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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) G02F
管理番号 1376795
判定請求番号 判定2020-600029  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 判定 
判定請求日 2020-09-08 
確定日 2021-08-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第6518805号発明「表示パネル」の判定請求事件(判定2020-600029号事件、判定2020-600030号事件及び判定2020-600031号事件(以下、それぞれ、「29事件」、「30事件」及び「31事件」という。)について、審理の併合の上、次のとおり判定する。 
結論 判定2020-600029号判定請求事件(29事件) イ号物件説明書に示す液晶ディスプレイは、特許第6518805号の特許請求の範囲の請求項1に記載された特許発明の技術的範囲に属する。判定2020-600030号判定請求事件(30事件) イ号物件説明書に示す液晶ディスプレイは、特許第6518805号の特許請求の範囲の請求項1に記載された特許発明の技術的範囲に属する。判定2020-600031号判定請求事件(31事件) イ号物件説明書に示す液晶ディスプレイは、特許第6518805号の特許請求の範囲の請求項1に記載された特許発明の技術的範囲に属する。 
理由 第1 請求の趣旨
29事件、30事件及び31事件の判定の請求の趣旨は、いずれも結論同旨である。

第2 本件特許及び29事件?31事件に係る手続の経緯等
本件特許及び29事件?31事件に係る手続の経緯等は以下のとおりである。
平成30年 3月 6日 本件特許に係る出願(平成24年9月7日に出願した特願2012-197759号の一部を平成29年2月8日に新たな特許出願とした特願2017-21320号の一部を新たな特許出願とした特願2018-39952号)
平成31年 4月26日 特許登録(特許第6518805号)
令和 2年 9月 8日 判定請求(29事件?31事件)
令和 3年 1月19日 答弁書(29事件?31事件)

第3 本件発明
本件特許の請求項1に記載された発明(以下「本件発明」という。)は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その内容は次のとおりである。なお、構成要件の分説は、29事件?31事件の判定請求書にならった。

A1 表示領域と前記表示領域を囲む周辺領域に位置する無機絶縁膜と、
A2 前記周辺領域において前記無機絶縁膜上に設けられ駆動回路を形成する配線と、
A3 前記配線と接し前記表示領域及び前記周辺領域を覆う有機絶縁膜と、
A4 前記有機絶縁膜を貫通して形成されたスリットと、を有するアレイ基板と、
B 前記アレイ基板に対向して配置される対向基板と、
C 前記アレイ基板と前記対向基板とを接合するシール材と、を備え、
D 前記配線は、前記スリットよりも前記表示領域側に位置し、前記スリットとは重なっておらず、
E 前記スリットは、第1スリットと、前記第1スリットと離間する第2スリットと、を有しており、
F 前記第1スリットは、前記シール材と重なる位置において、前記表示領域を囲むように枠状に形成され、
G 前記第2スリットは、前記シール材と重なる位置において、前記第1スリットの一部に沿って形成されている
H 表示パネル。

第4 29事件についての当審の判断
1 イ号物件について
(1)29事件の判定請求に係るイ号物件
スマートフォンであるP30 Liteに含まれる液晶ディスプレイ(型式番号:TL061FVMF01-00C)。

(2)イ号物件の構成
甲第2号証(調査報告書(特許6518805号/TL061FVMF01-00C)、令和2年8月26日、弁護士 高橋雄一郎作成)(以下、証拠は、「第」及び「号証」を略して表記する。)によれば、イ号物件の構成について次の事実が認められる。なお、断りがない限り、図面番号、頁は甲2のものを示し、色彩は甲2に基づいて特定する。
ア イ号物件は、「液晶ディスプレイ」である。(4頁?5頁)

イ 図8の右側にある写真(以下「図8右側写真」という。以下、他の写真も同様に、図面番号にその写真が配置された位置を後置して表記する。)から、色が異なる2つの部分が看て取れる。イ号物件は液晶ディスプレイであり、画像表示領域とその周辺に画像表示がなされない他の領域があることは技術常識であり、図9、図10も併せて見れば、上記色が異なる2つの部分の内側は画像表示がなされる「表示領域」であり、外側は画像表示がなされない「周辺領域」であると解される。そして、図9左側写真から、周辺領域は表示領域を囲んでいることが看て取れる。
また、図9右側写真から、上記周辺領域には、何らかの回路が看て取れる。そして、液晶ディスプレイにおいて、表示領域の画素に電圧を印加する駆動回路が必要であることは技術常識であるから、これらの回路は、表示領域を駆動する「駆動回路」であると解される。




ウ(ア)図14上側写真において、図14下側写真で「駆動回路」と印字された領域の左側部分に上下方向に複数の線(図14上側写真で「駆動回路を構成する配線」と印字されたあたり)が看て取れる。これらの複数の線の断面は、図15の右側の「駆動回路を構成する配線」と印字されたあたりに見ることができ、これらの断面の形状や、上記イにおける「駆動回路」の範囲に配されていることから見て、これらの複数の線は、「駆動回路を構成する配線」であると解される。そして、図9、図14、図15から、駆動回路を構成する配線は、周辺領域に存在していることが看て取れる。

(イ)図15において、上下にそれぞれ基板が配されていることが看て取れ、下側の基板は、配線や駆動回路などが配置されているから、「アレイ基板」であり、上側の基板は、アレイ基板に対向配置されているから、「対向基板」であることが分かる。

(ウ)図15において、駆動回路を構成する配線周辺の上下の基板間には、粒状体が内部に散乱された材料(以下「充填材」という。)が充填されており、上記充填材とは別に、アレイ基板上に、上記駆動回路を構成する配線を覆うように配置された透明の「膜状部」が看て取れる。同様の膜状部は、上記駆動回路を構成する配線の左側(液晶ディスプレイ全体から見れば「外側」)に、離間して複数存在し、膜状部間には、粒状体が入り込んでいることが看て取れるから、上記充填材が入り込んでいることがわかる。
そして、図15において、駆動回路を構成する配線を覆う膜状部の外側に更にそれぞれ離間して3つの膜状部が看て取れ、これら4つの膜状部間の間隙は3つあり、内側の間隙(以下「第1間隙」という。スリット1と印字された矢印が指し示す間隙。)、その外側の間隙(以下「第2間隙」という。スリット2と印字された矢印が指し示す間隙。)とさらに外側の間隙(以下「第3間隙」という。)には、上記充填材がそれぞれ入り込んでいることがわかる。
また、図15は断面図であり、膜状部が、奥行き方向に、どの程度継続して形成されているか読み取れないが、膜状部は、図15において左右方向に配線全体を覆うように形成されていること、及び後述エのとおり絶縁性の層であると解されることから、配線と同方向、つまり図11、及び図14上側写真の上下方向(図15の奥行き方向)に形成されていると解することが自然である。このような解釈は、後述カ(イ)において、内側線状部(後述カ(イ)のとおり、第1間隙が存在している。)、外側線状部(同じく、第2間隙及び第3間隙を含む複数の間隙が存在している。)は、配線と交わらず、配線に沿って形成されていることが看て取れることとも整合している。





エ 図19は、上記駆動回路を構成する配線のうちの一つの線(以下「一配線」という。)周辺のSEM写真であり、図20、図21の1、図21の2は、当該一配線周辺のEDX分析結果である。
図19における一配線の断面の形状と図20、図21の1、図21の2を見比べると、一配線はTi(チタン)を含んでいることが看て取れ、一配線よりも深さ方向下側にある領域(以下「一配線下側領域」という。)は、N(窒素)、Si(シリコン)、O(酸素)を含んでおり、C(炭素)を含んでおらず、一配線よりも深さ方向上側にある領域(以下「一配線上側領域」という。)は、C(炭素)を含んでいることが看て取れる。
そして、一配線は電気的な配線であることは明らかであるから、一配線上側領域、一配線下側領域は、配線が電気的な配線として機能するために何らかの絶縁性の層で覆われる必要があることは、液晶ディスプレイの技術常識から見て、明らかである。したがって、一配線下側領域の絶縁層は、N(窒素)、Si(シリコン)、O(酸素)を含んでおり、C(炭素)を含んでおらず、一配線上側領域の絶縁層は、C(炭素)を含んでいることが分かる。
ここで、一般的に有機化合物とは「炭素を含む化合物の総称」(広辞苑第四版)であるから、一配線下側領域の絶縁層は、「無機絶縁層」、一配線上側領域の絶縁層は、「有機絶縁層」であると解される。なお、炭素を含む化合物について、炭素の酸化物や炭酸塩など無機化合物に分類されるものもあるものの、そのような材料は、液晶ディスプレイの絶縁膜として、一般的ではないため、上記のように一配線上側領域の絶縁層は有機絶縁層であると解釈することが自然である。
また、図19と図15を見比べると、有機絶縁層は、上記ウ(ウ)の膜状部であると分かる。


オ 図22、23から、領域丸1(当審注;甲2では○の中に1。以下同様。)から領域丸3にかけて基板は連続しており、アレイ基板上に、複数の膜状部が間隔をあけて存在していることが看て取れる。そして、これらの複数の膜状部は、いずれも同程度の厚さであり、端縁の形状も同様の形状であるから、製造の効率性や容易性を考慮すれば、同時に同材料で形成されていると解することが相当である。したがって、上記の複数の膜状部は、同材料の有機絶縁層であると解される。そして、図11、図14を参酌すると、領域丸1から丸3だけでなく、周辺領域や表示領域には多くの他の配線があることが看て取れ、これらの他の配線においても、一配線と同様に電気的な絶縁が必要であることは明らかであるから、有機絶縁層はアレイ基板上の他の配線が存在する領域に広く形成されていると解することが自然である。
また、上記エにおいて説示した一配線下側領域に存在する無機絶縁層についても、上記有機絶縁層の場合と同様に、無機絶縁層はアレイ基板上の他の配線が存在する領域に広く形成されていると解することが自然である。
したがって、表示領域、及び周辺領域の配線が存在する領域にかけて、無機絶縁層、有機絶縁層(膜状部)が形成されていることが分かる。



