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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01Q |
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管理番号 | 1377706 |
審判番号 | 不服2020-3240 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-03-09 |
確定日 | 2021-09-08 |
事件の表示 | 特願2018-521632「アンテナシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月 4日国際公開、WO2017/070952、平成30年11月 1日国内公表、特表2018-532344〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)10月30日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 平成30年 5月31日 手続補正書 平成31年 3月14日付け 拒絶理由通知書 令和 元年 6月19日 意見書・手続補正書 11月18日付け 拒絶査定 令和 2年 3月 9日 審判請求書・手続補正書 7月 2日 上申書 9月15日付け 拒絶理由通知書 12月14日 意見書・手続補正書 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年12月14日付け手続補正書(以下、「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載される以下のとおりのものであると認める。 「 【請求項1】 放射素子と、中空キャビティおよび前記中空キャビティ内に配置されている内部導体を持つストリップラインとを備えるアンテナシステムであって、 前記放射素子は、少なくとも2つの放射バランと、前記放射バランに一対一で対応し接続されている放射アームと、前記放射アームに一対一で対応する給電内部コアとを有し、 前記ストリップラインの上側壁部はストリップライングランドプレーンであり、前記放射バランは、前記ストリップライングランドプレーンに固定されていて前記ストリップライングランドプレーンに電気的に接続されており、前記放射素子において同一偏波方向にある複数の放射アームは、1つの内部導体に対応し、前記同一偏波方向にある前記複数の放射アームは、対応する給電内部コアを用いて、前記内部導体に電気的に接続されており、 前記内部導体に対して滑動可能な絶縁複合体が、前記内部導体上に配置されており、 前記ストリップラインは、前記同一偏波方向にある前記複数の放射アームに対して、1つずつ給電し、 前記中空キャビティは、2つの端部のみに開口を持つ中空キャビティ構造である、 アンテナシステム。」 第3 原査定の概要 令和元年11月18日付け 拒絶査定(以下、「原査定」という。)の概要は、以下のとおりである。 1.(新規性)この出願の請求項1、3、4、6-8、11及び13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の請求項1、3、4、6-8、11及び13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 文献1.特開2015-33116号公報 第4 文献の記載事項 1 文献1の記載事項 原査定で引用された文献1には、以下の事項(下線は強調のため当審にて付与した。以下同様。)が記載されている。 (1)「【0001】 本発明は、複数のアンテナ素子に高周波信号に応じた励振電力を給電することが可能なトリプレート線路を備えたアンテナ装置に関する。」 (2)「【0013】 このアンテナ装置1は、例えば携帯電話基地局用のアンテナ装置として用いられ、高周波信号送受信端子10、分配器用トリプレート線路11、誘電体挿入型移相器用トリプレート線路12、給電線路用トリプレート線路13、及び複数のアンテナ素子をアレイ状に配置したアンテナ素子アレイ14を含んで構成されている。」 (3)「【0019】 図2(b)に示すように、複数(本実施の形態では8つ)のアンテナ素子4は、水平偏波アンテナ素子41と垂直偏波アンテナ素子42とを有し、第1の導体としての第1のグランド板31上に配置されてアンテナ素子アレイ14(図1参照)を構成している。第1のグランド板31には、その長手方向に直交する幅方向の両側に、側板34a,34bが設けられている。 【0020】 第1のグランド板31は、水平偏波アンテナ素子41及び垂直偏波アンテナ素子42から放射される電磁波を反射する反射板としての機能を有している。」 (4)「【0024】 互いに平行に配置された第1のグランド板31(図略)と第2のグランド板32との間には、板状の中心導体33が平行に配置され、第1のグランド板31、中心導体33、及び第2のグランド板32によってトリプレート線路を構成している。 