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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  G01N
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  G01N
管理番号 1377783
異議申立番号 異議2020-700751  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-01 
確定日 2021-08-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6675104号発明「免疫凝集測定法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6675104号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-16〕について訂正することを認める。 特許第6675104号の請求項3ないし16に係る特許を維持する。 特許第6675104号の請求項1,2に係る特許についての特許異議の申し立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6675104号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)6月2日(優先権主張 平成25年5月31日)を国際出願日とする国際出願PCT/JP2014/064659を国内段階に移行して特願2015-519986号として出願した特許出願(以下「原出願」という。)の一部を平成30年12月3日に新たな特許出願とした特願2018-226654号であって、令和2年3月12日にその特許権の設定登録がされ、令和2年4月1日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和2年10月1日に特許異議申立人 猪狩 充(以下「申立人」という。)により特許異議の申立て(以下「異議申立」という。)がなされ、当審は、令和3年1月20日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年3月26日付けで意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、その指定期間内である同年6月14日に意見書を提出したものである。

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)ないし(8)のとおりである。
(1)訂正事項1
請求項1を削除する

(2)訂正事項2
請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
ア 訂正事項3-1
請求項3に「前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短いことを特徴とする請求項1または2に記載の測定法。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、引用関係を解消して独立形式に改め、「アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短いことを特徴とする測定法。」に訂正する。

イ 訂正事項3-2
請求項3に「前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ) を算出する2時点よりも間隔が短いことを特徴とする請求項1または2に記載の測定法。」とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて引用関係を解消して、新たに請求項8とする。

(4)訂正事項4
ア 訂正事項4-1
請求項4に「前記(イ)及び前記(ロ)の測定を共通の波長で行うことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の測定法。」とあるうち、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて、引用関係を解消して独立形式に改め、「アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(イ)及び前記(ロ)の測定を共通の波長で行うことを特徴とする測定法。」に訂正する。

イ 訂正事項4-2
請求項4に「前記(イ)及び前記(ロ)の測定を共通の波長で行うことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の測定法。」とあるうち、引用関係を解消して、請求項1を引用するもの、及び請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、削除する。

ウ 訂正事項4-3
請求項4に「前記(イ)及び前記(ロ)の測定を共通の波長で行うことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の測定法。」とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用するものについて、引用関係を解消して独立形式に改め、新たに請求項9とする。

(5)訂正事項5
ア 訂正事項5-1
請求項5に「前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の測定法。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、引用関係を解消して独立形式に改め、「アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いることを特徴とする測定法。」に訂正する。

イ 訂正事項5-2
請求項5に「前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の測定法。」とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用するもの、請求項1を引用する請求項3を引用するもの、及び請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用するものについて引用関係を解消して、新たに、それぞれ請求項10、請求項11、及び請求項12とする。

(6)訂正事項6
ア 訂正事項6-1
請求項6に「前記(ロ)吸光度の変化量の測定波長に、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも短い主波長と、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも長い副波長、の2波長を用いることを特徴とする請求項5に記載の測定法。」とあるうち、請求項1を引用する請求項5を引用するものについて、引用関係を解消して独立形式に改め、「アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高漉度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用い、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定波長に、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも短い主波長と、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも長い副波長、の2波長を用いることを特徴とする測定法。」に訂正する。

イ 訂正事項6-2
請求項6に「前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の測定法。」とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項5を引用するもの、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項5を引用するもの、及び請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項5を引用するものについて引用関係を解消して、新たに、それぞれ請求項13、請求項14、及び請求項15とする。

(7)訂正事項7
ア 訂正事項7-1
請求項7に「前記(イ)及び前記(ロ)の変化量測定を、550から900nmの波長の範囲内でおこなうことを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の測定法」とあるうち、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて、引用関係を解消して独立形式に改め、「アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(イ)及び前記(ロ)の変化量測定を、550から900nmの波長の範囲内でおこなうことを特徴とする測定法。」に訂正する。

イ 訂正事項7-2
請求項7に「前記(イ)及び前記(ロ)の変化量測定を、550から900nmの波長の範囲内でおこなうことを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の測定法。」とあるうち、引用関係を解消して、請求項1を引用するもの、請求項1を引用する請求項2を引用するもの、請求項1を引用する請求項4を引用するもの、及び請求項1を引用する請求項2を引用する請求項4を引用するものについて、削除する。

ウ 訂正事項7-3
請求項7に「前記(イ)及び前記(ロ)の変化量測定を、550から900nmの波長の範囲内でおこなうことを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の測定法。」とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用するもの、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4を引用するもの、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用するもの、請求項1を引用する請求項5を引用するもの、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項5を引用するもの、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項5を引用するもの、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項5を引用するもの、請求項1を引用する請求項5を引用する請求項6を引用するもの、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項5を引用する請求項6を引用するもの、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項5を引用する請求項6を引用するもの、及び請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項5を引用する請求項6を引用するものについて、新たに、請求項16とする。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項、独立特許要件
(1)訂正事項1について
請求項1を削除する訂正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

(2)訂正事項2について
請求項2を削除する訂正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3-1について
訂正事項3-1は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用する請求項3について請求項間の引用関係を解消して独立型式請求項へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

イ 訂正事項3-2について
訂正事項3-2は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3について請求項間の引用関係を解消して独立型式請求項へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

(4)訂正事項4について
ア 訂正事項4-1について
訂正事項4-1は、訂正前の請求項4が請求項1?3のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4について請求項間の引用関係を解消して独立型式請求項へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

イ 訂正事項4-2について
訂正事項4-2は、訂正前の請求項4が請求項1?3のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用する請求項4、及び請求項1を引用する請求項2を引用する請求項4について削除する訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

ウ 訂正事項4-3について
訂正事項4-3は、訂正前の請求項4が請求項1?3のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4について請求項間の引用関係を解消して独立型式請求項へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

(5)訂正事項5について
ア 訂正事項5-1について
訂正事項5-1は、訂正前の請求項5が請求項1?3のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用する請求項5について請求項間の引用関係を解消して独立型式請求項へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

イ 訂正事項5-2について
訂正事項5-2は、訂正前の請求項5が請求項1?3のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項5、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項5、及び請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項5についてそれぞれ請求項間の引用関係を解消して独立型式請求項へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

(6)訂正事項6について
ア 訂正事項6-1について
訂正事項6-1は、訂正前の請求項6が請求項5の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用する請求項5を引用する請求項6について請求項間の引用関係を解消して独立型式請求項へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

イ 訂正事項6-2について
訂正事項6-2は、訂正前の請求項6が請求項5の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項5を引用する請求項6、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項5を引用する請求項6、及び請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項5を引用する請求項6について、それぞれ請求項間の引用関係を解消して独立型式請求項へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

(7)訂正事項7について
ア 訂正事項7-1について
訂正事項7-1は、訂正前の請求項7が請求項1?6のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項7について請求項間の引用関係を解消して独立型式請求項へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

イ 訂正事項7-2について
訂正事項7-2は、訂正前の請求項7が請求項1?6のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用する請求項7、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項7、請求項1を引用する請求項4を引用する請求項7、及び請求項1を引用する請求項2を引用する請求項4を引用する請求項7について削除する訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

ウ 訂正事項7-3について
訂正事項7-3は、訂正前の請求項7が請求項1?6のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項7、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項7、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項7、請求項1を引用する請求項5を引用する請求項7、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項5を引用する請求項7、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項5を引用する請求項7、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項5を引用する請求項7、請求項1を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項7、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項7、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項7、及び請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項7について、新たに請求項16とするための訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

(8)一群の請求項及び独立特許要件について
訂正前の請求項2ないし7は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、請求項3ないし16は一群の請求項である。そして、上記訂正事項1ないし7は、全て一群の請求項に対してされるものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。
また、本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし7について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1ないし7に係る訂正事項1ないし7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(9)別の訂正単位とする求めについて、
訂正請求人は、令和3年3月26日提出の訂正請求書の「7.(3)イ(ク)」において、訂正後の請求項3?16について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
しかしながら、当該訂正後の請求項3?16は、訂正後の請求項3ないし15はそれぞれ独立請求項となっているものの、訂正後の請求項16は「請求項3?6及び8?15のいずれかに記載の測定法。」であることから、訂正後の請求項16は請求項3?6及び8?15のいずれかの記載を引用する請求項であり、訂正後の請求項3?16は全体で一群の請求項であると認められる。
よって、上記訂正請求人の求めには応じることはできない。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし16について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項3ないし16に係る発明(以下「本件発明3ないし16」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項3ないし16に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項3】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短い
ことを特徴とする測定法。
【請求項4】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(イ)及び前記(ロ)の測定を共通の波長で行うことを特徴とする測定法。
【請求項5】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項6】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用い、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定波長に、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも短い主波長と、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも長い副波長、の2波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項7】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(イ)及び前記(ロ)の変化量測定を、550から900nmの波長の範囲内でおこなうことを特徴とする測定法。
【請求項8】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記第1、第2、第3、第4の時点は、前記混合液の調製開始から1000秒後までの間から選ばれるものであり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短いことを特徴とする測定法。
【請求項9】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記第1、第2、第3、第4の時点は、前記混合液の調製開始から1000秒後までの間から選ばれるものであり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(イ)及び前記(ロ)の測定を共通の波長で行うことを特徴とする測定法。
【請求項10】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記第1、第2、第3、第4の時点は、前記混合液の調製開始から1000秒後までの間から選ばれるものであり、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項11】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項12】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記第1、第2、第3、第4の時点は、前記混合液の調製開始から1000秒後までの間から選ばれるものであり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項13】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記第1、第2、第3、第4の時点は、前記混合液の調製開始から1000秒後までの間から選ばれるものであり、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用い、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定波長に、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも短い主波長と、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも長い副波長、の2波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項14】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用い、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定波長に、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも短い主波長と、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも長い副波長、の2波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項15】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記第1、第2、第3、第4の時点は、前記混合液の調製開始から1000秒後までの間から選ばれるものであり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用い、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定波長に、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも短い主波長と、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも長い副波長、の2波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項16】
前記(イ)及び前記(ロ)の変化量測定を、550から900nmの波長の範囲内でおこなうことを特徴とする請求項3?6及び8?15のいずれかに記載の測定法。」

第4 異議申立の概要について
1.異議申立における証拠
令和2年10月1日付け特許異議申立書に添付された甲1ないし8号証は以下のとおりである。
甲1号証 特開2011-257243号公報
甲2号証 特開2001-249134号公報
甲3号証 特開2001-194308号公報
甲4号証 特開2013- 68442号公報
甲5号証 特開2008-298505号公報
甲6号証 ラテックス凝集反応を利用した測定法
(医用電子と生体工学、第22巻第4号267?273頁)
甲7号証 特開2013- 64705号公報
甲8号証 特開2012- 78161号公報
また、令和3年6月14日付け意見書に添付された甲9号証は以下のとおりである。
甲9号証 特開2012-237691号公報
なお、甲9号証は、甲2?甲4号証と同様に「散乱光測定が、透過光測定に比べ、低濃度領域であっても光量の変化を大きく検出することが可能となる」ことが周知であることを示すものにすぎないことから、証拠として採用することとする。

2.異議申立の理由について
令和2年10月1日に申立人によりなされた特許異議申立の理由の要旨は次のとおりである。
(1)取消理由1
本件出願の発明の詳細な説明は、請求項1,2,4?7に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえないため、その特許は発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
また、請求項1,2,4?7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)取消理由2
本件出願の発明の詳細な説明は、請求項1?7に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえないため、その特許は発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
また、請求項1?7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
さらに、請求項1?7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

(3)取消理由3
請求項1,2,4?7に係る発明は、甲1号証?甲7号証及び甲9号証の開示に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
また、請求項1,2,4?7に係る発明は、甲8号証、甲1?7号証及び甲9号証の開示に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

第5 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし7に係る特許に対して、当審が令和3年1月20日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)理由1(進歩性)について
請求項1,2,4及び7に係る発明は、本件特許出願の原出願の優先日前に日本国内において、頒布された甲1号証に記載された発明及び甲2号証に開示された技術に基づいて、または甲8号証に記載された発明及び甲2号証に開示された技術に基いて、本件特許出願の原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1,2,4及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2.甲号証の記載
(1)甲1号証
本件特許の原出願の優先日前である平成23年(2011年)12月22日に頒布された刊行物である「特開2011-257243号公報」(甲1号証)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審が付与。以下同様。)

ア 「【0001】
本発明は、試料中のC反応性蛋白質の測定試薬、測定方法及び測定範囲の拡大方法に関するものである。
本発明は、特に、化学、生命科学、分析化学及び臨床検査等の分野において有用なものである。」

