• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1377289
審判番号 不服2020-6265  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-08 
確定日 2021-09-07 
事件の表示 特願2016-167227「配線基板、半導体装置及び配線基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 8日出願公開、特開2018- 37461、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年8月29日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和1年11月22日付け:拒絶理由通知書
令和2年 1月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 3月12日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和2年 5月 8日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1ないし12
・引用文献等 1ないし2

引用文献等一覧
1.特開2016-29697号公報
2.特開2015-225926号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし12に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明12」という。)は、令和2年1月15日提出の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
第1配線層と、前記第1配線層を被覆する第1絶縁層と、前記第1絶縁層を厚さ方向に貫通して前記第1配線層の上面を露出する第1貫通孔と、前記第1貫通孔を充填し、前記第1絶縁層から露出された上端面を有する第1ビア配線と、を含む第1配線構造と、
前記第1絶縁層の上面に積層され、前記第1配線構造の配線密度よりも高い配線密度を有する第2配線構造と、を有し、
前記第2配線構造は、
前記第1絶縁層の上面及び前記第1ビア配線の上端面に形成され、上面の一部が平滑面に形成され、残りの上面が前記平滑面よりも粗度が大きい粗化面に形成された第1配線パターンを有する第2配線層と、
前記第2配線層よりもマイグレーション耐性に優れた導電材料からなり、前記平滑面及び前記粗化面のうち前記平滑面のみを被覆し、前記粗化面よりも粗度の小さい平滑な上面を有する保護膜と、
前記第1絶縁層の上面に積層され、前記第2配線層及び前記保護膜を被覆する第2絶縁層と、
前記第2絶縁層を厚さ方向に貫通して前記保護膜の上面を露出する第2貫通孔と、
前記第2貫通孔を充填する第2ビア配線を有し、前記第2ビア配線を通じて前記第2配線層と接続された第3配線層と、を有し、
前記粗化面は、前記平滑面と連続して形成され、且つ前記保護膜の外周部の下面を露出させるように前記平滑面よりも下方に凹んで形成され、
前記第2絶縁層は、前記保護膜の外周部の上下両面及び側面を被覆するように形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記保護膜の外周部の下面は、前記保護膜の外周部の全周に亘って前記第2配線層から露出され、
前記粗化面は、前記保護膜の外周部の下方において、前記第2配線層の前記平滑面の外縁に向けて反り上がるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第2配線層は、前記第1絶縁層の上面に形成された金属バリア膜と前記金属バリア膜上に形成された金属膜とを含むシード層と、前記シード層上に形成された金属層とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記平滑面に形成された前記第1配線パターンの上面と連続する前記第1配線パターンの前記金属層及び前記金属膜の側面全面が平滑面に形成され、該平滑面を被覆するように前記保護膜が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の配線基板。
【請求項5】
前記第2配線層は、前記金属膜及び前記金属層の表面全面が平滑面に形成された第2配線パターンをさらに有し、
前記保護膜は、前記第2配線パターンの平滑面を被覆するように形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の配線基板。
【請求項6】
前記第2配線層は、前記金属膜及び前記金属層の表面全面が粗化面に形成され、前記金属バリア膜の外縁部が前記金属膜及び前記金属層の側面よりも外側に突出された第3配線パターンをさらに有することを特徴とする請求項3?5の何れか一項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記第1絶縁層は、熱硬化性樹脂を主成分とする非感光性の絶縁性樹脂からなる絶縁層であり、
前記第2絶縁層は、感光性樹脂を主成分とする絶縁層であって、前記第1絶縁層よりも薄い絶縁層であることを特徴とする請求項1?6の何れか一項に記載の配線基板。
【請求項8】
前記第2貫通孔によって露出される前記保護膜の上面が平滑面であることを特徴とする請求項1?7の何れか一項に記載の配線基板。
【請求項9】
請求項1?8の何れか一項に記載の配線基板と、
前記第2配線構造の最上層の配線層にフリップチップ実装された半導体チップと、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
第1配線構造を形成する工程と、
前記第1配線構造の上面に、前記第1配線構造よりも配線密度の高い第2配線構造を積層する工程と、を有し、
前記第1配線構造を形成する工程は、
第1配線層を被覆する第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層を厚さ方向に貫通し、前記第1配線層の上面を露出する第1貫通孔を形成する工程と、
前記第1貫通孔を充填するとともに、前記第1絶縁層の上面を被覆する導電層を形成する工程と、
前記導電層と前記第1絶縁層の上面とを研磨することにより、前記第1絶縁層の上面を平滑化するとともに、前記第1絶縁層から露出する上端面を有する第1ビア配線を形成する工程と、を有し、
前記第2配線構造を積層する工程は、
前記第1絶縁層の上面及び前記第1ビア配線の上端面に、金属バリア膜と、金属膜と、金属層とが順に積層された第2配線層を形成する工程と、
前記第2配線層の上面の一部に、前記金属膜及び前記金属層よりもマイグレーション耐性に優れた導電材料からなる保護膜を形成する工程と、
前記保護膜の外周部の下面を前記第2配線層から露出させるように前記第2配線層の表面に粗化面を形成する工程と、
前記第1絶縁層の上面に、前記第2配線層及び前記保護膜を被覆する第2絶縁層を形成する工程と、
前記第2絶縁層を厚さ方向に貫通して前記保護膜の上面を露出する第2貫通孔を形成する工程と、
前記第2貫通孔を充填する第2ビア配線を有し、前記第2ビア配線を通じて前記第2配線層と電気的に接続された第3配線層を形成する工程と、を有し、
前記第2絶縁層は、前記保護膜の外周部の上下両面及び側面を被覆するように形成されることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記保護膜を形成する工程は、
前記第2配線層のうち、前記第2ビア配線と接続される領域における第2配線層の表面を露出する開口パターンを有するレジスト層を前記第1絶縁層上に形成する工程と、
無電解めっき法により、前記開口パターンから露出された前記第2配線層の表面に前記保護膜を形成する工程と、
前記レジスト層を除去する工程と、
を有することを特徴とする請求項10に記載の配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記第2貫通孔によって露出される前記保護膜の上面が平滑面であることを特徴とする請求項10又は11に記載の配線基板の製造方法。」

