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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1377696
審判番号 不服2019-15878  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-26 
確定日 2021-09-08 
事件の表示 特願2017-503152「再生を制御する方法、装置、プログラム、及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月 1日国際公開、WO2018/018508、平成30年11月29日国内公表、特表2018-535454〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)7月28日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年11月 2日付け:拒絶理由通知書
平成31年 2月12日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 4月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 1年 7月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 7月22日付け:令和1年7月4日の手続補正についての補
正却下の決定、拒絶査定
令和 1年11月26日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提


第2 令和1年11月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和1年11月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正について
令和1年11月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、本件補正前に、
「【請求項1】
外部部材によってトリガーされたプッシュキーイベントを受信した時、前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報を獲得するステップと、
前記プッシュキーイベントと前記回転情報に基づいて、現在再生しているマルチメディアの再生状態を制御するするステップと、
を含み、
前記プッシュキーイベントは、一つ又は複数のプッシュキーをダブルクリックするイベント、又は複数のプッシュキーをクリックするイベントを含み、
同じ前記プッシュキーイベントが連続して発生するとき、現在再生しているマルチメディアの再生状態を異なるようにする
ことを特徴とする再生を制御する方法。
【請求項2】
前記外部部材が前記インテリジェントデバイスのケース外側の実体キー、又は前記インテリジェントデバイスがバインディングされたリモートコントロールデバイスの実体キーである場合、前記実体キーを操作して前記プッシュキーイベントをトリガーする
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記外部部材が前記インテリジェントデバイスのケース外側の仮想キー、又は前記インテリジェントデバイスがバインディングされたリモートコントロールデバイスの仮想キーである場合、前記仮想キーをタッチして前記プッシュキーイベントをトリガーする
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報を獲得するステップは、
前記インテリジェントデバイス内部のセンサーによって、前記回転情報を獲得するステップを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報を獲得するステップは、
前記インテリジェントデバイスとバインディング関係を有するリモートコントロールデバイスによって、前記回転情報を獲得するステップを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記回転情報が方向情報を含む場合、現在再生しているマルチメディア情報の再生方向を制御する
ことを特徴とする請求項1、4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記回転情報が回転角度情報を含む場合、現在再生しているマルチメディア情報の再生位置を制御する
ことを特徴とする請求項1、4又は5に記載の方法。
【請求項8】
前記回転情報が回転速度情報を含む場合、現在再生しているマルチメディア情報の再生速度を制御する
ことを特徴とする請求項1、4又は5に記載の方法。
【請求項9】
現在再生しているビデオの高速再生を制御する過程中、高速再生の進みに基づいて前記ビデオのプレビュー画像を表示するステップを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
外部部材によってトリガーされたプッシュキーイベントを受信した時、前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報を獲得するための獲得モジュールと、
前記プッシュキーイベントと前記回転情報に基づいて、現在再生しているマルチメディアの再生状態を制御するための制御モジュールと、
を含み、
前記プッシュキーイベントは、一つ又は複数のプッシュキーをダブルクリックするイベント、又は複数のプッシュキーをクリックするイベントを含み、
同じ前記プッシュキーイベントが連続して発生するとき、現在再生しているマルチメディアの再生状態を異なるようにする
ことを特徴とする再生を制御する装置。
【請求項11】
前記外部部材が前記インテリジェントデバイスのケース外側の実体キー、又は前記インテリジェントデバイスがバインディングされたリモートコントロールデバイスの実体キーである場合、前記実体キーを操作して前記プッシュキーイベントをトリガーするための第一トリガーモジュールを含む
ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記外部部材が前記インテリジェントデバイスのケース外側の仮想キー、又は前記インテリジェントデバイスがバインディングされたリモートコントロールデバイスの仮想キーである場合、前記仮想キーをタッチして前記プッシュキーイベントをトリガーするための第二トリガーモジュールを含む
ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記獲得モジュールは、
前記インテリジェントデバイス内部のセンサーによって、前記回転情報を獲得するための第一獲得サブモジュールを含む
ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記獲得モジュールは、
前記インテリジェントデバイスとバインディング関係を有するリモートコントロールデバイスによって、前記回転情報を獲得するための第二獲得サブモジュールを含む
ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記回転情報が方向情報を含む場合、現在再生しているマルチメディア情報の再生方向を制御するための方向モジュールを含む
ことを特徴とする請求項10、13又は14に記載の装置。
【請求項16】
前記回転情報が回転角度情報を含む場合、現在再生しているマルチメディア情報の再生位置を制御するためのジャンプモジュールを含む
ことを特徴とする請求項10、13又は14に記載の装置。
【請求項17】
前記回転情報が回転速度情報を含む場合、現在再生しているマルチメディア情報の再生速度を制御するための速度モジュールを含む
ことを特徴とする請求項10、13又は14に記載の装置。
【請求項18】
現在再生しているビデオの高速再生を制御する過程中、高速再生の進みに基づいて前記ビデオのプレビュー画像を表示するためのプレビューモジュールを含む
ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項19】
プロセッサと、
前記プロセッサが実行可能な命令を記憶するためのメモリと、を含み、
ここで、前記プロセッサは、
外部部材によってトリガーされたプッシュキーイベントを受信した時、前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報を獲得し、
前記プッシュキーイベントと前記回転情報に基づいて、現在再生しているマルチメディアの再生状態を制御するように構成され、
前記プッシュキーイベントは、一つ又は複数のプッシュキーをダブルクリックするイベント、又は複数のプッシュキーをクリックするイベントを含み、
同じ前記プッシュキーイベントが連続して発生するとき、現在再生しているマルチメディアの再生状態を異なるようにする
ことを特徴とする再生を制御する装置。
【請求項20】
プロセッサに実行されることにより、請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載の再生を制御する方法を実現することを特徴とするプログラム。
【請求項21】
請求項20に記載のプログラムが記録された記録媒体。」とあったところを、