【0025】 本実施の形態では、図1に示した分配器用トリプレート線路11、誘電体挿入型移相器用トリプレート線路12、及び給電線路用トリプレート線路13が、一連のトリプレート線路によって構成されている。 【0026】 中心導体33と第1のグランド板31との間、及び中心導体33と第2のグランド板32との間には、それぞれインピーダンス整合された誘電体スペーサ64が複数設けられている。 【0027】 中心導体33は、トリプレート線路内に複数設けられた誘電体組立体6を構成する板状の第1の誘電体板61及び第2の誘電体板62の間に挟まれている。誘電体組立体6は、その両端において一対の誘電体支持ピン63により支持されている。第2のグランド板32には、誘電体支持ピン63が貫通する長円形状のスリット320が複数形成されている。」 (5)「【0029】 第2のグランド板32の裏面32a(中心導体33に対向する面とは反対側の面)には、誘電体支持ピン63(図3参照)に連結された連結棒52a,52bが設けられている。連結棒52a,52bは、それぞれ連結棒ガイド51a,51bによりガイドされ、誘電体支持ピン63を第1のグランド板31の長手方向に移動させる。」 (6)「【0031】 また、同軸ケーブルアダプタ25aから導出されて水平偏波アンテナ素子41に励振電力を供給する水平偏波用同軸ケーブル55a、及び同軸ケーブルアダプタ25bから導出されて垂直偏波アンテナ素子42に励振電力を供給する垂直偏波用同軸ケーブル55bが、第2のグランド板32の裏面32a側から中心導体33に接続されている。」 (7)「【0034】 水平偏波アンテナ素子41は、図5及び図6に示すように、誘電体基板410と、誘電体基板410の第1の主面410aに形成された素子内給電線路411と、誘電体基板410の第2の主面410bに形成された放射素子412とを有している。放射素子412は、素子内給電線路411に沿うように形成されて素子内給電線路411からの給電を受けている。 【0035】 誘電体基板410は、その一端部に、素子内給電線路411が中心導体33に電気的に接続される接続部41aを有している。本実施の形態では、接続部41aは、誘電体基板410において第1のグランド板31に対して平行な方向の中央部近傍に形成されている。」 (8)「【0039】 放射素子412は、図6において破線で示すように、切込部413を中心として対称に形成され、第1のグランド板31に対して平行な方向に延びる放射素子パターン412aと、放射素子パターン412aの切込部413側の端部から切込部413の延伸方向に沿って延びるバランパターン412bとから構成されている。 【0040】 垂直偏波アンテナ素子42は、図5及び図7に示すように、誘電体基板420と、誘電体基板420の第1の主面420aに形成された素子内給電線路421と、誘電体基板420の第2の主面420bに形成された放射素子422とを有している。放射素子422は、素子内給電線路421に沿うように形成されて素子内給電線路421からの給電を受けている。 【0041】 誘電体基板420は、その一端部に、素子内給電線路421が中心導体33に電気的に接続する接続部42aを有している。図7に示すように、接続部42aは、第2のグランド板32側に向かって延びる一対の延出部424a,424bと、一対の延出部424a,424bの間に形成された凹部425とを有している。」 (9)「【0045】 放射素子422は、図7において破線で示すように、切込部423及びスリット426を中心として対称に形成され、第1のグランド板31に対して平行な方向に延びる放射素子パターン422aと、放射素子パターン422aのスリット426側の端部から連続して切込部423及びスリット426に沿って延びるバランパターン422bとから構成されている。」 (10)「【0049】 図8は、図3における接地部7b及びその周辺部の拡大図である。なお、図8では、図3と同様に、第1のグランド板31の図示を省略している。 【0050】 アンテナ素子4の水平偏波アンテナ素子41及び垂直偏波アンテナ素子42は、それぞれ導電性の接続部材の一態様である接地部7a,7bを介して第1のグランド板31及び第2のグランド板32に接地されている。水平偏波アンテナ素子41と接地部7aとの接続構造、及び垂直偏波アンテナ素子42と接地部7bとの接続構造はそれぞれ同様であるため、垂直偏波アンテナ素子42と接地部7bとの接続構造を例にとって以下説明する。 【0051】 接地部7bは、垂直偏波アンテナ素子42の放射素子422に接続された放射素子接続金具71と、第2のグランド板32に接続されたグランド板接続金具72と、放射素子接続金具71をグランド板接続金具72に固定するための固定金具73とを備えている。 【0052】 放射素子接続金具71は、板金をL字形状に屈曲してなり、垂直偏波アンテナ素子42の放射素子422に対して平行な方向に延びて放射素子422に接触する接触部71aと、接触部71aに対して垂直な方向に延出し、固定金具73が取り付けられる取付部71bと、接触部71aと取付部71bとの間を連結する連結部71cとを一体に有している。