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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01G 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01G |
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管理番号 | 1377136 |
審判番号 | 不服2020-10148 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-07-20 |
確定日 | 2021-08-31 |
事件の表示 | 特願2016-122002「積層セラミックコンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月28日出願公開、特開2017-228588、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)6月20日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和1年11月12日付け:拒絶理由通知書 令和2年 1月20日 :意見書、手続補正書の提出 令和2年 4月14日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。) 令和2年 7月20日 :審判請求書の提出 第2 原査定の理由 原査定の概要は以下のとおりである。 1.(新規性)本願の請求項1-3、5、6に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 2.(進歩性)本願の請求項1-3、5、6に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ●理由1(特許法第29条第1項第3号)、理由2(特許法第29条第2項)について ・請求項 1-3、5、6 ・引用文献等 1 引用文献1:国際公開第2004/070748号 第3 本願発明 本件特許出願の請求項に係る発明は、令和2年1月20日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1ないし6に係る発明(以下、「本願発明1ないし6」という。)は、次の事項により特定されるものである。 「【請求項1】 1対の外部電極と、 Niを含み、前記外部電極の一方に接続された第1内部電極と、 前記第1内部電極上に積層され、BaTiO_(3)およびNiを含む誘電体層と、 前記誘電体層上に積層され、Niを含み、前記外部電極の他方に接続された第2内部電極と、を備え、 前記第1内部電極と前記第2内部電極との間の前記積層の方向において、前記誘電体層の前記第1内部電極から50nm離れた位置から前記誘電体層の前記第2内部電極から50nm離れた位置までを積層方向に5つの領域に等分し、前記5つの領域をそれぞれ透過型電子顕微鏡で分析して得られるNi濃度が0.015?0.045であることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。 【請求項2】 前記5つの領域の中央部領域におけるNi濃度に対して、前記5つの領域のうち前記第1内部電極および前記第2内部電極に最も近い端部領域の少なくともいずれか一方のNi濃度が10%以上高いことを特徴とする請求項1記載の積層セラミックコンデンサ。 【請求項3】 前記5つの領域の中央部領域におけるNi濃度に対して、前記5つの領域のうち前記第1内部電極および前記第2内部電極に最も近い端部領域の少なくともいずれか一方のNi濃度が15%以上高いことを特徴とする請求項1記載の積層セラミックコンデンサ。 【請求項4】 前記誘電体層の積層数は、200以上であることを特徴とする請求項1または2記載の積層セラミックコンデンサ。 【請求項5】 複数の誘電体層が内部電極を介して積層され、 前記複数の誘電体層のうち、80%以上が前記誘電体層であることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサ。 【請求項6】 前記Ni濃度は、Ni/(Ba+Ti)の原子濃度比率であることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサ。」 第4 引用文献、引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(国際公開第2004/070748号)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、一部の下線は当審で付与した。 ア.「技術分野 【0001】 本発明は、たとえば積層セラミックコンデンサなどの電子部品に関する。 背景技術 【0002】 電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に複数配置された積層構造の素子本体と、該素子本体の両端部に形成された一対の外部端子電極とで構成される。」 イ.「【0054】 以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。 第1実施形態 まず、本発明に係る電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。 図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体(素子本体)4と、第1端子電極6と、第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、誘電体層10と、内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、これらの内部電極層12が交互に積層してある。