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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 一部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
管理番号 1376724
異議申立番号 異議2020-700640  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-26 
確定日 2021-07-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6652572号発明「炭素ナノ構造体プレブレンド及びその用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6652572号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4、5及び8〕、3、〔6及び7〕、9、〔17、18、22、23及び25〕、19、20、21、24、〔28、29及び31ないし33〕、〔30及び61〕、〔34、35、39、40及び42〕、36、37、38、41、〔45、46及び48ないし50〕、〔47及び63〕、〔51ないし57〕、〔58及び59〕、60及び62について訂正することを認める。 特許第6652572号の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6652572号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし59に係る特許についての出願は、2016(平成28)年2月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年2月27日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和2年1月27日にその特許権の設定登録(請求項の数59)がされ、同年2月26日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年8月26日に特許異議申立人 安藤 宏(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59)がされ、同年11月13日付けで取消理由が通知され、令和3年2月16日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年3月5日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、それに対して特許権者からは応答がなかったものである。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和3年2月16日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「単層カーボンナノチューブを含む」と記載されているのを「単層カーボンナノチューブを含み、前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである」に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記微粒子固体がカーボンブラックである、請求項1に記載の方法」と記載されているのを「ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる方法であって:前記炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること;前記ブレンドを乾燥させて、通常の配合プロセスにおいてポリマーに添加するのに適した炭素ナノ構造体と微粒子とのプレブレンドを形成することを含み、前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、前記微粒子固体がカーボンブラックである、方法。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に「前記ポリマー組成物中の主ポリマーがエチレン-α-オレフィンエラストマーである、請求項5に記載の方法」と記載されているのを「ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる方法であって:前記炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること;前記ブレンドを乾燥させて、通常の配合プロセスにおいてポリマーに添加するのに適した炭素ナノ構造体と微粒子とのプレブレンドを形成することを含み、前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、前記プレブレンドをポリマー組成物中に混合することをさらに含み、前記ポリマー組成物中の主ポリマーがエチレン-α-オレフィンエラストマーである、方法。」に訂正する。
併せて、請求項6を引用する他の請求項も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に「前記ゴム製品がベルト、ホース、タイヤ、又は制振部品である、請求項8に記載の方法。」と記載されているのを「ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる方法であって:前記炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること;前記ブレンドを乾燥させて、通常の配合プロセスにおいてポリマーに添加するのに適した炭素ナノ構造体と微粒子とのプレブレンドを形成することを含み、前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、前記プレブレンドをポリマー組成物中に混合することをさらに含み、前記ポリマー組成物を含むゴム製品を製造することをさらに含み、前記ゴム製品がベルト、ホース、タイヤ、又は制振部品である、方法。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項17に「単層カーボンナノチューブを含む」と記載されているのを「単層カーボンナノチューブを含み、前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである」に訂正する。
併せて、請求項17を直接又は間接的に引用する他の請求項も同様に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項19に「前記プレブレンドがナノチューブネットワークとその中に分散されたカーボンブラック粒子とを含む、請求項17に記載のプレブレンド組成物。」と記載されているのを「有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含み、前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、前記プレブレンドがナノチューブネットワークとその中に分散されたカーボンブラック粒子とを含む、プレブレンド組成物。」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項20に「前記プレブレンドがナノチューブで被覆されたカーボンブラック粒子を含む、請求項17に記載のプレブレンド組成物。」と記載されているのを「有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含み、前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、前記プレブレンドがナノチューブで被覆されたカーボンブラック粒子を含む、プレブレンド組成物。」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項21に「前記プレブレンドが炭素ナノ構造体で被覆された黒鉛質炭素粒子を含む、請求項17に記載のプレブレンド組成物。」と記載されているのを「有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含み、前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、前記プレブレンドが炭素ナノ構造体で被覆された黒鉛質炭素粒子を含む、プレブレンド組成物。」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項24に「前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、請求項22に記載のプレブレンド組成物。」と記載されているのを「有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含み、前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、前記プレブレンドがコアーシェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含み、前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、プレブレンド組成物。」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項28に「固体コア粒子を含む」と記載されているのを「固体コア粒子を含み、前記微粒子固体がカーボンブラック、黒然質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである」に訂正する。
併せて、請求項28を直接又は間接的に引用する他の請求項も同様に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項30に「前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、請求項28に記載のプレブレンド組成物。」と記載されているのを「有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物であって、前記プレブレンドがコアーシェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含み、前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、プレブレンド組成物。」に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項33に「請求項26?32のいずれか一項」と記載されているのを「請求項28、29、31及び32のいずれか一項」に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項34に「単層カーボンナノチューブを含む」と記載されているのを「単層カーボンナノチューブを含み、前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構浩のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒然炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである」に訂正する。
併せて、請求項34を直接又は間接的に引用する他の請求項も同様に訂正する。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項36に「前記プレブレンドがナノチューブネットワークとその中に分散されたカーボンブラック粒子とを含む、請求項34に記載の製造方法。」と記載されているのを「炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び混合されたブレンドを乾燥させることを含み、前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、前記プレブレンドがナノチューブネットワークとその中に分散されたカーボンブラック粒子とを含む、製造方法。」に訂正する。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項37に「前記プレブレンドがナノチューブで被覆されたカーボンブラック粒子を含む、請求項34に記載の製造方法。」と記載されているのを「炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び混合されたブレンドを乾燥させることを含み、前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、前記プレブレンドがナノチューブで被覆されたカーボンブラック粒子を含む、製造方法。」に訂正する。

(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項38に「前記プレブレンドが炭素ナノ構造体で被覆された黒鉛質炭素粒子を含む、請求項34に記載の製造方法。」と記載されているのを「炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び混合されたブレンドを乾燥させることを含み、前記プレブレンドが炭素ナノ構造体で被覆された黒鉛質炭素粒子を含む、製造方法。」に訂正する。

(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項41に「前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、請求項39に記載の製造方法。」と記載されているのを「炭素ナノ構造体及び微拉子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び混合されたブレンドを乾燥させることを含み、前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、前記プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された個体コア粒子を含み、前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、製造方法。」に訂正する。

(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項45に「固体コア粒子を含む」と記載されているのを「固体コア粒子を含み、前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである」に訂正する。
併せて、請求項45を直接又は間接的に引用する他の請求項も同様に訂正する。

(19)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項47に「前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、請求項45に記載の製造方法。」と記載されているのを「炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び混合されたブレンドを乾燥させることを含み、前記プレブレンドがコアーシェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含み、前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、製造方法。」に訂正する。

(20)訂正事項20
特許請求の範囲の請求項50に「請求項43?49のいずれか一項」と記載されているのを「請求項45、46、48及び49のいずれか一項」に訂正する。

(21)訂正事項21
特許請求の範囲の請求項51に「単層カーボンナノチューブを含む」と記載されているのを「単層カーボンナノチューブを含み、前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである」に訂正する。
併せて、請求項51を直接又は間接的に引用する他の請求項も同様に訂正する。

(22)訂正事項22
特許請求の範囲の請求項58に「コア-シェル材料を含む」と記載されているのを「コア-シェル材料を含み、前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである」に訂正する。
併せて、請求項58を引用する他の請求項も同様に訂正する。

(23)訂正事項23
特許請求の範囲の請求項33に「請求項26?32のいずれか一項に記載のプレブレンド組成物。」と記載されているうち、請求項26及び27を引用するものについては、請求項33から分離して、「前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項26又は27に記載のプレブレンド組成物。」とし、新たに請求項60とする。

(24)訂正事項24
特許請求の範囲の請求項33に「請求項26?32のいずれか一項に記載のプレブレンド組成物。」と記載されているうち、請求項30を引用するものについては、請求項33から分離して、「前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項30に記載のプレブレンド組成物。」とし、新たに請求項61とする。

(25)訂正事項25
特許請求の範囲の請求項50に「請求項43?49のいずれか一項に記載の製造方法。」と記載されているうち、請求項43及び44を引用するものについては、請求項50から分離して、「前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項43又は44に記載の製造方法。」とし、新たに請求項62とする。

(26)訂正事項26
特許請求の範囲の請求項50に「請求項43?49のいずれか一項に記載の製造方法。」と記載されているうち、請求項47を引用するものについては、請求項50から分離して、「前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項47に記載の製造方法。」とし、新たに請求項63とする。

2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1、2、4、5及び8についての訂正について
訂正事項1による請求項1、2、4、5及び8についての訂正は、「微粒子固体」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)請求項3についての訂正について
訂正事項2による請求項3についての訂正は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)請求項6についての訂正について
訂正事項3による請求項6についての訂正は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1及び5の記載を引用する記載であったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1及び5の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)請求項7についての訂正について
訂正事項3による請求項7についての訂正は、請求項6についての訂正と同様に他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)請求項9についての訂正について
訂正事項4による請求項9についての訂正は、訂正前の請求項9が訂正前の請求項1、5及び8の記載を引用する記載であったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1、5及び8の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)請求項17、18、22、23及び25についての訂正について
訂正事項5による請求項17、18、22、23及び25についての訂正は、「微粒子固体」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)請求項19についての訂正について
訂正事項6による請求項19についての訂正は、訂正前の請求項19が訂正前の請求項17の記載を引用する記載であったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項17の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8)請求項20についての訂正について
訂正事項7による請求項20についての訂正は、訂正前の請求項20が訂正前の請求項17の記載を引用する記載であったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項17の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(9)請求項21についての訂正について
訂正事項8による請求項21についての訂正は、訂正前の請求項21が訂正前の請求項17の記載を引用する記載であったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項17の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(10)請求項24についての訂正について
訂正事項9による請求項24についての訂正は、訂正前の請求項24が訂正前の請求項17及び22の記載を引用する記載であったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項17及び22の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(11)請求項28、29、31及び32についての訂正について
訂正事項10による請求項28、29、31及び32についての訂正は、「微粒子固体」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(12)請求項30についての訂正について
訂正事項11による請求項30についての訂正は、訂正前の請求項30が訂正前の請求項28の記載を引用する記載であったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項28の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(13)請求項33についての訂正について
訂正事項10による請求項33についての訂正は、請求項28についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、訂正事項12による請求項33についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、これらの訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(14)請求項34、35、39、40及び42についての訂正について
訂正事項13による請求項34、35、39、40及び42についての訂正は、「微粒子固体」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(15)請求項36についての訂正について
訂正事項14による請求項36についての訂正は、訂正前の請求項36が訂正前の請求項34の記載を引用する記載であったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項34の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(16)請求項37についての訂正について
訂正事項15による請求項37についての訂正は、訂正前の請求項37が訂正前の請求項34の記載を引用する記載であったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項34の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(17)請求項38についての訂正について
訂正事項16による請求項38についての訂正は、訂正前の請求項38が訂正前の請求項34の記載を引用する記載であったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項34の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(18)請求項41についての訂正について
訂正事項17による請求項41についての訂正は、訂正前の請求項41が訂正前の請求項34及び39の記載を引用する記載であったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項34及び39の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(19)請求項45、46、48及び49についての訂正について
訂正事項18による請求項45、46、48及び49についての訂正は、「微粒子固体」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(20)請求項47についての訂正について
訂正事項19による請求項47についての訂正は、訂正前の請求項47が訂正前の請求項45の記載を引用する記載であったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項45の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(21)請求項50についての訂正について
訂正事項18による請求項50についての訂正は、請求項45についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、訂正事項20による請求項50についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、これらの訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(22)請求項51ないし57についての訂正について
訂正事項21による請求項51ないし57についての訂正は、「微粒子固体」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(23)請求項58及び59についての訂正について
訂正事項22による請求項58及び59についての訂正は、「微粒子固体」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(24)請求項60についての訂正について
訂正事項23による請求項60についての訂正は、訂正前の請求項33において請求項26又は27の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、訂正前の請求項33を含む一群の請求項として一体的に取り扱われないようにするために、請求項33と構成要件を同一にする請求項60を追加して設け、請求項60において請求項26又は27の記載を引用するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(25)請求項61についての訂正について
訂正事項24による請求項61についての訂正は、訂正前の請求項33において請求項30の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、訂正前の請求項33を含む一群の請求項として一体的に取り扱われないようにするために、請求項33と構成要件を同一にする請求項61を追加して設け、請求項61において請求項30の記載を引用するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(26)請求項62についての訂正について
訂正事項25による請求項62についての訂正は、訂正前の請求項50において請求項43又は44の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、訂正前の請求項50を含む一群の請求項として一体的に取り扱われないようにするために、請求項50と構成要件を同一にする請求項62を追加して設け、請求項62において請求項43又は44の記載を引用するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(27)請求項63についての訂正について
訂正事項26による請求項63についての訂正は、訂正前の請求項50において請求項47の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、訂正前の請求項50を含む一群の請求項として一体的に取り扱われないようにするために、請求項50と構成要件を同一にする請求項63を追加して設け、請求項63において請求項47の記載を引用するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1又は4号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。

