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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1376652
審判番号 不服2020-8043  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-10 
確定日 2021-08-04 
事件の表示 特願2018-156997「遠隔制御方法および端末」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月20日出願公開、特開2018-201240〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年2月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年7月31日、中国、2013年8月2日、中国)を国際出願日として出願した特願2016-530313の一部を平成30年8月24日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

平成30年 9月 3日 :手続補正書の提出
令和 1年 7月22日付け:拒絶理由通知書
令和 1年10月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 2月13日付け:拒絶査定
令和 2年 2月18日 :拒絶査定の謄本の送達
令和 2年 6月10日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和2年6月10日に提出された手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
令和2年6月10日に提出された手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の令和1年10月18日に提出された手続補正書の特許請求の範囲を補正するものであるところ、そのうちの請求項1に記載された、

「可動物体にジンバルを介して搭載された搭載物を制御する方法であって、
端末に搭載され、前記端末の状態に関する少なくとも1つのセンサからの信号が、前記可動物体、前記ジンバル、及び前記搭載物の少なくとも1つと通信される段階と、
前記センサからの信号に基づいて、前記ジンバルをヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つの回転軸で回転させる段階と、を含む方法。」

という発明を、令和2年6月10日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「可動物体にジンバルを介して搭載された搭載物を制御する方法であって、
端末に搭載され、前記端末の傾斜度に関する少なくとも1つのセンサからの信号が、前記可動物体、前記ジンバル、及び前記搭載物の少なくとも1つと通信される段階と、
前記センサからの信号に基づいて、前記搭載物の傾斜度が前記端末の傾斜度と対応するように、前記ジンバルをヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つの回転軸で回転させる段階と、を含む方法。」

という発明に補正することを含むものである。
なお、下線は、補正箇所である。

2 新規事項の有無、単一性、補正の目的について
本件補正は、令和1年10月18日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「端末の状態」を「端末の傾斜度」とし、
「前記センサからの信号に基づいて、前記ジンバルをヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つの回転軸で回転させる段階」を「前記センサからの信号に基づいて、前記搭載物の傾斜度が前記端末の傾斜度と対応するように、前記ジンバルをヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つの回転軸で回転させる段階」
とする補正であり、特許出願の明細書若しくは図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明とは発明の単一性の要件を満たすものである。
そして、本件補正は、端末の状態について「傾斜度」との限定を加え、また、ジンバルを回転させることについて、「前記搭載物の傾斜度が前記端末の傾斜度と対応するように、」との限定を加えるものであるから、補正前の発明の発明特定事項を限定する補正である。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項、第4項の規定に適合するものであり、同条第5項第2号の特許請求の範囲を減縮することを目的とするものに該当する。

3 独立特許要件について
本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、上記補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて以下に検討する。

(1)補正発明
補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、上記の本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
なお、A?Cは、説明のために当審にて付したものである。(以下、「構成A」?「構成C」という。)

(補正発明)
A 可動物体にジンバルを介して搭載された搭載物を制御する方法であって、
B 端末に搭載され、前記端末の傾斜度に関する少なくとも1つのセンサからの信号が、前記可動物体、前記ジンバル、及び前記搭載物の少なくとも1つと通信される段階と、
C 前記センサからの信号に基づいて、前記搭載物の傾斜度が前記端末の傾斜度と対応するように、前記ジンバルをヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つの回転軸で回転させる段階と、
を含む方法。

(2)引用文献1の記載事項及び引用発明について
ア 引用文献1の記載事項
原審の拒絶査定に、引用文献1として引用された、特開2000-188747号公報には、「航空機による目標捜索方法及び航空機による目標捜索装置」(発明の名称)として図面とともに以下の事項が記載されている。

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、航空機によって例えば救難捜索を行う目標捜索方法及びこれを実施する航空機による目標捜索装置に関する。

【0034】本実施の形態は、航空機1を利用して画像を撮像し、その画像を地上局に無線送信して地上局で表示することにより目標を捜索するものである。このため、図1に示すように、航空機1には、撮像装置2、回動手段を構成するジンバル機構3、制御手段4、無線通信手段を構成する送受信機5及び送受信アンテナ6を設ける一方、地上局には、無線通信手段を構成する送受信アンテナ11及び送受信機12、画像分配手段13、表示器14a、14b、14c、14d、14e、主表示器15、操作手段16が設けてある。
【0035】撮像装置2は、例えばCCDカメラ等の可視光線カメラ、或いは赤外線カメラをもって構成し、図2に部分側面図をも示すようにジンバル機構3を介して航空機1に回動可能に取り付け、これら撮像装置2及びジンバル機構3の動作を操作手段16の操作に基づいて制御手段4により制御するように構成されている。
【0036】本実施の形態では、目標捜索の過程では、操作手段16の操作に基づいて制御手段4により、ジンバル機構3を所定のシーケンスに従って機首方向を中心とする所定の角度範囲で繰り返し往復回動させると共に、その各往動において、等角度毎に一旦停止させながら間欠的、即ちステップ状に回動させ、その往動の回動開始点および回動終了点を含む順次の5つの回動停止位置において、ジンバル機構3が回動を停止している状態で、撮像装置2により各々の静止画像S1、S2、S3、S4、S5を撮像する。なお、ジンバル機構3は、航空機の振動や揺れを補正して撮像できるスタビライザーを備えている。

