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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1378322
審判番号 不服2020-9205  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-01 
確定日 2021-10-15 
事件の表示 特願2016- 2996「表示制御装置及びその制御方法、プログラム、並びに記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月13日出願公開、特開2017-123125、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月8日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 1月10日 手続補正書の提出
令和 元年 8月27日付け 拒絶理由通知書
令和 元年10月28日付け 面接記録
令和 元年10月31日 意見書、手続補正書の提出
令和 2年 3月30日付け 拒絶査定
令和 2年 7月 1日 審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年3月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1ないし17に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2013-080513号公報
2.特開2002-311820号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし17に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明17」という。)は、令和元年10月31日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
表示手段へのタッチ操作を検出可能なタッチ検出手段と、
前記表示手段に対する複数箇所へのマルチタッチ操作を検出した場合に、当該マルチタッチ操作の前から継続するタッチ操作による前記表示手段に対するタッチ位置の移動を伴う所定のタッチ操作を検出していなかった場合には、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、当該マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置を基準として拡大または縮小するように制御し、
前記所定のタッチ操作を検出し、前記所定のタッチ操作から少なくとも1つのタッチが離されないまま、前記表示手段に対するマルチタッチ操作を検出した場合には、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、前記マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置ではなく、前記表示対象の表示範囲の中央の位置を基準として拡大または縮小するように制御する表示制御手段と、を有することを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】
表示手段へのタッチ操作を検出可能なタッチ検出手段と、
タッチ操作による前記表示手段に対するタッチ位置の移動を伴う所定のタッチ操作を検出してから所定時間以内でない場合に、前記表示手段に対する複数箇所へのマルチタッチ操作を検出した場合に、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、当該マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置を基準として拡大または縮小するように制御し、
前記所定のタッチ操作を検出してから所定時間以内に、前記表示手段に対するマルチタッチ操作を検出した場合には、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、前記マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置ではなく、前記表示対象の表示範囲の中央の位置を基準として拡大または縮小するように制御する表示制御手段と、を有することを特徴とする表示制御装置。
【請求項3】
前記マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置は、前記マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置の中央であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記表示対象の端部が前記表示手段の表示範囲の端部に近い場合には、前記所定のタッチ操作から少なくとも1つのタッチが離されないまま、前記表示手段に対するマルチタッチ操作を検出したことに応じて、当該表示対象の端部に基づく位置を基準として拡大または縮小するように制御することを特徴とする請求項3に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記所定のタッチ操作は、タッチしたまま所定量以上移動する操作であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記所定のタッチ操作は、1箇所へのタッチ操作で行われる操作であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記表示制御手段は、前記所定のタッチ操作に応じて、前記表示手段の表示領域における前記表示対象の表示範囲を変更することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項8】
前記表示制御手段は、前記マルチタッチ操作を検出したことに応じて、拡大または縮小する基準位置を表示することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項9】
前記表示対象は画像であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項10】
前記表示対象は文書、Webページおよび地図の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項11】
前記表示制御装置は撮像装置であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項12】
前記表示制御装置は携帯電話端末、パーソナルコンピュータ、タブレット端末の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項13】
第1のタッチ操作で前記所定のタッチ操作が行われた後、1箇所もタッチされていない状態となり、その後に行われた第2のタッチ操作が前記第1のタッチ操作の終了から所定時間内であり、当該第2のタッチ操作によるマルチタッチ操作を検出した場合には、前記表示制御手段は、当該第2のタッチ操作による前記所定のタッチ操作を検出していなくとも、当該第2のタッチ操作によるマルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置ではなく、前記表示対象の表示範囲の中央の位置を基準として拡大または縮小するように制御することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項14】
表示手段へのタッチ操作を検出するステップと、
前記表示手段に対する複数箇所へのマルチタッチ操作を検出した場合に、当該マルチタッチ操作の前から継続するタッチ操作による前記表示手段に対するタッチ位置の移動を伴う所定のタッチ操作を検出していなかった場合には、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、当該マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置を基準として拡大または縮小するように制御し、
前記所定のタッチ操作を検出し、前記所定のタッチ操作から少なくとも1つのタッチが離されないまま、前記表示手段に対するマルチタッチ操作を検出した場合には、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、前記マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置ではなく、前記表示対象の表示範囲の中央の位置を基準として拡大または縮小するように制御するステップと、を有することを特徴とする表示制御装置の制御方法。
【請求項15】
表示手段へのタッチ操作を検出するステップと、
タッチ操作による前記表示手段に対するタッチ位置の移動を伴う所定のタッチ操作を検出してから所定時間以内でない場合に、前記表示手段に対する複数箇所へのマルチタッチ操作を検出した場合に、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、当該マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置を基準として拡大または縮小するように制御し、
前記所定のタッチ操作を検出してから所定時間以内に、前記表示手段に対するマルチタッチ操作を検出した場合には、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、前記マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置ではなく、前記表示対象の表示範囲の中央の位置を基準として拡大または縮小するように制御するステップと、を有することを特徴とする表示制御装置の制御方法。
【請求項16】
コンピュータを、請求項1から13のいずれか1項に記載された表示制御装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項17】
コンピュータを、請求項1から13のいずれか1項に記載された表示制御装置の各手段として機能させるためのプログラムを格納したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。」

第4 引用文献、引用発明等
1 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の記載がされている。

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地図上に地点を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチパネルに画像が表示されている状態において、ユーザが指でタッチパネル上の2点に接触し、その2点の少なくとも一方を移動させると、タッチパネルにおいてその2点に表示されている部分が指先について行くように、タッチパネルの画像が拡大されたり、移動したり、回転したりする技術が存在する。」

「【0022】
第7の態様:
また、以下のような構成を採用することが好ましい。地図表示装置であって、
地図画像を表示する表示部と
前記表示部に地図画像を表示中に2カ所の部分を接触された状態で移動を検出する検出部と、
前記検出部が移動を検出すると予め決められた所定の地点を基準点として地図画像の表示を制御する制御手段を備えたことを特徴とする地図表示装置である。
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、地図表示方法および地図表示装置、画像表示方法および画像表示装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。」

「【0024】
A.第1実施例:
A1.全体構成:
図1は、本発明の第1実施例である地図表示システムのハードウェア構成を示す図である。第1実施例の地図表示システムは、携帯電話200と、サーバ170と、を含む。
【0025】
携帯電話200は、GPSユニット201と、表示パネル202と、音声出力部203と、振動機構204と、通信部205と、コマンド入力部206と、主制御部210と、通話制御部220とを有している。
【0026】
GPSユニット201は、GPS(Global Positioning System/全地球測位システム)の衛星からの電波を受信するためのアンテナを含むユニットである。GPSのアンテナが受信する電波に基づいて、GPSユニット201は、携帯電話200の現在位置を表す現在位置情報を生成することができる。
【0027】
表示パネル202は、画像を表示することができる液晶ディスプレイである。表示パネル202は、表示している画像に応じてパネルの一部に接触されることによりユーザからの指示を受けとることができるタッチパネルとして機能する。たとえば、ユーザは、表示パネル202の表面を指で押したり、表示パネル202の表面に接触した状態で指を動かすことにより、画像の表示を制御するための操作を行うことができる。なお、本明細書において、「画像」とは、狭義の画像のほか、文字、記号等を含む概念である。すなわち、本明細書において、「画像」とは、2次元で表現できる任意の対象を含む。
【0028】
なお、表示パネル202としては、感圧式、静電方式など、様々な方式のタッチパネルを採用することができる。たとえば、「抵抗膜方式(アナログ抵抗膜方式)」、「静電容量方式」、ガラスなどの表面を物理的な振動として伝播する表面弾性波を使用した「超音波表面弾性波方式」、ガラス表面を伝播する音響波を利用してタッチ位置を検出する「音響パルス認識方式」、タッチ面のタッチによる物理的な振動を検出し位置を求める「振動検出方式(DST)」、表示パネルの表面周囲の縦壁および横壁に発光部と受光部とを設け光が遮られた部分を検出する「赤外線遮光方式」、磁界を発生できる特別なペンによりタッチすることでパネル側でその電磁エネルギーを受け取りペンの位置を検出する「電磁誘導方式」、画面近くの主にコーナーに配置された複数個のイメージセンサでタッチする指などの画像を撮影しその画像解析結果からタッチ位置とタッチしたことを判断する「画像認識方式」、静電容量が変化する物体がセンサ電極に近接すると電極の静電容量が増加する特性を利用した「静電センサ方式」、LCD自体が直接イメージセンサとなる「光センサ内蔵LCD方式」など、様々な方式を採用することができる。」