本件補正により、
「【請求項1】
外部部材によってトリガーされたプッシュキーイベントを受信した時、前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報を獲得するステップと、
前記プッシュキーイベントと前記回転情報に基づいて、現在再生しているマルチメディアの再生速度を制御するするステップと、
を含み、
前記プッシュキーイベントは、一つ又は複数のプッシュキーをダブルクリックするイベント、又は複数のプッシュキーをクリックするイベントを含み、
第一回目に前記プッシュキーイベントの中で何れか一つのイベントが発生したとき、前記マルチメディアは前記現在再生しているマルチメディアの再生速度よりも速い速度で再生し、第二回目に前記プッシュキーイベントの中で何れか一つのイベントが発生したとき、前記マルチメディアは前記現在再生しているマルチメディアの再生速度よりも速い速度で再生することを停止し、
前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報は、連続して発生する2つの同じ前記プッシュキーイベントの間に獲得する
ことを特徴とする再生を制御する方法。
【請求項2】
前記外部部材が前記インテリジェントデバイスのケース外側の実体キー、又は前記インテリジェントデバイスがバインディングされたリモートコントロールデバイスの実体キーである場合、前記実体キーを操作して前記プッシュキーイベントをトリガーする
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記外部部材が前記インテリジェントデバイスのケース外側の仮想キー、又は前記インテリジェントデバイスがバインディングされたリモートコントロールデバイスの仮想キーである場合、前記仮想キーをタッチして前記プッシュキーイベントをトリガーする
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報を獲得するステップは、
前記インテリジェントデバイス内部のセンサーによって、前記回転情報を獲得するステップを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報を獲得するステップは、
前記インテリジェントデバイスとバインディング関係を有するリモートコントロールデバイスによって、前記回転情報を獲得するステップを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
現在再生しているビデオの高速再生を制御する過程中、高速再生の進みに基づいて前記ビデオのプレビュー画像を表示するステップを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
外部部材によってトリガーされたプッシュキーイベントを受信した時、前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報を獲得するための獲得モジュールと、
前記プッシュキーイベントと前記回転情報に基づいて、現在再生しているマルチメディアの再生速度を制御するための制御モジュールと、
を含み、
前記プッシュキーイベントは、一つ又は複数のプッシュキーをダブルクリックするイベント、又は複数のプッシュキーをクリックするイベントを含み、
第一回目に前記プッシュキーイベントの中で何れか一つのイベントが発生したとき、前記マルチメディアは前記現在再生しているマルチメディアの再生速度よりも速い速度で再生し、第二回目に前記プッシュキーイベントの中で何れか一つのイベントが発生したとき、前記マルチメディアは前記現在再生しているマルチメディアの再生速度よりも速い速度で再生することを停止し、
前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報は、連続して発生する2つの同じ前記プッシュキーイベントの間に獲得する
ことを特徴とする再生を制御する装置。
【請求項8】
前記外部部材が前記インテリジェントデバイスのケース外側の実体キー、又は前記インテリジェントデバイスがバインディングされたリモートコントロールデバイスの実体キーである場合、前記実体キーを操作して前記プッシュキーイベントをトリガーするための第一トリガーモジュールを含む
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記外部部材が前記インテリジェントデバイスのケース外側の仮想キー、又は前記インテリジェントデバイスがバインディングされたリモートコントロールデバイスの仮想キーである場合、前記仮想キーをタッチして前記プッシュキーイベントをトリガーするための第二トリガーモジュールを含む
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記獲得モジュールは、
前記インテリジェントデバイス内部のセンサーによって、前記回転情報を獲得するための第一獲得サブモジュールを含む
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記獲得モジュールは、
前記インテリジェントデバイスとバインディング関係を有するリモートコントロールデバイスによって、前記回転情報を獲得するための第二獲得サブモジュールを含む
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項12】
現在再生しているビデオの高速再生を制御する過程中、高速再生の進みに基づいて前記ビデオのプレビュー画像を表示するためのプレビューモジュールを含む
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項13】
プロセッサと、
前記プロセッサが実行可能な命令を記憶するためのメモリと、を含み、
ここで、前記プロセッサは、
外部部材によってトリガーされたプッシュキーイベントを受信した時、前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報を獲得し、
前記プッシュキーイベントと前記回転情報に基づいて、現在再生しているマルチメディアの再生速度を制御するように構成され、
前記プッシュキーイベントは、一つ又は複数のプッシュキーをダブルクリックするイベント、又は複数のプッシュキーをクリックするイベントを含み、
第一回目に前記プッシュキーイベントの中で何れか一つのイベントが発生したとき、前記マルチメディアは前記現在再生しているマルチメディアの再生速度よりも速い速度で再生し、第二回目に前記プッシュキーイベントの中で何れか一つのイベントが発生したとき、前記マルチメディアは前記現在再生しているマルチメディアの再生速度よりも速い速度で再生することを停止し、
前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報は、連続して発生する2つの同じ前記プッシュキーイベントの間に獲得する
ことを特徴とする再生を制御する装置。
【請求項14】
プロセッサに実行されることにより、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の再生を制御する方法を実現することを特徴とするプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラムが記録された記録媒体。」とするものである。なお、下線は補正箇所を示す。