なお、放射素子422と、この放射素子422に接触する接触部71aとは、例えば半田付け等により固定され、接地部7bにおける放射素子422と放射素子接続金具71の接触部71aとの電気的な接続を確実にしている。」 (11)「【0054】 グランド板接続金具72は、第1のグランド板31(図略)と第2のグランド板32との間に配置され、グランド板接続金具72の上面72a側は第1のグランド板31に接触し、グランド板接続金具72の下面72b側は第2のグランド板32に接触している。本実施の形態では、グランド板接続金具72は六角柱状であるが、これに限らず、例えば円柱状や四角柱状等でもよい。」 (12)図3 (13)図7 (14)図8 (15)以上によれば、文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。なお、後の参照での便宜のため、引用発明を構成毎に分説し、それぞれの構成にA?Tの記号を付した。 「A 複数のアンテナ素子に高周波信号に応じた励振電力を給電することが可能なトリプレート線路を備えたアンテナ装置であって(【0001】)、 B 互いに平行に配置された第1のグランド板31と第2のグランド板32との間には、板状の中心導体33が平行に配置され、第1のグランド板31、中心導体33、及び第2のグランド板32によってトリプレート線路を構成し(【0024】)、 C 中心導体33と第1のグランド板31との間、及び中心導体33と第2のグランド板32との間には、それぞれ誘電体スペーサ64が複数設けられ(【0026】)、 D 複数のアンテナ素子4は、水平偏波アンテナ素子41と垂直偏波アンテナ素子42とを有し、第1のグランド板31上に配置されてアンテナ素子アレイ14を構成し(【0019】)、 E 水平偏波アンテナ素子41は、誘電体基板410と、誘電体基板410の第1の主面410aに形成された素子内給電線路411と、誘電体基板410の第2の主面410bに形成された放射素子412とを有し、放射素子412は、素子内給電線路411からの給電を受け(【0034】)、 F 放射素子412は、放射素子パターン412aと、放射素子パターン412aの端部から延びるバランパターン412bとから構成され(【0039】)、 G 垂直偏波アンテナ素子42は、誘電体基板420と、誘電体基板420の第1の主面420aに形成された素子内給電線路421と、誘電体基板420の第2の主面420bに形成された放射素子422とを有し、放射素子422は、素子内給電線路421からの給電を受け(【0040】)、 H 放射素子422は、放射素子パターン422aと、放射素子パターン422aの端部から連続して延びるバランパターン422bとから構成され(【0045】)、 I 水平偏波アンテナ素子41及び垂直偏波アンテナ素子42は、それぞれ導電性の接続部材の一態様である接地部7a,7bを介して第1のグランド板31及び第2のグランド板32に接地され、水平偏波アンテナ素子41と接地部7aとの接続構造、及び垂直偏波アンテナ素子42と接地部7bとの接続構造はそれぞれ同様であり(【0050】)、 J 接地部7bは、垂直偏波アンテナ素子42の放射素子422に接続された放射素子接続金具71と、第2のグランド板32に接続されたグランド板接続金具72と、放射素子接続金具71をグランド板接続金具72に固定するための固定金具73とを備え(【0051】)、 K 放射素子接続金具71は、接触部71aと、固定金具73が取り付けられる取付部71bと、連結部71cとを一体に有し(【0052】)、 L グランド板接続金具72は、第1のグランド板31と第2のグランド板32との間に配置され、グランド板接続金具72の上面72a側は第1のグランド板31に接触し(【0054】)、 M 水平偏波アンテナ素子41に励振電力を供給する水平偏波用同軸ケーブル55a、及び垂直偏波アンテナ素子42に励振電力を供給する垂直偏波用同軸ケーブル55bが、中心導体33に接続され(【0031】)、 N 素子内給電線路411が中心導体33に電気的に接続される接続部41aを有し【0035】)、 O 素子内給電線路421が中心導体33に電気的に接続する接続部42aを有し(【0041】)、 P 中心導体33は、誘電体組立体6を構成する板状の第1の誘電体板61及び第2の誘電体板62の間に挟まれ、誘電体組立体6は、一対の誘電体支持ピン63により支持され(【0027】)、 Q 誘電体支持ピン63に連結された連結棒52a,52bが設けられ、連結棒52a,52bは、誘電体支持ピン63を第1のグランド板31の長手方向に移動させ(【0029】)、 R このアンテナ装置1は、高周波信号送受信端子10、分配器用トリプレート線路11、誘電体挿入型移相器用トリプレート線路12、給電線路用トリプレート線路13、及び複数のアンテナ素子をアレイ状に配置したアンテナ素子アレイ14を含んで構成され(【0013】)、 S 分配器用トリプレート線路11、誘電体挿入型移相器用トリプレート線路12、及び給電線路用トリプレート線路13が、一連のトリプレート線路によって構成され(【0025】)、 T 第1のグランド板31は、水平偏波アンテナ素子41及び垂直偏波アンテナ素子42から放射される電磁波を反射する反射板としての機能を有している(【0020】) アンテナ装置。」 