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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  B65H
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65H
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  B65H
管理番号 1376720
異議申立番号 異議2020-700348  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-05-19 
確定日 2021-06-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6607995号発明「折込用広告束紙揃え搬送装置,及び折込用広告束紙揃え搬送装置付き丁合機」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6607995号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1,2について訂正することを認める。 特許第6607995号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6607995号(以下,「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は,平成24年11月2日を出願日とする特願2012-242876号の一部を平成29年3月23日に新たな特許出願とした特願2017-57953号の一部をさらに平成30年5月8日に新たな特許出願とした特願2018-90073号であって,令和1年11月1日に,その特許権の設定登録がされ,特許掲載公報が同月20日に発行され,その後,その全請求項に係る特許に対し,特許異議申立人株式会社デュプロ(以下,「異議申立人」という。)により令和2年5月19日に特許異議の申立てがされた。
その後,当審において,令和2年8月31日付けで取消理由が通知され,これに対して,特許権者から,同年10月30日付けで意見書の提出がなされ,その後さらに当審より同年11月24日付けで取消理由通知(決定の予告)が通知され,特許権者から令和3年1月22日付けで意見書及び訂正請求書(以下,「本件訂正請求書」といい,本件訂正請求書によりなされる訂正の請求を「本件訂正請求」という。)が提出され,同年3月11日に異議申立人より意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否について
1 本件訂正請求の内容について
本件訂正請求は,本件訂正請求書の記載からみて,その請求の趣旨を「特許第6607995号の特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1,2について訂正することを求める。」とするものであり,その内容はつぎのとおりのものである。
(1)請求項1についての訂正事項
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に「丁合機の排出口」とあるのを,「丁合機本体の排出口」と訂正する。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に「前記積上部に積上げた複数の前記折込用広告束を前記搬送機構により前記積上部から搬出する際に,前記叩き板を前記積上部から退避させた位置に停止させる手段と,」とあるのを,「前記積上部に積上げた複数の前記折込用広告束を前記搬送機構により前記積上部から搬出する際に,前記叩き板を前記積上部から退避させた位置に停止させる手段と,前記積上部,前記搬送機構,及び前記紙揃え機構を支持する基台と,」と訂正する。

(2)請求項2についての訂正事項
ア 訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項2に「折込用広告紙を載せる複数の棚部と,前記棚部のそれぞれから折込用広告紙を給紙する給紙機構と,前記複数の棚部から給紙された複数枚の折込用広告紙を親紙で挟み込んで折込用広告束を作成する挟み機構と,前記折込用広告束を排出する排出口に対向して設けられ,」とあるのを,「折込用広告紙を載せる複数の棚部と,前記棚部のそれぞれから折込用広告紙を給紙する給紙機構と,前記複数の棚部から給紙された複数枚の折込用広告紙を親紙で挟み込んで折込用広告束を作成する挟み機構と,前記折込用広告束を排出する排出口と,を備えた丁合機本体と,前記排出口に対向して設けられ,」と訂正する。

イ 訂正事項2-2
特許請求の範囲の請求項2に「前記積上部に積上げた複数の前記折込用広告束を前記搬送機構により前記積上部から搬出する際に,前記叩き板を前記積上部から退避させた位置に停止させる手段と,」とあるのを,「前記積上部に積上げた複数の前記折込用広告束を前記搬送機構により前記積上部から搬出する際に,前記叩き板を前記積上部から退避させた位置に停止させる手段と,前記積上部,前記搬送機構,及び前記紙揃え機構を支持する基台と,を備えた折込用広告束紙揃え搬送装置と,」と訂正する。

2 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1-1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1-1は,「丁合機」を「丁合機本体」と訂正することで,排出口が丁合機本体に設けられていることを明確にするものであるから,当該訂正事項1は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり,訂正事項1-1は,排出口が丁合機本体に設けられていることを明確にするものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること(以下,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面をそれぞれ,「本件特許明細書」,「本件特許請求の範囲」,「本件特許図面」といい,これらをあわせて「本件特許明細書等」という。)
本件特許明細書の段落【0018】「丁合機本体12は,縦長形状の筐体16と,筐体16の内部に設けられた複数の棚部18と,各棚部18に設けられた給紙機構20と,筐体16の内部に設けられた搬送路22と,折込用広告紙の束を親紙で挟む挟み機構24と,折込用広告束を排出する排出口26と,主制御装置30と,副制御装置31と,入出力機構としてのモニタ32と,主電動機とを備えている。」と記載されているように,本件特許明細書には,「排出口が丁合機本体に設けられている」ことが記載されており,本件特許図面の図2のからもこの点が見て取れる。
よって,訂正事項1-1は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項1-2
ア 訂正の目的について
訂正事項1-2は,「前記積上部,前記搬送機構,及び前記紙揃え機構を支持する基台と,を備えた」と,折込用広告束紙揃え搬送装置が,積上部,搬送機構,及び紙揃え機構を支持する基台を備えるものに限定するものであるから,当該訂正事項は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり,訂正事項1-2は,折込用広告束紙揃え搬送装置が,積上部,搬送機構,及び紙揃え機構を支持する基台を備えるものに限定するものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書の段落【0041】に「折込用広告束紙揃え搬送装置10を図1に示す。折込用広告束紙揃え搬送装置10は,図1に示すように積上部42と,紙揃え機構82と,搬送機構84と,排紙スプリング昇降機構86と,それらを支持する基台90とを備えている。」と記載されているように,本件特許明細書には,「前記積上部,前記搬送機構,及び前記紙揃え機構を支持する基台と,を備えた」との構成が記載されており,本件特許図面の図1からもこの構成が見て取れる。
よって,訂正事項1-2は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(3)訂正事項2-1
ア 訂正の目的について
訂正事項2-1は,棚部と給紙機構と挟み機構と排出口とを備えたものが丁合機本体であることを明確にするとともに,折込用広告束紙揃え搬送装置付き丁合機が丁合機本体と折込用広告束紙揃え搬送装置とを備えたことを明確にするものであり,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり,訂正事項2-1は,棚部と給紙機構と挟み機構と排出口とを備えたものが丁合機本体であることを明確にするとともに,折込用広告束紙揃え搬送装置付き丁合機が丁合機本体と折込用広告束紙揃え搬送装置とを備えたことを明確にするものであり,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書の段落【0018】「丁合機本体12は,縦長形状の筐体16と,筐体16の内部に設けられた複数の棚部18と,各棚部18に設けられた給紙機構20と,筐体16の内部に設けられた搬送路22と,折込用広告紙の束を親紙で挟む挟み機構24と,折込用広告束を排出する排出口26と,主制御装置30と,副制御装置31と,入出力機構としてのモニタ32と,主電動機とを備えている。」と記載されているように,本件特許明細書には「丁合機本体」が「棚部と給紙機構と挟み機構と排出口とを備えたもの」であることが記載されており,本件特許図面の図2のからもこの点が見て取れる。
そして,本件特許明細書の段落【0017】には「折込用広告束紙揃え搬送装置10を,図1に示す。折込用広告束紙揃え搬送装置付き丁合機11を,図2に示す。折込用広告束紙揃え搬送装置付き丁合機11を,図2に示す。折込用広告束紙揃え搬送装置付き丁合機11は,丁合機本体12と,折込用広告束搬送昇降機構14とを備えている。折込用広告束紙揃え搬送装置10は,折込用広告束搬送昇降機構14に設けられている。」と記載され,同段落【0023】には,「排出口26は,丁合機本体12の前面に設けられている。排出口26には,折込用広告束を排出する排出機構38が設けられている。排出機構38には,排出用電動機が接続してあり,排出用電動機により折込用広告束が排出口26から排出される。排出口26の前方には,折込用広告束紙揃え搬送装置10が設けられている。」と記載されているように,本件特許明細書には,「折込用広告束紙揃え搬送装置付き丁合機」が「丁合機本体と折込用広告束紙揃え搬送装置とを備えたものである」ことが記載されており,本件特許図面の図2からもこのことが見て取れる。
よって,訂正事項2-1は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(4)訂正事項2-2
ア 訂正の目的について
訂正事項2-2は,「前記積上部,前記搬送機構,及び前記紙揃え機構を支持する基台と,を備えた折込用広告束紙揃え搬送装置と,」と,折込用広告束紙揃え搬送装置を,積上部,搬送機構,及び紙揃え機構を支持する基台を備えるものに限定するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また,折込用広告束紙揃え搬送装置が,積上部,搬送機構,停止させる手段,及び基台を備えることを明確にするとともに,折込用広告束紙揃え搬送装置付き丁合機が丁合機本体と折込用広告束紙揃え搬送装置とを備えたことを明確にするものであり,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり,訂正事項2-2は,折込用広告束紙揃え搬送装置を,積上部,搬送機構,及び紙揃え機構を支持する基台を備えるものに限定するものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書の段落【0041】に「折込用広告束紙揃え搬送装置10を図1に示す。折込用広告束紙揃え搬送装置10は,図1に示すように積上部42と,紙揃え機構82と,搬送機構84と,排紙スプリング昇降機構86と,それらを支持する基台90とを備えている。」と記載されているように,本件特許明細書には,「前記積上部,前記搬送機構,及び前記紙揃え機構を支持する基台と,を備えた」との構成が記載されており,本件特許図面の図1からもこの構成が見て取れる。
よって,訂正事項2-2に係る「前記積上部,前記搬送機構,及び前記紙揃え機構を支持する基台と,を備えた折込用広告束紙揃え搬送装置」との構成は,本件特許明細書等に記載されているものといえる。
そして,本件特許明細書の段落【0018】には「丁合機本体12は,縦長形状の筐体16と,筐体16の内部に設けられた複数の棚部18と,各棚部18に設けられた給紙機構20と,筐体16の内部に設けられた搬送路22と,折込用広告紙の束を親紙で挟む挟み機構24と,折込用広告束を排出する排出口26と,主制御装置30と,副制御装置31と,入出力機構としてのモニタ32と,主電動機とを備えている。」と記載されているように,本件特許明細書には,「折込用広告束紙揃え搬送装置付き丁合機が丁合機本体と折込用広告束紙揃え搬送装置とを備えた」ものであることが記載され,同段落【0023】には,「排出口26は,丁合機本体12の前面に設けられている。排出口26には,折込用広告束を排出する排出機構38が設けられている。排出機構38には,排出用電動機が接続してあり,排出用電動機により,折込用広告束が排出口26から排出される。排出口26の前方には,折込用広告束紙揃え搬送装置10が設けられている。」と記載されているから,本件特許明細書には,「折込用広告束紙揃え搬送装置付き丁合機が丁合機本体と折込用広告束紙揃え搬送装置」とを備えたものであることが記載されており,本件特許図面の図2からもこの構成が見て取れる。
よって,訂正事項2-2は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(5)独立特許要件について
本件特許異議申立事件においては,請求項1及び請求項2が特許異議申立ての対象とされているので,訂正前の請求項1及び請求項2に係る訂正事項1-1ないし2-2に関して,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3 小括
上記のとおりであるから,本件訂正は,特許法第120条の5第2項但し書き第1号及び第3号を目的とするものであり,同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,本件特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1,2について訂正することを認める。