なお、訂正前の請求項1ないし9は一群の請求項に該当するものであり、訂正前の請求項17ないし25は一群の請求項に該当するものであり、訂正前の請求項28ないし33は一群の請求項に該当するものであり、訂正前の請求項34ないし42は一群の請求項に該当するものであり、訂正前の請求項45ないし50は一群の請求項に該当するものであり、訂正前の請求項51ないし57は一群の請求項に該当するものであり、訂正前の請求項58及び59は一群の請求項に該当するものである。そして、本件訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

また、特許異議の申立ては、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正が行われた請求項の全てに対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

さらに、訂正後の請求項3、訂正後の6及び7、訂正後の請求項9、訂正後の請求項19、訂正後の請求項20、訂正後の請求項21、訂正後の請求項24、訂正後の請求項30、訂正後の請求項36、訂正後の請求項37、訂正後の請求項38、訂正後の請求項41、訂正後の請求項47、訂正後の請求項60、訂正後の請求項61、訂正後の請求項62及び訂正後の請求項63について、訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがされている。
なお、訂正後の請求項61は訂正後の請求項30を引用しており、訂正後の請求項63は訂正後の請求項47を引用しているので、訂正後の請求項61及び63については独立した訂正単位として別途訂正することは認められない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4、5及び8〕、3、〔6及び7〕、9、〔17、18、22、23及び25〕、19、20、21、24、〔28、29及び31ないし33〕、〔30及び61〕、〔34、35、39、40及び42〕、36、37、38、41、〔45、46及び48ないし50〕、〔47及び63〕、〔51ないし57〕、〔58及び59〕、60及び62について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる方法であって:
前記炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること;
前記ブレンドを乾燥させて、通常の配合プロセスにおいてポリマーに添加するのに適した炭素ナノ構造体と微粒子とのプレブレンドを形成すること
を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである方法。
【請求項2】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プレブレンドがカーボンナノチューブ(「CNT」)のネットワークと混和された微粒子固体の粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プレブレンドをポリマー組成物中に混合することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー組成物を含むゴム製品を製造することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項17】
有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせであるプレブレンド組成物。
【請求項18】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項17に記載のプレブレンド組成物。
【請求項22】
前記プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含む、請求項17に記載のプレブレンド組成物。
【請求項23】
前記コア粒子が規則的又は不規則的な形状であり20nm?20μmの範囲の大きさの平均最長寸法を有する、請求項22に記載のプレブレンド組成物。
【請求項25】
前記コア粒子を被覆するシェルが当該コア粒子の全表面積の50?100%の範囲の表面積を被覆している、請求項22に記載のプレブレンド組成物。
【請求項28】
有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物であって、前記プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含み、
前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせであるプレブレンド組成物。
【請求項29】
前記コア粒子が規則的又は不規則的な形状であり20nm?20μmの範囲の大きさの平均最長寸法を有する、請求項28に記載のプレブレンド組成物。
【請求項31】
前記炭素ナノ構造体がフラーレン、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、及びそれらの化学的誘導体からなる群からの1種又は2種以上からなる、請求項28に記載のプレブレンド組成物。
【請求項32】
前記コア粒子を被覆するシェルが当該コア粒子の全表面積の50?100%の範囲の表面積を被覆している、請求項28に記載のプレブレンド組成物。
【請求項33】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項28、29、31及び32のいずれか一項に記載のプレブレンド組成物。
【請求項34】
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させることを含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである製造方法。
【請求項35】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項34に記載の製造方法。
【請求項39】
前記プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含む、請求項34に記載の製造方法。
【請求項40】
前記コア粒子が規則的又は不規則的な形状であり20nm?20μmの範囲の大きさの平均最長寸法を有する、請求項39に記載の製造方法。
【請求項42】
前記コア粒子を被覆するシェルが当該コア粒子の全表面積の50?100%の範囲の表面積を被覆している、請求項39に記載の製造方法。
【請求項45】
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させること
を含み、
前記プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含み、
前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである製造方法。
【請求項46】
前記コア粒子が規則的又は不規則的な形状であり20nm?20μmの範囲の大きさの平均最長寸法を有する、請求項45に記載の製造方法。
【請求項48】
前記炭素ナノ構造体がフラーレン、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、及びそれらの化学的誘導体からなる群からの1種又は2種以上からなる、請求項45に記載の製造方法。
【請求項49】
前記コア粒子を被覆するシェルが当該コア粒子の全表面積の50?100%の範囲の表面積を被覆している、請求項45に記載の製造方法。
【請求項50】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項45、46、48及び49のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項51】
有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成すること;
前記分散体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成すること
を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである方法。
【請求項52】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ブレンドを乾燥させてプレブレンドを形成することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記プレブレンドが、前記炭素ナノ構造体のシェルで被覆された前記固体粒子のコアを含むコア-シェル材料を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
配合プロセスにおいてポリマーに前記プレブレンドを添加することをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記プレブレンドを電池電極の一部として又は電解質媒体の一部として又はスーパーキャパシタの一部として使用することをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
電解質媒体、塗料、コーティング、又はスラリーに前記プレブレンドを使用することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項58】
有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成すること;
前記分散体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成すること
を含み、
前記プレブレンドが、前記炭素ナノ構造体のシェルで被覆された前記固体粒子のコアを含むコア-シェル材料を含み、
前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである方法。
【請求項59】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項58に記載の方法。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理油の概要
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和2年8月26日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

(1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55、58及び59に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1号第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)申立理由2(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55、58及び59に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(3)申立理由3(甲第2号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1号第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(4)申立理由4(甲第2号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(5)申立理由5(甲第3号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55及び57ないし59に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1号第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(6)申立理由6(甲第3号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55及び57ないし59に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(7)申立理由7(甲第4号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55、58及び59に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1号第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(8)申立理由8(甲第4号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55、58及び59に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(9)申立理由9(明確性要件)
本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

ア 本件請求項1には、「通常の配合プロセスにおいてポリマーに添加するのに適した」との記載があるが、「添加するのに適した」とは、単に添加できればよいことを意味するのか、それでは足りず所定の条件を満たすように添加できることを意味するのか、また、添加の可能性があればよいのか、実際の添加を要するのか等が明らかでない。さらに、「通常の配合プロセス」の範囲も不明確である。よって、本件請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、4、5及び8は、特許を受けようとする発明が不明確である。

イ 本件請求項1、17、18、34、45、51及び58には、プレブレンド、プレブレンド組成物、プレブレンディングといった文言が記載されているが、これらの用語は、「ブレンド」が意味する「混合」とは異なるのか、「プレ」の付加により異なるとすれば、どのように異なるのか不明確である。よって、上記請求項は、特許を受けようとする発明が不明確である。上記請求項を直接又は間接的に引用する請求項2、4、5、8、19、22、23、25、29、31ないし33、35、39、40、42、46、48ないし50、52ないし57及び59も同様である。

(10)申立理由10(実施可能要件)
本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

・本件明細書によれば、炭素ナノ構造体としてSWCNT、微粒子固体としてカーボンブラック、エラストマーとしてEPMが使用されている。
しかるに、炭素ナノ構造体はSWCNT以外も包含し得るし、微粒子固体はカーボンブラック以外も包含し得る。
したがって、発明の詳細な説明は、本件請求項1、17、28、34、45、51及び58に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
上記請求項を直接又は間接的に引用する請求項2、4、5、8、19、22、23、25、29、31ないし33、35、39、40、42、46、48ないし50、52ないし57及び59も同様である。

(11)申立理由11(サポート要件)
本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

・本件明細書によれば、炭素ナノ構造体としてSWCNT、微粒子固体としてカーボンブラック、エラストマーとしてEPMが使用されている。
しかるに、炭素ナノ構造体はSWCNT以外も包含し得るし、微粒子固体はカーボンブラック以外も包含し得る。
したがって、本件明細書の実施例の結果は、本件請求項1、17、28、34、45、51及び58に係る発明にまで拡張ないし一般化することはできない。
上記請求項を直接又は間接的に引用する請求項2、4、5、8、19、22、23、25、29、31ないし33、35、39、40、42、46、48ないし50、52ないし57及び59も同様である。

(12)証拠方法
甲第1号証:特開2011-31503号公報
甲第2号証:特開2006-54066号公報
甲第3号証:特表2006-525220号公報
甲第4号証:特開2015-30821号公報
甲第5号証:特許情報プラットフォーム 検索結果
特許・実用新案検索において、発明・考案の名称/タイトルに「導電性塗料」と入力し、公知日・発行日を2015年2月27日までとして検索した結果
甲第6号証:高分子学会高分子辞典編集委員会編集 「高分子辞典」 朝倉書店 昭和46年6月30日、360?361頁、485頁、571頁、572頁、奥付
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

2 取消理由の概要
令和2年11月13日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。

(1)取消理由1(甲1を主引用文献とする新規性進歩性)
本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし50に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、または本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55、58及び59に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由1は、申立理由1のうち本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし50に対する理由並びに申立理由2とおおむね同旨である。

(2)取消理由2(甲2を主引用文献とする新規性進歩性)
本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし50に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、または本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に係る発明は、甲2に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由2は、申立理由3のうち本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし50に対する理由並びに申立理由4とおおむね同旨である。

(3)取消理由3(甲3を主引用文献とする新規性進歩性)
本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55及び57ないし59に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、または甲3に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由3は、申立理由5及び6とおおむね同旨である。

(4)取消理由4(甲第4号証を主引用文献とする新規性進歩性)
本件特許の請求項17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55、58及び59に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、または甲4に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由4は申立理由7及び8のうち本件特許の請求項17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55、58及び59に対する理由とおおむね同旨である。

(5)取消理由5(サポート要件)
本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由5は申立理由11とおおむね同旨である。