【0046】捜索員21aから21eのうちの一人、例えば捜索員21dが対応する表示器の画面から目標23を発見したら、捜索員21dは、操作員22に速やかに報告し、それにより操作員22は操作手段16を操作して、送受信機12及び送受信アンテナ11を経て航空機1に操作信号を送信すると共に、表示器14a乃至14e及び主表示器15に同一画像信号を供給するように画像分配手段14を制御する。
【0047】これにより、航空機1において、地上局からの操作信号を送受信アンテナ6を経て送受信機5で受信して制御手段4に供給し、その操作信号に基づいてジンバル機構3を介して撮像装置2を目標位置に位置決めして動画像を撮像させ、その動画像信号を地上局において画像分配手段13を介して表示器14a乃至14e及び主表示器15に同時に供給して各々動画像を表示して目標23の位置標定等の処理を行う。

イ 引用発明
上記アに摘記した記載事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、a?fは、説明のために当審にて付したものである。(以下、「構成a」?「構成f」という。)

(引用発明)
a 航空機1には、撮像装置2、回動手段を構成するジンバル機構3、制御手段4、無線通信手段を構成する送受信機5及び送受信アンテナ6を設ける一方、地上局には、無線通信手段を構成する送受信アンテナ11及び送受信機12、画像分配手段13、表示器14a、14b、14c、14d、14e、主表示器15、操作手段16が設けてあり、
b 撮像装置2は、ジンバル機構3を介して航空機1に回動可能に取り付け、これら撮像装置2及びジンバル機構3の動作を操作手段16の操作に基づいて制御手段4により制御するように構成され、
c 操作手段16の操作に基づいて制御手段4により、ジンバル機構3を機首方向を中心とする所定の角度範囲で繰り返し往復回動させ、
d 操作員22は操作手段16を操作して、送受信機12及び送受信アンテナ11を経て航空機1に操作信号を送信し、
e 航空機1において、地上局からの操作信号を送受信アンテナ6を経て送受信機5で受信して制御手段4に供給し、その操作信号に基づいてジンバル機構3を介して撮像装置2を目標位置に位置決めして動画像を撮像させる
f 航空機による目標捜索方法。

(3)対比
補正発明と引用発明とを対比する。

ア 構成Aについて
構成a、構成b、構成fより、引用発明は、航空機1にジンバル機構3を介して取り付けられた撮像装置2の動作を制御手段4により制御する目標探索方法が開示されている。
ここで、引用発明の「航空機1」、「撮像装置2」は、それぞれ、補正発明の「可動物体」、「搭載物」に相当する。
また、引用発明の撮像装置2は、ジンバル機構3を介して取り付けられていることから、ジンバルを介して搭載されているものである。
さらに、引用発明の方法は、撮像装置2の動作を制御するものであるから、「搭載物を制御する方法」であるといえる。
したがって、引用発明は、構成Aである点で補正発明と一致する。

イ 構成Bについて
構成dより、引用発明の操作員22は操作手段16を操作して、航空機1に操作信号を送信しているものである。
ここで、引用発明の「操作手段16」は、補正発明の「端末」に相当する。
また、引用発明の操作信号は、操作手段16から航空機1に送信されるものであるから、引用発明と構成Bは、「端末に搭載され、」「端末で生成される信号が、前記可動物体、前記ジンバル、及び前記搭載物の少なくとも1つと通信される段階」を含む点で共通する。
しかし、端末で生成される信号に関して、補正発明は、「前記端末の傾斜度に関する少なくとも1つのセンサからの信号」であるのに対し、引用発明は「操作信号」である点で相違する。

