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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1376528
審判番号 不服2020-14982  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-28 
確定日 2021-07-30 
事件の表示 特願2017-548098号「間接的表面清浄化装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年9月15日国際公開、WO2016/144690号、平成30年3月22日国内公表、特表2018-508048号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)3月3日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2015年(平成27年)3月12日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年11月 9日 :翻訳文提出
令和元年12月17日付け:拒絶理由通知
令和2年 6月22日 :意見書提出
令和2年 6月22日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年10月28日 :審判請求書提出
令和2年12月 4日 :審判請求書の手続補正書提出

2.本願発明について
本願の請求項1ないし20に係る発明は、平成29年11月9日に提出された翻訳文における特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(AないしEは、当審が分説のために付した。)。
「【請求項1】
A フォトマスクの性能特性を向上させる方法であって、
B 前記フォトマスク上には少なくとも1つの特徴部が設けられ、前記少なくとも1つの特徴部は、関連した設計上の存在場所を有し、前記少なくとも1つの特徴部の存在場所と前記関連の設計上の存在場所との間の距離が前記少なくとも1つの特徴部の位置の誤差を生み出し、
A 前記方法は、
C 電磁放射線を前記フォトマスクの方へ方向付けるステップを含み、前記電磁放射線は、前記フォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長を有し、
D 前記フォトマスク上への前記電磁放射線の入射による前記フォトマスク中の熱エネルギー増加を発生させるステップを含み、
E 前記フォトマスク中の前記熱エネルギーの増加の前記発生の結果として前記位置誤差を減少させるステップを含む、
A 方法。」

3.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし20に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2012-222355号公報
引用文献2.特開2010-536064号公報

4.引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載
ア 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同じ。)。
(ア)「【要約】
【課題】マスクの製造後にマスクへの補正を行うことができる改良された方法を提供する。
【解決手段】リソグラフィ装置は、例えば、透過率、特定の偏光状態に対する透過率、複屈折性、および/またはジオメトリといったマスクの特性を制御可能にかつ局所的に変更するように構成されたマスク補正システムを含む。マスク補正システムは、一実施形態では、放射ビームをマスクのスポット上に誘導し、マスクは、マスク補正システムに対してスキャンされる。マスク補正システムは、マスク上の複数のスポットに実質的に同時に照射する配置を含みうる。」

(イ)「【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、リソグラフィ装置、デバイス製造方法およびマスクを補正する方法に関する。」