第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面と共に以下の各記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

ア.「【請求項1】
第1配線層と、前記第1配線層を被覆する第1絶縁層と、前記第1絶縁層を厚さ方向に貫通して前記第1配線層の上面を露出する第1貫通孔を充填し、前記第1絶縁層から露出された上端面を有するビア配線と、を含む第1配線構造と、
前記第1絶縁層の上面及び前記ビア配線の上端面に形成され、表面の一部が粗化面に形成された第2配線層と、前記第1絶縁層上に積層され、前記第2配線層を被覆する第2絶縁層と、を含む第2配線構造と、を有し、
前記第2配線構造の配線密度は、前記第1配線構造の配線密度よりも高く、
前記粗化面の表面粗度は、前記第1配線層の表面粗度よりも小さいことを特徴とする配線基板。」

イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板、半導体装置及び配線基板の製造方法に関するものである。」

ウ.「【0009】
(第1実施形態)
以下、図1?図16に従って第1実施形態を説明する。
図1に示すように、配線基板10は、配線構造11と、配線構造11の一方の側(ここでは、上側)に積層された配線構造12と、配線構造11の他方の側(ここでは、下側)に積層されたソルダレジスト層13とを有している。配線基板10の平面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。例えば、配線基板10の平面形状は、20mm×20mm?40mm×40mm程度の正方形状とすることができる。」

エ.「【0010】
まず、配線構造11の構造について説明する。 配線構造11は、配線構造12よりも配線密度の低い配線層が形成された低密度配線層である。この配線構造11は、コア基板20と、コア基板20の上面20Aに積層された絶縁層31と、コア基板20の下面20Bに積層された絶縁層41とを有している。
【0011】(中略)
【0012】(中略)
【0013】
コア基板20の上面20Aには配線層22が形成され、コア基板20の下面20Bには配線層23が形成されている。これら配線層22,23は貫通電極21を介して相互に電気的に接続されている。なお、配線層22,23の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。配線層22,23の厚さは、例えば、15?35μm程度とすることができる。配線層22,23のラインアンドスペース(L/S)は、例えば、20μm/20μm程度とすることができる。ここで、ラインアンドスペース(L/S)は、配線の幅と、隣り合う配線同士の間隔とを示す。
【0014】(中略)
【0015】
コア基板20の上面20Aには、絶縁層31と、絶縁層31に形成されたビア配線32とが積層されている。 絶縁層31は、配線層22を被覆するように、コア基板20の上面20Aに積層されている。絶縁層31の厚さは、例えば、コア基板20よりも薄く設定されている。例えば、絶縁層31の厚さは40?75μm程度とすることができる。絶縁層31は、例えば、補強材入りの絶縁層であって、機械的強度(剛性や硬度等)の高い絶縁層である。また、絶縁層31の材料としては、例えば、補強材が含有されていない熱硬化性樹脂を主成分とする非感光性の絶縁性樹脂を用いることもできる。
【0016】
絶縁層31には、上面31Aの所要の箇所に開口し、当該絶縁層31を厚さ方向に貫通して配線層22の上面の一部を露出する貫通孔31Xが形成されている。貫通孔31Xは、図1において下側(コア基板20側)から上側(配線構造12側)に向かうに連れて径が大きくなるテーパ状に形成されている。例えば、貫通孔31Xは、下側の開口端の開口径が上側の開口端の開口径よりも小さい。また、貫通孔31Xは、例えば、逆円錐台形状に形成されている。なお、貫通孔31Xの上側の開口端の開口径は、貫通電極21の直径よりも小さい。例えば、貫通孔31Xの上側の開口端の開口径は50?70μm程度とすることができる。
【0017】(中略)
【0018】
貫通孔31X内には、配線層22と電気的に接続されるビア配線32が形成されている。このビア配線32は、絶縁層31を厚さ方向に貫通するように形成されている。本例のビア配線32は、貫通孔31X内に充填されている。ビア配線32は、貫通孔31Xと同様に、図1において下側(コア基板20側)から上側(配線構造12側)に向かうに連れて径が大きくなるテーパ状に形成されている。例えば、ビア配線32は、上端面32Aが下端面よりも大きくなる略逆円錐台形状に形成されている。ビア配線32の上端面32Aの直径は例えば50?70μm程度とすることができる。
【0019】
ビア配線32の上端面32Aは、絶縁層31の上面31Aから露出されている。例えば、ビア配線32の上端面32Aは、絶縁層31の上面31Aと略面一に形成されている。ビア配線32の上端面32Aは、絶縁層31の上面31Aと同様に、凹凸が少ない平滑面(低粗度面)である。例えば、ビア配線32の上端面32Aは研磨面である。ビア配線32の上端面32Aの粗度は、表面粗さRa値で例えば15?40nm程度となるように設定されている。なお、ビア配線32の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。」