・本件特許の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを用い、微粒子固体としてカーボンブラックを用いて有機液体中で湿式混合してプレブレンドを形成した場合に、発明の課題を解決できると認識できるところ、本件特許発明1、2、4、5及び8は、炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを用い、微粒子固体としてカーボンブラックを用いて有機液体中で湿式混合してプレブレンドを形成することに特定されていない。
本件特許の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを用い、微粒子固体としてカーボンブラックを用いて有機液体中で湿式混合して形成したプレブレンド組成物の場合に、発明の課題を解決できると認識できるところ、本件特許発明17、18、22及び23は、炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを用い、微粒子固体としてカーボンブラックを用いて有機液体中で湿式混合して形成したプレブレンド組成物に特定されていない。
本件特許の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを用い、微粒子固体としてカーボンブラックを用いて有機液体中で湿式混合して形成したプレブレンド組成物の場合に、発明の課題を解決できると認識できるところ、本件特許発明28、29及び31ないし33は、炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを用い、微粒子固体としてカーボンブラックを用いて有機液体中で湿式混合して形成したプレブレンド組成物に特定されていない。
本件特許の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを用い、微粒子固体としてカーボンブラックを用いて有機液体中で湿式混合してプレブレンド組成物を製造する方法の場合に、発明の課題を解決できると認識できるところ、本件特許発明34、35、39、40及び42は、炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを用い、微粒子固体としてカーボンブラックを用いて有機液体中で湿式混合してプレブレンド組成物を製造する方法に特定されていない。
本件特許の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを用い、微粒子固体としてカーボンブラックを用いて有機液体中で湿式混合してプレブレンド組成物を製造する方法の場合に、発明の課題を解決できると認識できるところ、本件特許発明45、46及び48ないし50は、炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを用い、微粒子固体としてカーボンブラックを用いて有機液体中で湿式混合してプレブレンド組成物を製造する方法に特定されていない。
本件特許の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを用い、微粒子固体としてカーボンブラックを用いて有機液体中で湿式混合してブレンドを形成する方法の場合に、発明の課題を解決できると認識できるところ、本件特許発明51ないし57は、炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを用い、微粒子固体としてカーボンブラックを用いて有機液体中で湿式混合してブレンドを形成する方法に特定されていない。
本件特許の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを用い、微粒子固体としてカーボンブラックを用いて有機液体中で湿式混合してブレンドを形成する方法の場合に、発明の課題を解決できると認識できるところ、本件特許発明58及び59は、炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを用い、微粒子固体としてカーボンブラックを用いて有機液体中で湿式混合してブレンドを形成する方法に特定されていない。
したがって、本件特許発明1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえないし、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。

第5 取消理由についての当審の判断
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項及び甲1発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「成形品に無電解めっき法によるめっき膜を設けためっき物とその製造方法。」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。

・「【実施例】
【0023】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0024】
製造例1:導電性ポリピロール微粒子(分散液)の調製
スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム1.5mmolをイオン交換水100mLに溶解し、次いでピロールモノマー21.2mmolを加え、30分攪拌した後、0.2M過硫酸アンモニウム水溶液50mL(6mmol相当)を加え、20分間反応を行った。次いでトルエン25mLを添加し、4時間撹拌した。反応終了後、有機層を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエン中に分散した導電性微粒子分散液を得て、トルエンにて導電性微粒子の固形分濃度0.6%に調整した。なお、導電性微粒子分散液中の導電性微粒子の粒子径は、平均20nmであった。
【0025】
製造例2:導電性高分子微粒子をカーボンナノチューブの表面に担持させた担持物を作製する工程
得られた導電性微粒子分散液にカーボンナノチューブを添加し、ホモミキサーで分散させた。その後、エバポレーターで有機溶媒を分離した後、室温にて風乾し、カーボンナノチューブに導電性微粒子を担持させた粉末状の担持物を得た。
【0026】
製造例3:該担持物を、成形前の樹脂に混合させて混合物を作製する工程
得られた粉末状の担持物を、ポリプロピレン樹脂に対して50wt%となるように添加し、混合させて混合物を得た。」

イ 甲1発明
甲1に記載された事項を、【0023】ないし【0026】に記載された実施例に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。

<甲1発明1>
「トルエン中に導電性ポリピロール微粒子を分散させた導電性ポリピロール微粒子分散液にカーボンナノチューブを添加し、ホモミキサーで分散させ、その後、エバポレータでトルエンを分離した後、室温で風乾し、カーボンナノチューブに導電性ポリピロール微粒子を担持させた粉末状の担持物を得て、得られた粉末状の担持物を、ポリプロピレン樹脂に添加し、混合させて混合物を得る方法。」

<甲1発明2>
「トルエン中に導電性ポリピロール微粒子を分散させた導電性ポリピロール微粒子分散液にカーボンナノチューブを添加し、ホモミキサーで分散させ、その後、エバポレータでトルエンを分離した後、室温で風乾して得たカーボンナノチューブに導電性ポリピロール微粒子を担持させた粉末状の担持物。」

<甲1発明3>
「トルエン中に導電性ポリピロール微粒子を分散させた導電性ポリピロール微粒子分散液にカーボンナノチューブを添加し、ホモミキサーで分散させ、その後、エバポレータでトルエンを分離した後、室温で風乾して、カーボンナノチューブに導電性ポリピロール微粒子を担持させた粉末状の担持物を得る方法。」

(2)甲2に記載された事項及び甲2発明
ア 甲2に記載された事項
甲2には、「導電性粒子および異方導電性材料用組成物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【実施例】
【0058】
本発明を、以下の実施例をもって具体的に説明するが、本実施例は、本発明を何ら制限するものではない。
【0059】
実施例1
コア粒子の作成
透明ポリアミド(商品名“グリルアミド-TR55”、エムザベルケ社製)90重量部、エポキシ樹脂(商品名“エピコート828”、油化シェル(株)社製)7.5重量部および硬化剤(商品名“トーマイド”#296、富士化成工業(株)社製)2.5重量部をクロロホルム300重量部とメタノール100重量部の混合溶媒中に添加して均一溶液を得た。次に該溶液を塗装用のスプレーガンを用いて霧状にして、良く撹拌して3000重量部のn-ヘキサンの液面に向かって吹き付けて溶質を析出させた。析出した固体を濾別し、n-ヘキサンで良く洗浄した後に、100℃、24時間の真空乾燥を行い、コア粒子を得た。
【0060】
実施例2
導電性微粒子の作成
エタノール100ml中に、中空カーボンファイバー(東レ株式会社製)5gおよび実施例1で得られたコア層23gを入れ1時間撹拌を行った。得られた懸濁液を減圧下濃縮した。引き続き、アルゴン雰囲気下200℃に加熱し、硬化させることにより、導電性粒子25gを得た。導電性粒子の断面を電子顕微鏡(図2 倍率 2000倍)にて観察したところ、導電層が0.3μmの厚さで被覆されていた。」
【0061】
実施例3 異方導電性フィルムの作成
実施例2で得られた導電性粒子30重量部とポリアリレート100重量部とからなる混合ペーストを330℃で加熱溶融し、2軸延伸機を用いて、厚さ20μmの異方導電性フィルムを調整した。」

イ 甲2発明
甲2に記載された事項を、【0059】ないし【0061】に記載された実施例1ないし3に関して整理すると、甲2には次の発明(以下、順に「甲2発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。

<甲2発明1>
「エタノール中に、中空カーボンナノファイバー及びコア粒子を入れ、攪拌を行い、濃縮し、加熱し、硬化させて、導電層が被覆された導電性微粒子を得、該導電性微粒子をポリアリレートと混合させて混合ペーストを得る方法。」

<甲2発明2>
「エタノール中に、中空カーボンナノファイバー及びコア粒子を入れ、攪拌を行い、濃縮し、加熱し、硬化させて、得た導電層が被覆された導電性微粒子。」

<甲2発明3>
「エタノール中に、中空カーボンナノファイバー及びコア粒子を入れ、攪拌を行い、濃縮し、加熱し、硬化させて、導電層が被覆された導電性微粒子を得る方法。」

(3)甲3に記載された事項及び甲3発明
ア 甲3に記載された事項
甲3には、「伝導性炭素ナノチューブ・重合体複合体」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【請求項113】
伝導性炭素ナノチューブ・重合体複合体を製造する方法において、
(a) 炭素ナノチューブ及び第一溶媒を含む炭素ナノチューブ懸濁物を形成し、
(b) 前記炭素ナノチューブ懸濁物と重合体懸濁物とを混合し、炭素ナノチューブ・重合体懸濁物を形成し、然も、前記重合体懸濁物が重合体及び第二溶媒を含み、前記重合体が重合体粒子の形態をしており、そして
(c) 前記炭素ナノチューブ・重合体懸濁物から第一溶媒及び第二溶媒を除去し、炭素ナノチューブ・重合体複合体を形成し、然も、前記重合体粒子が合体し、前記炭素ナノチューブが、主に前記重合体粒子の間に存在する、
ことを含む、複合体製造方法。
【請求項114】
炭素ナノチューブを、単層壁炭素ナノチューブ、多層壁炭素ナノチューブ、及びそれらの組合せからなる群から選択する、請求項113に記載の方法。」

・「【請求項120】
第一溶媒と第二溶媒がトルエンを含む、請求項113に記載の方法。」

・「【0082】
本発明の単層壁炭素ナノチューブ及び合体した重合体粒子を含む伝導性重合体複合体は、増大した電気及び熱伝導性を有し、そのため熱伝導性、電気伝導性、電磁波遮蔽、又はそれらの組合せを必要とする用途で有用なものになる。そのような組成物は、ペイント、被覆、及び接着剤として有用である。ナノチューブを本質的に排除した重合体粒子から構成された重合体マトリックス中に伝導性ネットワークを形成するのに必要なナノチューブの濃度はほんの僅かなので、マトリックス重合体にとって望ましい物理的及び機械的処理性を劣化することなく、複合体に電気及び熱伝導性が付与される。炭素ナノチューブのネットワークは、重合体複合体に与えられる強度、弾力性、及び靭性を付加的に増大することがある。」

イ 甲3発明
甲3に記載された事項を、【請求項113】、【請求項114】、【請求項120】及び【0082】に関して整理すると、甲3には次の発明(以下、順に「甲3発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。

<甲3発明1>
「単層壁炭素ナノチューブ及びトルエンを含む第一溶媒を含む炭素ナノチューブ懸濁物を形成し、前記炭素ナノチューブ懸濁物と重合体懸濁物とを混合し、炭素ナノチューブ・重合体懸濁物を形成し、然も、前記重合体懸濁物が重合体及びトルエンを含む第二溶媒を含み、前記重合体が重合体粒子の形態をしており、そして、前記炭素ナノチューブ・重合体懸濁物から第一溶媒及び第二溶媒を除去して得た、然も、前記重合体粒子が合体し、前記炭素ナノチューブが、主に前記重合体粒子の間に存在する炭素ナノチューブ・重合体複合体をペイント、被覆又は接着剤の材料として用いる方法。」

<甲3発明2>
「単層壁炭素ナノチューブ及びトルエンを含む第一溶媒を含む炭素ナノチューブ懸濁物を形成し、前記炭素ナノチューブ懸濁物と重合体懸濁物とを混合し、炭素ナノチューブ・重合体懸濁物を形成し、然も、前記重合体懸濁物が重合体及びトルエンを含む第二溶媒を含み、前記重合体が重合体粒子の形態をしており、そして、前記炭素ナノチューブ・重合体懸濁物から第一溶媒及び第二溶媒を除去して得た、然も、前記重合体粒子が合体し、前記炭素ナノチューブが、主に前記重合体粒子の間に存在する炭素ナノチューブ・重合体複合体。」

<甲3発明3>
「単層壁炭素ナノチューブ及びトルエンを含む第一溶媒を含む炭素ナノチューブ懸濁物を形成し、前記炭素ナノチューブ懸濁物と重合体懸濁物とを混合し、炭素ナノチューブ・重合体懸濁物を形成し、然も、前記重合体懸濁物が重合体及びトルエンを含む第二溶媒を含み、前記重合体が重合体粒子の形態をしており、そして、前記炭素ナノチューブ・重合体懸濁物から第一溶媒及び第二溶媒を除去し、然も、前記重合体粒子が合体し、前記炭素ナノチューブが、主に前記重合体粒子の間に存在する炭素ナノチューブ・重合体複合体の製造方法。」

(4)甲4に記載された事項及び甲4発明
ア 甲4に記載された事項
甲4には、「複合樹脂粒子及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【請求項1】
樹脂材料粒子とカーボンナノ材料を分散媒に混合して分散させた複合樹脂材料分散液を作製し、前記複合樹脂材料分散液から複合樹脂粒子を製造する複合樹脂粒子製造方法であって、前記分散媒がケトン系溶媒であり、前記樹脂材料粒子、前記カーボンナノ材料及び前記カーボンナノ材料を前記ケトン系溶媒に分散させる分散剤を混合して複合樹脂粒子分散液を作製する混合工程と、前記複合樹脂粒子分散液を乾燥させて複合樹脂粒子を得る乾燥工程を含むことを特徴とする複合樹脂粒子製造方法。
【請求項2】
前記ケトン系溶媒がメチルエチルケトン、アセトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン及びシクロヘキサノンの1種以上の溶媒からなる請求項1に記載の複合樹脂粒子製造方法。」

