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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1377168
審判番号 不服2020-16946  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-09 
確定日 2021-08-31 
事件の表示 特願2019-500922「テープフィーダ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月30日国際公開、WO2018/154671、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願は、2017年(平成29年)2月23日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 7月16日付け:拒絶理由通知書
令和2年 9月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年10月 6日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和2年12月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 原査定の概要
原査定の概要は以下のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2016-40854号公報
引用文献2:特開平10-4294号公報


第3 審判請求時の補正
1.令和2年12月9日に審判請求と同時にした手続補正(以下、「本件補正」という。)について
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「【請求項1】
リードを有するラジアルリード部品と、そのラジアルリード部品のリードを保持するキャリアテープとから構成されるテープ化部品を送り出す送出装置と、
前記キャリアテープにテーピングされている前記ラジアルリード部品を保持し、保持された状態のラジアルリード部品のリードを切断し、前記キャリアテープから分離した前記ラジアルリード部品を電子部品装着装置への供給位置で保持する切断装置と、
前記送出装置と前記切断装置とが配設される筐体と、を備え、
前記切断装置は前記筐体に対して上下方向の位置を調整不能に固定され、
前記送出装置は前記筐体に対して上下方向の位置を調整する調整機構によって、前記電子部品装着装置への供給位置おいてラジアルリード部品の上下方向の位置が一定となるように調整可能であるテープフィーダ。
【請求項2】
前記テープフィーダが、
前記送出装置によって送り出された前記テープ化部品を供給位置に向かってガイドするガイド機構を備え、
前記ガイド機構と前記送出装置とが固定されており、
前記調整機構が、
前記ガイド機構と前記送出装置とを共に、前記筐体に対する上下方向の位置を調整可能である請求項1に記載のテープフィーダ。
【請求項3】
前記ガイド機構が、
前記送出装置によって送り出された前記テープ化部品を前記供給位置に向かってガイドした後に、前記供給位置と反対方向に向かってガイドする請求項2に記載のテープフィーダ。
【請求項4】
前記送出装置と前記切断装置とが、個別に駆動源を有する請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のテープフィーダ。」

2.本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の記載は、令和2年9月3日に手続補正した特許請求の範囲の記載によって特定される次のとおりである。

「【請求項1】
リードを有するラジアルリード部品と、そのラジアルリード部品のリードを保持するキャリアテープとから構成されるテープ化部品を送り出す送出装置と、
前記キャリアテープにテーピングされている前記ラジアルリード部品を保持し、保持された状態のラジアルリード部品のリードを切断し、前記キャリアテープから分離した前記ラジアルリード部品を供給する切断装置と、
前記送出装置と前記切断装置とが配設される筐体と、を備え、
前記切断装置は前記筐体に対して上下方向の位置を調整不能に固定され、
前記送出装置は調整機構によって前記筐体に対して上下方向の位置を調整可能であるテープフィーダ。
【請求項2】
前記テープフィーダが、
前記送出装置によって送り出された前記テープ化部品を供給位置に向かってガイドするガイド機構を備え、
前記ガイド機構と前記送出装置とが固定されており、
前記調整機構が、
前記ガイド機構と前記送出装置とを共に、前記筐体に対する上下方向の位置を調整可能である請求項1に記載のテープフィーダ。
【請求項3】
前記ガイド機構が、
前記送出装置によって送り出された前記テープ化部品を前記供給位置に向かってガイドした後に、前記供給位置と反対方向に向かってガイドする請求項2に記載のテープフィーダ。
【請求項4】
前記送出装置と前記切断装置とが、個別に駆動源を有する請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のテープフィーダ。」