イ 「【0008】
このCRPの測定法としては、C多糖体との特異的反応をみる方法、及びCRPに結合する抗体(抗CRP抗体)を試薬に用い、試料中のCRPと試薬中の抗CRP抗体との抗原抗体反応により、抗原抗体複合体を生成させる方法等を挙げることができる。
現在では、抗CRP抗体との抗原抗体複合体を生成させる方法である、免疫比ろう法、免疫比濁法、ラテックス免疫比濁法等が日常検査に広く利用されている。」

ウ 「【0012】
従って、本発明の課題は、試料中のCRPと、担体粒子に固定化したCRPに結合する特異的結合物質との、特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、低濃度から高濃度までその測定範囲を拡げ、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる、新たな測定試薬及び測定方法を提供することである。」

エ 「【0073】
〔実施例1〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認-1)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、酢酸ナトリウムを含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0074】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン-塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、酢酸ナトリウム〔関東化学社〕を0mM、250mM、500mM及び1000mMの濃度となるように添加し、酢酸ナトリウム濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0075】
(2)第2試薬の調製
(a)抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液の調製
平均粒径0.192μmのラテックス粒子の10%懸濁液0.094mLに、抗ヒトCRPモノクローナル抗体を0.04g/dLの濃度で6.7mM
HEPES緩衝液〔pH7.0(20℃)〕に混和した液0.5098mLを加え、5℃にて一晩静置した。
次に、遠心分離により上清を除去した後、沈殿部に1.0%BSAを含む5mMグリシン緩衝液〔pH9.5(20℃)〕を加え懸濁し、37℃で7日間静置し、ブロッキング処理を行った。
次に、遠心分離により沈殿部を回収した後、これを0.05%アジ化ナトリウム水溶液で波長585nmにおける吸光度が25.0ODとなるように懸濁した。
そして、これを0.05%アジ化ナトリウム水溶液により希釈して、抗CRP抗体を固定化したラテックス粒子の0.800%懸濁液として調製した。
これを抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液とした。
なお、抗CRPモノクローナル抗体としては、市販のマウス抗CRPモノクローナル抗体(日本バイオテスト研究所社;クローン:CRB-019)を使用した。
【0076】
(b)第2試薬の調製
前記(a)で調製した抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液の1mLと、0.05%アジ化ナトリウム水溶液の9mLとを混合し、0.080%の「抗CRP抗体固定化ラテックス粒子」を含有する懸濁液を調製した。
これを第2試薬とした。
【0077】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
4%(w/v)BSA、2.7mM塩化カルシウム・2水和物、100mM塩化ナトリウム及び15mMアジ化ナトリウムを含有する50mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン-塩酸緩衝液〔pH7.6〕を調製して、試料希釈液とした。
【0078】
(2)試料の調製
遺伝子組み換え体CRP(オリエンタル酵母工業社製)を、前記(1)の試料希釈液で希釈することにより、次のCRP濃度の試料をそれぞれ調製した。
また、前記(1)で調製した試料希釈液を、CRP濃度0mg/dLの試料とした。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0079】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
(a)測定は、日立-7180形自動分析装置(日立製作所社製)を使用して行った。
まず、測定用セル(キュベット)に、前記2の(2)の試料1?7の3μLを添加した。
次に、これらの測定用セル(キュベット)に、前記1の(1)の第1試薬の100μLを添加し、混合した。
そして、これらの測定用セル(キュベット)を、37℃で静置した。
【0080】
(b)前記の第1試薬の添加後4分34秒目(16ポイント目)に、これらの測定用セル(キュベット)内の混合液に、更に、前記1の(2)の(b)の第2試薬の100μLを添加し、混合した。
【0081】
(c)前記の第1試薬の添加後5分09秒目(18ポイント目)に、これらの測定用セル(キュベット)内の混合液の吸光度(主波長570nm、副波長800nm)を試料盲検として測定した。
そして、これらの測定用セル(キュベット)を、37℃で静置して、反応を行わせた。
これにより、前記のラテックス粒子に固定化された抗CRP抗体と、前記の試料に含まれていたCRPとの抗原抗体反応を行わせ、ラテックス粒子の凝集塊を生成させた。
【0082】
(d)前記の第1試薬の添加後9分54秒目(34ポイント目)に、この測定用セル(キュベット)内の反応混合液の吸光度(主波長570nm、副波長800nm)を、前記試料の測定値として測定した。
【0083】
(e)前記(d)において測定した吸光度(測定値)から前記(c)において測定した吸光度(試料盲検)を差し引き、吸光度差を得た。
なお、この吸光度差は試料に含まれるCRPの量(濃度)に比例したものである。
【0084】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図1に示した。
なお、この図1において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0085】
4.考察
図1から明らかなように、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0086】
これに対して、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させた場合(250mM、500mM及び1000mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0087】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、酢酸ナトリウム(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。」

オ 「【0098】
〔実施例3〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認-3)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、酪酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0099】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン-塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、酪酸〔ナカライ社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、酪酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0100】
(2)第2試薬の調製
前記実施例1の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0101】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0102】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0103】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例2の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0104】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図3に示した。
なお、この図3において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0105】
4.考察
図3から明らかなように、第1試薬に酪酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬に酪酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0106】
これに対して、第1試薬に酪酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が50mg/dLを超えても吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬に酪酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0107】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、酪酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。」

カ 上記「オ」の段落【0103】の「実施例2の3の(1)」は、実施例2の3の(1)となる段落【0093】の記載を参酌するに「実施例1の3の(1)」の誤記であると認められる。

キ 「【図1】



ク 「【図3】



ケ 上記「オ」及び「ク」より、「第1試薬に酪酸を200mM含有させた場合は、試料中のCRP濃度が50mg/dLまでの区間はCRP濃度に対して吸光度差は直線的に上昇して、検量線等を用いて試料中のCRP濃度を測定することができる」ことが読み取れる。

上記甲1号証の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「試料中のCRP(C反応性蛋白質)と、担体粒子に固定化したCRPに結合する特異的結合物質との、特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法であって、低濃度から高濃度までその測定範囲を拡げ、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる、新たな測定試薬及び測定方法において、
第1試薬として、1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン-塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、酪酸〔ナカライ社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、酪酸濃度の異なる4種類の第1試薬としたものを作成し、
第2試薬として、抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液の1mLと、0.05%アジ化ナトリウム水溶液の9mLとを混合し、0.080%の「抗CRP抗体固定化ラテックス粒子」を含有する懸濁液を調製して作成し、
試料希釈液として、4%(w/v)BSA、2.7mM塩化カルシウム・2水和物、100mM塩化ナトリウム及び15mMアジ化ナトリウムを含有する50mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン-塩酸緩衝液〔pH7.6〕を調製して作成し、
試料1-6として、遺伝子組み換え体CRP(オリエンタル酵母工業社製)を、前記試料希釈液で希釈することにより、以下のCRP濃度の試料をそれぞれ調製して作成し、
(a)試料1: 0mg/dL(試料希釈液を、CRP濃度0mg/dLの試料とした。)
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
測定方法は、以下の(a)-(e)の工程で行い、
(a)測定は、日立-7180形自動分析装置(日立製作所社製)を使用して行った。
まず、測定用セル(キュベット)に、前記2の(2)の試料1?7の3μLを添加した。
次に、これらの測定用セル(キュベット)に、前記1の(1)の第1試薬の100μLを添加し、混合した。
そして、これらの測定用セル(キュベット)を、37℃で静置した。
(b)前記の第1試薬の添加後4分34秒目(16ポイント目)に、これらの測定用セル(キュベット)内の混合液に、更に、前記1の(2)の(b)の第2試薬の100μLを添加し、混合した。
(c)前記の第1試薬の添加後5分09秒目(18ポイント目)に、これらの測定用セル(キュベット)内の混合液の吸光度(主波長570nm、副波長800nm)を試料盲検として測定した。
そして、これらの測定用セル(キュベット)を、37℃で静置して、反応を行わせた。
これにより、前記のラテックス粒子に固定化された抗CRP抗体と、前記の試料に含まれていたCRPとの抗原抗体反応を行わせ、ラテックス粒子の凝集塊を生成させた。
(d)前記の第1試薬の添加後9分54秒目(34ポイント目)に、この測定用セル(キュベット)内の反応混合液の吸光度(主波長570nm、副波長800nm)を、前記試料の測定値として測定した。
(e)前記(d)において測定した吸光度(測定値)から前記(c)において測定した吸光度(試料盲検)を差し引き、吸光度差を得た。
なお、この吸光度差は試料に含まれるCRPの量(濃度)に比例したものである。
以上の測定方法で得られた結果より、第1試薬に酪酸を200mM含有させた場合は、試料中のCRP濃度が50mg/dLまでの区間はCRP濃度に対して吸光度差は直線的に上昇して、検量線等を用いて試料中のCRP濃度を測定することができる、
測定方法。」

(2)甲2号証
本件特許の原出願の優先日前である平成13年(2001年)9月14日に頒布された刊行物である「特開2001-249134号公報」(甲2号証)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被検溶液中に溶解している溶質の濃度、特にタンパク質濃度および旋光性物質の濃度を計測する方法に関するものである。」

イ 「【0005】本発明のタンパク質濃度の計測方法は、前記の試薬を混入する前後の被検溶液の透過光強度および散乱光強度の少なくとも一方を計測し、それらの計測値にもとづいて前記被検溶液中のタンパク質濃度を求める。ここにおいて、前記散乱光強度の計測値から低濃度域の被検溶液中のタンパク質濃度を決定し、前記透過光強度の計測値から高濃度域の被検溶液中のタンパク質濃度を決定することが好ましい。前記透過光強度の計測値と前記散乱光強度の計測値とを照合することにより、被検溶液中の浮遊粒子、泡等による誤計測の有無を検知することができる。」

ウ 「【0013】《実施の形態1》濃度=1g/dlのタンニン水溶液を被検溶液に容量比1:1の比率で混入してタンパク質を凝集させることにより被検溶液を混濁させ、その散乱光強度を計測し、この計測値から被検溶液中のタンパク質濃度を求める例について、図1を用いて詳細に説明する。図1は、本発明のタンパク質濃度の計測方法に使用する装置の概略構成を示す側面図であり、図2はその光学系を示す平面図である。これらの図において、1は半導体レーザモジュールからなる光源を示し、波長780nm、強度3.0mW、ビーム直径2.0mmの略平行光2を投射する。サンプルセル3は、ガラス製で、上部に開放された開口部を有し、底面が10×10mm、高さが50mmの直方体状容器であり、側面は透明な光学窓である。このサンプルセル3は、その内部に収容された被検溶液に略平行光2を照射することができ、また、透過光および散乱光7を外部に取り出すことができる。被検溶液を透過した光を検知する光センサー4および被検溶液中を光が伝搬する際に発生した散乱光7を検知する光センサー5により、それぞれ透過光および散乱光が検知される。コンピューター6は、光源1を制御するとともに、光センサー4および5の出力信号を解析する。」

エ 「【0020】図5は、本発明のタンパク質濃度の計測方法に使用する装置の概略構成を示す側面図であり、図6はその光学系の平面図である。これらの図において、1?7は図1および図2の1?7と全く同じ構成要素を示し、それらの配置も同様である。サンプルセル3の底部には、試薬の混入口8が設けてあり、この混入口8を通じて、ピペッタ9により、試薬の所定容量をサンプルセル3中の被検溶液に混入する。コンピューター6は、光源1およびピペッタ9を制御するとともに、光センサー4および5の出力信号を解析する。」