オ.「【0022】
次に、配線構造12の構造について説明する。 配線構造12は、配線構造11の最上層に形成された絶縁層31の上面31Aに積層された配線構造である。配線構造12は、配線構造11よりも配線密度の高い配線層が形成された高密度配線層である。
【0023】
配線構造12は、絶縁層31上に積層された配線層50と、絶縁層61と、配線層70と、絶縁層63と、配線層80と、絶縁層65と、配線層90とが順に積層された構造を有している。配線構造12の厚さ、具体的には配線構造12内の全ての絶縁層61,63,65の厚さ(つまり、絶縁層31の上面31Aから絶縁層65の上面までの厚さ)は、例えば、20?40μm程度とすることができる。」

カ.「【0027】
図2に示すように、配線層50は、ビア配線32の上端面32Aと接続するように、絶縁層31の上面31A上に積層されている。すなわち、配線層50の下面の一部がビア配線32の上端面32Aと接しており、配線層50とビア配線32とが電気的に接続されている。換言すると、配線層50とビア配線32とは電気的に接続されているが、一体的ではない。
【0028】
配線層50は、ビア配線32の上端面32A上に形成されたシード層51と、そのシード層51上に形成された金属層54とを有している。すなわち、金属層54は、シード層51を介してビア配線32に接続されている。
【0029】(中略)
【0030】
金属層54は、金属膜53の上面全面を被覆するように形成されている。なお、金属層54の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。 配線層50は、例えば、同一平面上に、配線パターン50A?50Cを有している。配線パターン50Aでは、金属層54の表面(上面及び側面)全面が粗化面54Rに形成され、金属膜53の側面全面が粗化面53Rに形成されている。これら粗化面53R,54Rの直下に形成された金属膜52は、その外縁部が粗化面53R,54Rよりも外側に突出するように形成されている。すなわち、配線パターン50Aの金属膜52は、粗化面53R,54Rよりも外側に突出して形成された突出部52Tを有している。この突出部52Tの上面は、粗化面53R,54Rから露出されている。なお、突出部52Tの幅(つまり、金属膜52の外縁部における突出量)は、例えば、0.1?0.5μm程度とすることができる。
【0031】
配線パターン50Bでは、金属層54の表面(上面及び側面)の一部が粗化面54Rに形成され、その粗化面54R以外の金属層54の表面が粗化面54Rよりも粗度の小さい平滑面54Sに形成されている。また、配線パターン50Bでは、粗化面54Rと接する金属膜53の側面が粗化面53Rに形成され、平滑面54Sと接する金属膜53の側面が平滑面53Sに形成されている。配線パターン50Bでは、粗化面53R,54Rの直下に形成された金属膜52に突出部52Tが形成されている。また、配線パターン50Bでは、平滑面53S,54Sの直下に形成された金属膜52の側面が、金属膜53及び金属層54の側面である平滑面53S,54Sと略面一に形成されている。なお、本例の配線パターン50Bでは、ランドにおける金属層54の表面が粗化面54Rに形成されている。」

