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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1377311
審判番号 不服2020-15376  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-06 
確定日 2021-08-20 
事件の表示 特願2019- 76039号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月 4日出願公開、特開2019-107558号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成27年2月26日(以下「遡及日」という。)に出願した特願2015-36326号の一部を平成31年4月12日に新たな特許出願としたものであって、令和2年2月19日付けで拒絶理由が通知され、同年4月14日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月12日付け(謄本送達日:同年同月17日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年11月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年11月6日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、令和2年4月14日提出の手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「所定の始動条件の成立に基づいてゲームを実行し、前記ゲームが特別な結果となった場合に遊技者に有利な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
遊技者が遊技球の発射操作を行う操作部と、
前記ゲームに関連する演出を行うことが可能な複数の演出手段と、
前記演出を制御する演出制御手段と、を備え、
前記演出制御手段は、
客待ち演出の実行中に前記操作部の操作があったことに対応して、前記ゲームを開始する前に2以上の前記演出手段の演出態様を変化させる機能を有することを特徴とする遊技機。」とあったものを、

「所定の始動条件の成立に基づいてゲームを実行し、前記ゲームが特別な結果となった場合に遊技者に有利な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
遊技者が遊技球の発射操作を行う操作部と、
前記ゲームに関連する演出を行うことが可能な複数の演出手段と、
前記演出を制御する演出制御手段と、を備え、
前記演出制御手段は、
客待ち演出の実行中に前記操作部の操作があったことに対応して、前記ゲームを開始する前に2以上の前記演出手段の演出態様を変化させる機能を有し、
少なくとも前記演出における演出ステージの名称が認識不能な状態から認識可能な状態へと演出態様を変化させることを前記機能による変化として含み、
客待ち演出の実行中に前記操作部の操作があったことに対応して、前記2以上の演出手段の演出態様を、前記演出ステージに対応する演出態様へと変化させることを特徴とする遊技機。」とする補正を含むものである(なお、下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。

2 補正の適否について
(1) 補正の目的
ア 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「演出手段の演出態様を変化させる機能」に関し、「少なくとも前記演出における演出ステージの名称が認識不能な状態から認識可能な状態へと演出態様を変化させることを前記機能による変化として含み、客待ち演出の実行中に前記操作部の操作があったことに対応して、前記2以上の演出手段の演出態様を、前記演出ステージに対応する演出態様へと変化させる」と限定するものである。

イ 上記アからみて、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項
本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面における【0573】及び図115等の記載に基づくものであり、新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)についても、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである(なお、AないしHについては、分説するため合議体が付した。以下A等を付した事項を「特定事項A」等という。)。

