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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01C
管理番号 1377036
審判番号 不服2020-6475  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-13 
確定日 2021-08-31 
事件の表示 特願2016- 55733「シャント抵抗器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月28日出願公開、特開2017-174843、請求項の数(27)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成28年3月18日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年10月10日付け:拒絶理由通知書
令和元年11月18日 :意見書、手続補正書
令和2年 2月27日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年 5月13日 :審判請求書、手続補正書

第2 原査定の拒絶の概要

この出願の以下の請求項に係る発明は、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1-29
・引用文献1-2

引用文献等一覧
1.米国特許第08871049号明細書
2.米国特許出願公開第2009/0174522号明細書(周知技術を示す文献)

第3 本願発明

本願の請求項1ないし27に係る発明は、令和2年5月13日提出の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし27に記載された事項により特定されるものであり、次のとおりのものと認められる(以下、請求項1ないし27に係る発明を「本願発明1」ないし「本願発明27」という。)。なお、令和2年5月13日提出の手続補正により、補正前の請求項3及び6が削除されたので、補正後の請求項の数は27である。

「【請求項1】
互いに反対側を向く抵抗体主面および抵抗体裏面を有するとともに、金属からなる抵抗体と、
前記抵抗体の厚さ方向に対して直交する第1方向において互いに離間し、かつ前記抵抗体に接合されるとともに、金属からなる一対の電極と、を備えるシャント抵抗器であって、
前記抵抗体は、前記第1方向において互いに離間した2つの端部を有し、
前記抵抗体主面は、前記抵抗体の前記2つの端部にそれぞれ位置する一対の抵抗体主面曲面部と、前記一対の抵抗体主面曲面部の間に位置する抵抗体主面中間部と、を含み、
前記抵抗体は、前記第1方向に離間し、かつ前記抵抗体主面および前記抵抗体裏面につながる一対の抵抗体側面を有し、
前記一対の電極はそれぞれ、前記一対の抵抗体側面の一部に溶接により接合され、
前記一対の抵抗体側面の各々において、当該一部以外の部分が露出しており、
前記抵抗体の前記2つの端部の各々は、それに対応する前記一対の電極のいずれかとの接合により形成された接合領域と、前記接合領域以外の非接合領域と、を含み、
前記抵抗体の前記2つの端部の各々において、前記一対の抵抗体主面曲面部の各々は、前記接合領域から前記非接合領域までに至って連続的に形成されていることを特徴とする、シャント抵抗器。
【請求項2】
前記抵抗体主面中間部は、前記厚さ方向に対して直交する平たん面である、請求項1に記載のシャント抵抗器。
【請求項3】
前記抵抗体は、Ni-Cr合金、Cu-Mn合金、Cu-Ni合金、Cu-Mn-Sn合金またはFe-Cr合金からなる、請求項1または2に記載のシャント抵抗器。
【請求項4】
前記一対の電極は、Cuを含有する合金からなる、請求項1ないし3のいずれかに記載のシャント抵抗器。
【請求項5】
前記溶接は、レーザ溶接である、請求項1ないし4のいずれかに記載のシャント抵抗器。
【請求項6】
前記抵抗体裏面は、前記抵抗体の前記2つの端部にそれぞれ位置する一対の抵抗体裏面曲面部を有する、請求項1ないし5のいずれかに記載のシャント抵抗器。
【請求項7】
前記一対の抵抗体主面曲面部、および前記一対の抵抗体裏面曲面部は、外側に凸形状である、請求項6に記載のシャント抵抗器。
【請求項8】
前記一対の電極の各々は、互いに反対側を向く電極主面および電極裏面を有し、
前記電極主面は、前記抵抗体に接合される端部に位置する電極主面曲面部を有する、請求項6または7に記載のシャント抵抗器。
【請求項9】
前記一対の電極の各々の前記電極裏面は、前記抵抗体に接合される端部に位置する電極裏面曲面部を有する、請求項8に記載のシャント抵抗器。
【請求項10】
前記一対の電極の各々において、前記電極主面曲面部および前記電極裏面曲面部は、外側に凸形状である、請求項9に記載のシャント抵抗器。
【請求項11】
前記一対の電極の各々の前記電極裏面曲面部は、前記一対の抵抗体裏面曲面部のうち対応する当該抵抗体裏面曲面部と面一である、請求項9または10に記載のシャント抵抗器

