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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない A62B
管理番号 1377719
審判番号 訂正2021-390040  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2021-02-19 
確定日 2021-08-11 
事件の表示 特許第5391378号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5391378号に係る出願は、平成23年6月22日の出願であって、平成25年5月1日付け(発送日:平成25年5月7日)で拒絶理由通知がされ、平成25年5月29日に意見書及び手続補正書が提出され、平成25年10月25日に特許権の設定登録がされ、令和3年2月19日に本件訂正審判の請求がされたものである。
そして、当審において、令和3年4月13日付け(発送日:令和3年4月16日)で訂正拒絶理由通知がされたが、請求人からは何等応答がなかった。

第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5391378号の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正事項は次のとおりである。

(1)訂正事項1
明細書の段落【0007】に
「請求項1の発明は、前記「イ」?「ハ」の意図を達成することにある。」
と記載されているのを、
「請求項1の発明は、前記「イ」、「ロ」の意図を達成することにある。」
に訂正する。

(2)訂正事項2
明細書の段落【0017】に
「従って、請求項1は、前記「イ」?「ハ」の意図を達成できる特徴がある。」
と記載されているのを、
「従って、請求項1は、前記「イ」、「ロ」の意図を達成できる特徴がある。」
に訂正する。

第3 訂正拒絶理由の概要
令和3年4月13日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は、訂正事項1及び2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号の規定(明瞭でない記載の釈明)に適合せず、また、特許法第126条第1項ただし書第1号の規定(特許請求の範囲の減縮)、第2号の規定(誤記又は誤訳の訂正)及び第4号の規定(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)のいずれにも適合しない、というものである。

第4 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正が特許法第126条第1項ただし書第3号の規定に適合するか(明瞭でない記載の釈明であるか)について、以下、検討する。

ア 段落【0007】の記載が不明瞭か否かについて
訂正事項1の実体的な内容は、本件特許明細書における本件請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)のうち、本件発明1に対応する説明箇所から、本件特許明細書中の「ハ」の記載を削除するものである。
段落【0006】には、「「ハ」 マスク部と、首筋前部、及び胸元肩部とを、それぞれ別の布地で形成し、マスク部の下端端部と、首筋前部の上端端部との左右端部を縫合し、マスク部の下端端部と、首筋前部の上端端部との間で、かつマスク部の裏面と、首筋前部の上面との間に、開口部を確保し、かつこの開口部を介して、マスクの内外気のスムーズな流通を図ること、又は息苦しさを解消すること、等にある。」と記載されている。
一方、請求項1には、「前記マスクは、両端に耳掛け紐を設けた、前記鼻から口元を包囲するマスク部と、このマスク部に設けた、前記首筋前側に添設する首筋前部と、この首筋前部に設けた前記胸元、及び肩部に到る胸元肩部と、前記首筋後側に添設する、この首筋前部、及び胸元肩部に設けた首筋後部と、この首筋後部の両端の裏面に設けた固定具と、前記マスク部の下端端部と前記首筋前部の上端端部との間に形成した開口部と、で構成し」と記載されている(下線は当審が付与。以下、同様。)から、段落【0006】における「ハ」の記載は、本件発明1の各発明特定事項に対応する具体的な説明になっているといえ、段落【0007】の記載は明瞭である。
したがって、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明であるとはいえない。

イ 訂正後の段落【0007】と段落【0011】及び【0014】の記載とが整合していないこと
請求人は審判請求書における6(3)ア(ア)aにおいて、明細書における段落【0006】の「ハ」の記載は、本件発明2に対応する説明であるから、本件発明1の説明箇所である段落【0007】に「ハ」の記載があるのは不整合である旨を主張している。
しかしながら、上記主張のとおり段落【0006】の「ハ」の記載が本件発明2に対応するものと解すると、請求項2の記載を引用していない本件発明3ないし5に対応する説明箇所である段落【0011】及び【0014】は、段落【0006】の「ハ」の記載を含むため、請求人の上記主張と整合していない。
この点で、段落【0006】の「ハ」の記載は、本件発明2のみに対応する説明とはいえないことは明らかである。

ウ 平成25年5月29日に提出された意見書の主張と整合していないこと
請求人は、平成25年5月29日に提出された意見書において、本件発明1に関し、「2. 以上の請求項1の補正は、マスクの縫着と、特徴とを、特定したものであります。
(2-1) 即ち、“前記マスク部の下端端部の布地を幅方向(中心部の幅方向の長さ)に広くし、前記首筋前部に、ゆとりを持って縫着する”である。
(2-2) 即ち、明細書の[0038]に記載の“空気の流通が図れること、息苦しさの解消、眼鏡の曇り防止等に有効である。”」と主張している。
また、本件特許明細書の段落【0038】には、「この装着時に、図4のマスク部1の下端端部1bを持上げ、開口部8があることを示した正面図において、開口部8が、口元の下側に開放することで、空気の流通が図れること、息苦しさの解消、眼鏡の曇り防止等に有効である。」と記載されている。
そうすると、本件発明1は「開口部」を有することにより、空気の流通が図れること、息苦しさの解消、眼鏡の曇り防止等に有効であるという効果を有することが把握できる。
それにもかかわらず、請求人が求める訂正事項1は、本件発明1から前述の効果を削除する訂正であるから、請求人自身が審査過程においてした主張と矛盾している。

エ まとめ
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号の規定(明瞭でない記載の釈明)に適合しない。
また、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号の規定(特許請求の範囲の減縮)、第2号の規定(誤記又は誤訳の訂正)及び第4号の規定(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)のいずれにも適合しない。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項の規定に違反するものである。

(2)訂正事項2について
(1)と同様の理由により、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号の規定(明瞭でない記載の釈明)に適合しない。
また、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号の規定(特許請求の範囲の減縮)、第2号の規定(誤記又は誤訳の訂正)及び第4号の規定(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)のいずれにも適合しない。
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第1項の規定に違反するものである。

第5 むすび
以上のとおり、訂正事項1及び2は、特許法第126条第1項ただし書に掲げるいずれかの事項を目的とするものとはいえないから、訂正事項1及び2に係る本件訂正は認められない。
 
審理終結日 2021-06-10 
結審通知日 2021-06-15 
審決日 2021-06-30 
出願番号 特願2011-138646(P2011-138646)
審決分類 P 1 41・ 853- Z (A62B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大山 健田中 将一  
特許庁審判長 佐々木 正章
特許庁審判官 高島 壮基
金澤 俊郎
登録日 2013-10-25 
登録番号 特許第5391378号(P5391378)
発明の名称 鼻から口元、及び首筋から胸元、並びに肩部を包囲できるマスク  
代理人 竹中 一宣  
代理人 榊原 靖  
代理人 木村 満  

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