キ.「【0121】
なお、上記第1及び第2実施形態においても、第3実施形態の(8)の効果と同様の効果を奏することができる。
(第4実施形態)
以下、図25?図28に従って第4実施形態について説明する。この実施形態では、配線構造12の製造方法が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。先の図1?図24に示した部材と同一の部材にはそれぞれ同一の符号を付して示し、それら各要素についての詳細な説明は省略する。
【0122】
図25(a)に示す工程では、まず、図4?図8に示した工程と同様に、配線構造11に相当する構造体を形成し、その配線構造11の最上層に形成された絶縁層31の上面31A上及びビア配線32の上端面32A上に配線層50を形成する。
【0123】
次に、図25(b)に示す工程では、配線層50の表面(上面及び側面)全面と配線層50から露出する絶縁層31の上面31A全面を被覆する保護膜55を形成する。このとき、配線層50の表面は、粗化処理が施されておらず、表面粗度の小さい平滑面になっている。このため、保護膜55は、表面粗度の小さい平滑面である配線層50の表面(上面及び側面)上に形成される。この保護膜55は、例えば、配線層50と絶縁層31との間でエレクトロマイグレーションが発生することを抑制する機能を有している。このような保護膜55の材料としては、例えば、金属膜53及び金属層54を構成する金属(例えば、Cu)よりもエレクトロマイグレーション耐性の高い材料を用いることが好ましい。例えば、保護膜55としては、SiN膜、NiPめっき膜やアルミナ(Al2O3)膜を用いることができる。保護膜55は、例えば、分子レベルでの均一な薄膜形成が可能なALD(Atomic Layer Deposition)を用いて形成することができる。また、保護膜55は、例えば、CVD(chemical vapor deposition)を用いて形成することもできる。
【0124】
続いて、図26(a)に示す工程では、図8(b)に示した工程と同様に、絶縁層31の上面31A上に、所定の箇所に開口パターン112Xを有するレジスト層112を形成する。開口パターン112Xは、配線層50のうち当該配線層50の上面の面積が大きい配線層50の表面上に形成された保護膜55を露出するように形成される。例えば、ベタパターンである配線パターン50Aの表面上に形成された保護膜55を露出するとともに、配線パターン50Bが有するランドを被覆するように形成された保護膜55を露出するように形成される。その一方で、レジスト層112は、配線パターン50Bのランド以外の微細なパターンの表面上に形成された保護膜55を被覆するとともに、配線パターン50Cの表面上に形成された保護膜55を被覆するように形成される。また、レジスト層112は、微細配線部分である配線パターン50B,50Cの周辺に位置する絶縁層31の上面31Aを被覆するように形成される。
【0125】
次いで、図26(b)に示す工程では、レジスト層112をマスクとして、そのレジスト層112から露出された保護膜55を除去する。保護膜55は、例えば、ドライエッチングやウェットエッチングにより除去することができる。例えば、保護膜55をエッチング除去する場合には、金属膜52,53及び金属層54に対して保護膜55が選択的にエッチングされるようにエッチング液等の条件が設定されている。このように、レジスト層112は、保護膜55が必要な部分(ここでは、微細配線部分)を被覆するようにパターニングされている。
【0126】
次に、図27(a)に示す工程では、図10(a)に示した工程と同様に、レジスト層112をマスクとして、配線層50(配線パターン50A,50B)のうちCu層(金属層54及び金属膜53)に対して粗化処理を施す。この粗化処理により、レジスト層112から露出された配線層50の金属膜53の側面全面が粗化面53Rに形成され、金属層54の上面全面及び側面全面が粗化面54Rに形成される。また、粗化処理により金属膜53及び金属層54の表面の一部がエッチング除去されると、金属膜52の外縁部に突出部52Tが形成される。このとき、レジスト層112及び保護膜55に被覆された配線層50(配線パターン50Bの一部及び配線パターン50C)の表面は粗化されずに平滑面に維持される。例えば、配線パターン50Cの金属膜53の側面全面が平滑面53Sに維持され、配線パターン50Cの金属層54の表面全面が平滑面54Sに維持される。そして、このような平滑面である配線パターン50Cの表面上に保護膜55が形成された状態となる。この保護膜55は、微細配線部分である配線パターン50Bの一部と配線パターン50Cとの周辺に位置する絶縁層31の上面31Aを被覆するように形成されている。」