【請求項12】
前記一対の電極の各々の前記電極主面曲面部と、前記一対の抵抗体主面曲面部のうち対応する当該抵抗体主面曲面部と、の間に段差が形成されている、請求項11に記載のシャント抵抗器。
【請求項13】
前記一対の電極の各々の厚さは、前記抵抗体の厚さよりも小である、請求項12に記載のシャント抵抗器。
【請求項14】
前記一対の電極の各々は、起立部および端子部を含み、
前記起立部は、一端が前記抵抗体に接合され、かつ前記厚さ方向に延出し、
前記端子部は、前記厚さ方向において前記一端とは反対側に位置する前記起立部の他端につながり、かつ前記第1方向に延出し、
前記起立部と前記端子部とがつながる部分において、前記電極主面および前記電極裏面の双方が曲面である、請求項8ないし13のいずれかに記載のシャント抵抗器。
【請求項15】
前記一対の電極の各々の前記端子部は、互いに遠ざかるように延出している、請求項14に記載のシャント抵抗器。
【請求項16】
前記一対の電極の各々の前記端子部は、互いに近づくように延出している、請求項14に記載のシャント抵抗器。
【請求項17】
前記一対の電極の各々の前記端子部には、前記第1方向に延び、かつ前記電極主面から前記電極裏面までに至る端子部貫通溝が形成され、
当該端子部は、前記端子部貫通溝により、互いに離間する第1端子部および第2端子部に分割されている、請求項14ないし16のいずれかに記載のシャント抵抗器。
【請求項18】
前記厚さ方向および前記第1方向の双方に対して直交する第2方向において、前記第1端子部の長さは、前記第2端子部の長さよりも大である、請求項17に記載のシャント抵抗器。
【請求項19】
前記一対の電極の各々の前記起立部には、前記端子部貫通溝につながるとともに、前記厚さ方向に延び、かつ前記電極主面から前記電極裏面までに至る起立部貫通溝が形成されている、請求項17または18に記載のシャント抵抗器。
【請求項20】
前記一対の電極の各々において、前記端子部貫通溝の幅と、前記起立部貫通溝の幅とは、同一の長さである、請求項19に記載のシャント抵抗器。
【請求項21】
前記一対の抵抗体側面の各々は、前記厚さ方向に対して傾斜している、請求項1ないし20のいずれかに記載のシャント抵抗器。
【請求項22】
前記一対の抵抗体主面曲面部の各々の端部は、前記厚さ方向において、前記抵抗体主面中間部よりも前記抵抗体裏面に寄って位置している、請求項1ないし21のいずれかに記載のシャント抵抗器。
【請求項23】
前記第1方向における長さは、前記抵抗体主面の方が前記抵抗体裏面よりも大である、請求項1ないし22のいずれかに記載のシャント抵抗器。
【請求項24】
前記一対の抵抗体主面曲面部の各々は、前記第1方向において最も外方に位置する曲面部端部を有し、
前記抵抗体裏面は、前記第1方向において互いに離間した2つの裏面端部を有し、
前記第1方向において、前記2つの裏面端部は、前記一対の抵抗体主面曲面部の前記曲面部端部の間に位置する、請求項1ないし5のいずれかに記載のシャント抵抗器。
【請求項25】
前記抵抗体裏面は、前記2つの裏面端部の間に位置する裏面中間部を有し、
前記2つの裏面端部は、前記裏面中間部に対して前記厚さ方向において前記抵抗体主面から離れる向きに位置する、請求項24に記載のシャント抵抗器。
【請求項26】
前記一対の電極の各々は、当該一対の電極の前記第1方向における隙間に対向する電極端面を有し、
前記第1方向において、前記一対の電極の前記電極端面は、前記2つの裏面端部の間に位置する、請求項24または25に記載のシャント抵抗器。
【請求項27】
前記第1方向において、前記2つの裏面端部の間の距離は、前記一対の電極の前記電極端面の間の距離よりも長い、請求項26に記載のシャント抵抗器。」