(ウ)「【0039】
[0049] 本発明の一実施形態では、マスク補正デバイス100が、マスクレベルにおいて、リソグラフィ装置内に設けられる。このことは図3に示される。第2のポジショナPMは、基板Wのスキャン露光のために投影システムPSのオブジェクトフィールド内でマスクテーブルMT上に保持されたマスクMAをスキャンする。第2のポジショナPMはさらに、マスクテーブルMTを、マスクMAがロードまたはアンロードされて、マスク検査デバイス200によって検査される第2の位置またはステーションに移動させる。マスク検査デバイス200は、欠陥および/または例えば埃である粒子の存在を見つけるべくマスクを検査する。マスク補正デバイス100は、リソグラフィ装置内で、マスク検査デバイス200と同じセクション内に配置されることが好都合である。第2のポジショナPMは、マスク補正デバイス100の前のマスクを少なくとも1つの方向、例えばY方向にスキャンする。マスク補正デバイス100は、マスクパターンを補正するために、強力放射ビームをマスクブランクBLおよび/またはパターンCR(例えばパターンが部分的にまたは実質的に透過的である場所)に誘導し、それによりその特性を局所的に変更する。イメージセンサTISが基板テーブルWT上に設けられて、マスクのフィーチャ(例えばアライメントマーカーまたはオーバーレイマーカー)の投影されたイメージのこれらの直交方向(例えばX、Y、Z)における位置を測定する。好適なイメージセンサ、例えば透過イメージセンサが当該技術において周知である。
【0040】
[0050] 本発明の一実施形態では、マスク補正デバイスは、パターンの要素または要素の一部の位置を微細に調節するために、マスクブランクおよび/またはパターンの形状を局所的に変更する。マスクブランクおよび/またはパターンの形状は、熱膨張を引き起こすことによって変更できる。ヒステリシスに起因して、マスクブランクおよび/またはパターンは、それが最初に有していた形状と全く同じ形状には戻らない。一実施形態では、偏光放射を使用して、2つの直交方向において膨張差をもたらす。これにより、パターンの要素の位置のより微細な制御が可能となる。或いはまたは追加的に、マスクの照射を使用して、照明ビームの放射に対する透過率、照明ビームの1つ以上の特定の偏光状態に対する透過率、および複屈折性を含む、マスクの他の特性を変更することが可能である。一実施形態では、マスク補正デバイスは、制御可能な偏光の放射を適用することによってマスクの光学密度を局所的に変更する。一実施形態では、マスク補正デバイスは、マスクブランクの厚さ未満の、好適にはマスクブランクの厚さの半分未満の焦点深度を有し、マスク面に垂直な方向において強力放射ビームの焦点の位置を変更させるように構成される。このようにすると、マスクの厚さの様々な位置において様々な効果を達成することができる。
【0041】
[0051] 図4に、本発明の一実施形態による方法が示される。まず、マスクは、マスクテーブル上にロードされ、マスクテーブルにクランプされる(ステップS1)。クランプは、微細位置制御のためと、高加速時にマスクを抑えるように使用されうるが、場合によりマスクに歪みをもたらすことがある。クランプは、例えば機械式クランプ、真空式クランプ、または静電式クランプであってよい。次に、マスクパターンが測定されて歪みがあるか否かが判定される(ステップS2)。望ましくは、マスクパターンは、基板の露光と同様に、マスクパターンのイメージを投影し、例えば基板テーブルと一体にされたイメージセンサを使用して基板レベルにおいて投影されたイメージを測定することによって、測定される。或いは、試験基板が露光されて、レジスト内に露光されたまたは基板に転写されたパターンの測定が行われうる。一実施形態では、マスクパターンの歪みは、オーバーレイマーカーを測定すること、および/または、アライメントマーカーの相対位置を測定することによって特徴付けられる。一実施形態では、補正されるべき歪みの判定は、2ステッププロセスである。1つのステップでは、マスク上の例えばアライメントマーカーまたはオーバーレイマーカーといったフィーチャの位置が、マスク上で直接測定される。別のステップでは、投影システムによって投影された例えばアライメントマーカーまたはオーバーレイマーカーといったフィーチャのイメージの位置が、基板レベルにおいて測定される。このようにすると、マスク自体の、その場にある歪みを、投影システムによって導入された歪みから区別することができる。
【0042】
[0052] ステップS3では、マスク測定の結果を使用して、例えば倍率といったリソグラフィ装置の関連の制御を調節して、フィールド全体およびフィールド間補正を行う。平行して(または連続して)、マスク補正デバイスを使用して、任意の必要なまたは望ましいフィールド内補正を行う(ステップS4)。すべての補正が行われた後、生産基板(production substrate)が露光される(ステップS5)。リソグラフィ装置内でマスク補正を行うことによって、マスククランプによって引き起こされるマスク歪み、および/または、投影システムによって導入される歪みの影響が考慮される。一実施形態では、ステップS3においてリソグラフィ装置の可変制御が使用されて、比較的低い空間周波歪みが補正され、ステップS4においてマスク補正デバイスが使用されて、比較的高い空間周波歪みが補正される。低空間周波数と高空間周波数とのカットオフは、実施、特にリソグラフィ装置の利用可能な制御の効果に依存する。一実施形態では、5次以下の効果(fifth or lower effect)は、投影システムの調節、および/または、基板および/またはマスクテーブルのダイナミクスの調節によって補正される。高次の効果(higher order effect)は、マスク補正デバイスによって補正される。一実施形態では、ステップS3においてマスク補正デバイスによって適用される補正の予測結果に基づいて、フィードフォワード補正が、ステップS3において適用される補正に対して行われる。」