3.本件補正の適否
(1)補正事項1
本件補正前の請求項1の「前記キャリアテープにテーピングされている前記ラジアルリード部品を保持し、保持された状態のラジアルリード部品のリードを切断し、前記キャリアテープから分離した前記ラジアルリード部品を供給する切断装置」を「前記キャリアテープにテーピングされている前記ラジアルリード部品を保持し、保持された状態のラジアルリード部品のリードを切断し、前記キャリアテープから分離した前記ラジアルリード部品を電子部品装着装置への供給位置で保持する切断装置」とする補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「切断装置」について、上記のとおり限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)の段落【0009】、【0013】、【0026】、【0027】、【0043】に記載されているから、上記補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであって、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

(2)補正事項2
本件補正前の請求項1の「前記送出装置は調整機構によって前記筐体に対して上下方向の位置を調整可能である」を「前記送出装置は前記筐体に対して上下方向の位置を調整する調整機構によって、前記電子部品装着装置への供給位置おいてラジアルリード部品の上下方向の位置が一定となるように調整可能である」とする補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「送出装置」について、上記のとおり限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項は、当初明細書の段落【0053】、【0054】に記載されているから、上記補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであって、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

そして、本件補正前の請求項1?4は、請求項2?4が、補正の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件補正後の請求項1?4に係る発明は、特許法第17条の2第4項に規定する一群の発明に該当する。

上記のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項?第5項に規定する要件を満たすものである。

そして、補正後の請求項1?4に係る発明は、同法同条第6項で準用する同法第126条第7項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないので、以下、検討する。

4.独立特許要件について
(1)本願発明1?4について
本願の請求項1?4に係る発明(以下、「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、令和2年12月9日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、上記1.のとおりである。

(2)引用文献に記載された事項及び引用発明
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審において付与した。以下同様。)。

(ア)「【0001】
本発明は、電子部品をノズルで保持して移動させ、基板上に実装する電子部品実装方法、電子部品実装装置及び電子部品実装システムに関する。」

(イ)「【0042】
図9は、リア側の部品供給ユニットの他の例の概略構成を示す模式図である。部品供給ユニット14は、複数のラジアルリード型電子部品(ラジアルリード部品)をテープ本体に固定した電子部品保持テープ(ラジアル部品テープ)を装着し、当該電子部品保持テープで保持したリード型電子部品のリードを保持位置(第2保持位置)で切断し、当該保持位置にあるリード型電子部品をヘッドに備えた吸着ノズルまたは把持ノズルで保持可能とする電子部品供給装置100を複数装着することに加え、複数の搭載型電子部品をテープ本体に固定した電子部品保持テープ(チップ部品テープ)を装着し、当該電子部品保持テープで保持した搭載型電子部品の保持位置(第1保持位置)でテープ本体から剥がし、当該保持位置にある搭載型電子部品をヘッドに備えた吸着ノズルまたは把持ノズルで保持可能とする電子部品供給装置100aを備えていてもよい。部品供給ユニット14は、その他電子部品供給装置100aとしてスティックフィーダやトレイフィーダをリア側バンク46に設置してもよい。図9に示す複数の部品供給装置100、100aは、支持台(バンク)102に保持される。支持台102は、上述したリア側バンク46と同様の構成である。また、支持台102は、部品供給装置100、100aの他の装置(例えば、計測装置やカメラ等)を搭載することができる。」

(ウ)「【0045】
ヘッド15は、部品供給ユニット14fに保持された電子部品(ボウルフィーダユニットに保持されたリード型電子部品、または部品供給ユニット14rに保持された電子部品(電子部品供給装置100に保持されたラジアルリード型電子部品(リード型電子部品、挿入型電子部品)、をノズルで保持(吸着または把持)し、保持した電子部品を基板搬送部12によって所定位置に移動された基板8上に実装する機構である。また、ヘッド15は、部品供給ユニット14rが電子部品供給装置100aを備えている場合、電子部品供給装置100aに保持されたチップ電子部品(搭載型電子部品)を基板8上に搭載(実装)する機構である。なお、ヘッド15の構成については、後述する。なお、チップ電子部品(搭載型電子部品)とは、基板の形成された挿入穴(スルーホール)に挿入するリードを備えないリードなし電子部品である。搭載型電子部品としては、上述したようにSOP、QFP等が例示される。チップ型電子部品は、リードを挿入穴に挿入せずに、基板に実装される。」