第4 引用文献、引用発明

1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された文献である、米国特許第08871049号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、括弧内で示した仮訳は当審で作成した。また、仮訳中の下線は当審で付与した。

ア.「First of all, step S10 is performed to provide a resistance material 10 and two electrode materials 12 (as shown in FIG. 2A ), wherein a reflectivity of the resistance material 10 is smaller than a reflectivity of the electrode material 12 . In this embodiment, the resistance material 10 may be NiCu alloy, MnCu alloy, NiCr alloy, NiCrAlSi alloy, CuMnSn alloy and so on, and the electrode material 12 may be Cu, Cu coated solder and so on.(第2欄67行目-第3欄7行目)」
(まず、ステップS10において、抵抗材料10および2つの電極材料12が提供され (図2(A)に示すように)、ここにおいて、抵抗材料10の反射率は電極材料12の反射率よりも小さい。この実施形態では、抵抗材料10は、NiCu合金、MnCu合金、NiCr合金、NiCrAlSi合金CuMnSn合金等であってよく、また、電極材料12は、Cu、ハンダによりコーティングされたCu等とすることができる。)

イ.「Afterward, step S12 is performed to fix the two electrode materials 12 at opposite sides of the resistance material 10 , as shown in FIG. 2A . Step S14 is then performed to weld two first junctions 16 between the resistance material 10 and the two electrode materials 12 by a first laser 14 from a first side S1 of the resistance material 10 , wherein a beam area A1 from the first laser 14 to the resistance material 10 is larger than a beam area A2 from the first laser 14 to the electrode material 12, as shown in FIG. 2B . Step S16 is then performed to weld two second junctions 18 between the resistance material 10 and the two electrode materials 12 by the first laser 14 from a second side S2 of the resistance material 10 (as shown in FIG. 2C ), wherein the second side S2 is opposite to the first side S1 . In step S16 , the beam area A1 from the first laser 14 to the resistance material 10 is still larger than the beam area A2 from the first laser 14 to the electrode material 12 . Since the reflectivity of the resistance material 10 is smaller than the reflectivity of the electrode material 12, the resistance material 10 with smaller reflectivity absorbs more laser energy and then transmits heat to the electrode material 12 . The heat, which is transmitted to the electrode material 12 from the resistance material 10 , can be used with laser energy absorbed by the electrode material 12 to weld the electrode material 12 and the resistance material 10 well.(第3欄8行目-31行目)」
(その後、ステップS12において、図2Aに示すように、抵抗材料10の両端部に2つの電極材料12を固定する処理が実施される。その後、ステップS14において、第1レーザー14により、抵抗材料S10の第1面S1から、抵抗材料10と2つの電極材料12との間の2つの第1接続部16を溶接する処理が実施され、ここで、図2Bに示すように、第1レーザー14から抵抗材料10に対するビーム面積A1は、第1レーザー14から電極材料12に対するビーム面積A2より大きい。その後、ステップS16において、第1レーザー14により、抵抗材料S10の第2面S2から、抵抗材料10と2つの電極材料12との間の2つの第2接続部18を溶接する処理が実施され(図2Cに示すように)、ここで、第2面S2は、第1面S1と反対側の面である。抵抗材料10の反射率が、電極材料12の反射率より小さいため、より小さい反射率を有する抵抗材料10は、より多くのレーザーエネルギーを吸収し、そして、熱を電極材料12に伝達する。抵抗材料10から電極材料12に伝達される熱は、電極材料12により吸収されるレーザーエネルギーと共に、電極材料12と抵抗材料10を十分に溶接するために使用可能である。)

ウ.「In this embodiment, the first laser 14 may be a pulsed laser such that a fish-scale pattern is formed on each of the two first junctions 16 and the two second junctions 18 after welding.(第3欄32行目-34行目。)」
(この実施形態において、第1レーザー14は、パルスレーザーであってよく、このため、溶接後に、2つの第1接続部16と2つの第2接続部18のそれぞれに、魚の鱗状のパターンが形成される。)

