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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1376455
審判番号 不服2020-7575  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-03 
確定日 2021-08-17 
事件の表示 特願2019-115431「注文管理システム、注文管理方法、および注文管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月 7日出願公開、特開2021- 2201、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和元年6月21日の出願であって、令和元年12月2日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年2月3日に手続補正がされ、令和2年3月17日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和2年6月3日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年3月17日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-8に係る発明は、引用文献1-2に記載された発明及び引用文献3-6に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2002-321830号公報
2.特開2001-014393号公報
3.特開2018-026003号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2004-326147号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2013-200737号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2002-056299号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、令和2年6月3日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

【請求項1】
少なくとも一つのプロセッサを備え、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
顧客によって注文される商品の配送先として該顧客とは異なる中継者を選択可能な第1入力インタフェースを該顧客の顧客端末上に表示させ、
前記中継者から前記顧客への前記商品の引渡方法を複数の選択肢から選択させるための第2入力インタフェースを前記顧客端末上に表示させ、
前記第1入力インタフェースによって前記中継者が選択されたことに応答して、前記商品を前記中継者宛に配送するための処理を実行し、
前記第2入力インタフェースで前記複数の選択肢から一つの引渡方法が選択されたことに応答して、該選択された引渡方法を前記中継者の中継者端末に通知し、
前記複数の選択肢が、前記中継者が前記顧客へ前記商品を配達することを含み、
前記商品を前記中継者宛に配送するための処理では、前記少なくとも一つのプロセッサが、前記顧客の所在地を通知することなく前記中継者の所在地を配送先として倉庫管理システムに通知する処理を含む、
注文管理システム。
【請求項2】
前記第1入力インタフェースが、1以上の前記中継者の所在地に対応する1以上のアイコンが表示された地図を含み、該アイコンが選択されることに応答して前記中継者が選択される、
請求項1に記載の注文管理システム。
【請求項3】
前記複数の選択肢が、前記顧客による前記中継者の所在地での前記商品の引き取りと、ロッカーを介しての前記商品の引き取りとを更に含む、
請求項1または2に記載の注文管理システム。
【請求項4】
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記中継者が前記商品を前記顧客に引き渡す準備が完了したことを示す準備完了通知を前記中継者端末から受信し、
前記準備完了通知の受信に応答して、前記顧客が前記商品を受け取ることが可能であることを示す受取可能通知を前記顧客端末に送信する、
請求項1?3のいずれか一項に記載の注文管理システム。
【請求項5】
前記商品が、前記中継者を経由して前記顧客に定期的に提供されるものである、
請求項1?4のいずれか一項に記載の注文管理システム。
【請求項6】
少なくとも一つのプロセッサを備える注文管理システムによって実行される注文管理方法であって、
顧客によって注文される商品の配送先として該顧客とは異なる中継者を選択可能な第1入力インタフェースを該顧客の顧客端末上に表示させるステップと、
前記中継者から前記顧客への前記商品の引渡方法を複数の選択肢から選択させるための第2入力インタフェースを前記顧客端末上に表示させるステップと、
前記第1入力インタフェースによって前記中継者が選択されたことに応答して、前記顧客の所在地を通知することなく前記中継者の所在地を配送先として倉庫管理システムに通知する処理を含む、前記商品を前記中継者宛に配送するための処理を実行するステップと、
前記第2入力インタフェースで前記複数の選択肢から一つの引渡方法が選択されたことに応答して、該選択された引渡方法を前記中継者の中継者端末に通知するステップと
を含み、
前記複数の選択肢が、前記中継者が前記顧客へ前記商品を配達することを含む、
注文管理方法。
【請求項7】
顧客によって注文される商品の配送先として該顧客とは異なる中継者を選択可能な第1入力インタフェースを該顧客の顧客端末上に表示させるステップと、
前記中継者から前記顧客への前記商品の引渡方法を複数の選択肢から選択させるための第2入力インタフェースを前記顧客端末上に表示させるステップと、
前記第1入力インタフェースによって前記中継者が選択されたことに応答して、前記顧客の所在地を通知することなく前記中継者の所在地を配送先として倉庫管理システムに通知する処理を含む、前記商品を前記中継者宛に配送するための処理を実行するステップと、
前記第2入力インタフェースで前記複数の選択肢から一つの引渡方法が選択されたことに応答して、該選択された引渡方法を前記中継者の中継者端末に通知するステップと
をコンピュータに実行させ、
前記複数の選択肢が、前記中継者が前記顧客へ前記商品を配達することを含む、
注文管理プログラム。