ク.「【0128】
その後、レジスト層112を例えばアルカリ性の剥離液により除去する。 続いて、図27(b)に示す工程では、絶縁層31の上面31A上に、配線層50の上面の一部を露出する貫通孔61Xを有する絶縁層61を形成する。このとき、配線層50の表面の一部に粗化面54R,53Rが形成されているため、配線層50の表面全面が平滑面である場合に比べて、絶縁層61と配線層50との密着性を向上させることができる。
【0129】
次に、図28に示す工程では、図6(a)?図8(b)に示した工程と同様に、例えばセミアディティブ法により、貫通孔61Xに充填されたビア配線と、そのビア配線を介して配線層50と電気的に接続され、絶縁層61の上面に積層された配線パターンとを有する配線層70を形成する。続いて、図25(b)?図27(b)に示した工程と同様に、微細配線部分である配線パターン70Bの一部と配線パターン70Cの表面(例えば、平滑面74S,73S)上に保護膜75を形成し、保護膜75から露出された配線層70に対して粗化処理を施す。」

ケ.「【0132】
以上の製造工程により、絶縁層31の上面31A上に配線構造12を積層することができる。
以上説明した実施形態によれば、第1実施形態の(1)?(6)の効果に加えて以下の効果を奏することができる。
【0133】
(9)配線層50のうち表面積の小さい微細配線部分の配線パターン(例えば、配線パターン50C)の表面を平滑面に形成し、その平滑面上に保護膜55を形成するようにした。これにより、金属膜53と絶縁層31との間に保護膜55をそれぞれ介在させることができるため、金属膜53と絶縁層31との間でエレクトロマイグレーションが発生することを好適に抑制できる。なお、配線層70,80についても配線層50と同様の構造を採用した。したがって、配線層50,70,80の微細化が進んだ場合であっても、エレクトロマイグレーションに起因した問題が発生することを好適に抑制できる。
【0134】
また、微細配線部分の配線パターン50C,70C,80Cの表面が粗化されずに平滑面に形成されている。その一方で、配線層50,70,80のうち、ベタパターン(電源プレーンやGNDプレーン等)やランド等の表面積が大きい領域の配線層50,70,80の表面が粗化面に形成されている。これらにより、配線層50,70,80と絶縁層61,63,65との密着性を向上させつつも、配線層50,70,80の微細配線部分の抵抗値が上昇するという問題の発生を好適に抑制できる。」

コ.「



サ.「



(2)引用文献1の上記記載から次のことがいえる。
・上記ウには、配線構造11と、配線構造11の上側に積層された配線構造12とを有する配線基板10が記載されている。
・上記エによれば、配線構造11は、コア基板20と、コア基板20の上面20Aに形成された配線層22と、配線層22を被覆するようにコア基板20の上面20Aに積層された絶縁層31と、絶縁層31を厚さ方向に貫通して配線層22の上面の一部を露出する貫通孔31Xと、貫通孔31X内に充填されており、絶縁層31の上面31Aから露出する上端面32Aを有するビア配線32と、を有する。
・上記オによれば、配線構造12は、絶縁層31の上面31Aに積層され、配線構造11よりも配線密度の高い配線層が形成された高密度配線層である。また、配線構造12は、絶縁層31上に積層された配線層50と絶縁層61と配線層70とが順に積層された構造を有している。
・上記カによれば、配線層50は、ビア配線32の上端面32Aと接続されるように、絶縁層31の上面31A上に積層されており、ビア配線32の上端面32A上に形成されたシード層51と、そのシード層51上に形成された金属層54とを有する。また、上記カによれば、配線層50は、ランドにおける金属層54の表面が粗化面54Rに形成され、粗化面54R以外の金属層54の表面が粗化面54Rよりも粗度の小さい平滑面54Sに形成されている配線パターン50Bを有している。
・上記キによれば、第4実施形態の配線構造12は、保護膜55を有する。また、上記キによれば、「レジスト層112及び保護膜55に被覆された配線層50(配線パターン50Bの一部及び配線パターン50C)の表面は粗化されずに平滑面に維持され」、「レジスト層112から露出された配線層50の」「金属層54の上面全面及び側面全面が粗化面54Rに形成される」から、保護膜55は、平滑面54Sと粗化面54Rのうちの平滑面54Sのみを被覆することがわかる。
さらに、上記キによれば、保護膜55は、金属層54を構成する金属よりもエレクトロマイグレーション耐性の高い材料であるNiPめっき膜である。
・上記クには、絶縁層31の上面31A上に配線層50の上面の一部を露出する貫通孔61Xを有する絶縁層61を形成することが記載されている。また、図27には、絶縁層31が、配線層50及び保護膜55を被覆する点、及び貫通孔61Xが絶縁層61を厚さ方向に貫通する点が見てとれる。
・上記クによれば、貫通孔61Xを充填するビア配線と、ビア配線を介して配線層50と接続された配線層70が記載されている。
・図27によれば、粗化面54Rが平滑面54Sと連続して形成される点が見てとれる。
・図27によれば、絶縁層61が保護膜55の外周部の上面及び側面を被覆するように形成されている点が見てとれる。