上記の補正は、
(1)補正前の請求項6ないし8、15ないし17を削除し、
(2)補正前の請求項1、10、19に記載した発明を特定するために必要な事項である、「プッシュキーイベント」と「回転情報」に基づいてマルチメディアの「再生状態」を制御することについて、「再生状態」を「再生速度」に限定し、さらに「同じ前記プッシュキーイベントが連続して発生するとき、現在再生しているマルチメディアの再生状態を異なるようにする」という処理を、「第一回目に前記プッシュキーイベントの中で何れか一つのイベントが発生したとき、前記マルチメディアは前記現在再生しているマルチメディアの再生速度よりも速い速度で再生し、第二回目に前記プッシュキーイベントの中で何れか一つのイベントが発生したとき、前記マルチメディアは前記現在再生しているマルチメディアの再生速度よりも速い速度で再生することを停止し、前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報は、連続して発生する2つの同じ前記プッシュキーイベントの間に獲得する」として、「プッシュキーイベント」、「回転情報」及び「再生速度」の関係を限定し(本件補正の請求項1、7、13)、
(3)請求項の削除に伴い、項番を整理(本件補正の請求項6ないし15)
したものである。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除、及び第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する補正を含むものといえる。
また、上記補正事項は出願当初の明細書に記載されており、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、特許請求の範囲の減縮を目的とする本件補正の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下検討する。

2.引用文献
(1)米国特許第7123180号明細書
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第7123180号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、電子デバイスのリモートコントロール装置に関して、図面と共に次の事項が記載されている。なお、日本語訳は当審で作成し、下線は当審で付与した。

ア「 This invention relates generally to remote control devices and more specifically to a system and method for controlling an electronic device with a single-axis gyroscopic remote control. 」(第1カラム第9-12行)
日本語訳:「本発明は一般にリモートコントロール装置に関し、より具体的には、単軸ジャイロリモコンを用いて電子機器を制御するためのシステムおよび方法に関する。」