(エ)「【0071】
図12に示す電子部品保持テープ(ラジアル部品テープ)70は、テープ本体72と、テープ本体72に保持される複数の電子部品(ラジアルリード型電子部品、ラジアルリード部品)80と、を有する。テープ本体72は、第1テープ74と第1テープ74よりも幅の細い第2テープ76とが貼り合わされている。また、テープ本体72は、延在方向に一定間隔で送り穴としての穴78が形成されている。つまり、テープ本体72は、複数の穴78が延在方向に列状に形成されている。
【0072】
電子部品80は、電子部品本体(以下単に「本体」という。)82と、本体82のラジアル方向に配置された2本のリード84と、を有する。電子部品80は、リード84が、第1テープ74と第2テープ76との間に挟まれ、固定されている。これにより、電子部品80は、リード84が、第1テープ74と第2テープ76との間に挟まれ固定されることで、テープ本体72の所定位置に固定される。また、複数の電子部品80は、2本のリード84の間に穴78が配置され、テープ本体72の穴78が形成されている位置に、それぞれ固定されている。つまり、電子部品80は、穴78と同じ送りピッチPの間隔で、かつテープの延在方向における位置が同じ位置に配置されている。なお、電子部品80は、テープ本体72の第1テープ74と第2テープ76との間に挟まれるリード線を有した形状であればよく、リード線及び本体の形状、種類は特に限定されない。」

(オ)「【0075】
次に、図14は、リア側の部品供給ユニットの電子部品供給装置の概略構成を示す斜視図である。図15は、図14に示す電子部品供給装置を図14とは異なる方向から見た斜視図である。図16は、部品供給ユニットの電子部品供給装置の概略構成を示す説明図である。電子部品供給装置(部品供給装置)100は、図14から図16に示すように、他の各部を保持し、電子部品保持テープを案内する筐体110と、リア側バンク46と連結されるクランプユニット112と、電子部品保持テープを搬送するフィードユニット114と、電子部品保持テープに保持されている電子部品のリードを切断するカットユニット116と、フィードユニット114の駆動部とカットユニット116の駆動部の空気圧を調整し、各部の駆動を制御する空気圧調整部118と、を有する。
【0076】
筐体110は、縦に細長い中空の箱であり、クランプユニット112とフィードユニット114とカットユニット116と空気圧調整部118とを内部に保持する。筐体110は、案内溝120と、ガイド部122と、排出部126と、把持部128と、突起部129と、が設けられている。案内溝120は、筐体110の鉛直方向上側の細長い面の長手方向に沿って形成された2本の直線の一方の端部が連結した形状である。つまり、案内溝120は、筐体110の一方の端部から他方の端部近傍まで延び、他方の端部近傍で折り返し、一方の端部まで延びるU字形状で形成されている。案内溝120は、電子部品保持テープを案内する溝であり、U字形状の一方の端部(供給側の端部)から電子部品保持テープが供給される。案内溝120は供給された電子部品保持テープをU字形状に沿って移動させ、U字形状の一方の端部(排出側の端部)から排出する。また、案内溝120は、テープ本体72が筐体110の内部にあり、電子部品が筐体110の外部に露出した状態で電子部品保持テープを案内する。」