「A 所定の始動条件の成立に基づいてゲームを実行し、前記ゲームが特別な結果となった場合に遊技者に有利な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
B 遊技者が遊技球の発射操作を行う操作部と、
C 前記ゲームに関連する演出を行うことが可能な複数の演出手段と、
D 前記演出を制御する演出制御手段と、を備え、
E 前記演出制御手段は、
客待ち演出の実行中に前記操作部の操作があったことに対応して、前記ゲームを開始する前に2以上の前記演出手段の演出態様を変化させる機能を有し、
F 少なくとも前記演出における演出ステージの名称が認識不能な状態から認識可能な状態へと演出態様を変化させることを前記機能による変化として含み、
G 客待ち演出の実行中に前記操作部の操作があったことに対応して、前記2以上の演出手段の演出態様を、前記演出ステージに対応する演出態様へと変化させる
H ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用例、引用発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の遡及日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-161558号公報(平成26年9月8日出願公開、以下「引用例」という。)には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている(なお、下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様。)。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技球等の遊技媒体を使用して遊技を行う遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の遊技機は、変動表示装置において、変動表示ゲームの停止後、所定時間が経過するとデモンストレーション画面(客待ちデモ画面、客待ちデモ画像)を表示し、新たな始動入賞(始動口への遊技球の入賞)を検出した場合にデモ画面が終了する。この場合、始動入賞させるまでは、着席して遊技を開始している遊技者がいるにも拘らず、誰も遊技していないかのごとく客待ちデモ画面の表示が継続して行われてしまう。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遊技者が遊技しているにも拘らず客待ちデモ画面が表示されると、遊技者は非常に不愉快な心境になってしまう。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたもので、客待ちデモ画面の表示による遊技者の興趣の低下を防止することを目的とする。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明による遊技機の実施形態について説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
〔遊技機の構成〕
図1は、本発明の第1の実施の形態の遊技機1の斜視図である。
【0012】
遊技機1は、島設備に固定される本体枠2にヒンジ3を介して右側部が開閉回動自在に取り付けられる開閉枠4を備える。開閉枠4は、前面枠5及びガラス枠(遊技枠)6によって構成される。
・・・略・・・
【0016】
遊技機1は、効果音や警報音、報知音等を発する上スピーカ10a及び下スピーカ10bを備える。上スピーカ10aはガラス枠6の上両側部に配置され、下スピーカ10bは上皿ユニット11を構成する上皿11aの下方に配置される。
・・・略・・・
【0021】
ガラス枠6の下方位置において前面枠5に固定される固定パネル13には、下皿14と、球発射装置を駆動するための操作部15(発射操作部、発射ハンドル)とが備えられる。遊技者が操作部15を回動操作することによって、球発射装置は上皿11aから供給された遊技球を遊技盤30の遊技領域31(図2参照)に発射する。下皿14には、当該下皿14に貯留された遊技球を外部へ排出するための球抜き機構16が設けられる。
【0022】
なお、球発射装置を動作させる操作部15又はその近傍において、発射停止スイッチ110(図5参照)と、タッチスイッチ120(図5参照)が設けられる。発射停止スイッチ110は、遊技者が押すことにより発射停止信号を出力し、球発射装置の遊技球の発射を停止する。タッチスイッチ120(タッチセンサ)は、遊技者が操作部15を操作していること(遊技者の手が操作部15に触れていること)を検出するもので、この検出がないときには、球発射装置からの遊技球の発射が停止される。タッチスイッチ120(タッチセンサ)は、操作部15への操作を検出可能な操作検出手段を構成する。例えば、タッチスイッチ120は、環状の金属部分を有し、遊技者がこの金属部分に接触することによる静電容量の変化を検出して、信号を出力する。代わりに、タッチスイッチ120は、人感センサとして温度などを検出してもよい。
・・・略・・・
【0030】
遊技盤30の裏側には各種演出装置から構成される演出装置ユニット(裏面構成部材)(図示省略)が配設され、この演出装置ユニットの裏側には、変動表示装置としての変動表示装置35と、変動表示装置35に表示される演出等を制御する演出制御装置700(図4)と、を備える。
【0031】
変動表示装置35(装飾表示装置)は、複数の識別情報を変動表示する飾り特図変動表示ゲーム(装飾表示ゲーム)を表示可能な表示部35aを有する。センターケース34の開口部34aは変動表示装置35の表示部35aに対応して設けられており、変動表示装置35の表示部35aはセンターケース34の開口部(表示窓部)34aを介して視認可能となっている。
【0032】
変動表示装置35の表示部35aは任意の画像を表示可能な液晶表示器であり、表示画面上には複数の識別情報(特別図柄)や変動表示ゲームを演出するキャラクタ等、遊技の進行に基づく画像が表示できる。変動表示装置35は、表示部35aに複数の変動表示領域(例えば、左側、中央、右側の3つの可変表示領域又は上側、中央、下側の3つの可変表示領域)を設定して、変動表示ゲームにおいて各表示領域の各々で独立した画像を表示可能に構成されている。なお、変動表示装置35は、液晶ディスプレイを備えるものに限らず、ELやCRT等のディスプレイを備えるものであってもよい。」

ウ 「【0038】
第1始動入賞口37又は第2始動入賞口38に遊技球が入賞することが特図変動表示ゲームを開始するための始動条件となっており、第1始動入賞口37及び第2始動入賞口38が当該始動条件を発生させる変動始動入賞装置をなしている。なお、第1始動入賞口37と第2始動入賞口38は、障害釘で入球の調整ができる。
・・・略・・・
【0059】
第1始動入賞口37又は第2始動入賞口38への遊技球の入賞が所定のタイミングでなされた場合(入賞検出時の大当り乱数値が大当り値である場合)には、特図変動表示ゲームの結果として表示図柄により特定の結果態様(特別結果態様)が導出され、大当り状態(特別遊技状態)となる。これに対応して、変動表示装置35等の表示態様は特別結果態様(例えば「7,7,7」等の数字が揃った状態)となる。」

エ 「【0130】
以上のように、演出制御装置700は、遊技制御装置600から送信されたコマンドに基づいて演出制御を行う演出制御手段として機能し、さらに、変動表示装置35に表示される表示内容を制御する表示制御手段、及び、スピーカ10から効果音等を出力する音出力制御手段としての機能を有する。」