イ「 FIG. 1 is a top plan view illustrating one embodiment of a system 100 for controlling an electronic device 102 using a single-axis gyroscopic remote control 106, according to the invention. As shown, system 100 may include, without limitation, electronic device 102 and single-axis gyroscopic remote control 106, which controls electronic device 102 using a control signal 104.
Electronic device 102 may be any type of electronic device capable of being controlled by control signal 104. For example, electronic device 102 may be, without limitation, a television, computer, DVD player, stereo receiver, CD player, any type of home entertainment system component or any type of electronic display device.
Single-axis gyroscopic remote control 106 is a standard remote control device modified to allow a user to control various input parameters or functionalities (hereinafter referred to as input parameters) of electronic device 102 with simple wrist movements. As shown, single-axis gyroscopic remote control 106 may include, without limitation, a housing 107, input devices 108 and a gyroscopic sensor 110. Housing 107 is a standard remote control housing and may be made of any type of suitable material such as plastic, metal or hard rubber and is sized such that a user can comfortably hold single-axis gyroscopic remote control 106 during operation.
Input devices 108 allow the user to input various types of information into single-axis gyroscopic remote control 106 by pressing any one of or combination of input devices 108. In particular, the user may select an input parameter of electronic device 102 to control by pressing the one of input devices 108 corresponding to that particular input parameter. Input devices 108 may include, without limitation, any types of standard remote control analog or digital input devices.」(第3カラム第8行-第40行)
日本語訳:「図1は、本発明による、単軸ジャイロリモコン106を用いて電子機器102を制御するためのシステム100の一実施形態を示す上面図である。図示されているように、システム100は、限定されるものではないが、電子機器102と、制御信号104を用いて電子機器102を制御する単軸ジャイロリモコン106とを含むことができる。
電子機器102は、制御信号104によって制御可能な任意のタイプの電子機器であってもよい。例えば、電子機器102は、限定されないが、テレビ、コンピュータ、DVDプレーヤ、ステレオ受信機、CDプレーヤ、任意のタイプのホームエンタテイメントシステムコンポーネント、または任意のタイプの電子表示装置であってもよい。
単軸ジャイロリモコン106は、ユーザが簡単な手首の動きで電子機器102の様々な入力パラメータまたは機能(以下、入力パラメータと呼ぶ)を制御できるように変更された標準的なリモコン装置である。図示されているように、単軸ジャイロリモコン106は、限定されないが、ハウジング107、入力装置108、およびジャイロセンサ110を含むことができる。ハウジング107は、標準的なリモコンのハウジングであり、プラスチック、金属、または硬質ゴムなどの任意のタイプの適切な材料で製造することができ、操作中にユーザが単軸ジャイロリモコン106を快適に保持できるようなサイズである。
入力装置108は、ユーザが入力装置108の任意の1つまたは組み合わせを押すことによって、各種の情報を単軸ジャイロリモコン106に入力することを可能にする。特に、ユーザは、その特定の入力パラメータに対応する入力装置108の1つを押すことによって、制御する電子機器102の入力パラメータを選択することができる。入力装置108は、限定されないが、任意のタイプの標準的な遠隔制御のアナログまたはデジタル入力装置を含むことができる。」

ウ「 In a second example, electronic device 102 is a DVD player coupled to a display device, and an input device 202 is the specific one of input devices 108 used to control the time search functionality of the DVD player. To find a specific part of a DVD program that the user wants to watch, the user first presses input device 202. This action causes single-axis gyroscopic remote control 106 to transmit control signal 104 to the DVD player that indicates that the user wants to use the time search functionality to find a specific part of the DVD program that the user currently is watching. The user then presses and holds down activation input 206. This action causes single-axis gyroscopic remote control 106 to activate gyroscopic sensor 110. While holding down activation input 206, the user points single-axis gyroscopic remote control 106 towards the DVD player and moves his or her wrist such that gyroscopic sensor 110 rotates about reference axis 112. This action causes gyroscopic sensor 110 to output a signal derived from the angular motion of gyroscopic sensor 110 about reference axis 112. Single-axis gyroscopic remote control 106 is configured to transmit control signal 104 to the DVD player in response to the output signal of gyroscopic sensor 110. Control signal 104 causes the value of the time code of the DVD program to change (note that each time code value corresponds to a particular part of a DVD program). In one embodiment, rotating gyroscopic sensor 110 about reference axis 112 in a clockwise direction to produce a large yaw angle causes a large increase in the value of the time code. Similarly, rotating gyroscopic sensor 110 about reference axis 112 in a counterclockwise direction to produce a small yaw angle causes a small decrease in the value of the time code. Again, in another embodiment, an additional feature is that a greater angular velocity of gyroscopic sensor 110 about reference axis 112 in a clockwise direction causes a faster increase in the value of the time code. Similarly, a slower angular velocity of gyroscopic sensor 110 about reference axis 112 in a counterclockwise direction causes a slower decrease in the value of the time code. Finally, when the time code corresponds to the part of the DVD program that the user wants to watch, the user releases activation input 206.」(第6カラム第35行-第7カラム第7行)
日本語訳:「第2の例では、電子機器102は、表示装置に接続されたDVDプレーヤであり、入力部202は、DVDプレーヤのタイムサーチ機能を制御するために使用される入力装置108のうちの特定の1つである。ユーザが視聴したいDVDプログラムの特定の部分を見つけるために、ユーザはまず入力部202を押す。この動作により、単軸ジャイロリモコン106は、ユーザが現在視聴中のDVD番組の特定の部分を見つけるためにタイムサーチ機能を使用したいということを示す制御信号104をDVDプレーヤに送信する。次に、ユーザは、活性化入力部206を押下して押し続ける。この動作により、単軸ジャイロリモコン106はジャイロセンサ110を作動させる。活性化入力部206を押し続けている間、ユーザは、単軸ジャイロリモコン106をDVDプレーヤに向け、ジャイロセンサ110が基準軸112の周りを回転するように手首を動かす。この動作により、ジャイロセンサ110は、基準軸112の周りでのジャイロセンサ110の角運動に由来する信号を出力する。単軸ジャイロリモコン106は、ジャイロセンサ110の出力信号に応答して、制御信号104をDVDプレーヤに送信するように構成されている。制御信号104は、DVDプログラムのタイムコードの値を変化させる(各タイムコードの値は、DVDプログラムの特定の部分に対応することに留意されたい)。一実施形態では、ジャイロセンサ110を基準軸112の時計回り方向に回転させて大きなヨー角を発生させると、タイムコードの値の大きな増加を引き起こす。同様に、ジャイロセンサ110を基準軸112の反時計回り方向に回転させて小さなヨー角を生じさせると、タイムコードの値の小さな減少を引き起こす。再び、別の実施形態におけるさらなる特徴は、基準軸112の時計回り方向におけるジャイロセンサ110のより大きな角速度は、タイムコードの値のより速い増加を引き起こすことである。同様に、基準軸112の反時計回り方向におけるジャイロセンサ110のより遅い角速度は、タイムコードの値のより遅い減少を引き起こす。最後に、タイムコードがユーザが視聴したいDVDプログラムの部分に対応すると、ユーザは活性化入力部206を解放する。」

