。

(6)上記記載事項(2-エ)の「【0038】図12に、詳細設定画面P3の表示例を示す。詳細設定画面P3は、プリセット設定組選択画面P2(図10)やP2a(図11)の詳細設定ボタンB63がタッチされた場合に、液晶ディスプレイ部16Aに表示される画面である。詳細設定画面P3は、三つの領域27A、27B、27Cを備える。右の領域27Cには、選択状態の設定組アイコンや、OKボタンB65が表示される。中央の領域27Bには、スクロールバーが表示される。左の領域27Aには、領域27Cに表示中の選択状態の設定組アイコンに対応する、複数の設定項目およびその設定値が表示される。」および図12からみて,引用文献2には「下段の領域にある詳細設定ボタンがタッチされた場合に、画面を切り替え、選択状態の設定組アイコンに対応する複数の設定項目およびその設定値を表示する」ことが記載されているといえる。

(7)上記(1)?(6)によれば,引用文献2には,次の発明が記載されていると認められる。

「タッチパネルディスプレイ上での利用者操作により、各種パラメータの設定変更を行う画像処理装置であって、
タッチパネルの出力信号に基づいて、そのタッチ操作が、ドラッグ操作やフリック操作などのスライド操作なのか、あるいはシングルタップ操作やダブルタップ操作などのタップ操作なのか、ピンチ操作なのか、を判断し、判断したタッチ操作の種類と位置とに対応する処理を実行する制御部を備え、
プリセット設定組選択画面において、中段の領域に複数の設定組アイコンや左スクロールボタンおよび右スクロールボタンを表示し、該中段の領域の中央領域に表示される設定組アイコンの上部に表示文字列が表示される
前記制御部は、タッチされた設定組アイコンが前記中央領域の位置に移動するように、前記設定組アイコンの列をスクロール表示するとともに、前記表示文字列を変更する
フリック操作が入力されたと判断されると、前記中断の領域に表示されている前記設定組アイコンを、該フリック操作の方向にスクロール表示し,
下段の領域にある詳細設定ボタンがタッチされた場合に、詳細設定画面に切り替え、選択状態の前記設定組アイコンに対応する複数の設定項目およびその設定値を表示する
画像処理装置。」
(以下「引用発明2」という。)

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 技術常識からみて、引用発明1の「光ファイバーケーブル」は,本願発明1の「被測定光ファイバ」に相当するといえる。

イ 本願明細書の段落【0019】に「ここで、イベントは、戻り光の強度が変化する任意の障害点である。任意の障害は、例えば、コネクタ、分岐、曲げ、融着である。」と記載され、一方、引用発明1の「イベント」も、引用文献2-21頁上図からみて、「開始点」、「融着点」、「光スプリッター」、「曲げ損失(マイクロベンディング)」、「コネクタ(反射減衰量)」および「終了点」を意味しているから、引用発明1の「前記イベントを示す複数個のアイコンを・・・・・該イベントの種類に応じた図柄を付して表示」することは、本願発明1の「前記イベントを示す複数個のアイコンを・・・・・該イベントの障害の種類に応じた図柄を付して表示」に相当するといえる。そうすると、引用発明1の「アイコン画面」は,本願発明1の「イベント表示領域」に相当するといえる。
また、本願明細書の段落【0022】に「表示部13は、情報表示領域AINFに、注目イベントの情報を表示する。例えば、注目イベントがイベントIv21の場合、CPU12は、被測定光ファイバ92の入射端又は遠端からイベントIv21までの距離、イベントIv21での反射減衰量、イベントIv21での損失値、OTDR波形におけるイベントIv21での拡大波形、イベントIv21の合否、の少なくともいずれかを情報表示領域AINFに表示する。」と記載されていることからみて、引用発明1の「イベントの接続損出と反射減衰量」は、本願発明1の「イベントの情報」に相当し、引用発明1の「アイコン画面内の中央」および「アイコン画面の中央下方」は、それぞれ、本願発明1の「イベント表示領域内の特定領域」および「情報表示領域」に相当するといえる。

ウ 本願発明1の「スワイプ操作」および「タップ操作」も「タッチ操作」の一種であり、本願発明1の「イベント表示領域」は,表示画面の一部であるから,引用発明1の「表示画面におけるタップあるいはフリックのタッチ操作を検出する操作検出部」と,本願発明1の「記イベント表示領域におけるスワイプ操作および前記アイコン上でのタップ操作を検出する操作検出部」とは、「表示画面におけるタッチ操作を検出する操作検出部」の点にて一致するといえる。