・「【請求項8】
樹脂材料粒子とカーボンナノ材料を分散媒に混合して分散させた複合樹脂材料分散液から製造された複合樹脂粒子であって、前記分散媒がケトン系溶媒であり、前記カーボンナノ材料がカーボンナノチューブを含み、前記カーボンナノチューブの長さLが50μm≦L≦600μmであり、前記樹脂材料粒子と前記カーボンナノ材料の全質量に対する前記カーボンナノ材料の質量比率が0.003mass%?0.1mass%の範囲にあり、前記樹脂材料粒子の表面層に前記カーボンナノ材料の一部分又は全部が分散状に埋設又は固着する混合層が形成されることを特徴とする複合樹脂粒子。
【請求項9】
前記ケトン系溶媒がメチルエチルケトン、アセトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン及びシクロヘキサノンの1種以上の溶媒からなる請求項8に記載の複合樹脂粒子。
・・・(略)・・・
【請求項12】
前記カーボンナノ材料は、さらに、グラフェン、アセチレンブラック、ケッチョンブラック、カーボンブラック、カーボンファイバー及び長さが50μm未満のカーボンナノチューブから選択される1種以上の材料を含み、前記カーボンナノ材料における前記カーボンナノチューブの質量比率が0.1重量%以上100重量%以下である請求項8?11いずれかに記載の複合樹脂粒子」

イ 甲4発明
甲4に記載された事項を、【請求項1】、【請求項2】及び【請求項8】ないし【請求項12】に関して整理すると、甲4には次の発明(以下、順に「甲4発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。

<甲4発明1>
「樹脂材料粒子とカーボンナノチューブをケトン系溶媒に混合して分散させた複合樹脂材料分散液を作製し、前記複合樹脂材料分散液を乾燥させて製造した複合樹脂粒子。」

<甲4発明2>
「樹脂材料粒子とカーボンナノチューブをケトン系溶媒に混合して分散させた複合樹脂材料分散液を作製し、前記複合樹脂材料分散液を乾燥させて複合樹脂粒子を製造する複合樹脂粒子製造方法。」

2 取消理由1(甲1を主引用文献とする新規性進歩性)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明1を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる方法であって:
前記炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること;
前記ブレンドを乾燥させて、通常の配合プロセスにおいてポリマーに添加するのに適した炭素ナノ構造体と微粒子とのプレブレンドを形成すること
を含み、
前記炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブを含む方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-1>
「炭素ナノ構造体」に関して、本件特許発明1においては、「単層カーボンナノチューブ」と特定されているのに対し、甲1発明1においては、「カーボンナノチューブ」と特定されている点。

<相違点1-a>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明1においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲1発明1においては、「導電性ポリピロール微粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点1-aから検討する。
甲1発明1における「導電性ポリピロール微粒子」は、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」ではないから、相違点1-aは実質的な相違点である。
そして、甲1には、「導電性ポリピロール微粒子」を「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」とする動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもそのような記載はないから、甲1発明1において、相違点1-aに係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明1であるとはいえないし、甲1発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件特許発明2、4、5及び8について
本件特許発明2、4、5及び8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明1であるとはいえないし、甲1発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明17について
本件特許発明17と甲1発明2を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含み、
前記炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブを含むプレブレンド組成物。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-2>
「炭素ナノ構造体」に関して、本件特許発明17においては、「単層カーボンナノチューブ」と特定されているのに対し、甲1発明2においては、「カーボンナノチューブ」と特定されている点。

<相違点1-b>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明17においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲1発明2においては、「導電性ポリピロール微粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点1-bから検討する。
相違点1-bは、相違点1-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明17は甲1発明2であるとはいえないし、甲1発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)本件特許発明18、22、23及び25について
本件特許発明18、22、23及び25は、請求項17を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明17の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明17と同様に、甲1発明2であるとはいえないし、甲1発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)本件特許発明28について
本件特許発明28と甲1発明2を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-3>
本件特許発明28においては、「プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含む」と特定されているのに対し、甲1発明2においては、そのようには特定されていない点。

<相違点1-c>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明28においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲1発明2においては、「導電性ポリピロール微粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点1-cから検討する。
相違点1-cは、相違点1-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明28は甲1発明2であるとはいえないし、甲1発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(6)本件特許発明29及び31ないし33について
本件特許発明29及び31ないし33は、請求項28を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明28の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明28と同様に、甲1発明2であるとはいえないし、甲1発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(7)本件特許発明34について
本件特許発明34と甲1発明3を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させることを含む製造方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-4>
「炭素ナノ構造体」に関して、本件特許発明34においては、「単層カーボンナノチューブ」と特定されているのに対し、甲1発明3においては、「カーボンナノチューブ」と特定されている点。

<相違点1-d>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明34においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲1発明3においては、「導電性ポリピロール微粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点1-dから検討する。
相違点1-dは、相違点1-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明34は甲1発明3であるとはいえないし、甲1発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(8)本件特許発明35、39、40及び42について
本件特許発明35、39、40及び42は、請求項34を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明34の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明34と同様に、甲1発明3であるとはいえないし、甲1発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(9)本件特許発明45について
本件特許発明45と甲1発明3を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させること
を含む製造方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-5>
本件特許発明45においては、「プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含む」と特定されているのに対し、甲1発明3においては、そのようには特定されていない点。

<相違点1-e>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明45においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲1発明3においては、「導電性ポリピロール微粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点1-eから検討する。
相違点1-eは、相違点1-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明45は甲1発明3であるとはいえないし、甲1発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(10)本件特許発明46及び48ないし50について
本件特許発明46及び48ないし50は、請求項45を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明45の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明45と同様に、甲1発明3であるとはいえないし、甲1発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(11)本件特許発明51について
本件特許発明51と甲1発明3を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中で炭素ナノ構造体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成することを含む方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-6>
本件特許発明51においては、「有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成」し、この「分散体」を「微粒子固体」とブレンディングしてブレンドを形成すると特定されているのに対し、甲1発明3においては、そのようには特定されていない点。

<相違点1-7>
「炭素ナノ構造体」に関して、本件特許発明51においては、「単層カーボンナノチューブ」と特定されているのに対し、甲1発明3においては、「カーボンナノチューブ」と特定されている点。

<相違点1-f>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明51においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲1発明3においては、「導電性ポリピロール微粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点1-fから検討する。
相違点1-fは、相違点1-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明51は甲1発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(12)本件特許発明52ないし55について
本件特許発明52ないし55は、請求項51を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明51の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明51と同様に、甲1発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(13)本件特許発明58について
本件特許発明58と甲1発明3を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中で炭素ナノ構造体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成することを含む方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-8>
本件特許発明58においては、「有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成」し、この「分散体」を「微粒子固体」とブレンディングしてブレンドを形成すると特定されているのに対し、甲1発明3においては、そのようには特定されていない点。

<相違点1-9>
本件特許発明58においては、「プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含む」と特定されているのに対し、甲1発明3においては、そのようには特定されていない点。

<相違点1-g>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明58においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲1発明3においては、「導電性ポリピロール微粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点1-gから検討する。
相違点1-gは、相違点1-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明58は甲1発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(14)本件特許発明59について
本件特許発明59は、請求項58を引用するものであり、本件特許発明58の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明58と同様に、甲1発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(15)まとめ
したがって、本件特許発明1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55、58及び59は、特許法第29条の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55、58及び59に係る特許は、取消理由1によっては取り消すことはできない。

3 取消理由2(甲2を主引用文献とする新規性進歩性)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明1を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる方法であって:
前記炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること;
通常の配合プロセスにおいてポリマーに添加するのに適した炭素ナノ構造体と微粒子とのプレブレンドを形成すること
を含む方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-1>
本件特許発明1においては、「ブレンド」を「乾燥」させると特定されているのに対し、甲2発明1においては、そのようには特定されていない点。

<相違点2-2>
「炭素ナノ構造体」に関して、本件特許発明1においては、「単層カーボンナノチューブ」と特定されているのに対し、甲2発明1においては、「中空カーボンナノファイバー」と特定されている点。

<相違点2-a>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明1においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲2発明1においては、「コア粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点2-aから検討する。
甲2発明1における「コア粒子」は、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」ではないから、相違点2-aは実質的な相違点である。
そして、甲2には、「コア粒子」を「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」とする動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもそのような記載はないから、甲2発明1において、相違点2-aに係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明1であるとはいえないし、甲2発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件特許発明2、4、5及び8について
本件特許発明2、4、5及び8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2発明1であるとはいえないし、甲2発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明17について
本件特許発明17と甲2発明2を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-3>
「炭素ナノ構造体」に関して、本件特許発明17においては、「単層カーボンナノチューブ」と特定されているのに対し、甲2発明2においては、「中空カーボンナノファイバー」と特定されている点。

<相違点2-b>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明17においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲2発明2においては、「コア粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点2-bから検討する。
相違点2-bは、相違点2-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明17は甲2発明2であるとはいえないし、甲2発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)本件特許発明18、22、23及び25について
本件特許発明18、22、23及び25は、請求項17を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明17の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明17と同様に、甲2発明2であるとはいえないし、甲2発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)本件特許発明28について
本件特許発明28と甲2発明2を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物であって、前記プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含むプレブレンド組成物。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-c>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明28においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲2発明2においては、「コア粒子」と特定されている点。

そこで、相違点2-cについて検討する。
相違点2-cは相違点2-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、本件特許発明28は甲2発明2であるとはいえないし、甲2発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(6)本件特許発明29及び31ないし33について
本件特許発明29及び31ないし33は、請求項28を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明28の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明28と同様に、甲2発明2であるとはいえないし、甲2発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(7)本件特許発明34について
本件特許発明34と甲2発明3を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合することを含む製造方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-4>
本件特許発明34においては、「ブレンド」を「乾燥」させると特定されているのに対し、甲2発明3においては、そのようには特定されていない点。

<相違点2-5>
「炭素ナノ構造体」に関して、本件特許発明34においては、「単層カーボンナノチューブ」と特定されているのに対し、甲2発明3においては、「中空カーボンナノファイバー」と特定されている点。

<相違点2-d>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明34においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲2発明3においては、「コア粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点2-dから検討する。
相違点2-dは、相違点2-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明34は甲2発明3であるとはいえないし、甲2発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(8)本件特許発明35、39、40及び42について
本件特許発明35、39、40及び42は、請求項34を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明34の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明34と同様に、甲2発明3であるとはいえないし、甲2発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(9)本件特許発明45について
本件特許発明45と甲2発明3を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
前記プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含む製造方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-6>
本件特許発明45においては、「ブレンド」を「乾燥」させると特定されているのに対し、甲2発明3においては、そのようには特定されていない点。

<相違点2-e>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明45においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲2発明3においては、「コア粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点2-eから検討する。
相違点2-eは、相違点2-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明45は甲2発明3であるとはいえないし、甲2発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(10)本件特許発明46及び48ないし50について
本件特許発明46及び48ないし50は、請求項45を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明45の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明45と同様に、甲2発明3であるとはいえないし、甲2発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(11)本件特許発明51について
本件特許発明51と甲2発明3を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中で炭素ナノ構造体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成することを含む方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-7>
本件特許発明51においては、「有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成」し、この「分散体」を「微粒子固体」とブレンディングしてブレンドを形成すると特定されているのに対し、甲2発明3においては、そのようには特定されていない点。

<相違点2-8>
「炭素ナノ構造体」に関して、本件特許発明51においては、「単層カーボンナノチューブ」と特定されているのに対し、甲2発明3においては、「中空カーボンナノファイバー」と特定されている点。