第3 本件訂正特許発明について
上記第2のとおり,本件訂正請求による訂正は認められるので,本件特許異議申立の対象である本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下,それぞれ,「本件訂正特許発明1」,「本件訂正特許発明2」という。)は,つぎのとおりのものである。

「【請求項1】
複数の棚部からそれぞれ折込用広告紙を給紙して前記複数枚の折込用広告紙を親紙で挟み込んで折込用広告束を作成する丁合機本体の排出口に接続され,前記排出口から排出された前記折込用広告束を積み上げる積上部と,
複数の前記折込用広告束をその積み上げ方向と交差する第1の方向に移動させて前記積上部から搬出する搬送機構と,
前記積上部に積上げられた複数の前記折込用広告束の前記第1の方向に沿った第1の側面を叩いて紙揃えする叩き板,および前記折込用広告束の前記第1の側面と反対の第2の側面に対向した側壁を有する紙揃え機構と,
前記積上部に積上げた複数の前記折込用広告束を前記搬送機構により前記積上部から搬出する際に,前記叩き板を前記積上部から退避させた位置に停止させる手段と,
前記積上部,前記搬送機構,及び前記紙揃え機構を支持する基台と,を備えたことを特徴とする折込用広告束紙揃え搬送装置。
【請求項2】
折込用広告紙を載せる複数の棚部と,
前記棚部のそれぞれから折込用広告紙を給紙する給紙機構と,
前記複数の棚部から給紙された複数枚の折込用広告紙を親紙で挟み込んで折込用広告束を作成する挟み機構と,
前記折込用広告束を排出する排出口と,を備えた丁合機本体と,
前記排出口に対向して設けられ,前記排出口から排出された折込用広告束を積み上げる積上部と,
複数の前記折込用広告束をその積み上げ方向と交差する第1の方向に移動させて前記積上部から搬出する搬送機構と,
前記積上部に積上げられた複数の前記折込用広告束の前記第1の方向に沿った第1の側面を叩いて紙揃えする叩き板,および前記折込用広告束の前記第1の側面と反対の第2の側面に対向した側壁を有する紙揃え機構と,
前記積上部に積上げた複数の前記折込用広告束を前記搬送機構により前記積上部から搬出する際に,前記叩き板を前記積上部から退避させた位置に停止させる手段と,
前記積上部,前記搬送機構,及び前記紙揃え機構を支持する基台と,を備えた折込用広告束紙揃え搬送装置と,
を備えたことを特徴とする折込用広告束紙揃え搬送装置付き丁合機。」

第4 特許異議申立理由及び取消理由(決定の予告)
本件取消理由(決定の予告)により通知した取消理由は,特許異議申立人の異議申立理由と同じものであり,その概要は,つぎのとおりのものである。
1 本件訂正特許発明1は,甲1-1発明及び甲3ないし甲11号証に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許を受けることができないものであるから,本件請求項1に係る特許は,特許法第29条の規定に違反してされたものであり,同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
2 本件訂正特許発明2は,甲1-2発明及び甲3ないし甲11号証に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許を受けることができないものであるから,本件請求項2に係る特許は,特許法第29条の規定に違反してされたものであり,同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