エ「図2



・上記アによれば、引用文献1記載の発明は、単軸ジャイロリモコンを用いて電子機器を制御するための方法に関している。
・上記イによれば、電子機器102はテレビ、コンピュータ、DVDプレーヤ等である。
・上記イによれば、単軸ジャイロリモコン106は、ユーザが簡単な手首の動きで電子機器102の様々な入力パラメータまたは機能を制御できるように変更された標準的なリモコン装置であり、ハウジング107、入力装置108、およびジャイロセンサ110を含み、ハウジング107は、操作中にユーザが単軸ジャイロリモコン106を快適に保持できるようなサイズである。
・上記イによれば、入力装置108は、ユーザが入力装置108の任意の1つまたは組み合わせを押すことによって、各種の情報を単軸ジャイロリモコン106に入力することを可能にする。
・上記ウによれば、ユーザが視聴したいDVDプログラムの特定の部分を見つけるために、ユーザはまず入力部202を押し、次に、ユーザは、活性化入力部206を押下して押し続け、この動作により、単軸ジャイロリモコン106はジャイロセンサ110を作動させ、活性化入力部206を押し続けている間、ユーザは、単軸ジャイロリモコン106をDVDプレーヤに向け、ジャイロセンサ110が基準軸112の周りを回転するように手首を動かし、この動作により、ジャイロセンサ110は、基準軸112の周りでのジャイロセンサ110の角運動に由来する信号を出力し、単軸ジャイロリモコン106は、ジャイロセンサ110の出力信号に応答して、制御信号104をDVDプレーヤに送信し、制御信号104は、DVDプログラムのタイムコードの値を変化させ、各タイムコードの値は、DVDプログラムの特定の部分に対応しており、基準軸112の時計回り方向におけるジャイロセンサ110のより大きな角速度は、タイムコードの値のより速い増加を引き起こし、同様に、基準軸112の反時計回り方向におけるジャイロセンサ110のより遅い角速度は、タイムコードの値のより遅い減少を引き起こし、最後に、タイムコードがユーザが視聴したいDVDプログラムの部分に対応すると、ユーザは活性化入力部206を解放する。

したがって、上記記載事項及び図面を勘案すると上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「単軸ジャイロリモコンを用いて電子機器を制御するための方法であって、
電子機器102はテレビ、コンピュータ、DVDプレーヤ等であり、
単軸ジャイロリモコン106は、ユーザが簡単な手首の動きで電子機器102の様々な入力パラメータまたは機能を制御できるように変更された標準的なリモコン装置であり、ハウジング107、入力装置108、およびジャイロセンサ110を含み、ハウジング107は、操作中にユーザが単軸ジャイロリモコン106を快適に保持できるようなサイズであり、
入力装置108は、ユーザが入力装置108の任意の1つまたは組み合わせを押すことによって、各種の情報を単軸ジャイロリモコン106に入力することを可能にし、
ユーザが視聴したいDVDプログラムの特定の部分を見つけるために、ユーザはまず入力部202を押し、
次に、ユーザは、活性化入力部206を押下して押し続け、この動作により、単軸ジャイロリモコン106はジャイロセンサ110を作動させ、
活性化入力部206を押し続けている間、ユーザは、単軸ジャイロリモコン106をDVDプレーヤに向け、ジャイロセンサ110が基準軸112の周りを回転するように手首を動かし、この動作により、ジャイロセンサ110は、基準軸112の周りでのジャイロセンサ110の角運動に由来する信号を出力し、単軸ジャイロリモコン106は、ジャイロセンサ110の出力信号に応答して、制御信号104をDVDプレーヤに送信し、制御信号104は、DVDプログラムのタイムコードの値を変化させ、各タイムコードの値は、DVDプログラムの特定の部分に対応しており、
基準軸112の時計回り方向におけるジャイロセンサ110のより大きな角速度は、タイムコードの値のより速い増加を引き起こし、同様に、基準軸112の反時計回り方向におけるジャイロセンサ110のより遅い角速度は、タイムコードの値のより遅い減少を引き起こし、最後に、タイムコードがユーザが視聴したいDVDプログラムの部分に対応すると、ユーザは活性化入力部206を解放する、方法。」