<相違点2-f>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明51においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲2発明3においては、「コア粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点2-fから検討する。
相違点2-fは、相違点2-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明51は甲2発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(12)本件特許発明52ないし57について
本件特許発明52ないし57は、請求項51を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明51の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明51と同様に、甲2発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(13)本件特許発明58について
本件特許発明58と甲2発明3を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中で炭素ナノ構造体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成することを含み、
前記プレブレンドが、前記炭素ナノ構造体のシェルで被覆された前記固体粒子のコアを含むコア-シェル材料を含む方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-9>
本件特許発明58においては、「有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成」し、この「分散体」を「微粒子固体」とブレンディングしてブレンドを形成すると特定されているのに対し、甲2発明3においては、そのようには特定されていない点。

<相違点2-g>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明58においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲2発明3においては、「コア粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点2-gから検討する。
相違点2-gは、相違点2-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明58は甲2発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(14)本件特許発明59について
本件特許発明59は、請求項58を引用するものであり、本件特許発明58の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明58と同様に、甲2発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(15)まとめ
したがって、本件特許発明1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59は、特許法第29条の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に係る特許は、取消理由2によっては取り消すことはできない。

4 取消理由3(甲3を主引用文献とする新規性進歩性)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明1を対比する。
甲3発明1における「ペイント、被覆又は接着剤」において、ポリマーの混合が必要であることは技術常識であることに鑑みると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる方法であって:
前記炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること;
通常の配合プロセスにおいてポリマーに添加するのに適した炭素ナノ構造体と微粒子とのプレブレンドを形成すること
を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含む方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明1においては、「ブレンド」を「乾燥」させているのに対し、甲3発明1においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3-a>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明1においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲3発明1においては、「重合体粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点3-aから検討する。
甲3発明1における「重合体粒子」は、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」ではないから、相違点3aは実質的な相違点である。
そして、甲3には、「重合体粒子」を「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」とする動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもそのような記載はないから、甲3発明1において、相違点3-aに係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3発明1であるとはいえないし、甲3発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件特許発明2、4、5及び8について
本件特許発明2、4、5及び8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲3発明1であるとはいえないし、甲3発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明17について
本件特許発明17と甲3発明2を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含むプレブレンド組成物。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-b>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明17においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲3発明2においては、「重合体粒子」と特定されている点。

そこで、相違点3-bについて検討する。
相違点3-bは、相違点3-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、本件特許発明17は甲3発明2であるとはいえないし、甲3発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)本件特許発明18、22、23及び25について
本件特許発明18、22、23及び25は、請求項17を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明17の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明17と同様に、甲3発明2であるとはいえないし、甲3発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)本件特許発明28について
本件特許発明28と甲3発明2を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-2>
本件特許発明28においては、「プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含む」と特定されているのに対し、甲3発明2においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3-c>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明28においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲3発明2においては、「重合体粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点3-cから検討する。
相違点3-cは、相違点3-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明28は甲3発明2であるとはいえないし、甲3発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(6)本件特許発明29及び31ないし33について
本件特許発明29及び31ないし33は、請求項28を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明28の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明28と同様に、甲3発明2であるとはいえないし、甲3発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(7)本件特許発明34について
本件特許発明34と甲3発明3を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含む製造方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-3>
本件特許発明34においては、「ブレンド」を「乾燥」させると特定されているのに対し、甲3発明3においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3-d>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明34においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲3発明3においては、「重合体粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点3-dから検討する。
相違点3-dは、相違点3-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明34は甲3発明3であるとはいえないし、甲3発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(8)本件特許発明35、39、40及び42について
本件特許発明35、39、40及び42は、請求項34を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明34の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明34と同様に、甲3発明3であるとはいえないし、甲3発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(9)本件特許発明45について
本件特許発明45と甲3発明3を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、
を含む製造方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-4>
本件特許発明45においては、「ブレンド」を「乾燥」させると特定されているのに対し、甲3発明3においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3-5>
本件特許発明45においては、「プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含む」と特定されているのに対し、甲3発明3においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3-e>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明45においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲1発明3においては、「重合体粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点3-eから検討する。
相違点3-eは、相違点3-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明45は甲3発明3であるとはいえないし、甲3発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(10)本件特許発明46及び48ないし50について
本件特許発明46及び48ないし50は、請求項45を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明45の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明45と同様に、甲3発明3であるとはいえないし、甲3発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(11)本件特許発明51について
本件特許発明51と甲3発明3を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成すること;
前記分散体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成すること
を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含む方法」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-f>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明51においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲3発明3においては、「重合体粒子」と特定されている点。

そこで、相違点3-fについて検討する。
相違点3-fは、相違点3-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明51は甲3発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(12)本件特許発明52ないし55及び57について
本件特許発明52ないし55及び57は、請求項51を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明51の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明51と同様に、甲3発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(13)本件特許発明58について
本件特許発明58と甲3発明3を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成すること;
前記分散体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成すること
を含む方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-6>
本件特許発明58においては、「プレブレンドが、前記炭素ナノ構造体のシェルで被覆された前記固体粒子のコアを含むコア-シェル材料を含む」と特定されているのに対し、甲3発明3においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3-g>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明58においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲3発明3においては、「重合体粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点3-gから検討する。
相違点3-gは、相違点3-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明58は甲3発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(14)本件特許発明59について
本件特許発明59は、請求項58を引用するものであり、本件特許発明58の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明58と同様に、甲3発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(15)まとめ
したがって、本件特許発明1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55及び57ないし59は、特許法第29条の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55及び57ないし59に係る特許は、取消理由3によっては取り消すことができない。

5 取消理由4(甲4を主引用文献とする新規性進歩性)について
(1)本件特許発明17について
本件特許発明17と甲4発明1を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含み、
前記炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブを含むプレブレンド組成物。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点4-1>
「炭素ナノ構造体」に関して、本件特許発明17においては、「単層カーボンナノチューブ」と特定されているのに対し、甲4発明1においては、「カーボンナノチューブ」と特定されている点。

<相違点4-a>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明17においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲4発明1においては、「樹脂材料粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点4-aから検討する。
甲4発明1における「樹脂材料粒子」は、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」ではないから、相違点4-aは実質的な相違点である。
そして、甲4には、「樹脂材料粒子」を「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」とする動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもそのような記載はないから、甲4発明1において、相違点4-aに係る本件特許発明17の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明17は甲4発明1であるとはいえないし、甲4発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件特許発明18、22、23及び25について
本件特許発明18、22、23及び25は、請求項17を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明17の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明17と同様に、甲4発明1であるとはいえないし、甲4発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明28について
本件特許発明28と甲4発明1を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点4-2>
本件特許発明28においては、「プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含む」と特定されているのに対し、甲4発明1においては、そのようには特定されていない点。

<相違点4-b>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明28においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲4発明1においては、「樹脂材料粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点4-bから検討する。
相違点4-bは、相違点4-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明28は甲4発明1であるとはいえないし、甲4発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)本件特許発明29及び31ないし33について
本件特許発明29及び31ないし33は、請求項28を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明28の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明28と同様に、甲4発明1であるとはいえないし、甲4発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)本件特許発明34について
本件特許発明34と甲4発明2を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させることを含む製造方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点4-3>
「炭素ナノ構造体」に関して、本件特許発明34においては、「単層カーボンナノチューブ」と特定されているのに対し、甲4発明2においては、「カーボンナノチューブ」と特定されている点。

<相違点4-c>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明34においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲4発明2においては、「樹脂材料粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点4-cから検討する。
相違点4-cは、相違点4-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明34は甲4発明2であるとはいえないし、甲4発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(6)本件特許発明35、39、40及び42について
本件特許発明35、39、40及び42は、請求項34を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明34の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明34と同様に、甲4発明2であるとはいえないし、甲4発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(7)本件特許発明45について
本件特許発明45と甲4発明2を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させることを含む製造方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点4-4>
本件特許発明45においては、「プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含む」と特定されているのに対し、甲4発明2においては、そのようには特定されていない点。

<相違点4-d>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明45においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲4発明2においては、「樹脂材料粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点4-dから検討する。
相違点4-dは、相違点4-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明45は甲4発明2であるとはいえないし、甲4発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(8)本件特許発明46及び48ないし50について
本件特許発明46及び48ないし50は、請求項45を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明45の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明45と同様に、甲4発明2であるとはいえないし、甲4発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(9)本件特許発明51について
本件特許発明51と甲4発明2を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成すること;
前記分散体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成すること
を含む方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点4-5>
「炭素ナノ構造体」に関して、本件特許発明51においては、「単層カーボンナノチューブ」と特定されているのに対し、甲4発明2においては、「カーボンナノチューブ」と特定されている点。

<相違点4-e>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明51においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲4発明2においては、「樹脂材料粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点4-eから検討する。
相違点4-eは、相違点4-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明51は甲4発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(10)本件特許発明52ないし55及び57について
本件特許発明52ないし55及び57は、請求項51を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明51の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明51と同様に、甲4発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(11)本件特許発明58について
本件特許発明58と甲4発明2を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成すること;
前記分散体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成すること
を含む方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点4-6>
本件特許発明58においては、「プレブレンドが、前記炭素ナノ構造体のシェルで被覆された前記固体粒子のコアを含むコア-シェル材料を含む」と特定されているのに対し、甲4発明2においては、そのようには特定されていない点。

<相違点4-g>
「微粒子固体」に関して、本件特許発明58においては、「カーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素」又は「カーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせ」と特定されているのに対し、甲1発明3においては、「樹脂材料粒子」と特定されている点。

そこで、事案に鑑み相違点4-gから検討する。
相違点4-gは、相違点4-aと同じであるから、その判断も同じである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明58は甲4発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(12)本件特許発明59について
本件特許発明59は、請求項58を引用するものであり、本件特許発明58の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明58と同様に、甲4発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(13)まとめ
したがって、本件特許発明17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55及び57ないし59は、特許法第29条の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46、48ないし55及び57ないし59に係る特許は、取消理由4によっては取り消すことはできない。

6 取消理由5(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)本件特許の発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には、おおむね次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。

・「【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ポリマー中に炭素ナノ構造体、例えば、ナノチューブなどを分散させて、例えば、エラストマー組成物を製造する方法、当該エラストマー組成物のための炭素ナノ構造体プレブレンドを形成する方法、及び得られたプレブレンド及び組成物の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(「CNT」)は繊維の絡合した束として生成されるので、それをポリマー中に分散させることはそれを補強用添加剤として用いる際の重要な段階である。カーボンナノチューブが分散されたポリマーを得るために多くのアプローチが用いられてきた。これらの方法には、熱可塑性樹脂中へのCNTの溶融ブレンディング、CNTの存在における重合、高剪断混合、CNTの化学修飾、及び界面活性剤の使用がある。
【0003】
ゴム又は弾性ポリマー中へのカーボンナノチューブの混合に関して、大部分のエラストマー又はゴムが有しているような高い粘度を持ったマトリクス材料中にCNTを分散させることは極めて難しい。熱を加えることは、プラスチック中に溶融ブレンディングする際の加熱のように有意に充分にはポリマーの粘度を下げない。必要なことはゴム中でのCNTの分散性を改善する方法である。
【0004】
米国特許公報第7,785,701B2号明細書は、エラストマーがカーボンナノファイバーに対する親和性を持つ不飽和結合又は基を有する、エラストマー及びエラストマー中に分散されたカーボンナノファイバーを含有する炭素繊維複合材料を開示している。エラストマーのナノファイバーに対する親和性が高い場合、分散は、例えば、開放形ロール機における、混合の剪断力によって容易であると報告されている。分散は、EPDMなどの非極性エラストマーについてそのように容易ではないと報告されている。結果として得られるロール機混合された組成物は、ナノファイバーを有しない組成物と比べて、モジュラス及び強度の増加を示すが、多くの補強充填剤に特有であるように伸びの減少を示す。
【0005】
欧州特許公報第2,138,535B1号明細書は、特有の水素化カルボキシル化ニトリルゴム(HXNBR)、架橋剤及びカーボンナノチューブを含有する加硫可能な組成物並びにかかる組成物の製造方法を開示している。そこには、溶媒混合、溶融混合及び噴霧乾燥法が一部のゴム/CNT複合材料を製造するための加工方法として用いられてきたと報告されている。HXNBR中の多層(multi-wall)カーボンナノチューブ(「MWCNT」)の例は密閉式ミキサー及び二本ロール機で通常に混合された。得られた組成物はモジュラス及び強度の増加を示したが本質的には同じ伸びを示した。
【0006】
2014年4月2日に出願の、Method for Rubber Reinforced With Carbon Nanotubesと題された、本出願人の同時係属の米国特許出願第14/243,634号を参照されたい。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、炭素ナノ構造体を含有するプレブレンド組成物の形成を通じてエラストマー中に炭素ナノ構造体、例えば、ナノチューブなどを分散させる改良方法及び得られたエラストマー組成物及びそれから製造された製品に関する。」