オ 「【0050】《実施の形態6》本実施の形態は、被検溶液にタンニン酸およびクエン酸水溶液を混入しタンパク質を凝集させることにより被検溶液を混濁させ、混入前後の混濁度の変化からタンパク質濃度を計測する方式である。具体的には、タンニン酸濃度=3×10^(-4)M(≒0.05g/dl)、クエン酸濃度=5g/dlのタンニン-クエン酸水溶液を試薬として用いた例である。本試薬のpHは約1.8?2.0であった。タンニン酸-クエン酸水溶液試薬を、被検溶液の容量9に対して1の比率で混入して、試薬を混入する前後の透過光強度および/または散乱光強度を計測し、それらの計測値から被検溶液中のタンパク質濃度を求める例である。この場合、混入後のタンニン酸の濃度は3×10^(-5)M(≒5×10^(-3)g/dl)である。なお、実施の形態5と同様、以下の操作は気温約40℃の部屋で実施され、被検溶液、試薬および計測装置とも約40℃の状態にあった。
【0051】図5に示す計測装置を用いて、尿を被検溶液として尿タンパク濃度を検査する場合の動作は次の通りである。まず、被検溶液1.8mlをサンプルセル3へ導入する。コンピューター6が光源1を動作させ、同時に光センサー4および5の出力信号のモニターを開始する。次に、コンピューター6がピペッタ9を制御して、混入口8を通じてタンニン酸-クエン酸水溶液試薬をサンプルセル3へ0.2ml混入する。被検溶液にタンニン酸-クエン酸試薬が混入されると、タンパク質成分が凝集して被検溶液が濁り、透過光強度が低下し、散乱光強度が増加する。この試薬の混入の前後の光センサー4および5のそれぞれの出力信号の計測値を解析することにより、タンパク質濃度を求める。
【0052】タンパク質濃度が5mg/dlの被検溶液を用い、上記の方法で測定した散乱光強度および透過光強度、即ち、光センサー5および4の出力信号をそれぞれ図15および図16に示す。図15および16において、横軸は試薬混入後の経過時間(秒)、縦軸はセンサーで検知された光強度をそれぞれ表し、混入前60秒から混入後300秒までの散乱光あるいは透過光の強度変化を示している。このような、散乱光強度の変化および透過光強度の比とタンパク質濃度との相関関係をそれぞれ図17および図18に示す。図17においては、試薬混入前の散乱光強度と混入後300秒経過時の散乱光強度との差(試薬混入後の散乱光強度-試薬混入前の散乱光強度)を縦軸に示した。図18においては、試薬混入前の透過光強度と混入後300秒経過時の透過光強度との比(試薬混入後の透過光強度/試薬混入前の透過光強度)を縦軸に示した。なお、図17および18には前記タンパク質濃度=5mg/dlの被検溶液以外に、タンパク質濃度が0、15、30、60、100、250、500mg/dlの尿を被検溶液としてそれぞれ追加して計測した結果を示した。これらの場合、計測した被検溶液はすべて、試薬の混入前には光学的に水と同程度に透明であり、透過光強度と散乱光強度は水と同じであった。
【0053】図17において、各実測値をスムーズに結んで実線で示し、散乱光強度の変化量(試薬混入前後の散乱光強度の差)に対して直線的に変化しているタンパク質濃度0?30mg/dlの領域の実測値を結んだ直線を延長させて点線で示した。この実線を検量線とすることにより、タンパク質濃度を計測することができる。また、この実線と点線から明らかなように、タンパク質濃度が約30mg/dlまでは実線と点線が重なり、散乱光強度の変化量はタンパク質濃度に比例している。しかし、これより高濃度になるにつれて、次第に比例関係よりも低い実測値を示している。これは、タンパク質濃度が高くなり、光が散乱される確率が高くなると、散乱光が発生した地点からサンプルセルの外まで伝搬する際に、再び散乱される確率も高くなり、光センサー5に散乱光が到達する確率が低下するからである。従って、散乱光強度の変化から濃度を算出する場合には、直線性が確保できる低濃度域(約30mg/dl以下)において、より高精度な濃度を算出することができる。
【0054】この直線性から外れる約30mg/dlより高い濃度域においては、実線で示した検量線を求めて、これに当てはめることによって濃度を求めることができる。また、濃度が500mg/dlまでの領域においては、完全に飽和することがないため、一意的に濃度を求めることができることを確認できた。ここで、タンニン酸水溶液にクエン酸を混入しなかった場合は、濃度が500mg/dlの散乱光強度(光センサ5の出力信号)が0V程度になることがあり、濃度を約0mg/dlとしてしまう誤動作が発生することがあった。しかし、本実施の形態のように、クエン酸をタンニン水溶液に混入して試薬としたことで、500mg/dlのような高濃度においても、濃度に応じた濁度を発生させることができた。
【0055】図18において、横軸はタンパク質濃度を、縦軸(対数表示)は試薬混入前後の透過光強度の比を示す。各実測値をスムーズに結んで実線で示し、直線的に変化しているタンパク質濃度30?100mg/dlでの実測値を結んだ直線を延長させて点線で示した。この実線を検量線とすることによりタンパク質濃度を計測することができる。また、図18で示したように、タンパク質濃度30mg/dl以下の低濃度領域の場合には、この点線から外れる場合がある。これは、全出力信号に比べて変化割合が小さすぎるため、各種ノイズの影響を受けやすいからである。このことから、透過光強度の計測値からタンパク質濃度を算出する場合において、各種ノイズの影響を避けるためには、被検溶液が高濃度域(約30mg/dl以上)にあることがより望ましいことが分かる。また、濃度が500mg/dlまでの領域においては、飽和現象が観測されなかったため、一意的に濃度を求めることができることを確認できた。
【0056】ここで、タンニン水溶液にクエン酸を混入しなかった場合は、濃度が500mg/dlの透過光強度(光センサ4の出力信号)が0.6V程度になることがあり、濃度を約0mg/dl以下と見積もってしまう誤動作が発生してしまうことがあった。しかし、本実施の形態のように、クエン酸をタンニン水溶液に混入して試薬としたことで、500mg/dlのような高濃度においても、濃度に応じた濁度を発生させることができた。従って、これらから得られた図17および図18の点線を、それぞれ低濃度域および高濃度域の濃度の算出に使用すると、高い精度を確保することができる。以上のようにして、試薬混入前後の透過光強度あるいは試薬混入前後の散乱光強度を計測することにより、被検溶液のタンパク質濃度を求めることができる。さらに、上記双方の強度を計測することにより、低濃度域の被検溶液については、散乱光強度の計測値から溶液濃度を算出し、高濃度域の被検溶液については、透過光強度の計測値から溶液濃度を算出することにより、実質的に高精度に測定できる被検溶液の濃度範囲、即ちダイナミックレンジを拡大できる。
【0057】本実施の形態によれば、各種塩などが析出して混濁した尿を被検溶液としてタンパク質濃度を求めることができる。これについて以下に説明する。まず、被検溶液としてタンパク質濃度30mg/dlの混濁した尿をサンプルセル3へ導入した。この時の、光センサー5の出力信号(散乱光強度)は0.05V程度である。図15から、混濁が無い被検溶液の場合は、混入前の光センサー5の出力信号は0.0Vであることから、この出力信号の差が本実施の形態の被検溶液本来の混濁程度を示しているといえる。この値は図17の実線を検量線として、タンパク質濃度に換算すると10?12mg/dlに相当する。ここで、試薬を混入し、光センサー4および/または光センサー5の出力信号の変化を観測した。試薬を混入後300秒経過した時点の光センサー5の出力信号は、0.19Vで、0秒時点の出力信号との差は0.14Vとなる。図17を検量線として、この出力信号の差(0.14V)をタンパク質濃度に換算すると30mg/dlとなり、この濃度があらかじめ計測された既知濃度に一致する。このことから、混濁が無い被検溶液から求めた図17の検量線を用いて、試薬混入前後の光センサー5の出力信号の差から混濁被検溶液のタンパク質濃度を正確に求められることが確認できた。
【0058】以上のように、試薬の混入前後の散乱光強度の差より、溶液濃度を算出することにより、混濁等の影響が消去された正確な溶液濃度を求めることが可能になる。一方、試薬の混入前の光センサー4の出力信号(透過光強度)は0.55Vである。混濁が無い透明な被検溶液の場合は、図16のように混入前の光センサー4の出力信号は0.6Vであることから、この相違は被検溶液の混濁によるものといえる。試薬混入後300秒経過した時点での出力信号が0.45Vであり、その比は0.82となる。図18を検量線として、この出力信号の比(0.82)をタンパク質濃度に換算すると30mg/dlとなり、この濃度はあらかじめ計測された既知濃度に一致する。このことから、試薬混入前後の光センサー4の出力信号の比を求め、混濁が無い被検溶液から求めた図18を検量線として、タンパク質濃度に換算することにより、混濁した被検溶液の正確なタンパク質濃度を求められることが確認できた。
【0059】なお、本実施の形態では、試薬混入直前と300秒経過時点の透過光強度および散乱光強度の計測値から溶液濃度を求めたが、この時間差は計測装置、被検溶液やタンニン酸試薬の濃度などの特性に応じて適宜に設定すればよい。また、図15?18は被検溶液、試薬、および雰囲気温度が40℃の例を示したが、0?50℃の範囲においても計測可能であった。従って、試薬としてトリクロロ酢酸を使用した時とは異なり、25℃以上でも計測でき、家庭でありうる環境温度でも使用可能である。本実施の形態で被検溶液として使用した各尿と上記タンニン酸-クエン酸水溶液試薬とを混入した後の、水溶液のpHは、2.4?3.0であった。なお、本実施の形態では、タンニン酸水溶液へ、酸としてクエン酸を添加して試薬とする例を示したが、被検溶液と試薬を混入した後の溶液のpHが1.5?5.8になるような酸であれば同様の効果が得られる。また、被検溶液に酸を混入しても、試薬混入後の溶液のpHが1.5?5.8になるようにすれば同様の効果が得られる。ただし、酸の種類や、被検溶液または/および試薬に混入する酸の量が異なれば、異なった検量線(図17、18の点線および実線に相当)が得られるため、そのつど新たな検量線(図17、18の点線および実線に相当)を作成する必要がある。上記のpH範囲以外では、全くタンパク質が凝集しないことも有り、安定した計測を実現することができないことないことが有り、上記pH範囲で計測することが実用上望ましい。」

カ 「【図5】



キ 「【図6】



ク 「【図17】










ケ 「【図18】



コ 上記「ウ」ないし「オ」より、「測定は、波長780nmの略平行光2をサンプルセル3及びその内部に収容された被検溶液に照射し、被検溶液を透過した光を検知する光センサー4および被検溶液中を光が伝搬する際に発生した散乱光7を検知する光センサー5により、それぞれ透過光および散乱光が検知されることにより行われる」ことが読み取れる。

上記甲2号証の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「被検溶液中に溶解しているタンパク質を計測する方法において、
試薬を混入する前後の被検溶液の透過光強度および散乱光強度を計測し、それらの計測値にもとづいて前記被検溶液中のタンパク質濃度を求める方法であり、
前記散乱光強度の計測値から低濃度域の被検溶液中のタンパク質濃度を決定し、前記透過光強度の計測値から高濃度域の被検溶液中のタンパク質濃度を決定するものであり、
被検溶液にタンニン酸およびクエン酸水溶液を混入しタンパク質を凝集させることにより被検溶液を混濁させ、混入前後の混濁度の変化からタンパク質濃度を計測する方式であり、
具体的には、タンニン酸濃度=3×10^(-4)M(≒0.05g/dl)、クエン酸濃度=5g/dlのタンニン-クエン酸水溶液を試薬として用い、タンニン酸-クエン酸水溶液試薬を、被検溶液の容量9に対して1の比率で混入して、試薬を混入する前後の透過光強度および散乱光強度を計測し、それらの計測値から被検溶液中のタンパク質濃度を求めるものであり、
測定は、波長780nmの略平行光2をサンプルセル3及びその内部に収容された被検溶液に照射し、被検溶液を透過した光を検知する光センサー4および被検溶液中を光が伝搬する際に発生した散乱光7を検知する光センサー5により、それぞれ透過光および散乱光が検知されることにより行われ、
試薬混入前の散乱光強度と混入後300秒経過時の散乱光強度との差(試薬混入後の散乱光強度-試薬混入前の散乱光強度)とタンパク質濃度との相関関係から、散乱光強度の変化量(試薬混入前後の散乱光強度の差)に対して直線的に変化しているタンパク質濃度0?30mg/dlの領域の実測値を結んだ直線を検量線とすることにより、直線性が確保できる低濃度域(約30mg/dl以下)において、より高精度なタンパク質濃度を計測することができ、
試薬混入前の透過光強度と混入後300秒経過時の透過光強度との比(試薬混入後の透過光強度/試薬混入前の透過光強度)とタンパク質濃度との相関関係から、各実測値をスムーズに結んで実線で示し、直線的に変化しているタンパク質濃度30?100mg/dlでの実測値を結んだ直線を検量線とすることにより、被検溶液が高濃度域(約30mg/dl以上)にあるタンパク質濃度を計測することができ、
低濃度域の被検溶液については、散乱光強度の計測値から溶液濃度を算出し、高濃度域の被検溶液については、透過光強度の計測値から溶液濃度を算出することにより、実質的に高精度に測定できる被検溶液の濃度範囲、即ちダイナミックレンジを拡大でき、
試薬混入直前と混入後の透過光強度および散乱光強度の計測時点の時間差は、計測装置、被検溶液やタンニン酸試薬の濃度などの特性に応じて適宜に設定可能である、
方法。」

(3)甲3号証
本件特許の原出願の優先日前である平成13年(2001年)7月19日に頒布された刊行物である「特開2001-194308号公報」(甲3号証)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被検溶液中に溶解している溶質の濃度、例えばタンパク質濃度および旋光性物質の濃度を計測する方法および装置に関するものである。」