カ(ア) 図24の2、図25の2、図26の2、図27の2において、第1スリットと印字された矢印が指し示す線状部(以下「内側線状部」という。カラー写真では緑色。)は、連続した1つの線であること、及び第2スリットと印字された矢印が指し示す線状部(以下「外側線状部」という。カラー写真では緑色。)は、点線が線幅方向に複数並んだ線状部であることが看て取れる。
また、内側線状部、外側線状部は、表示領域の周囲に形成されており、内側線状部の外側に、外側線状部が、内側線状部と概ね平行に形成されていることが看て取れる。



(イ)図9左写真の四角囲いの部分と図27の1の拡大lの場所が概ね近いこと、及び図11(図9右写真の再掲)と図27の2左上写真が似ていることから、図11と図27の2左上写真は、ほぼ同じ領域を撮影したものであるといえる。

図14上写真は、図11の一部拡大写真であり、図14下写真は、図14上写真の断面図、図15は、図14下写真の拡大図である。図15のアレイ基板の中央部に2層の白色層(以下「2層白色層」という。)が看て取れ、図15において、2層白色層の右(内)側に上記ウ(ウ)の第1間隙(スリット1と印字された部分)が、2層白色層の左(外)側に上記ウ(ウ)の第2間隙(スリット2と印字された部分)、第3間隙が存在していることが看て取れる。この前提から、図14と図15を見比べると、図14下写真において2層白色層が看て取れ、その2層白色層の位置に相当する図14上写真には、線状部(カラー写真ではまだら茶色。以下「まだら線状部」という。)があり、このまだら線状部の左側にはやや幅広の線状部(カラー写真では濃緑色。以下「幅広線状部」という。)、右側にはやや幅狭の線状部(カラー写真では濃緑色。以下「幅狭線状部」という。)が看て取れる。これらのことから、第1間隙は幅狭線状部に存在し、第2間隙、第3間隙は幅広線状部に存在していることがわかる。
そして、図14上写真と図27の2左上写真を、回路や配線のようなもの(カラー写真では金色)の位置関係等を勘案して見比べると、図27の2左上写真における内側線状部、外側線状部は、図14上写真の左側にある幅狭線状部、幅広線状部に相当していることがわかるから、図27の2左上写真の内側線状部、外側線状部は、それぞれ第1間隙、第2間隙・第3間隙が存在している領域であると解される。
ここで、外側線状部は点線が線幅方向に複数並んだ線状部である(上記(ア))ことから、各点線を構成する点状部も線幅方向に複数存在することになるところ、このように線幅方向に複数存在する点状部のうちの2つの点状部の断面が、図15において、第2間隙、第3間隙として表れていると解することが自然である。したがって、外側線状部は、第2間隙、第3間隙を含む複数の間隙が存在している領域であるといえる。また、これら複数の間隙には、第2間隙、第3間隙と同様に、上記ウ(ウ)で説示したように充填材が入り込んでいると解することが相当である。
さらに、このような内側線状部、外側線状部と第1間隙?第3間隙を含む複数の間隙の位置関係は、図27の2左上写真だけでなく、図24の2左下、右下写真、図26の2左上、右上写真、図27の2左下、右下写真においても同様と解することが自然である。

(ウ)図24の2、図25の2、図26の2、図27の2の各写真と、これらの写真の取得箇所が示された図28を見ると、図24の2、図25の2、図26の2、図27の2の各写真における内側線状部、外側線状部それぞれの形成状況は、他の写真の内側線状部、外側線状部と比較して特段の相違はなく、同様の線状部が形成されているから、各写真の取得箇所間においても、内側線状部、外側線状部は同様の状態で形成されていると解することが自然である。

(エ)小活
したがって、上記ウ(ウ)の説示も合わせて整理すると、
(i)駆動回路を構成する配線を覆う膜状部の外側にそれぞれ離間して複数の膜状部を備え、膜状部間の間隙は複数あり、最内側の第1間隙と、その外側の複数の間隙には、充填材がそれぞれ入り込んでいること、
(ii)平面視において、第1間隙(内側線状部)は、表示領域の周囲に概ね連続して形成されており、複数の間隙(外側線状部)は、第1間隙の外側に、点線が線幅方向に複数並んだ状態で、第1間隙と概ね平行に形成されていること、がわかる。

キ イ号物件の構成についての小括
以上によれば、イ号物件は、次のとおりの構成(以下「29事件当審認定構成」という。)を備えると認められる(以下、分説は当審が行った。なお、括弧内は、構成の認定について記載した箇所を記載した。)。

a1 表示領域と前記表示領域を囲む周辺領域を備え(上記イ)、前記表示領域、前記周辺領域の配線が存在する領域にかけて、アレイ基板上に、無機絶縁層が形成され(上記オ)、
a2 前記周辺領域において前記無機絶縁層の上に駆動回路を構成する配線が形成され(上記ウ(ア)、オ)、
a3 前記表示領域、前記周辺領域の配線が存在する領域にかけて、前記表示領域、前記周辺領域の配線を覆う膜状部である有機絶縁層が形成され(上記ウ(ウ)、エ、オ)、
a4 前記有機絶縁層は離間して複数存在し(上記ウ(ウ))、
b 前記アレイ基板に対向配置される対向基板を備え(上記ウ(イ))、
c 前記配線周辺の前記アレイ基板と前記対向基板間に充填材が充填され(上記ウ(ウ))、
d、e 前記駆動回路を構成する配線を覆う有機絶縁層の外側にそれぞれ離間して複数の有機絶縁層を備え、有機絶縁層間の間隙は複数あり、最内側の第1間隙と、その外側の複数の間隙には、前記充填材がそれぞれ入り込んでおり(上記ウ(ウ)、カ(エ))、
f 平面視において、前記第1間隙は、表示領域の周囲に概ね連続して形成されており(カ(エ))、
g 前記複数の間隙は、前記第1間隙の外側に、点線が線幅方向に複数並んだ状態で、第1間隙と概ね平行に形成されている(カ(エ))、
h 液晶ディスプレイ(上記ア)。

2 充足性の有無
(1)本件発明の技術的意義
ア 本件特許の明細書及び図面(以下「本件明細書等」という。)には、次の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示パネルに関する。」

(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アレイ基板の有機絶縁膜は水分を浸透する性質を有している。そこで、アレイ基板の額縁領域の配線の外側の有機絶縁膜を幅200乃至300μmとして全周にわたって除去し、シール材を上記除去した領域に形成している。シール材は、水分を遮断する性質を有しているため、液晶表示パネル内部の配線への水分の浸入を遮断することができる。これにより、配線が腐食する懸念を排除することができる。
【0006】
上記のように有機絶縁膜が除去されると、狭額縁化は妨げられる。そこで、狭額縁化を図るため、額縁領域の配線の外側の有機絶縁膜ではなく、額縁領域の配線上の有機絶縁膜を除去することが考えられる。しかしながら、この場合、額縁領域の配線は、有機絶縁膜で保護されず剥き出しになる。このため、配線に静電気が侵入し、この配線の周辺回路を破壊する可能性が高くなる。すなわち、ESD(Electro Static Discharge)耐圧が低下し、絶縁膜がESD破壊を起こす可能性が高くなる。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、駆動回路の静電破壊を抑制することが可能な表示パネルを提供することにある。」

(ウ)「【0061】
次に、第2の実施形態に係る液晶表示パネルについて説明する。本実施形態に係る液晶表示パネルは、上記第1 の実施形態に係る液晶表示パネルの製造方法と同様の手法を利用して形成可能である。本実施形態において、上述した第1の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0062】
図3、図15及び図16に示すように、保護絶縁膜23はスリット23h1の他、スリット23h2及びスリット23h3を有している。スリット23h1と同様、スリット23h2及びスリット23h3も保護絶縁膜23を貫通して形成されている。また、スリット23h2、23h3は、配線が剥き出しにならないように形成され、層間絶縁膜18を剥き出しの状態にするように形成されている。スリット23h2、23h3は、帯状に形成され、列方向Yに枠状に延出して形成されている。スリット23h2、23h3は、それぞれ配線w3及び配線w4の延出した方向に沿って延在して形成されている。スリット23h2、23h3は、例えば、それぞれ5乃至10μmの幅を有している。
【0063】
額縁領域R2の左側で、スリット23h2は、配線w3及び配線w4の間に形成されている。額縁領域R2の右側で、スリット23h3は、配線w3及び配線w4の間に形成されている。スリット23h1、23h2、23h3は、アレイパターン1pの最上部に位置している。スリット23h1には防湿部材29aが充填され層間絶縁膜18に接している。スリット23h2には防湿部材29bが充填され層間絶縁膜18に接している。スリット23h3には防湿部材29cが充填され層間絶縁膜18に接している。シール材51は、防湿部材29a、29b、29c上に形成されている。この実施形態において、スリット23h1、23h2、23h3にそれぞれシール材51の一部が充填されることにより、防湿部材29a、29b、29cが形成されている。
【0064】
上記のように構成された第2の実施形態に係る液晶表示パネル及び液晶表示パネルの製造方法によれば、液晶表示パネルは、アレイ基板1と、対向基板2と、液晶層3とシール材51とを備えている。保護絶縁膜23は、配線w3及び配線w4の間を貫通して形成されたスリット23h2、23h3を有している。すなわち、スリットが二重に形成されている。スリット23h2、23h3には、それぞれシール材51の一部が充填され層間絶縁膜18に接し、防湿部材29b、29cを形成している。
【0065】
この実施形態において、スリット23h1に形成された防湿部材29a(シール材51)により配線w3、w4、w7、w8等への水分の浸入を遮断することができ、スリット23h2、23h3に形成された防湿部材29b、29c(シール材51) により配線w4、w7、w8等への水分の浸入を一層遮断することができる。これにより、配線w3、w4、w7、w8等が腐食する懸念を排除することができる。上記のように、配線w4への水分の浸入を一層遮断することができるため、隣接配線間の電位差の大きい配線w3、w4の腐食を一層低減することができる。
【0066】
スリット23h2、23h3を、配線w3及び配線w4の間に形成することができる。スリット23h1同様、スリット23h2、23h3も空いているスペース(配線等の非利用スペース)に形成することができるため、狭額縁化を図ることができる。その他、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
上記したことから、狭額縁化を図ることができる、製品歩留まりの高い液晶表示パネル及び液晶表示装置の製造方法を得ることができる。」