・「【0008】
溶媒中にCNT又は他の炭素ナノ構造化材料を懸濁又は溶解し、カーボンブラックなどの担体粒子とブレンディングした後に乾燥させることによって、担体粒子とその周囲にCNTを分散させることができ、又はCNTネットワークの全体にわたって担体粒子を分散させることができる。かかるプレブレンドはCNTがゴム、とりわけ、エチレン-α-オレフィンエラストマーなどの非極性エラストマー中に分散するのに役立つことが見出された。結果として、モジュラス、伸び及び引裂強さの改善が実現されることができる。CNTが破断点伸び及び引裂強さの特性を同時に増加させながらモジュラスを増加させることができるという事実は新規かつ好都合な結果であると考えられる。担体微粒子固体としてのカーボンブラックの使用は既存のゴム加工に容易に組み込まれることができ費用効果を高めることができる。」

・「【0010】
本発明の方法は、溶媒中にCNT及びカーボンブラックなどの担体粒子の両方を懸濁又は溶解し、混合しそして最終的にそれを乾燥させることを含んでいることができる。本発明の方法は、プレブレンドを形成するための独創的なCNT被覆粒子又は他の炭素ナノ構造化材料で被覆された粒子をもたらすことができる。」

・「【0012】
CNT/カーボンブラックのプレブレンドは、エチレン-α-オレフィンゴム組成物中の単層(single-wall)カーボンナノチューブ(「SWCNT」)のとりわけ改善された分散体を与えて、SWCNTから改善された補強をもたらすことができる。」

・「【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る方法及びエラストマー組成物は、CNTなどの炭素ナノ構造体とカーボンブラックなどの微粒子固体とのプレブレンドの形成方法及びさらにエラストマー中でのプレブレンドの分散方法を含む。炭素ナノ構造体は、少なくとも1つの寸法が1ナノメートル未満から数ナノメートルのオーダーにある炭素系材料である。炭素ナノ構造体として、構造化されたナノカーボン、例えば、単層の、二層の、数層の又は多層のカーボンナノチューブ、グラフェン、数層のグラフェン、グラフェン酸化物、フラーレン(fullerenic)及び構造化された炭素及びそれらの化学的誘導体の形態を挙げることができるがそれらに限定されるものではない。炭素ナノ構造体は、C_(60)、C_(70)、C_(84)等などのフラーレン分子、及びフラーレンケージの内外に別の原子1種若しくは複数種又は1若しくは2以上の官能基を含有するフラーレン分子を含む。他の炭素ナノ構造体は実質的なフラーレン特性を有する湾曲した炭素シート又は層で構成された炭素の回転楕円体又は小球体を含む。フラーレン特性は、五員炭素環が六員環および場合により七員環の間に存在して炭素の湾曲シートを生じることによって示される。炭素ナノ構造体の化学的誘導体は、上記の炭素系材料が、例えば、付加反応によって官能化された、すなわち、付加された基を有する任意のものを含む。また、炭素ナノ構造体は、上記の構造化されたいずれかのナノカーボンの構造化された断片を含む。プレブレンドは別の混合工程、例えば、ゴム組成物混合工程よりも前に製造される材料の混合物である。それゆえに、プレブレンドは他の望ましい成分と一緒にエラストマー中に混合されて、有用なエラストマー製品を成形するのに適したエラストマー組成物を形成する。図1は、本発明の実施形態に係る方法のフローチャートを示す。プレブレンドは「プレ分散体」又は単に「ブレンド」と称されることもある。」

・「【0035】
図1において、方法100はブレンディング112、混合120、及び製品の製造124の各段階を含む。ブレンディング段階112はインプットとしてカーボンブラックなどの担体粒子102、カーボンナノチューブ104、キャリア液体媒体(carrier liquid medium)106及び場合により他の添加剤105を含む。湿式ブレンディング112段階は添加及び/又は混合の種々の順序を含んでいることができる。一つの好ましい実施形態において、最初にCNT104が液体媒体106中に分散され、次いで微粒子固体102が添加される。別の実施形態においては、CNT104及び微粒子固体106がそれぞれ別々の液体媒体106中に分散され、次いでこの2つの分散体が合せられる。湿式ブレンディング112の後に乾燥118が続く。ブレンディング段階及び乾燥段階の後、得られたCNTプレブレンド119は望ましいポリマー又はゴム成分122と一緒に混合段階120に導入されて製品124を製造するのに適したゴム配合物を得ることができる。混合段階120は場合により複数の混合プロセス段階及び/又は複数の成分添加を含んでいることができる。他の実施形態において、図1中のCNTは、上記に定義された何れかの炭素ナノ構造体又はそれらの混合物によって置き換えられることができる。」

・「【0036】
カーボンナノチューブ(CNT)は繊維を横切る小さな寸法及びかなり大きなL/D比を有する極めて強い分子繊維である。・・・(略)・・・本発明の方法及び組成物において単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブのいずれも用いられることができるが、単層カーボンナノチューブが好ましい。
【0037】
カーボンナノチューブプレブレンドはカーボンナノチューブ及びカーボンブラックなどの微粒子固体を含む。とりわけ有用な微粒子固体はポリマー又はエラストマー組成物において補強充填剤又は非補強充填剤として一般的に用いられているものであり、例えば、シリカ、カーボンブラック、クレー、白亜、種々の金属酸化物及び水酸化物などを挙げることができる。カーボンブラックはゴムにおけるその広範な使用及びカーボンナノチューブとの化学的相溶性の理由によって好ましい。本発明の方法に用いるのに適したカーボンブラックの種類としてASTM D1765に特定されたものを挙げることができる。以下の記載から理解されるように、2つの適切な例としてN550及びN220を挙げることができる。
【0038】
プレブレンド中のCNTの量は、プレブレンドの重量を基準にして1重量%、又は5重量%、又は7重量%から約50重量%まで、又は30重量%まで、又は20重量%までであることができる。・・・(略)・・・CNTは本明細書に記載の方法に従ってカーボンブラックと容易にブレンドされることができ、そしてCNT/カーボンブラックのプレブレンドはEPDMなどのエチレン-α-オレフィンエラストマーと大変に相溶性がある。」

・「【0039】
用語「キャリア液体」又は「液体媒体」とはカーボンナノチューブが溶解され、分散され又は懸濁されることができる液体をいう。キャリア液体は蒸発又は乾燥によって除去されて、カーボンブラックを被覆した又はカーボンブラックと混和されたナノチューブを残すことができる。」

・「【0040】
用語ポリマーは熱可塑性材料、エラストマー材料及び熱硬化性高分子材料を含む。」

・「【0041】
CNT/カーボンブラックプレブレンドの製造方法は適当な液体中でそれらを湿式混合することである。」

・「【0042】
プレブレンド形態のプレブレンディングされた炭素ナノ構造体は、ポリマー、ゴム及びエラストマーを配合する公知の方法に従ってポリマー組成物又はエラストマー組成物に添加されることができる。例えば、ゴム及びその種々の成分は密閉式バッチミキサー、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、二本ロール機などを用いてプレブレンドと配合されることができる。前記種々の成分は何段階かで、又は全てを一回で添加されることができる。好ましくは、配合物はバッチミキサーによる場合、複数回に分けて混合される。」

・「【0043】
例えば、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、黒鉛質炭素粒子及び又はガラス状炭素粒子、を含むプレブレンディングされた炭素ナノ構造体は、エラストマー又は他のポリマーにおけるかかるプレブレンドの練込みの他に多くの他の用途にも用いられることができる。かかる広げられた用途として、特に、電池電極、とりわけ、リチウム電池電極、電池電解質組成物、及びスーパーキャパシタにおけるプレブレンドの使用を挙げることができる。」

・「【実施例】
【0050】
【0051】
最初の実施例において、N550カーボンブラック及びSWCNTを含むプレブレンドが調製されて、CNTのプレブレンドがその後EPDMエラストマー組成物中でのCNTの分散に役立つかを評価する。・・・(略)・・・
【0052】
単層カーボンナノチューブとN550カーボンブラックとの最初のサンプルブレンドはSWCNT含量7.18重量%、又はカーボンブラック対CNT比13:1を有していた。このブレンドは最初にエタノール中でSWCNT(エタノール35mL中SWCNT1g)を混合して超音波処理を15分間行うことにより調製された。同様に、カーボンブラックはエタノール中に約30g/Lで分散され、IKA T25分散剤(IKAワークス社(IKA Works Inc.)によってIKA商標の下に販売)と混合された。次いで、CNT溶液は適切量のカーボンブラック溶液に添加され、IKA T25分散剤とさらに15分間混合された。次いで、ろ過によって溶媒が除去されそしてカーボンプレブレンド材料が単離され60℃で一晩乾燥された。次いで、この材料は得られた生成物の均質の程度及び同一性を評価して特徴づけされた。
・・・(略)・・・
【0054】
黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素からなる他の炭素系粒子は、カーボンブラックに代えて又はカーボンブラックに加えて、担体粒子固体又はその混合物として用いられることができる。担体の粒子形状は規則的又は不規則的であることができる。
【0055】
他のフラーレン又はナノ構造化された炭素材料、例えば、官能化された又はされていない、回転楕円体状フラーレン(C_(60)、C_(70)、・・・、C_(84)、・・・)、グラフェンなどはカーボンナノチューブの代わりに用いられることができる。
・・・(略)・・・
【0059】
プレブレンディングされた材料の1つの最終分析はブレンドの抵抗率の測定であった。バルク材料の抵抗率が調べられ、プレブレンドは、プレブレンド中のナノチューブが低レベルであるにもかかわらず、純粋なナノチューブ自体とほぼ同程度の導電性であった。この意外な結果は、ナノチューブネットワークが当該ネットワークを壊すことなく散在したより大きなカーボンブラック粒子によって広げられることができることを示している。」

・「【0073】
表2に示された第二シリーズの実施例において、第一の実施例と同じSWCNTが用いられた。しかしながら、この実施例では、異なる液体媒体が用いられ、異なる比率の2つのプレブレンドを調製した。CNTとカーボンブラックとのこれらのプレブレンドは有機液体としてo-ジクロロベンゼンを用いて調製された。ブレンドは、最初に溶媒1リットル当たりSWCNT約30gの濃度でo-ジクロロベンゼン中でSWCNTをIKA T25ミキサーで15分間混合することにより準備された。次いで、カーボンブラックが、溶媒1リットル当たり約20?30gの濃度でo-ジクロロベンゼン中で25分間混合された。最後に、2つの混合物の適当量が合せられ、そしてIKA T25ミキサーで約1時間攪拌された。次いで、ろ過によって溶媒が除去され、残った湿潤ブレンドが真空下に70℃で48時間乾燥された。・・・(略)・・・
【0074】
図3A?図3D及び図8?図11のSEM画像の検査と一致して、o-ジクロロベンゼンの使用は湿式ブレンド法においてエタノールの使用より良好な最終結果を提供すると思われる。・・・(略)・・・
【0076】
実施例の配合物についての10%モジュラスにおける有意な改善と同時の破断点伸びの増加は文献に見られる傾向と逆行するということに注目されたい。例えば、10%モジュラスにおいて約20%の増加を示す実施例6及び実施例7は、破断点伸びにおける60%の増加を伴っていた。CB/SWCNTコンビネーションは引裂強さ、デマチア試験での切傷生長速度及び耐疲労性における改善も示した。モジュラスと伸びの同時の改善はエラストマー組成物中のCNTの改善された分散によるものと考えられるが、これを数値化するのは大変に難しい。従って、本発明は、CNTを有しない同じ組成物と比較してモジュラス(例えば、10%モジュラス)及び破断点伸びにおける同時の増加によって特徴づけられることができる。好ましくは、一つの又は両方の特性における増加は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも50%の範囲である。」