「【0022】
第7の態様:
また、以下のような構成を採用することが好ましい。地図表示装置であって、
地図画像を表示する表示部と
前記表示部に地図画像を表示中に2カ所の部分を接触された状態で移動を検出する検出部と、
前記検出部が移動を検出すると予め決められた所定の地点を基準点として地図画像の表示を制御する制御手段を備えたことを特徴とする地図表示装置である。
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、地図表示方法および地図表示装置、画像表示方法および画像表示装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。」

「【0038】
A2.地図の表示:
図2は、本実施例において地図を表示する際の処理を示すフローチャートである。なお、携帯電話200においては、図2の処理と並行して、地点検索や経路案内などの様々な処理が行われている。すなわち、図2の処理は、携帯電話200において行われる様々な処理のうち、地図画像を表示している表示パネル202の2カ所の部分を同時に接触されることによってユーザから指示が入力された場合の、地図画像の表示のし方に関する処理である。
【0039】
地図画像を表示している表示パネル202の2カ所の部分を同時に接触されると、主制御部210は、図2の処理を開始する。ステップS15では、主制御部210は、地点データベース177を利用して行われた検索の結果、得られた地点(以下、「検索地点」という)が、表示パネル202において地図画像上に表示されているか否か、およびGPSユニット201を介して得られた現在位置が表示パネル202において地図画像上に表示されているか否かを判定する。表示パネル202上に検索地点も現在位置も表示されていない場合には、処理は、ステップS20に進む。検索地点または現在位置が表示されている場合には、処理は、ステップS45に進む。主制御部210が図2のステップS20?S35の処理を行う動作状態を「第1の動作モード」と呼ぶ。主制御部210が図2のステップS45?S85の処理を行う動作状態を「第2の動作モード」と呼ぶ。
【0040】
図3は、ステップS20における処理を説明する図である。図3において、表示パネル202の画像を表示できる領域DAには、地図画像DM1が表示されている。地図画像DM1は、道路の表示R01?R05を含む。なお、図3においては破線で示されている現在位置PP1は、後に説明するステップS35?S70の処理との比較のために示されているものであり、実際には表示パネル202上には表示されていない。
【0041】
図2のステップS20において、ユーザが、たとえば親指と人差し指で、それぞれ表示パネル202上の2カ所の部分に接触したものとする。親指が押した部分を第1の部分F11とし、人差し指が押した部分を第2の部分F21とする。そして、ユーザは、表示パネル202に接触した状態で親指と人差し指をスライドさせ、それぞれ図3の第3の部分F12と、第4の部分F22とに移動させたものとする。なお、ここでは、表示パネル202に接触された2カ所がいずれも移動する場合について説明するが、いずれか一方のみが移動する場合についても同様の処理が行われる。
【0042】
図3の例において、親指で第1の部分F11に接触し、人差し指で第2の部分F21に接触している状態を「第1の状態」とする。そして、親指で第3の部分F12に接触し、人差し指で第4の部分F22に接触している状態を「第2の状態」とする。図3において、第1の状態に対応する第1の部分F11および第2の部分F12、ならびにそれらの中心点を結ぶ線分Ls1を破線で示す。また、第2の状態に対応する第3の部分F21および第4の部分F22、ならびにそれらの中心点を結ぶ線分Ls2を一点鎖線で示す。また、技術の理解を容易にするため、以下では、ユーザの親指が表示パネル202に接触している部分を、「親指部分」と略称する。ユーザの人差し指が表示パネル202に接触している部分を、「人差し指部分」と略称する。
【0043】
第2の状態においては、表示パネル202には、第1の状態において表示されていた図3の画像とは異なる画像が表示される。しかし、ここでは、技術の理解を容易にするために、まず、図3を使用してユーザによる操作を説明し、その後、ユーザの操作に応じた主制御部210による画像の表示について説明する。
【0044】
主制御部210は、ユーザによって押される各部分(第1?第4の部分F11,F21,F12,F22)について、所定の基準値以上の圧力で押されている領域の重心を決定する。この重心を、本明細書では便宜的に「中心点」と呼ぶ。図3において、第1?第4の部分F11,F21,F12,F22の中心点をそれぞれ十字で示す。
【0045】
また、主制御部210は、親指部分の中心点と人差し指部分の中心点の中点を決定する。第1の状態において、親指部分F11の中心点と人差し指部分F21の中心点の中点は、Pc1である。第2の状態において、親指部分F12の中心点と人差し指部分F22の中心点の中点は、Pc2である。
【0046】
さらに、主制御部210は、親指部分の中心点と人差し指部分の中心点を両端とする線分の長さおよび角度変位を決定する。第1の状態において、親指部分F11の中心点と人差し指部分F21の中心点を両端とする線分Ls1の長さはL1である。第2の状態において、親指部分F12の中心点と人差し指部分F22の中心点を両端とする線分Ls2の長さはL2である。線分Ls2は、線分Ls1に対して反時計回りにθ1の角度をなす。ステップS20において、主制御部210は、これらの各パラメータを計算する。
【0047】
図4は、第2の状態において表示パネル202に表示される地図画像DM2を示す図である。表示パネル202を介してユーザによる上記の操作(図3および図4において、第1?第4の部分F11,F21,F12,F22参照)を受け取った主制御部210は、第1の状態において、親指部分F11と人差し指部分F21にそれぞれ表示されていた地図上の地点と同じ地点が、第2の状態において親指部分F12と人差し指部分F22にそれぞれ表示されるように、地図画像の表示を制御する。その結果、第2の状態において、表示パネル202には、図4の示す地図画像DM2が表示される。すなわち、地図画像DM2における親指部分F12の中心点の地点は、地図画像DM1における親指部分F11の中心点の地点である。地図画像DM2における人差し指部分F21の中心点の地点は、地図画像DM1における人差し指部分F22の中心点の地点である。
【0048】
地図画像DM2は、たとえば、(i)図3の地図画像DM1において、親指部分F11と人差し指部分F21との中点Pc1の位置にあった地図上の地点が、親指部分F12と人差し指部分F22との中点Pc2に位置するように地図画像DM1を移動させ、(ii)その地点を中心に、線分Ls2の線分Ls1に対する回転の向きにθ1だけ地図画像DM1を回転させ(図3および図4の矢印Aθ1参照)、さらに、(iii)その地図画像を中点Pc2を中心として(L2/L1)倍することにより得ることができる。
【0049】
ただし、第2の状態において表示される画像DM2は、単純に上記(i)?(iii)の処理を行って得られるわけではない。すなわち、主制御部210は、上記の処理によって、第2の状態において画像表示領域DAに表示すべき地図画像の縮尺および範囲(上記(i)および(iii)参照)と向き(上記(ii)参照)とを決定する。そのようにして決定された表示すべき地図画像の縮尺と範囲と向きとに応じて、主制御部210は、地図画像DM2を新たに生成する。主制御部210は、画像表示領域DA内に地図画像が表示されるように、必要に応じてサーバ170から地図データベース178内の地図画像を新たに取得する。第2の状態において表示すべき地図画像DM2が文字を含む場合であって、それらの文字が地図画像DM1において表示されていた要素と同じ要素を示すものである場合には、それらの文字は地図画像DM1の場合と同じ大きさで表示される。また、文字の並びの向きは、地図画像中で表示される要素の向きに応じて決定される。また、地図画像中に含まれる道路の幅は、画像DM2の生成に際して、単純に拡大または縮小されるわけではなく、地図画像の縮尺に応じて所定の幅で表示される。
【0050】
本明細書において「地図画像を拡大する」、「地図画像を縮小する」、「地図画像を回転する」、「地図画像を移動させる」という場合には、上記のように、新たに表示すべき地図画像の縮尺と範囲と向きとを決定し、それら縮尺と範囲と向きに応じた新たな地図画像を生成または取得することを意味する。
【0051】
図2のステップS20においては、ユーザが表示パネル202の2カ所の部分に接触して表示パネル202の操作を行った場合、以上のような処理が行われる。なお、ここでは、図3の状態と図4の状態との比較で画像の説明を行ったが、実際には、上記のような地図画像の改変は、親指部分と人差し指部分とが表示パネル202上を移動するにつれて行われる。すなわち、表示パネル202の2カ所の接触部分がそれぞれ微小距離だけ移動するごとに上記の処理が行われ、表示される地図画像が変更される。その結果、親指部分F11と人差し指部分F21にそれぞれ表示されていた地図上の地点が、ユーザの親指と人差し指の動きについて行くように、地図画像が表示される。
【0052】
このような処理を行うことで、ユーザは、直感的な操作によって、地図画像の拡大、縮小、移動、および回転を行うことができる。なお、ステップS20の処理を実現する主制御部210の機能部を、第1の表示制御部232として図1に示す。
【0053】
図2のステップS25においては、主制御部210は、地図を表示する処理を終了する指示が、ユーザによって、または他の処理によって、出されたか否かを判定する。地図を表示する処理を終了する指示が出された場合には、処理を終了する。そうではない場合は、処理はステップS35に進む。
【0054】
図2のステップS35では、後に説明するステップS85から直接(すなわち、ステップS15を経ずに)、ステップS20に処理が進んだ場合であって、かつ、ユーザから携帯電話200に入力がない時間が所定時間Tth(たとえば、20秒)を超えたか否かが判定される。ステップS35の判定結果がYesである場合には、処理はステップS45に進む。すなわち、ステップS35の判定結果がYesである場合には、処理は、第1の動作モードから第2の動作モードに切り替わる。一方、ステップS35の判定結果がNoである場合には、処理はステップS15に戻る。
【0055】
ステップS45では、主制御部210は、表示パネル202に表示されている検索地点および現在位置の合計数を調べる。検索地点および現在位置の合計数が1である場合は、処理はステップS50に進む。検索地点および現在位置の合計数が2以上である場合は、処理はステップS60に進む。