(エ)図15、16は以下のとおりである。


イ 上記アで認定した本件明細書等の記載によれば、本件発明の技術的意義は、スリットを二重に形成し、スリットには、それぞれシール材などの一部が充填され、防湿部材が形成され(【0064】)、スリットに形成された防湿部材(シール材)により配線等への水分の浸入を遮断することにより(【0065】)、狭額縁化を図ることができる、製品歩留まりの高い液晶表示パネルを得る(【0066】)ことである。

(2)構成要件A1、A2について
ア イ号物件の構成a1の「表示領域」、及び「表示領域を囲む周辺領域」は、それぞれ構成要件A1の「表示領域」、及び「表示領域を囲む周辺領域」に相当する。

イ イ号物件の構成a1において「前記表示領域、前記周辺領域の配線が存在する領域にかけて、アレイ基板上に、無機絶縁層が形成され」ているから、構成a1の「無機絶縁層」は、構成要件A1の「無機絶縁膜」に相当する。

ウ イ号物件の構成a2において「前記周辺領域において前記無機絶縁層の上に駆動回路を構成する配線が形成され」ていることから、イ号物件の「駆動回路を構成する配線」は、構成要件A2の「駆動回路を形成する配線」に相当する。

エ 以上に対し、被請求人は次のとおり主張する。
(ア)被請求人は、イ号物件において、(i)29事件のイ号物件説明書の図7(当審注;29事件の甲2の図10)では、「周辺領域」と主張する領域の左側にも赤、緑、青の画素領域が存在するから「周辺領域」とされる領域は、表示領域を囲んでいない、(ii)「周辺領域」と請求人が主張する領域が駆動回路を有していることは立証できていない旨、主張する。(29事件答弁書3頁下から4行?4頁2行、30事件答弁書3頁下から4行?4頁2行、31事件答弁書3頁下から4行?4頁2行)
しかしながら、(i)について、被請求人が主張する「周辺領域」の左側の赤、緑、青の画素領域は、何のための領域であるのか明らかではないものの、それぞれの色が1列ずつしか形成されておらず、一般的な画像表示を行うものでないことは明らかである。そして、イ号物件において、メインの画像表示を行う表示領域とは、上記1(2)イで認定した表示領域であり、周辺領域はその表示領域を囲んでいるといえる。(ii)については、上記1(2)イで説示したとおりである。

(イ)被請求人は、29事件のイ号物件説明書の図17、図18の1、図18の2(当審注;それぞれ29事件の甲2の図20、図21の1、図21の2)のEDX分析結果の写真は不鮮明であり、Si(シリコン)、N(窒素)及びO(酸素)が検出されたとする領域に炭素が含まれているか否かが不明確である旨、Si(シリコン)、N(窒素)及びO(酸素)が検出されたとする領域に他の元素が含まれていないことの立証はなされていない(図17のTiが重なっている可能性、他の金属元素が含まれている可能性も否定できていない)旨、請求人が絶縁膜であると判断した根拠は全く明らかにされておらず、無機「絶縁膜」であることも立証されていない旨、主張する。(29事件答弁書5頁8行?15行、30事件答弁書5頁9行?16行、31事件答弁書5頁9行?16行)
しかしながら、上記1(2)エでも説示したように、図20、図21の1、図21の2を見れば、一配線の上下の部分は絶縁性の層であり、一配線の下側の層には、Si(シリコン)、N(窒素)及びO(酸素)が含まれていると解することが自然である。そして、当該下側の層に、他の金属元素が含まれているか否かは、これらの図面から確認することはできないが、一般的に、絶縁の必要性に鑑みれば、配線の下の層に、導電性の金属元素を含ませることは想定できず、上記で説示したように絶縁性の層であると解することが自然である。また、当該下側の層に、炭素が含まれていないことは、図20において、C(炭素)の分布は、Ti(チタン)よりも上側になっており、下側には含まれていないことから分かる。

(ウ)被請求人は、29事件のイ号物件説明書の図19及び図20(当審注;それぞれ29事件の甲2の図22、図23)は不鮮明であり、どれが「Si(シリコン)及びN(窒素)を含む膜及びSi(シリコン)とO(酸素)を含む膜」であるのか分からないこと、イ号物件説明書のEDX分析結果の写真は、イ号物件の極めて限られた一部分についてEDX分析を行ったものにすぎず、「Si(シリコン)及びN(窒素)を含む膜及びSi(シリコン)とO(酸素)を含む膜からなる絶縁膜」と主張する構造が「表示領域」と主張する領域にも連続して形成されていることは示されていない旨、主張する。(29事件答弁書5頁下から5行?6頁2行)
しかしながら、上記1(2)オでも説示したように、駆動回路における他の配線においても、一配線と同様に電気的な絶縁が必要であるところ、図22、図23の領域丸1?丸3にかけて基板は連続している状況において、それぞれの配線の下側に、それぞれ異なる無機絶縁層を個別に設けることは、製造効率の観点から不合理であることや個別に設ける必要性も特段想定できないことなどを考慮すると、一配線の下側に存在する無機絶縁層は、他の配線部分を含めて、下側の基板上に広く形成されていると解することが自然である。また、図22、図23が不鮮明との被請求人の主張については、図22、図23は、図面そのものの内容や他の図面との関係について理解できる程度の鮮明さを有しており、一配線の位置等も把握できるから、上記したように、無機絶縁層が下側の基板上に広く形成されているとの認定に影響を与えるものではない。

(エ)よって、被請求人の上記主張はいずれも採用できない。

オ 以上のとおりであるから、イ号物件は、構成要件A1、A2を充足する。

(3)構成要件A3について
ア イ号物件の構成a3において「前記表示領域、前記周辺領域の配線が存在する領域にかけて、前記表示領域、前記周辺領域の配線を覆う膜状部である有機絶縁層が形成され」ているので、「有機絶縁層」は「配線」に接しているといえ、構成a3の「有機絶縁層」は、構成要件A3の「有機絶縁膜」に相当する。

イ 以上に対し、被請求人は次のとおり主張する。
(ア)被請求人は、(i)29事件のイ号説明書の図17、図18の1及び図18の2(当審注;それぞれ29事件の甲2の図20、図21の1、図21の2)のEDX分析結果の写真は不鮮明であり、これらの写真から、C(炭素)が検出されたとする領域と他の領域との位置関係を把握できず、「配線」と接触しているのかどうかは何ら示されていない、(ii)請求人は、「C(炭素)を含む膜は、Ti(チタン)を含む配線のうえに配置されているため、特性として絶縁性を有することは必須である」と主張するが、絶縁性を有することが必須であることを示す証拠は何ら提出されておらず、単に結論を述べたに過ぎない旨、主張する。(29事件答弁書7頁9行?16行、30事件答弁書7頁8行?14行、31事件答弁書7頁7行?14行)
しかしながら、(i)(ii)について、上記1(2)エでも説示したように、図20、図21の1、図21の2を見れば、一配線の上下の部分は絶縁性の層であり、一配線の上側の層には、C(炭素)が含まれていると解することが自然である。そして、図20において、C(炭素)の分布は、Ti(チタン)の上側に接近して存在することが看て取れるから、当該上側の層は一配線に接触して形成されていると解される。

(イ)被請求人は、29事件のイ号説明書の図19及び図20(当審注;それぞれ29事件の甲2の図22、図23)は不鮮明であり、どれが「C(炭素)を含む膜」であるのか分からないこと、イ号説明書のEDX分析結果の写真は、イ号物件の極めて限られた一部分についてEDX分析を行ったものにすぎず、「C(炭素)を含む膜」と主張する構造が「表示領域」及び「周辺領域」と主張する領域を連続的に覆う膜であることは立証されていない旨、主張する。(29事件答弁書7頁21行?下から3行)
しかしながら、上記1(2)オでも説示したように、周辺領域や表示領域における他の配線においても、一配線と同様に電気的な絶縁が必要であるところ、図22、図23の領域丸1?丸3において、複数の配線を覆うように複数の膜状部が離間して配置されていることが看て取れる。そして、これらの複数の膜状部は、同様の厚さ、形状であり、個別に異なる材料により、それぞれの膜状部を形成する特段の必要性は想定できず、また、異なる材料で形成することは製造効率の観点から見ても不合理であるから、同時に形成された同材料の有機絶縁層であると解することが自然である。