・「【0078】
このように、エラストマー中にカーボンブラック/CNTプレブレンドを用いてCNTを分散させる本発明の方法は従来技術の方法と比べ改善された分散をもたらし、得られるエラストマー組成物においてモジュラスと伸びとを同時に増加させる。本発明のエラストマー組成物は種々のゴム製品、例えば、ベルト、ホース、制振部品、タイヤ、シート製品などを製造するのに使用されることができる。」

(3)サポート要件についての判断
ア 本件特許発明1、2、4、5及び8について
本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0007】によると、本件特許発明1、2、4、5及び8の発明の課題(以下、「発明の課題1」という。)は、「ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる改良方法」を提供することである。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の記載、特に【0034】の「炭素ナノ構造体として、構造化されたナノカーボン、例えば、単層の、二層の、数層の又は多層のカーボンナノチューブ、グラフェン、数層のグラフェン、グラフェン酸化物、フラーレン(fullerenic)及び構造化された炭素及びそれらの化学的誘導体の形態を挙げることができるがそれらに限定されるものではない。」、【0035】の「他の実施形態において、図1中のCNTは、上記に定義された何れかの炭素ナノ構造体又はそれらの混合物によって置き換えられることができる。」という記載、【0037】の「カーボンブラックはゴムにおけるその広範な使用及びカーボンナノチューブとの化学的相溶性の理由によって好ましい。」という記載、【0038】の「CNTは本明細書に記載の方法に従ってカーボンブラックと容易にブレンドされることができ、そしてCNT/カーボンブラックのプレブレンドはEPDMなどのエチレン-α-オレフィンエラストマーと大変に相溶性がある。」という記載、【0043】の「カーボンナノチューブ、カーボンブラック、黒鉛質炭素粒子及び又はガラス状炭素粒子、を含むプレブレンディングされた炭素ナノ構造体は、エラストマー又は他のポリマーにおけるかかるプレブレンドの練込みの他に多くの他の用途にも用いられることができる。」という記載、【0051】ないし【0059】の第一の実施例に関する記載、【0073】ないし【0076】の第二の実施例に関する記載及び【0078】の「このように、エラストマー中にカーボンブラック/CNTプレブレンドを用いてCNTを分散させる本発明の方法は従来技術の方法と比べ改善された分散をもたらし、得られるエラストマー組成物においてモジュラスと伸びとを同時に増加させる。」という記載から、当業者は、炭素ナノ構造体を用い、微粒子固体としてカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせを用いて有機液体中で湿式混合してブレンドを形成し、該プレブレンドを乾燥してブレンドを形成した場合には、発明の課題1を解決できると認識する。
したがって、本件特許発明1、2、4、5及び8に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

イ 本件特許発明17、18、22及び23について
本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0007】によると、本件特許発明17、18、22及び23の発明の課題(以下、「発明の課題2」という。)は、「ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる改良方法」のための「プレブレンド組成物」を提供することである。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の記載、特に【0034】、【0035】、【0037】、【0038】、【0043】、【0051】ないし【0059】、【0073】ないし【0076】及び【0078】から、当業者は、炭素ナノ構造体を用い、微粒子固体としてカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせを用いて有機液体中で湿式混合して形成したプレブレンド組成物は、発明の課題2を解決できると認識する。
したがって、本件特許発明17、18、22及び23に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

ウ 本件特許発明28、29及び31ないし33について
本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0007】によると、本件特許発明28、29及び31ないし33の発明の課題(以下、「発明の課題3」という。)は、「ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる改良方法」のための「プレブレンド組成物」を提供することである。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の記載、特に【0034】、【0035】、【0037】、【0038】、【0043】、【0051】ないし【0059】、【0073】ないし【0076】及び【0078】から、当業者は、炭素ナノ構造体を用い、微粒子固体としてカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせを用いて有機液体中で湿式混合して形成したプレブレンド組成物は、発明の課題3を解決できると認識する。
したがって、本件特許発明28、29及び31ないし33に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

エ 本件特許発明34、35、39、40及び42について
本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0007】によると、本件特許発明34、35、39、40及び42の発明の課題(以下、「発明の課題4」という。)は、「ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる改良方法」のための「プレブレンド組成物を製造する方法」を提供することである。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の記載、特に【0034】、【0035】、【0037】、【0038】、【0043】、【0051】ないし【0059】、【0073】ないし【0076】及び【0078】から、当業者は、炭素ナノ構造体を用い、微粒子固体としてカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせを用いて有機液体中で湿式混合してプレブレンド組成物を製造する方法は、発明の課題4を解決できると認識する。
したがって、本件特許発明34、35、39、40及び42に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

オ 本件特許発明45、46及び48ないし50について
本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0007】によると、本件特許発明45、46及び48ないし50の発明の課題(以下、「発明の課題5」という。)は、「ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる改良方法」のための「プレブレンド組成物を製造する方法」を提供することである。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の記載、特に【0034】、【0035】、【0037】、【0038】、【0043】、【0051】ないし【0059】、【0073】ないし【0076】及び【0078】から、当業者は、炭素ナノ構造体を用い、微粒子固体としてカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせを用いて有機液体中で湿式混合してプレブレンド組成物を製造する方法は、発明の課題5を解決できると認識する。
したがって、本件特許発明45、46及び48ないし50に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

カ 本件特許発明51ないし57について
本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0007】によると、本件特許発明51ないし57の発明の課題(以下、「発明の課題6」という。)は、「ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる改良方法」のための「ブレンドを形成する方法」を提供することである。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の記載、特に【0034】、【0035】、【0037】、【0038】、【0043】、【0051】ないし【0059】、【0073】ないし【0076】及び【0078】から、当業者は、炭素ナノ構造体を用い、微粒子固体としてカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせを用いて有機液体中でブレンディングしてブレンドを形成する方法は、発明の課題6を解決できると認識する。
したがって、本件特許発明51ないし57に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

キ 本件特許発明58及び59について
本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0007】によると、本件特許発明58及び59の発明の課題(以下、「発明の課題7」という。)は、「ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる改良方法」のための「ブレンドを形成する方法」を提供することである。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の記載、特に【0034】、【0035】、【0037】、【0038】、【0043】、【0051】ないし【0059】、【0073】ないし【0076】及び【0078】から、当業者は、炭素ナノ構造体を用い、微粒子固体としてカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせを用いて有機液体中でブレンディングしてブレンドを形成する方法は、発明の課題7を解決できると認識する。
したがって、本件特許発明58及び59に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

(4)まとめ
したがって、本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるといえないので、取消理由5によっては取り消すことはできない。

第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由1(甲1に基づく新規性)のうち本件特許の請求項51ないし55、58及び59に対する理由、申立理由3(甲2に基づく新規性)のうち本件特許の請求項51ないし59に対する理由、申立理由7(甲4に基づく新規性)及び申立理由8(甲4を主引用文献とする進歩性)のうち本件特許の請求項1、2、4、5及び8に対する理由、申立理由9(明確性要件)並びに申立理由10(実施可能要件)である。
そこで、これらの理由について検討する。

1 申立理由1(甲1に基づく新規性)のうち本件特許の請求項51ないし55、58及び59に対する理由について
(1)本件特許発明51について
本件特許発明51と甲1発明3を対比するに、両者の一致点及び相違点は上記第5 2(11)のとおりである。
そして、相違点1-6、1-7及び1-fはいずれも実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明51は甲1発明3であるとはいえない。

(2)本件特許発明52ないし55について
本件特許発明52ないし55は、請求項51を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明51の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明51と同様に、甲1発明3であるとはいえない。

(3)本件特許発明58について
本件特許発明58と甲1発明3を対比するに、両者の一致点及び相違点は上記第5 2(13)のとおりである。
そして、相違点1-8、1-9及び1-gはいずれも実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明58は甲1発明3であるとはいえない。

(4)本件特許発明59について
本件特許発明59は、請求項58を引用するものであり、本件特許発明58の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明58と同様に、甲1発明3であるとはいえない。

(5)まとめ
したがって、本件特許発明51ないし55、58及び59は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項51ないし55、58及び59に係る特許は、申立理由1のうち本件特許の請求項51ないし55、58及び59に対する理由によっては取り消すことはできない。

2 申立理由3(甲2に基づく新規性)のうち本件特許の請求項51ないし59に対する理由について
(1)本件特許発明51について
本件特許発明51と甲2発明3を対比するに、両者の一致点及び相違点は上記第5 3(11)のとおりである。
そして、相違点2-7、2-8及び2-fはいずれも実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明51は甲2発明3であるとはいえない。

(2)本件特許発明52ないし57について
本件特許発明52ないし57は、請求項51を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明51の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明51と同様に、甲2発明3であるとはいえない。

(3)本件特許発明58について
本件特許発明58と甲2発明3を対比するに、両者の一致点及び相違点は上記第5 3(13)のとおりである。
そして、相違点2-9及び2-gはいずれも実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明58は甲2発明3であるとはいえない。

(4)本件特許発明59について
本件特許発明59は、請求項58を引用するものであり、本件特許発明58の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明58と同様に、甲2発明3であるとはいえない。

(5)まとめ
したがって、本件特許発明51ないし59は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項51ないし59に係る特許は、申立理由3のうち本件特許の請求項51ないし59に対する理由によっては取り消すことはできない。

3 申立理由7(甲4に基づく新規性)及び申立理由8(甲4を主引用文献とする進歩性)のうち本件特許の請求項1、2、4、5及び8に対する理由について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明2を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること;
前記ブレンドを乾燥させて、炭素ナノ構造体と微粒子とのプレブレンドを形成すること
を含む方法。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点4-α>
本件特許発明1においては、「ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる」ことを前提とした方法であるのに対し、甲4発明2においては、そのようには特定されていない点。

<相違点4-β>
「炭素ナノ構造体と微粒子とのプレブレンドを形成すること」に関して、本件特許発明1においては、「通常の配合プロセスにおいてポリマーに添加するのに適した」ようにするものであるのに対し、甲4発明2においては、そのようには特定されていない点。

<相違点4-γ>
本件特許発明1においては、「前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである」と特定されているのに対し、甲4発明2においては、そのようには特定されていない点。

そこで、検討するに、相違点4-αないし4-γはいずれも実質的な相違点である。
そして、甲4には、相違点4-αないし4-γのいずれの相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項についても、それを採用する動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもそのような記載はない。
したがって、本件特許発明1は甲4発明2であるとはいえないし、甲4発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件特許発明2、4、5及び8について
本件特許発明2、4、5及び8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲4発明2であるとはいえないし、甲4発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)まとめ
したがって、本件特許発明1、2、4、5及び8は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、2、4、5及び8に係る特許は、申立理由7及び8のうち本件特許の請求項1、2、4、5及び8に対する理由によっては取り消すことはできない。