第5 異議申立理由(取消理由(決定の予告)で通知した理由)についての当審の判断
1 証拠の記載について
(1)甲1号証について
本件特許に係る出願の原出願日である平成24年11月2日(以下,単に「原出願日」という。)前に出願公開がされた甲1号証(特開2005-330097号公報)には,以下の事項が記載されている(下線は,当審で付した。以下同じ。)。
ア「【0004】
また,近年では,折込みちらしの配達対象を全戸一律ではなく,家族向け(集合住宅所在地区),単身者向け(ワンルームマンション所在地区),転居者向け(新築集合住宅・新市街造成地区などの新規顧客開拓)などの区域毎に分けたいという,ちらし配布依頼先の多様な要望に応じる必要がある。このため,区域設定モードにより配達区域毎に設定数を決めて丁合し,区域分を丁合し終わるとブザーなどにより報知し,次の区域のための丁合に切換わるようにしている。この場合,折込みちらしセットが所定の部数に達すると丁合運転を停止させて,区域毎に割り当てられた配達員の仕分け作業が楽に行われるように配慮している。
また,折込みちらしの紙質がザラ紙からコート紙といったように幅広い特性を持っていることから,各給紙棚の給紙圧などの調整が必要となるため,丁合運転に先立って,あるいは丁合中でもテストモードにより給紙棚の給紙状態を各段毎にチェックできるようにしている。」
イ「【実施例1】
【0029】
図1ないし図10,図13ないし図27は本発明の実施例1を示す。図1および図2に示すように,管理モニター付き丁合機1(以後,単に丁合機1と称す)は,前後の正面に付設されたスタート/ストップスイッチWの投入により,モーターRが始動し運転が開始されるもので,両側に側板2,3を立設した下板4を有する。下板4の前側には,搬送ベルト24および排紙ガイド6aが設けられており,シート紙として丁合された折込みちらしSの束が折込みちらしセット5となって載置される紙受けホッパー6が取付けられている。紙受けホッパー6の上方には折り紙用給紙棚7が折り段として設けられ,折り紙用給紙棚7の上方には,互いに前後に対向するように配置された上下複数段の給紙棚7a-7kおよび給紙棚8a-8kが取付けられている。
【0030】
給紙棚7a-7k,8a-8kの内側端部には,図2および図3に示すように捌き板9の上部に給紙部10を配置している。給紙部10は,図4に示すブラケット10aにより上下揺動可能に設けられ,タイミングベルト11により連結された主動給紙ローラ12および従動給紙ローラ13を給紙ローラとして備えている。給紙部10の主動給紙ローラ12に隣接するようにして搬送ローラ14,15が上下に摺接する状態に配置されている。前後に対向する給紙部10の間には,互いに摺接する一対の縦搬送ローラ16,17(図2参照)が給紙棚7a-7k,8a-8kの段数に対応して設けられている。
【0031】
給紙棚7a-7k,8a-8kに積載された折込みちらしSは,図2および図3に示すように従動給紙ローラ13により送り出されて主動給紙ローラ12と捌き板9とに挟まれ,搬送ローラ14,15の間から搬送経路に案内される。搬送経路に案内された折込みちらしSは,縦送り装置を構成する縦搬送ローラ16,17を介して下方に送られて最下段のシート折り部18に至る。折り紙用給紙棚7から給送されて折りボックス19aに至った折り紙Gは,上下動する折込み用ナイフ19により中央部が下方に撓むように折られる。撓みにより二つ折り状態になった折り紙Gには,各給紙棚7a-7k,8a-8kから給送されて束になった折込みちらしSが折り込まれて折りローラ20,21により挟み込まれる。折りローラ20,21に挟み込まれた折込みちらしセット5は,駆動ローラ22,23により駆動される搬送ベルト24で運ばれて,図5に示す紙受けホッパー6に排紙ガイド6aに案内されながら放り込まれるように排出される。」
ウ「【0043】
図11は,丁合機1に搬送昇降装置59が付設された例を示す。搬送昇降装置59は,例えば特許第3372678号公報に記載されているように,排紙ガイド6aの引き上げ装置59aを内蔵した踏箱60が設けられたベルトコンベヤー61および渡受け部62を左右に有し,渡受け部62には駆動柱部63が立設されている。駆動柱部63には,紙受台65を支持する左右一対のフォーク64が上下方向に移動可能に設けられている。搬送昇降装置59を付設する場合,紙受けホッパー6が置かれた位置にベルトコンベヤー61を配置する。ベルトコンベヤー61上の折込みちらしセット5は,その積載高さが所定(例えば15cm)になると,ホッパー満載スイッチ66が紙受部満載として検知し(図5参照),丁合機1の丁合動作を停止し,渡受け部62に運び渡されて紙受台65上に置かれる。」

エ 図2



オ 図11

カ 上記ウ及びオの図11によれば,搬送昇降装置59が付設されている場合には,図2における「紙受けホッパー6」が置かれた位置には,排紙ガイド6aの引き上げ装置59aを内蔵した踏箱60が設けられたベルトコンベヤー61が配置され,折込みちらしセット5は,駆動ローラ22,23により駆動される搬送ベルト24で運ばれて,排紙ガイド6aに案内されながら放り込まれるようにベルトコンベヤー61の上に排出されることが理解できる。
そして,折り込みちらしセット5が,ベルトコンベヤー61上に排出される際には,折り込みちらしセット5は,踏箱60に当たってベルトコンベヤー61上に積み重ねられることは,上記の記載から自明のことと認められる。

キ 上記のアないしカによれば,甲1号証には,次の発明(以下,「甲1-1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「両側に側板2,3を立設した下板4を有し,下板4の前側には,搬送ベルト24および排紙ガイド6aが設けられ,シート紙として丁合された折込みちらしの束が折込みちらしセットとなって排出される紙受けホッパー6が取付けられ,紙受けホッパー6の上方には折り紙用給紙棚7が折り段として設けられ,折り紙用給紙棚7の上方には,互いに前後に対向するように配置された上下複数段の給紙棚7a-7kおよび給紙棚8a-8kが取付けられている管理モニター付き丁合機1であって,給紙棚7a-7k,8a-8kに積載された折込みちらしSは,搬送経路に案内され,搬送経路に案内された折込みちらしSは,縦送り装置を構成する縦搬送ローラ16,17を介して下方に送られて最下段のシート折り部18に至り,折り紙用給紙棚7から給送されて折りボックス19aに至った折り紙Gは,上下動する折込み用ナイフ19により中央部が下方に撓むように折られ,二つ折り状態になった折り紙Gには,束になった折込みちらしSが折り込まれて折りローラ20,21により挟み込まれ,折りローラ20,21に挟み込まれた折込みちらしセット5は,駆動ローラ22,23により駆動される搬送ベルト24で運ばれて,紙受けホッパー6に放り込まれるように排出される管理モニター付き丁合機に付設される搬送昇降装置59であって,搬送昇降装置59は,排紙ガイド6aの引き上げ装置59aを内蔵した踏箱60が設けられたベルトコンベヤー61及び渡受け部62を左右に有し,渡受け部62には駆動柱部63が立設され,駆動柱部63には紙受け台65を支持する左右一対のフォーク64が上下方向に移動可能に設けられており,折り込みちらしセット5は,排紙ガイド6aに案内されながら放り込まれるように排出されて踏箱60に当たってベルトコンベヤー61上に積み重ねられ,ベルトコンベヤー61は紙受けホッパー6が置かれる位置に配置されており,ベルトコンベヤー61上に積み重ねられた折込みちらしセット5の積載高さが所定になると,ホッパー満載スイッチ66が紙受部満載として検知し,丁合機1の丁合動作を停止し,折り込みちらしセット5は,渡受け部62に運び渡されて紙受台65上に置かれるように構成された,搬送昇降装置59」
ク また,同様に甲1号証には,つぎの発明(「甲1-2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「両側に側板2,3を立設した下板4を有し,下板4の前側には,搬送ベルト24および排紙ガイド6aが設けられ,シート紙として丁合された折込みちらしの束が折込みちらしセットとなって排出される排紙ガイド6aの引き上げ装置59aを内蔵した踏箱60が設けられたベルトコンベヤー61が取り付けられ,ベルトコンベヤー61の上方には折り紙用給紙棚7が折り段として設けられ,折り紙用給紙棚7の上方には,互いに前後に対向するように配置された上下複数段の給紙棚7a-7kおよび給紙棚8a-8kが取付けられている管理モニター付き丁合機1であって,給紙棚7a-7k,8a-8kに積載された折込みちらしSは,搬送経路に案内され,搬送経路に案内された折込みちらしSは,縦送り装置を構成する縦搬送ローラ16,17を介して下方に送られて最下段のシート折り部18に至り,折り紙用給紙棚7から給送されて折りボックス19aに至った折り紙Gは,上下動する折込み用ナイフ19により中央部が下方に撓むように折られ,二つ折り状態になった折り紙Gには,束になった折込みちらしSが折り込まれて折りローラ20,21により挟み込まれ,折りローラ20,21に挟み込まれた折込みちらしセット5は,駆動ローラ22,23により駆動される搬送ベルト24で運ばれて,ベルトコンベヤー61に放り込まれるように排出される管理モニター付き丁合機であって,折込みちらしセット5は,排紙ガイド6aに案内されながら放り込まれるように排出されて踏箱60に当たってベルトコンベヤー61上に積み重ねられ,ベルトコンベヤー61上に積み重ねられた折込みちらしセット5の積載高さが所定になると,ホッパー満載スイッチ66が紙受部満載として検知し,丁合機1の丁合動作を停止し,折り込みちらしセット5は,渡受け部62に運び渡されて紙受台65上に置かれるように構成された丁合機」