(カ)「【0080】
次に、図14から図16に加え、図18から図21を用いてフィードユニットについて説明する。ここで、図18は、電子部品供給装置のフィードユニットの概略構成を示す説明図である。図19は、フィードユニットの先端支持部の概略構成を示す説明図である。図20は、フィードユニットのテープ送り爪ユニットの概略構成を示す説明図である。図21は、フィードユニットの動作を説明するための説明図である。フィードユニット114は、電子部品保持テープを搬送する、つまり案内溝120に沿って案内される電子部品保持テープを移動させる機構である。フィードユニット114は、支持部142と、駆動部144と、先端支持部146と、テープ送り爪ユニット148と、を有する。また、本実施形態では、先端支持部146とテープ送り爪ユニット148とは、テープ送り爪ユニット148と筐体110との相対位置を調整する位置調整機構となる。」

(キ)「【0088】
フィードユニット114は、このように、駆動部144によりテープ送り爪ユニット148をテープ本体72の穴の1ピッチ分、送り方向に往復運動させることで、テープを1ピッチ分送り方向に順次移動させることができる。
【0089】
次に、図14から図16に加え、図22から図24を用いてカットユニットについて説明する。図22は、電子部品供給装置のカットユニットの概略構成を示す説明図である。図23は、電子部品供給装置のカットユニットの概略構成を示す説明図である。図24は、電子部品供給装置のカットユニットの概略構成を示す説明図である。カットユニット116は、電子部品保持テープに保持されている電子部品のリードを切断する。また、カットユニット116は、リードを切断した電子部品を、電子部品がノズルによって吸着(保持)されるまで、クランプ、つまり保持する。カットユニット116は、支持部162と、駆動部164と、伝達部166と、切断部168と、カバー169と、を有する。」

(ク)「【0104】
また、上記実施形態のフィードユニット114は、先端支持部146とテープ送り爪ユニット148とを位置調整機構とし、先端支持部146とテープ送り爪ユニット148との相対位置を変更することで、テープを送り終わった状態、つまり可動部144bが往復移動範囲の中で最も伸びた状態のときの送り爪152の凸部152aの位置を変更可能な構成(筐体110とテープ送り爪ユニット148との相対位置を調整可能)としたが、これに限定されない。フィードユニットは、筐体とテープ送り爪ユニットとの相対位置を調整可能な種々の機構を位置調整機構として用いることができる。例えば、部品供給装置は、筐体とフィードユニットとのテープ送り方向における相対位置を調整可能とすることで、テープを送り終わった状態、つまり可動部144bが往復移動範囲の中で最も伸びた状態のときの送り爪152の凸部152aの位置を変更可能な構成としてもよい。つまり、フィードユニットは、フィードユニットと筐体との連結部に位置調整機構を設けてもよい。」

(ケ)「【0106】
カットユニット116aは、電子部品保持テープに保持されている電子部品のリードを切断する。また、カットユニット116aは、リードを切断した電子部品を、電子部品がノズル32(吸着ノズルまたは把持ノズル)によって吸着または把持(保持)されるまで、クランプ、つまり保持する。カットユニット116aは、支持部162と、駆動部164と、伝達部172と、切断部174と、カバーと、を有する。」

(コ)「【0108】
切断部174は、保持領域に配置されており、保持領域に配置された電子部品のリードを本体とテープ本体との間で切断し、保持する。切断部174は、電子部品80の本体とリードの両方を保持し、その後リードを切断し、リードを切断した後も、本体とリードを保持した状態を維持する。切断部174は、第1ユニット174aと、第2ユニット174bとを、有する。第1ユニット174aは、第1刃178aと、第1本体保持部179aと第1リード保持部180aと、を有する。第1刃178aと第2刃178bとが切断機構178となり、第1本体保持部179aと第2本体保持部179bとが本体保持機構179となり、第1リード保持部180aと第2リード保持部180bとがリード保持機構180となる。切断部174は、図30に示すように、鉛直方向上側から本体保持機構179、リード保持機構180、切断機構178の順番で配置されている。」