オ 「【0614】
〔タイムチャート5〕
図90は、遊技制御装置600と演出制御装置700(特に映像制御用マイコン720)の制御の結果の一例を示すタイムチャートである。本例は、客待ちデモ中(客待ちデモ画面の表示中)に遊技者が操作部15の操作を開始してタッチスイッチ120がオン状態になると特別演出が行われる点のみ、図88のタイムチャート4とは異なる。
【0615】
時間t3以後の客待ちデモ中(客待ちデモ画面の表示中)に遊技者が操作部15の操作を開始してタッチスイッチ120がオン状態になると、客待ちデモ中フラグがオフされ(A1504)、客待ちデモ画面の表示がオフする(B1604)。その後、始動口への遊技球の入賞があり(始動口スイッチがオンし)、特別図柄の変動(特図変動表示ゲーム)が開始するまでの間、変動表示装置35において特別演出が行われる。
【0616】
このようにするため、図91のように、客待ちデモ処理(図84)において、客待ちデモ画面の表示を終了し(B1604)、客待ちデモ監視タイマをクリアした(B1605)後、特別演出を開始する処理ステップ(B1619)を追加する。
【0617】
〔特別演出1〕
図92(A)-(D)は、演出制御装置700が行う特別演出の演出例を示す図であり、図92(E)-(H)は、図92(A)-(D)に対応する従来の演出を示す図である。
【0618】
本実施の形態では、タッチスイッチ120の検出/非検出が客待ちデモの終了/開始の条件に含まれる。このため、変動表示装置35での客待ちデモ画面(画像)の表示中(図92(A))に遊技者が操作部15の操作を開始してタッチスイッチ120がオン状態になると、演出制御装置700は、変動表示装置35において客待ちデモ画面の表示を終了させ、特別演出(図92(B))を開始する。特別演出は、特別演出開始時の遊技状態(即ち、遊技機1に関する情報)に対応した表示態様(表示内容)で実行される。本実施形態では、特別演出において、遊技状態に対応した打ち方(球発射装置の発射態様)の指示が表示されるが、確変遊技状態などの遊技状態を直接的に表示してもよい。
【0619】
例えば、特別演出開始時に、遊技機の遊技状態が確変遊技状態や時短遊技状態である場合には、特別演出として、遊技者に右打ちを促す表示(右打ちが有利になることを報知する表示)が変動表示装置35においてなされる(図92(B))。そして、遊技者が操作部15の操作によって右打ちを選択すると、第2始動入賞口38への入賞によって、変動表示装置35において第2始動記憶(特図2保留)に関する保留表示がなされる(B1404)(図92(C))。ここでは、開状態となった可動部材38aに複数の遊技球が連続して入賞した状態を示している。そして、第2始動記憶の入賞に基づいて客待ちデモ画面が終了し、飾り特図変動表示ゲームが実行される(図92(D))。客待ちデモ画面が終了した時点では前回の飾り特図変動表示ゲームにおける停止図柄が表示されており、その状態から今回の飾り特図変動表示ゲームが開始する。また、図92(A)-(D)では遊技状態が確変遊技状態や時短状態である場合を示したが、遊技状態が通常遊技状態である場合には、特別演出として左打ちを促す表示を行なってもよい。
【0620】
一方、従来の例では、タッチスイッチ120の検出/非検出(オンオフ)が客待ちデモの終了/開始の条件に含まれないので、客待ちデモ中(図92(E))にタッチスイッチ120がオン状態になっても、演出制御装置700は変動表示装置35に客待ちデモ画面を表示し続け、客待ちデモ状態が継続する(図92(F))。そして、遊技者が操作部15の操作によって通常の通り左打ちを選択すると、第1始動入賞口37への入賞によって、変動表示装置35において第1始動記憶(特図1保留)に関する保留表示がなされる(B1404)(図92(G))。そして、第1始動記憶に基づいて、飾り特図変動表示ゲームが実行される(図92(H))。このため、遊技者は、遊技状態に合わせた打ち方(球発射装置の発射態様)を適切に選択できず、遊技の興趣が損なわれる。また、第2始動記憶の方が第1始動記憶よりも実行内容の振分けが遊技者に有利に設定されている遊技機においては、遊技の興趣がより大きく損なわれてしまう。」