イ 「【0027】図9において、各実測値をスムーズに結んで実線で示し、散乱光強度の変化量(試薬混入前後の散乱光強度の差)に対して直線的に変化しているタンパク質濃度0?15mg/dlの領域の実測値を結んだ直線を延長させて点線で示した。この実線と点線から明らかなように、タンパク質濃度が約15mg/dlまでは実線と点線が重なり、散乱光強度の変化量はタンパク質濃度に比例している。しかし、これより高濃度になるにつれて、次第に比例関係よりも低い実測値を示している。これは、タンパク質濃度が高くなり、光が散乱される確率が高くなると、散乱光が発生した地点からサンプルセルの外まで伝搬する際に、再び散乱される確率も高くなり、光センサー5に散乱光が到達する確率が低下するからである。従って、散乱光強度の変化から濃度を算出する場合には、直線性が確保できる低濃度域(約15mg/dl以下)において、より高精度な濃度を求めることができる。
【0028】図10において、横軸はタンパク質濃度を、縦軸(対数表示)は試薬混入前後の透過光強度の比を示す。各実測値をスムーズに結んで実線で示し、直線的に変化しているタンパク質濃度15?100mg/dlでの実測値を結んだ直線を延長させて点線で示した。図10で示したように、タンパク質濃度が2mg/dlや5mg/dlのような低濃度の場合には、この点線から外れる場合がある。これは、図3と図5および7を比較すると明らかなように、全出力信号に比べて変化割合が小さすぎるため、各種ノイズの影響を受けやすいからである。このことから、透過光強度の計測値からタンパク質濃度を算出する場合において、各種ノイズの影響を避けるためには、被検溶液が高濃度域(約15mg/dl以上)にあることがより望ましいことが分かる。」

ウ 「【図9】



エ 「【図10】



上記甲3号証の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲3号証には、次の技術(以下「甲3開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「被検溶液中に溶解している溶質の濃度、例えばタンパク質濃度を計測する方法および装置において、
低濃度域(約15mg/dl以下)において、散乱光強度の変化から濃度を求め、
高濃度域(約15mg/dl以上)において、透過光強度の計測値から濃度を算出する、技術。」

(4)甲4号証
本件特許の原出願の優先日前である平成25年(2013年)4月18日に頒布された刊行物である「特開2013-68442号公報」(甲4号証)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、血液等の生体サンプル成分を自動で分析する自動分析装置に関わり、特に複数の光度計を配置した自動分析装置に関わる。」

イ 「【0010】
本発明によれば、1つの反応ディスク上に検出器を複数配置する場合において、全ての検出器の配置を、全ての光源をディスクの内側に配置した場合より、光度計の光源と検出器の1組を隣接する組と逆に配置することで、隣接光源からの迷光を避けられ、より近くに配置可能となる。そのため、同一反応容器の異なる光度計での測定までのタイムロスを低減し、ほぼ同時点での検出結果が得られる。自動分析装置は測定対象物の反応過程を時間を追って計測することで濃度換算をするものであるため、なるべく同時点での検出結果が得られることで、比較・検証が容易となり、より信頼性のある結果が得られる。」

ウ 「【0018】
図2に感度の異なる2つの光度計での検出結果を比較する場合の一例を示す。低濃度領域を検出する光度計の結果201と、高濃度領域を検出する光度計の結果202を重ねてみると、時間t1から時間t2にかけての時間領域203において、高濃度領域検出用の光度計202では時間t1から時間t2時点において、低濃度領域での検出感度は低いため、光量変化を検出するのは難しい。一方、低濃度領域測定用の光度計は、低濃度領域では感度が高いため、時間t1から時間t2にかけての時間領域203の領域において光量変化を検出することが可能である。逆に、高濃度検出用の光度計の光量変化が大きく、低濃度検出用の光度計では光量変化があまり見られないような場合、においても同様に同じポイントでの測定が測定データの信頼性向上には必要である。」

エ 「【0024】
例えば、検出器303は、高濃度領域を検出する光度計であり、検出器305は、当該高濃度領域よりも低い濃度領域を検出する光度計である。この場合には、光源302と304はランプ光源である。また、検出器303を吸光光度計、検出器305を散乱光光度計とすることもできる。この場合には、光源302はランプ光源、光源304はLED光源である。また、光源と検出器を3組設ける場合には、検出器を、高濃度領域用の光度計、低濃度領域用の光度計、散乱光光度計の組合せを用いることができる。」

オ 「【0029】
また、これらの光度計が例えば一方が高濃度領域の測定を目的とする吸光光度計であり、もう一方が低濃度領域の測定を目的とする散乱光光度計である場合、散乱光光度計は高感度であり、吸光光度計より外乱光の影響が大きく、各々の光源の波長が異なるような場合も考えられ、光度計同士の光源が外乱光になることは絶対に避ける必要がある。よって影響の無い範囲まで距離を離すことは必須である。」

カ 「【0030】
一方、本発明の一例である図6の場合は、2つの光度計の光源光404が放射される方向が逆であるため、他方の検出器の検出範囲内にかかることがない。結果、セル1個分離せば配置可能であり、隣り合ったセルを測定できるように配置することが可能である。よって、ほぼ同時に目的のセルを測光することが可能となり、光度計同士の検出値を参考に比較検証することで、信頼性の高い測定に有効であると言える。つまり、2つの光源が、前記複数の反応容器のうち隣接する反応容器内の成分濃度を同時に取得できる位置に配置された自動分析装置とすることができる。」

キ 「【図4】



上記甲4号証の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲4号証には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数の光度計を配置した自動分析装置において、
2つの光源が、複数の反応容器のうち隣接する反応容器内の成分濃度を同時に取得できる位置に配置され、ほぼ同時に目的のセルを測光することができ、
同一反応容器の異なる光度計での測定までのタイムロスを低減し、ほぼ同時点での検出結果が得られ、
一方が高濃度領域の測定を目的とする吸光光度計であり、もう一方が低濃度領域の測定を目的とする散乱光光度計であり、
検出器303を吸光光度計、検出器305を散乱光光度計とし、光源302はランプ光源、光源304はLED光源である、
自動分析装置。」

(5)甲5号証
本件特許の原出願の優先日前である平成20年(2008年)12月11日に頒布された刊行物である「特開2008-298505号公報」(甲5号証)には、以下の技術事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、標的物質の検出方法、混合粒子、および標的物質の検出試薬に関する。」

イ 「【0015】
本発明は、高感度で測定範囲が広く、かつ、測定再現性の優れた標的物質の検出方法、該検出方法に使用することができる混合粒子、および該混合粒子を用いた標的物質の検出試薬を提供する。」

ウ 「【0057】
この場合、混合粒子の凝集を波長400-900nmの光で検出するのが好ましい。ここで、波長400nm未満の光を用いて検出を行うと、粒子による吸光度のベースラインが高くなり、有限な測定範囲がベースラインとして無駄に使用され、十分な測定範囲が得られない場合がある。一方、波長900nmを超える光を用いて検出を行うと、ラテックス凝集による吸光度変化が鈍くなり、高感度検出を行うことができない場合がある。
【0058】
波長400-900nmの光を用いて検出を行うことができる多くの装置が市販されて
いる。波長400-900nmの光を用いて検出を行う装置は信頼性が高く、コストも低いため、好ましい。」

エ 「【0091】
これらのラテックス分散液につき、CRP抗原標準液を用いて検量線を作成して、ラテックス診断薬としての性能を評価した。
装置:日立 7020型自動分析装置
使用波長:570nm、または660nm、測定温度37℃
被検査物質(0-100mg/dlのCRP標準液):3μl
第1試薬(牛血清アルブミン0.1%を含むPBS):200μl
第2試薬(ラテックス分散液):200μl
【0092】
測定には、被検査物質、第1試薬、第2試薬を混合攪拌した後、50秒経過時と200秒経過時の濁度の差(変化量)を計測するレートアッセイ法にて検量線を作成した。化学結合により抗体が固定化されたラテックス粒子を表4に示す。」

上記甲5号証の記載事項を総合勘案すると、甲5号証には、次の技術(以下「甲5開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「被検査物質、第1試薬、第2試薬を混合攪拌した後、50秒経過時と200秒経過時の濁度の差(変化量)を計測するレートアッセイ法にて検量線を作成する際に、混合粒子の凝集を波長400-900nmの光で検出する技術。」

(6)甲6号証
本件特許の原出願の優先日前である昭和59年(1984年)8月に発行された「坪田宜之、「ラテックス凝集反応を利用した測定法」、医用電子と生体工学、1984年8月発行、第22巻第4号、第267-273頁」(甲6号証)には、以下の技術事項が記載されている。

ア 「

」(第271頁右欄)

上記甲6号証の記載事項を総合勘案すると、甲6号証には、次の事項(以下「甲6開示事項」という。)が記載されていると認められる。
「種々のラテックス免疫凝集反応の反応時間は100?400秒である。」

(7)甲7号証
本件特許の原出願の優先日前である平成25年(2013年)4月11日に頒布された刊行物である「特開2013-64705号公報」(甲7号証)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、抗原抗体反応を用いた微粒子凝集反応を散乱光測定する方法及び分析装置に関し、特に自動分析装置上での散乱光測定法に関する。」

イ 「【0024】
これらを用いて評価する場合の、評価指標を考える。図1は、抗原抗体反応による散乱光測定の時間経過を説明する概略図である。散乱光測定部をもつ自動分析装置上では、まず、第一試薬を添加したサンプルにラテックス粒子が分散した第二試薬を混合し(基準状態)、一定時間経った後(凝集状態)の散乱光又は透過光の変化光量を検出する。別途、既知濃度の抗原を用いて変化光量を測定したキャリブレーションデータを用意し、そのデータと比較することで、サンプル中の抗原の濃度を算出する。その際、変化光量は照射光の強度にも比例するため、変化光量を同じく照射光の強度に比例する基準状態の光量で割った光量変化率を定義した。光量変化率が大きいほど、僅かな凝集変化を捉えることが可能である。さらに、透過光と散乱光の光量変化率の比を、光量変化率倍率(散乱光光量変化率/透過光光量変化率)とした。これが大きいほど散乱光測定において高感度であると考えられるため、以下、光量変化率倍率を評価指標として評価した。」

ウ 「【0039】
透過光測定部13は、例えば、ハロゲンランプ光源からの光をセル8に照射し、透過光
を回折格子で分光した後、フォトダイオードアレイで受光する構成とすることができる。受光する波長は、例えば340nm,405nm,450nm,480nm,505nm,546nm,570nm,600nm,660nm,700nm,750nm,800nmである。フォトダイオードアレイで受光した透過光量データは、透過光測定回路24を通じてPC内のデータ格納部に送られる。
【0040】
散乱光測定部16の概略を図6に示す。光源としては例えばLED光源等を用いることができ、LED光源ユニット17からの照射光18を移動中のセル8に照射し、透過光19を透過光受光器20で受光し、散乱光を散乱光受光器22で受光する。LED光源ユニット17では照射光波長として例えば700nmを用いることができる。本実施例では光源としてLEDを用いたが、レーザやキセノンランプ、ハロゲンランプでも良い。散乱光受光器22は、光軸に対して空気中において角度θだけ離れた方向の散乱光21を測定する。角度θは15?35゜の範囲の角度であればよいが、本実施例ではθ=20゜とした。この散乱光受光器22は、セルディスク9の回転によるセル8の移動方向に対して概ね垂直な面内に配置される。ここでは、角度θの基準位置として、セル8内を光が通過する長さの中央部を起点とした。反応液7からの散乱光を受光する手段として、散乱角度の異なる受光器を備えておき、その中の受光器から信号を取得するようにすればよい。」

エ 「【0042】
サンプル1中の被測定物質の濃度定量は、次の手順で行われる。まず、サンプル分注機構10によりサンプルカップ2内のサンプル1をセル8内に一定量分注する。次に、試薬分注機構11により試薬ボトル5内の試薬4をセル8内に一定量分注する。これら分注の際は、サンプルディスク3、試薬ディスク6、セルディスク9は制御回路23の制御下にそれぞれの駆動部によって回転駆動され、サンプルカップ2、試薬ボトル5、セル8を分注機構10,11の分注タイミングに合わせて移動する。続いて、セル8内に分注されたサンプル1と試薬4を攪拌部12により攪拌し、反応液7とする。反応液7からの透過光及び散乱光は、セルディスク9の回転中に、透過光測定部13及び散乱光測定部16の測定位置を通過するたびに測定され、透過光測定回路24、散乱光測定回路25からデータ処理部26のデータ格納部に、反応過程データとして順次蓄積される。一定時間、例えば約10分間測定後、洗浄部14によりセル8内を洗浄し、次の検査項目の分析を行う。その間、必要であれば別の試薬4を試薬分注機構11によりセル8内に追加して分注し、攪拌部12により攪拌し、さらに一定時間測定する。これにより一定の時間間隔を持った反応液7の反応過程データがデータ格納部に格納される。格納された散乱光測定部の単一の受光角度もしくは複数の受光角度の反応過程データから、解析部において一定時間の反応による光量の変化を求め、あらかじめデータ格納部に保持された検量線データに基づき、定量結果が算出され、出力部より表示される。各部の制御・分析に必要なデータは、入力部27からデータ処理部26のデータ格納部に入力される。各種格納部のデータや結果、及びアラームは出力部28により表示等にて出力される。」