(2)よって、第4実施形態の配線基板10に着目して引用文献1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「コア基板20と、コア基板20の上面20Aに形成された配線層22と、配線層22を被覆するようにコア基板20の上面20Aに積層された絶縁層31と、絶縁層31を厚さ方向に貫通して配線層22の上面の一部を露出する貫通孔31Xと、貫通孔31X内に充填されており、絶縁層31の上面31Aから露出する上端面32Aを有するビア配線32と、を有する配線構造11と、
絶縁層31の上面31Aに積層され、配線構造11よりも配線密度の高い配線層が形成された高密度配線層である配線構造12と、を有する配線基板10であって、
配線構造12は、
ビア配線32の上端面32Aと接続されるように、絶縁層31の上面31A上に積層されており、ビア配線32の上端面32A上に形成されたシード層51と、そのシード層51上に形成された金属層54とを有する配線層50であって、ランドにおける金属層54の表面が粗化面54Rに形成され、粗化面54R以外の金属層54の表面が粗化面54Rよりも粗度の小さい平滑面54Sに形成されている配線パターン50Bを有する配線層50と、
金属層54を構成する金属よりもエレクトロマイグレーション耐性の高い材料であるNiPめっき膜を用い、配線層50の平滑面54Sと粗化面54Rのうちの平滑面54Sのみを被覆する保護膜55と、
絶縁層31の上面31A上に形成され、配線層50及び保護膜55を被覆する絶縁層61と、
絶縁層61を厚さ方向に貫通して配線層50の上面の一部を露出する貫通孔61Xと、
貫通孔61Xを充填するビア配線と、該ビア配線を介して配線層50と接続された配線層70と、を有し、
粗化面54Rは、平滑面54Sと連続して形成され、
絶縁層61は、保護膜55の外周部の上面及び側面を被覆するように形成されている、
配線基板10。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面と共に次の事項が記載されている。

「【0016】
図1に示すように、電子部品内蔵基板1は、基板10と、基板10上に接着層12を介して配置され、一方側(上面)に2つの端子電極22を備える電子部品20と、端子電極22上に設けられた開口部23を除いて端子電極22の上面を被覆するパッシベーション層24(絶縁性被覆層)と、端子電極上の開口部23を充填するように形成された金属保護層30と、金属保護層30上に設けられた開口部33を除いて基板10及び電子部品20上を被覆する第1層間絶縁層32と、第1層間絶縁層32上に設けられると共に金属保護層30上の開口部31を充填するように形成された配線層34と、配線層34上に設けられた開口部35を除いて第1層間絶縁層32及び配線層34上を被覆する第2層間絶縁層36と、配線層34上の開口部35を充填するように形成されたバンプ38と、を含んで構成される。また、金属保護層30は、第1保護層(第1の層)26と、第1保護層26上に積層された第2保護層28(第2の層)と、を含んで構成される。このうち、電子部品20が配置される基板10及び接着層12と、電子部品20の周囲に設けられる第1層間絶縁層32と、が電子部品20を収容する収容構造体として機能する。」

「図1



(2)上記図1から、開口部33が、第1層間絶縁層32を厚さ方向に貫通し、金属保護層30の上面を露出することが確認できる。
よって、上記記載事項及び図面によれば、引用文献2には、「絶縁層を厚さ方向に貫通する開口部により保護層の上面を露出する」という技術的事項(以下、「引用文献2に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると次のことがいえる。
ア.引用発明1の「コア基板20の上面20Aに形成された配線層22」、「配線層22を被覆するようにコア基板20の上面20Aに積層された絶縁層31」、「絶縁層31を厚さ方向に貫通して配線層22の上面の一部を露出する貫通孔31X」、「貫通孔31X内に充填されており、絶縁層31の上面31Aから露出されている上端面32Aを有するビア配線32」は、本願発明1の「第1配線層」、「前記第1配線層を被覆する第1絶縁層」、「前記第1絶縁層を厚さ方向に貫通して前記第1配線層の上面を露出する第1貫通孔」、「前記第1貫通孔を充填し、前記第1絶縁層から露出された上端面を有する第1ビア配線」にそれぞれ相当する。
よって、引用発明1の「コア基板20と、コア基板20の上面20Aに形成された配線層22と、配線層22を被覆するようにコア基板20の上面20Aに積層された絶縁層31と、絶縁層31を厚さ方向に貫通して配線層22の上面の一部を露出する貫通孔31Xと、貫通孔31X内に充填されており、絶縁層31の上面31Aから露出する上端面32Aを有するビア配線32と、を有する配線構造11」は、本願発明1の「第1配線層と、前記第1配線層を被覆する第1絶縁層と、前記第1絶縁層を厚さ方向に貫通して前記第1配線層の上面を露出する第1貫通孔と、前記第1貫通孔を充填し、前記第1絶縁層から露出された上端面を有する第1ビア配線と、を含む第1配線構造」に相当する。