エ 引用発明1の「アイコン画面の中央に位置するアイコンが示すイベント」が本願発明1の「注目イベント」に相当することは明らかであり,引用発明1の「ロータリノブ& ENTERの操作」と本願発明1の「操作検出部が検出したスワイプ操作」とは,「アイコン」を移動させる点で共通し,上位概念である「ユーザ操作」の点で一致するといえる。そうすると,引用発明1の「ロータリノブ& ENTERの操作により、イベント画面にて選択されるイベントおよび前記アイコン画面に表示するアイコンを移動させるとともに、前記アイコン画面の中央に位置するアイコンが示すイベントごとに前記アイコン画面の中央下方に表示する接続損失と反射減衰量を変化させる変更部」と本願発明1の「前記操作検出部が検出したスワイプ操作で定められる方向に前記イベント表示領域に表示するアイコンを移動させるとともに、当該スワイプ操作に加えての操作なく前記特定領域に位置するアイコンが示すイベントごとに前記情報表示領域に表示する情報を変化させる注目イベント変更部」とは,「ユーザ操作で定められる方向に前記イベント表示領域に表示するアイコンを移動させるとともに、前記特定領域に位置するアイコンが示すイベントごとに前記情報表示領域に表示する情報を変化させる注目イベント変更部」の点で一致するといえる。

オ 上記ア?エを総合すると,本願発明1と引用発明1とは,
(一致点)
「被測定光ファイバに光パルスを入射し、光パルスが前記被測定光ファイバで反射又は散乱された戻り光を受光してOTDR波形を測定する測定部と、
前記OTDR波形を解析して前記戻り光の強度が変化するイベントを検出するイベント検出部と、
前記イベントを示す複数個のアイコンを、イベント表示領域に前記被測定光ファイバにおけるイベントの発生順に、該イベントの障害の種類に応じた図柄を付して表示し、前記イベント表示領域内の特定領域に位置するアイコンが示すイベントの情報を情報表示領域に表示する表示部と、
表示画面におけるタッチ操作を検出する操作検出部と、
ユーザ操作で定められる方向に前記イベント表示領域に表示するアイコンを移動させるとともに、前記特定領域に位置するアイコンが示すイベントごとに前記情報表示領域に表示する情報を変化させる注目イベント変更部とを備える、
光パルス試験器。」
の点で一致し,以下の点で相違するものと認められる。

(相違点1)
「操作検出部」が、本願発明1では「前記イベント表示領域におけるスワイプ操作および前記アイコン上でのタップ操作を検出する」のに対し,引用発明1では,「表示画面」において「タッチ操作」を検出するものの,「アイコン画面」において「スワイプ操作およびアイコン上でのタップ操作を検出する」ものではない点。