(エ)「【0048】
[0058] 本明細書において使用される「放射」および「ビーム」という用語は、紫外線(UV)(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長またはおよそこれらの値の波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射を包含している。」

イ 上記アによれば、「放射」および「ビーム」という用語は、紫外線を含むあらゆる種類の電磁放射を包含しているとされるから(【0048】)、「強力放射ビーム」(【0039】)は、電磁放射であるといえる。

ウ 上記ア及びイによれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(aないしkは、当審が分説のために付した。)。
「a マスクは、マスクテーブル上にロードされ、マスクテーブルにクランプされ(ステップS1)〔【0041】〕、
b 次に、マスクパターンが測定されて歪みがあるか否かが判定されるものであって(ステップS2)〔【0041】〕、
c 前記マスクの測定の結果を使用して、フィールド全体およびフィールド間補正を行い(ステップS3)〔【0042】〕、
d 平行して(または連続して)、前記マスク補正デバイスを使用して、任意の必要なまたは望ましいフィールド内補正を行い(ステップS4)〔【0042】〕、
e すべての補正が行われた後、生産基板が露光される(ステップS5)〔【0042】〕、
f マスクを補正する方法であって〔【0001】〕、
g 前記マスク補正デバイスは、マスクパターンを補正するために、強力放射ビームをマスクブランクBLおよび/またはパターンCRに誘導し〔【0039】〕、マスクブランクおよび/またはパターンの形状を局所的に変更するものであって〔【0040】〕、
h 前記マスク補正デバイスは、パターンの要素または要素の一部の位置 を微細に調節するために、マスクブランクおよび/またはパターンの形状を局所的に変更するものであって、前記マスクブランクおよび/またはパターンの形状は、熱膨張を引き起こすことによって変更でき〔【0040】〕、
i 補正されるべき歪みの判定は、1つのステップでは、マスク上の例えばアライメントマーカーまたはオーバーレイマーカーといったフィーチャの位置が、マスク上で直接測定され、別のステップでは、投影システムによって投影された例えばアライメントマーカーまたはオーバーレイマーカーといったフィーチャのイメージの位置が、基板レベルにおいて測定されるものであり〔【0041】〕、
j 前記強力放射ビームは、電磁放射である(上記イ)、
f マスクを補正する方法〔【0001】〕。」

(2)引用文献2の記載
ア 引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「【0015】
本発明の実施形態は、部分吸収薄膜が配置されたフォトマスク基板の方向に電磁放射線を向ける段階と、フォトマスク基板に温度上昇を発生させる段階と、薄膜の位相遅延損失の少なくとも一部分を回復させる段階とを含む、フォトマスクの有効耐用年数を増加させる方法を提供する。電磁放射線は、フォトマスク基板の高吸光係数と実質的に一致する波長を有する。」

イ 上記アによれば、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「フォトマスク基板の高吸光係数と実質的に一致する波長を有する電磁放射線を用いてフォトマスク基板に温度上昇を発生させることにより、フォトマスクの有効耐用年数を増加させる方法。」

5.対比
(1)本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
ア 引用発明の「マスク」は、「すべての補正が行われた後、生産基板が露光」(構成e)される際に用いられるものであるから、本願発明の「フォトマスク」に相当する。
また、引用発明の、「マスクパターンが測定されて歪みがあるか否かが判定されるものであって(ステップS2)」(構成b)、「前記マスクの測定の結果を使用して、フィールド全体およびフィールド間補正を行い(ステップS3)」(構成c)、「すべての補正が行われた後、生産基板が露光される(ステップS5)」(構成e)、「マスクを補正する方法」(構成f)は、「前記マスク補正デバイスは、マスクパターンを補正するために、強力放射ビームをマスクブランクBLおよび/またはパターンCRに誘導し、マスクブランクおよび/またはパターンの形状を局所的に変更するものであ」(構成g)るから、マスクのマスクパターンの歪みを補正した後、生産基板の露光に使用できるように、マスクの性能としての「特性を局所的に変更」して向上させる方法であるといえる。
したがって、引用発明の上記構成b、c、e及びgは、本願発明の「フォトマスクの性能特性を向上させる方法」(構成A)に相当する。