(2)甲2号証について
本件特許に係る出願の原出願日前に出願公開がされた甲2号証(特開2001-63904号公報)には,以下の事項が記載されている。
ア 「【0003】そして上記紙受装置としては,図7に示すように丁合機1の紙排出口2の下部側方に紙受台3を設け,この紙受台3の前端部に複数枚(一般に3枚)の背板4a?4cを間隔5をおいて並設固着し,先端部が間隔5部を貫通して背板4(背板4a?4cの総称)の外側に延びる帯板状の一対のガイド6,6の基部を,丁合機1のフレーム7に水平軸線8のまわりに揺動自在に支持した紙受装置9が用いられている。上記のガイド6,6は,丁合機1の搬出コンベヤ10により矢印Xで示すように横向きに高速で排出される丁合ずみのちらしcを案内して紙受台3上へ集積させるためのものである。」
イ 「【0004】ところが上記の紙受装置9においては,排出されるちらしcが短時間間隔(たとえば1秒おき)で高速でガイド6に衝突するためガイド6がはね上り,またちらしcは背板4に衝突してはね返るため,これらを抑制するためにガイド6の先端部寄りの位置におもり11をねじ止めなどにより取付けて用いている。しかし左右のガイド6,6は別個にはね上りを繰返す(振動する)ため,ちらしcの左右でガイドに当るタイミングがずれて,集積状態でのちらしcの先端縁が揃わなかったり左右にずれた不揃状態となることが多く,またおもり11は背板4に当ったちらしcのはね返り防止用を兼ねているが,上記のガイド6のはね上りを抑制するためにおもり11を重くすると,ちらしcが軽いものである場合は,おもり11によって押付けられたガイド6の先端部下面との摩擦でちらしcが背板4まで到達せず,ちらしcの先端部が前後にずれる不揃いをひきおこしていた。」

(3)甲3号証について
本件特許に係る出願の原出願日前に頒布された刊行物である甲3号証(実願昭58-3349号(実開昭59-108759号公報)のマイクロフィルム)には,以下の事項が記載されている。
ア 「シングリングコンベヤ(4)は駆動プーリ(12)で駆動され,シングリングされた段ボールシート(5)を横出しコンベヤ(7)上に送り出す。」(4頁15?17行)
イ 「シート揃え板(8)の裏面に設けられたミニシリンダ(13)の作動軸(14)が突き出た位置にあるように電磁弁をセットしたとき,コロ(15)はばね(19)の引張力によりカム(17)の受け面に圧接して,軸(10)を支点にシート揃え板(8)がカム(17)の形状に対応した,押し,引き動作を行ない,シングリングコンベヤ(4)から送り出され,前当板(6)に当って横出しコンベヤ上に落下するシート(11)を揃える。」(5頁10?18行)
ウ 「また所定の積み上げ枚数に達した横出しコンベヤ(7)上のシート(11)を搬送するとき,シート揃え板(8)をシート(11)に接触しない位置に保持するために,電磁弁でミニシリンダ(13)の作動軸(14)を引き位置にセットすれば,コロ(15)はカム(17)の回転域から外れ,シート揃え板(8)は,ばね(19)の引張力によりカム(17)の回転とは関係なく,(8a)の位置に保持される。」(5頁19行?6頁5行)

エ 第2図


(4)甲4号証について
本件特許に係る出願の原出願日前に頒布された刊行物である甲4号証(実願昭58-62227号(実開昭59-170554号公報)のマイクロフィルム)には,以下の事項が記載されている。
ア 「段ボールシート5は横出しコンベヤ7上に送り出される。横出しコンベヤ7の両側には前当板6及び軸10の軸心を支点にして押し引き動作するシート揃え板8がある。」(8頁8?11行)
イ 「ゲート開閉用シリンダ13が作動してゲート12を開くとき,軸27に固着したレバー41もゲート12と同角度だけ回動し,ピン40,リンク39を介してリンク33のピン36に,圧縮ばね38の押し下げ力が加わり,リンク33の切り欠き部35に偏心ピン34が嵌入圧接し,偏心ピン34の円運動によりシート揃え板8は軸10を支点として押し引き動作する。」(9頁2?10行)
ウ 「また第5図において,段ボールシート11が所定枚数に達したとき,ゲート開閉シリンダ13が作動し,作動軸31が押し動作してゲート12を閉じるが,軸27の回動によりレバー41も回動し,シート揃え板8はばね44に引張られ,軸10を支点として後傾し,シ-ト11の搬出の妨げにならない位置に保持される。」(9頁11?20行)
エ 第5図


(5)甲5号証について
本件特許に係る出願の原出願日前に頒布された刊行物である甲5号証(特公昭49-18379号公報)には,以下の事項が記載されている。
ア 「本発明は,コンベア等で一枚ずつ搬送される比較的重量のあるフアイバー・ボード,合成樹脂等を一板ずつ受け取つて積載する板状物の積取装置に関する。」(1欄16?19行)
イ 「積取られるために供給コンベア(図示せず)によつて前工程より送り込まれたフアイバー・ボート(「ボート」は「ボード」の誤記と認める。),合成樹脂板等の板状物は,この供給コンベアの終端部に枢着された昇降コンベア1に移行され,順次該板状物の供給方向と直交する方向に配設されたキャタピラ・コンベアー6に積取られる。板状物4が積取られると,ストッパ-5,12及び12’に対応する押板装置2,10及び10’がそれぞれのシリンダー3,11及び11’の駆動で板状物4を押し揃え,木口を整列せしめる。押板装置2,10及び10’の押打ちは積取られた各々の板状物毎に行われるが,該押板装置の駆動は例えば昇降コンベア1の搬送終端部にリミットスイッチを設けて板状物の後端が通過したのを検知し,各々のシリンダ3,11及び11’を作動する様に作られる。」(2欄26行?3欄4行)
ウ 「昇降コンベア1は,板状物4がキヤタピラコンベア6上に順次積取られるに従って次第に上昇し,所定枚数の積取が完了するとその上限に設置されたリミットスイッチの如き検出機に接触して,降下される。これと同時にストッパー12及び12’がその上方を軸として積取られた板状物4から離れる様に90°はね上げられ,そして板状物4の搬出路を開く。このストッパー12,12’のはね上げに引続き,キヤタピラコンベア6上の板状物4は,該キヤタピラコンベア6とキヤタピラコンベア13の駆動によって,コンベア13上に移行される。前記コンベア6の終端部には例えばリミットスイッチが設けられ,コンベア6上から完全にコンベア13へ板状物が移行されたことを感知した後,コンベア6の駆動が停止される。コンベア133は同様に駆動されているキヤタピラコンベア14に積取板状物を移送する。」(3欄5?21行)
エ 第2図


(6)甲6号証について
本件特許に係る出願の原出願日前に頒布された刊行物である甲6号証(実願昭50-50949号(実開昭51-132003号公報)のマイクロフィルム)には,以下の事項が記載されている。
ア 「本考案は印刷された印刷紙等を次工程の製本作業等のために紙揃えを機械的にできるように構成した紙揃え機に関するものである。」(1頁最下行?2頁2行)
イ 「さらに定盤側辺(4)(5)に合致する台板側辺(7)(8)上に給紙された紙を受け止める当て板(13)(14)を設ける。」(3頁4?6行)
ウ 「一方台板(9)(10)面には給紙された紙を揃える紙揃え板(17)(18)を台板のない定盤上に設ける。この紙揃え板(17)(18)は紙揃え板を働かせるピストンアーム軸(19)上に固定されたピストンアーム(20)(21)の先端に取付けられた支持軸(22)(23)上に設けられ,支持軸(22)(23)には紙揃え板(17)(18)が紙そして台板をバツテングした場合の衝撃を緩衝するためのスプリング(24)(25)を遊着している。さらに紙揃え板(17)(18)の下面には,定盤と摩擦をさけるためのベアリングローラー(26)を取付けている。また紙揃え板(17)と紙揃え板(18)はピストンアーム軸(19)にピストンアーム(20)(21)を介して90度以上の角度をもつて固定され第2図に示すごとく,台板の側辺(10)に紙揃え板(18)が接しているときは台板の側辺(9)側の紙揃え板(17)は側辺(9)からは離れているように紙揃え板(17)と(18)とは位置づけられている。」(3頁16行?4頁11行)
エ 「以上のように構成された本考案の紙揃え機は,例えば予め給紙ガイドステシヨンに平行に設置した印刷機の排紙コンベヤーより給紙ガイドステシヨンに紙を連続的に供給すると,コンベヤーから給紙された紙はステシヨンのガイドローラー上を通り,円筒管より吹出されるエアーにより押されながらガイド板を通って,予め所定の角度に傾斜された定盤上の当て板に向って連続して一枚一枚給紙されて台板上に積み重ねられる。この間に当て板に対向して設けられた紙揃え板によって各各の当て板の方向に紙が寄せられて正しく各紙が揃えられながら積み重ねられる。」(5頁16行?6頁7行)
オ 第1図