エ.「Then, step S18 is performed to perform a drawing process on the resistance material 10 and the two electrode materials 12 after welding the two first junctions 16 and the two second junctions 18. After the drawing process, there is a height difference between the resistance material 10 and the electrode material 12. Finally, step S20 is performed to cut the resistance material 10 and the two electrode materials 12 so as to complete the resistor 1 shown in FIGS. 3 and 4 . Since the method of the invention welds the two first junctions 16 and the two second junctions 18 from the first side S1 and the second side S2 , respectively, the aforesaid fish-scale pattern is formed on each of the two first junctions 16 and the two second junctions 18 after welding.(第3欄58行目-第4欄3行目。)」
(そして、2つの第1接続部16と2つの第2接続部18を溶接した後、ステップS18において、抵抗材料10と2つの電極材料12を引きつけるプロセスが実施される。当該引きつけプロセス後、抵抗材料10と電極材料12との間には、高さの差異が生じる。最後に、ステップS20において、図3,4に示される抵抗体1を完成させるように、抵抗材料10と電極材料12を切断する処理が実施される。この発明の方法は、2つの第1接続部16と2つの第2接続部18を、第1面S1と第2面S2から溶接することから、溶接後に、前述の魚の鱗状のパターンが、2つの第1接続部16と2つの第2接続部18のそれぞれに形成される。)








・上記エによれば、抵抗材料10と電極材料12を備える抵抗器が記載されている。

・上記アによれば、抵抗材料10および電極材料12が金属からなることが示されている。また、上記イによれば、抵抗材料が第1面S1と、第1面S1と反対側の面である第2面S2を備えることが記載されている。

・上記イによれば、抵抗材料10の両端部に2つの電極材料12が固定され、抵抗材料10と2つの電極材料12との間の2つの第1接続部16と2つの第2接続部18が溶接されることが記載されている。

・上記ウによれば、溶接により第1接続部16と第2接続部18に魚の鱗状のパターンが形成されることが示されている。

・上記エによれば、抵抗材料10と電極材料12との間には、高さの差異が生じることが記載されている。また、図3、4によれば、抵抗材料10と2つの電極材料12との間の2つの第1接続部16と2つの第2接続部18に形成される魚の鱗状のパターンの位置が曲面とされている点が見てとれる。

上記ア.ないしエ.の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「第1面S1と、第1面S1と反対側の面である第2面S2を備え、金属からなる抵抗材料10と、
金属からなる2つの電極材料12と、を備える抵抗器であって、
抵抗材料10の両端部に2つの電極材料12が固定され、抵抗材料10と2つの電極材料12との間の2つの第1接続部16と2つの第2接続部18が溶接され、
溶接により、第1接続部16と第2接続部18に魚の鱗状のパターンが形成されており、
抵抗材料10と電極材料12との間には、高さの差異が生じ、抵抗材料10と2つの電極材料12との間の2つの第1接続部16と2つの第2接続部18に形成される魚の鱗状のパターンの位置が曲面である、抵抗器。」

2 引用文献2について

原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された文献である、米国特許出願公開第2009/0174522号明細書(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、括弧内で示した仮訳は当審で作成した。また、仮訳中の下線は当審で付与した。

「[0026]FIG. 1 is a perspective view of an example of a shunt resistor 10 . The shunt resistor 10 comprises a first connecting leg 11, a second connecting leg 12 , an optional third connecting leg 13 , and an optional fourth connecting leg 14 . Each of the connecting legs 11 , 12 , 13 , 14 comprises a flange 11a, 12a (hidden in FIG. 1 ), 13 a, and 14 a, respectively. A resistance area 15 , which has a predetermined electrical resistance, is arranged between the first connecting leg 11 and the second connecting leg 12, and between the third connecting leg 13 and the fourth connecting leg 14 . Compared with the resistance area 15 , the first connecting leg 11 and the second connecting leg 12 have a low electric resistance. 」
(図1はシャント抵抗器10の斜視図である。シャント抵抗器10は、第1接続レグ11、第2接続レグ12、任意の第3接続レグ13、及び任意の第4接続レグ14とを備えている。各接続レグ11,12,13,14は、それぞれフランジ11a,12a(図1では隠れている。),13a,14aを備えている。所定の電気抵抗を有する抵抗領域15は、第1接続レグ11と第2接続レグ12との間、及び、第3接続レグ13と第4接続レグ14との間に配置される。抵抗領域15と比較して、第1接続レグ11及び第2接続レグ12は、小さな電気抵抗を有する。)