2 周知文献1の記載事項 周知技術を示すために当審決で新たに引用する平成5年12月10日に公開された特開平5-326080号公報(以下、「周知文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0024】さらに、平行ストリップラインケーブルとしては、図3に示したものだけではなく、図4に示すように、電磁波リークを防止する目的から絶縁体12の周面全体をアース導体11で覆ってシールドした平行ストリップラインケーブル30や、図5に示すように、平行ストリップラインケーブル全体をさらに、絶縁体皮膜14で覆って他の部材との間の絶縁を確保した平行ストリップラインケーブル40がある。」 (2)図3 (3)図4 3 周知文献2の記載事項 周知技術を示すために当審決で新たに引用する平成6年11月4日に公開された特開平6-309950号公報(以下、「周知文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0032】また、平行ストリップラインケーブルとしては、各実施例に示したものだけではなく、電磁波リークを防止する目的から絶縁体全体の周面全体をアース導体で覆ってシールドしたものや、平行ストリップラインケーブル全体をさらに、絶縁体皮膜で覆って他の部材との間の絶縁を確保したものでもよい。」 第5 本願発明と引用発明との対比 1(1)引用発明は「アンテナ装置」であるが、「複数のアンテナ素子に高周波信号に応じた励振電力を給電することが可能なトリプレート線路を備えた」もの(構成A)であるから、単体のアンテナ装置ではなく、複数のアンテナ素子及びトリプレート線路からなるシステムであるといえる。そうすると、引用発明の「アンテナ装置」は本願発明の「アンテナシステム」に対応する。 (2)引用発明の「アンテナ素子」ないし「アンテナ素子4」は、本願発明の「放射素子」に対応する。 (3)マイクロ波工学において「ストリップライン」と「トリプレート線路」とはほぼ同義で用いられるから、引用発明の「トリプレート線路」は本願発明の「ストリップライン」に対応する。 (4)引用発明では「互いに平行に配置された第1のグランド板31と第2のグランド板32との間には、板状の中心導体33が平行に配置され、第1のグランド板31、中心導体33、及び第2のグランド板32によってトリプレート線路を構成し」ている(構成B)ところ、引用発明の「中心導体33」は本願発明の「内部導体」に相当する。 (5)引用発明では「中心導体33と第1のグランド板31との間、及び中心導体33と第2のグランド板32との間には、それぞれ誘電体スペーサ64が複数設けられ」ている(構成C)から、第1のグランド板31と第2のグランド板32との間には空間が存在し、その空間内に中心導体33が配置されていると認められる。そうすると、本願発明の「中空キャビティ」と引用発明の「互いに平行に配置された第1のグランド板31と第2のグランド板32」とは、中空構造である点及びその内部に内部導体を配置されている点で共通する。 (6)以上(1)?(5)によれば、本願発明と引用発明とは「放射素子と、中空構造および前記中空構造内に配置されている内部導体を持つストリップラインとを備えるアンテナシステム」である点で共通する。 2(1)引用発明の「アンテナ素子4」は、「水平偏波アンテナ素子41と垂直偏波アンテナ素子42とを有し」ている(構成D)。 (2)引用発明の「水平偏波アンテナ素子41」は、「素子内給電線路411と」「放射素子412とを有し」ており(構成E)、「放射素子412」は、「素子内給電線路411からの給電を受け」ており(構成E)、かつ、「放射素子パターン412aと」「バランパターン412bとから構成され」ている(構成F)。そうすると、引用発明の「バランパターン412b」、「放射素子412a」及び「素子内給電線路411」は、それぞれが一対一に対応するものである。 (3)引用発明の「垂直偏波アンテナ素子42」は、「素子内給電線路421と」「放射素子422とを有し」ており(構成G)、「放射素子422」は、「素子内給電線路421からの給電を受け」ており(構成G)、かつ、「放射素子パターン422aと」「バランパターン422bとから構成され」ている(構成H)」。そうすると、引用発明の「バランパターン422b」、「放射素子422a」及び「素子内給電線路421」は、それぞれが一対一に対応するものである。 (4)引用発明において、「バランパターン412b」は「放射素子パターン412aの端部から延びる」もの(構成F)であるから、「バランパターン412b」と「放射素子パターン412a」とは接続されている。 (5)引用発明において、「バランパターン422b」は「放射素子パターン422aの端部から連続して延びる」もの(構成H)であるから、「バランパターン422b」と「放射素子パターン412a」とは接続されている。 (6)前記(1)?(5)によれば、引用発明の「バランパターン412b」及び「バランパターン422b」は本願発明の「少なくとも2つの放射バラン」に相当し、引用発明の「放射素子パターン412a」及び「放射素子パターン422a」は本願発明の「前記放射バランに一対一で対応し接続されている放射アーム」に相当する。 (7)また、引用発明の「素子内給電線路411」及び「素子内給電線路422」と本願発明の「給電内部コア」とは、いずれも給電線路として機能することが明らかであって、放射アームに一対一で対応する点で共通する。 (8)以上(6)及び(7)によれば、本願発明と引用発明とは「前記放射素子は、少なくとも2つの放射バランと、前記放射バランに一対一で対応し接続されている放射アームと、前記放射アームに一対一で対応する給電線路とを有」する点で共通する。 3 引用発明の「第1のグランド板31」は前記中空構造(前記1(5))を構成するものであり、かつ、「アンテナ素子4」が「第1のグランド板31上に配置されて」いる(構成D)ものである。 他方、本願発明の「ストリップライングランドプレーン」は、ストリップラインの上側壁部をなすものであり、ここでいう「上側」とは放射素子が存在する側であると認められる。 そうすると、引用発明の「第1のグランド板31」は本願発明の「ストリップライングランドプレーン」に相当し、本願発明と引用発明とは「前記ストリップラインの上側壁部はストリップライングランドプレーンであ」ある点で一致する。 4(1)引用発明において「水平偏波アンテナ素子41及び垂直偏波アンテナ素子42は、それぞれ導電性の接続部材の一態様である接地部7a,7bを介して第1のグランド板31及び第2のグランド板32に接地され、水平偏波アンテナ素子41と接地部7aとの接続構造、及び垂直偏波アンテナ素子42と接地部7bとの接続構造はそれぞれ同様であ」る(構成I)とされている。 (2)ここで、「接地部7b」は、「垂直偏波アンテナ素子42の放射素子422に接続された放射素子接続金具71」を備えるもの(構成J)であり、図7及び図8を参照すれば、前記「放射素子接続金具71」が「放射素子422」と接続する部分は「バランバターン422b」の部分であると認められる。水平偏波アンテナ素子41についても同様に、「接地部7a」が「バランパターン422a」と接続していると認められる。 (3)「接地部7b」は、「第2のグランド板32に接続されたグランド板接続金具72と、放射素子接続金具71をグランド板接続金具72に固定するための固定金具73」を備えている(構成J)ところ、「グランド板接続金具72は、第1のグランド板31と第2のグランド板32との間に配置され、グランド板接続金具72の上面72a側は第1のグランド板31に接触し」ている(構成L)のだから、図8も併せ見れば、「第1のグランド板31」はその下側がグランド板接続金具72に接している。 (4)そして、「放射素子接続金具71」は「固定金具73が取り付けられる取付部71b」を有する(構成K)ところ、図3及び図8を併せ見れば、「取付部71b」はその上側が固定金具73と接していると認められる。 (5)図8は「第1のグランド板31の図示を省略している」(【0049】)ところ、図8に示される構造と前記(3)及び(4)の構造を考慮すると、「第1のグランド板31」の上側は、「放射素子接続金具71」の「取付部71b」の下側と接していると認められる。 そうすると、「放射素子接続金具71」はグランド板接続金具72及び固定金具73により「第1のグランド板31」に挟み付けられるように固定されているといえるから、前記(2)を考慮すると「バランパターン422b」は「放射素子接続金具71」により「第1のグランド板31」に固定されていて「第1のグランド板31」に電気的に接続されているといえる。このことは、「バランパターン412b」についても同様(前記(1))である。 (6)前記(5)によれば、本願発明と引用発明とは「前記放射バランは、前記ストリップライングランドプレーンに固定されていて前記ストリップライングランドプレーンに電気的に接続されて」いる点で一致する。 5 引用発明は「水平偏波アンテナ素子41に励振電力を供給する水平偏波用同軸ケーブル55a」及び「垂直偏波アンテナ素子42に励振電力を供給する垂直偏波用同軸ケーブル55b」を備えている(構成M)から、水平偏波アンテナ素子41と垂直偏波アンテナ素子42とにはそれぞれ別の励振電力(以下、それぞれ「水平偏波励振電力」及び「垂直偏波励振電力」という。)が供給されていると認められる。そして、水平偏波用同軸ケーブル55a及び垂直偏波用同軸ケーブル55bは、「中心導体33に接続され」ている(構成M)とされるが、前述のとおり、水平偏波励振電力及び垂直偏波励振電力をそれぞれ「水平偏波アンテナ素子41」及び「垂直偏波アンテナ素子42」に供給しているのだから、前記「中心導体33」も水平偏波用と垂直偏波用との2つ(以下、「水平偏波中心導体」及び「垂直偏波中心導体」という。)が存在することは当然のことである。 