(7)甲7号証について
本件特許に係る出願の原出願日前に頒布された刊行物である甲7号証(実公昭49-15112号公報)には,以下の事項が記載されている。
ア 「第1の搬送帯1により搬送された新聞aは,計数装置2により計数されながら連続的に矢印A方向に搬送され,更に第2の搬送帯3により矢印A方向に搬送され,第2の搬送帯3の搬出端より落下して当板5aにぶつかりシヤツタ5上に集積する。また,揃え機構6の回転軸6eが回転すると,この軸6eに固定されたカム6fと当接しているカムローラ6dを介してアーム6bが軸6eを支点として回動し,このアーム6bの自由端に固定された振動板6cが新聞aの進行方向(A方向)に振動するので,第2の搬送帯3の搬出端より落下する新聞aはその後端が当板5a側に押しつけて揃えられ,また,不揃いのまゝシヤツタ5上に集積された新聞aもその上部に他の新聞が多く集積しないうちに後端を当板5a側に押しつけられる容易にスライドして揃えられる。」(2欄37行?3欄14行)
イ 「また,搬送する板条片として新聞aについて述べたが,板条片は新聞に限らず,印刷物,その他の紙片,段ボールシート,ハートボード及びベニヤ板などを含むこと勿論である。」(3欄35行?4欄3行)
ウ 第2図


(8)甲8号証について
本件特許に係る出願の原出願日前に出願公開がされた甲8号証(特開2002-249274号公報)には,以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,搬送系を介して順次投入されるシート体を集積位置に所定の枚数ずつ集積するためのシート体の集積方法および装置に関する。」
イ「【0016】揃えガイド機構16は,シート体14の投入方向一端側に配設される板状の第1ガイド部材28a,28bと,前記シート体14の投入方向他端側に配設される板状の第2ガイド部材30a,30bとを備える。第2ガイド部材30a,30bは,矢印B方向に所定の間隔だけ離間して配置される固定ガイドを構成する一方,第1ガイド部材28a,28bは,前記第2ガイド部材30a,30bに対向して配置されるとともに,第1駆動手段32a,32bを介し前記第2ガイド部材30a,30bに対して進退可能である。」
ウ「【0025】そこで,コンベア12を介して矢印C方向に連続搬送されるシート体14は,このコンベア12の先端から集積位置Pに落下供給され,下面ガイド18上に連続的に集積される。その際,例えば,1枚のシート体14が下面ガイド18上に集積される毎に,揃えガイド機構16が駆動される。なお,揃えガイド機構16の駆動頻度は,シート体14が1枚集積される毎に,0.01回?2回に設定される。」
エ 図2

(9)甲9号証について
本件特許に係る出願の原出願日前に頒布された刊行物である甲9号証(米国特許第3712486号明細書)には,以下の事項が記載されている。(以下の摘示の翻訳文は当審で作成した。)
ア 「本発明は,積み重ね装置の分野であり,より具体的には,段ボール箱のブランクまたはシートによって例示されるような,比較的剛性のある材料のシートの積み重ねの形成を対象とする。」(1欄11?15行)
イ 「プッシャ一部材51は,複数の直立したプッシャーフィンガー74を担持し,フィンガーは,ボルト締めされるか,そうでなければ部材51に固定される。フィンガーは,駆動ローラ24の第二あるように配置される。」(2欄16?19行)
ウ 「図5に開示された一点鎖線と実線の位置の比較から最もよく理解されるように,ロッカーアームレバー61によってプッシャー51に付与される往復運動は,プッシャーが,その外側または伸長ストロークで,駆動ローラー24の前縁を越えて伸長し,引き込みストロークで,前記ローラー(実線)の後ろの位置に引き込まれることを可能にするのに十分な大きさであることが理解される。」(6欄20?27行)
エ 「ローラ24と25との間のニップを十分に通過した後,シートの後縁または末端は,秋期的に移動する往復バー51によって係合される一に落下する。往復バーは,その前進ストローク,すなわち,整列バー14に向かうそのストロークで,バーに対するボードの整列を支援する。」(8欄5?19行)
オ 「したがって,最後のシートがスタックに供給された後,往復バーは,シートまたはブランクのスタックの末端からかなりの距離を置いて配置され(図3参照),これにより,スタックは,バーが,シートの後端面に押し付けられるか,または,そこからわずかな距離しか空けられていない場合に経験される,干渉を排除して,蓄積テーブルから除去され得ることが理解されるであろう。」(9欄9?16行)
カ 図3



キ 図5



(10)甲10号証
本件特許に係る出願の原出願日前に頒布された刊行物である甲10号証(米国特許第3079150号明細書)には,以下の事項が記載されている。(以下の摘示の翻訳文は,当審で作成した。)
ア 「シートが,コンベア11によって,連続的に前進させられると,常開ゲート12を通過して,排出または放出され,その先端は,振動する止め板71に突き当たり,止め板71は,支持板19に向ってシートを叩打し,整然としたスタックを形成する。」(3欄45?49行)
イ 「スタックが,所定の高さに到達すると,ゲート12は,閉鎖され,シートのコンベア13への更なる排出が停止し,その後直ちに,ローラー18が,駆動させられ,同時に,エアシリンダ76が,止め板71を,図2に示される後退位置に後退させるようにセットされて,止め板は,シートのスタックの先端Lから完全に間隔を空けられる。」(3欄50?56行)
ウ 「移送コンベア13のローラー18の駆動で,シートのスタックは,移送コンベア11の排出端から,好適な受け取りコンベア(不図示)へ移動させられ,そこから,このように形成されたスタックの均一性ゆえに,後続処理の作業者によって,容易に取り除かれる。」(3欄57?63行)
エ 図2



(11)甲11号証について
本件特許に係る出願の原出願日前に出願公開がされた甲11号証(特開2007-254006号公報)には,以下の事項が記載されている。
ア「【0049】
突き当てパッド16B,プッシャ16C,16D,16Eは,同一の高さに設けられ,また,昇降可能である。更に,プッシャ16Dおよび16Eは,平版印刷版束Pの幅に応じて互いに近接,離間できる。同様に,プッシャ16Cは,平版印刷版束Pの長さに応じて突き当てパッド16Bとの距離を調節できる。突き当てパッド16B,プッシャ16C,16D,16Eは,通常は,平版印刷版束Pの通過に支承(当審注:「支承」は,「支障」の誤記と認める。)がないように上昇した状態にあり,平版印刷版束Pの寸法ずれを修正するときだけ,ローラコンベア16A上に下降する。」
イ 図5