(ウ)よって、被請求人の上記主張はいずれも採用できない。

ウ 以上のとおりであるから、イ号物件は、構成要件A3を充足する。

(4)構成要件A4について
ア イ号物件の構成a4において「前記有機絶縁層は離間して複数存在し」ており、この離間した部分は、スリットということもできるので、構成a4の当該離間した部分は、構成要件A4の「前記有機絶縁膜を貫通して形成されたスリット」に相当する。

イ イ号物件の構成a1の「アレイ基板」は、構成要件A4の「アレイ基板」に相当する。

ウ 以上に対し、被請求人は次のとおり主張する。
(ア)被請求人は、請求人が「スリット1」「スリット2」と称する部分の構成がEDX分析により示されておらず、「スリット1」「スリット2」と称する部分に有機絶縁膜が残存していないことは何ら立証できていない、よって、「スリット1」「スリット2」が「有機絶縁膜」を貫通して形成されていることは立証されていない旨、主張する。(29事件答弁書8頁8行?12行、30事件答弁書8頁15行?19行、31事件答弁書8頁14行?18行)
しかしながら、上記1(2)エで説示したように、有機絶縁層は、膜状部であると解されるから、上記1(2)ウ(ウ)で示した間隙部分には、有機絶縁層は形成されていないと解するべきであり、当該間隙部分はスリットと呼べるものである。

(イ)被請求人は、「貫通」とは「貫きとおすこと。貫きとおること。」との字義を有する語句であり(29事件の乙1)、「有機絶縁膜を貫通して形成された」とは、有機絶縁膜を貫き通すように形成されたという意味を有するものと理解することができ、また、本件発明(請求項1)は、本件明細書等の図15、図16の記載に基づくところ(29事件の乙2)、本件明細書等(甲1)の図16では、スリット23h1、23h2が保護絶縁膜23を急峻に貫き通すように形成されており、これにより、内部の配線への水分の侵入を防止しつつ狭額縁化を図るという、技術的意義を有するものと理解されるのに対し、イ号物件では、請求人が「スリット1」「スリット2」と称する部分(下図参照)には、それぞれ窪みが形成されているものの、当該窪みの幅に対してその高さは非常に小さく、単なる段差に過ぎないものであり、保護絶縁膜23を貫き通すといった形状ではない旨、主張する。(29事件答弁書8頁下から7行?9頁5行、30事件答弁書9頁2行?13行、31事件答弁書9頁2行?13行)

しかしながら、本件発明において、スリットの形状について、具体的な限定はなく、また、本件明細書等においても、スリットの形状について、格別の記載はなく、被請求人が主張するような「急峻に貫き通すように形成」するといった記載は見当たらない。そして、上記(1)イで説示したように、本件発明の技術的意義は「スリットには、それぞれシール材の一部が充填され、防湿部材が形成され、スリットに形成された防湿部材(シール材)により配線等への水分の浸入を遮断することにより、狭額縁化を図ることができる、製品歩留まりの高い液晶表示パネルを得ることである」から、本件発明におけるスリットの形状は、スリットにシール材の一部が充填され防湿部材が形成できる形状であれば足りると解され、イ号物件の構成a4の当該離間した部分においても、同様に、充填材が充填できる形状であるといえる。

(ウ)被請求人は、「スリット」は、「光線または粒子線の幅を制限するための細い隙間」との字義を有する語句であり(29事件の乙1)、「細い」形状であること(すなわち、長さ方向に対して幅が狭い形状であること)をその要件とするものであり、本件特許発明(請求項1)は、本件明細書等の図15、図16の記載に基づくところ(29事件の乙2)、本件明細書等(甲1)の図15では、スリット23h1、23h2はいずれも「細い」形状であることが示されており、そのような細い形状のスリットにシール材が充填されることで、内部の配線への水分の侵入を防止しつつも狭額縁化を図るという、技術的意義を有するものと理解されるのに対し、イ号物件の外側の窪み(請求人が「スリット2」と称する部分)は略楕円形状をなしており、長さ方向に対して幅が狭い構成となっておらず(下図参照)、しかも、イ号物件の「窪み」は連続しておらず途切れており、隣接した「窪み」の間に形成された有機絶縁膜を介した水分の侵入を防ぐことができず、よって上記の技術的意義を有するものではない旨、主張する。(29事件答弁書9頁8行?10頁3行書9頁下から、30事件答弁書9頁下から6行?10頁8行、31事件答弁書9頁下から6行?10頁8行)

しかしながら、本件発明において、スリットの形状について、特段の限定がされていないことは、上記(イ)で説示したとおりである。また、本件明細書等の図15から、スリット23h2は、上下端で途切れていることが看て取れる。そして、上記(1)イで説示したように、本件発明の技術的意義は「スリットを二重に形成し、スリットには、それぞれシール材の一部が充填され、防湿部材が形成され、スリットに形成された防湿部材(シール材)により配線等への水分の浸入を遮断すること」であるとともに、本件明細書等の図15のスリット23h2のようなスリットが途切れている態様もあることから、本件発明において、「水分の侵入を遮断すること」ができる程度において、スリットの一部が途切れているものは排除されていないと解するべきである。そのような観点から見れば、イ号物件の構成gの「複数の間隙は、点線が線幅方向に複数並んだ状態で」あるような態様も、一定程度、水分の侵入の遮断に貢献しうるものであるから、本件発明のスリットに相当するといえる。

(エ)よって、被請求人の上記主張はいずれも採用できない。

エ 以上のとおりであるから、イ号物件は、構成要件A4を充足する。

(5)構成要件Bについて
ア イ号物件の「アレイ基板」、「対向基板」は、それぞれ構成要件Bの「アレイ基板」、「対向基板」に相当する。

イ 以上のとおりであるから、イ号物件は、構成要件Bを充足する。

(6)構成要件Cについて
ア イ号物件の構成cの「充填材」は「前記配線周辺の前記アレイ基板と前記対向基板間に充填される」ものであり、液晶ディスプレイの技術分野において、駆動回路を構成する配線の腐食を防ぐために配線周辺部分に水分が侵入しないようにすることは技術常識であるから、上記充填材は、水分を排除する機能を有するものであると解される。
そして、本件発明の「シール材」は、「水分を遮断する性質を有している」(本件明細書等の【0005】)ものを意味しているから、イ号物件の構成cの「充填材」は、本件発明の「シール材」に相当する。
また、イ号物件の構成cの「充填材」は、シール機能を有していることから、アレイ基板と配向基板を、一定程度、接合する機能も有していることは明らかである。

イ 以上に対し、被請求人は次のとおり主張する。
(ア)被請求人は、請求人は、29事件のイ号説明書の図12(当審注;29事件の甲2の図15)を根拠として、イ号物件が「アレイ基板と対向基板を接合する接合材は、フィラーを含む接合材である」と主張している(イ号説明書8頁)が、イ号物件説明書の図12の写真からは、イ号物件が「フィラーを含む接合材」を含むと判断した根拠や、当該接合材が水分を遮断する性質を有する「シール材」であると判断した根拠は何も示されておらず、「フィラーを含む接合材」であることは立証されていない旨、主張する。(29事件答弁書11頁1行?7行、30事件答弁書11頁6行?12行、31事件答弁書11頁7行?13行)
しかしながら、イ号物件の「充填材」が、水分を遮断する機能を有する点については、上記アで説示したとおりである。また、「フィラーを含む」点については、本件発明の「シール材」の構成として規定されておらず、また、フィラーの有無が、シール機能の存否に関連しているとも認められないから、充足性の判断に影響を与えるものではない。

(イ)よって、被請求人の上記主張は採用できない。

ウ 以上のとおりであるから、イ号物件は、構成要件Cを充足する。

(7)構成要件D、Eについて
ア イ号物件の構成d、eにおいて、「第1間隙」、「複数の間隙」は、上記(4)も参照すれば、本件発明の「スリット」に相当し、それぞれ「第1スリット」、「第2スリット」に相当する。
そして、イ号物件の構成d、eにおいて「前記駆動回路を構成する配線を覆う有機絶縁層の外側にそれぞれ離間して複数の有機絶縁層を備え」ていることから、配線は「第1間隙」、「複数の間隙」よりも、内側、つまり表示領域側に位置し、「第1間隙」、「複数の間隙」とは重なっていないことは明らかである。

イ 以上に対し、被請求人は次のとおり主張する。
(ア)被請求人は、29事件のイ号物件説明書の図12、図21?図24(当審注;それぞれ29事件の甲2の図15、図24?図27)の写真は 、イ号物件の一部のみを写した写真であり、スリットの全体にわたって、配線が表示領域側に位置しているかどうか、配線と重なっていないかどうか(ひいては、スリットを介して水分の侵入が遮断されているかどうか)は、何ら示されていない旨、主張する。(29事件答弁書11頁下から5行?下から2行、30事件答弁書12頁2行?5行、31事件答弁書12頁3行?6行)
しかしながら、上記1(2)ウ(ア)、(ウ)において説示したように、イ号物件において、有機絶縁層(膜状部)は配線全体を覆いつつ、配線に沿って形成されていると解されるから、配線は、スリット(第1間隙)よりも表示領域側に位置しているといえる。

(イ)よって、被請求人の上記主張は採用できない。

ウ 以上のとおりであるから、イ号物件は、構成要件D、Eを充足する。

(8)構成要件Fについて
ア 上記(1)イで説示したように、本件発明の技術的意義は「スリットを二重に形成し、スリットには、それぞれシール材の一部が充填され、防湿部材が形成され、スリットに形成された防湿部材(シール材)により配線等への水分の浸入を遮断することにより、狭額縁化を図ることができる、製品歩留まりの高い液晶表示パネルを得る」ことである。
構成要件Fの「前記表示領域を囲むように枠状に形成」すること(以下「囲む構成」という。)は、「配線等への水分の浸入を遮断する」という上記本件発明の技術的意義を発揮するための構成であることは明らかである。