そうすると、引用発明の「水平偏波アンテナ素子41」の「放射素子412」の「放射素子パターン412a」は水平偏波中心導体と対応し、「垂直偏波アンテナ素子42」の「放射素子422」の「放射素子パターン422a」は垂直偏波中心導体と対応しているといえ、本願発明と引用発明とは「前記放射素子において同一偏波方向にある複数の放射アームは、1つの内部導体に対応し」ている点で一致する。 6(1)引用発明の「水平偏波アンテナ素子41」の「放射素子412」は、「素子内給電線路411からの給電を受け」ている(構成E)から、「放射素子412」を構成する「放射素子パターン412a」も、「素子内給電線路411」からの給電を受けていることが明らかである。 前記「素子内給電線路411」は、「中心導体33に電気的に接続される接続部41aを有し」ている(構成N)。ここでいう「中心導体33」は、前述の水平偏波中心導体であることが明らかである。 そうすると、引用発明の「水平偏波アンテナ素子41」の「放射素子パターン412a」は、「素子内給電線路411」を用いて、水平偏波中心導体に電気的に接続されている。 (2)引用発明の「垂直偏波アンテナ素子42」の「放射素子422」は、「素子内給電線路421からの給電を受け」ている(構成G)から、「放射素子422」を構成する「放射素子パターン422a」も、「素子内給電線路421」からの給電を受けていることが明らかである。 前記「素子内給電線路421」は、「中心導体33に電気的に接続する接続部42aを有し」ている(構成O)。ここでいう「中心導体33」は、前述の垂直偏波中心導体であることが明らかである。 そうすると、引用発明の「垂直偏波アンテナ素子42」の「放射素子パターン422a」は、「素子内給電線路421」を用いて、垂直偏波中心導体に電気的に接続されている。 (3)前記(1)及び(2)並びに前記2(7)を総合すれば、本願発明と引用発明とは「前記同一偏波方向にある前記複数の放射アームは、対応する給電線路を用いて、前記内部導体に電気的に接続されて」いる点で共通する。 7 引用発明の「誘電体組立体6」は「板状の第1の誘電体板61及び第2の誘電体板62」により構成されている(構成P)から複合体であるといえ、誘電体が絶縁性を有することは技術常識であることも考慮すると、引用発明の「誘電体組立体6」は本願発明の「絶縁複合体」に相当する。 また、引用発明の「誘電体組立体6」は、「一対の誘電体支持ピン63により支持され」ており(構成P)、誘電体支持ピン63に連結された連結棒52a,52bにより「誘電体支持ピン63を第1のグランド板31の長手方向に移動させ」る(構成Q)から、「誘電体組立体6」は滑動可能であると認められる。 引用発明の「誘電体組立体6」は、第1の誘電体板61及び第2の誘電体板62で「中心導体33」を挟むものである(構成P)から、少なくとも「誘電体組立体6」の一部(第1の誘電体板61)は「中心導体33」上に配置されている。 そうすると、本願発明と引用発明とは「前記内部導体に対して滑動可能な絶縁複合体の少なくとも一部が、前記内部導体上に配置されて」いる点で共通する。 8(1)請求人は、本願発明の「1つずつ」なる用語について、『「1つずつ」という語句は、同一偏波方向にある複数の放射アームの給電内部コアが全て1つの内部導体に電気的に接続されているということを意味する』(令和2年12月14日の意見書5頁)としているので、本願発明の「前記ストリップラインは、前記同一偏波方向にある前記複数の放射アームに対して、1つずつ給電し」という発明特定事項は、「前記ストリップラインは、前記同一偏波方向にある前記複数の放射アームの給電内部コアが全て1つの内部導体に電気的に接続されている」という意味であると解される。 (2)引用発明は「分配器用トリプレート線路11、誘電体挿入型移相器用トリプレート線路12、給電線路用トリプレート線路13」を含んで構成されており(構成R)、かつ、「分配器用トリプレート線路11、誘電体挿入型移相器用トリプレート線路12、及び給電線路用トリプレート線路13が、一連のトリプレート線路によって構成され」ている(構成S)。 前記1(4)のとおり、トリプレート線路は第1のグランド板31、中心導体33及び第2のグランド板32によって構成されるから、「分配器用トリプレート線路11」、「誘電体挿入型移相器用トリプレート線路12」及び「給電線路用トリプレート線路13」を構成する「中心導体33」も一連の導体からなると認められる。 また、前記5のとおり、引用発明は「中心導体33」として、水平偏波中心導体と垂直偏波中心導体との2種類を有していると認められる。これら2種類の中心導体はそれぞれ独立していなければならないから、引用発明は、一連の水平偏波中心導体と、一連の垂直偏波中心導体をと有していると認められる。 そして、前記6(1)のとおり「水平偏波アンテナ素子41」の「放射素子パターン412a」は「素子内給電線路411」により水平偏波中心導体に電気的に接続され、前記6(2)のとおり「垂直偏波アンテナ素子42」の「放射素子パターン422a」は「素子内給電線路421」により垂直偏波中心導体に電気的に接続されているのだから、引用発明における「第1のグランド板31」、「中心導体33」及び「第2のグランド板32」によって構成される一連のトリプレート線路について、同一偏波方向にある複数の放射素子パターン412a及び422aの素子内給電線路411及び421が全て1つの中心導体33(前者は水平偏波中心導体、後者は垂直偏波中心導体)に電気的に接続されていることが明らかである。 (3)前記(1)及び(2)によれば、本願発明と引用発明とは、請求人が主張する意味において、「前記ストリップラインは、前記同一偏波方向にある前記複数の放射アームに対して、1つずつ給電」する点で共通する。 9 前記1(5)のとおり引用発明は互いに平行に配置された第1のグランド板31と第2のグランド板32とが中空構造をなすものであるが、その開口は4つの端部に存在する。 したがって、本願発明と引用発明とは「前記中空構造は、端部に開口を持つ中空構造である」点で共通する。 10 前記1?9によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 〈一致点〉 「放射素子と、中空構造および前記中空構造内に配置されている内部導体を持つストリップラインとを備えるアンテナシステムであって、 前記放射素子は、少なくとも2つの放射バランと、前記放射バランに一対一で対応し接続されている放射アームと、前記放射アームに一対一で対応する給電線路とを有し、 前記ストリップラインの上側壁部はストリップライングランドプレーンであり、前記放射バランは、前記ストリップライングランドプレーンに固定されていて前記ストリップライングランドプレーンに電気的に接続されており、前記放射素子において同一偏波方向にある複数の放射アームは、1つの内部導体に対応し、前記同一偏波方向にある前記複数の放射アームは、対応する給電線路を用いて、前記内部導体に電気的に接続されており、 前記内部導体に対して滑動可能な絶縁複合体の少なくとも一部が、前記内部導体上に配置されており、 前記ストリップラインは、前記同一偏波方向にある前記複数の放射アームに対して、1つずつ給電し、 前記中空構造は、端部に開口を持つ中空構造である、 アンテナシステム。」である点。 〈相違点1〉 本願発明の「中空キャビティ」は「2つの端部のみに開口を持つ中空キャビティ構造」であるのに対し、引用発明の「中空構造」(すなわち、「第1のグランド板31」及び「第2のグランド板32」)は、4つの端部に開口を持つ中空構造である点。 〈相違点2〉 放射素子の放射アームに給電するものが、本願発明では「給電内部コア」であるのに対し、引用発明は「素子内給電線路411」及び「素子内給電線路421」である点。 〈相違点3〉 本願発明の「絶縁複合体」は「内部導体上に配置されて」いるのに対し、引用発明の「誘電体組立体6」は「中心導体33」を挟むものである点。 第6 判断 1 相違点1について 周知文献1及び周知文献2によれば、ストリップラインにおいて電磁波リークを防止する目的から周面全体をアース導体で覆ってシールドすることは、周知技術であると認められる。 したがって、引用発明の「トリプレート線路」(ストリップライン)において、電磁波リークを防止するために、「第1のグランド板31」及び「第2のグランド板32」だけでなく側面もアース導体で覆い、2つの端部のみに開口を持つ中空キャビティ構造とすることは、設計的事項に過ぎず、この点に格別の困難性は存在しない。 2 相違点2について (1)本願明細書の「…第5の可能な実施例では、放射バランにはキャビティがあり、給電内部コアは放射バランのキャビティ内に配置されている。」(【0011】)との記載及び「上述の放射バラン00cにはキャビティがあり、1給電内部コア00b1および00b2は、放射バラン00cのキャビティの内部に配置されている。」(【0046】)との記載によれば、本願発明の「給電内部コア」は、本来は放射バランのキャビティ内部に配置される給電用の導体を含んだ概念であると認められる。 (2)しかし、本願発明において、「放射バラン」が「キャビティ」を持つとは限定されていない。 これに関連し、令和2年9月15日付け拒絶理由通知書において、本件補正前の請求項5に係る発明について、「放射バラン」の「キャビティ」をどのように実現するのかが不明であるとの実施可能要件違反を通知したところ、本件補正にて、補正前の請求項5を削除した。このことからも、本願発明は「放射バラン」が「キャビティ」を持つことは限定されていないといえる。 (3)前記(1)及び(2)によれば、本願発明の「給電内部コア」は、「放射バラン」の「キャビティ」内部に配置される給電用の導体に限定されておらず、むしろそれ以外の概念を表していると認められるものの、前記「それ以外の概念」が具体的にどのようなものであるのかについては、本願明細書及び特許請求の範囲の記載を参照しても特段の定義が与えられていない。そうすると、本願発明の「給電内部コア」は、給電用の導体であると解され、「内部コア」の字義により何かの内部に配置され、コア(核)とされるものであると解するより他ない。 (4)前記(3)の解釈に立てば、引用発明の「素子内給電線路411」及び「素子内給電線路421」(以下、両者を総称して「素子内給電線路」という。)