交互に積層される一方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第1端部4aの外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第2端部4bの外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。 【0055】 内部電極層12は、合金を含んで構成される。内部電極層12を構成する合金は、ニッケル(Ni)と、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)および白金(Pt)から選ばれる少なくとも1種の元素とを、有する。該合金中のNiの含有量は、80?100モル%(ただし、100モル%は除く)、好ましくは87?100モル%(ただし、100モル%は除く)、さらに好ましくは87?99.9モル%である。該合金中のRu、Rh、ReおよびPtの合計含有量は、0?20モル%(ただし、0モル%は除く)、好ましくは0?13モル%(ただし、0モル%は除く)、さらに好ましくは0.1?13モル%である。なお、Ru、Rh、ReおよびPtの各元素それぞれの比率は、任意である。Ru、Rh、ReおよびPtの合計含有量が20モル%を超えると、抵抗率が上昇するなどの不都合を生じる傾向にある。なお、合金中には、S、P、C等の各種微量成分が0.1モル%程度以下で含まれていてもよい。好ましい組み合わせは、Ni-Rh、Ni-Re、Ni-Ptのいずれかである。 【0056】 内部電極層12は、後で詳細に説明するように、図2?図3に示すように、内部電極層用膜12aをセラミックグリーンシート10aに転写して形成され、内部電極層用膜12aと同じ材質で構成されるが、その厚みは、焼成による水平方向の収縮分だけ内部電極層用膜12aよりも厚くなる。各内部電極層12の厚みは、好ましくは0.1?1μmである。 【0057】 誘電体層10の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。各誘電体層10の厚みは、特に限定されないが、数μm?数百μmのものが一般的である。特に本実施形態では、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下に薄層化されている。」 ウ.「【0060】 次に、積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。まず、焼成後に図1に示す誘電体層10を構成することになるセラミックグリーンシートを製造するために、誘電体ペーストを準備する。誘電体ペーストは、通常、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。 (中略) 【0086】 本発明では、グリーンチップの焼成を、酸素分圧が好ましくは10^(-10)?10^(-2)Pa、より好ましくは10^(-10)?10^(-5)Paの雰囲気で行う。焼成時の酸素分圧が低すぎると、内部電極層の導電材(合金)が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがあり、逆に酸素分圧が高すぎると、内部電極層が酸化する傾向がある。 【0087】 本発明では、グリーンチップの焼成を、1300℃以下、より好ましくは1000?1300℃、特に好ましくは1150?1250℃の低温で行う。焼成温度が低すぎると、グリーンチップが緻密せず、逆に焼成温度が高すぎると、内部電極が途切れたり、導電材の拡散により容量温度特性が悪化したり、誘電体の還元が生じてしまうからである。 【0088】 これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50?500℃/時間、より好ましくは200?300℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5?8時間、より好ましくは1?3時間、冷却速度を好ましくは50?500℃/時間、より好ましくは200?300℃/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、N_(2)とH_(2)との混合ガスをウェット(加湿)状態で用いることが好ましい。 【0089】 本発明では、焼成後のコンデンサチップ体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これにより絶縁抵抗(IR)の加速寿命を著しく長くすることができ、信頼性が向上する。 【0090】 本発明では、焼成後コンデンサチップ体のアニールを、焼成時の還元雰囲気よりも高い酸素分圧下で行うことが好ましく、具体的には、酸素分圧が好ましくは10^(-2)?100Pa、より好ましくは10^(-2)?10Paの雰囲気で行う。アニール時の酸素分圧が低すぎると、誘電体層2の再酸化が困難であり、逆に高すぎると、内部電極層3が酸化する傾向にある。 【0091】 本発明では、アニール時の保持温度または最高温度を、好ましくは1200℃以下、より好ましくは900?1150℃、特に好ましくは1000?1100℃とする。また、本発明では、これらの温度の保持時間を、好ましくは0.5?4時間、より好ましくは1?3時間とする。アニール時の保持温度または最高温度が、前記範囲未満では誘電体材料の酸化が不十分なために絶縁抵抗寿命が短くなる傾向にあり、前記範囲をこえると内部電極のNiが酸化し、容量が低下するだけでなく、誘電体素地と反応してしまい、寿命も短くなる傾向にある。なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。」 エ.「【0150】 焼成は、 昇温速度:5?500℃/時間、特に200?300℃/時間、 保持持温度:1000?1300℃、特に1150?1250℃、 保持時間:0.5から8時間、特に1?3時間、 冷却速度:50?500℃/時間、特に200?300℃/時間、 雰囲気ガス:加湿したN_(2)とH_(2)の混合ガス、 酸素分圧:各表参照、 で行った。 【0151】 アニール(再酸化)は、 昇温速度:200?300℃/時間、 保持温度:各表参照 保持時間:2時間、 冷却速度:300℃/時間、 雰囲気ガス:加湿したN_(2)ガス、 酸素分圧:各表参照、 で行った。