4 申立理由9(明確性要件)について
(1)判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。

(2)判断
本件特許の請求項1に記載された「添加するのに適した」が、単に添加できればよいことを意味することは明らかであり、同じく請求項1に記載された「通常の配合プロセス」が、当業者が配合プロセスとして一般に認識する配合プロセスであることは明らかである。
また、本件特許の請求項1、17、18、34及び45に記載された「プレブレンド」が、ポリマー中に添加される前の「ブレンド」、すなわちポリマー中に添加される前の混合であることは明らかであるし、同じく請求項51及び58に記載された「ブレンディング」が、「ブレンド」を形成するための「ブレンディング」であることは、本件特許明細書の記載から明らかである。
なお、本件特許の請求項1、17、18、34、45、51及び58には、特許異議申立人が主張するような「プレブレンディング」という記載はない。
さらに、本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59には他に不明確な記載はない。
したがって、本件特許発明1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。

(3)まとめ
したがって、本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由9によっては、取り消すことはできない。

5 申立理由10(実施可能要件)について
(1)判断基準
本件特許発明1、2、4、5及び8は何れもポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる方法という方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明17、18、22、23、25、28、29及び31ないし33は何れもプレブレンド組成物という物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用をすることができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明34、35、39、40、42、45、46及び48ないし50は何れもプレブレンド組成物を製造する方法という物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、その方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明51ないし59は何れも有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成し、分散体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成することを含む方法という物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、その方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。

(2)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明の記載は、上記第5 6(2)のとおりである。

(3)実施可能要件の判断
ア 本件特許発明1、2、4、5及び8について
本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明1、2、4、5及び8の各発明特定事項についての具体的な記載があり、特に【0051】ないし【0059】及び【0073】ないし【0076】には、実施例3、6、7及び10として、ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる方法が具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1、2、4、5及び8に係る方法の使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1、2、4、5及び8に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。

イ 本件特許発明17、18、22、23、25、28、29及び31ないし33について
本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明17、18、22、23、25、28、29及び31ないし33の各発明特定事項についての具体的な記載があり、特に【0051】ないし【0059】及び【0073】ないし【0076】には、実施例3、6、7及び10として、プレブレンド組成物の製造方法及び得られたプレブレンド組成物が具体的に記載され、【0078】には、得られたプレブレンド組成物を使用したポリマー組成物の用途が具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明17、18、22、23、25、28、29及び31ないし33に係る物を生産し、使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明17、18、22、23、25、28、29及び31ないし33に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。

ウ 本件特許発明34、35、39、40、42、45、46及び48ないし50について
本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明34、35、39、40、42、45、46及び48ないし50の各発明特定事項についての具体的な記載があり、特に【0051】ないし【0059】及び【0073】ないし【0076】には、実施例3、6、7及び10として、プレブレンド組成物の製造方法及び得られたプレブレンド組成物が具体的に記載され、【0078】には、得られたプレブレンド組成物を使用したポリマー組成物の用途が具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明34、35、39、40、42、45、46及び48ないし50に係る物を生産する方法の使用をし、その方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明34、35、39、40、42、45、46及び48ないし50に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。

エ 本件特許発明51ないし59について
本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明51ないし59の各発明特定事項についての具体的な記載があり、特に【0051】ないし【0059】及び【0073】ないし【0076】には、実施例3、6、7及び10として、有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成し、分散体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成することを含む方法及び得られたブレンドが具体的に記載され、【0078】には、得られたブレンドを使用したポリマー組成物の用途が具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明51ないし59に係る物を生産する方法の使用をし、その方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明51ないし59に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。

(4)まとめ
したがって、本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由10によっては、取り消すことはできない。

第7 結語
上記第5及び6のとおり、本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、2、4、5、8、17、18、22、23、25、28、29、31ないし35、39、40、42、45、46及び48ないし59に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる方法であって:
前記炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること;
前記ブレンドを乾燥させて、通常の配合プロセスにおいてポリマーに添加するのに適した炭素ナノ構造体と微粒子とのプレブレンドを形成すること
を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである方法。
【請求項2】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる方法であって:
前記炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること;
前記ブレンドを乾燥させて、通常の配合プロセスにおいてポリマーに添加するのに適した炭素ナノ構造体と微粒子とのプレブレンドを形成すること
を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記微粒子固体がカーボンブラックである、方法。
【請求項4】
前記プレブレンドがカーボンナノチューブ(「CNT」)のネットワークと混和された微粒子固体の粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プレブレンドをポリマー組成物中に混合することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる方法であって:
前記炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること;
前記ブレンドを乾燥させて、通常の配合プロセスにおいてポリマーに添加するのに適した炭素ナノ構造体と微粒子とのプレブレンドを形成すること
を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記プレブレンドをポリマー組成物中に混合することをさらに含み、
前記ポリマー組成物中の主ポリマーがエチレン-α-オレフィンエラストマーである、方法。
【請求項7】
前記エチレン-α-オレフィンエラストマーのα-オレフィンがプロピレン、ブチレン又はオクテンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー組成物を含むゴム製品を製造することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる方法であって:
前記炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること;
前記ブレンドを乾燥させて、通常の配合プロセスにおいてポリマーに添加するのに適した炭素ナノ構造体と微粒子とのプレブレンドを形成すること
を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記プレブレンドをポリマー組成物中に混合することをさらに含み、
前記ポリマー組成物を含むゴム製品を製造することをさらに含み、
前記ゴム製品がベルト、ホース、タイヤ、又は制振部品である、方法。
【請求項10】
エラストマー中にカーボンナノチューブ(「CNT」)を分散させる方法であって:
有機液体中でCNTとカーボンブラックとを湿式混合した後乾燥させることによって形成されたCNTとカーボンブラックとのプレブレンドを得ること;
他の成分と共に前記エラストマー中に前記プレブレンドを混合してエラストマー組成物を形成すること
を含み、
前記プレブレンド中のカーボンブラック対CNTの重量比が4:1?20:1の範囲内にある方法。
【請求項11】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エラストマー組成物を含むエラストマー製品を製造することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記エラストマー製品がベルト、ホース、タイヤ、又は制振部品である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記エラストマー製品が動力伝達ベルトである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記プレブレンドがCNTのネットワーク内に混和されたカーボンブラックの粒子を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記プレブレンドがナノチューブネットワークとその中に分散されたカーボンブラック粒子とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせであるプレブレンド組成物。
【請求項18】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項17に記載のプレブレンド組成物。
【請求項19】
有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記プレブレンドがナノチューブネットワークとその中に分散されたカーボンブラック粒子とを含む、プレブレンド組成物。
【請求項20】
有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記プレブレンドがナノチューブで被覆されたカーボンブラック粒子を含む、プレブレンド組成物。
【請求項21】
有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記プレブレンドが炭素ナノ構造体で被覆された黒鉛質炭素粒子を含む、プレブレンド組成物。
【請求項22】
前記プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含む、請求項17に記載のプレブレンド組成物。
【請求項23】
前記コア粒子が規則的又は不規則的な形状であり20nm?20μmの範囲の大きさの平均最長寸法を有する、請求項22に記載のプレブレンド組成物。
【請求項24】
有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含み、
前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、プレブレンド組成物。
【請求項25】
前記コア粒子を被覆するシェルが当該コア粒子の全表面積の50?100%の範囲の表面積を被覆している、請求項22に記載のプレブレンド組成物。
【請求項26】
有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物であって、前記プレブレンドがナノチューブで被覆されたカーボンブラック粒子を含むプレブレンド組成物。
【請求項27】
有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物であって、前記プレブレンドが炭素ナノ構造体で被覆された黒鉛質炭素粒子を含むプレブレンド組成物。
【請求項28】
有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物であって、前記プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含み、
前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせであるプレブレンド組成物。
【請求項29】
前記コア粒子が規則的又は不規則的な形状であり20nm?20μmの範囲の大きさの平均最長寸法を有する、請求項28に記載のプレブレンド組成物。
【請求項30】
有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物であって、前記プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含み、
前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、プレブレンド組成物。
【請求項31】
前記炭素ナノ構造体がフラーレン、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、及びそれらの化学的誘導体からなる群からの1種又は2種以上からなる、請求項28に記載のプレブレンド組成物。
【請求項32】
前記コア粒子を被覆するシェルが当該コア粒子の全表面積の50?100%の範囲の表面積を被覆している、請求項28に記載のプレブレンド組成物。
【請求項33】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項28、29、31及び32のいずれか一項に記載のプレブレンド組成物。
【請求項34】
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させることを含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである製造方法。
【請求項35】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項34に記載の製造方法。
【請求項36】
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させることを含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記プレブレンドがナノチューブネットワークとその中に分散されたカーボンブラック粒子とを含む、製造方法。
【請求項37】
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させることを含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記プレブレンドがナノチューブで被覆されたカーボンブラック粒子を含む、製造方法。
【請求項38】
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させることを含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記プレブレンドが炭素ナノ構造体で被覆された黒鉛質炭素粒子を含む、製造方法。
【請求項39】
前記プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含む、請求項34に記載の製造方法。
【請求項40】
前記コア粒子が規則的又は不規則的な形状であり20nm?20μmの範囲の大きさの平均最長寸法を有する、請求項39に記載の製造方法。
【請求項41】
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させることを含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含み、
前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、製造方法。
【請求項42】
前記コア粒子を被覆するシェルが当該コア粒子の全表面積の50?100%の範囲の表面積を被覆している、請求項39に記載の製造方法。
【請求項43】
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させること
を含み、
前記プレブレンドがナノチューブで被覆されたカーボンブラック粒子を含む製造方法。
【請求項44】
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させること
を含み、
前記プレブレンドが炭素ナノ構造体で被覆された黒鉛質炭素粒子を含む製造方法。
【請求項45】
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させること
を含み、
前記プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含み、
前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである製造方法。
【請求項46】
前記コア粒子が規則的又は不規則的な形状であり20nm?20μmの範囲の大きさの平均最長寸法を有する、請求項45に記載の製造方法。
【請求項47】
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させること
を含み、
前記プレブレンドがコア-シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含み、
前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、製造方法。
【請求項48】
前記炭素ナノ構造体がフラーレン、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、及びそれらの化学的誘導体からなる群からの1種又は2種以上からなる、請求項45に記載の製造方法。
【請求項49】
前記コア粒子を被覆するシェルが当該コア粒子の全表面積の50?100%の範囲の表面積を被覆している、請求項45に記載の製造方法。
【請求項50】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項45、46、48及び49のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項51】
有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成すること;
前記分散体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成すること
を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含み、
前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである方法。
【請求項52】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ブレンドを乾燥させてプレブレンドを形成することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記プレブレンドが、前記炭素ナノ構造体のシェルで被覆された前記固体粒子のコアを含むコア-シェル材料を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
配合プロセスにおいてポリマーに前記プレブレンドを添加することをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記プレブレンドを電池電極の一部として又は電解質媒体の一部として又はスーパーキャパシタの一部として使用することをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
電解質媒体、塗料、コーティング、又はスラリーに前記プレブレンドを使用することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項58】
有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成すること;
前記分散体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成すること
を含み、
前記プレブレンドが、前記炭素ナノ構造体のシェルで被覆された前記固体粒子のコアを含むコア-シェル材料を含み、
前記微粒子固体がカーボンブラック、黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素であるか、又はカーボンブラックと黒鉛質炭素、ガラス状炭素若しくは構造のない炭素との組み合わせである方法。
【請求項59】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項26又は27に記載のプレブレンド組成物。
【請求項61】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項30に記載のプレブレンド組成物。
【請求項62】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項43又は44に記載の製造方法。
【請求項63】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o-ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2-ジブロモベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項47に記載の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-06-21 
出願番号 特願2017-545400(P2017-545400)
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (C08J)
P 1 652・ 121- YAA (C08J)
P 1 652・ 113- YAA (C08J)
P 1 652・ 536- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤田 雅也  
特許庁審判長 細井 龍史
特許庁審判官 植前 充司
加藤 友也
登録日 2020-01-27 
登録番号 特許第6652572号(P6652572)
権利者 ゲイツ コーポレイション
発明の名称 炭素ナノ構造体プレブレンド及びその用途  
代理人 小倉 洋樹  
代理人 松浦 孝  
代理人 松浦 孝  
代理人 小倉 洋樹  

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