イ.引用発明1の「配線構造12」は、「絶縁層31の上面31Aに積層され、配線構造11よりも配線密度の高い配線層が形成された高密度配線層」であるから、本願発明1の「前記第1絶縁層の上面に積層され、前記第1配線構造の配線密度よりも高い配線密度を有する2配線構造」に相当する。

ウ.引用発明1の「配線層50」は、「ビア配線32の上端面32Aと接続されるように、絶縁層31の上面31A上に積層され」るから、ビア配線32の上端面32Aと絶縁層31の上面31Aに形成される。
また、引用発明1の「配線層50」が有する「配線パターン50B」は、「ランドにおける金属層54の表面が粗化面54Rに形成され、粗化面54R以外の金属層54の表面が粗化面54Rよりも粗度の小さい平滑面54Sに形成されている」から、本願発明1の「上面の一部が平滑面に形成され、残りの上面が前記平滑面よりも粗度が大きい粗化面に形成された第1配線パターン」に相当する。
よって、引用発明1の「ビア配線32の上端面32Aと接続されるように、絶縁層31の上面31A上に積層されており、ビア配線32の上端面32A上に形成されたシード層51と、そのシード層51上に形成された金属層54とを有する配線層50であって、ランドにおける金属層54の表面が粗化面54Rに形成され、粗化面54R以外の金属層54の表面が粗化面54Rよりも粗度の小さい平滑面54Sに形成されている配線パターン50Bを有する配線層50」は、本願発明1の「前記第1絶縁層の上面及び前記第1ビア配線の上端面に形成され、上面の一部が平滑面に形成され、残りの上面が前記平滑面よりも粗度が大きい粗化面に形成された第1配線パターンを有する第2配線層」に相当する。

エ.引用発明1の「保護膜55」に用いられる「NiPめっき膜」が導電材料であることは技術常識である。また、引用発明1の「エレクトロマイグレーション」は、本願発明1の「マイグレーション」に含まれる。
よって、引用発明1の「金属層54を構成する金属よりもエレクトロマイグレーション耐性の高い材料であるNiPめっき膜を用い、配線層50の平滑面54Sと粗化面54Rのうちの平滑面54Sのみを被覆する保護膜55」は、本願発明1の「前記第2配線層よりもマイグレーション耐性に優れた導電材料からなり、前記平滑面及び前記粗化面のうち前記平滑面のみを被覆する保護膜」に相当する。
ただし、「保護膜」が、本願発明1では「前記粗化面よりも粗度の小さい平滑な上面を有する」のに対して、引用発明1にはその旨の特定がない点で相違する。

オ.引用発明1の「絶縁層61」は、「絶縁層31の上面31A上に形成され、配線層50及び保護膜55を被覆する」から、本願発明1の「前記第1絶縁層の上面に積層され、前記第2配線層及び前記保護膜を被覆する第2絶縁層」に相当する。

カ.引用発明1の「絶縁層61を厚さ方向に貫通」する「貫通孔61X」と、本願発明1の「前記第2絶縁層を厚さ方向に貫通」する「第2貫通孔」は、共に「前記第2絶縁層を厚さ方向に貫通する第2貫通孔」である点で共通する。
ただし、「第2貫通孔」が、本願発明1では「前記保護膜の上面を露出する」のに対して、引用発明1にはその旨の特定がない点で相違する。

キ.引用発明1の「貫通孔61Xを充填するビア配線」は、本願発明1の「前記第2貫通孔を充填する第2ビア配線」に相当する。また、引用発明1の「該ビア配線を介して配線層50と接続された配線層70」は、本願発明1の「前記第2ビア配線を通じて前記第2配線層と接続された第3配線層」に相当する。

ク.引用発明1の「粗化面54R」が「平滑面54Sと連続して形成され」ることは、本願発明1の「前記粗化面は、前記平滑面と連続して形成され」ることに相当する。
ただし、「粗化面」が、本願発明1では「前記保護膜の外周部の下面を露出させるように前記平滑面よりも下方に凹んで形成され」るのに対して、引用発明1にはその旨の特定がない点で相違する。