【0056】
ステップS50では、主制御部210は、表示パネルに表示されている検索地点または現在位置を基準地点に決定する。たとえば、表示パネル202に現在位置が表示されている場合には、現在位置を基準地点に決定する。また、表示パネル202に検索地点が1カ所だけ表示されている場合には、その検索地点を基準地点に決定する。
【0057】
ステップS60では、主制御部210は、表示パネルに表示されている検索地点および現在位置のうち、ユーザによって接触された表示パネル202上の2カ所の部分の中心点の中点に最も近い地点を基準地点に決定する。
【0058】
図5は、処理がステップS60からステップS70に進んだ場合の処理の一例を説明する図である。図5において、表示パネル202の画像を表示できる領域DAには、地図画像DM3が表示されている。地図画像DM3は、道路の表示R01?R05のほか、現在位置を表すマークPPと、検索地点を表すマークM1?M3を含む。検索地点のマークM1?M3は、ピンの形状を有し、地図画像上において、検索地点にピンが刺されているように表示される。なお、表示パネル202にマークが表示される検索地点は、すべての検索地点であってもよく、一部の検索地点であってもよい。また、検索地点を表すマークは、検索地点を特定できるものであれば、他の形状でもよい。
【0059】
なお、以下、地図画像中において検索地点を表すマークM1?M3、またはマークM1?M3が表す地図画像内の点を、単純に「検索地点Mi」(i=1?3)と表記することがある。また、地図画像中において現在位置を表すマークPP、またはマークPPが表す地図画像内の点を、単純に「現在位置PP」と表記することがある。
【0060】
図5の状態は、ユーザが、現在位置周辺の施設を検索して、その結果として得られた施設の地点(検索地点)を表示させた状態である。なお、技術の理解を容易にするため、図5に示す地図画像DM3の範囲を、図3に示す地図画像DM1の範囲と同じ範囲にしている(図3および図5の道路の表示R01?R05参照)。参考のために図3において破線で示した現在位置PP1は、図5に示す現在位置PPと一致する位置にある。
【0061】
ユーザが、親指と人差し指で表示パネル202上の2カ所の部分に接触し、図3および図4で説明したのと同じ操作をしたものとして、以下で表示パネル202の表示について説明する(図3?図5の第1?第4の部分F11,F21,F12,F22参照)。なお、ユーザの操作に関する図中の符号、および「第1の状態」、「第2の状態」などの呼称は、図3および図4の例と同じである。
【0062】
図6は、第2の動作モードの第2の状態において表示パネル202に表示される地図画像DM4を示す図である。表示パネル202を介してユーザによる第1の部分F11と第2の部分F21への接触の操作を受け取った主制御部210は、ステップS60において、検索地点および現在位置のうち、第1の部分F11と第2の部分F21の中点Pc1に最も近い地点を基準地点に決定する。図5および図6の例では、検索地点M1?M3、ならびに現在位置PPのうち、現在位置PPが基準地点とされる。なお、ステップS45,S50,S60の処理を実現する主制御部210の機能部を、地点決定部234として図1に示す。
【0063】
ステップS70では、主制御部210は、ステップS20の場合と同様に、親指部分の中心点と人差し指部分の中心点の中点を決定する(図5および図6におけるPc1,Pc2参照)。また、主制御部210は、親指部分の中心点と人差し指部分の中心点を両端とする線分の長さおよび両者の相対角度を決定する(図5および図6のL1,L2,θ1参照)。
【0064】
そして、主制御部210は、第1の状態において表示されていた基準地点の位置が表示パネル202上で移動しないようにして、表示パネル202に表示する地図画像を改変する。第2の状態において表示される地図画像DM4(図6参照)は、たとえば、(i)図5の地図画像DM3において、基準地点(ここでは現在位置PP)の表示が表示パネル202の画像表示領域DA内において移動しないように固定し、(ii)その基準地点を中心に、地図画像DM1をθ1だけ反時計回りに回転させ(図5および図6の矢印Aθ1参照)、さらに、(iii)その基準地点を中心としてその地図画像を(L2/L1)倍することにより得ることができる。なお、主制御部210が、第2の状態において画像表示領域DAに表示すべき地図画像の縮尺および範囲(上記(i)および(iii)参照)と向き(上記(ii)参照)とを決定し、そのようにして決定された表示すべき地図画像の縮尺と範囲と向きとに応じて、地図画像DM2を新たに生成する点は、ステップS20と同様である。
【0065】
図2のステップS60およびS70においては、ユーザが表示パネル202の2カ所の部分に接触して表示パネル202の操作を行った場合、以上のような処理が行われる。なお、ここでは、図5の状態と図6の状態との比較で画像の説明を行ったが、実際には、上記のような地図画像の改変は、親指部分と人差し指部分とが表示パネル202上を移動するにつれて行われる。すなわち、表示パネル202の2カ所の接触部分がそれぞれ微小距離だけ移動するごとに上記の処理が行われ、表示される地図画像が変更される。その結果、表示パネル202において、地図画像が連続的に改変されるように表示される。
【0066】
たとえば、第1の動作モードのステップS20の処理においては、図3において破線で示した現在位置PP1は、図4においては、破線で示すPP2の位置に移動する。なお、参考のために、図4では、表示パネル202の画像表示領域DAにおいて、図3の現在位置PP1と一致する位置を、やはりPP1で示す。なお、ここで、「一致する位置」とは、表示パネル202のハードウェア構成(たとえば、画像表示領域DAの画素や外枠)との対比において、同じ位置であることを意味する。
【0067】
第1の動作モードにおけるこのような地点の移動の量は、地図画像上において親指部分および人差し指部分から離れた地点ほど大きくなる。よって、検索地点を表示させている場合や、現在位置を表示させている場合には、それらユーザが着目している可能性の高い地点が、ユーザによる操作の結果、表示パネル202の画像表示領域DA内で大幅に移動し、また、画像表示領域DAから外れてしまったのでは、ユーザの利便性は大きく損なわれる。
【0068】
しかし、本実施例においては、検索地点を表示させている場合や、現在位置を表示させている場合には、それらのうちの一つを固定して地図画像の拡大、縮小、および回転が行われる(図2のステップS15,S70参照)。このため、ユーザは、自分が着目している地点を見失うことなく、地図画像を拡大、縮小、移動、および回転させることができる。
【0069】
また、ユーザは、通常、着目している地点の近傍に二本の指をおいて地図画像の拡大、回転等の処理を行うものである。このため、親指部分と人差し指部分のそれぞれの中心点の中点に近い地点を基準地点に決定して上記のような処理を行うことで(図2のステップS60,S70)、よりユーザの利便性を高めることができる。なお、ステップS70の処理を実現する主制御部210の機能部を、第2の表示制御部233として図1に示す。
【0070】
図2のステップS75においては、主制御部210は、地図を表示する処理を終了する指示が出されたか否かを判定する。地図を表示する処理を終了する指示が出された場合には、処理を終了する。そうではない場合は、処理はステップS85に進む。
【0071】
携帯電話200においては、表示パネル202の画像表示領域DA内の1カ所の部分が押され、その1カ所の部分が表示パネル202に対する接触状態を保たれつつ移動した場合には、接触された部分に表示されていた地図上の地点が接触部分の動きについて行くように、地図画像が表示される。すなわち、接触された部分に表示されていた地図上の地点が移動後の接触部分において表示され、他の部分についても、画像表示領域DA内に地図画像が表示されるように、地図画像として表示される地図上の範囲が変更される。
【0072】
図2のステップS85では、表示パネル202の1カ所の部分が押され、その1カ所の部分が表示パネル202に対する接触状態を保たれつつ所定の距離以上、移動したか否かを判定する。接触されている1カ所の部分が表示パネル202において所定の距離以上、移動した場合には、処理はステップS20に進む。すなわち、ステップS85の判定結果がYesである場合には、処理は、第2の動作モードから第1の動作モードに切り替わる。一方、ステップS85の判定結果がNoである場合には、処理はステップS15に戻る。
【0073】
ユーザが、地図画像の表示範囲を所定の距離以上移動させる場合とは、表示パネル202の中心近傍に表示されていない地点、たとえば、表示パネル202に表示されていない地点をユーザが見ようとする場合である。そのような場合に、表示パネルに表示されている地点を基準とした地図画像の拡大、縮小、および回転を行うと(図2のステップS70、ならびに図5、図6参照)、ユーザが見ようとした地点が表示パネル202に表示されなくなるおそれがある。また、そのような地点が表示パネル202に表示されるとしても、画像表示領域DA内において大きく移動し、ユーザがそれを見失う可能性がある。
【0074】
このため、ユーザが、表示パネル202の中心近傍に表示されていない地点を見ようとした場合には、親指部分F11と人差し指部分F21にそれぞれ表示されていた地図上の地点が、ユーザの親指と人差し指の動きについて行くように地図画像を表示することが好ましい(図2のステップS20、ならびに図3、図4参照)。本実施例においては、ステップS85のような処理を行うことにより、ユーザが、表示パネル202の中心近傍に表示されていない地点を見たい場合に、ユーザの意図に沿った地図画像の表示を行うことができる。
【0075】
一方、前述のように、ステップS85からステップS15を経ずにステップS20に処理が進んだ場合であって、かつ、ユーザから携帯電話200に入力がない時間が所定時間Tthを超えた場合には、処理はステップS45に進む(ステップS35参照)。すなわち、ステップS85の処理を経て第2の動作モードから第1の動作モードに切り替わった場合には、ユーザから所定時間Tthを超えて携帯電話200に入力がない場合には、処理は第2の動作モードに戻る。
【0076】
ユーザから所定時間以上、入力がない場合は、ユーザは、地図画像の範囲を移動させて表示パネルに表示させた地点(ステップS85参照)を見る意思がなくなっている可能性が高い。そのような場合には、検索地点や現在位置を見失いにくい画像表示(ステップS70参照)を行う方が、ユーザにとって利便性が高い。本実施例においては、ステップS35のような処理を行うことによって、地図画像を表示させる際のユーザの利便性を高めることができる。」