・図5、6C、7Eによれば、抵抗領域15の側面の一部に第1接続レグ11及び第2接続レグ12を接合し、抵抗領域15の側面の一部以外の部分を露出した構成が見てとれる。

よって、上記記載事項及び図面から、引用文献2には、「抵抗領域15の側面の一部に第1接続レグ11及び第2接続レグ12を接合し、抵抗領域15の側面の一部以外の部分を露出したシャント抵抗器」という技術的事項が記載されている。

第5 対比・判断

1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明との対比を行う。
ア.引用発明の「第1面S1」および「第2面S2」をそれぞれ抵抗体主面、抵抗体裏面と称することは任意であるから、引用発明の「第1面S1と、第1面S1と反対側の面である第2面S2を備え、金属からなる抵抗材料10」は、本願発明1の「互いに反対側を向く抵抗体主面及び抵抗体裏面を有すると共に、金属からなる抵抗体」に相当する。

イ.引用発明の2つの電極材料12は、抵抗材料10の両端部に固定されるものであるところ、抵抗材料10の両端部は、抵抗材料10の厚さ方向に対して直交する第1方向において離間する箇所に位置するので、2つの電極材料12は、抵抗材料10の厚さ方向に対して直交する第1方向において互いに離間するものである。
よって、本願発明1の「金属からなる一対の電極」と引用発明の「金属からなる2つの電極材料12」は、「前記抵抗体の厚さ方向に対して直交する第1方向において互いに離間し、かつ前記抵抗体に接続されると共に、金属からなる一対の電極」である点で一致する。

ウ.本願発明1の「シャント抵抗器」と引用発明の「抵抗器」は、共に「抵抗器」である点で一致する。
ただし、本願発明1の抵抗器が、「シャント抵抗器」であるのに対して、引用発明には、その旨の特定がない点で相違する。

エ.引用発明の「抵抗材料10の両端部」は、本願発明1の「2つの端部」に相当する。また、引用発明の抵抗材料10の両端部にそれぞれ側面が形成されていることは明らかである。
また、引用発明の「抵抗材料10」は、2つの電極材料12との間の2つの第1接続部16と2つの第2接続部18が溶接され、当該第1接続部16と第2接続部18に魚の鱗状のパターンが形成され、さらに、2つの第1接続部16と2つの第2接続部18に形成される魚の鱗状のパターンの位置が曲面とされていることから、抵抗材料10の第1面S1において、端部の2つの第1接続部16に対応する箇所が曲面部とされていると解するのが相当である。
さらに、この2つの曲面部の間に位置する面を中間部と称することは任意である。
よって、本願発明1の「抵抗体」と引用発明の「抵抗材料10」は、「前記抵抗体は、前記第1方向において互いに離間した2つの端部を有し、前記抵抗体主面は、前記抵抗体の前記2つの端部にそれぞれ位置する一対の抵抗体主面曲面部と、前記一対の抵抗体主面曲面部の間に位置する抵抗体主面中間部と、を含み、前記抵抗体は、前記第1方向に離間し、かつ前記抵抗体主面および前記抵抗体裏面につながる一対の抵抗体側面を有」する点で一致する。

オ.引用発明の「2つの電極材料12」は、抵抗材料10の両端部に固定され、抵抗材料10との間の2つの第1接続部16と2つの第2接続部18で溶接されるものである。
よって、本願発明1の「一対の電極」と、引用発明の「2つの電極材料12」は、「前記一対の電極はそれぞれ、前記一対の抵抗体側面に溶接により接合され」ている点で一致する。
ただし、本願発明1では、「前記一対の電極はそれぞれ、前記一対の抵抗体側面の一部に溶接により接合され、前記一対の抵抗体側面の各々において、当該一部以外の部分が露出して」いるのに対し、引用発明には、その旨の特定がない点で相違する。