第4 引用文献、引用発明
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、荷受人に代わって宅配物を一時預かるサービスを提供する宅配システム、特に荷受人にとって好ましいサービスの一形態の提供に関する。」

「【0020】実施の形態1.図1は、本発明に係る宅配システムの一実施の形態を示した全体構成図である。本実施の形態における宅配システムは、荷受人に代わって宅配物を一時預かるサービスを提供するものであり、宅配物の一時保管場所としてコンビニエンスストア22を利用するものである。
【0021】図1には、配送センタ21、コンビニエンスストア22及び携帯電話23が示されている。配送センタ21は、荷送人が持ち込み、受け付けた宅配物が集荷されることによって宅配物の各荷受人への発送場所となる。コンビニエンスストア22は、前述したように宅配物を荷受人に代わって受け取り一時保管する受取場所となる。携帯電話23は、宅配物の荷受人が所有する荷受人側情報通信端末装置である。」
「【0025】次に、本実施の形態において、宅配物を荷送人が持ち込み、荷受人が受け取るところまでの流れを図2及び図3に示したフローチャートを用いて説明する。
【0026】図2において、荷送人により宅配物が配送発送場所である配送センタ21に持ち込まれたとき、荷送人により指定された宅配物の荷送人及び荷受人に関する情報が発送端末28に入力される(ステップ101)。入力される情報には、荷送人及び荷受人それぞれの氏名、郵便番号、住所、携帯電話及び/又は一般の電話番号、インターネットアドレスが含まれており、配送情報生成部24は、入力された荷送人及び荷受人に関する各情報を含む配送情報を生成する(ステップ102)。なお、配送情報に必要な情報が荷送人所有の携帯電話に登録されている場合には、その情報を発送端末28に入力するようにしてもよい。暗号鍵生成部25は、配送情報に基づき荷受人を識別するための電子暗号鍵を生成する(ステップ103)。また、受取場所特定部26は、配送情報に含まれている荷受人の郵便番号、住所により荷受人宅最寄りのコンビニエンスストア22を、図示しない受取場所に関するマスタデータベースを検索することによって選出する。この選出したコンビニエンスストア22を、宅配物一時保管場所とする受取場所を特定する(ステップ104)。
【0027】宅配物の受取場所となるコンビニエンスストア22が決まると、荷送人の確認により実際の発送手続をする。そして、情報送信部27は、インターネットや専用回線等を経由して受取場所として特定されたコンビニエンスストア22に対して、配送情報及び暗号鍵、更に配送予定日時を送信する(ステップ105)。配送側における上記処理においては、宅配物の配送先(届け先)は、荷送人が指定した荷受人住所(つまり自宅)ではなく受取場所特定部26が特定したコンビニエンスストア22である。」
「【0029】図3において、コンビニエンスストア22に設置された受取端末36は、情報受信部30により配送情報及び暗号鍵を受け取ると(ステップ201)、宅配通知部32は、配送予定日時を指定した宅配物の配送予定がある旨、宅配物の一時保管場所となる当該コンビニエンスストア22、配送情報及び暗号鍵を、携帯電話23へ送信する(ステップ202)。ここでの処理は、荷受人に何らかの手段を用いて配送予定がある旨を伝えることが必要である。従って、荷送人が荷受人の携帯電話23の番号を配送依頼時に入力しなかったときなどは、別途入力されたインターネットアドレス先へ暗号鍵等を送信する。なお、この処理から明らかなように、携帯電話23は、暗号鍵を保存する機能を持つ必要がある。本実施の形態では、暗号鍵を用いて荷受人の認証を行うので、荷受人が携帯電話やPC等の荷受人側情報通信端末装置が暗号鍵を保存するデータ保存手段を所有していることが前提となり、また、荷送人がその手段を特定する電話番号やインターネットアドレスを依頼時に入力する必要がある。
【0030】ここで、荷受人は、コンビニエンスストア22から送られてきた配送予定日時等を参照し、宅配物を自宅(荷受人住所)にて受け取ることができる場合には、宅配物の配送先を、当該コンビニエンスストア22から自宅に変更する指示要求をコンビニエンスストア22へ送信する。受取端末の情報更新部34は、携帯電話23から指示要求が送られてくると、その指示要求に応じて当該宅配物の届け先を自宅へ変更する(ステップ203,204)。
【0031】本実施の形態においては、以上のように荷受人に対して宅配物の配送予定が有る旨を事前に通知するようにした。そして、配送先の指示要求がないときには、配送予定日時には不在であると判断して、配送センタ21において設定したとおりに宅配物をコンビニエンスストア22へ直接配送して一時保管する。このように、本実施の形態によれば、宅配物を荷受人宅まで輸送したにもかかわらず不在であったという可能性を極めて低くすることができるので、荷受人宅までいったん輸送する際に要する無駄な輸送費、時間を削減することができ、宅配業務を効率的に行うことができる。
【0032】また、本実施の形態において受取場所とするコンビニエンスストア22は、自宅住所(正確には荷送人が指定した荷受人住所)とコンビニエンスストア22の所在地とを比較して決定するので、通常処理では最寄りのコンビニエンスストア22が選ばれることになる。しかし、通勤途中、例えば駅前のコンビニエンスストア22を一時保管場所とした方が便利な者も少なくない。あるいは、荷受人が長期出張などにより宅配物を一時保管しているコンビニエンスストア22まで受け取りに行けないような場合には、出張先のコンビニエンスストア22に変更する。本実施の形態では、宅配物の配送先を、受取場所特定部26が決定した場所以外へ変更することが容易にできるので、荷受人が希望するコンビニエンスストア22へ転送させることも容易に行うことができる。
【0033】宅配物の配送先が変更されることなく受取場所特定部26が特定した当該コンビニエンスストア22に到着すると、その宅配物は、保管箱37の未使用の箱に収容され、保管箱管理部33により施錠される。この鍵は、荷受人に送られた暗号鍵でのみ解錠可能である。そして、宅配通知部32は、宅配物の到着を荷受人の携帯電話23に対して自動通知する。これにより、荷受人に対して宅配物の回収を促進することができる。
【0034】荷受人は、この時点でも宅配物の配送先を、当該コンビニエンスストア22から他の場所へ変更する指示要求をコンビニエンスストア22へ送信することができる。例えば、自宅で宅配物を受け取ることができるようになった場合には、自宅に変更する。また、他のコンビニエンスストア22より受け取りたい場合には、そのコンビニエンスストア22に変更する。この方法だと、新たな輸送作業が発生するが、保管箱37を迅速に回収できない宅配物により長期に渡り占領されてしまうことから防止できると共に荷受人も宅配物を自宅以外の場所で迅速に受け取ることができる。このように、本実施の形態では、コンビニエンスストア22へいったん配送された後でも所望の受取場所において宅配物を受け取ることができる。」