イ ここで、「囲む構成」が、どの程度、表示領域を囲むことを意味しているかについて検討する。
(ア)本件明細書等には、上記囲む構成に関して、「【0026】図3、図7及び図8に示すように、保護絶縁膜23はスリット23h1を有している。・・・スリット23h1は、枠状に形成され、ここでは矩形枠状に連続して形成されている。」と記載されているとともに、本件明細書等の図15には3種類のスリットが看て取れ、図15におけるスリット23h1が本件発明の第1スリットに相当し、当該スリット23h1の配置は上記囲む構成の一態様であると解される。


また、「囲む」は、「ものを中にしてまわりを取り巻く。中に取り込めて周囲をふさぐ。かこう。」(広辞苑第四版)の意であり、このような意味は本件明細書等の上記記載とも整合しているから、本件明細書等において、「囲む」の文言は、文字通りの意味で用いられていると解される。

(イ)一方、液晶ディスプレイ周辺の配線(本件発明の「駆動回路を形成する配線」)は、本件明細書等の図3においてアレイ基板2の下端周辺にST、CLK、V1、V2などとして記載されているように、アレイ基板から配線が引き出される部分(以下「配線引出部分」という。)が存在することは、技術常識である。そして、このような配線引出部分周辺は、本件明細書等の図3、図15を見比べると、シール材51から配線が引き出されるので、そのような配線が引き出される部分はスリットにより囲むことができないことは、その構造上、明らかである。


上記配線引出部分の存在を前提とすれば、囲む構成において、厳密な意味で表示領域を隙間なく囲んだ態様(以下「隙間なし態様」という。)としても、配線すべてを囲むことができるわけではないので、隙間なし態様は、本件発明の技術的意義を発揮するために欠かすことのできない構成というわけではない。
このような状況から見ると、本件発明の囲む構成は隙間なし構成を意味しているとするのではなく、配線そのものを囲む(配線をスリットよりも表示領域側に位置させる)ことができる範囲において、表示領域を囲むという程度の意味であると解することが、本件発明の技術的意義との関係を考慮しても、相当である。つまり、囲む構成は、隙間なし態様のみを意味しているのではなく、例えば、配線引出部分周辺において、スリットによって表示領域が囲われていないような態様も含みうると解される。
このような解釈は、本件明細書等の図15において、スリット23h1は隙間なく表示領域を囲んでいることが看て取れるものの、同図には、図3における配線引出部分に係る構成が記載されていないことなどから、図15は、模式的、概念的な図面であり、図面の構成そのものを厳密に意味していないと解しうることや、上記(ア)における「囲む」の文字通りの意味として、隙間なく囲むという意味のみに限定されるとは言えないこととも整合する。

ウ イ号物件の構成fは、「前記第1間隙は、表示領域の周囲に概ね連続して形成されて」いるから、「第1間隙」は、配線を第1間隙よりも表示領域側に位置させることができる範囲において、表示領域を囲んだ枠状であるといえる。また、構成d、eにおいて、第1間隙には充填材が入り込んでいることから、イ号物件の構成fの第1間隙は、充填材と重なる位置にあることは明らかである。
したがって、イ号物件は、「前記第1スリットは、前記シール材と重なる位置において、前記表示領域を囲むように枠状に形成され」を充足する。

エ 以上に対し、被請求人は次のとおり主張する。
(ア)被請求人は、(i)29事件のイ号説明書の図21?図24(当審注;29事件の甲2の図24?図27)の写真からは、イ号物件の限られた領域において窪み(請求人が「スリット1」と称する領域)が形成されているものの、表示領域を囲む全ての領域において同様の窪みが形成されているかどうかは、一切示されていない、(ii)この点を措いても、請求人は 、下図における赤線の部分に「スリット1」が形成されていると主張しているようであるが、当該赤線は、端末の左右及び上側に設けられているものの、端末の下側には設けられておらず、表示領域を「囲むように枠状に」形成されたものではない旨、主張する。(29事件答弁書12頁9行?16行、30事件答弁書12頁15行?末行、31事件答弁書12頁16行?末行)

しかしながら、(i)について、上記1(2)カにおいて説示したとおりであり、(ii)について、上記イにおいて説示したように、本件発明の「表示領域を囲むように枠状に形成され」は、端末の下側にスリットが設けられていない態様であっても含みうるものである。

(イ)よって、被請求人の上記主張は採用できない。

オ 以上のとおりであるから、イ号物件は、構成要件Fを充足する。

(9)構成要件Gについて
ア イ号物件の構成gにおいて「複数の間隙は、前記第1間隙の外側に、点線が線幅方向に複数並んだ状態で、第1間隙と概ね平行に形成されている」から、「複数の間隙」は本件発明の「第2スリット」に相当し、イ号物件の構成gは、本件発明の「前記第2スリットは」「前記第1スリットの一部に沿って形成されている」ことを充足する。また、構成d、eにおいて、複数の間隙には充填材が入り込んでいることから、イ号物件の構成gの複数の間隙は、充填材と重なる位置にあることは明らかである。

イ 以上に対し、被請求人は次のとおり主張する。
(ア)被請求人は、(i)29事件のイ号説明書の図21?図24(当審注;29事件の甲2の図24?図27)の写真で緑色で示された部分が「スリット」であるかどうかは何ら示されておらず、図21?図24の写真はイ号物件の一部のみを写した写真であり、その他の部分において「スリット1」「スリット2」と称する部分がどのような位置関係で構成されているのかについても、何ら示されていない、(ii)イ号物件では、下図のとおり、窪み(請求人が「スリット2」と称する部分)は、窪み(請求人が「スリット1」と称する部分)から離れているため、「スリット1」に沿って配置されているとはいえない旨、主張する。(29事件答弁書13頁5行?15行、30事件答弁書13頁11行?末行、31事件答弁書13頁11行?14頁2行)

しかしながら、(i)について、上記1(2)カにおいて説示したとおりである。また、(ii)について、「沿う」とは「線条的なもの、または線条的に移動するものに、近い距離を保って離れずにいる意」(広辞苑第四版)であるが、必ずしも接触する(離れていない)ことのみを意味しているわけではなく、また、上記(8)イ(ア)で説示したように、本件発明の一態様であると解される本件明細書等の図15において、2つのスリット23h1、23h2(それぞれ本件発明の第1スリット、第2スリットに相当)は離れており、本件発明において「沿う」とは、接触して沿うのではなく、離間して沿うことを意味していることは明らかである。

(イ)よって、被請求人の上記主張は採用できない。

ウ 以上のとおりであるから、イ号物件は、構成要件Gを充足する。

(10)構成要件Hについて
イ号物件の構成hの「液晶ディスプレイ」は、本件発明の「表示パネル」を充足することは明らかである。
よって、イ号物件は、構成要件Hを充足する。

(11)小括
以上のとおり、イ号物件は、本件発明の構成要件をすべて充足する。

3 29事件についてのまとめ
以上のとおり、イ号物件は、本件発明の構成要件をすべて充足するから、本件発明の技術的範囲に属する。

第5 30事件についての当審の判断
1 イ号物件について
(1)30事件の判定請求に係るイ号物件
スマートフォンであるMoto G7に含まれる液晶ディスプレイ(型式番号:TL062FVMC70-00)。

(2)イ号物件の構成
甲2(調査報告書(特許6518805号/TL062FVMC70-00)、令和2年8月26日、弁護士 高橋雄一郎作成)によれば、イ号物件の構成について次の事実が認められる。なお、断りがない限り、図面番号、頁は甲2のものを示す。
ア イ号物件は、「液晶ディスプレイ」である。(5頁?6頁)

イ 図10右側写真から、色が異なる2つの部分が看て取れる。イ号物件は液晶ディスプレイであり、画像表示領域とその周辺に画像表示がなされない他の領域があることは技術常識であり、図11、図12も併せて見れば、上記色が異なる2つの部分の内側は画像表示がなされる「表示領域」であり、外側は画像表示がなされない「周辺領域」であると解される。そして、図10左側写真から、周辺領域は表示領域を囲んでいることが看て取れる。
また、図11右側写真から、上記周辺領域には、何らかの回路が看て取れる。そして、液晶ディスプレイにおいて、表示領域の画素に電圧を印加する駆動回路が必要であることは技術常識であるから、これらの回路は、表示領域を駆動する「駆動回路」であると解される。

ウ(ア)図17上側写真において、図17下側写真で「駆動回路」と印字された領域の左側部分に上下方向に複数の線(図17上側写真で「駆動回路を構成する配線」と印字されたあたり)が看て取れる。これらの複数の線の断面は、図18の右側に見ることができ、これらの断面の形状や、上記イにおける「駆動回路」の範囲に配されていることから見て、これらの複数の線は、「駆動回路を構成する配線」であると解される。そして、図11、図17、図18から、駆動回路を構成する配線は、周辺領域に存在していることが看て取れる。

(イ)図18において、上下にそれぞれ基板が配されていることが看て取れ、下側の基板には配線や駆動回路などが配置されているから、「アレイ基板」であり、上側の基板は、アレイ基板に対向配置されているから、「対向基板」であることが分かる。