2 当審の判断
(1)本件訂正特許発明1について
ア 本件訂正特許発明1と甲1-1発明との対比
本件訂正特許発明1と甲1-1発明とを対比する。
(ア)甲1-1発明の「上下複数段の給紙棚7a-7k及び給紙棚8a-8k」,「折込みちらしS」,「折り紙G」,「二つ折り状態になった折り紙G」に「束になった折り込みちらしSが折り込まれ」た「折り込みちらしセット5」,「管理モニター付き丁合機1」は,それぞれ,本件訂正特許発明1の「複数の棚部」,「折込用広告紙」,「親紙」,「複数枚の折込用広告紙を親紙で挟み込ん」だ「折り込み用広告束」,「丁合機本体」に相当する。
(イ)甲1-1発明においては,「給紙棚7a-7k,8a-8kに積載された折込みちらしSは,搬送経路に案内され,搬送経路に案内された折込みちらしSは,縦送り装置を構成する縦搬送ローラ16,17を介して下方に送られて最下段のシート折り部18に至り,折り紙用給紙棚7から給送されて折りボックス19aに至った折り紙Gは,上下動する折込み用ナイフ19により中央部が下方に撓むように折られ,二つ折り状態になった折り紙Gには,束になった折込みちらしSが折り込まれて折りローラ20,21により挟み込まれ,折りローラ20,21に挟み込まれた折込みちらしセット5は,駆動ローラ22,23により駆動される搬送ベルト24で運ばれて,排紙ガイド6aの引き上げ装置59aを内蔵した踏箱60が設けられたベルトコンベヤー61に排紙ガイド6aに案内されながら放り込まれるように排出されて踏箱60に当たってベルトコンベヤー61上に積み重ねられ」るものであるところ,甲1-1発明は,「複数の」「給紙棚」に積載された「折り込みちらしS」がそれぞれ縦送り装置に給紙されて,「複数枚の折込用広告紙を親紙で挟み込ん」だ「折り込み用広告束」を作成するものといえるから,本件訂正特許発明1において特定される「丁合機本体」と甲1-1発明において特定される「管理モニター付き丁合機1」とは,「複数の棚部からそれぞれ折込用広告紙を給紙して前記複数枚の折込用広告紙を親紙で挟み込んで折込用広告束を作成する丁合機本体」である点で相当するものといえる。
(ウ)甲1-1発明の「排紙ガイド6aの引き上げ装置59aを内蔵した踏箱60が設けられた」「ベルトコンベヤー61」には,「折込みちらしセット5」が「搬送ベルト24で運ばれて,排紙ガイド6aの引き上げ装置59aを内蔵した踏箱60が設けられたベルトコンベヤー61」に「排紙ガイド6aに案内されながら放り込まれるように排出されて踏箱60に当たってベルトコンベヤー61上に積み重ねられ」るのであるから,甲1-1発明の「排紙ガイド6aの引き上げ装置59aを内蔵した踏箱60が設けられたベルトコンベヤー61」は,本件訂正特許発明1の「「前記排出口から排出された」「折り込み用広告束を積み上げる積上部」に相当する。
(エ)また,甲1-1発明の「ベルトコンベヤー61」は,「ベルトコンベヤー61上に積み重ねられた折込みちらしセット5の積載高さが所定になると,ホッパー満載スイッチ66が紙受部満載として検知し,丁合機1の丁合動作を停止し,搬送昇降装置59の渡受け部62に運び渡されて紙受台65上に置かれる」よう構成されているから,本件訂正特許発明1の「丁合機本体の排出口に接続され」た「複数の前記折込用広告束をその積み上げ方向と交差する第1の方向に移動させて前記積上部から搬出する搬送機構」である点においても相当するものといえる。
(オ)そして,ベルトコンベヤー61を含む搬送昇降装置59は,丁合機に付設されるものであり,ベルトコンベヤー61は,「紙受けホッパー6」が置かれた位置に配置されて,丁合機から排出される「折り込み用広告束」を積み上げるものであるから,丁合機本体の排出口に接続されているものといえる。
(カ)そして,本件訂正特許発明1の「折込用広告束紙揃え搬送装置」と甲1-1発明の「搬送昇降装置59」とは,「折込用広告束」の「積上部」と「搬送機構」を備えるものである点で作用機能が共通するものであるから,両者は,「折込用広告束搬送装置」と言い得る点で共通するものといえる。
(キ)以上のことからすると,本件訂正特許発明1と甲1-1発明とはつぎの一致点で一致し,各相違点で相違する。

<一致点>
複数の棚部からそれぞれ折込用広告紙を給紙して前記複数枚の折込用広告紙を親紙で挟み込んで折込用広告束を作成する丁合機本体の排出口に接続され,
前記排出口から排出された前記折込用広告束を積み上げる積上部と,
複数の前記折込用広告束をその積み上げ方向と交差する第1の方向に移動させて前記積上部から搬出する搬送機構とを備えたことを特徴とする折込用広告束搬送装置。

<相違点1>
本件訂正特許発明1の「折込用広告束紙揃え搬送装置」が,「前記積上部に積上げられた複数の前記折込用広告束の前記第1の方向に沿った第1の側面を叩いて紙揃えする叩き板,および前記折込用広告束の前記第1の側面と反対の第2の側面に対向した側壁を有する紙揃え機構と,
前記積上部に積上げた複数の前記折込用広告束を前記搬送機構により前記積上部から搬出する際に,前記叩き板を前記積上部から退避させた位置に停止させる手段と,前記積上部,前記搬送機構,及び前記紙揃え機構を支持する基台と」を備えるのに対して,甲1-1発明の「搬送昇降装置59」は,そのように特定されない点