「【0041】実施の形態2.店舗が商品の配送を宅配業者に委託する場合において、商品の購入者がその送料を負担するような場合がある。本実施の形態は、この場合に適した実施の形態である。
【0042】本実施の形態における宅配業者は、商品の各受取条件に対して送料を次のように設定しておく。例えば、すぐに受け取りたい商品の送料として600円、1週間配送が待てる商品の送料として300円、2週間配送が待てる商品の送料として100円、3週間以上配送が待てる商品の送料は無料と設定しておく。
【0043】そして、商品購入者は、商品購入時に受取条件を選択できるようにする。すなわち、本実施の形態における配送センタ21には、購入者が選択した受取条件を受け付ける手段と、その受け付けた受取条件に従い当該商品(宅配物)のコンビニエンスストア22への配送時期を決定する手段が設けられることになる。なお、上記受取条件は、n週間待たなければならないというのではなく待てるという条件なので、指定された期間必ずしも待つ必要はない。つまり、配送センタ21から他の宅配物との関係で適切なタイミングで配送される。
【0044】本実施の形態によれば、商品購入者が長期間待つ条件を選択したとき、宅配業者は、当該購入者宛の宅配物をまとめてコンビニエンスストア22まで輸送すればよいので、輸送費の節減を図ることができる。一方、商品購入者からしてみれば、商品はすぐに入手できない可能性があるものの送料の値引きという特典を受けることができる。また、商品購入者は、実施の形態1と同様にして商品の配送先を受取場所特定部26が特定したコンビニエンスストア22ではなく自宅や他のコンビニエンスストア22に変更することもできる。」