上記甲7号証の記載事項を総合勘案すると、甲7号証には、次の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。
「抗原抗体反応を用いた微粒子凝集反応を散乱光測定する方法及び分析装置において、
第一試薬を添加したサンプルにラテックス粒子が分散した第二試薬を混合し(基準状態)、一定時間経った後(凝集状態)の散乱光又は透過光の変化光量を検出する。別途、既知濃度の抗原を用いて変化光量を測定したキャリブレーションデータを用意し、そのデータと比較することで、サンプル中の抗原の濃度を算出し、
反応液7からの透過光及び散乱光は、セルディスク9の回転中に、透過光測定部13及び散乱光測定部16の測定位置を通過するたびに測定され、透過光測定回路24、散乱光測定回路25からデータ処理部26のデータ格納部に、反応過程データとして順次蓄積される。
解析部において一定時間の反応による光量の変化を求め、あらかじめデータ格納部に保持された検量線データに基づき、定量結果が算出され、出力部より表示され、
透過光測定部13は、ハロゲンランプ光源からの光をセル8に照射し、透過光を回折格子で分光した後、フォトダイオードアレイで受光する構成であり、受光する波長は、例えば340nm,405nm,450nm,480nm,505nm,546nm,570nm,600nm,660nm,700nm,750nm,800nmであり、
散乱光測定部16は、LED光源ユニット17からの照射光18を移動中のセル8に照射し、透過光19を透過光受光器20で受光し、散乱光を散乱光受光器22で受光する構成であり、LED光源ユニット17では照射光波長として例えば700nmを用いることができる、
方法及び分析装置。」

(8)甲8号証
本件特許の原出願の優先日前である平成24年(2012年)4月19日に頒布された刊行物である「特開2012-78161号公報」(甲8号証)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体と、試料中に含まれていた測定対象物質との特異的結合反応による測定対象物質の測定における、試料中の測定対象物質の測定方法、試料中の測定対象物質の測定試薬、及び試料の種類による測定値差の改善方法に関する。
本発明は、臨床検査、免疫学及び医学などの生命科学分野、分析化学などの化学分野、食品衛生分野、並びに環境衛生分野等において有用なものである。」

イ 「【0052】
本発明において、測定対象物質としては、SCCA(Squamous Cell Carcinoma Antigen;扁平上皮細胞癌抗原)のアイソフォームであるSCCA1、SCCA2が好ましい。」

ウ 「【0106】
より具体的には、本発明における試料中の測定対象物質の測定試薬は、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体」と測定対象物質との複合体凝集物の生成を、その透過光や散乱光を光学的方法により測るか、又は目視的に測ることにより、試料中に含まれていた測定対象物質の量(濃度)又は存在の有無の測定を、ラテックス比濁法、ラテックス凝集反応法又は粒子凝集反応法等により実施する方法を、その測定原理とするもの等の測定試薬を挙げることができる。特に、ラテックス比濁法によって実施する測定試薬が、より好ましい。
【0107】
なお、前記のラテックス比濁法、ラテックス凝集反応法又は粒子凝集反応法等における測定は、公知の方法等により行うものであってよいが、例えば、光学的方法により測定する場合には、試料と、担体に固定化した「測定対象物質に結合する特異的結合物質」とを反応させ、エンドポイント法又はレート法により、透過光や散乱光を測定すること等により行うもの等を挙げることができる。」

エ 「【実施例1】
【0154】
測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体を試料と接触させた場合、接触させない場合それぞれで試料中のSCCA1の測定を行い、本発明の効果を確かめた。
【0155】
1.測定試薬
(1)第1試薬
(a)第1試薬(担体不含)
2%のBSA、150mMの塩化ナトリウム、150mMのアルギニン塩酸塩、100mMのアルギニン、1%のデキストラン200,000、及び0.1%のアジ化ナトリウムを含む150mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH9.1)を調製し、これを「第1試薬(担体不含)」とした。
【0156】
(b)第1試薬(担体含有)
0.015%のラテックス粒子(平均粒径:0.07μm)〔測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体〕の懸濁液、2%のBSA、150mMの塩化ナトリウム、150mMのアルギニン塩酸塩、100mMのアルギニン、1%のデキストラン200K、及び0.1%のアジ化ナトリウムを含む150mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH9.1)を調製し、これを「第1試薬(担体含有)」とした。
【0157】
(2)第2試薬
(a)抗SCCA1抗体固定化ラテックス粒子懸濁液の調製
4%のラテックス粒子(平均粒径:0.35μm)の懸濁液及び0.3mg/mLの水溶性カルボジイミドを含む20mMのMES緩衝液(pH6.0)と、前記参考例2の(1)で調製した抗SCCA1抗体(SS11G細胞株由来)であって濃度を2mg/mLに調整したものとを、1:1に混合し、5℃にて一晩撹拌した。
【0158】
次に、遠心分離により上清を除去した後、沈殿部に0.2%のBSA、及び0.1%のアジ化ナトリウムを含む20mMのトリス緩衝液(pH8.5)を加え懸濁し、室温下で30分間撹拌後、5℃にて一晩放置し、ブロッキング処理を行った。
【0159】
次に、遠心分離により上清を除去した後、0.2%のBSA、及び0.1%のアジ化ナトリウムを含む20mMトリス緩衝液(pH8.5)にて、波長570nmにおける吸光度が16となるよう(すなわち、100倍希釈後の吸光度が0.16となるよう)に調製したラテックス粒子懸濁液を得た。
これを、抗SCCA1抗体固定化ラテックス粒子懸濁液とした。
【0160】
(b)抗SCCA1及びSCCA2抗体固定化ラテックス粒子懸濁液の調製
4%のラテックス粒子(平均粒径:0.3μm)の懸濁液及び0.3mg/mLの水溶性カルボジイミドを含む20mMのMES緩衝液(pH6.0)と、前記参考例2の(3)で調製した抗SCCA1及びSCCA2抗体(SS14B細胞株由来)であって濃度を2mg/mLに調整したものとを、1:1で混合し、5℃にて一晩撹拌した。
【0161】
次に、遠心分離により上清を除去した後、沈殿部に0.2%のBSA、及び0.1%のアジ化ナトリウムを含む20mMのトリス緩衝液(pH8.5)を加え懸濁し、室温下で
30分間撹拌後、5℃にて一晩放置し、ブロッキング処理を行った。
【0162】
次に、遠心分離により上清を除去した後、0.2%のBSA、及び0.1%のアジ化ナトリウムを含む20mMトリス緩衝液(pH8.5)にて、波長570nmにおける吸光度が16となるよう(すなわち、100倍希釈後の吸光度が0.16となるよう)に調製したラテックス粒子懸濁液を得た。
これを、抗SCCA1及びSCCA2抗体固定化ラテックス粒子懸濁液とした。
【0163】
(c)第2試薬の調製
前記(a)で調製した抗SCCA1抗体固定化ラテックス粒子懸濁液と、前記(b)で調製した抗SCCA1及びSCCA2抗体固定化ラテックス粒子懸濁液とを、1:1で混合し、これらを混合したラテックス粒子懸濁液を得た。
これを、第2試薬とした。
【0164】
2.試料
(1)水系溶媒試料
参考例1の(1)で調製したSCCA1を、4%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて希釈し、下記の水系溶媒試料A2、水系溶媒試料A3、及び水系溶媒試料A4をそれぞれ調製した。
また、この4%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を、SCCA1濃度が0ng/mLである水系溶媒試料A1とした。
【0165】
(a)水系溶媒試料A1(SCCA1濃度:0ng/mL)
(b)水系溶媒試料A2(SCCA1濃度:5ng/mL)
(c)水系溶媒試料A3(SCCA1濃度:15ng/mL)
(d)水系溶媒試料A4(SCCA1濃度:30ng/mL)
【0166】
(2)生体試料
参考例1の(1)で調製したSCCA1を、SCCA1を1ng/mLの濃度で含むヒト血清にて希釈し、下記の生体試料A1、生体試料A2、及び生体試料A3をそれぞれ調製した。
【0167】
(a)生体試料A1(SCCA1濃度:5ng/mL)
(b)生体試料A2(SCCA1濃度:15ng/mL)
(c)生体試料A3(SCCA1濃度:30ng/mL)
【0168】
3.測定
(a) 測定は、免疫比濁測定装置クイックターボ(シノテスト販売)を使用してラテックス比濁法により行った。
まず、測定用セルに、前記1の(1)の(a)の第1試薬(担体不含)の320μLを分注し、これに前記2の(1)の水系溶媒試料A1の16μLを添加した。
【0169】
(b) 次に、これに前記1の(2)の(c)の第2試薬の32μLを添加・攪拌し、抗原抗体反応を行わせ、生じた複合体凝集物に由来する10分後の585nmにおける吸光度を測定した。〔この水系溶媒試料A1の測定値(吸光度)が試薬盲検となる〕
【0170】
(c) 次に、前記(a)における水系溶媒試料A1に替えて、前記2の(1)の水系溶媒試料A2、水系溶媒試料A3又は水系溶媒試料A4をそれぞれ添加する以外は、前記(a)及び(b)の通りに測定を行った。
【0171】
(d) 次に、前記(a)における水系溶媒試料A1に替えて、前記2の(2)の生体試料A1、生体試料A2又は生体試料A3をそれぞれ添加する以外は、前記(a)及び(b)の通りに測定を行った。
【0172】
(e) 次に、前記(a)における第1試薬(担体不含)に替えて、前記1の(1)の(b)の第1試薬(担体含有)を分注する以外は、前記(a)?(d)の通りに測定を行った。
【0173】
(f) 以上の測定結果において、第1試薬として第1試薬(担体不含)を用いた場合の測定結果を表1及び図1に示し、第1試薬として第1試薬(担体含有)を用いた場合の測定結果を表2及び図2に示した。
【0174】
なお、表1及び表2のいずれにおいても、各試料のSCCA1の測定により得た測定値は、前記の585nmにおける吸光度から試薬盲検を差し引いたものを表す。そして、更に、生体試料における測定値を水系溶媒試料における測定値で除した比の値(パーセント)をも示した。
【0175】
また、図1及び図2のいずれにおいても、横軸は試料に含まれるSCCA1の濃度(ng/mL)を表し、縦軸は各試料のSCCA1の測定により得た測定値〔前記の585nmにおける吸光度から試薬盲検を差し引いたもの〕を表す。
そして、図1及び図2のいずれにおいても、試料が水系溶媒試料であるときの測定値を「▲」で表し、試料が生体試料であるときの測定値を「●」で表す。
【0176】
【表1】

【0177】
【表2】

【0178】
4.考察
表1及び図1より、第1試薬として第1試薬(担体不含)を用いた場合、すなわち従来の方法及び試薬においては、生体試料の測定値に負の誤差が生じ、生体試料と水系溶媒試料との間に著しい測定値差が観られることが分かる。
【0179】
これに対して、表2及び図2より、第1試薬として第1試薬(担体含有)を用いた場合、すなわち本発明の方法及び試薬においては、生体試料の測定値に負の誤差が生じておらず、生体試料と水系溶媒試料との間の測定値差が無くなり、改善していることが分かる。
【0180】
これらのことより、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体」と試料との接触の前又はこれと同時に、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」と試料とを接触させることにより、試料の種類による測定値差を改善することができるという本発明の効果が確かめられた。
【0181】
なお、このように試料の種類により測定値差が生じること、及び前記の通り「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」と試料とを接触させることにより当該測定値差を改善できることは、本発明者らが初めて見出したものである。
【0182】
ところで、試料の種類により測定値差が生じるのは、生体試料中に、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体」に吸着する物質が存在し、これにより当該特異的結合反応に負の影響を与えたためと考えられる。そして、前記の通り「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」と試料とを接触させることにより、生体試料に由来する非特異的物質の影響を受けずに測定できるようになったものと推察される。」