イ 相違点1について
(ア)甲1-1発明の「搬送昇降装置」では,「折込みちらしセット5」が「搬送ベルト24で運ばれて,排紙ガイド6aの引き上げ装置59aを内蔵した踏箱60が設けられたベルトコンベヤー61に排紙ガイド6aに案内されながら放り込まれるように排出されて踏箱60に当たってベルトコンベヤー61上に積み重ねられ」るものである。
ところで,甲2号証には,上記1(2)ア及びイの記載があるところ,当該記載によれば,甲1-1発明のように,「丁合された折り込みちらしの束」からなる「折込みちらしセット」を排紙ガイド6aに案内されながら放り込まれるように踏箱60に当たるように排出した場合においては,「ちらし」の「先端部」が前後にずれる不揃いを引き起こすことが理解できることから,原出願日前において,このような課題は当業者にとって周知の技術水準であるといえる。
してみると,原出願日前の当業者は,甲1-1発明の「搬送昇降装置」が備える「ベルトコンベアー61」に「折込みちらしセット5」を積み重ねるに際しては,ちらしの先端部が前後にずれる不揃いを引き起こすものであるという課題を認識し,当該課題を解決することを指向すべきものといえる。
(イ)そして,甲1-1発明における積み重ねられる「折り込みちらしセット5」のような複数枚の紙の先端部の不揃いを揃えるようにする手段として,例えば,甲3号証及び甲4号証には「シート揃え板の押し引き動作によって,前当板に当たって横出しコンベヤ上に落下するシートを揃えるもの」が記載されており,甲6号証には,「コンベヤーから給紙された紙を受け止める当板(13)(14)に対向する紙揃え板によって各々の当板の方向に紙が寄せられることで隠しが揃えながらつみ重ねられるようにした」ものが記載されており,さらに,甲7号証においても「排出された新聞aを受け止める当板5aに対向する振動板6cにより揃えて積み重ねるようにした」ものが,さらに甲8号証には「第2ガイド部材と対向する第2ガイド部材に対して進退可能とした第1ガイド部材とにより紙を揃えるようにしたもの」が記載されているように,本件訂正特許発明1のように「積上げられた複数」の「紙などの板状」のものを「第1の側面を叩いて紙揃えする叩き板,および第1の側面と反対の第2の側面に対向した側壁を有する紙揃え機構」は,原出願日前に従来周知の「紙揃え機構」であったといえる。
(ウ)また,甲3及び甲4号証に記載のものは,ベルトコンベヤにより搬送される方向に対して,搬送される方向に沿った側面に「前当板」及び「シート揃え板」を配置することは,搬送の邪魔にならないようにするために当然考慮される配置であるし,甲1-1発明の「搬送昇降装置」が備える「ベルトコンベアー61」においては,「折込みちらしセット5」が排出された際には,「踏箱」に当たって積み重ねられるのであるから,甲1-1発明に「周知の紙揃え機構」を適用するに当たっては,当該「踏箱」と対面するように「叩き板」を配置するよう構成されることは,技術的にみて明らかであるといえる。
(エ)以上のとおりであるから,甲1-1発明に,周知の「紙揃え機構」を適用することにより,本件訂正特許発明1の「前記積上部に積上げられた複数の前記折込用広告束の前記第1の方向に沿った第1の側面を叩いて紙揃えする叩き板,および前記折込用広告束の前記第1の側面と反対の第2の側面に対向した側壁を有する紙揃え機構」を備えるようにすることは,当業者が適宜なし得る程度のことというべきである。
(オ)また,甲1-1発明においては,「複数の前記折込みちらしセットをその積み上げ方向と交差する第1の方向に移動させて渡受け部62に搬出するベルトコンベヤー61」によって,折込みちらしセットを排出するものであり,上記のとおり「第1の方向に沿った第1の側面を叩いて紙揃えする叩き板」を採用する場合,排出時には,もはや,この叩き板を作動させる必要はなく,叩き板の作動を休止させることは当然に考慮されることというべきである。
そして,叩き板の作動を休止させる場合,叩き板が,前進,後退を繰り返すものであるなら,第1の方向に搬送させる際に搬送の支障とならない後退位置において休止させることも,当業者が普通に採用するものといえる。
a なお,上記周知例である甲3号証には,「所定の積み上げ枚数に達した横出しコンベヤ(7)上のシート(11)を搬送するとき,シート揃え板(8)をシート(11)に接触しない位置に保持する」(甲4号証にも同旨の記載がある。),甲5号証には,「該押板装置の駆動は例えば昇降コンベア1の搬送終端部にリミットスイッチを設けて板状物の後端が通過したのを検知し,各々のシリンダ3,11及び11’を作動する様に作られる。」と記載されており,甲5号証の第2図の記載と合わせると,押板装置は,キャタピラコンベア6上の板状物4が搬出される際に,後退位置にあることは明らかといえる。
b さらに,甲9号証には,「最後のシートがスタックに供給された後,往復バーは,シートまたはプランクのスタックの末端からかなりの距離を置いて配置され(図3参照),これにより,スタックは,バーが,シートの後端面に押し付けられるか,または,そこからわずかな距離しか空けられていない場合に経験される,干渉を排除して,蓄積テーブルから除去され得る」ことが,甲10号証には,「スタックが,所定の高さに到達すると,ゲート12は,閉鎖され,シートのコンベア13への更なる排出が停止し,その後直ちに,ローラー18が,駆動させられ,同時に,エアシリンダ76が,止め板71を,図2に示される後退位置に後退させるようにセットされて,止め板は,シートのスタックの先端Lから完全に間隔を空けられる。」と記載され,甲11号証には,「突き当てパッド16B,プッシャ16C,16D,16Eは,通常は,平版印刷版束Pの通過に支承がないように上昇した状態にあり,平版印刷版束Pの寸法ずれを修正するときだけ,ローラコンベア16A上に下降する。」と記載されているように,叩き板の作動を休止させる場合に揃える対象の搬出を妨げることを防止するため,また,叩きのタイミングを調整するため,叩き板を後退位置において休止させることは,周知の技術であるといえる。
c してみると,甲1-1発明において,周知の紙揃え機構を適用するにあたっては,甲1-1発明が「ベルトコンベヤー61」上に「折り込み用広告束」を積み上げて,搬送するものである以上,「前記積上部に積上げた複数の前記折込用広告束を前記搬送機構により前記積上部から搬出する際に,前記叩き板を前記積上部から退避させた位置に停止させる」ものとすることは当然考慮すべき設計要素であるといえるし,仮にそうでないとしても,「叩き板の作動を休止させる場合に揃える対象の搬出を妨げることを防止するため,また,叩きのタイミングを調整するため,叩き板を後退位置において休止させる」ことが周知の技術であることに照らせば,当業者が容易に想到し得るものというべきである。
(カ)つぎに,上記相違点に係る「積上部,搬送機構及び紙揃え機構を支持する基台」について検討する。
甲1-1発明では,「折込みちらしセット5」がベルトコンベヤー61に積み上げられるに際して当たる「踏箱60」は,ベルトコンベヤー61に設けられているが,この「踏箱60」は,床に設置して使用されるものである。
してみると,上記(ア)ないし(オ)で検討したように,甲1-1発明の踏箱に当たりベルトコンベアー上に放り込まれるように排出される折込みちらしセットを揃えるために,「周知の紙揃え機構」を適用したとしても,ベルトコンベアー,紙揃え機構の一部を構成する「踏箱」とを支持するような基台を備える構成とはならない。
また,当該「踏箱」が床に設置して使用されるものである以上,そのような「踏箱」を基台を設ける動機付けも見出せない。
また,甲3号証ないし甲11号証には,「積上部,搬送機構及び紙揃え機構を支持する基台」については記載も示唆もない。
さらに,異議申立人が令和3年3月11日付けの意見書と共に提出した甲12号証ないし甲14号証をみても,そこに記載されているものは,「積上部,搬送機構を支持する基台」であって,「積上部,搬送機構及び紙揃え機構を支持する基台」が記載されているものではないし,そもそも,甲1-1発明の「踏箱」を基台に設置することが容易に想到し得ない以上,甲12号証ないし甲14号証に基づいて,当該構成が容易に想到し得るということもできない。
してみると,甲1-1発明において,「前記積上部に積上げられた複数の前記折込用広告束の前記第1の方向に沿った第1の側面を叩いて紙揃えする叩き板,および前記折込用広告束の前記第1の側面と反対の第2の側面に対向した側壁を有する紙揃え機構と,前記積上部に積上げた複数の前記折込用広告束を前記搬送機構により前記積上部から搬出する際に,前記叩き板を前記積上部から退避させた位置に停止させる手段とを備えることが適宜なし得る程度のことといえるとしても,さらに,「折込用広告束紙揃え搬送装置」において,それら「積上部,搬送機構及び紙揃え機構を支持する基台」を備えるようにすることを当業者が容易に想到し得るものということはできない。
(キ)異議申立人の主張について
a 異議申立人は,「甲1号証の段落【0043】によれば,搬送昇降装置59は,排紙ガイド6aの引き上げ装置59aを内蔵した踏箱60が設けられたベルトコンベヤー61を有するものであり,ベルトコンベヤー61が,プーリー,モータ等,ベルトを駆動するための部材を有するものであり,プーリー,モータ等は,取付用の部材に取り付けられて使用されることは,当業者に周知であるから,甲1号証には図示されていないものの,甲1号証の図11に記載の搬送昇降装置59は,ベルトコンベヤー61の取付用の部材,すなわち基台が開示されているに等しい。 そして,甲1号証に記載の搬送昇降装置59に「紙揃え機構」を備えようとする場合,甲1号証に記載の搬送装置59が丁合機1に付設されるものであることからすると,搬送昇降装置59側に「紙揃え機構」を取り付けることは当業者であれば容易に選択し得る」と主張している。
しかしながら,上記(カ)において検討したとおり,甲1-1発明においては「踏箱60」が,床に設置して使用されるものであるから,異議申立人のいうように,甲1-1発明がベルトコンベヤー61の取付用の基台を備えるものであったとしても,当該基台に踏箱を設置することとはならないのであるから,異議申立人の主張は採用することができない。
b 異議申立人は,甲12号証の図1,甲13号証の図1及び甲14号証のベルトコンベヤーが基台に取付けられている構成は周知である旨主張しているが,上記(カ)で検討したとおり,これらに記載のものは,「積上部,搬送機構を支持する基台」にとどまるのであるから,これらの記載から,「積上部,搬送機構及び紙揃え機構を支持する基台」が周知であるとはいえないし,甲1-1発明の踏箱が床に設置されるものである以上,それをベルトコンベヤーの基台に備えるようにすることには動機付けが見出せないことも上記のとおりである。
c 異議申立人は,意見書とともに甲15号証の1ないし6を提出しているが,甲15号証の1ないし6は,異議申立期間後に提出されたものであり,また,当該甲15号証の1の頒布日については,甲15号証の2ないし6によって直ちにあきらかであるといえないことから,本件特許異議申立事件の審理において採用することは相当でない。
(ク)以上のとおりであるから,上記相違点1は,甲1-1発明に,甲3ないし甲11号証に記載の周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得るものということはできない。
また,異議申立人が令和3年3月11日付けの意見書とともに提出した甲12ないし14号証を考慮したとしても,同様である。

エ 小括
上記のとおりであって,本件訂正特許発明1は,甲1-1発明及び甲3ないし甲14号証に記載の周知技術によっては,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから,異議申立人の主張する理由(取消理由で通知した理由)によっては,本件請求項1に係る特許は,特許法第29条の規定に違反してされたものとはいえず,同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものということはできない。