(2)特開2005-63230号公報
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-63230号公報(以下、「引用文献2」という。)には、リモコン式入力装置に関して、図面と共に以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。

「【0001】
本発明は、操作者が片手で把持して使用する入力装置に係り、特に、家庭用テレビジョン(TV)やパーソナルコンピュータ等の機器本体の表示画面に表示される項目選択画面(選択の対象となる処理または処理対象を項目として表示させる画面)の中から所望の選択項目(例えば、選択の対象として提示される保存や再生等の処理や、再生させたい画像や音楽のデータのファイル名等の処理対象の項目)を選択するのに用いて好適なリモコン式入力装置に関するものである。」

「【0034】
すなわち、図16に示すように、ステップS-1でプッシュスイッチ29がオフ状態にある場合、変位検出手段40で検出された信号のデータ送信がロックされて通常モード(ステップS-2)となる。この通常モードでは、操作釦3をスライド操作してカーソル位置を移動することはできるが、ケーシング2を傾けても項目選択画面の切替え動作(例えばページ送り)は行われない。一方、ステップS-1でプッシュスイッチ29がオン状態にある場合、位置検出手段39で検出された信号のデータ送信がロックされた後(ステップS-3)、傾斜センサ28の出力信号が判定される(ステップS-4)。ステップS-4で傾斜センサ28からケーシング2が傾いていることを示す信号が検出された場合、ケーシング2の傾き方向に応じて順次ページ送りを行い(ステップS-5)、プッシュスイッチ29がオフ動作されると(ステップS-6)、その時点で位置検出手段39のデータ送信ロックが解除され(ステップS-7)て通常モード(ステップS-2)に戻る。したがって、操作ノブ4を押圧操作してプッシュスイッチ29をオン動作させると、ケーシング2を任意方向へ傾けてページ送りすることはできるが、操作釦3をスライド操作してもカーソル位置は移動しない。」

「【0044】
また、上記実施形態例では、操作ノブ4を押圧操作してプッシュスイッチ29がオン動作している時に、位置検出手段39のデータ送信をロックして変位検出手段40の検出信号を送信可能とし、プッシュスイッチ29がオン状態からオフ状態に切替わった時に通常モードに戻る場合について説明したが、例えば、通常モードでプッシュスイッチ29から1回オン信号が発生した時に位置検出手段39のデータ送信をロックし、その後プッシュスイッチ29からオン信号が再度発生した時に通常モードに戻るようにしてもよい。」

上記の記載によれば、引用文献2には、以下の技術事項が記載されている。
「操作者が片手で把持して使用するリモコン式入力装置の操作方法として、プッシュスイッチから1回オン信号が発生した時にデータ送信がロックされ、その後プッシュスイッチからオン信号が再度発生した時にデータ送信のロックが解除される操作方法」

3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「単軸ジャイロリモコン106」は、ユーザが簡単な手首の動きで電子機器102の様々な入力パラメータまたは機能を制御でき、本願補正発明の「インテリジェントデバイス」に相当する。

(2)本願明細書の【0040】には外部部材がプッシュキー、レバー等の部材であることが記載されており、本願補正発明の「外部部材」にはプッシュキー、レバー等の部材が含まれる。
そうすると、引用発明の単軸ジャイロリモコン106の「入力装置108」は、入力部202や活性化入力部206等の押下可能なボタン(図2参照)を含んでおり、本願補正発明の「外部部材」に相当する。