(ウ)図18において、駆動回路を構成する配線周辺の上下の基板間には、粒状体が内部に散乱された材料が充填されており(以下「充填材」という。)、上記充填材とは別に、アレイ基板上に、上記駆動回路を構成する配線を覆うように配置された透明の「膜状部」が看て取れる。同様の膜状部は、上記駆動回路を構成する配線の左側(液晶ディスプレイ全体から見れば「外側」)に、離間して複数存在し、膜状部間には、粒状体が入り込んでいることが看て取れるから、上記充填材が入り込んでいることがわかる。
そして、図18において、駆動回路を構成する配線を覆う膜状部の外側に更にそれぞれ離間して2つの膜状部が看て取れ、これら3つの膜状部間の間隙は2つあり、内側の間隙(以下「第1間隙」という。スリット1と印字された矢印が指し示す間隙。)と外側の間隙(以下「第2間隙」という。スリット2と印字された矢印が指し示す間隙。)には、上記充填材がそれぞれ入り込んでいることがわかる。
また、図18は断面図であり、膜状部が、奥行き方向に、どの程度継続して形成されているか読み取れないが、膜状部は、図18において左右方向に配線全体を覆うように形成されていること、及び後述エのとおり絶縁性の層であると解されることから、配線と同方向、つまり図13、及び図17上側写真の上下方向(図18の奥行き方向)に形成されていると解することが自然である。このような解釈は、後述カ(イ)において、内側線状部(後述カ(イ)のとおり、第1間隙が存在している。)、外側線状部(同じく、第2間隙を含む複数の間隙が存在している。)は、配線と交わらず、配線に沿って形成されていることが看て取れることとも整合している。


エ 図20の1、図20の2、図21を併せて見ると、図22は、上記駆動回路を構成する配線のうちの一つの線(以下「一配線」という。)周辺のSEM写真であり、図23、図24の1、図24の2は、当該一配線周辺のEDX分析結果である。

図22における一配線の断面の形状と図23、図24の1、図24の2を見比べると、一配線はTi(チタン)を含んでいることが看て取れ、一配線よりも深さ方向下側にある領域(以下「一配線下側領域」という。)は、N(窒素)、Si(シリコン)、O(酸素)を含んでおり、C(炭素)を含んでおらず、一配線よりも深さ方向上側にある領域(以下「一配線上側領域」という。)は、C(炭素)を含んでいることが看て取れる。
そして、一配線は電気的な配線であることは明らかであるから、一配線上側領域、一配線下側領域は、配線が電気的な配線として機能するために何らかの絶縁性の層で覆われる必要があることは、液晶ディスプレイの技術常識から見て、明らかである。したがって、一配線下側領域の絶縁層は、N(窒素)、Si(シリコン)、O(酸素)を含んでおり、C(炭素)を含んでおらず、一配線上側領域の絶縁層は、C(炭素)を含んでいることが分かる。
ここで、一般的に有機化合物とは「炭素を含む化合物の総称」(広辞苑第四版)であるから、一配線下側領域の絶縁層は、「無機絶縁層」、一配線上側領域の絶縁層は、「有機絶縁層」であると解される。なお、炭素を含む化合物について、炭素の酸化物や炭酸塩など無機化合物に分類されるものもあるものの、そのような材料は、液晶ディスプレイの絶縁膜として、一般的ではないため、上記のように一配線上側領域の絶縁層は有機絶縁層であると解釈することが自然である。
また、図21と図18を見比べると、有機絶縁層は、上記ウ(ウ)の膜状部であると分かる。

オ 図25は、表示領域の画素領域の光学顕微鏡写真であり、図27は、断面丸2におけるEDX分析箇所のSEM写真である。

図28、図29の1、図29の2は、EDX分析結果である。

図28、図29の1、図29の2から見て、画像の右下部分にTi(チタン)、Al(アルミニウム)からなる部材があり、この部材はその材質から見ても配線又は電極などの導電体(以下「右下導電体」という。)であると解される。そして、右下導電体よりも深さ方向下側にある領域には、N(窒素)、Si(シリコン)、O(酸素)を含んだ部分があり、C(炭素)を含んでおらず、同様に上側にある領域には、C(炭素)を含んだ部分があることが分かる。また、これらの上側、下側領域は、右下導電体を挟み込んでいるから、上記エで説示したことと同様に、絶縁性の層であると解される。
上記のような構成は、上記エで説示した一配線の上下側の有機絶縁層、無機絶縁層と同様の材料、配置になっており、製造の効率性や容易性を考慮すれば、周辺領域、表示領域の配線が存在する領域にかけて、これらの絶縁層は、同時に同材料で形成されていると解することが相当である。
したがって、表示領域、及び周辺領域の配線が存在する領域にかけて、無機絶縁層、有機絶縁層(膜状部)が形成されていることが分かる。

カ(ア) 図30の2、図31の2、図32の2、図33の2において、スリット1と印字された矢印が指し示す線状部(以下「内側線状部」という。カラー写真では緑色。)は、連続した1つの線であること、及びスリット2と印字された矢印が指し示す線状部(以下「外側線状部」という。カラー写真では緑色。)は、点線が線幅方向に複数並んだ線状部であることが看て取れる。
また、内側線状部、外側線状部は、表示領域の周囲に形成されており、内側線状部の外側に、外側線状部が、内側線状部と概ね平行に形成されていることが看て取れる。

(イ) 図15のa-a’断面と図33の1の拡大jの場所が概ね近いこと、及び図17上写真と図33の2左上写真が似ていることから、図17上写真と図33の2左上写真は、ほぼ同じ領域を撮影したものであるといえる。

図17下写真は、図17上写真の断面図、図18は、図17下写真の一部拡大図である。図18のアレイ基板の左側に2層の白色層(以下「2層白色層」という。)が看て取れ、図18において、2層白色層の右(内)側に上記ウ(ウ)の第1間隙(スリット1と印字された部分)が、2層白色層の左(外)側に上記ウ(ウ)の第2間隙(スリット2と印字された部分)が存在していることが看て取れる。この前提から、図17と図18を見比べると、図17下写真において2層白色層が看て取れ、その2層白色層の位置に相当する図17上写真には、線状部(カラー写真ではまだら茶色。以下「まだら線状部」という。)があり、このまだら線状部の左側にはやや幅広の線状部(カラー写真では茶と緑が混在。以下「幅広線状部」という。)、右側にはやや幅狭の線状部(カラー写真では濃緑色。以下「幅狭線状部」という。)が看て取れる。これらのことから、第1間隙は幅狭線状部に存在し、第2間隙は幅広線状部に存在していることがわかる。
そして、図17上写真と図33の2左上写真を、回路や配線のようなもの(カラー写真では金色)の位置関係等を勘案して見比べると、図33の2左上写真における内側線状部、外側線状部は、図17上写真の左側にある幅狭線状部、幅広線状部に相当していることがわかるから、図33の2左上写真の内側線状部、外側線状部は、それぞれ第1間隙、第2間隙が存在している領域であると解される。
ここで、外側線状部は点線が線幅方向に複数並んだ線状部である(上記(ア))ことから、各点線を構成する点状部も線幅方向に複数存在することになるところ、このように線幅方向に複数存在する点状部のうちの1つの点状部の断面が、図18において、第2間隙として表れていると解することが自然である。したがって、外側線状部は、第2間隙を含む複数の間隙が存在している領域であるといえる。また、これら複数の間隙には、第2間隙と同様に、上記ウ(ウ)で説示したように充填材が入り込んでいると解することが相当である。これらのことは、図16上写真のアレイ基板の右側に複数の膜状部、間隙が看て取れることとも整合している。
さらに、このような内側線状部、外側線状部と第1間隙、第2間隙を含む複数の間隙の位置関係は、図33の2左上写真だけでなく、図30の2左下、右下写真、図33の2左下、右下写真においても同様と解することが自然である。


(ウ)図30の2、図31の2、図32の2、図33の2の各写真と、これらの写真の取得箇所が示された図34を見ると、図30の2、図31の2、図32の2、図33の2の各写真における内側線状部、外側線状部それぞれの形成状況は、他の写真の内側線状部、外側線状部と比較して特段の相違はなく、同様の線状部が形成されているから、各写真の取得箇所間においても、内側線状部、外側線状部は同様の状態で形成されていると解することが自然である。


(エ)小活
したがって、上記ウ(ウ)の説示も合わせて整理すると、
(i)駆動回路を構成する配線を覆う膜状部の外側にそれぞれ離間して複数の膜状部を備え、膜状部間の間隙は複数あり、最内側の第1間隙と、その外側の複数の間隙には、充填材がそれぞれ入り込んでいること、
(ii)平面視において、第1間隙(内側線状部)は、表示領域の周囲に概ね連続して形成されており、複数の間隙(外側線状部)は、第1間隙の外側に、点線が線幅方向に複数並んだ状態で、第1間隙と概ね平行に形成されていることがわかる。

キ イ号物件の構成についての小括
以上によれば、イ号物件は、次のとおりの構成(以下「30事件当審認定構成」という。)を備えると認められる(以下、分説は当審が行った。なお、括弧内は、構成の認定について記載した箇所を記載した。)。

a1 表示領域と前記表示領域を囲む周辺領域を備え(上記イ)、前記表示領域、前記周辺領域の配線が存在する領域にかけて、アレイ基板上に、無機絶縁層が形成され(上記オ)、
a2 前記周辺領域において前記無機絶縁層の上に駆動回路を構成する配線が形成され(上記ウ(ア)、オ)、
a3 前記表示領域、前記周辺領域の配線が存在する領域にかけて、前記表示領域、前記周辺領域の配線を覆う膜状部である有機絶縁層が形成され(上記ウ(ウ)、エ、オ)、
a4 前記有機絶縁層は離間して複数存在し(上記ウ(ウ))、
b 前記アレイ基板に対向配置される対向基板を備え(上記ウ(イ))、
c 前記配線周辺の前記アレイ基板と前記対向基板間に充填材が充填され(上記ウ(ウ))、
d、e 前記駆動回路を構成する配線を覆う有機絶縁層の外側にそれぞれ離間して複数の有機絶縁層を備え、有機絶縁層間の間隙は複数あり、最内側の第1間隙と、その外側の複数の間隙には、前記充填材がそれぞれ入り込んでおり(上記ウ(ウ)、カ(エ))、
f 平面視において、前記第1間隙は、表示領域の周囲に概ね連続して形成されており(カ(エ))、
g 前記複数の間隙は、前記第1間隙の外側に、点線が線幅方向に複数並んだ状態で、第1間隙と概ね平行に形成されている(カ(エ))、
h 液晶ディスプレイ(上記ア)。