【図2】

上記記載から、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「画像表示装置であって、
主制御部210を備え、
画像を表示することができる液晶ディスプレイであって、表示している画像に応じてパネルの一部に接触されることによりユーザからの指示を受けとることができるタッチパネルとして機能する、表示パネル202を備え、
地図画像を表示している表示パネル202の2カ所の部分を同時に接触されると、主制御部210は、処理を開始し、
ステップS15では、地点データベース177を利用して行われた検索の結果、得られた地点(以下、「検索地点」という)が、表示パネル202において地図画像上に表示されているか否か、およびGPSユニット201を介して得られた現在位置が表示パネル202において地図画像上に表示されているか否かを判定し、表示パネル202上に検索地点も現在位置も表示されていない場合には、処理は、ステップS20に進み、検索地点または現在位置が表示されている場合には、処理は、ステップS45に進み、
ステップS20においては、ユーザの親指と人差し指の動きについて行くようにし、その地図画像を親指部分と人差し指部分との中点を中心として(L2/L1)倍することにより得る地図画像が表示され、
ステップS25においては、地図を表示する処理を終了する指示が、ユーザによって、または他の処理によって、出されたか否かを判定し、地図を表示する処理を終了する指示が出された場合には、処理を終了し、そうではない場合は、処理はステップS35に進み、
ステップS35では、ステップS85から直接(すなわち、ステップS15を経ずに)、ステップS20に処理が進んだ場合であって、かつ、ユーザから携帯電話200に入力がない時間が所定時間Tth(たとえば、20秒)を超えたか否かが判定され、ステップS35の判定結果がYesである場合には、処理はステップS45に進み、Noである場合には、処理はステップS15に戻り、
ステップS45では、表示パネル202に表示されている検索地点および現在位置の合計数を調べ、検索地点および現在位置の合計数が1である場合は、処理はステップS50に進み、検索地点および現在位置の合計数が2以上である場合は、処理はステップS60に進み、
ステップS50では、主制御部210は、表示パネルに表示されている検索地点または現在位置を基準地点に決定し、
ステップS60では、主制御部210は、表示パネルに表示されている検索地点および現在位置のうち、ユーザによって接触された表示パネル202上の2カ所の部分の中心点の中点に最も近い地点を基準地点に決定し、
ステップS70では、検索地点を表示させている場合や、現在位置を表示させている場合に、それらのうちの一つを固定して地図画像の拡大、縮小、が行われるため、ユーザは、自分が着目している地点を見失うことなく、地図画像を拡大、縮小、することができるように、親指部分と人差し指部分とが表示パネル202上を移動するにつれて、その基準地点を中心としてその地図画像を(L2/L1)倍し、
ステップS75においては、地図を表示する処理を終了する指示が出されたか否かを判定し、地図を表示する処理を終了する指示が出された場合には、処理を終了し、そうではない場合は、処理はステップS85に進み、
ステップS85では、表示パネル202の1カ所の部分が押され、その1カ所の部分が表示パネル202に対する接触状態を保たれつつ所定の距離以上、移動したか否かを判定し、接触されている1カ所の部分が表示パネル202において所定の距離以上、移動した場合には、処理はステップS20に進み、移動しなかった場合は、処理はステップS15に戻る、
画像表示装置。」