(サ)「【0110】
切断部174は、第1ユニット174aが可動子176に支持されており、可動子176とともに第2ユニット174bに近づく方向、遠ざかる方向(図30中矢印方向)に移動する。切断部174は、第1ユニット174aが第2ユニット174bに近づく方向に移動すると、本体保持機構179が電子部品80の本体を保持し、リード保持機構180が電子部品80のリードを保持した状態となる。その後、切断部174は、第1ユニット174aが第2ユニット174bにさらに近づく方向に移動すると、切断機構178の第1刃178aと第2刃178bとが交差し、リードを切断する。なお、図30では、第1刃178aと第2刃178bとが重なっているように見えるが、第1刃178aと第2刃178bとは、紙面前後方向における紙面左右方向の位置が異なる(搬送方向に対して斜めになっている)ため、実際には、接触していない。」

(シ)「【0112】
また、カットユニット116aは、本体保持機構179で電子部品80の本体82を保持することで、リード84を切断した後も適切に電子部品80を保持することができる。これにより、リード84を切断した後の電子部品80を適切に保持することができ、ノズル32で電子部品80を保持しやすくすることができる。この点は、カットユニット116も同様である。
【0113】
また、カットユニット116aは、リード84を切断する前にクランプ機構で電子部品80を保持することで、特に電子部品80の本体82を保持することで、電子部品80を安定した位置に保持した状態でリード84を切断することができる。これにより、リード84を適切に切断することができる。また、カットユニット116aは、リード84を切断する前にクランプ機構で電子部品80を保持することで、リード84をカットした電子部品80が保持位置から外れてしまうことや落下してしまうことを抑制することができる。」

(ス)「【0116】
ここで、カットユニット116aは、図27に示すように筐体110aに形成された鉛直方向が長手となる長穴181、184にボルト182、185を挿入して固定している。これにより、カットユニット116aは、鉛直方向の位置を調整することができる。これにより、フィードユニットにより移動されるテープに保持された電子部品に対する鉛直方向の位置を調整することができる。したがって、カットユニット116aは、テープの位置に対してリードを切断する鉛直方向の位置、つまり、ラジアルリード型電子部品に対する切断位置を調整することができる。以上よりカットユニット116aは、切断後のリード線の長さを調整することができる。なお、本実施形態では、ラジアルリード型電子部品に対する切断位置を調整する機構を調整方向が長手となる長穴と、長穴に対する位置を固定するボルトとの組み合わせとしたが位置調整機構はこれに限定されない。電子部品供給装置は、カットユニット116aのZ軸方向の位置、より具体的には、切断機構のZ軸方向の位置を保持領域の電子部品保持テープに対して調整可能な機構であればよい。」

摘記事項(ア)?(ス)から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ラジアル方向に配置された2本のリード84を有する電子部品80と、電子部品80のリード84が、テープ本体72の第1テープ74と第2テープ76との間に挟まれ、固定されている電子部品保持テープ70を搬送するフィードユニット114と、
本体保持機構179が、テープ本体72に固定されている電子部品80の本体を保持し、リード保持機構180が電子部品80のリードを保持した状態となり、その後、電子部品80のリード84を切断し、リード84を切断した後の電子部品80を保持し、ヘッド15のノズル32で電子部品80を保持しやすくするカットユニット116aと、
フィードユニット114とカットユニット116aとを内部に保持する筐体110と、を備え、
カットユニット116aは、筐体110aに形成された鉛直方向が長手となる長穴181、184にボルト182、185を挿入して固定することにより、鉛直方向の位置を調整することができ、
筐体110aとフィードユニット114とのテープ送り方向における相対位置を調整可能とする電子部品供給装置100。」

イ 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は各種電子機器に使用されるプリント基板にリード線付きの電子部品を実装する際に使用される電子部品挿入装置に関するものである。」

(イ)「【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明は、あらかじめリード線付き電子部品の所定寸法を情報として登録記憶しておき、この記憶データに基づいてプリント基板の厚みとリード線の折り曲げ寸法を加えた最小必要な長さにリード線を切断してからプリント基板に挿入し、続いてこのプリント基板の下面に突出したリード線の先端部を折り曲げて固定する構成としたものである。」