(3)本願明細書の【0048】ないし【0049】には、プッシュキーイベントは複数の種類があり、プッシュキーイベントが一つのプッシュキーを長時間押すイベントの場合には、長時間押し始める時にビデオ高速再生の制御を始め、長時間押すことが終わる時にビデオ高速再生を停止することが記載されており、本願補正発明の「プッシュキーイベント」には、一つのプッシュキーを長時間押し始めるイベントや、長時間押すことが終わるイベントが含まれる。
そうすると、引用発明の入力装置108の「活性化入力部206を押下して押し続け」る動作によりトリガーされる信号や、「活性化入力部206を解放する」動作によりトリガーされる信号は、入力装置108によってトリガーされたプッシュキーイベントといえ、本願補正発明の「外部部材によってトリガーされたプッシュキーイベント」に相当する。
そして、引用発明が入力装置108の「活性化入力部206を押下して押し続け」る動作により、「ジャイロセンサ110を作動させ」、「ジャイロセンサ110の角速度に由来する信号を出力」することは、外部部材によってトリガーされたプッシュキーイベントを受信したときの処理といえるから、本願補正発明の「外部部材によってトリガーされたプッシュキーイベントを受信した時、前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報を獲得するステップ」に相当する。
また、引用発明において、ユーザが視聴したいDVDプログラムの特定の部分を見つける際には、表示装置でDVDプログラムを再生した状態で、ジャイロセンサ110の角速度によってDVDプログラムのタイムコード値を「より速い増加」、「より遅い減少」等変化させて、再生速度を制御しながら視聴したい部分を探すことが明白といえ、本願補正発明の「前記プッシュキーイベントと前記回転情報に基づいて、現在再生しているマルチメディアの再生速度を制御するするステップ」に相当する。
ただし、プッシュキーイベントに関して、本願補正発明は「一つ又は複数のプッシュキーをダブルクリックするイベント、又は複数のプッシュキーをクリックするイベント」を含むのに対し、引用発明はその旨の特定がない点で相違する。

(4)引用発明の「ユーザは、活性化入力部206を押下して押し続け、この動作により、単軸ジャイロリモコン106はジャイロセンサ110を作動させ」、「基準軸112の時計回り方向におけるジャイロセンサ110のより大きな角速度は、タイムコードの値のより速い増加を引き起こ」すことは、「活性化入力部206を押下して押し続け」るプッシュキーイベントが発生したときに、ジャイロセンサ110のより大きな角速度によってDVDプログラムのタイムコード値のより速い増加、すなわち、より速い速度での再生を引き起こしているといえ、本願補正発明の「第一回目に前記プッシュキーイベントの中で何れか一つのイベントが発生したとき、前記マルチメディアは前記現在再生しているマルチメディアの再生速度よりも速い速度で再生」することに相当する。
また、引用発明の「タイムコードの値のより速い増加」が「活性化入力部206を解放する」ことで終わることは明白であり、「活性化入力部206を解放」するプッシュキーイベントが発生したときに、より速い速度での再生を停止するといえ、本願補正発明の「第二回目に前記プッシュキーイベントの中で何れか一つのイベントが発生したとき、前記マルチメディアは前記現在再生しているマルチメディアの再生速度よりも速い速度で再生することを停止」することに相当する。

(5)引用発明は、活性化入力部206を押下して押し続け、解放するまでの間、ジャイロセンサ110を作動させて角運動に由来する信号を出力しており、本願補正発明の「前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報は、連続して発生する2つの」「前記プッシュキーイベントの間に獲得する」ことに相当する。
ただし、連続して発生する2つのプッシュキーイベントに関して、本願補正発明は、同じプッシュキーイベントであるのに対し、引用発明は、活性化入力部206を押下して押し続けることと、活性化入力部206を解放することである点で相違する。

(6)そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「外部部材によってトリガーされたプッシュキーイベントを受信した時、前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報を獲得するステップと、
前記プッシュキーイベントと前記回転情報に基づいて、現在再生しているマルチメディアの再生速度を制御するするステップと、
を含み、
第一回目に前記プッシュキーイベントの中で何れか一つのイベントが発生したとき、前記マルチメディアは前記現在再生しているマルチメディアの再生速度よりも速い速度で再生し、第二回目に前記プッシュキーイベントの中で何れか一つのイベントが発生したとき、前記マルチメディアは前記現在再生しているマルチメディアの再生速度よりも速い速度で再生することを停止し、
前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報は、連続して発生する2つの前記プッシュキーイベントの間に獲得する
ことを特徴とする再生を制御する方法。」
で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点1>
プッシュキーイベントに関して、本願補正発明は「一つ又は複数のプッシュキーをダブルクリックするイベント、又は複数のプッシュキーをクリックするイベント」を含むのに対し、引用発明はその旨の特定がない点。

<相違点2>
連続して発生する2つのプッシュキーイベントに関して、本願補正発明は、同じプッシュキーイベントであるのに対し、引用発明は、活性化入力部206を押下して押し続けること、活性化入力部206を解放することである点。