2 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の記載がされている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は情報処理装置に関し、より詳細には、特にナビゲーションシステムなどに採用され、地図などの画像の縮尺変更操作などの操作性の向上が図られた情報処理装置に関する。」

「【0059】また、実施の形態(1)に係る情報処理装置を採用したナビゲーションシステムでは、表示画面9b上に表示された画面を通じて、使用者が各種設定を行うことができ、図2に示したような『拡大・縮小の設定』画面を通じて、地図画像が表示された表示画面9bに接触させた2本の指を遠ざける動作をしたときに、画像を拡大させるか、又は縮小させるか、他方、2本の指を近づける動作をしたときに、画像を縮小させるか、又は拡大させるかといった設定や、図3に示したような『固定点の設定(拡大・縮小)』画面を通じて、画像を拡大したり、縮小したりするときの固定点を下記1?4のいずれにするかといった設定を行うことができるようになっている。
【0060】1 「画像の中心点」
画像の中心点とは、図4(a)に示したように、画像が表示画面9bの画面一杯に表示されている場合には、表示画面9bの中心点aと同じとなり、図4(b)に示したように、画像が表示画面9b一杯に表示されていない場合には点bとなる。
2 「自車位置マークの表示地点」
自車位置マークの表示地点とは、図4(a)、図4(b)に示したように、黒三角で表されている自車位置マークMが表示されている地点である。
【0061】3.1 「左端」
2本の指を表示画面9bに最初に接触させた点(すなわち、移動開始前の接触点)のうち、表示画面9bの左端に最も近い点であり、例えば、図5に示したように、右手の親指と人差し指とを使って操作する場合には、親指で触れた点cが固定点となる。
3.2 「右端」
2本の指を表示画面9bに最初に接触させた点のうち、表示画面9bの右端に最も近い点であり、例えば、図5に示したように、右手の親指と人差し指とを使って操作する場合には、人差し指で触れた点dが固定点となる。
3.3 「上端」
2本の指を表示画面9bに最初に接触させた点のうち、表示画面9bの右端に最も近い点であり、例えば、図5に示したように、右手の親指と人差し指とを使って操作する場合には、人差し指で触れた点dが固定点となる。
3.4 「下端」
2本の指を表示画面9bに最初に接触させた点のうち、表示画面9bの右端に最も近い点であり、例えば、図5に示したように、右手の親指と人差し指とを使って操作する場合には、親指で触れた点cが固定点となる。
【0062】4 「2点の中間点」
2本の指を表示画面9bに最初に接触させた点の中間点であり、例えば、図5に示したように、右手の親指と人差し指とを使って操作する場合には、親指での接触点と人差し指での接触点とを結ぶ線分の中間点eが固定点となる。
【0063】また、図6に示したような『固定点の設定(回転移動)』画面を通じて、画像を回転移動させるとき(すなわち、画像の表示の向きを変えるとき)の固定点を下記1?3のいずれにするかといった設定を行うことができるようになっている。
【0064】1 「画像の中心点」(図4参照)
2 「自車位置マークの表示地点」(図4参照)
3 「回転軸」
回転軸として、表示画面9bに接触させた地点であり、例えば、図7(a)、(b)に示したように、右手の親指と人差し指とを使い、親指を回転軸として、人差し指を回転移動(点g→点g’)させる場合には、親指での接触点fが固定点となる。
【0065】次に、実施の形態(1)に係る情報処理装置を採用したナビゲーションシステムにおけるマイコン1の行う処理動作を図8?図10に示したフローチャートに基づいて説明する。
【0066】まず、タッチパネルへの物理的な接触があったか否か、すなわち、タッチパネルへの指の接触があったか否かを判断し(ステップS1)、タッチパネルへの指の接触がないと判断すれば、処理動作を終了する。一方、タッチパネルへの指の接触があったと判断すれば、タイマtを起動させる(ステップS2)。
【0067】次にタイマtの起動後、タッチパネルへの接触箇所が2以上あるか否かを判断し(ステップS3)、接触箇所が2以上ない、すなわち1箇所だけであると判断すれば、接触点が移動しているか否かを判断し(ステップS4)、接触点が移動している(すなわち、表示画面9b上で指を動かしている)と判断すれば、前記移動が直線移動であるか否か(すなわち、指の動作が直線動作であるか否か)を判断し(ステップS5)、前記移動が直線移動である(図11参照)と判断すれば、その移動方向に合わせて、表示画面9bに表示されている画像に対してスクロール処理を施す(ステップS6)。
【0068】一方、ステップS5における判断処理で、前記移動が直線移動でないと判断すれば、前記移動が回転移動であるか否か(すなわち、指の動作が回転動作であるか否か)を判断し(ステップS7)、前記移動が回転移動である(図12参照)と判断すれば、回転方向が時計回りであるか否かを判断し(ステップS8)、回転方向が時計回りであると判断すれば、表示画面9bに表示されている画像に対して拡大処理を施し(ステップS9)、回転方向が反時計回りであると判断すれば、表示画面9bに表示されている画像に対して縮小処理を施す(ステップS10)。一方、ステップS7における判断処理で、前記移動が回転移動でないと判断すれば、そのまま処理動作を終了する。
【0069】また、ステップS4における判断処理で、接触点が移動していない(すなわち、表示画面9上で指を動かしていない)と判断すれば、タッチパネルへの接触がなくなったか否か、すなわち、タッチパネル9bに接触していた指がタッチパネル9bから離れたか否かを判断し(ステップS11)、タッチパネルから指が離れたと判断すれば、略同一点でのタッチパネルへの再接触があったか否かを判断する(ステップS12)。
【0070】タッチパネルへの再接触がないと判断すれば、タイマtが所定時間t_(1) (例えば、1秒)経過しているか否かを判断し(ステップS13)、タイマtが所定時間t_(1) 経過している(すなわち、所定時間t_(1) 内での接触回数が1回)と判断すれば、表示画面9bに表示されている画像に対して縮小処理を施す(ステップS14)。一方、タイマtが所定時間t_(1) 経過していないと判断すれば、ステップS12へ戻る。
【0071】一方、ステップS12における判断処理で、タッチパネルへの物理的な再接触があった、すなわち、所定時間t_(1) 内に2回接触があった(使用者がタッチパネルへ連続的にタッチした)と判断すれば、表示画面9bに表示されている画像に対して拡大処理を施す(ステップS15)。
【0072】また、ステップS11における判断処理で、タッチパネルから指が離れていないと判断すれば、タイマtが所定時間t_(1) 経過しているか否かを判断し(ステップS16)、タイマtが所定時間t_(1) 経過していると判断すれば、表示画面9bに表示されている画像に対して縮小処理を施し(ステップS14)、一方、タイマtが所定時間t_(1) 経過していないと判断すれば、ステップS11へ戻る。
【0073】ところで、ステップS3における判断処理で、タッチパネルへの接触箇所が2以上ある(すなわち、タッチパネルへ2本の指が接触している)と判断すれば、2点間の距離の変化を算出し(ステップS21)、2点間の距離が長くなっているか否かを判断し(ステップS22)、2点間の距離が長くなっている(すなわち、使用者によって2本の指を遠ざける動作が行われている)と判断すれば、『固定点の設定(拡大・縮小)』画面(図3参照)を通じて設定された内容に基づいて、拡大処理、又は縮小処理(後のステップS24における処理)を施すにあたっての固定点を算出する(ステップS23)。
【0074】次に、『拡大・縮小の設定』画面(図2参照)を通じて設定された内容に基づいて、表示画面9bに表示されている画像に対して、拡大処理、又は縮小処理を施す(ステップS24)。なお、このときステップS23で算出した固定点を固定するようにして画像処理を施す。
【0075】一方、ステップS22における判断処理で、2点間の距離が長くなっていないと判断すれば、次に2点間の距離が短くなっているか否かを判断し(ステップS25)、2点間の距離が短くなっている(すなわち、使用者によって2本の指を近づける動作が行われている)と判断すれば、『固定点の設定(拡大・縮小)』画面(図3参照)を通じて設定された内容に基づいて、拡大処理、又は縮小処理(後のステップS27における処理)を施すにあたっての固定点を算出する(ステップS26)。
【0076】次に、『拡大・縮小の設定』画面(図2参照)を通じて設定された内容に基づいて、表示画面9bに表示されている画像に対して、拡大処理、又は縮小処理を施す(ステップS27)。なお、このときステップS26で算出した固定点を固定するようにして画像処理を施す。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「画像を表示することができる液晶ディスプレイであって、表示している画像に応じてパネルの一部に接触されることによりユーザからの指示を受けとることができるタッチパネルとして機能する、表示パネル202」の「表示している画像に応じてパネルの一部に接触されることによりユーザからの指示を受けとることができるタッチパネル」の機能は、本願発明1の「表示手段へのタッチ操作を検出可能なタッチ」を検出することに相当するから、引用発明の「表示パネル202」は、本願発明1の「タッチ検出手段」に対応する。