イ 引用発明の「マスク」の「パターンの要素または要素の一部」(構成h)は、本願発明の「フォトマスク上」の「少なくとも1つの特徴部」に相当する。
そして、引用発明の「マスク補正デバイス」は、「パターンの要素または要素の一部の位置を微細に調節するために、マスクブランクおよび/またはパターンの形状を局所的に変更するものであ」(構成h)るから、「パターンの要素または要素の一部」に関して、設計上あるべき「パターンの要素または要素の一部の位置」と、実際の「パターンの要素または要素の一部の位置」との間の差(以下「パターンの要素または要素の一部の位置の差」という。)が生じているものと解される。
ここで、上記「パターンの要素または要素の一部の位置の差」は、本願発明における「少なくとも1つの特徴部の存在場所と前記関連の設計上の存在場所との間の距離」に相当するとともに、「少なくとも1つの特徴部の位置の誤差」にも相当する。
したがって、引用発明の構成hにおいて、「パターンの要素または要素の一部の位置の差」が生じている場合は、「前記フォトマスク上には少なくとも1つの特徴部が設けられ、前記少なくとも1つの特徴部は、関連した設計上の存在場所を有し、前記少なくとも1つの特徴部の存在場所と前記関連の設計上の存在場所との間の距離が前記少なくとも1つの特徴部の位置の誤差を生み出」(構成B)した場合に相当する。

ウ 引用発明の「マスク補正デバイスを使用して、任意の必要なまたは望ましいフィールド内補正を行」う「(ステップS4)」(構成d)における「マスク補正デバイス」は、「マスクパターンを補正するために、強力放射ビームをマスクブランクBLおよび/またはパターンCRに誘導し、マスクブランクおよび/またはパターンの形状を局所的に変更するものであって」(構成g)、「前記強力放射ビームは、電磁放射である」(構成j)から、上記構成dのステップは、電磁放射である強力放射ビームをマスクの方へ方誘導するステップを含むといえる。
また、引用発明の「電磁放射である強力放射ビーム」は、本願発明の「電磁放射線」に相当するといえる。
したがって、引用発明の上記構成dのステップは、上記構成g及びjを踏まえると、本願発明の「電磁放射線を前記フォトマスクの方へ方向付けるステップを含み、前記電磁放射線は、前記フォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長を有」(構成C)するステップと、「電磁放射線を前記フォトマスクの方へ方向付けるステップ」(構成C´)の点で一致する。

エ 引用発明の「マスク補正デバイスを使用して、任意の必要なまたは望ましいフィールド内補正を行」う「(ステップS4)」(構成d)は、「マスクパターンを補正するために、強力放射ビームをマスクブランクBLおよび/またはパターンCRに誘導し、マスクブランクおよび/またはパターンの形状を局所的に変更するものであって」(構成g)、「前記マスクブランクおよび/またはパターンの形状は、熱膨張を引き起こすことによって変更でき」(構成h)、「前記強力放射ビームは、電磁放射である」(構成j)ステップであるから、マスク上への電磁放射である強力放射ビームの入射による前記マスク中に熱膨張を引き起こす熱エネルギー増加を発生させるステップであるといえる。
したがって、引用発明の上記構成dのステップは、上記構成g、h及びjを踏まえると、本願発明の「前記フォトマスク上への前記電磁放射線の入射による前記フォトマスク中の熱エネルギー増加を発生させるステップ」(構成D)に相当する。

オ 引用発明の「マスク補正デバイスを使用して、任意の必要なまたは望ましいフィールド内補正を行」う「(ステップS4)」(構成d)は、「前記マスクブランクおよび/またはパターンの形状は、熱膨張を引き起こすことによって変更」(構成h)するものであるところ、その結果、位置の誤差(上記イ)であるマスクの歪みを補正した後、生産基板の露光に使用できるように、マスクの「特性を局所的に変更」して向上させる(上記ア)ものであるから、当該マスクの歪みを補正することは位置誤差を減少させることであるといえる。
したがって、引用発明の上記構成dのステップは構成h、上記ア及びイでの検討を踏まえると、本願発明の「前記フォトマスク中の前記熱エネルギーの増加の前記発生の結果として前記位置誤差を減少させるステップ」(構成E)に相当する。