引用文献1の上記【0041】?【0044】には、実施の形態2として、「店舗が商品の配送を宅配業者に委託」して「商品の購入者がその送料を負担するような場合」に適した、「宅配業者」における「商品(宅配物)」についての「宅配システム」が記載されている。

以上によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「店舗が商品の配送を宅配業者に委託して商品の購入者がその送料を負担するような場合に適した、宅配業者における商品(宅配物)についての宅配システム(【0041】-【0044】)であって、
宅配業者は、商品の各受取条件として、例えば、すぐに受け取りたい商品、1週間配送が待てる商品、2週間配送が待てる商品、3週間以上配送が待てる商品と設定し、商品購入者は、商品購入時に受取条件を選択でき(【0042】-【0043】)、
配送センタ21には、購入者が選択した受取条件を受け付ける手段と、その受け付けた受取条件に従い当該商品(宅配物)のコンビニエンスストア22への配送時期を決定する手段が設けられ(【0043】)、
商品購入者が長期間待つ条件を選択したとき、宅配業者は、当該購入者宛の宅配物をまとめてコンビニエンスストア22まで輸送すればよく(【0044】)、
商品購入者は、荷送人が持ち込み、受け付けた宅配物の配送と同様にして、商品の配送先を受取場所特定部26が特定したコンビニエンスストア22ではなく自宅や他のコンビニエンスストア22に変更することができ(【0044】)、
荷送人が持ち込み、受け付けた宅配物の配送においては(【0020】-【0040】)、
荷受人に代わって宅配物を一時預かるサービスを、宅配物の一時保管場所としてコンビニエンスストア22を利用して、提供し(【0020】)、
荷送人が持ち込み、受け付けた宅配物が集荷されることによって宅配物の各荷受人への発送場所となる配送センタ21と、宅配物を荷受人に代わって受け取り一時保管する受取場所となるコンビニエンスストア22と、宅配物の荷受人が所有する荷受人側情報通信端末装置である携帯電話23とを有し(【0021】)、
荷送人により宅配物が配送発送場所である配送センタ21に持ち込まれたとき、荷送人により指定された宅配物の荷送人及び荷受人に関する情報が発送端末28に入力され、受取場所特定部26は、入力された荷送人及び荷受人に関する各情報を含む配送情報に含まれている荷受人の郵便番号、住所により、荷受人宅最寄りのコンビニエンスストア22を宅配物一時保管場所とする受取場所と特定し(【0026】)、特定されたコンビニエンスストア22に対して、配送情報及び暗号鍵、更に配送予定日時を送信し(【0027】)、
コンビニエンスストア22に設置された受取端末36は、配送情報及び暗号鍵を受け取ると、配送予定日時を指定した宅配物の配送予定がある旨、宅配物の一時保管場所となる当該コンビニエンスストア22、配送情報及び暗号鍵を、携帯電話23へ送信し(【0029】)、荷受人は、コンビニエンスストア22から送られてきた配送予定日時等を参照し、宅配物を自宅(荷受人住所)にて受け取ることができる場合には、宅配物の配送先を、当該コンビニエンスストア22から自宅に変更する指示要求をコンビニエンスストア22へ送信し(【0030】)、宅配物の配送先を、受取場所特定部26が決定した場所以外へ変更することが容易にできるので、荷受人が希望する通勤途中、例えば駅前のコンビニエンスストア22、あるいは、出張先のコンビニエンスストア22へ転送させることも容易に行うことができ(【0032】)、
宅配物の配送先が変更されることなく受取場所特定部26が特定した当該コンビニエンスストア22に到着すると、宅配物の到着を荷受人の携帯電話23に対して自動通知し(【0033】)、荷受人は、この時点でも宅配物の配送先を、当該コンビニエンスストア22から他の場所、例えば、自宅、他のコンビニエンスストア22に変更する指示要求をコンビニエンスストア22へ送信することができる(【0034】)、
宅配システム。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 「注文管理システム」が備える「少なくとも一つのプロセッサ」について
本願明細書の【0010】には、「実施形態に係る注文管理システム10は、電子商取引サイト(ECサイト)などのシステムを介して顧客によって注文された商品を管理するコンピュータシステムである。注文管理システム10は顧客による商品の注文を受け付け、その商品を該顧客に向けて配送するための処理を実行する。」と記載され、【0020】には、「注文管理システム10の各機能要素は、プロセッサ101または主記憶部102の上に注文管理プログラム110を読み込ませてプロセッサ101にその注文管理プログラム110を実行させることで実現される。」と記載されている。
一方、引用発明は、宅配業者に商品の配送を委託した店舗から商品を購入した者が商品を宅配物として受け取る条件を購入時に指定するものであり、引用発明の「システム」は、商品の注文を受け付けるものでなく「注文管理」のためのものとはいえないものの、受取場所特定部26が決定した「荷受人宅最寄りのコンビニエンスストア22」に設置された「受取端末36」において、荷受人宅最寄りのコンビニエンスストア22以外へ宅配物の配送先を変更するための処理を実行するものである。
以上を踏まえれば、引用発明の「商品購入者」である「荷受人」は、このような店舗から顧客として自身が受け取る商品を購入する者であるから、本願発明1の「顧客」に相当し、引用発明の「宅配物」は、商品購入者が店舗に注文して購入する商品であるから、本願発明1の「商品」に相当する。
そして、引用発明の「荷受人宅最寄りのコンビニエンスストア22」に設置された「受取端末36」は、顧客が注文した商品を顧客に向けて配送するための処理を実行するプロセッサである点で、本願発明1の「プロセッサ」と共通しており、引用発明の「システム」は、顧客による商品の注文を受け付けるものでなく「注文管理」のためのものとはいえないものの、プロセッサが顧客が注文した商品を顧客に向けて配送するための処理を実行する「システム」である点で、本願発明1と共通するといえる。