イ 引用発明の「ステップS85では、表示パネル202の1カ所の部分が押され、その1カ所の部分が表示パネル202に対する接触状態を保たれつつ所定の距離以上、移動したか否かを判定し、接触されている1カ所の部分が表示パネル202において所定の距離以上、移動した場合には、処理はステップS20に進み、移動しなかった場合は、処理はステップS15に戻る、」の「表示パネル202の1カ所の部分が押され、その1カ所の部分が表示パネル202に対する接触状態を保たれつつ所定の距離以上、移動した」ことは、本願発明1の「継続するタッチ操作による前記表示手段に対するタッチ位置の移動を伴う所定のタッチ操作」に相当する。
そして、引用発明は、「表示パネル202の1カ所の部分が押され、その1カ所の部分が表示パネル202に対する接触状態を保たれつつ所定の距離以上、移動したか否かを判定し、接触されている1カ所の部分が表示パネル202において所定の距離以上、移動した場合には、処理はステップS20に進み」、「ステップS20」において、「ユーザの親指と人差し指の動きについて行くようにし、その地図画像を親指部分と人差し指部分との中点を中心として(L2/L1)倍することにより得る地図画像が表示され」るのであるから、この「ユーザの親指と人差し指の動き」を検出することは、本願発明1の「前記表示手段に対する複数箇所へのマルチタッチ操作を検出」することに相当する。
また、引用発明の「ユーザの親指と人差し指の動きについて行くようにし、その地図画像を親指部分と人差し指部分との中点を中心として(L2/L1)倍することにより得る地図画像が表示され」ることと、本願発明1の「当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、前記マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置ではなく、前記表示対象の表示範囲の中央の位置を基準として拡大または縮小するように制御する」することとは、「当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、拡大または縮小するように操作する」点で共通する。

ウ また、引用発明の「ステップS85では、表示パネル202の1カ所の部分が押され、その1カ所の部分が表示パネル202に対する接触状態を保たれつつ所定の距離以上、移動したか否かを判定し、接触されている1カ所の部分が表示パネル202において所定の距離以上、移動した場合には、処理はステップS20に進み、移動しなかった場合は、処理はステップS15に戻る、」の「表示パネル202の1カ所の部分が押され、その1カ所の部分が表示パネル202に対する接触状態を保たれつつ所定の距離以上、」「移動しなかった」ことは、本願発明1の「当該マルチタッチ操作の前から継続するタッチ操作による前記表示手段に対するタッチ位置の移動を伴う所定のタッチ操作を検出していなかった」ことに相当する。
そして、引用発明では、「ステップS15では、地点データベース177を利用して行われた検索の結果、得られた地点(以下、「検索地点」という)が、表示パネル202において地図画像上に表示されているか否か、およびGPSユニット201を介して得られた現在位置が表示パネル202において地図画像上に表示されているか否かを判定し、表示パネル202上に検索地点も現在位置も表示されていない場合には、処理は、ステップS20に進み、検索地点または現在位置が表示されている場合には、処理は、ステップS45に進み、」
「ステップS20においては、ユーザの親指と人差し指の動きについて行くようにし、その地図画像を親指部分と人差し指部分との中点を中心として(L2/L1)倍することにより得る地図画像が表示され、」
「ステップS45では、表示パネル202に表示されている検索地点および現在位置の合計数を調べ、検索地点および現在位置の合計数が1である場合は、処理はステップS50に進み、検索地点および現在位置の合計数が2以上である場合は、処理はステップS60に進み、
ステップS50では、主制御部210は、表示パネルに表示されている検索地点または現在位置を基準地点に決定し、
ステップS60では、主制御部210は、表示パネルに表示されている検索地点および現在位置のうち、ユーザによって接触された表示パネル202上の2カ所の部分の中心点の中点に最も近い地点を基準地点に決定し、
ステップS70では、検索地点を表示させている場合や、現在位置を表示させている場合に、それらのうちの一つを固定して地図画像の拡大、縮小、が行われるため、ユーザは、自分が着目している地点を見失うことなく、地図画像を拡大、縮小、することができるように、親指部分と人差し指部分とが表示パネル202上を移動するにつれて、その基準地点を中心としてその地図画像を(L2/L1)倍し」ているのであるから、引用発明の、上記ステップの、ステップ20の「ユーザの親指と人差し指の動きについて行くようにし、その地図画像を親指部分と人差し指部分との中点を中心として(L2/L1)倍することにより得る地図画像が表示され」る動作、及びステップ70の「検索地点を表示させている場合や、現在位置を表示させている場合に、それらのうちの一つを固定して地図画像の拡大、縮小、が行われるため、ユーザは、自分が着目している地点を見失うことなく、地図画像を拡大、縮小、することができるように、親指部分と人差し指部分とが表示パネル202上を移動するにつれて、その基準地点を中心としてその地図画像を(L2/L1)倍する」動作と、本願発明1の「当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、当該マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置を基準として拡大または縮小するように制御」することとは、「当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、拡大または縮小するように制御」する点で共通する。

エ そして、引用発明の「主制御部210」は、上記イ、ウで検討した制御を処理しているから、引用発明の「主制御部210」は、本願発明1の「表示制御手段」に対応する。

オ してみると、引用発明の「画像表示装置」は、本願発明1の「表示制御装置」に対応する。

カ 上記アないしオから、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。

[一致点]
「表示手段へのタッチ操作を検出可能なタッチ検出手段と、
前記表示手段に対する複数箇所へのマルチタッチ操作を検出した場合に、当該マルチタッチ操作の前から継続するタッチ操作による前記表示手段に対するタッチ位置の移動を伴う所定のタッチ操作を検出していなかった場合には、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、拡大または縮小するように制御し、
前記所定のタッチ操作を検出し、前記所定のタッチ操作から少なくとも1つのタッチが離されないまま、前記表示手段に対するマルチタッチ操作を検出した場合には、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、拡大または縮小するように制御する表示制御手段と、を有することを特徴とする表示制御装置。」

[相違点1]
「前記表示手段に対する複数箇所へのマルチタッチ操作を検出した場合に、当該マルチタッチ操作の前から継続するタッチ操作による前記表示手段に対するタッチ位置の移動を伴う所定のタッチ操作を検出していなかった場合に、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、拡大または縮小するように制御」することについて、本願発明1は、「当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、当該マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置を基準として拡大または縮小するように制御」しているのに対して、引用発明は、「表示パネル202上に検索地点も現在位置も表示されていない場合には」、「ユーザの親指と人差し指の動きについて行くようにし、その地図画像を親指部分と人差し指部分との中点を中心として(L2/L1)倍することにより得る地図画像が表示され」る制御を行い、「検索地点または現在位置が表示されている場合」について、「検索地点および現在位置の合計数が2以上である場合」に、「表示パネルに表示されている検索地点および現在位置のうち、ユーザによって接触された表示パネル202上の2カ所の部分の中心点の中点に最も近い地点」を「基準地点」とし、「基準地点を中心としてその地図画像を(L2/L1)倍」する制御を行っている(これら2つの制御は、本願発明1の「当該マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置を基準として拡大または縮小するように制御」することに対応する。)ものの、「検索地点または現在位置が表示されている場合」について、「検索地点および現在位置の合計数が1である場合は」、「表示パネルに表示されている検索地点または現在位置」を「基準地点」とし、「基準地点を中心としてその地図画像を(L2/L1)倍」する制御を行っている点。