オ 「【図1】



カ 「【図2】



上記甲8号証の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲8号証には、次の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されていると認められる。
「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体と、試料中に含まれていた測定対象物質との特異的結合反応による測定対象物質の測定における、試料中の測定対象物質の測定方法において、
「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体」と測定対象物質との複合体凝集物の生成を、その透過光を光学的方法により測ることにより、試料中に含まれていた測定対象物質であるSCCA1の量(濃度)の測定を、ラテックス比濁法により実施する方法であり、
「第1試薬(担体不含)」を、2%のBSA、150mMの塩化ナトリウム、150mMのアルギニン塩酸塩、100mMのアルギニン、1%のデキストラン200,000、及び0.1%のアジ化ナトリウムを含む150mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH9.1)を調製したものとし、
「第1試薬(担体含有)」を、0.015%のラテックス粒子(平均粒径:0.07μm)〔測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体〕の懸濁液、2%のBSA、150mMの塩化ナトリウム、150mMのアルギニン塩酸塩、100mMのアルギニン、1%のデキストラン200K、及び0.1%のアジ化ナトリウムを含む150mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH9.1)を調製したものとし、
第2試薬を、抗SCCA1抗体固定化ラテックス粒子懸濁液と、抗SCCA1及びSCCA2抗体固定化ラテックス粒子懸濁液とを、1:1で混合し、これらを混合したラテックス粒子懸濁液とし、
対象生体試料として、SCCA(Squamous Cell Carcinoma Antigen;扁平上皮細胞癌抗原)のアイソフォームであるSCCA1を、SCCA1を1ng/mLの濃度で含むヒト血清にて希釈し、下記の生体試料A1、生体試料A2、及び生体試料A3とし、
(a)生体試料A1(SCCA1濃度:5ng/mL)
(b)生体試料A2(SCCA1濃度:15ng/mL)
(c)生体試料A3(SCCA1濃度:30ng/mL)
測定は、免疫比濁測定装置クイックターボ(シノテスト販売)を使用してラテックス比濁法により行い、試料に第1試薬(担体不含)または第1試薬(担体含有)と第2試薬とを添加・攪拌し、抗原抗体反応を行わせ、生じた複合体凝集物に由来する10分後の585nmにおける吸光度を測定することを、試料と第1試薬を変えてそれぞれ行い、
「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体」と試料との接触の前又はこれと同時に、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」と試料とを接触させることにより、0?30ng/mLの範囲において試料の種類による測定値差を改善することができる、
方法。」

(9)甲9号証
本件特許の原出願の優先日前である平成24年(2012年)12月6日に頒布された刊行物である「特開2012-237691号公報」(甲9号証)には、以下の技術事項が記載されている。
「【0006】 散乱光測定では、透過光測定に比べ、低濃度領域であっても光量の変化を大きく検出することが可能となる一方、透過光にくらべ光量が少ないためにごみや気泡からのノイズを受けやすいといった問題があった。特に自動分析装置では反応液の温度安定化のためにセル周囲に恒温流体を循環させており、ごみや気泡が存在しやすい。そのような状況下においても高感度に測定できる構成はなかった。」

3.当審の判断
当審で通知した取消理由1(進歩性)について検討する。
当審の取消理由1で対象となっている訂正前の請求項1,2,4及び7のうち、訂正前の請求項1及び2は、上記「第2 1.(1)及び(2)」の訂正により削除され、訂正前の請求項1又は請求項2を引用する訂正前の請求項4については、上記「第2 1.(4)イ」の訂正により削除され、訂正前の請求項1、請求項2、及び請求項1又は請求項2を引用する請求項4、を引用する訂正前の請求項7については、上記「第2 1.(7)イ」の訂正により削除された。
すなわち、当審の取消理由1で対象となった訂正前の請求項1,2,4及び7は訂正により全て削除された。
したがって、当審の取消理由1は解消されている。

4.小括
以上のことから、当審が令和3年1月20日付けで特許権者に通知した取消理由1は解消されており、本件特許3ないし16を取り消す理由とはならない。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.甲号証について
申立人が特許異議申立書において証拠として提示した甲号証は、上記「第4 1.」で示したとおりであり、その内容は「第5 2.」に示したとおりである。

2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人が特許異議申立書において申し立てた理由のうち、上記「第5 1.」の取消理由通知で採用した理由以外の特許異議申立理由の概要は以下のとおりである。
(1)申立人によりなされた異議申立の取消理由1
訂正前の請求項1,2,4?7に係る発明は、サポート要件を満たさないし、実施可能要件を満たさない。

(2)申立人によりなされた異議申立の取消理由2
訂正前の請求項1?7に係る発明は、実施可能要件、サポート要件及び明確性要件を満たさない。

(3)申立人によりなされた異議申立の取消理由3
訂正前の請求項5及び6と、請求項5又は6を引用する請求項7は、甲1?7号証及び甲9号証の開示に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるか、または甲8号証、甲1?7号証及び甲9号証の開示に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

3.当審の判断
(1)本件発明3ないし16と訂正前の請求項1ないし7との関係について
本件発明3,4,7,8,9,11,12,14及び15は、訂正前の請求項3の発明特定事項である「前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短いこと」を発明特定事項として含む発明である。
また、本件発明5,6,10ないし15は、訂正前の請求項5の発明特定事項である「前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いること」を発明特定事項として含む発明である。
さらに、本件発明16は、本件発明3?6及び8?15を引用する発明であるから、上記訂正前の請求項3の発明特定事項または訂正前の請求項5の発明特定事項を含む発明である。

(2)申立人によりなされた異議申立の取消理由1について
ア 申立人は、本件特許発明が、散乱光強度の光量変化を測定する2時点の間隔や、吸光度の光量変化を測定する2時点の間隔を具体的に特定しておらず、本件特許明細書の従来条件(吸光度3,比較例)を含めたあらゆる2時点を包含するものであるから、課題を解決し得ない態様を含むものであり、サポート要件を満たさないし、実施可能要件を満たさない旨主張している。

イ しかしながら、本件特許の課題は本件特許明細書の段落【0007】に「すなわち本発明の目的は、高感度な散乱光強度測定と、ダイナミックレンジ確保に特化した分析条件による吸光度測定を一つの測定で併用し、従来よりも簡便に、高感度かつダイナミックレンジの広い粒子増強免疫凝集測定法を提供することにある。」と記載され、段落【0010】に「本発明により、従来よりも高感度かつダイナミックレンジの広い粒子増強免疫凝集測定が可能である。また粒子増強免疫凝集測定試薬の設計に掛かる手間やコストを省くことができる。」と記載されているように、高感度かつダイナミックレンジの広い粒子増強免疫凝集測定である。この課題は、本件発明3ないし16の発明特定事項である「前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程」により解決されるものである。

ウ よって、散乱光強度の光量変化を測定する2時点の間隔や、吸光度の光量変化を測定する2時点の間隔を具体的に特定しなくても、本件特許の課題は上記本件発明3ないし16の発明特定事項により解決されることから、上記「ア」の申立人の主張は採用することができない。

エ したがって、本件発明3ないし16は、発明の詳細な説明に記載したものであり、発明の詳細な説明は本件発明3ないし16を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号及び同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
以上のことから、取消理由で採用しなかった申立人によりなされた異議申立の取消理由1は採用することができない。

(3)申立人によりなされた異議申立の取消理由2について
ア 申立人は、本件特許発明が、アナライト低濃度域、及びアナライト高濃度域の具体的範囲を特定していない結果、本件特許発明の課題を解決することができないものも包含する発明であるから、課題を解決し得ない態様を含むものであり、サポート要件を満たさないし、実施可能要件を満たさないし、明確性要件を満たさない旨主張している。

イ しかしながら、本件特許明細書の段落【0015】には、アナライトの例が多数記載されており、それぞれのアナライトの濃度測定においては、散乱光強度変化量に基づく検量線を用いる低濃度域、吸光度変化量に基づく検量線を用いる高濃度域は、様々な態様となることは、当業者にとって当然理解しうることである。その低濃度域及び高濃度域をどのような範囲とするかは、アナライトの選択に応じ当業者が過度の負担なく設定しうるものにすぎない。よって、本件特許発明は明確であり、本件特許発明の明細書の記載によりサポートされていると認められる。

ウ さらには、本件特許明細書の段落【0026】ないし【0034】には、アナライトをPSAとして本件特許を実施した実施例が開示されており、本件特許発明が実施できないとは認められない。

エ ゆえに、上記「ア」の申立人の主張は採用することができない。

オ したがって、本件発明3ないし16は発明の詳細な説明に記載したものであり、本件発明3ないし16は明確であり、発明の詳細な説明は本件発明3ないし16を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号、同法同条同項第2号、同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
以上のことから、取消理由で採用しなかった申立人によりなされた異議申立の取消理由2は採用することができない。

(4)申立人によりなされた異議申立の取消理由3について
ア 申立人は、訂正前の請求項5及び6と、請求項5又は6を引用する請求項7は、甲1?7号証及び甲9号証の開示に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるか、または甲8号証、甲1?7号証及び甲9号証の開示に基づいて当業者が容易に想到し得たものである旨主張している。

イ 上記「第2 1.(5)ないし(7)」の訂正により、訂正前の請求項5及び6と、請求項5又は6を引用する請求項7に共通する発明特定事項を備える発明のうち、最も発明特定事項の少ない発明は、訂正前の請求項1と訂正前の請求項5の発明特定事項を備えた本件発明5となっている。

ウ 本件発明5と甲1発明との対比
本件発明5と甲1発明とを比較する。
(ア)甲1発明の「CRP(C反応性蛋白質)」は、本件発明5における「アナライト」に相当する。
(イ)甲1発明の「遺伝子組み換え体CRP(オリエンタル酵母工業社製)を、」「試料希釈液で希釈することにより」「調製して作成」された「試料2」ないし「試料6」は、本件発明5における「アナライトを含む試料溶液」に相当する。
(ウ)甲1発明の「抗CRP抗体固定化ラテックス粒子」は、本件発明5における「アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子」に相当する。
(エ)甲1発明の「抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液の1mLと、0.05%アジ化ナトリウム水溶液の9mLとを混合し、0.080%の「抗CRP抗体固定化ラテックス粒子」を含有する懸濁液を調製して作成し」た「第2試薬」は、本件発明5における「アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液」に相当する。
(オ)甲1発明における測定では、「まず、測定用セル(キュベット)に、」「試料1?7の3μLを添加し」「次に、これらの測定用セル(キュベット)に、」「第1試薬の100μLを添加し、混合し」「これらの測定用セル(キュベット)を、37℃で静置し」「第1試薬の添加後4分34秒目(16ポイント目)に、これらの測定用セル(キュベット)内の混合液に、更に、」「第2試薬の100μLを添加し、混合し」ていることから、甲1発明と本件発明5とは「アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する」点で一致する。
(カ)甲1発明における測定では、「第1試薬の添加後5分09秒目(18ポイント目)に、これらの測定用セル(キュベット)内の混合液の吸光度(主波長570nm、副波長800nm)を試料盲検として測定し」、「そして、これらの測定用セル(キュベット)を、37℃で静置して、反応を行わせ」「これにより、前記のラテックス粒子に固定化された抗CRP抗体と、前記の試料に含まれていたCRPとの抗原抗体反応を行わせ、ラテックス粒子の凝集塊を生成させ」、「前記の第1試薬の添加後9分54秒目(34ポイント目)に、この測定用セル(キュベット)内の反応混合液の吸光度(主波長570nm、副波長800nm)を、前記試料の測定値として測定し」この「測定した吸光度(測定値)から」「試料盲検を差し引き、吸光度差を得」ていることから、甲1発明と本件発明5とは「第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の」「吸光度の変化量を測定する」点で一致する。
(キ)甲1発明における測定では、「この吸光度差は試料に含まれるCRPの量(濃度)に比例したものであ」「り、以上の測定方法で得られた結果より、第1試薬に酪酸を200mM含有させた場合は、試料中のCRP濃度が50mg/dLまでの区間はCRP濃度に対して吸光度差は直線的に上昇して、検量線等を用いて試料中のCRP濃度を測定することができる」ものであることから、甲1発明と本件発明5とは「測定された」「吸光度の変化量を、」「吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける」点で一致する。
(ク)甲1発明における「試料中のCRP(C反応性蛋白質)と、担体粒子に固定化したCRPに結合する特異的結合物質との、特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のCRPを測定する」「測定方法」は、本件発明5における「粒子増強免疫凝集測定法」に相当する。

すると、本件発明5と、甲1発明とは、
「アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(ロ)吸光度の変化量を、吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備する、
粒子増強免疫凝集測定法」
の点で一致し、下記の相違点で相違する。

<相違点1>
本件発明5では、「第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程」と「測定された前記(イ)散乱光強度の変化量」を「散乱光強度変化量に基づく検量線」「を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程」と「前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程」を備え、「前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いる」のに対し、甲1発明は、CRP濃度が50mg/dLまでの区間はCRP濃度に対して吸光度差は直線的に上昇して、検量線等を用いて試料中のCRP濃度を測定することができるが、散乱光強度を測定していないので、そのような本件発明5の発明特定事項を備えていない点。