ウ 構成Cについて
構成aの「地上局には、」「操作手段16が設けてあり、」との記載、構成dの「操作手段16を操作して、」「操作信号を送信し、」との記載から、構成eの「地上局からの操作信号」は、地上局に設けられた操作手段を操作することにより送信される信号である。
そうすると、構成cにおける「操作手段16の操作に基づいて」「ジンバル機構3を」「所定の角度範囲で繰り返し往復回動」させることは、構成a、構成d、構成eより、操作手段を操作することにより送信される操作信号に基づいて、ジンバル機構3を回転させるものである。
また、回転に際して、所定の回転軸で回転させることは、明らかである。
したがって、引用発明と補正発明は、「前記端末で生成される信号に基づいて、前記ジンバルを所定の回転軸で回転させる段階」を含む方法である点で共通する。
しかし、前記端末で生成される信号に関して、補正発明は、「前記センサからの信号」すなわち構成Bの「前記端末の傾斜度に関する少なくとも1つのセンサからの信号」であるのに対し、引用発明は「操作信号」である点で相違する。
また、補正発明は、「前記搭載物の傾斜度が前記端末の傾斜度と対応するように、」回転させるのに対し、引用発明の操作信号は、「前記端末の傾斜度に関する少なくとも1つのセンサからの信号」ではないことに起因して、そのように回転させるものではない点で相違する。
さらに、所定の回転軸に関して、補正発明は、「ヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つ」であるのに対し、引用発明は、そのように限定されていない点で相違する。

(4)一致点・相違点
以上より、補正発明と引用発明の一致点・相違点は以下の通りである。

(一致点)
A 可動物体にジンバルを介して搭載された搭載物を制御する方法であって、
B’端末に搭載され、端末で生成される信号が、前記可動物体、前記ジンバル、及び前記搭載物の少なくとも1つと通信される段階と、
C’前記端末で生成される信号に基づいて、前記ジンバルを所定の回転軸で回転させる段階と、
を含む方法。」

(相違点)
相違点1
端末で生成される信号に関して、補正発明は、「前記端末の傾斜度に関する少なくとも1つのセンサからの信号」、「前記センサからの信号」であるのに対し、引用発明は「操作信号」である点。

相違点2
補正発明は、「前記搭載物の傾斜度が前記端末の傾斜度と対応するように、」回転させるのに対し、引用発明の操作信号は、「前記端末の傾斜度に関する少なくとも1つのセンサからの信号」ではないことに起因して、そのように回転させるものではない点。

相違点3
所定の回転軸に関して、補正発明は、「ヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つ」であるのに対し、引用発明は、そのように限定されていない点。

(5)判断
上記相違点について検討する。

ア 相違点1、2について
引用発明の操作信号は、操作員22が操作手段16を操作することにより生成される信号であり、当該操作信号に基づいて、ジンバルを回転させるものである。
端末を利用して物体を回転させる際に、端末を傾斜させて、傾斜に対応する信号により回転させるという技術は、本願の出願時において、以下の周知文献に示されるように周知技術であり、そのような周知技術を引用発明の操作手段16に搭載し、信号に関して、「前記端末の傾斜度に関する少なくとも1つのセンサからの信号」、「前記センサからの信号」とし、「前記搭載物の傾斜度が前記端末の傾斜度と対応するように、」回転させるようにすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

周知文献1:中国特許出願公開第102043410号明細書(段落0006、0009、0010、0013?0016、0035等)
(ヘッドマウント姿勢センサ1のヨー角及びピッチ角と対応するように、機載雲台6のヨー角及びピッチ角を制御する技術が開示されている。)

周知文献2:特開2007-282123号公報(段落0016等)
(ユーザが携帯端末装置11を傾けると、その傾きに伴って遠隔地に設置された画像入力装置13の撮影方向を変化させ、携帯端末装置11の傾きに対応した視点方向から撮影された画像情報を表示する技術が開示されている。)

周知文献3:特開2004-108939号公報(段落0028等)
(測量機10’の視準望遠鏡10Aの視準方向は、操作用センサユニット40内に設けられたジャイロセンサ41と傾斜センサ42によって検出された回転角に基づいて駆動制御され、操作者の頭を上下に俯仰させる運動と左右に旋回させる運動とに対応して視準望遠鏡10Aは、それぞれ水平軸H、鉛直軸Pの周りに回動される技術が開示されている。)

周知文献4:特許第6071297号公報(段落0036等)
(携帯端末30を傾けるといった操作によって、撮影方向などの撮影条件を入力すると、利用者によって入力された撮影条件の設定情報を、医用画像診断装置20に送信し、医用画像診断装置20側では、撮影条件を反映した撮影を行う技術が開示されている。)

イ 相違点3について
「ヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸」は、制御対象を回転させる際に一般に用いられる軸であり、引用発明のジンバル機構3を回転させる構成において、「ヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つの回転軸」が通常用いられることは、明らかであるから、相違点3は、実質的な相違点ではない。