カ 「【図90】


・・・
【図92】




キ 第1の実施の形態の制御結果(処理結果)の一例を示すタイムチャート5である図90(上記カ)の記載より、客待ちデモ画面の表示中に遊技者が操作部15の操作を開始してタッチスイッチ120がオン状態になると、BGMがオフからオンとなっていることが看取できる。

ク 上記アないしキから、引用例には、次の発明が記載されている。なお、aないしhについては本願補正発明の特定事項AないしHに概ね対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a 第1始動入賞口37又は第2始動入賞口38に遊技球が入賞することが特図変動表示ゲームを開始するための始動条件となっており(【0038】)、第1始動入賞口37又は第2始動入賞口38への遊技球の入賞が所定のタイミングでなされた場合(入賞検出時の大当り乱数値が大当り値である場合)には、特図変動表示ゲームの結果として表示図柄により特定の結果態様(特別結果態様)が導出され、大当り状態(特別遊技状態)となる(【0059】)、遊技機1(【0011】)であって、
b 球発射装置を動作させる操作部15と、操作部15への操作を検出可能な操作検出手段を構成するタッチスイッチ120(【0022】)と、
c 効果音や警報音、報知音等を発する上スピーカ10a及び下スピーカ10b(【0016】)と、複数の識別情報を変動表示する飾り特図変動表示ゲーム(装飾表示ゲーム)を表示可能な表示部35aを有する変動表示装置35(【0031】)と、
d 遊技制御装置600から送信されたコマンドに基づいて演出制御を行う演出制御手段として機能する演出制御装置700(【0130】)と、
を備え、
e、f、g 変動表示装置35での客待ちデモ画面の表示中に遊技者が操作部15の操作を開始してタッチスイッチ120がオン状態になると、演出制御装置700は、変動表示装置35において客待ちデモ画面の表示を終了させるとともに、BGMがオフからオンとなり、特別演出を開始するものであり、該特別演出は、変動表示装置35で特別演出開始時の遊技状態に対応した表示態様(表示内容)で実行するものであり(【0618】、上記キ)、
特別演出において、確変遊技状態などの遊技状態を直接的に表示する(【0618】)、
h 遊技機1(【0011】)。」(以下「引用発明」という。)

(3)周知例、周知技術
ア 本願の遡及日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011-62290号公報(平成23年3月31日発行、以下「周知例1」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の確率で高確率遊技状態を終了させて、高確率遊技状態の終了を報知する遊技機に関する。」

(イ)「【0083】
図13は、演出モードの移行構成図を示す図である。図13(a)は、長当たりの終了後からの演出モードの移行構成図を示す図であり、図13(b)は、短当たり、小当たりの終了後からの演出モードの移行構成図を示す図である。 本実施形態においては、「確変モード」、「デンジャーモード」、「チャンスモード」「通常モード」との4つの演出モードを備えているが、演出モードの数はこれに限られない。
【0084】
図13(a)に示すように、長当たりの遊技が終了すると、高確率遊技状態に移行される。このとき、主制御基板101のメインCPU101aは「特別図柄の変動パターン決定テーブル1」を決定し、演出制御基板102のサブCPU102aは、変動パターン決定テーブル1の決定に対応して「確変モード」を決定する。
そして、演出制御基板102のサブCPU102aで「確変モード」が決定されると、液晶表示装置13においては黄金の背景画像が表示され、音声出力装置18においてはBGM1が出力され、演出用照明装置16においてはLEDの点灯パターン1が点灯制御される。 すなわち、「確変モード」によって高確率遊技状態に移行したことが報知される。」

(ウ)「【0087】
一方、現在の確率遊技状態が低確率遊技状態であれば、主制御基板101のメインCPU101aは「特別図柄の変動パターン決定テーブル3」を決定する。これに対応して、演出制御基板102のサブCPU102aは、「通常モード」を決定する。
そして、演出制御基板102のサブCPU102aで「通常モード」が決定されると、液晶表示装置13においては青の背景画像が表示され、音声出力装置18においてはBGM3が出力され、演出用照明装置16においてはLEDの点灯パターン3が点灯制御される。」

イ 本願の遡及日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-135548号公報(平成24年7月19日発行、以下「周知例2」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機に代表される遊技機に関するものである。」