ケ.引用発明1の「絶縁層61」が「保護膜55の外周部の上面及び側面を被覆するように形成されている」ことは、本願発明1の「前記第2絶縁層は、前記保護膜の外周部の上下両面及び側面を被覆するように形成されている」ことに相当する。

コ.引用発明1の「配線構造11」と「配線構造12」を有する「配線基板10」は、本願発明1の「第1配線構造」と「第2配線構造と、を有」する「配線基板」に相当する。

(2)したがって、上記アないしコによれば、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。
(一致点)
「第1配線層と、前記第1配線層を被覆する第1絶縁層と、前記第1絶縁層を厚さ方向に貫通して前記第1配線層の上面を露出する第1貫通孔と、前記第1貫通孔を充填し、前記第1絶縁層から露出された上端面を有する第1ビア配線と、を含む第1配線構造と、
前記第1絶縁層の上面に積層され、前記第1配線構造の配線密度よりも高い配線密度を有する第2配線構造と、を有し、
前記第2配線構造は、
前記第1絶縁層の上面及び前記第1ビア配線の上端面に形成され、上面の一部が平滑面に形成され、残りの上面が前記平滑面よりも粗度が大きい粗化面に形成された第1配線パターンを有する第2配線層と、
前記第2配線層よりもマイグレーション耐性に優れた導電材料からなり、前記平滑面及び前記粗化面のうち前記平滑面のみを被覆する保護膜と、
前記第1絶縁層の上面に積層され、前記第2配線層及び前記保護膜を被覆する第2絶縁層と、
前記第2絶縁層を厚さ方向に貫通する第2貫通孔と、
前記第2貫通孔を充填する第2ビア配線を有し、前記第2ビア配線を通じて前記第2配線層と接続された第3配線層と、を有し、
前記粗化面は、前記平滑面と連続して形成され、
前記第2絶縁層は、前記保護膜の外周部の上下両面及び側面を被覆するように形成されていることを特徴とする配線基板。」

(相違点1)
「保護膜」が、本願発明1では「前記粗化面よりも粗度の小さい平滑な上面を有する」のに対して、引用発明1にはその旨の特定がない点。
(相違点2)
「第2貫通孔」が、本願発明1では「前記保護膜の上面を露出する」のに対して、引用発明1にはその旨の特定がない点。
(相違点3)
「粗化面」が、本願発明1では「前記保護膜の外周部の下面を露出させるように前記平滑面よりも下方に凹んで形成され」るのに対して、引用発明1にはその旨の特定がない点。

(3)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
本願発明1の「保護膜」は「前記粗化面よりも粗度の小さい平滑な上面を有する」から、相違点2に係る「前記保護膜の上面」とは、「前記粗化面よりも粗度の小さい平滑な上面」のことである。
ここで、引用文献2には、上記「第4」「2 引用文献2について」において説示したとおり、「絶縁層を厚さ方向に貫通する開口部により保護層の上面を露出する」という技術的事項(引用文献2に記載の技術的事項)が記載されているが、保護層の上面が、粗化面よりも粗度の小さい平滑な面であることについて特定がない。
また、引用発明1の「貫通孔61X」は「ビア配線」が充填されるものであり、この「ビア配線」は配線層50と配線層70を接続するものである。そして、ビア配線と配線層のランドが接続されることは技術常識であるから、引用発明1のビア配線が充填される「貫通孔61X」は、「配線層50」が有する「配線パターンB」の「粗化面54Rに形成され」た「ランド」を露出するものである。
ここで、引用発明1は、配線層50のうち、ランド等の表面積が大きい領域の配線層50の表面を粗化面に形成することにより、配線層50と絶縁層61との密着性を向上させるという課題を解決するものであるから(段落【0134】)、引用発明1の「貫通孔61X」により露出する「配線パターンB」の「ランド」を、「粗化面54R」に代えて、「前記粗化面よりも粗度の小さい平滑な上面を有する」「保護膜」とすることには、阻害要因が存在するといわざるをえない。

したがって、上記相違点1及び3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2に記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2ないし9について
本願発明1を引用する本願発明2ないし9は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明1及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

3 本願発明10ないし12について
請求項10に係る発明は、「配線基板」に係る発明である本願発明1を、「配線基板を製造する方法」に係る発明にそのカテゴリーを変えて表現したものであって、本願発明1の上記相違点2に係る発明特定事項と共通する「前記保護膜の上面を露出する第2貫通孔」という発明特定事項を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明1及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、本願発明10を引用する本願発明11ないし12は、本願発明10の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、本願発明10と同じ理由により、引用発明1及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし12に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-18 
出願番号 特願2016-167227(P2016-167227)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 黒田 久美子  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 永井 啓司
山本 章裕
発明の名称 配線基板、半導体装置及び配線基板の製造方法  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