(2)以上(1)での検討によれば、本願発明と引用発明は、以下の構成において一致する。
「A フォトマスクの性能特性を向上させる方法であって、
B 前記フォトマスク上には少なくとも1つの特徴部が設けられ、前記少なくとも1つの特徴部は、関連した設計上の存在場所を有し、前記少なくとも1つの特徴部の存在場所と前記関連の設計上の存在場所との間の距離が前記少なくとも1つの特徴部の位置の誤差を生み出し、
A 前記方法は、
C´ 電磁放射線を前記フォトマスクの方へ方向付けるステップを含み、
D 前記フォトマスク上への前記電磁放射線の入射による前記フォトマスク中の熱エネルギー増加を発生させるステップを含み、
E 前記フォトマスク中の前記熱エネルギーの増加の前記発生の結果として前記位置誤差を減少させるステップを含む、
A 方法。」

(3)以上(1)での検討によれば、本願発明と引用発明は、以下の点で相違する(以下「相違点」という。)。
電磁放射線が、本願発明は、「フォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長を有」するのに対して、引用発明は、「紫外線を含むあらゆる種類の電磁放射であってよい」と特定されるにとどまる点。

6.判断
相違点について
引用発明の「マスク補正デバイス」が、「マスクパターンを補正するために」、「マスクブランクBLおよび/またはパターンCRに誘導し、マスクブランクおよび/またはパターンの形状を局所的に変更する」「強力放射ビーム」(構成g)は、「マスクブランクおよび/またはパターンの形状」に「熱膨張を引き起こすことによって変更」(構成h)するものである以上、当該「強力放射ビーム」の波長は、「マスクブランクおよび/またはパターン」において所定の吸収係数を有する波長を含むことはあきらかである。
そして、引用発明の「強力放射ビーム」は「電磁放射である」ところ、「マスクブランクおよび/またはパターンの形状」に「熱膨張を引き起こすことによって変更」する効率を上げるために、当該「強力放射ビーム」の波長を「マスク」の吸収係数の高い波長とすることは当業者が容易に想到することであり、また、このようなことは、引用文献2に「フォトマスク基板の高吸光係数と実質的に一致する波長を有する電磁放射線を用いてフォトマスク基板に温度上昇を発生させることにより、フォトマスクの有効耐用年数を増加させる方法。」(引用文献2に記載された技術的事項)が記載されているように、公知の技術的事項である。
したがって、引用発明において、「強力放射ビーム」の波長をマスクの吸収係数の高い波長とすることにより、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことにすぎない。

7.効果について
「部分吸収性膜」を備えると特定しない本願発明が、「電磁放射線は、前記フォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長を有し」ていることに係る効果は、本願の発明の詳細な説明には、
・「本発明の他の諸観点によれば、基板4によって高度に吸収されるエネルギービーム2の波長を選択し、このことは、基板の大部分が除去された薄膜吸収体を有する場合に有益であると言える。」(【0042】)
・「変形例として、フォトマスク4の石英基板によって高度に吸収される波長を選択してフォトマスク4の表面の全ての領域が所望の処理温度に達するようにすることが有利な場合がある。」(【0069】)
・「クリアフィールドマスクを用いる場合、基板によって高度に吸収される波長を選択することが好ましい場合がある。オーバーレイ改良は、基板表面の改造によって最適に得ることができ、その理由は、表面の大部分が薄膜で覆われていないからである。」(【0072】)
等と記載されるにとどまる。
したがって、「部分吸収性膜」を備えると特定しない本願発明では、「電磁放射線は、前記フォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長を有し」ていることにより奏する効果は、「所望の処理温度に達する」に際して、「有益」、「有利」あるいは「好ましい」という程度の当業者が容易に予測し得た効果であって、顕著な効果を奏する効果であるとまでは認められない。