(イ)「【0298】
そして、特別図柄の抽選結果が「特別図柄の15R確変大当たり」である場合に、第1特別遊技状態が終了すると、パチンコ機10の遊技状態が「特別図柄の高確率状態A」へ移行する。ここで、音声ランプ制御装置113は、第3図柄表示装置81において「高確率時用の背面画像」が表示されるように、表示制御装置114に対して、表示すべき背面画像を示す背面画像変更コマンドを送信する。また、第3図柄表示装置81に表示する背面画像に応じて、電飾部29?33の点灯および点滅パターンや、音声出力装置226(図5参照)から出力される音声(音楽)を選択し、その点灯および点滅や、音声出力を実行する。
・・・略・・・
【0300】
一方、特別図柄の抽選結果が「特別図柄の15R通常大当たり」である場合に、第1特別遊技状態が終了すると、パチンコ機10の遊技状態が「特別図柄の低確率状態」および「普通図柄の時短状態」へ移行する。ここで、音声ランプ制御装置は、第3図柄表示装置81において「時短時用の背面画像」が表示されるように、表示制御装置114に対して、背面画像変更コマンドを送信する。また、第3図柄表示装置81に表示する背面画像に応じて、電飾部29?33の点灯および点滅パターンや、音声出力装置226(図5参照)から出力される音声(音楽)を選択し、その点灯および点滅や、音声出力を実行する。」

ウ 本願の遡及日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2010-82076号公報(平成22年4月15日発行、以下「周知例3」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技球が始動口に入球することによって大当たりの抽選を行う遊技機に関する。」

(イ)「【0174】
ここで、「通常演出モード」は、主に通常遊技状態において行われる演出態様である。なお、本実施形態においては、「通常演出モード」は、「高確率時短付き長当たり遊技」、「通常時短付き長当たり遊技」、「高確率時短付き短当たり遊技」、「通常時短付き短当たり遊技」および「通常時短無し短当たり遊技」実行後の遊技において実行される演出態様である。また、「確変示唆演出モード」は、上記「小当たり遊技」および「高確率時短無し短当たり遊技」の終了後において行われる演出態様である。また、「確変確定演出モード」は、上記「高確率時短無し短当たり遊技」の終了後においてのみ行われうる演出態様である。「確変示唆演出モード」は、例えば、図柄表示部104において、上記「通常演出モード」では出現しないキャラクターが登場したり、異なる背景画像が表示されたりする。また、音声演出も「通常演出モード」とは異なる音楽が出力されるなど、「通常演出モード」とは明らかに異なる演出が展開されるものである。また、「確変確定演出モード」は、例えば、図柄表示部104において、上記「通常演出モード」、「確変示唆演出モード」では出現しないキャラクターが登場したり、異なる背景画像が表示されたりする。また、音声演出も「通常演出モード」、「確変示唆演出モード」とは異なる音楽が出力されるなど、「通常演出モード」、「確変示唆演出モード」とは明らかに異なる演出が展開されるものである。いずれにしても、この「確変示唆演出モード」、「通常演出モード」および「確変確定演出モード」は、それぞれが一見して異なる演出態様であれば、その内容は特に問わない。このように、異なる演出態様にすることで、遊技者に、遊技状態が高確率遊技状態であるかもしれないことを示唆するべく報知したり、遊技状態が高確率状態であるということ確定させるべく報知したりすることができる。」

エ 本願の遡及日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011-4964号公報(平成23年1月13日発行、以下「周知例4」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技球の入賞によって大当たりの抽選を行うパチンコ遊技機等の遊技機に関する。」

(イ)「【0131】
報知演出によるパチンコ遊技機100の内部状態の報知方法は、任意に定めて良い。例えば、パチンコ遊技機100が確率変動していることを示すメッセージを画像表示部114に表示させたり、音声出力させたりすることによって行っても良い。確変潜伏演出においてゲームやクイズが行われる場合、ゲームの勝敗やクイズの結果によって報知しても良い(例えば、確率変動している場合は必ずゲームに勝つように演出する等)。
・・・略・・・
【0133】
演出処理部331は、画像/音響制御部310およびランプ制御部320を制御し、画像表示部114への画像表示、スピーカ156による音声出力、枠ランプ157および盤ランプ116の点滅、可動役物115の駆動等を手段として、各種の演出を行う。演出の種類としては、パチンコ遊技機100の内部状態が確変遊技状態のときに行われる確変演出、通常遊技状態のときに行われる通常演出、時短遊技状態のときに行われる時短演出、確変遊技状態でありかつ時短遊技状態のときに行われる時短確変演出、潜伏モード時に行われる確変潜伏演出、潜伏モードにおいて内部状態を報知するために行われる報知演出等がある。」