なお、雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを用い、水温0?75℃にて行った。」 「図1 」 「表6 」 上記イ及び図1によれば、引用文献1には「積層セラミックコンデンサ」について、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「コンデンサ素体4と、第1端子電極6と、第2端子電極8とを有し、 コンデンサ素体4は、 誘電体層10と内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、これらの内部電極層12が交互に積層され、 交互に積層される一方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第1端部4aの外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続し、 交互に積層される他方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第2端部4bの外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続し、 内部電極層12を構成する合金は、ニッケル(Ni)を有し、 誘電体層10の材質は、チタン酸バリウムで構成される、 積層セラミックコンデンサ。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア.上記「第4」「ア.」において摘記した引用文献1の【0002】に記載のとおり、「積層セラミックコンデンサ」は、誘電体層と内部電極層とが交互に複数配置された積層構造の素子本体と、該素子本体の両端部に形成された一対の外部端子電極とで構成されるものである。 ここで、引用発明の「第1端子電極6」は「コンデンサ素体4の第1端部4aの外側に形成」され、同「第2端子電極8」は「コンデンサ素体4の第2端部4bの外側に形成」されるものであるから、「第1端子電極6」と「第2端子電極」は、コンデンサ素体4の両端部に形成される端子電極である。 よって、「第1端子電極6」と「第2端子電極」は一対の外部端子電極を構成するものと認める。 したがって、引用発明の「第1端子電極6」と「第2端子電極」は、本願発明1の「1対の外部電極」に相当する。 イ.引用発明の「コンデンサ素体4」は「誘電体層10と内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、これらの内部電極層12が交互に積層され」るものであり、内部電極層12のうち、「一方の内部電極層12」は「第1端子電極6」に接続され、「他方の内部電極層12」は「第2端子電極8」に接続されるものである。 そして、上記「一方の内部電極層12」は、本願発明1の「第1内部電極」に相当し、「一方の内部電極層12」と接続される「第1端子電極6」は、本願発明1の「外部電極の一方」に相当する。また、引用発明の「他方の内部電極層12」及び「第2端子電極8」は、それぞれ本願発明1の「第2内部電極」及び「外部電極の他方」に相当する。 また、引用発明の「コンデンサ素体4」は「一方の内部電極層12」上に「誘電体層10」が積層され、さらに、「誘電体層10」上に「他方の内部電極層12」が積層されているといえる。 さらに、引用発明の内部電極層12を構成する合金は、ニッケル(Ni)を有し、誘電体層10の材質は、チタン酸バリウムで構成されるものである。 したがって、引用発明の「コンデンサ素体4は、誘電体層10と内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、これらの内部電極層12が交互に積層され、交互に積層される一方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第1端部4aの外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続し、交互に積層される他方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第2端部4の外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続し、内部電極層12を構成する合金は、ニッケル(Ni)を有し、誘電体層10の材質は、チタン酸バリウムで構成される」ことは、本願発明1の「Niを含み、前記外部電極の一方に接続された第1内部電極と、前記第1内部電極上に積層され、BaTiO_(3)を含む誘電体層と、前記誘電体層上に積層され、Niを含み、前記外部電極の他方に接続された第2内部電極と、を備え」ることに相当する。 ただし、本願発明1の「誘電体層」はNiを含むのに対し、引用発明にはその旨の特定がない点で相違する。 ウ.本願発明1は、「前記第1内部電極と前記第2内部電極との間の前記積層の方向において、前記誘電体層の前記第1内部電極から50nm離れた位置から前記誘電体層の前記第2内部電極から50nm離れた位置までを積層方向に5つの領域に等分し、前記5つの領域をそれぞれ透過型電子顕微鏡で分析して得られるNi濃度が0.015?0.045である」のに対し、引用発明には、その旨の特定がない点で相違する。 エ.上記アないしウによれば、本願発明1と引用発明は、次の(一致点)と(相違点)を有する。 (一致点) 「1対の外部電極と、 Niを含み、前記外部電極の一方に接続された第1内部電極と、 前記第1内部電極上に積層され、BaTiO_(3)を含む誘電体層と、 前記誘電体層上に積層され、Niを含み、前記外部電極の他方に接続された第2内部電極と、を備えた、 積層セラミックコンデンサ。」 (相違点) 本願発明1は、「誘電体層」が「Niを含む」ものであり、また、「前記第1内部電極と前記第2内部電極との間の前記積層の方向において、前記誘電体層の前記第1内部電極から50nm離れた位置から前記誘電体層の前記第2内部電極から50nm離れた位置までを積層方向に5つの領域に等分し、前記5つの領域をそれぞれ透過型電子顕微鏡で分析して得られるNi濃度が0.015?0.045である」のに対し、引用発明には、その旨の特定がない点。 (2)判断 上記相違点について判断する。 ア.引用発明の「積層セラミックコンデンサ」について「誘電体層10」のNi濃度は特定がなく不明である。 イ.次に、引用発明に係る製造方法から、上記相違点の構成がいえるか検討する。 (a)本願発明1に係る製造方法について 本願の発明の詳細な説明の【0036】ないし【0052】には、本願発明1の「積層セラミックコンデンサ」に係る製造方法が記載されているものと認められる。 そして、本願発明1に係る製造方法は、1次焼成工程ないし3次焼成工程を含むところ、【0045】および【0047】の記載によれば、2次焼成工程を中心とした1次焼成工程ないし3次焼成工程における焼成の条件を制御することにより、誘電体層の5つの領域のNi濃度を、上記相違点に係る構成である、0.015?0.045の範囲に制御している。 ここで、各焼成工程における焼成条件は以下のとおりである。 (1次焼成工程)(【0044】を参照。) 酸素分圧:10^(-5)Pa?10^(-7)Pa 焼成温度:1100?1300℃ 焼成時間:10分?2時間 (2次焼成工程)(【0045】を参照。) 酸素分圧:10^(-3)Pa?10^(-6)Pa 焼成温度:1次焼成温度よりも50℃程度高い1150℃?1350℃ 焼成時間:0.25時間から0.5時間 (3次焼成工程)(【0046】を参照。) 酸素分圧:10^(-2)Pa?10Pa 焼成温度:600℃?1000℃ 焼成時間:1時間程度 (b)引用発明に係る製造方法について 上記「第4」「ウ.」および「エ.」において摘記した、引用文献1の【0060】ないし【0091】【0150】【0151】には、引用発明の「積層セラミックコンデンサ」に係る製造方法が記載されていると認められるところ、焼成およびアニールに着目すると、各工程における条件は次のとおりである。 (焼成)【0086】ないし【0088】、【0150】 酸素分圧:10^(-10)Pa?10^(-2)Pa 焼成温度:1000?1300℃ 温度保持時間:0.5?8時間 (アニール)【0089】ないし【0093】、【0151】 酸素分圧:10^(-2)Pa?100Pa アニール時の保持温度または最高温度:1200℃以下 温度保持時間:0.5?4時間 また、引用文献1の【表6】の2行目に記載の実施例における焼成及びアニールの条件は次のとおりである。 (焼成) 酸素分圧:10^(-7)Pa 焼成温度:1000℃ (アニール) 酸素分圧:10^(-1)Pa アニール温度:1050℃ アニール時間:2時間 (c)両者の製造方法についての対比 上記(a)の製造方法の2次焼成工程と、上記(b)の製造方法のアニールは、共に2回目に行われる焼成工程といえる点で共通する。 そこで、上記(a)の製造方法の2次焼成工程の条件と、上記(b)の製造方法のアニールの条件を対比すると、上記(a)の2次焼成工程では、酸素分圧を10^(-3)Pa?10^(-6)Paとしているのに対し、上記(b)のアニールでは、酸素分圧を10^(-2)Pa?100Paとしていることから、両者の条件は同一でない。 次に、上記(a)では、2次焼成工程における焼成温度を1次焼成工程における焼成温度よりも50℃程度高い温度としていることから、上記(b)のアニールの温度を焼成時の焼成温度より高い温度とした【表6】の2行目に記載の製造方法に着目する。しかし、焼成温度を1000℃、アニール温度を1050℃としているから、上記(a)の1次焼成工程における焼成温度(1100?1300℃)および2次焼成工程における焼成温度(1150℃?1350℃)とは異なる条件で焼成およびアニールを行うものである。 よって、本願発明1に係る製造方法と引用発明に係る製造方法が同一であるとはいえない。 そうすると、本願発明1の「積層セラミックコンデンサ」と、引用発明の「積層セラミックコンデンサ」は、異なる製造方法により製造されるものであるから、引用発明の「積層セラミックコンデンサ」が、上記相違点1に係る構成を備えているということはできない。 ウ.引用発明は、誘電体層10のNi濃度を特定していない。 また、引用文献1の【0007】に「内部電極層に含まれる導電材には」「焼成後誘電体層に拡散しないこと」「が要求される。」と記載され、【0159】には「内部電極層の誘電体層への拡散を生じることもなく」と記載されているとおり、引用発明は、内部電極層のNiが誘電体層に拡散しないことを目的とする発明であるから、引用発明に基づいて、上記相違点に係る構成を採用する動機付けはないといわざるをえない。 よって、当業者であっても、引用発明に基づいて、本願発明1を容易に発明できたものとはいえない。 エ.よって、上記アおよびイによれば、本願発明1と引用発明が同一ということはできない。 また、上記ウによれば、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2.本願発明2ないし6について 本願発明2ないし6は、請求項1に従属する請求項であり、請求項1の発明特定事項を全て含み、更に他の構成を追加して限定した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明と同一ではなく、また、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものでもない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-08-11 |
出願番号 | 特願2016-122002(P2016-122002) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01G)
P 1 8・ 113- WY (H01G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 田中 晃洋 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
山本 章裕 永井 啓司 |
発明の名称 | 積層セラミックコンデンサ |
代理人 | 片山 修平 |