[相違点2]
「前記所定のタッチ操作を検出し、前記所定のタッチ操作から少なくとも1つのタッチが離されないまま、前記表示手段に対するマルチタッチ操作を検出した場合には、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、拡大または縮小するように制御する」ことについて、本願発明1は、「当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、前記マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置ではなく、前記表示対象の表示範囲の中央の位置を基準として拡大または縮小するように制御」しているのに対して、引用発明は、「ユーザの親指と人差し指の動きについて行くようにし、その地図画像を親指部分と人差し指部分との中点を中心として(L2/L1)倍することにより得る地図画像が表示され」る制御を行う点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
引用文献2には、上記相違点1に係る制御は記載されておらず、また周知の制御であるともいえない。
加えて、引用発明は、「ステップS15では、地点データベース177を利用して行われた検索の結果、得られた地点(以下、「検索地点」という)が、表示パネル202において地図画像上に表示されているか否か、およびGPSユニット201を介して得られた現在位置が表示パネル202において地図画像上に表示されているか否かを判定し、」「表示パネル202上に」「検索地点または現在位置が表示されている場合には、処理は、ステップS45に進み、」「ステップS45では、表示パネル202に表示されている検索地点および現在位置の合計数を調べ、検索地点および現在位置の合計数が1である場合は、処理はステップS50に進み、検索地点および現在位置の合計数が2以上である場合は、処理はステップS60に進み、
ステップS50では、主制御部210は、表示パネルに表示されている検索地点または現在位置を基準地点に決定し、
ステップS60では、主制御部210は、表示パネルに表示されている検索地点および現在位置のうち、ユーザによって接触された表示パネル202上の2カ所の部分の中心点の中点に最も近い地点を基準地点に決定し、
ステップS70では、検索地点を表示させている場合や、現在位置を表示させている場合に、それらのうちの一つを固定して地図画像の拡大、縮小、が行われるため、ユーザは、自分が着目している地点を見失うことなく、地図画像を拡大、縮小、することができるように、親指部分と人差し指部分とが表示パネル202上を移動するにつれて、その基準地点を中心としてその地図画像を(L2/L1)倍」するものである。
そして、上記のとおり、引用発明は、ステップS50で決定された「基準地点」(表示パネルに表示されている検索地点または現在位置)を中心とし、ステップS70により地図画像を拡大、縮小するものであり、このことにより、「ユーザは、自分が着目している地点を見失うことなく、地図画像を拡大、縮小、することができる」ものである。
そうすると、引用発明の上記制御に換えて、相違点1に係る本願発明1の「当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、当該マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置を基準として拡大または縮小するように制御」するようにした場合、検索地点や現在位置に関係なく、拡大、縮小が行われ、ユーザが着目している地点を見失うこととなるから、引用発明に、本願発明1の上記制御を採用することに、動機付けがあるとはいえない。
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「画像を表示することができる液晶ディスプレイであって、表示している画像に応じてパネルの一部に接触されることによりユーザからの指示を受けとることができるタッチパネルとして機能する、表示パネル202」の「表示している画像に応じてパネルの一部に接触されることによりユーザからの指示を受けとることができるタッチパネル」の機能は、本願発明2の「表示手段へのタッチ操作を検出可能なタッチ」を検出することに相当するから、引用発明の「表示パネル202」は、本願発明1の「タッチ検出手段」に対応する。

イ 引用発明の「ステップS85」の」「表示パネル202の1カ所の部分が押され、その1カ所の部分が表示パネル202に対する接触状態を保たれつつ所定の距離以上、移動した」ことは、本願発明2の「タッチ操作による前記表示手段に対するタッチ位置の移動を伴う所定のタッチ操作」に相当する。

ウ そして、「ステップS85では、表示パネル202の1カ所の部分が押され、その1カ所の部分が表示パネル202に対する接触状態を保たれつつ所定の距離以上、移動したか否かを判定し、接触されている1カ所の部分が表示パネル202において所定の距離以上、移動した場合には、処理はステップS20に進み」、「ステップS35では、ステップS85から直接(すなわち、ステップS15を経ずに)、ステップS20に処理が進んだ場合であって、かつ、ユーザから携帯電話200に入力がない時間が所定時間Tth(たとえば、20秒)を超えたか否かが判定され、ステップS35の判定結果がYesである場合には、処理はステップS45に進み」の、「入力がない時間が所定時間Tth」を越えた場合(Yesである場合)は、本願発明2の「タッチ操作による前記表示手段に対するタッチ位置の移動を伴う所定のタッチ操作を検出してから所定時間以内でない場合に、前記表示手段に対する複数箇所へのマルチタッチ操作を検出した場合」に相当する。

エ そして、引用発明では、「ステップS45では、表示パネル202に表示されている検索地点および現在位置の合計数を調べ、検索地点および現在位置の合計数が1である場合は、処理はステップS50に進み、検索地点および現在位置の合計数が2以上である場合は、処理はステップS60に進み、
ステップS50では、主制御部210は、表示パネルに表示されている検索地点または現在位置を基準地点に決定し、
ステップS60では、主制御部210は、表示パネルに表示されている検索地点および現在位置のうち、ユーザによって接触された表示パネル202上の2カ所の部分の中心点の中点に最も近い地点を基準地点に決定し、
ステップS70では、検索地点を表示させている場合や、現在位置を表示させている場合に、それらのうちの一つを固定して地図画像の拡大、縮小、が行われるため、ユーザは、自分が着目している地点を見失うことなく、地図画像を拡大、縮小、することができるように、親指部分と人差し指部分とが表示パネル202上を移動するにつれて、その基準地点を中心としてその地図画像を(L2/L1)倍し」ているのであるから、引用発明の、上記ステップの、ステップ70の「検索地点を表示させている場合や、現在位置を表示させている場合に、それらのうちの一つを固定して地図画像の拡大、縮小、が行われるため、ユーザは、自分が着目している地点を見失うことなく、地図画像を拡大、縮小、することができるように、親指部分と人差し指部分とが表示パネル202上を移動するにつれて、その基準地点を中心としてその地図画像を(L2/L1)倍する」動作と、本願発明2の「当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、当該マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置を基準として拡大または縮小するように制御」することとは、「当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、拡大または縮小するように制御」する点で共通する。

オ 加えて、引用発明の「ステップS85では、表示パネル202の1カ所の部分が押され、その1カ所の部分が表示パネル202に対する接触状態を保たれつつ所定の距離以上、移動したか否かを判定し、接触されている1カ所の部分が表示パネル202において所定の距離以上、移動した場合には、処理はステップS20に進み」、「ステップS35では、ステップS85から直接(すなわち、ステップS15を経ずに)、ステップS20に処理が進んだ場合であって、かつ、ユーザから携帯電話200に入力がない時間が所定時間Tth(たとえば、20秒)を超えたか否かが判定され、ステップS35の判定結果が」「Noである場合には、処理はステップS15に戻り」の、「入力がない時間が所定時間Tth」を越えなかった場合(Noである場合)は、本願発明2の「前記所定のタッチ操作を検出してから所定時間以内に、前記表示手段に対するマルチタッチ操作を検出した場合」に相当する。