4.判断
(1)相違点1について
引用発明の入力装置108は、ユーザが入力装置108の任意の組み合わせを押すことによって、各種の情報を単軸ジャイロリモコン106に入力することを可能にしており、任意の組み合わせの複数ボタンを押すプッシュキーイベントを備えていることは自明といえる。
ここで、本願補正発明の「プッシュキー」は、本願明細書の【0114】等を参照すると、ハードウェアプッシュキーを含むから、本願補正発明の「プッシュキー」を「クリック」または「ダブルクリック」することは、装置上に配列された物理的なボタンを押すことを含み、「クリック」はボタンを1回押す動作、「ダブルクリック」はボタンを続けて2回押す動作と認められる。
そうすると、引用発明の入力装置108が任意の組み合わせの複数ボタンを押すプッシュキーイベントを備えていることは、本願補正発明の「プッシュキーイベントは、複数のプッシュキーをクリックするイベントを含」むことに相当し、相違点1は実質的な相違ではない。
仮に、相違点1が実質的な相違であったとしても、ボタンを続けて2回押すイベントや、複数ボタンを押すイベントは普通に使用されている周知の技術事項であり、当該周知の技術事項を引用発明の入力装置108に採用することは適宜設計し得る事項である。そして、引用発明の入力装置108において、そのような周知の技術事項のイベントを含む複数種類のイベントの中から、ジャイロセンサ110を作動させるプッシュキーイベントを適宜割り当てて、上記相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得る。

(2)相違点2について
引用文献2には「操作者が片手で把持して使用するリモコン式入力装置の操作方法として、プッシュスイッチから1回オン信号が発生した時にデータ送信がロックされ、その後プッシュスイッチからオン信号が再度発生した時にデータ送信のロックが解除される操作方法」が記載されている(上記「第2 2.(2)」参照)。
引用発明と引用文献2記載の技術事項とは、リモコン装置という同じ分野に属し、リモコンを手で保持して使用することが共通するから、引用発明に引用文献2記載の操作方法を適用して、入力装置108のボタンを押すプッシュキーイベントが1回発生したときに、ジャイロセンサ110の出力信号を送信し、ジャイロセンサ110のより大きな角速度によってDVDプログラムをより速い速度で再生するようにして、その後、同じボタンを押すプッシュキーイベントが再度発生したときに、ジャイロセンサ110の出力信号を終了し、DVDプログラムのより速い速度での再生を停止するようにして、上記相違点2に係る構成とすることは当業者が容易になし得る。

この点について、請求人は、審判請求書にて「引用文献1には、再生速度についての開示はありますが、引用文献2には、再生速度を異ならせることについて何らの開示もされていない。そのため、当業者が、引用文献2に記載の発明を引用文献1に記載の発明に組み合わせる動機付けは、引用文献2には何ら存在しない。」旨主張している。
しかしながら、上記相違点2についてで検討したとおり、引用発明と引用文献2記載の技術事項とは、リモートコントロール装置という同じ分野に属し、手でリモコンを保持して使用することが共通するから、引用発明に引用文献2記載の技術事項を適用する動機付けが何ら存在しないとはいえない。 よって、請求人の主張は採用できない。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当事者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
令和1年11月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし21に係る発明は、平成31年2月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は次のとおりである(以下、「本願発明」という)。

「外部部材によってトリガーされたプッシュキーイベントを受信した時、前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報を獲得するステップと、
前記プッシュキーイベントと前記回転情報に基づいて、現在再生しているマルチメディアの再生状態を制御するするステップと、
を含み、
前記プッシュキーイベントは、一つ又は複数のプッシュキーをダブルクリックするイベント、又は複数のプッシュキーをクリックするイベントを含み、
同じ前記プッシュキーイベントが連続して発生するとき、現在再生しているマルチメディアの再生状態を異なるようにする
ことを特徴とする再生を制御する方法。」

2.引用文献の記載、引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び2の記載事項、引用発明、引用文献2に記載された技術事項は上記「第2 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明の発明特定事項である、「プッシュキーイベント」と「回転情報」に基づいてマルチメディアの「再生速度」を制御することについて、「再生状態」が「再生速度」であることの限定を省き、さらに「同じ前記プッシュキーイベントが連続して発生するとき、現在再生しているマルチメディアの再生状態を異なるようにする」という処理について、「第一回目に前記プッシュキーイベントの中で何れか一つのイベントが発生したとき、前記マルチメディアは前記現在再生しているマルチメディアの再生速度よりも速い速度で再生し、第二回目に前記プッシュキーイベントの中で何れか一つのイベントが発生したとき、前記マルチメディアは前記現在再生しているマルチメディアの再生速度よりも速い速度で再生することを停止し、前記外部部材が所属するインテリジェントデバイスの回転情報は、連続して発生する2つの同じ前記プッシュキーイベントの間に獲得する」処理とする限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が上記「第2 4.」に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-03-12 
結審通知日 2021-03-16 
審決日 2021-04-16 
出願番号 特願2017-503152(P2017-503152)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 順三冨田 高史  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 清水 正一
五十嵐 努
発明の名称 再生を制御する方法、装置、プログラム、及び記録媒体  
代理人 家入 健  

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