(相違点2)
「注目イベント変更部」が,本願発明1では「前記操作検出部が検出したスワイプ操作で定められる方向に前記イベント表示領域に表示するアイコンを移動させるとともに、当該スワイプ操作に加えての操作なく・・・・・情報を変化させ」さらに「前記注目イベント変更部はさらに、前記特定領域に位置していない所定のアイコンへのタップ操作が検出されたことを条件に、前記所定のアイコンを移動させて前記特定領域に移動させるとともに、前記所定のアイコンへの前記タップ操作に加えての操作なく前記所定のアイコンが示すイベントの情報を前記情報表示領域に表示する」のに対し,引用発明1では、「スワイプ操作」や「タップ操作」とは全く異なる「ロータリノブ& ENTERの操作」により、「イベント画面にて選択されるイベントおよびアイコンを移動させとともに・・・・・接続損失と反射減衰量を変化させる」である点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、すなわち、請求人の主張を鑑みて、上記相違点2について検討する。
まず、相違点2における本願発明1の構成と引用発明2とを比較すると、前者が「光パルス試験器」であるのに対し後者が「画像処理装置」であって、両発明は技術分野を異にするものの、両発明の「表示部(表示画面)」は、「表示領域に図柄を付した複数のアイコンを一列に表示し、該表示領域をスワイプ(フリック)操作あるいはタップ操作のタッチ操作により、上記アイコンを移動するスクロール表示が可能である」点で類似しているといえる。しかしながら、前者の「アイコン」は、「OTDR波形を解析して戻り光の強度が変化するイベント」に対応し、「イベントの発生順」に表示されるものであって、表示順序が設定固定された後者の「アイコン」とは、表示形態が大きく異なるといえる。また、前者では「表示領域内の特定領域に位置するアイコンが示すイベントの情報を情報表示領域に表示する」のに対して、後者では、「表示領域の中央領域に表示されるアイコン」に対応する「表示文字列(識別ID)」をその上方に表示するものの、該「イベントの情報」と「表示文字列(識別ID)」とは、技術的に全く異なるものであるといえる。すなわち、該「表示文字列(識別ID)」は、本願明細書の段落【0019】に記載された「コネクタ、分岐、曲げ、融着」に対応するものであって、前記「アイコンに付された図柄」を文字にて重複表示にしたものに過ぎず、新たな情報を付加するものとはいえない。そうすると、後者の「表示文字列(識別ID)」は、前者の「イベントの情報」に相当するものではないといえる。むしろ、該「イベントの情報」に対応するのは、「表示画面」から切り替えられる「詳細設定画面」に表示される「設定値」であるとするのが相当である。
次に、相違点2における引用発明1の構成と引用発明2とを比較すると、本願発明1の場合と同様に、両発明は技術分野を異にするものの、両発明の「表示部(表示画面)」は、「表示領域に図柄を付した複数のアイコンを一列に表示する」点で類似しているといえる。しかしながら、引用発明2の「アイコン」と引用発明1の「イベントを示す複数個のアイコン」とは、本願発明1の場合と同様に、、両者の表示形態が大きく異なるといえる。そして、本願発明1の場合と同様に、後者の「表示文字列(識別ID)」に対応するものは、引用文献1の2-21頁上図に記載された「融着点」、「光スプリッター」、「曲げ損失(マクロベンディング」および「コネクタ(反射減衰量)」であって、後者の「表示文字列(識別ID)」は、引用発明1の「イベントの接続損出と反射減衰量」に相当せず、むしろ、該「イベントの接続損出と反射減衰量」に対応するのは、「表示画面」から切り替えられる「詳細設定画面」に表示される「設定値」であるといえる。
そうすると、引用発明1の表示画面と引用発明2の表示画面とは、その基本的な表示形態を異にしており、タッチパネル付き表示画面においてユーザ操作を容易にするという課題が一般的であるとしても、前者に後者を置換することはもちろんのこと、前者に後者の機能を付加あるいは転用する積極的な動機付けがあるとは到底いえない。むしろ、後者においては、同一の表示画面において「アイコン」と「アイコンに付属する情報」を表示するのではなく、別画面に切り替えて表示するのであるから、上記置換あるいは付加・転用は、ユーザ操作の変更だけではなく、「アイコンに付属する情報」を別画面に切り替えて表示するという変更も導くことになり、阻害要因が存在している恐れがあるといえる。
また、引用文献1の上記記載事項(1-キ)の「表示レンジの設定 フリックすると、メニュー表示がスクロールします。」からみて、「フリック(スワイプ)操作」が「メニュー表示」画面において可能であるが、該「メニュー表示」は、本願発明1あるいは引用発明1の「イベントのアイコン」よりも、引用発明2の「設定組アイコン」の一列表示に類似するものであり、上記記載事項は、引用発明2を引用発明1の「アイコン画面」の方にまで適用することの積極的な動機付けにはならないといえる。
なお、引用文献2の上記記載事項(2-ケ)の「複合機1とパーソナルコンピュータ(PC)やスマートフォンなどの情報処理装置とを接続した場合は、それらの情報処理装置が備える制御部、表示部、及び入力部を利用して、上述の各種表示及び各種入力の受け付けを実現することも可能である。」からみて、引用発明2の「表示画面」を「複合機(画像処理装置)」に接続される「スマートフォン」等に転用可能であることが記載されているものの、引用文献2の記載からだけでは、一般的な技術として、本願発明1および引用発明1の「光パルス試験器」に転用することまで示唆しているとはいえない。
さらに,引用文献3には「光パルス試験器において、表示画面上で被測定光線路上の2点を選択し、2点間の距離及び損失を算出して、同表示画面上に表示する」ことが記載されているものの,相違点2の上記判断に影響しないことは,明らかである。
してみると,引用文献2,3の記載を考慮しても,引用発明1において,相違点2における本願発明1の構成とする、特に、「当該スワイプ操作に加えての操作なく・・・・・情報を変化させる」および「前記所定のアイコンへの前記タップ操作に加えての操作なく前記所定のアイコンが示すイベントの情報を前記情報表示領域に表示する」とすることは、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)効果について
そして,本願発明1は,相違点2により,本件出願明細書の段落【0015】に記載された「本発明によれば、直感的な操作で注目イベントの変更が可能であるとともに、イベントの数が多くなった場合であっても効率的な障害点の確認が可能な光パルス試験器を提供することができる。」という,当業者といえども,引用文献1および2の記載から予測し得ない格別顕著な効果を奏すると認められる。

(4)まとめ
したがって,本願発明1は,相違点1について検討するまでもなく、引用発明1ないし2および引用文献2ないし3記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2?6について
本願発明2?6は,本願発明1を技術的に限定的に減縮した発明であるから,本願発明1と同じ理由により,引用発明1ないし2および引用文献2ないし3記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明7について
本願発明7は、「光パルス試験器」である本願発明1の各「部」の動作を手順に置き換え,「表示方法」として特定し、「発明のカテゴリー」を「物」から「方法」へ変更したものであって、実質的に,両発明の技術的内容は、同一であるといえる。
そうすると、本願発明1が引用発明1ないし2および引用文献2ないし3記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないのであるから、本願発明7も同様に、引用発明1ないし2および引用文献2ないし3記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明1?7は,引用発明1ないし2および引用文献2ないし3記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-07-12 
出願番号 特願2019-29226(P2019-29226)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01M)
P 1 8・ 575- WY (G01M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 平田 佳規  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 伊藤 幸仙
▲高▼見 重雄
発明の名称 光パルス試験器及び光パルス試験器の表示方法  

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