オ 上記アないしエに示された周知例1ないし4の記載からみて、以下の事項が周知であると認められる。
「通常遊技状態から確変遊技状態に遊技状態が移行可能であり、画像表示手段及び音出力手段を含め2以上の演出手段を備える、遊技機であって、
遊技状態が確変遊技状態へ移行した場合、画像表示手段及び音出力手段の演出態様を、確変遊技状態に対応する演出態様へと変化させる、遊技機。」(以下「周知技術」という。)

(4)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(見出し(a)ないし(g)は、本願補正発明の特定事項AないしGに概ね対応する。)。

(a)(h)引用発明の「始動条件」、「特図変動表示ゲーム」、「特定の結果態様」、「大当り状態」及び「遊技機1」は、それぞれ本願補正発明の「始動条件」、「ゲーム」、「特別な結果」、「遊技者に有利な特別遊技状態」、「遊技機」に相当する。
引用発明のaは、第1始動入賞口37又は第2始動入賞口38に遊技球が入賞することが特図変動表示ゲーム(ゲーム)を開始するための始動条件(始動条件)となっており、第1始動入賞口37又は第2始動入賞口38への遊技球の入賞が所定のタイミングでなされた場合には、特図変動表示ゲームの結果として表示図柄により特定の結果態様(特別な結果)が導出され、大当り状態(特別遊技状態)となるものであるから、本願補正発明の特定事項Aのうち「所定の始動条件の成立に基づいてゲームを実行し、前記ゲームが特別な結果となった場合に遊技者に有利な特別遊技状態を発生可能」との特定事項を備える。
以上のとおりであるから、引用発明のa及びhは、それぞれ、本願補正発明の特定事項A及びHに相当する。

(b)引用発明のbにおいて、「球発射装置を動作させる操作部15」及び「操作部15への操作を検出可能な操作検出手段を構成するタッチスイッチ120」は、技術常識からみて、遊技者が遊技球の発射操作を行うものといえるから、引用発明のbは、本願補正発明の特定事項Bに相当する。

(c)引用発明のcの「効果音や警報音、報知音等を発する上スピーカ10a及び下スピーカ10b」と「複数の識別情報を変動表示する飾り特図変動表示ゲームを表示可能な表示部35aを有する変動表示装置35」は、技術常識からみて、特図変動表示ゲーム(ゲーム)に関連する演出を行うことが明らかであるから、本願補正発明の「C 前記ゲームに関連する演出を行うことが可能な複数の演出手段」に相当する。

(d)引用発明の「d 遊技制御装置600から送信されたコマンドに基づいて演出制御を行う演出制御手段として機能する演出制御装置700」は、本願補正発明の「D 前記演出を制御する演出制御手段」に相当する。

(e)引用発明の「客待ちデモ画面」は、本願補正発明の「客待ち演出」に相当する。
次に、本願補正発明の特定事項Eの「操作部への操作」について、本願の発明の詳細な説明を参照する。すると、【0012】には「ここで、発射操作ハンドル11には、遊技者の手などが当該発射操作ハンドル11にタッチ(接触)しているか否かを検出するタッチスイッチ11a(タッチセンサともいう)が設けられている。このタッチスイッチ11aにより発射操作ハンドル11への接触が有る状態が検出されていれば、遊技者が遊技中(即ち、遊技球を発射中)であると判定することができる。」と記載されている。そうすると、本願補正発明の「操作部への操作」とは、実際に操作ハンドル(操作部)への回動操作がなくとも、操作ハンドルに遊技者のタッチがあれば「操作部への操作」に当たると解するのが相当である。
上記理解に基づいて対比をすると、引用発明のe、f、gにおいて、変動表示装置35での客待ちデモ画面の表示中(客待ち演出の実行中)に遊技者が操作部15の操作を開始してタッチスイッチ120がオン状態になると(操作部の操作があったことに対応して)、演出制御装置700(演出制御手段)は、変動表示装置35(2以上の演出手段の1つ)において客待ちデモ画面の表示(客待ち演出)を終了させるとともに、BGMがオフからオンとなり、該BGMをスピーカ(2以上の演出手段の1つ)から出力するもの、すなわち、2以上の演出手段の演出態様を変化させるものである。
そうすると、引用発明のe、f、gは、本願補正発明の「E 前記演出制御手段は、客待ち演出の実行中に前記操作部の操作があったことに対応して、前記ゲームを開始する前に2以上の前記演出手段の演出態様を変化させる機能を有し、」に相当する構成を備える。