2 充足性の有無
(1)イ号物件は、本件発明との対比の観点では、29事件のイ号物件とは差異はない。そして、被請求人の主張は、下記アの点を除いて、30事件と29事件とで実質的な相違がない。

ア 「無機絶縁膜」(構成要件A1、A2)、「有機絶縁膜」(構成要件A3、A4)の非充足について、被請求人は次のとおり主張する。
(ア)被請求人は、(i)30事件のイ号明細書の図24、図25の1及び図25の2(当審注;30事件の甲2の図28、図29の1及び図29の2)のEDX分析結果の写真は不鮮明であり、Si(シリコン)、N(窒素)及びO(酸素)が検出されたとする領域に炭素が含まれているか否かが不明確であり、また、Si(シリコン)、N(窒素)及びO(酸素)が検出されたとする領域に他の元素が含まれていないことの立証はなされておらず(図24のTiが重なっている可能性、他の金属元素が含まれている可能性も否定できていない)、請求人が絶縁膜であると判断した根拠は全く明らかにされておらず、無機「絶縁膜」であることも立証されていない、(ii)30事件のイ号明細書の図24、図25の1及び図25の2のEDX分析結果の写真は不鮮明であるばかりでなく、絶縁性を有することが必須であることを示す証拠は何ら提出されておらず、これらの写真からイ号物件が「有機絶縁膜」を有することの立証はなされておらず、さらに、30事件のイ号説明書のEDX分析結果の写真は、イ号物件の極めて限られた一部分についてEDX分析を行ったものにすぎず、C(炭素)が検出されたとする領域が、「表示領域」及び「周辺領域」と主張する領域を連続的に覆う膜であることは立証されていない旨、主張する。(30事件答弁書5頁下から4行?6頁4行、7頁下から4行?8頁4行)
しかしながら、(i)(ii)について、上記1(2)オで説示したように、右下導電体の上下側の絶縁性の層は、一配線の上下側の有機絶縁層、無機絶縁層と同時に形成されていると解されるものである。

(イ)したがって、被請求人の上記主張は採用できない。

(2)よって、上記第4の2と同様の議論(ただし、29事件、29事件当審認定構成をそれぞれ30事件、30事件当審認定構成にそれぞれ読み替えるとともに、29事件の甲2の各図面を30事件の甲2の対応する各図面に読み替える。)により、イ号物件は、本件発明の構成要件をすべて充足する。

3 30事件についてのまとめ
以上のとおり、イ号物件は、本件発明の構成要件をすべて充足するから、本件発明の技術的範囲に属する。

第6 31事件についての当審の判断
1 イ号物件について
(1)31事件の判定請求に係るイ号物件
スマートフォンであるZenFone Max Pro(M2)に含まれる液晶ディスプレイ(型式番号:Y8BPN1310109F)。

(2)イ号物件の構成
甲2(調査報告書(特許6518805号/Y8BPN1310109F)、令和2年8月26日、弁護士 高橋雄一郎作成)によれば、イ号物件の構成について次の事実が認められる。なお、断りがない限り、図面番号、頁は甲2のものを示す。
ア イ号物件は、「液晶ディスプレイ」である。(6頁)

イ 図10右側写真から、色が異なる2つの部分が看て取れる。イ号物件は液晶ディスプレイであり、画像表示領域とその周辺に画像表示がなされない他の領域があることは技術常識であり、図11、図13も併せて見れば、上記色が異なる2つの部分の内側は画像表示がなされる「表示領域」であり、外側は画像表示がなされない「周辺領域」であると解される。そして、図10左側写真から、周辺領域は表示領域を囲んでいることが看て取れる。
また、図11右側写真、図13から、上記周辺領域には、何らかの回路が看て取れる。そして、液晶ディスプレイにおいて、表示領域の画素に電圧を印加する駆動回路が必要であることは技術常識であるから、これらの回路は、表示領域を駆動する「駆動回路」であると解される。

ウ(ア)図16上側写真において、図16下側写真で「駆動回路」と印字された領域の左側部分に上下方向に複数の線(図16上側写真で「駆動回路を構成する配線」と印字されたあたり)が看て取れる。これらの複数の線の断面は、図17の2に見ることができ、これらの断面の形状や、上記イにおける「駆動回路」の範囲に配されていることから見て、これらの複数の線は、「駆動回路を構成する配線」であると解される。そして、図11、図16、図17の2から、駆動回路を構成する配線は、周辺領域に存在していることが看て取れる。

(イ)図17の2において、上下にそれぞれ基板が配されていることが看て取れ、下側の基板には配線や駆動回路などが配置されているから、「アレイ基板」であり、上側の基板は、アレイ基板に対向配置されているから、「対向基板」であることが分かる。

(ウ)図18を参照しつつ、図19において、駆動回路を構成する配線周辺の上下の基板間には、粒状体が内部に散乱された材料が充填されており(以下「充填材」という。)、上記充填材とは別に、アレイ基板上に、上記駆動回路を構成する配線を覆うように配置された透明の「膜状部」が看て取れる。同様の膜状部は、上記駆動回路を構成する配線の左側(液晶ディスプレイ全体から見れば「外側」)に、離間して複数存在し、膜状部間には、粒状体が入り込んでいることが看て取れるから、上記充填材が入り込んでいることがわかる。
そして、図19において、駆動回路を構成する配線を覆う膜状部の外側に更にそれぞれ離間して2つの膜状部が看て取れ、これら3つの膜状部間の間隙は2つあり、内側の間隙(以下「第1間隙」という。スリット1と印字された矢印が指し示す間隙。)と外側の間隙(以下「第2間隙」という。スリット2と印字された矢印が指し示す間隙。)には、上記充填材がそれぞれ入り込んでいることがわかる。
また、図19は断面図であり、膜状部が、奥行き方向に、どの程度継続して形成されているか読み取れないが、膜状部は、図19において左右方向に配線全体を覆うように形成されていること、及び後述エのとおり絶縁性の層であると解されることから、配線と同方向、つまり図18上側写真の上下方向(図19の奥行き方向)に形成されていると解することが自然である。このような解釈は、後述カ(イ)において、内側線状部(後述カ(イ)のとおり、第1間隙が存在している。)、外側線状部(同じく、第2間隙を含む複数の間隙が存在している。)は、配線と交わらず、配線に沿って形成されていることが看て取れることとも整合している。


エ 図20、図21を併せて見ると、図22は、上記駆動回路を構成する配線のうちの一つの線(以下「一配線」という。)周辺のSEM写真であり、図23、図24の1、図24の2は、当該一配線周辺のEDX分析結果である。

図22における一配線の断面の形状と図23、図24の1、図24の2を見比べると、一配線はTi(チタン)、Al(アルミニウム)を含んでいることが看て取れ、一配線よりも深さ方向下側にある領域(以下「一配線下側領域」という。)は、N(窒素)、Si(シリコン)、O(酸素)を含んでおり、C(炭素)を含んでおらず、一配線よりも深さ方向上側にある領域(以下「一配線上側領域」という。)は、C(炭素)を含んでいることが看て取れる。
そして、一配線は電気的な配線であることは明らかであるから、一配線上側領域、一配線下側領域は、配線が電気的な配線として機能するために何らかの絶縁性の層で覆われる必要があることは、液晶ディスプレイの技術常識から見て、明らかである。したがって、一配線下側領域の絶縁層は、N(窒素)、Si(シリコン)、O(酸素)を含んでおり、C(炭素)を含んでおらず、一配線上側領域の絶縁層は、C(炭素)、Al(アルミニウム)を含んでいることが分かる。
ここで、一般的に有機化合物とは「炭素を含む化合物の総称」(広辞苑第四版)であるから、一配線下側領域の絶縁層は、「無機絶縁層」、一配線上側領域の絶縁層は、「有機絶縁層」であると解される。なお、炭素を含む化合物について、炭素の酸化物や炭酸塩など無機化合物に分類されるものもあるものの、そのような材料は、液晶ディスプレイの絶縁膜として、一般的ではないため、上記のように一配線上側領域の絶縁層は有機絶縁層であると解釈することが自然である。
また、図21と図19を見比べると、有機絶縁層は、上記ウ(ウ)の膜状部であると分かる。