したがって、相違点に係る構成は、格別のものではなく、当該各相違点を勘案しても、補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(6)小括
したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和1年10月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
なお、A?C1については、説明のために当審にて付したものであり、構成Aについては、補正発明と同じ構成であるので、同じ符号を付した。(以下、「構成A」?「構成C1」という。)

【請求項1】(本願発明)
A 可動物体にジンバルを介して搭載された搭載物を制御する方法であって、
B1 端末に搭載され、前記端末の状態に関する少なくとも1つのセンサからの信号が、前記可動物体、前記ジンバル、及び前記搭載物の少なくとも1つと通信される段階と、
C1 前記センサからの信号に基づいて、前記ジンバルをヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つの回転軸で回転させる段階と、
を含む方法。

2 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は、
この出願の請求項1-2、10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、
この出願の請求項1-2、10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、及び、
この出願の請求項2-8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1-4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない
というものである。

引用文献1:特開2000-188747号公報
引用文献2:特開2000-101898号公報
引用文献3:特開平7-240868号公報
引用文献4:特開2005-51472号公報

3 引用文献について
引用文献1の記載事項及び引用発明については、前記第2の3(2)に記載したとおりである。

4 対比
ア 構成Aについて
前記第2の3(3)アの検討と同様に、引用発明は、構成Aである点で本願発明と一致する。

イ 構成B1について
構成B1は、構成Bの「端末の傾斜度」を「端末の状態」とするものであり、前記第2の3(3)イの検討を踏まえると、引用発明と構成B1は、「端末に搭載され、」「端末で生成される信号が、前記可動物体、前記ジンバル、及び前記搭載物の少なくとも1つと通信される段階」を含む点で共通する。
しかし、端末で生成される信号に関して、本願発明は、「前記端末の状態に関する少なくとも1つのセンサからの信号」であるのに対し、引用発明は「操作信号」である点で相違する。

ウ 構成C1について
構成C1は、構成Cの「前記センサからの信号に基づいて、前記搭載物の傾斜度が前記端末の傾斜度と対応するように、前記ジンバルをヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つの回転軸で回転させる段階」を「前記センサからの信号に基づいて、前記ジンバルをヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つの回転軸で回転させる段階」とするものであり、前記第2の3(3)ウの検討を踏まえると、引用発明と構成C1は、「前記端末で生成される信号に基づいて、前記ジンバルを所定の回転軸で回転させる段階」を含む方法である点で共通する。
しかし、前記端末で生成される信号に関して、本願発明は、「前記センサからの信号」すなわち構成B1の「前記端末の状態に関する少なくとも1つのセンサからの信号」であるのに対し、引用発明は「操作信号」である点で相違する。
また、所定の回転軸に関して、本願発明は、「ヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つ」であるのに対し、引用発明は、そのように限定されていない点で相違する。

5 一致点・相違点
以上より、本願発明と引用発明の一致点・相違点は以下の通りである。

(一致点)
A 可動物体にジンバルを介して搭載された搭載物を制御する方法であって、
B1’端末に搭載され、端末で生成される信号が、前記可動物体、前記ジンバル、及び前記搭載物の少なくとも1つと通信される段階と、
C1’前記端末で生成される信号に基づいて、前記ジンバルを所定の回転軸で回転させる段階と、
を含む方法。」

(相違点)
相違点1
端末で生成される信号に関して、本願発明は、「前記端末の状態に関する少なくとも1つのセンサからの信号」、「前記センサからの信号」であるのに対し、引用発明は「操作信号」である点。

相違点2
所定の回転軸に関して、本願発明は、「ヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つ」であるのに対し、引用発明は、そのように限定されていない点。

6 判断
上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
引用発明の操作信号は、操作員22が操作手段16を操作することにより生成される信号であり、当該操作信号に基づいて、ジンバルを回転させるものである。
そして、操作手段16は、操作員22が操作手段16を操作することにより、操作員22により操作された状態となるものであるし、操作員22により操作された操作手段の状態を認識するための何らかのセンサを備え、当該センサの出力に基づいて操作信号を生成していることが明らかである。
そうすると、引用発明においても、通信される信号が「前記端末の状態に関する少なくとも1つのセンサからの信号」であることは明らかであるといえ、相違点1は、実質的な相違点ではない。

(2)相違点2について
前記第2の3(5)イと同様の検討であり、相違点2は、実質的な相違点ではない。

(3)小活
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。

第4 むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2021-02-26 
結審通知日 2021-03-02 
審決日 2021-03-19 
出願番号 特願2018-156997(P2018-156997)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H04N)
P 1 8・ 572- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲徳▼田 賢二中嶋 樹理  
特許庁審判長 五十嵐 努
特許庁審判官 渡辺 努
樫本 剛
発明の名称 遠隔制御方法および端末  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  

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