(ウ)「【0023】(実施の形態3)図5は同実施の形態による電子部品挿入装置の供給部と切断部を示す要部概念図であり、同図において1はリード線3を有した電子部品2をテーピングした台紙テープ、15はこの台紙テープ1を順次搬送するパーツカセット、16は各電子部品の必要寸法のデータを記憶するパーツライブラリ、17はこのパーツライブラリからの指令に基づきサーボモータ18を駆動するドライバ、19はサーボモータ18により駆動するボールネジ、27はこのボールネジ19により上下に移動するスライダ、14は電子部品2のリード線3を切断するカッタ、28は切断後の台紙テープ1を回収するリターンスプロケットである。
【0024】このような構成とすることにより、リード線3付きの電子部品2の必要寸法をパーツライブラリ16にあらかじめ記憶しておくことで、実装する電子部品毎にパーツカセット15の上下位置を任意に変化させることによって電子部品毎に切断位置を設定して、カッタ14で切断することでリード線3の切断位置を一定とすることができ、また、切断後の台紙テープ1はリターンスプロケット28で回収することができる。」

(3)対比・判断
ア 本願発明1について
(ア)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「ラジアル方向に配置された2本のリード84」は、本願発明1の「リード」に相当し、引用発明の「電子部品80」は、「ラジアル方向に配置された2本のリード84」を有するから、本願発明1の「ラジアルリード部品」に相当する。
引用発明の「テープ本体72の第1テープ74と第2テープ76」は、「電子部品80のリード84」を、「テープ本体72の第1テープ74と第2テープ76との間に」挟さんで、固定する構成であるから、引用発明の「テープ本体72の第1テープ74と第2テープ76」は、本願発明1の「キャリアテープ」に相当し、引用発明の「電子部品80のリード84が、テープ本体72の第1テープ74と第2テープ76との間に挟まれ、固定されている」ことは、本願発明1の「ラジアルリード部品のリードを保持する」ことに相当し、引用発明の「電子部品保持テープ70」は、本願発明1の「テープ化部品」に相当する。
引用発明の「電子部品保持テープ70を搬送する」ことは、本願発明1の「テープ化部品を送り出す」ことに相当し、引用発明の「フィードユニット114」は、本願発明1の「送出装置」に相当する。
引用発明の「ヘッド15」は、本願発明1の「電子部品装着装置」に相当する。また、引用発明の「本体保持機構179が、テープ本体72に固定されている電子部品80の本体を保持し、リード保持機構180が電子部品80のリードを保持した状態となり、その後、電子部品80のリード84を切断」することは、本願発明1の「前記キャリアテープにテーピングされている前記ラジアルリード部品を保持し、保持された状態のラジアルリード部品のリードを切断」することに相当する。そして、引用発明は、「電子部品80」が「供給位置」にあることで初めて「ヘッド15のノズル32で電子部品80を保持」することができるから、引用発明の「リード84を切断した後の電子部品80を保持し、ヘッド15のノズル32で電子部品80を保持しやすくする」ことは、本願発明1の「前記キャリアテープから分離した前記ラジアルリード部品を電子部品装着装置への供給位置で保持する」ことに相当する。したがって、引用発明の「カットユニット116a」は、本願発明1の「切断装置」に相当する。
引用発明の「筐体110」は、本願発明1の「筐体」に相当し、引用発明の「フィードユニット114とカットユニット116aとを内部に保持する」ことは、本願発明1の「前記送出装置と前記切断装置とが配設される」ことに相当する。
引用発明の「筐体110aとフィードユニット114とのテープ送り方向における相対位置を調整可能とする」ことは、「前記送出装置」が「前記筐体」に対して「位置を調整することが可能である」という限りにおいて、本願発明1の「前記送出装置は前記筐体に対して上下方向の位置を調整する調整機構によって、前記電子部品装着装置への供給位置おいてラジアルリード部品の上下方向の位置が一定となるように調整可能である」ことに一致する。
引用発明の「電子部品供給装置100」は、本願発明1の「テープフィーダ」に相当する。
以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「リードを有するラジアルリード部品と、そのラジアルリード部品のリードを保持するキャリアテープとから構成されるテープ化部品を送り出す送出装置と、
前記キャリアテープにテーピングされている前記ラジアルリード部品を保持し、保持された状態のラジアルリード部品のリードを切断し、前記キャリアテープから分離した前記ラジアルリード部品を電子部品装着装置への供給位置で保持する切断装置と、
前記送出装置と前記切断装置とが配設される筐体と、を備え、
前記送出装置は前記筐体に対して位置を調整することが可能であるテープフィーダ。」