イ 「第1入力インタフェース」の表示について
アで上記したとおり、引用発明の「商品購入者」である「荷受人」は、本願発明1の「顧客」に相当するから、引用発明の「荷受人の携帯電話23」は、本願発明1の「顧客の携帯端末」に相当する。
そして、引用発明は、顧客が商品の配送先を受取場所特定部26が特定したコンビニエンスストア22ではなく自宅や他のコンビニエンスストア22に変更することができるものであり、そのために、顧客の携帯端末に送られてきた配送予定日時等を参照して配送先を変更する指示要求を受取場所特定部26が特定したコンビニエンスストア22へ送信することにより、商品の配送先を、受取場所特定部26が決定したコンビニエンスストア22以外に変更することができるものであるから、上記変更先のうち、自宅以外の「他のコンビニエンスストア22」は、自宅でなく顧客への商品の配達を中継する者であり、本願発明1の「顧客とは異なる中継者」に相当するといえる。
そして、引用発明の上記変更を可能とするために「受取端末36」から送られる配送予定日時等は、表示される入力インタフェースであるか否かが明らかでないものの、他のコンビニエンスストア22である「顧客とは異なる中継者」を選択可能とするための情報である点で、本願発明1の「第1入力インターフェース」と共通しており、本願発明1と引用発明は、下記相違点2について相違するものの、「顧客によって注文される商品の配送先として該顧客とは異なる中継者を選択可能」にする情報を「該顧客の顧客端末上に表示させ」る点で共通するといえる。

ウ 「第2入力インタフェース」について
引用発明は、荷送人が持ち込み、受け付けた宅配物の配送と同様にして、商品の配送先を自宅に変更することができるものの、「中継者」である「他のコンビニエンスストア22」から顧客への商品の引き渡し方法を複数の選択肢から選択可能とするものではない。
したがって、本願発明1と引用発明とは、下記相違点3について相違する。