エ 本件発明5と甲1発明との相違点1の判断
上記「相違点1」について検討する。
(ア)相違点1は、「アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製」してできた「凝集」物の光学的測定、及び光学的測定で得られた結果から試料溶液中のアナライトの濃度を求める手法についての工程に係るものである。
(イ)甲2発明は、「被検溶液中に溶解しているタンパク質を計測する方法において」、試薬を混入して「タンパク質を凝集させることにより被検溶液を混濁させ、混入前後の混濁度の変化からタンパク質濃度を計測する方式」を採用し、「測定は、波長780nmの略平行光2をサンプルセル3及びその内部に収容された被検溶液に照射し、被検溶液を透過した光を検知する光センサー4および被検溶液中を光が伝搬する際に発生した散乱光7を検知する光センサー5により、それぞれ透過光および散乱光が検知されることにより行われ」、「試薬混入前の散乱光強度と混入後300秒経過時の散乱光強度との差」及び「試薬混入前の透過光強度と混入後300秒経過時の透過光強度との比」を測定し、散乱光強度の差とタンパク質濃度、または透過光強度の比とタンパク質濃度、との相関関係の「検量線」を求め、「低濃度域の被検溶液については、散乱光強度の計測値から溶液濃度を算出し、高濃度域の被検溶液については、透過光強度の計測値から溶液濃度を算出することにより、実質的に高精度に測定できる被検溶液の濃度範囲、即ちダイナミックレンジを拡大」する技術(以下「甲2発明開示技術」を開示している。
(ウ)甲2発明開示技術における「タンパク質」は、本件発明5の「アナライト」に相当する。
(エ)甲2発明開示技術における「試薬混入前の散乱光強度と混入後300秒経過時の散乱光強度との差」は、本件発明5の「第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定」したものである「測定された前記(イ)散乱光強度の変化量」に相当するから、甲2発明開示技術と本件発明5とは「第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程」を備える点で共通する。
(オ)甲2発明開示技術では「散乱光強度の差とタンパク質濃度」「との相関関係の検量線」を求め、「低濃度域の被検溶液については、散乱光強度の計測値から溶液濃度を算出し」ていることから、甲2発明開示技術と本件発明5とは、「散乱光強度変化量に基づく検量線」「を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程」を備える点で共通する。
(カ)甲2発明開示技術では、「試薬混入前の散乱光強度と混入後300秒経過時の散乱光強度との差及び試薬混入前の透過光強度と混入後300秒経過時の透過光強度との比を測定し、散乱光強度の差とタンパク質濃度、または透過光強度の比とタンパク質濃度、との相関関係の検量線を求め、低濃度域の被検溶液については、散乱光強度の計測値から溶液濃度を算出し、高濃度域の被検溶液については、透過光強度の計測値から溶液濃度を算出すること」を行っており、「試薬混入前の透過光強度と混入後300秒経過時の透過光強度との比」は吸光度の変化を示すものであるから、甲2発明開示技術と本件発明5とは、「前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程」を備える点で共通する。
(キ)しかしながら、甲2発明開示技術を甲1発明に適用すると、「測定は、波長780nmの略平行光2をサンプルセル3及びその内部に収容された被検溶液に照射し、被検溶液を透過した光を検知する光センサー4および被検溶液中を光が伝搬する際に発生した散乱光7を検知する光センサー5により、それぞれ透過光および散乱光が検知されることにより行われ」ることとなるから、透過光と散乱光は同じ波長(780nm)である単一の光を用いて同時測定されることとなり、本件発明5の「前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いること」は満たさないこととなる。
(ク)ここで、甲7発明に開示された透過光測定のために用いる照射光の波長例と散乱光測定のために用いる照射光の波長例をもとに、甲2発明開示技術の照射光の波長を変更することは、透過光と散乱光を同時測定する技術を変更することとなるので、その変更には阻害要因があり、当業者にとって容易とはいえない。また、甲3ないし7号証及び甲9号証に開示された発明及び技術事項を見ても、甲2発明開示技術を変更することなく本件発明5の「前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いる」ようにする技術は開示されていない。
(ケ)また、甲3ないし7号証及び甲9号証に開示された発明及び技術事項には、本件発明5の上記相違点1に係る構成は、開示も示唆もされていない。
(コ)したがって、本件発明5の上記相違点1に係る構成は、甲2ないし7号証及び甲9号証には開示も示唆もなく、本件発明5の原出願の優先日前において周知のことでもない。
(サ)そして、本件発明5は、上記相違点1に係る構成を備えることにより、従来よりも高感度かつダイナミックレンジの広い粒子増強免疫凝集測定を可能とした効果を奏している。
(シ)ゆえに、本件発明5は、甲1ないし7号証及び甲9号証に記載された発明及び技術事項から、当業者が容易になしえた発明ではない。

オ 本件発明5と甲8発明との対比
本件発明5と甲8発明とを比較する。
(ア)甲8発明の「SCCA(Squamous Cell Carcinoma Antigen;扁平上皮細胞癌抗原)のアイソフォームであるSCCA1」は、本件発明5における「アナライト」に相当する。
(イ)甲8発明の「SCCA(Squamous Cell Carcinoma Antigen;扁平上皮細胞癌抗原)のアイソフォームであるSCCA1を、SCCA1を1ng/mLの濃度で含むヒト血清にて希釈」された「生体試料A1」ないし「生体試料A3」は、本件発明5における「アナライトを含む試料溶液」に相当する。
(ウ)甲8発明の「抗SCCA1抗体固定化ラテックス粒子」は、本件発明5における「アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子」に相当する。
(エ)甲8発明の「抗SCCA1抗体固定化ラテックス粒子懸濁液と、抗SCCA1及びSCCA2抗体固定化ラテックス粒子懸濁液とを、1:1で混合し、これらを混合したラテックス粒子懸濁液とし」た「第2試薬」は、本件発明5における「アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液」に相当する。
(オ)甲8発明における測定では、「ラテックス比濁法により行い、試料に第1試薬(担体不含)または第1試薬(担体含有)と第2試薬とを添加・攪拌し、抗原抗体反応を行わせ、生じた複合体凝集物に由来する10分後の585nmにおける吸光度を測定することを、試料と第1試薬を変えてそれぞれ行う」ことから、甲8発明と本件発明5とは「アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する」点及び「混合液の」「吸光度」「を測定する工程」を備える点で一致する。
(カ)甲8発明では、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体と測定対象物質との複合体凝集物の生成を、その透過光や散乱光を光学的方法により測る」「ことにより、試料中に含まれていた測定対象物質の量(濃度)の測定を、ラテックス比濁法」「により実施する」ことから、甲8発明と本件発明5とは「測定された吸光度を、試料中のアナライトの存在量と関連付ける」点で共通する。
(キ)甲8発明における「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体と測定対象物質との複合体凝集物の生成を、その透過光や散乱光を光学的方法により測る」「ことにより、試料中に含まれていた測定対象物質の量(濃度)の測定を、ラテックス比濁法」「により実施する方法」は、本件発明5における「粒子増強免疫凝集測定法」に相当する。

すると、本件発明5と、甲8発明とは、
「アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
前記混合液の吸光度を測定する工程と、
測定された吸光度を、試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、
を具備する粒子増強免疫凝集測定法。」
の点で一致し、下記の相違点で相違する。

<相違点2>
本件発明5では、「第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備」し、「前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり」、「前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いる」のに対し、甲8発明はそのような発明特定事項を備えていない点。

カ 本件発明5と甲8発明との相違点2の判断
上記「相違点2」について検討する。
(ア)相違点2は、「アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製」してできた「凝集」物の光学的測定、及び光学的測定で得られた結果から試料溶液中のアナライトの濃度を求める手法についての工程に係るものである。
(イ)上記「エ」で検討したとおり、甲2発明は、甲2発明開示技術を開示している。
(ウ)甲2発明開示技術における「タンパク質」は、本件発明5の「アナライト」に相当する。
(エ)甲2発明開示技術における「試薬混入前の散乱光強度と混入後300秒経過時の散乱光強度との差」は、本件発明5の「第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定」したものである「測定された前記(イ)散乱光強度の変化量」に相当するから、甲2発明開示技術と本件発明5とは「第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程」を備える点で共通する。
(オ)甲2発明開示技術における「試薬混入前の透過光強度と混入後300秒経過時の透過光強度との比」は、本件発明5の「第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定」したものである「測定された」「(ロ)吸光度の変化量」に相当するから、甲2発明開示技術と本件発明5とは「第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程」を備える点で共通する。
(カ)甲2発明開示技術では、「散乱光強度の差とタンパク質濃度、または透過光強度の比とタンパク質濃度、との相関関係の検量線を求め、低濃度域の被検溶液については、散乱光強度の計測値から溶液濃度を算出し、高濃度域の被検溶液については、透過光強度の計測値から溶液濃度を算出する」ことから、甲2発明開示技術と本件発明5とは「測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程」を備える点で共通する。
(キ)甲2発明開示技術では、「試薬混入前の散乱光強度と混入後300秒経過時の散乱光強度との差及び試薬混入前の透過光強度と混入後300秒経過時の透過光強度との比を測定し、散乱光強度の差とタンパク質濃度、または透過光強度の比とタンパク質濃度、との相関関係の検量線を求め、低濃度域の被検溶液については、散乱光強度の計測値から溶液濃度を算出し、高濃度域の被検溶液については、透過光強度の計測値から溶液濃度を算出すること」を行っており、「試薬混入前の透過光強度と混入後300秒経過時の透過光強度との比」は吸光度の変化を示すものであるから、甲2発明開示技術と本件発明5とは、「前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程」を備える点で共通する。
(ク)しかしながら、甲2発明開示技術を甲8発明に適用すると、「測定は、波長780nmの略平行光2をサンプルセル3及びその内部に収容された被検溶液に照射し、被検溶液を透過した光を検知する光センサー4および被検溶液中を光が伝搬する際に発生した散乱光7を検知する光センサー5により、それぞれ透過光および散乱光が検知されることにより行われ」ることとなるから、透過光と散乱光は同じ波長(780nm)である単一の光を用いて同時測定されることとなり、本件発明5の「前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いること」は満たさないこととなる。
(ケ)ここで、甲7発明に開示された透過光測定のために用いる照射光の波長例と散乱光測定のために用いる照射光の波長例をもとに、甲2発明開示技術の照射光の波長を変更することは、透過光と散乱光を同時測定する技術を変更することとなるので、その変更には阻害要因があり、当業者にとって容易とはいえない。また、甲1,3ないし7号証及び甲9号証に開示された発明及び技術事項を見ても、甲2発明開示技術を変更することなく本件発明5の「前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いる」ようにする技術は開示されていない。
(コ)また、甲3ないし7号証及び甲9号証に開示された発明及び技術事項には、本件発明5の上記相違点2に係る構成は、開示も示唆もされていない。
(サ)したがって、本件発明5の上記相違点2に係る構成は、甲8号証、甲1ないし7号証及び甲9号証には開示も示唆もなく、本件発明5の原出願の優先日前において周知のことでもない。
(シ)そして、本件発明5は、上記相違点2に係る構成を備えることにより、従来よりも高感度かつダイナミックレンジの広い粒子増強免疫凝集測定を可能とした効果を奏している。
(ス)ゆえに、本件発明5は、甲8号証、甲1ないし7号証及び甲9号証に記載された発明及び技術事項から、当業者が容易になしえた発明ではない。

キ 本件発明6,10、13について
訂正前の請求項5又は6に対応する本件発明6,10,13は、本件発明5の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記「ウ」ないし「カ」で検討したのと同様の理由で、甲1ないし7号証及び甲9号証に記載された発明及び技術事項から、当業者が容易になしえた発明ではないし、甲8号証、甲1ないし7号証及び甲9号証に記載された発明及び技術事項から、当業者が容易になしえた発明ではない。

ク 本件発明16について
訂正前の請求項5又は6を引用する請求項7に対応する、本件発明5,6,10,13を引用する本件発明16は、本件発明5の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記「ウ」ないし「カ」で検討したのと同様の理由で、甲1ないし7号証及び甲9号証に記載された発明及び技術事項から、当業者が容易になしえた発明ではないし、甲8号証、甲1ないし7号証及び甲9号証に記載された発明及び技術事項から、当業者が容易になしえた発明ではない。

ケ 小括
したがって、本件発明5,6,10,13及び本件発明5,6,10,13を引用する本件発明16は、甲1ないし7号証及び甲9号証に記載された発明及び技術事項から、当業者が容易になしえた発明ではないし、甲8号証、甲1ないし7号証及び甲9号証に記載された発明及び技術事項から、当業者が容易になしえた発明ではないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない発明である。
以上のことから、取消理由で採用しなかった申立人によりなされた異議申立の取消理由3は採用することができない。

4.取消理由通知において採用しなかった申立人によりなされた異議申立の取消理由1ないし3についてのまとめ
以上の検討のとおり、取消理由で採用しなかった申立人によりなされた異議申立の取消理由1ないし3は採用することができない。したがって、当審が取消理由通知において採用しなかった上記3つの特許異議申立理由は、本件発明3ないし16に係る特許を取り消す理由とはならない。