オ 図25は、表示領域の画素領域の光学顕微鏡写真であり、図26、図27は、断面丸2におけるEDX分析箇所のSEM写真である。

図28、図29の1、図29の2は、EDX分析結果である。

図28、図29の1、図29の2から見て、画像の中央下部分にTi(チタン)、Al(アルミニウム)からなる部材があり、この部材はその材質から見ても配線又は電極などの導電体(以下「中央下導電体」という。)であると解される。そして、中央下導電体よりも深さ方向下側にある領域には、N(窒素)、Si(シリコン)、O(酸素)を含んだ部分があり、C(炭素)を含んでおらず、同様に上側にある領域には、C(炭素)を含んだ部分があることが分かる。また、これらの上側、下側領域は、中央下導電体を挟み込んでいるから、上記エで説示したことと同様に、絶縁性の層であると解される。
上記のような構成は、上記エで説示した一配線の上下側の有機絶縁層、無機絶縁層と同様の材料、配置になっており、製造の効率性や容易性を考慮すれば、周辺領域、表示領域の配線が存在する領域にかけて、これらの絶縁層は、同時に同材料で形成されていると解することが相当である。
したがって、表示領域、及び周辺領域の配線が存在する領域にかけて、無機絶縁層、有機絶縁層(膜状部)が形成されていることが分かる。

カ(ア) 図30の2、図31の2、図32の2、図33の2において、スリット1と印字された矢印が指し示す線状部(以下「内側線状部」という。カラー写真では緑色。)は、連続した1つの線であること、及びスリット2と印字された矢印が指し示す線状部(以下「外側線状部」という。カラー写真では緑色。)は、点線が線幅方向に複数並んだ線状部であることが看て取れる。
また、内側線状部、外側線状部は、表示領域の周囲に形成されており、内側線状部の外側に、外側線状部が、内側線状部と概ね平行に形成されていることが看て取れる。

(イ)図14のa-a’断面と図33の1の拡大nの場所が概ね近いこと、及び図18上写真と図33の2左下写真が似ていることから、 図18上写真と図33の2左下写真は、ほぼ同じ領域を撮影したものであるといえる。

図18下写真は、図18上写真の断面図、図19は、図18下写真の一部拡大図である。図19のアレイ基板の左側に幅広の白色層(以下「幅広白色層」という。)が看て取れ、図18において、幅広白色層の右(内)側に上記ウ(ウ)の第1間隙が、幅広白色層の左(外)側に上記ウ(ウ)の第2間隙が存在していることが看て取れる。この前提から、図18と図19を見比べると、図18下写真において幅広白色層が看て取れ、その幅広白色層の位置に相当する図18上写真には、線状部(カラー写真では薄茶色。以下「薄茶線状部」という。)があり、この薄茶線状部の左側にはやや幅広の線状部(カラー写真では濃緑と薄緑が混在。以下「幅広線状部」という。)、右側にはやや幅狭の線状部(カラー写真では薄緑色。以下「幅狭線状部」という。)が看て取れる。これらのことから、第1間隙は幅狭線状部に存在し、第2間隙は幅広線状部に存在していることがわかる。
そして、図18上写真と図33の2左下写真を、回路や配線のようなもの(カラー写真では金色)の位置関係等を勘案して見比べると、図33の2左下写真における内側線状部、外側線状部は、図18上写真の左側にある幅狭線状部、幅広線状部に相当していることがわかるから、図33の2左下写真の内側線状部、外側線状部は、それぞれ第1間隙、第2間隙が存在している領域であると解される。
ここで、外側線状部は点線が線幅方向に複数並んだ線状部である(上記(ア))ことから、各点線を構成する点状部も線幅方向に複数存在することになるところ、このように線幅方向に複数存在する点状部のうちの1つの点状部の断面が、図19において、第2間隙として表れていると解することが自然である。したがって、外側線状部は、第2間隙を含む複数の間隙が存在している領域であるといえる。また、これら複数の間隙には、第2間隙と同様に、上記ウ(ウ)で説示したように充填材が入り込んでいると解することが相当である。
さらに、このような内側線状部、外側線状部と第1間隙、第2間隙を含む複数の間隙の位置関係は、図33の2左下写真だけでなく、図30の2左下、右下写真、図33の2左上、右下写真においても同様と解することが自然である。

(ウ)図30の2、図31の2、図32の2、図33の2の各写真と、これらの写真の取得箇所が示された図34を見ると、図30の2、図31の2、図32の2、図33の2の各写真における内側線状部、外側線状部それぞれの形成状況は、他の写真の内側線状部、外側線状部と比較して特段の相違はなく、同様の線状部が形成されているから、各写真の取得箇所間においても、内側線状部、外側線状部は同様の状態で形成されていると解することが自然である。

(エ)小活
したがって、上記ウ(ウ)の説示も合わせて整理すると、
(i)駆動回路を構成する配線を覆う膜状部の外側にそれぞれ離間して複数の膜状部を備え、膜状部間の間隙は複数あり、最内側の第1間隙と、その外側の複数の間隙には、充填材がそれぞれ入り込んでいること、
(ii)平面視において、第1間隙(内側線状部)は、表示領域の周囲に概ね連続して形成されており、複数の間隙(外側線状部)は、第1間隙の外側に、点線が線幅方向に複数並んだ状態で、第1間隙と概ね平行に形成されていることがわかる。

キ イ号物件の構成についての小括
以上によれば、イ号物件は、次のとおりの構成(以下「31事件当審認定構成」という。)を備えると認められる(以下、分説は当審が行った。なお、括弧内は、構成の認定について記載した箇所を記載した。)。

a1 表示領域と前記表示領域を囲む周辺領域を備え(上記イ)、前記表示領域、前記周辺領域の配線が存在する領域にかけて、アレイ基板上に、無機絶縁層が形成され(上記オ)、
a2 前記周辺領域において前記無機絶縁層の上に駆動回路を構成する配線が形成され(上記ウ(ア)、オ)、
a3 前記表示領域、前記周辺領域の配線が存在する領域にかけて、前記表示領域、前記周辺領域の配線を覆う膜状部である有機絶縁層が形成され(上記ウ(ウ)、エ、オ)、
a4 前記有機絶縁層は離間して複数存在し(上記ウ(ウ))、
b 前記アレイ基板に対向配置される対向基板を備え(上記ウ(イ))、
c 前記配線周辺の前記アレイ基板と前記対向基板間に充填材が充填され(上記ウ(ウ))、
d、e 前記駆動回路を構成する配線を覆う有機絶縁層の外側にそれぞれ離間して複数の有機絶縁層を備え、有機絶縁層間の間隙は複数あり、最内側の第1間隙と、その外側の複数の間隙には、前記充填材がそれぞれ入り込んでおり(上記ウ(ウ)、カ(エ))、
f 平面視において、前記第1間隙は、表示領域の周囲に概ね連続して形成されており(カ(エ))、
g 前記複数の間隙は、前記第1間隙の外側に、点線が線幅方向に複数並んだ状態で、第1間隙と概ね平行に形成されている(カ(エ))、
h 液晶ディスプレイ(上記ア)。

2 充足性の有無
(1)イ号物件は、本件発明との対比の観点では、29事件のイ号物件とは差異はない。そして、被請求人の主張は、下記アの点を除いて、31事件と29事件とで実質的な相違がない。

ア 「無機絶縁膜」(構成要件A1、A2)、「有機絶縁膜」(構成要件A3、A4)の非充足について、被請求人は次のとおり主張する。
(ア)被請求人は、(i)31事件のイ号明細書の図24、図25の1及び図25の2(当審注;31事件の甲2の図28、図29の1及び図29の2)のEDX分析結果の写真は不鮮明であり、Si(シリコン)、N(窒素)及びO(酸素)が検出されたとする領域に炭素が含まれているか否かが不明確であり、また、Si(シリコン)、N(窒素)及びO(酸素)が検出されたとする領域に他の元素が含まれていないことの立証はなされておらず(図24のTiが重なっている可能性、他の金属元素が含まれている可能性も否定できていない)、請求人が絶縁膜であると判断した根拠は全く明らかにされておらず、無機「絶縁膜」であることも立証されていない、(ii)31事件のイ号明細書の図24、図 25の1及び図25の2のEDX分析結果の写真は不鮮明であるばかりでなく、絶縁性を有することが必須であることを示す証拠は何ら提出されておらず、これらの写真からイ号物件が「有機絶縁膜」を有することの立証はなされておらず、さらに、31事件のイ号説明書のEDX分析結果の写真は、イ号物件の極めて限られた一部分についてEDX分析を行ったものにすぎず、C(炭素)が検出されたとする領域が、「表示領域」及び「周辺領域」と主張する領域を連続的に覆う膜であることは立証されていない旨、主張する。(31事件答弁書5頁下から4行?6頁4行、7頁下から4行?8頁4行)
しかしながら、(i)(ii)について、上記1(2)オで説示したように、中央下導電体の上下側の絶縁性の層は、一配線の上下側の有機絶縁層、無機絶縁層と同時に形成されていると解されるものである。

(イ)したがって、被請求人の上記主張は採用できない。

(2)よって、上記第4の2と同様の議論(ただし、29事件、29事件当審認定構成をそれぞれ31事件、31事件当審認定構成にそれぞれ読み替えるとともに、29事件の甲2の各図面を31事件の甲2の対応する各図面に読み替える。)により、イ号物件は、本件発明の構成要件をすべて充足する。

3 31事件についてのまとめ
以上のとおり、イ号物件は、本件発明の構成要件をすべて充足するから、本件発明の技術的範囲に属する。

第7 むすび
以上のとおりであるから、29事件?31事件のイ号物件は、いずれも、本件発明の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。

 
判定日 2021-07-19 
出願番号 特願2018-39952(P2018-39952)
審決分類 P 1 2・ 1- YA (G02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 横井 亜矢子  
特許庁審判長 山村 浩
特許庁審判官 井上 博之
瀬川 勝久
登録日 2019-04-26 
登録番号 特許第6518805号(P6518805)
発明の名称 表示パネル  
代理人 大野 聖二  
代理人 野本 裕史  
代理人 松野 知紘  
代理人 盛田 真智子  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  
代理人 小林 英了  

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