カ.引用発明の「魚の鱗状のパターン」は溶接により形成されるものである。よって、引用発明において、抵抗材料10の両端部において魚の鱗状のパターンが形成されている領域は、本願発明1の「接合領域」に相当し、また、抵抗材料10の両端部において魚の鱗状のパターンが形成されていない領域は、本願発明1の「非接合領域」に相当すると認められる。
また、引用発明において、抵抗材料10と2つの電極材料12との間の2つの第1接続部16と2つの第2接続部18に形成される魚の鱗状のパターンの位置が曲面とされていることから、抵抗材料10の第1面S1のうち、魚の鱗状のパターンが形成されている領域は曲面部を形成しているといえる。
よって、本願発明1の「抵抗体」と引用発明の「抵抗材料10」は、「前記抵抗体の前記2つの端部の各々は、それに対応する前記一対の電極のいずれかとの接合により形成された接合領域と、前記接合領域以外の非接合領域と、を含み、前記抵抗体の前記2つの端部の各々において、前記一対の抵抗体主面曲面部の各々は、前記接合領域に形成されている」点で一致する。
ただし、本願発明1では、「前記一対の抵抗体主面曲面部の各々は、前記接合領域から前記非接合領域までに至って連続的に形成されている」のに対し、引用発明にはその旨の特定がない点で相違する。

したがって、本願発明1と引用発明の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「互いに反対側を向く抵抗体主面および抵抗体裏面を有するとともに、金属からなる抵抗体と、
前記抵抗体の厚さ方向に対して直交する第1方向において互いに離間し、かつ前記抵抗体に接合されるとともに、金属からなる一対の電極と、を備える抵抗器であって、
前記抵抗体は、前記第1方向において互いに離間した2つの端部を有し、
前記抵抗体主面は、前記抵抗体の前記2つの端部にそれぞれ位置する一対の抵抗体主面曲面部と、前記一対の抵抗体主面曲面部の間に位置する抵抗体主面中間部と、を含み、
前記抵抗体は、前記第1方向に離間し、かつ前記抵抗体主面および前記抵抗体裏面につながる一対の抵抗体側面を有し、
前記一対の電極はそれぞれ、前記一対の抵抗体側面に溶接により接合され、
前記抵抗体の前記2つの端部の各々は、それに対応する前記一対の電極のいずれかとの接合により形成された接合領域と、前記接合領域以外の非接合領域と、を含み、
前記抵抗体の前記2つの端部の各々において、前記一対の抵抗体主面曲面部の各々は、前記接合領域に形成されている、抵抗器。」

(相違点1)
「抵抗器」に関して、本願発明1は、「シャント抵抗器」であるのに対し、引用発明はその旨の特定がされていない点。

(相違点2)
本願発明1では「前記一対の電極はそれぞれ、前記一対の抵抗体側面の一部に溶接により接合され、前記一対の抵抗体側面の各々において、当該一部以外の部分が露出して」いるのに対し、引用発明はその旨の特定がされていない点。

(相違点3)
本願発明1では「前記一対の抵抗体主面曲面部の各々は、前記接合領域から前記非接合領域までに至って連続的に形成されている」のに対し、引用発明はその旨の特定がされていない点。

(2)相違点についての判断
(相違点3)について
事案に鑑み、相違点3について検討する。
引用文献1の図3,4からは、魚の鱗状のパターンが形成された領域に曲面部を形成する点については見てとれるものの、当該魚の鱗状のパターンが形成されていない領域(本願発明の「非接合領域」)までに至って連続的に曲面部を形成する点は確認できない。
また、引用文献1には、どの領域に曲面部を形成するかについての記載がないから、「前記一対の抵抗体主面曲面部の各々は、前記接合領域から前記非接合領域までに至って連続的に形成されている」ことについても記載も示唆もされていない。
さらに、引用文献2にも「前記一対の抵抗体主面曲面部の各々は、前記接合領域から前記非接合領域までに至って連続的に形成されている」ことについて記載も示唆もされていない。
そして、引用発明から上記構成を導き出す動機付けも存在しない。
以上のことから、相違点3に係る構成は、引用発明および引用文献2に記載の技術事項から導き出すことはできない。
よって、相違点1および相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明および引用文献2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2-27について
本願発明1を引用する本願発明2-27は、本願発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明および引用文献2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願は拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-08-11 
出願番号 特願2016-55733(P2016-55733)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 晃洋  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 永井 啓司
畑中 博幸
発明の名称 シャント抵抗器  
代理人 臼井 尚  

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