第7 令和3年6月14日付け意見書における申立人の主張について
申立人は、令和3年6月14日付け意見書において、異議申立書の理由3に含まれる本件特許発明の取消理由として、本件発明5,6,10,13及び16に対し、甲1号証、甲4号証及び甲7号証に基づく進歩性欠如を主張している。
また、申立人は同意見書において、異議申立書の理由1に含まれる本件特許発明の取消理由として、本件発明5,6,10,13及び16に対し、実施可能要件違反及びサポート要件違反を主張している。
これについて以下に検討する。

(1)異議申立書の理由3について
申立人が令和2年10月1日に提出した特許異議申立書の理由3には、上記「第4 2.(3)」で当該理由3の要旨を述べたとおり、甲1号証を主引例とした進歩性欠如がある。
上記理由3では、本件発明5にあたる訂正前の請求項5については、訂正前の請求項1が甲1ないし4号証から容易であり、訂正前の請求項5が引用する訂正前の請求項1以外の発明特定事項については甲7号証から容易である旨主張している。

ア 本件発明5と甲1発明との対比・判断
本件発明5と甲1発明との対比・判断は、上記「第6 3.(4)ウ 及び エ」で検討したとおりであり、本件発明5は、甲1ないし7号証及び甲9号証に記載された発明及び技術事項から、当業者が容易になしえた発明ではない。

イ 令和3年6月14日付け意見書における申立人の主張について
申立人は、令和3年6月14日付け意見書において、甲1号証に記載された発明に甲4号証に記載された発明及び甲7号証に記載された技術を適用して、本件発明5,6,10,13及び16を導き出すことは、当業者にとって容易になしえたことである旨主張していることから、これについて検討する。
(ア)本件発明5と甲1発明との相違点1は、上記「第6 3.(4)ウ」で検討したとおりである。

(イ)甲4号証に記載された発明である甲4発明は、上記「第5 2.(4)」で検討したとおりであり、甲7号証に記載された発明である甲7発明は、上記「第5 2.(7)」で検討したとおりである。

(ウ)甲4発明は、「高濃度領域の測定を目的とする吸光光度計」と「低濃度領域の測定を目的とする散乱光光度計」を備え「ほぼ同時に目的のセルを測光することがで」きる「自動分析装置」で「検出器303を吸光光度計、検出器305を散乱光光度計とし、光源302はランプ光源、光源304はLED光源である」自動分析装置である。しかしながら、吸光光度計や散乱光光度計を用いてどのような測定手順及びデータ処理で濃度を測定するかについては開示されていない。

(エ)甲7発明は、「LED光源ユニット17では照射光波長として例えば700nm」を用いて散乱光測定部16で散乱光測定を行い、「570nm,800nm」の受光波長を用いて透過光測定部13で透過光測定を行う技術を開示している。

(オ)よって、甲1発明に甲4発明を適用する際に甲7発明の開示をもとに、透過光測定と散乱光測定の波長を設定して上記相違点1の「前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いる」という構成を備えるようにすることは、当業者ならば容易になしえたこととは認められる。しかしながら、その場合においても、上記相違点1の「第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程」と「測定された前記(イ)散乱光強度の変化量」を「散乱光強度変化量に基づく検量線」「を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程」と「前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程」については、本件発明5と相違したままである。

(カ)なお、甲2号証には、「第6 3.(4)エ」で検討したとおり、甲2発明開示技術が開示されているが、この技術は、単一波長(780nm)光をサンプルセルに照射し透過光と散乱光を同時測定する測定手法において、試薬混入前の散乱光強度と混入後300秒経過時の散乱光強度との差及び試薬混入前の透過光強度と混入後300秒経過時の透過光強度との比を測定し、散乱光強度の差とタンパク質濃度、または透過光強度の比とタンパク質濃度、との相関関係の検量線を求め、低濃度域の被検溶液については、散乱光強度の計測値から溶液濃度を算出し、高濃度域の被検溶液については、透過光強度の計測値から溶液濃度を算出する、という技術であるから、散乱光測定と吸光度測定を異なる波長域で行う甲4発明の技術とは異なっている。よって、甲1発明に甲4発明を適用した後に甲2発明開示技術を適用することは、甲4発明の測定技術をさらに変更することとなり、阻害要因があるため適用することはできない。

(キ)さらに、甲1ないし9号証の開示内容からは、上記相違点1に関する技術が、本件特許の原出願の優先日前に周知の技術であるとは認められない。

(ク)そして、本件発明5は、上記相違点1に係る構成を備えることにより、従来よりも高感度かつダイナミックレンジの広い粒子増強免疫凝集測定を可能とした効果を奏している。

(ケ)以上のことから、本件発明5は、甲1号証、甲4号証及び甲7号証に開示された発明及び技術事項から当業者が容易になしえた発明とはいえないし、本件発明5の発明特定事項を包含する本件発明6,10,13及び16も上記「ア ないし ク」と同様の検討から、甲1号証、甲4号証及び甲7号証に開示された発明及び技術事項から当業者が容易になしえた発明とはいえない。

(コ)したがって、申立人の上記主張は採用することができない。

(2)異議申立書の理由1について
ア 異議申立書の理由1の概要及び検討結果について
申立人が令和2年10月1日に提出した特許異議申立書の理由1には、上記「第4 2(1)」で当該理由1の要旨を述べたとおりである。
また、上記理由1については、上記「第6 3.(2)」で検討したとおりであり、申立人の主張を採用することはできない。

イ 令和3年6月14日付け意見書における申立人の主張について
申立人は、令和3年6月14日付け意見書において、令和2年10月1日に提出した特許異議申立書の理由1でも述べたとおり、本願明細書の比較例である「吸光度3」が本件訂正発明5、6、10、13及び16に包含されていることにより、実施可能要件及びサポート要件を満たさない旨主張している。これについて以下に検討する。

(ア)本件特許明細書における吸光度3の比較例については、段落【0032】及び【図1】に以下の記載がある。(下線は当審が付与した。)
「【0032】(結果2 ダイナミックレンジ) 測光間隔を変動させた次の測定条件、散乱光強度(測光間隔 R2添加約30秒後(第1の時点)から270秒間(第2の時点))、吸光度1(本発明の条件1:測光間隔 R2添加約30秒後(第3の時点a)から約90秒間(第4の時点a))、吸光度2(本発明の条件2:測光間隔 R2添加約15秒後(第3の時点b)から約90秒間(第4の時点b))、吸光度3(従来条件(比較例):測光間隔 R2添加約30秒後(比較例第3の時点)から270秒間(比較例第4の時点))、でダイナミックレンジを比較した(図1)。 散乱光強度測定(-●-)におけるダイナミックレンジは狭くPSA濃度25ng/mLをピークとして変化量は顕著に低下した。従来条件(比較例)である吸光度3(-×-)も同様であったが、高濃度域の光量変化の低下の度合いは緩やかであった。本発明の吸光度条件1(-□-)、2(-△-)では濃度依存的に高濃度域まで光量変化の上昇が認められ、広いダイナミックレンジを得られることが確認された。」
「【図1】



(イ)上記記載から、吸光度3は、散乱光強度測定と同様、PSA濃度25ng/mLをピークとして変化量は低下したが、散乱光強度測定よりは高濃度域の光量変化の低下の度合いは緩やかであったことが読み取れる。

(ウ)上記「(イ)」より、吸光度3においても、PSA濃度25ng/mLまでなら、PSA濃度と光量変化が相関があると認められる。

(エ)また、本願明細書の段落【0034】には以下の記載がある。
「【0034】(結果4 相関性) 本発明の粒子増強免疫凝集測定法でPSA濃度既知のPSA陽性検体を測定し低濃度域(?10ng/mL以下)は散乱光強度による測定値(●)を、高濃度域(10.1ng/mL以上)は吸光度2による測定値(△)を参照して相関性を確認した(図3)。 相関性は良好であり、本発明によって高感度かつダイナミックレンジの広い粒子増強免疫凝集測定法が達成された。」

(オ)上記記載から、本件特許明細書の実施例では、PSA濃度が10ng/mL以下である領域を「低濃度域」と、10.1ng/mL以上である領域を「高濃度域」と認識していることが読み取れる。

(カ)すると、上記「(ウ)」及び「(オ)」から、吸光度3の場合においても、PSA濃度が10.1ng/mL以上25ng/mL以下の高濃度域において、吸光度3を用いることによりPSA濃度を光量変化から検量線を用いて求めることができることが読み取れる。すなわち、高濃度域において、吸光度3を用いても25ng/mL以下まではダイナミックレンジを広げることができると読み取れる。

(キ)したがって、本件発明5、6、10、13及び16の発明特定事項である「アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程」において、吸光度3を用いた吸光度変化量により、25ng/mL以下までダイナミックレンジを広げて「高感度かつダイナミックレンジの広い粒子増強免疫凝集測定法」を達成することができると認められる。

(ク)以上のことから、本件発明5、6、10、13及び16は、吸光度3を用いた場合でも、課題を解決できる発明であり、吸光度3を除外するような発明特定事項を備えなくても、サポート要件を満たしていると認められる。同様に、吸光度3を用いた場合でも本件発明を実施して課題を解決できることから、実施可能要件を満たしていると認められる。

(ケ)したがって、申立人の上記主張は採用することができない。

(3)小括
以上のことから、令和3年6月14日付け意見書における申立人の主張は採用することができない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項3ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項3ないし16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1及び2に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1及び2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短い
ことを特徴とする測定法。
【請求項4】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(イ)及び前記(ロ)の測定を共通の波長で行うことを特徴とする測定法。
【請求項5】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項6】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用い、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定波長に、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも短い主波長と、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも長い副波長、の2波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項7】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(イ)及び前記(ロ)の変化量測定を、550から900nmの波長の範囲内でおこなうことを特徴とする測定法。
【請求項8】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記第1、第2、第3、第4の時点は、前記混合液の調製開始から1000秒後までの間から選ばれるものであり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短いことを特徴とする測定法。
【請求項9】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記第1、第2、第3、第4の時点は、前記混合液の調製開始から1000秒後までの間から選ばれるものであり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(イ)及び前記(ロ)の測定を共通の波長で行うことを特徴とする測定法。
【請求項10】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記第1、第2、第3、第4の時点は、前記混合液の調製開始から1000秒後までの間から選ばれるものであり、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項11】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項12】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記第1、第2、第3、第4の時点は、前記混合液の調製開始から1000秒後までの間から選ばれるものであり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項13】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記第1、第2、第3、第4の時点は、前記混合液の調製開始から1000秒後までの間から選ばれるものであり、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用い、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定波長に、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも短い主波長と、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも長い副波長、の2波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項14】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用い、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定波長に、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも短い主波長と、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも長い副波長、の2波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項15】
アナライトを含む試料溶液と、アナライトとの結合パートナーを担持した不溶性担体粒子を含む溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
第1、第2の時点間の散乱光強度差から前記混合液の(イ)散乱光強度の変化量を測定する工程と、
第3、第4の時点間の吸光度差から前記混合液の(ロ)吸光度の変化量を測定する工程と、
測定された前記(イ)散乱光強度の変化量および前記(ロ)吸光度の変化量を、散乱光強度変化量に基づく検量線および吸光度変化量に基づく検量線を用いて試料中のアナライトの存在量と関連付ける工程と、を具備することを特徴とする粒子増強免疫凝集測定法であって、
前記関連付ける工程が、アナライト低濃度域は、前記散乱光強度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出し、アナライト高濃度域は、前記吸光度変化量に基づく検量線に基づき前記濃度を算出する工程であり、
前記第1、第2、第3、第4の時点は、前記混合液の調製開始から1000秒後までの間から選ばれるものであり、
前記(ロ)を算出する2時点の間隔は、前記(イ)を算出する2時点よりも間隔が短く、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定に、前記(イ)散乱光強度の変化量を測定する波長に対して±25%の範囲内にある別の波長を用い、
前記(ロ)吸光度の変化量の測定波長に、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも短い主波長と、前記(イ)散乱光強度の変化量の測定波長よりも長い副波長、の2波長を用いることを特徴とする測定法。
【請求項16】
前記(イ)及び前記(ロ)の変化量測定を、550から900nmの波長の範囲内でおこなうことを特徴とする、請求項3?6及び8?15のいずれかに記載の測定法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-07-19 
出願番号 特願2018-226654(P2018-226654)
審決分類 P 1 651・ 857- YAA (G01N)
P 1 651・ 121- YAA (G01N)
P 1 651・ 537- YAA (G01N)
P 1 651・ 536- YAA (G01N)
P 1 651・ 851- YAA (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ▲高▼場 正光  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 伊藤 幸仙
渡戸 正義
登録日 2020-03-12 
登録番号 特許第6675104号(P6675104)
権利者 株式会社日立ハイテク 積水メディカル株式会社
発明の名称 免疫凝集測定法  
代理人 特許業務法人 もえぎ特許事務所  
代理人 特許業務法人 もえぎ特許事務所  
代理人 特許業務法人もえぎ特許事務所  

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