も、給電用の導体である点で本願発明の「給電内部コア」と機能を同じくし、少なくとも「素子内」にあることから、引用発明の「素子内給電線路」は、「内部」に配置されるものであるといえ、加えて、引用発明の「素子内給電線路」は、内部導体33から放射素子412及び422への給電の核をなすものであるから、「コア」と称し得るものである。 よって、引用発明の「素子内給電線路」を「給電内部コア」と称することは、適宜なし得ることに過ぎない。 3 相違点3について 伝送路を伝搬する高周波信号の位相は伝送路近傍の誘電体の誘電率により変化するとの電磁気学の技術常識に鑑みれば、引用発明は「誘電体挿入型移相器用トリプレート線路12」を有する(構成R及びS)ところ、構成P及びQによる「誘電体組立体6」が挟む「中心導体33」は「誘電体挿入型移相器用トリプレート線路12」の中心導体であると認められ、「誘電体挿入型移相器用トリプレート線路12」は「誘電体組立体6」を移動させることにより線路を伝搬する高周波信号の位相が変化する移相器をなすと認められる。 このような移相器として、引用発明のように中心導体の両面に誘電体を配置するものも、中心導体の片面上にのみ誘電体を配置するものも、共に文献を挙げるまでもなく周知のものである。 したがって、引用発明の「誘電体組立体6」を、「中心導体33」上に配置するよう構成することは、設計的事項に過ぎず、格別の困難性は認められない。 4 効果について (1)本願の課題は「アンテナシステムの組み立てを簡略化し、アンテナシステムの安定性と一貫性を改善するアンテナシステムを提供する」(【0005】)ことにある。 前記課題を解決するための作用及びその効果を詳しく見ると、本願明細書の「ストリップライングランドプレーンは、放射素子の反射面として用いられる。このため、独立した反射面を配置する必要がなくなるので、アンテナシステムの構造が簡略化される。さらに、放射バランはストリップライングランドプレーンに電気的に接続されており、放射素子において同一偏波方向にある複数の放射アームの給電内部コアは全て、1つの内部導体に電気的に接続されている。つまり、ストリップライン給電システムのストリップラインは、同一偏波方向にある複数の放射アームに対して、1つずつ給電する。このため、アレイアンテナの給電方式は、非常に高い簡便性を持つように最適化され得ると共に、組立時間が大幅に削減され、溶接点及びケーブルの量が削減され、溶接点およびケーブルの量が削減されるので、アンテナシステムの一貫性および信頼性が改善する。」(【0020】)との記載、及び、「上述の実施形態において、ストリップライングランドプレーン01aは、放射素子00の反射面として用いられる。このため、独立した反射面を配置する必要がなくなるので、アンテナシステムの構造が簡略化される。さらに、放射バラン00cはストリップライングランドプレーン01aに電気的に接続されており、放射素子00において同一偏波方向にある複数の放射アーム00aの給電内部コア00bは全て、1つの内部導体01bに電気的に接続されている。つまり、ストリップライン給電システムのストリップライン01は、同一偏波方向にある複数の放射アーム00aに対して、1つずつ給電する。このため、既存のアレイアンテナの給電方式が非常に高い簡便性を持つように最適化され得ると共に、組立時間が大幅に削減される。」(【0033】)との記載がある。これらの記載によれば、本願発明は、(i)ストリップライングランドプレーンを放射素子の反射面として用いることにより、独立した反射面を配置する必要がなく、構造が簡略化されるという作用効果と、(ii)ストリップラインが同一偏波方向にある複数の放射アームに対して1つずつ給電することにより、高い簡便性を持つように最適化されると共に組立て時間、溶接点、ケーブル量が削減されるという作用効果により、前記課題を解決していると認められる。 (2)引用発明の「第1のグランド板31」は「反射板としての機能を有している」(構成T)から、引用発明も前記(i)の作用効果を奏すると認められる。 さらに、前記第5、8のとおり、引用発明も「前記ストリップラインは、前記同一偏波方向にある前記複数の放射アームに対して、1つずつ給電」する点で本願発明と共通するから、引用発明も前記(ii)の作用効果を奏すると認められる。 その他、本願発明のみが奏する予測が困難な効果は存在しない。 (3)前記(2)のとおりであるから、本願発明の効果は、格別のものとは認められない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2021-03-26 |
結審通知日 | 2021-03-30 |
審決日 | 2021-04-13 |
出願番号 | 特願2018-521632(P2018-521632) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 新田 亮、橘 均憲、鈴木 肇 |
特許庁審判長 |
北岡 浩 |
特許庁審判官 |
衣鳩 文彦 丸山 高政 |
発明の名称 | アンテナシステム |
代理人 | 龍華国際特許業務法人 |