エ 「第1入力インタフェース」の選択に応じた事項について
引用発明では、本願発明1の「顧客」に相当する荷受人は、商品の配送先として本願発明1の「顧客とは異なる中継者」に相当する「他のコンビニエンスストア22」を選択して「他のコンビニエンスストア22」への配送を「荷受人宅最寄りのコンビニエンスストア22」に指示し、引用発明におけるプロセッサ(「荷受人宅最寄りのコンビニエンスストア22」の「受取端末36」)は、この指示に応答して顧客が注文した商品を顧客に向けて配送するための処理として、選択された顧客とは異なる中継者に商品を配送するための処理を行うから、本願発明1と引用発明とは、下記相違点4について相違するものの、「前記中継者が選択されたことに応答して、前記商品を前記中継者宛に配送するための処理を実行」する点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「少なくとも一つのプロセッサを備え、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
顧客によって注文される商品の配送先として該顧客とは異なる中継者を選択可能にする情報を該顧客の顧客端末上に表示させ、
前記中継者が選択されたことに応答して、前記商品を前記中継者宛に配送するための処理を実行する、
システム。」

<相違点>

(相違点1)本願発明1は「注文管理」のためのシステムであるのに対し、引用発明はそうではない点。

(相違点2)「該顧客の顧客端末上に表示させ」る「顧客によって注文される商品の配送先として該顧客とは異なる中継者を選択可能」にする情報が、本願発明1では第1入力インタフェースであるのに対し、引用発明では明示されていない点。

(相違点3)本願発明1は、「少なくとも1つのプロセッサ」が、「前記中継者から前記顧客への前記商品の引渡方法を複数の選択肢から選択させるための第2入力インタフェースを前記顧客端末上に表示させ」、「前記第2入力インタフェースで前記複数の選択肢から一つの引渡方法が選択されたことに応答して、該選択された引渡方法を前記中継者の中継者端末に通知し」、「前記複数の選択肢が、前記中継者が前記顧客へ前記商品を配達することを含」むのに対し、引用発明はかかる構成を備えていない点。

(相違点4)商品を中継者宛に配送するための処理について、本願発明1は「前記少なくとも一つのプロセッサが、前記顧客の所在地を通知することなく前記中継者の所在地を配送先として倉庫管理システムに通知する処理を含む」のに対し、引用発明はかかる構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
相違点3に係る、本願発明1の「少なくとも1つのプロセッサ」が、「前記中継者から前記顧客への前記商品の引渡方法を複数の選択肢から選択させるための第2入力インタフェースを前記顧客端末上に表示させ」、「前記第2入力インタフェースで前記複数の選択肢から一つの引渡方法が選択されたことに応答して、該選択された引渡方法を前記中継者の中継者端末に通知し」、「前記複数の選択肢が、前記中継者が前記顧客へ前記商品を配達することを含」むという構成は、引用文献1-6には記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。
また、引用発明は、顧客とは異なる中継者である「他のコンビニエンスストア22」の選択にあたって自宅をも選択できるのであるから、中継者の選択がなされた上で選択された中継者から顧客への商品の引渡方法の選択を行うように変更することについて、動機づけられることもない。
したがって、本願発明1は、相違点1-2、4について判断するまでもなく、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-5について
本願発明2-5も、1(2)に検討した相違点3に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明6-7について
本願発明6及び本願発明7は、本願発明1に対応する方法及びプログラムの発明であり、1(2)に検討した相違点3に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
原査定の理由は、請求項1-8に係る発明について、引用文献1-2に記載された発明及び引用文献3-6に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、令和2年6月3日の手続補正により補正された請求項1-7に係る発明は、第5 1(2)に検討した相違点3に係る本願発明1の構成と同一の又は対応する構成を備えるものであるから、引用文献1に記載された発明及び引用文献1-6の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-07-26 
出願番号 特願2019-115431(P2019-115431)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上田 威  
特許庁審判長 畑中 高行
特許庁審判官 相崎 裕恒
後藤 嘉宏
発明の名称 注文管理システム、注文管理方法、および注文管理プログラム  
代理人 阿部 寛  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 池田 成人  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 保坂 一之  
代理人 戸津 洋介  

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