カ そして、引用発明では、「ステップS15では、地点データベース177を利用して行われた検索の結果、得られた地点(以下、「検索地点」という)が、表示パネル202において地図画像上に表示されているか否か、およびGPSユニット201を介して得られた現在位置が表示パネル202において地図画像上に表示されているか否かを判定し、表示パネル202上に検索地点も現在位置も表示されていない場合には、処理は、ステップS20に進み、検索地点または現在位置が表示されている場合には、処理は、ステップS45に進み、」
「ステップS20においては、ユーザの親指と人差し指の動きについて行くようにし、その地図画像を親指部分と人差し指部分との中点を中心として(L2/L1)倍することにより得る地図画像が表示され、」
「ステップS45では、表示パネル202に表示されている検索地点および現在位置の合計数を調べ、検索地点および現在位置の合計数が1である場合は、処理はステップS50に進み、検索地点および現在位置の合計数が2以上である場合は、処理はステップS60に進み、
ステップS50では、主制御部210は、表示パネルに表示されている検索地点または現在位置を基準地点に決定し、
ステップS60では、主制御部210は、表示パネルに表示されている検索地点および現在位置のうち、ユーザによって接触された表示パネル202上の2カ所の部分の中心点の中点に最も近い地点を基準地点に決定し、
ステップS70では、検索地点を表示させている場合や、現在位置を表示させている場合に、それらのうちの一つを固定して地図画像の拡大、縮小、が行われるため、ユーザは、自分が着目している地点を見失うことなく、地図画像を拡大、縮小、することができるように、親指部分と人差し指部分とが表示パネル202上を移動するにつれて、その基準地点を中心としてその地図画像を(L2/L1)倍し」ているのであるから、引用発明の、上記ステップの、ステップ20の「ユーザの親指と人差し指の動きについて行くようにし、その地図画像を親指部分と人差し指部分との中点を中心として(L2/L1)倍することにより得る地図画像が表示され」る動作、及びステップ70の「検索地点を表示させている場合や、現在位置を表示させている場合に、それらのうちの一つを固定して地図画像の拡大、縮小、が行われるため、ユーザは、自分が着目している地点を見失うことなく、地図画像を拡大、縮小、することができるように、親指部分と人差し指部分とが表示パネル202上を移動するにつれて、その基準地点を中心としてその地図画像を(L2/L1)倍する」動作と、本願発明2の「当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、前記マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置ではなく、前記表示対象の表示範囲の中央の位置を基準として拡大または縮小するように制御する」することとは、「当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、拡大または縮小するように制御」する点で共通する。

キ そして、引用発明の「主制御部210」は、上記イないしカで検討した制御を処理しているから、引用発明の「主制御部210」は、本願発明2の「表示制御手段」に対応する。

ク してみると、引用発明の「画像表示装置」は、本願発明2の「表示制御装置」に対応する。

ケ 上記アないしクから、本願発明2と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。

[一致点]
「表示手段へのタッチ操作を検出可能なタッチ検出手段と、
タッチ操作による前記表示手段に対するタッチ位置の移動を伴う所定のタッチ操作を検出してから所定時間以内でない場合に、前記表示手段に対する複数箇所へのマルチタッチ操作を検出した場合に、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を拡大または縮小するように制御し、
前記所定のタッチ操作を検出してから所定時間以内に、前記表示手段に対するマルチタッチ操作を検出した場合には、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を拡大または縮小するように制御する表示制御手段と、を有することを特徴とする表示制御装置。」

[相違点3]
「タッチ操作による前記表示手段に対するタッチ位置の移動を伴う所定のタッチ操作を検出してから所定時間以内でない場合に、前記表示手段に対する複数箇所へのマルチタッチ操作を検出した場合に、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を拡大または縮小するように制御」することについて、本願発明2は、「タッチ操作による前記表示手段に対するタッチ位置の移動を伴う所定のタッチ操作を検出してから所定時間以内でない場合に、前記表示手段に対する複数箇所へのマルチタッチ操作を検出した場合に、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、当該マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置を基準として拡大または縮小するように制御し」ているのに対して、引用発明は、「表示パネルに表示されている検索地点および現在位置のうち、ユーザによって接触された表示パネル202上の2カ所の部分の中心点の中点に最も近い地点」を「基準地点」とし、その基準地点を中心としてその地図画像を(L2/L1)倍」する制御を行っているものの(本願発明2の「当該マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置を基準として拡大または縮小するように制御」することに対応する。)、「検索地点または現在位置が表示されている場合」について、「検索地点および現在位置の合計数が1である場合は」、「表示パネルに表示されている検索地点または現在位置」を「基準地点」とし、「基準地点を中心としてその地図画像を(L2/L1)倍」する制御を行っており、本願発明2の「当該マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置を基準として拡大または縮小するように制御」を行っているとはいえない点。

[相違点4]
「前記所定のタッチ操作を検出してから所定時間以内に、前記表示手段に対するマルチタッチ操作を検出した場合には、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を拡大または縮小するように制御する」点について、本願発明2は、「前記所定のタッチ操作を検出してから所定時間以内に、前記表示手段に対するマルチタッチ操作を検出した場合には、当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、前記マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置ではなく、前記表示対象の表示範囲の中央の位置を基準として拡大または縮小するように制御」しているのに対して、引用発明は、そのような制御をしていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点3について検討する。
引用文献2には、上記相違点3に係る制御は記載されておらず、また周知の制御であるともいえない。
加えて、引用発明は、「ステップS45では、表示パネル202に表示されている検索地点および現在位置の合計数を調べ、検索地点および現在位置の合計数が1である場合は、処理はステップS50に進み、検索地点および現在位置の合計数が2以上である場合は、処理はステップS60に進み、
ステップS50では、主制御部210は、表示パネルに表示されている検索地点または現在位置を基準地点に決定し、
ステップS60では、主制御部210は、表示パネルに表示されている検索地点および現在位置のうち、ユーザによって接触された表示パネル202上の2カ所の部分の中心点の中点に最も近い地点を基準地点に決定し、
ステップS70では、検索地点を表示させている場合や、現在位置を表示させている場合に、それらのうちの一つを固定して地図画像の拡大、縮小、が行われるため、ユーザは、自分が着目している地点を見失うことなく、地図画像を拡大、縮小、することができるように、親指部分と人差し指部分とが表示パネル202上を移動するにつれて、その基準地点を中心としてその地図画像を(L2/L1)倍」するものである。
そして、上記のとおり、引用発明は、ステップS50で決定された「基準地点」(表示パネルに表示されている検索地点または現在位置)を中心とし、ステップS70により地図画像を拡大、縮小するものであり、このことにより、「ユーザは、自分が着目している地点を見失うことなく、地図画像を拡大、縮小、することができる」ものである。
そうすると、引用発明の上記制御に換えて、相違点3に係る本願発明2の「当該マルチタッチ操作に応じて前記表示手段に表示されている表示対象を、当該マルチタッチ操作を行う複数のタッチ位置に基づく位置を基準として拡大または縮小するように制御」するようにした場合、検索地点や現在位置に関係なく、拡大、縮小が行われ、ユーザが着目している地点を見失うこととなるから、引用発明に、本願発明2の上記制御を採用することには、動機付けがあるとはいえない。
したがって、上記相違点4について判断するまでもなく、本願発明2は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明3ないし13について
本願発明3ないし13は、本願発明1の上記相違点1に係る制御、もしくは、本願発明2の上記相違点3に係る制御を行うことを含む発明であるから、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明14および15について
本願発明14および15は、それぞれ本願発明1および2に対応する制御方法の発明であり、それぞれ相違点1および3に係る制御を行っているから、本願発明1および2と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

5 本願発明16について
本願発明16は、コンピュータを本願発明1ないし13の表示制御装置の各手段として機能させるプログラムの発明であり、相違点1もしくは3に係る制御を含んでいるから、本願発明1および2と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

6 本願発明17について
本願発明17は、コンピュータを本願発明1ないし13の表示制御装置の各手段として機能させるプログラムを格納したコンピュータが読みとり可能な記憶媒体の発明であり、相違点1もしくは3に係る制御を含んでいるから、本願発明1および2と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし17は、当業者が引用発明および引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-09-28 
出願番号 特願2016-2996(P2016-2996)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅原 浩二  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 小田 浩
野崎 大進
発明の名称 表示制御装置及びその制御方法、プログラム、並びに記憶媒体  
代理人 特許業務法人大塚国際特許事務所  

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