8.請求人の主張について
(1)請求人は、審判請求書に係る令和2年12月4日付けの手続補正書の【請求の理由】「(5)特許法第29条第2項違反について」において、概略引用文献1の段落【0039】には「マスク補正デバイス100は、マスクパターンを補正するために、強力放射ビームをマスクブランクBLおよび/またはパターンCR(例えばパターンが部分的にまたは実質的に透過的である場所)に誘導し、それによりその特性を局所的に変更する。」と記載され、段落【0040】には「一実施形態では、マスク補正デバイスは、マスクブランクの厚さ未満の、好適にはマスクブランクの厚さの半分未満の焦点深度を有し、マスク面に垂直な方向において強力放射ビームの焦点の位置を変更させるように構成される。このようにすると、マスクの厚さの様々な位置において様々な効果を達成することができる。」と記載されるのに対して、引用文献2には「例えば、9μm付近の石英吸収である8μmよりも長い波長を選択することは、本発明のある一定の実施形態に従えば特に好ましい。」(段落【0038】)と記載されており、引用文献2に記載された波長は、引用文献1で規定されているように、放射を基板の中で合焦させることは不可能である旨主張する。

(2)ここで、引用文献1の段落【0040】は、
ア 「本発明の一実施形態では、マスク補正デバイスは、パターンの要素または要素の一部の位置を微細に調節するために、マスクブランクおよび/またはパターンの形状を局所的に変更する。マスクブランクおよび/またはパターンの形状は、熱膨張を引き起こすことによって変更できる。」との記載(以下「記載A」という。)
イ 「一実施形態では、偏光放射を使用して、2つの直交方向において膨張差をもたらす。これにより、パターンの要素の位置のより微細な制御が可能となる。或いはまたは追加的に、マスクの照射を使用して、照明ビームの放射に対する透過率、照明ビームの1つ以上の特定の偏光状態に対する透過率、および複屈折性を含む、マスクの他の特性を変更することが可能である。」との記載(以下「記載B」という。)
ウ 「一実施形態では、マスク補正デバイスは、制御可能な偏光の放射を適用することによってマスクの光学密度を局所的に変更する。」との記載(以下「記載C」という。)
エ 「一実施形態では、マスク補正デバイスは、マスクブランクの厚さ未満の、好適にはマスクブランクの厚さの半分未満の焦点深度を有し、マスク面に垂直な方向において強力放射ビームの焦点の位置を変更させるように構成される。このようにすると、マスクの厚さの様々な位置において様々な効果を達成することができる。」との記載(以下「記載D」という。)
からなっているといえる。

(3)上記(2)によれば、記載Aないし記載Dは、いずれも「一実施形態では、」から始まる記載となっていることに照らして、それぞれ別異の「一実施形態」として記載されていると解される。
そうすると、上記記載Aと記載Dは別異の実施形態であることに照らせば、引用文献1には、記載Aの構成と記載Dの構成を同時に満たす発明のみが開示されているとはいえず、記載Aの構成に係る発明と、これとは別の、記載Dの構成に係る発明が記載されていたと解するのが自然である。
そして、引用文献1から、上記記載Aに基づき、記載Dを満たさない引用発明を認定できるのであるから、引用文献1に上記記載Dがあることが、上記引用発明において、「強力放射ビーム」の波長を「マスク」の吸収係数の高い波長とすることを妨げる阻害要因であるとは認められない。
したがって、請求人の審判請求書及び審判請求書に係る令和2年12月4日付けの手続補正書における主張は採用できない。

9.むすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2021-03-05 
結審通知日 2021-03-08 
審決日 2021-03-19 
出願番号 特願2017-548098(P2017-548098)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 右▲高▼ 孝幸  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 松川 直樹
吉野 三寛
発明の名称 間接的表面清浄化装置および方法  
代理人 松下 満  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 ▲吉▼田 和彦  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 渡邊 誠  
代理人 須田 洋之  
代理人 山本 泰史  
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