(2)本件訂正特許発明2について
ア 本件訂正特許発明2と甲1-2発明との対比
本件訂正特許発明2と甲1-2発明とを対比する。
(ア)甲1-2発明の「「上下複数段の給紙棚7a-7k及び給紙棚8a-8k」,「折込みちらしS」,「折り紙G」,「二つ折り状態になった折り紙G」に「束になった折り込みちらしSが折り込まれ」た「折り込みちらしセット5」,「管理モニター付き丁合機1」は,それぞれ,本件訂正特許発明2の「複数の棚部」,「折込用広告紙」,「親紙」,「複数枚の折込用広告紙を親紙で挟み込ん」だ「折り込み用広告束」,「丁合機本体」に相当する。
(イ)甲1-2発明においては,「給紙棚7a-7k,8a-8kに積載された折込みちらしSは,搬送経路に案内され,搬送経路に案内された折込みちらしSは,縦送り装置を構成する縦搬送ローラ16,17を介して下方に送られて最下段のシート折り部18に至り,折り紙用給紙棚7から給送されて折りボックス19aに至った折り紙Gは,上下動する折込み用ナイフ19により中央部が下方に撓むように折られ,二つ折り状態になった折り紙Gには,束になった折込みちらしSが折り込まれて折りローラ20,21により挟み込まれ,折りローラ20,21に挟み込まれた折込みちらしセット5は,駆動ローラ22,23により駆動される搬送ベルト24で運ばれて,排紙ガイド6aの引き上げ装置59aを内蔵した踏箱60が設けられたベルトコンベヤー61に排紙ガイド6aに案内されながら放り込まれるように排出されて踏箱60に当たってベルトコンベヤー61上に積み重ねられ」るものであるところ,甲1-2発明は,「複数の」「給紙棚」に積載された「折り込みちらしS」がそれぞれ縦送り装置に給紙されて,「複数枚の折込用広告紙を親紙で挟み込ん」だ「折り込み用広告束」を作成するものといえるから,本件訂正特許発明2と甲1-2発明とは,「折込み広告を載せる複数の棚部」と,「前記棚部のそれぞれから折込用広告紙を給紙する給紙機構」と「複数の棚部から給紙された複数枚の折込用広告紙を親紙で挟み込んで折込用広告束を作成する挟み機構」と,「折込用広告束を排出する排出口」とを備える「丁合機本体」である点においても相当するものといえる。
(ウ)甲1-2発明の「排紙ガイド6aの引き上げ装置59aを内蔵した踏箱60が設けられたベルトコンベヤー61」には,「折込みちらしセット5」が「搬送ベルト24で運ばれて,排紙ガイド6aの引き上げ装置59aを内蔵した踏箱60が設けられたベルトコンベヤー61に排紙ガイド6aに案内されながら放り込まれるように排出されて踏箱60に当たってベルトコンベヤー61上に積み重ねられ」るのであるから,甲1-2発明の「排紙ガイド6aの引き上げ装置59aを内蔵した踏箱60が設けられたベルトコンベヤー61」は,本件訂正特許発明2の「折込用広告束を排出する」「排出口に対向して設けられ,前記排出口から排出された」「折り込み用広告束を積み上げる積上部」に相当する。
(エ)また,甲1-2発明の「ベルトコンベヤー61」は,「ベルトコンベヤー61上に積み重ねられた折込みちらしセット5の積載高さが所定になると,ホッパー満載スイッチ66が紙受部満載として検知し,丁合機1の丁合動作を停止し,搬送昇降装置59の渡受け部62に運び渡されて紙受台65上に置かれる」よう構成されているから,本件訂正特許発明2の「複数の前記折込用広告束をその積み上げ方向と交差する第1の方向に移動させて前記積上部から搬出する搬送機構」である点においても相当するものといえる。
(オ)そして,本件訂正特許発明2の「折込用広告束紙揃え搬送装置付き丁合機」と甲1-2発明とは,「折込用広告束」の「積上部」と「搬送機構」を備えるものである点で作用機能が共通するものであるから,両者は,「折込用広告束搬送装置付き丁合機」と言い得る点で共通するものといえる。
(カ)以上のことからすると,本件訂正特許発明2と甲1-2発明とはつぎの一致点で一致し,各相違点で相違する。
<一致点>
「折込用広告紙を載せる複数の棚部と,
前記棚部のそれぞれから折込用広告紙を給紙する給紙機構と,
前記複数の棚部から給紙された複数枚の折込用広告紙を親紙で挟み込んで折込用広告束を作成する挟み機構と,
前記折込用広告束を排出する排出口とを備えた丁合機本体と
前記排出口に対向して設けられ,前記排出口から排出された折込用広告束を積み上げる積上部と,
複数の前記折込用広告束をその積み上げ方向と交差する第1の方向に移動させて前記積上部から搬出する搬送機構と,
を備えたことを特徴とする折込用広告束紙搬送装置付き丁合機。」

<相違点2>
本件訂正特許発明2が「折込用広告束紙搬送装置付き丁合機」であって「前記積上部に積上げられた複数の前記折込用広告束の前記第1の方向に沿った第1の側面を叩いて紙揃えする叩き板,および前記折込用広告束の前記第1の側面と反対の第2の側面に対向した側壁を有する紙揃え機構と,前記積上部に積上げた複数の前記折込用広告束を前記搬送機構により前記積上部から搬出する際に,前記叩き板を前記積上部から退避させた位置に停止させる手段と,前記積上部,前記搬送機構,及び前記紙揃え機構を支持する基台」を備えるのに対して,甲1-2発明は,そのように特定されない点。
イ 相違点2について
相違点2は,実質的に上記(1)ア(キ)の相違点1と同じであるから,同イにおいて検討したとおり,甲1-2発明に,甲3ないし甲11号証に記載の周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得るものということはできない。
また,異議申立人が令和3年3月11日付けの意見書とともに提出した甲12ないし14号証を考慮したとしても,同様である。
ウ 小括
上記のとおりであって,本件訂正特許発明2は,甲1-2発明及び甲3ないし甲14号証に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから,異議申立人の主張する理由(取消理由で通知した理由)によっては,本件請求項2に係る特許は,特許法第29条の規定に違反してされたものとはいえず,同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものということはできない。

第6 まとめ
以上検討したとおりであるから,本件訂正特許発明1及び本件訂正特許発明2は,異議申立人の主張する理由及び証拠方法(取消理由(決定の予告))によっては,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから,本件特許の請求項1及び請求項2に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものとはいえず,同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものであるということはできない。
よって,上記結論のとおり,決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の棚部からそれぞれ折込用広告紙を給紙して前記複数枚の折込用広告紙を親紙で挟み込んで折込用広告束を作成する丁合機本体の排出口に接続され、前記排出口から排出された前記折込用広告束を積み上げる積上部と、
複数の前記折込用広告束をその積み上げ方向と交差する第1の方向に移動させて前記積上部から搬出する搬送機構と、
前記積上部に積上げられた複数の前記折込用広告束の前記第1の方向に沿った第1の側面を叩いて紙揃えする叩き板、および前記折込用広告束の前記第1の側面と反対の第2の側面に対向した側壁を有する紙揃え機構と、
前記積上部に積上げた複数の前記折込用広告束を前記搬送機構により前記積上部から搬出する際に、前記叩き板を前記積上部から退避させた位置に停止させる手段と、
前記積上部、前記搬送機構、及び前記紙揃え機構を支持する基台と、を備えたことを特徴とする折込用広告束紙揃え搬送装置。
【請求項2】
折込用広告紙を載せる複数の棚部と、
前記棚部のそれぞれから折込用広告紙を給紙する給紙機構と、
前記複数の棚部から給紙された複数枚の折込用広告紙を親紙で挟み込んで折込用広告束を作成する挟み機構と、
前記折込用広告束を排出する排出口と、を備えた丁合機本体と、
前記排出口に対向して設けられ、前記排出口から排出された折込用広告束を積み上げる積上部と、
複数の前記折込用広告束をその積み上げ方向と交差する第1の方向に移動させて前記積上部から搬出する搬送機構と、
前記積上部に積上げられた複数の前記折込用広告束の前記第1の方向に沿った第1の側面を叩いて紙揃えする叩き板、および前記折込用広告束の前記第1の側面と反対の第2の側面に対向した側壁を有する紙揃え機構と、
前記積上部に積上げた複数の前記折込用広告束を前記搬送機構により前記積上部から搬出する際に、前記叩き板を前記積上部から退避させた位置に停止させる手段と、
前記積上部、前記搬送機構、及び前記紙揃え機構を支持する基台と、を備えた折込用広告束紙揃え搬送装置と、
を備えたことを特徴とする折込用広告束紙揃え搬送装置付き丁合機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-06-08 
出願番号 特願2018-90073(P2018-90073)
審決分類 P 1 651・ 853- YAA (B65H)
P 1 651・ 851- YAA (B65H)
P 1 651・ 121- YAA (B65H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 冨江 耕太郎  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 清水 康司
尾崎 淳史
登録日 2019-11-01 
登録番号 特許第6607995号(P6607995)
権利者 株式会社プレッシオ
発明の名称 折込用広告束紙揃え搬送装置、及び折込用広告束紙揃え搬送装置付き丁合機  
代理人 森川 元嗣  
代理人 野河 信久  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 飯野 茂  
代理人 井上 正  
代理人 井上 正  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 森川 元嗣  
代理人 鵜飼 健  
代理人 峰 隆司  
代理人 野河 信久  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
代理人 飯野 茂  
代理人 河野 直樹  
代理人 鵜飼 健  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 直樹  

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