(f)引用発明の「遊技状態」は、本願補正発明の「演出ステージ」に相当する。
そして、引用発明のe、f、gにおいて、客待ちデモ画面の表示中に遊技者が操作部15の操作を開始してタッチスイッチ120がオン状態になると、特別演出を開始するものであり、該特別演出は、変動表示装置35で特別演出開始時の遊技状態(演出ステージ)に対応した表示態様で実行され、確変遊技状態などの遊技状態を直接的に表示するものである。
そうすると、引用発明において、確変遊技状態などの遊技状態が表示されていない客待ちデモ画面が表示されている状態(演出ステージの名称が認識不能な状態)から、タッチスイッチ120がオン状態になることに伴い、確変遊技状態などの遊技状態が直接的に表示される状態(演出ステージの名称が認識可能な状態)へと演出態様を変化させているといえる。
してみると、引用発明のe、f、gは、本願補正発明の「F 少なくとも前記演出における演出ステージの名称が認識不能な状態から認識可能な状態へと演出態様を変化させることを前記機能による変化として含む、」との特定事項を備える。

(g)上記(e)及び(f)で示した事項を踏まえれば、引用発明のe、f、gと、本願補正発明の「G 客待ち演出の実行中に前記操作部の操作があったことに対応して、前記2以上の演出手段の演出態様を、前記演出ステージに対応する演出態様へと変化させる」とは、「客待ち演出の実行中に前記操作部の操作があったことに対応して、前記2以上の演出手段の演出態様を」「変化させる」点で一致する。

以上のとおりであるから、本願補正発明と引用発明とは、
「A 所定の始動条件の成立に基づいてゲームを実行し、前記ゲームが特別な結果となった場合に遊技者に有利な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
B 遊技者が遊技球の発射操作を行う操作部と、
C 前記ゲームに関連する演出を行うことが可能な複数の演出手段と、
D 前記演出を制御する演出制御手段と、を備え、
E 前記演出制御手段は、
客待ち演出の実行中に前記操作部の操作があったことに対応して、前記ゲームを開始する前に2以上の前記演出手段の演出態様を変化させる機能を有し、
F 少なくとも前記演出における演出ステージの名称が認識不能な状態から認識可能な状態へと演出態様を変化させることを前記機能による変化として含む、
G’客待ち演出の実行中に前記操作部の操作があったことに対応して、前記2以上の演出手段の演出態様を変化させる
H 遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点(特定事項G)
「客待ち演出の実行中に前記操作部の操作があったことに対応して、」
本願発明では、「前記2以上の演出手段の演出態様を前記演出ステージに対応する演出態様へと変化させ」るのに対し、
引用発明では、変動表示装置35において客待ちデモ画面の表示を終了させるとともに、BGMがオフからオンとなり 、特別演出を開始するものであり、特別演出(演出ステージ)の際に、確変遊技状態などの遊技状態を直接的に表示(演出態様)しているものの、BGMが遊技状態に対応しているかどうかが不明であり、本願発明のように、「前記2以上の演出手段の演出態様を前記演出ステージに対応する演出態様へと変化させ」るといえるかどうか明らかでない点。

(5)判断
上記相違点について検討する。
ア 通常遊技状態から確変遊技状態に遊技状態が移行可能であり、画像表示手段及び音出力手段を含め2以上の演出手段を備える、遊技機において、遊技状態が確変遊技状態へ移行した場合、画像表示手段及び音出力手段の演出態様を、確変遊技状態に対応する演出態様へと変化させることは周知技術(上記(3)オ)である。
周知技術の「遊技状態」、「画像表示手段及び音出力手段」は、それぞれ、本願補正発明の「演出ステージ」、「2以上の演出手段」に相当する。そして、周知技術は、遊技状態が確変遊技状態(演出ステージ)へ移行した場合、画像表示手段及び音出力手段の演出態様(2以上の演出態様)を、確変遊技状態(演出ステージ)に対応する演出態様へと変化させるものであるから、本願補正発明の特定事項Gのうち「2以上の演出手段の演出態様を、演出ステージに対応する演出態様へと変化させる」との特定事項を備える。