【相違点1】
本願発明1では、「前記切断装置は前記筐体に対して上下方向の位置を調整不能に固定され」ているのに対し、引用発明では、「カットユニット116aは、筐体110aに形成された鉛直方向が長手となる長穴181、184にボルト182、185を挿入して固定することにより、鉛直方向の位置を調整することができ」る点。

【相違点2】
本願発明1では、「前記送出装置は前記筐体に対して上下方向の位置を調整する調整機構によって、前記電子部品装着装置への供給位置おいてラジアルリード部品の上下方向の位置が一定となるように調整可能である」のに対し、引用発明では、「筐体110aとフィードユニット114とのテープ送り方向における相対位置を調整可能とする」点。

(イ)判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
4.(2)イで示したとおり、引用文献2には、リード線3を有した電子部品2をテーピングした台紙テープ1を順次搬送するパーツカセット15と、電子部品2のリード線3を切断するカッタ14とを備え、実装する電子部品毎にパーツカセット15の上下位置を任意に変化させることによって電子部品毎に切断位置を設定して、カッタ14で切断することでリード線3の切断位置を一定とすることが記載されている。

ここで、引用文献2に記載された事項の「リード線3の切断位置を一定とすること」について検討する。

通常、リード線及び本体部から構成される電子部品は、その種類によってリード線及び本体部の寸法が異なるものであるから、リード線の切断位置を一定としたとしても、電子部品全体の高さ方向の位置は、その種類に応じて異なるものといえる。
そうすると、引用文献2に記載された事項の「リード線3の切断位置を一定とする」ことは、「最小必要な長さにリード線を切断」することに留まり、「リード線3の切断位置を一定とする」ことで、「電子部品の上下方向の位置を一定とする」ものとなるとは認められない。
そして、引用文献2には、他に、「電子部品の上下方向の位置を一定」とすることを示唆する記載は存在しない。

よって、引用発明に対し、引用文献2に記載された事項を採用したとしても、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。

してみると、相違点1について論じるまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本願発明2?4について
本願発明2?4は、本願発明1を限定するものであって、本願発明1の「前記送出装置は前記筐体に対して上下方向の位置を調整する調整機構によって、前記電子部品装着装置への供給位置おいてラジアルリード部品の上下方向の位置が一定となるように調整可能である」点と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

5.小括
以上のとおりであるから、本願発明1?4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではなく、その他の拒絶理由も発見できないから、特許出願の際独立して特許を受けることができる発明であるので、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。


第4 原査定について
本件補正により、本願発明1?4は、「前記送出装置は前記筐体に対して上下方向の位置を調整する調整機構によって、前記電子部品装着装置への供給位置おいてラジアルリード部品の上下方向の位置が一定となるように調整可能である」という発明特定事項を備えるものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-11 
出願番号 特願2019-500922(P2019-500922)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三宅 達  
特許庁審判長 間中 耕治
特許庁審判官 内田 博之
中村 大輔
発明の名称 テープフィーダ  
代理人 特許業務法人ネクスト  

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