イ 引用発明と周知技術とは、通常遊技状態から確変遊技状態に遊技状態が移行可能であり、画像表示手段及び音出力手段を含め2以上の演出手段を備え、遊技状態が移行した場合、演出手段の演出態様を、移行先の遊技状態に対応する演出態様へと変化させる遊技機である点で技術分野が共通し、遊技者が現時点での遊技状態を認識し易くするという課題を潜在的に有する点でも共通することが明らかであるから、周知技術を引用発明に適用することは当業者が適宜なし得たことである。
具体的に検討すると、引用発明は、客待ちデモ画面の表示中に遊技者が操作部15の操作を開始してタッチスイッチ120がオン状態になると、客待ちデモ画面の表示を終了させるとともに、BGMがオンとなり、特別演出を開始するものであり、該特別演出は、特別演出開始時の遊技状態に対応した表示態様で実行されるとともに、確変遊技状態などの遊技状態を直接的に表示するところ、視覚だけでなく聴覚でも遊技状態が認識できるようにし、現在の遊技状態を認識し易くするために、当該周知技術を引用発明に適用し、BGMについても遊技状態に対応する態様となすことは当業者が適宜なし得たことである。
してみると、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の特定事項となすことは、当業者が周知技術に基づいて適宜なし得たことである。

(6)本願補正発明の奏する、遊技をする意欲を高められるという効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から、予測することができた程度のものである。

(7)請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「【本願発明が特許されるべき理由】」において、概ね以下のとおり主張している。
「(ニ)本願発明と引用文献との対比
本願請求項1に記載の発明(本願発明)と引用文献1に記載された発明とを対比すると、客待ち演出実行中の操作部の操作に対応して演出手段により行う演出を変化させる機能を有する点で類似しています。また引用文献1には、客待ち演出実行中の操作部の操作に対応して複数の演出手段により行う演出を変化させることが示唆されています。
しかし、本願発明と引用文献とは、少なくとも以下の構成で異なります。
即ち本願発明は、
「遊技者が遊技球の発射操作を行う操作部と、
前記ゲームに関連する演出を行うことが可能な複数の演出手段と、
前記演出を制御する演出制御手段と、を備え、」という特徴Aと、
「前記演出制御手段は、
客待ち演出の実行中に前記操作部の操作があったことに対応して、前記ゲームを開始する前に2以上の前記演出手段の演出態様を変化させる機能を有し、」という特徴Bに加えて、
「少なくとも前記演出における演出ステージの名称が認識不能な状態から認識可能な状態へと演出態様を変化させることを前記機能による変化として含み、」という特徴Cと、
「客待ち演出の実行中に前記操作部の操作があったことに対応して、前記2以上の演出手段の演出態様を、前記演出ステージに対応する演出態様へと変化させる」という特徴Dとを有し、これら特徴A乃至Dを含む構成により、既述した効果を実現しています。
ところが引用文献1には、上記特徴Cを明示又は示唆する記載も上記特徴Dを明示又は示唆する記載も見当たらず、引用文献1に記載された遊技機では、本願発明と同等の効果を実現することはできません。引用文献1に記載された遊技機では、客待ち演出中の操作部の操作に対応する演出変化によって演出ステージを認識することができず、本願発明のように遊技意欲を高める効果が得られません。
よって補正後の本願発明は、引用文献に記載された発明と同一ではなく、また当業者が引用文献に記載された発明を参酌したとしても、容易に想到できるものではないと思料いたします。」

しかしながら、特徴C(本願補正発明の特定事項F)は、上記(4)(f)で示したとおり、引用発明が備えており、特徴D(本願補正発明の特定事項G)は、周知技術である。そして、上記(5)で示したとおり、周知技術を引用文献1(引用例)に記載された発明(引用発明)に適用して本願補正発明のようになすことは当業者が容易になし得たものであるから、上記主張は採用できない。

(8)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が、引用発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和1年7月23日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、以下の理由を含むものである。
(理由1)この出願の令和2年4月14日提出の手続補正書により補正された下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(理由2)この出願の令和2年4月14日提出の手続補正書により補正された下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


●理由1(特許法第29条第1項第3号)、理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項1
・引用文献等 1

<引用文献等一覧>
1.特開2014-161558号公報

3 引用例
引用例(引用文献1)は、上記第2[理由]3(2)に記載したとおりである。

4 対比
本願発明は、本願補正発明から、特定事項F及びGに係る発明特定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記相違点(特定事項G)が存在しないことになるとともに、その他の特定事項についても相違する点がないから、同一である。
よって、本願発明は、引用例に記載された発明である。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-06-23 
結審通知日 2021-06-24 
審決日 2021-07-06 
出願番号 特願2019-76039(P2019-76039)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼木 尚哉中村 俊太郎堀 圭史  
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 千本 潤介
鉄 豊郎
発明の名称 遊技機  
代理人 鹿嶋 英實  

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