• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1378374
審判番号 不服2020-14394  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-14 
確定日 2021-10-12 
事件の表示 特願2019- 50877「情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月24日出願公開、特開2020-154515、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成31年3月19日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年10月25日付け:拒絶理由通知書
令和元年12月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 3月 5日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知
令和2年 4月 9日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 7月 9日付け:令和2年4月9日の手続補正についての
補正の却下の決定、拒絶査定(原査定)
令和2年10月14日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年7月9日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1、2、4に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2018-72930号公報

第3 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、令和2年10月14日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
面状の操作部と、
該操作部から離れた表示部と、
該表示部に、前記操作部上の位置と関連付けて表示した入力部と、
前記操作部に対する操作体の接触によって、前記表示部に表示された前記入力部に対する操作を間接的に行わせる制御部とを有する情報処理装置であって、
前記操作部は、
該操作部を面直方向に振動させる面直方向振動部と、
前記操作部を面方向に振動させる面方向振動部とを有し、
前記制御部は、
前記面直方向振動部および前記面方向振動部によって前記操作部に面直方向の振動および面方向の振動を発生させる振動制御部を備え、
該振動制御部は、
前記面直方向振動部が前記操作部に発生させる面直方向の振動によって、前記操作部を表面側へ変位させて前記操作体との接触圧が高くなったときに、前記操作体を誘導する面方向の変位の向きの振動を合わせるように制御して、前記操作部に接触された前記操作体を前記操作部の面に沿って誘導することを特徴とする情報処理装置。

【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記振動制御部には、前記面直方向振動部に対する面直方向振動発生部と、前記面方向振動部に対する面方向振動部発生部を設け、前記面直方向振動発生部および前記面方向振動部発生部に加える電力の波形は、サイン波としたことを特徴とする情報処理装置。

【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記面直方向振動部および前記面方向振動部は、互いに等しい周波数で振動させることを特徴とする情報処理装置。

【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の情報処理装置であって、
前記振動制御部は、振動の振幅を制御して操作部に対する操作体の移動速度を設定するようにした速度調整部を設けたことを特徴とする情報処理装置。」

第4 引用文献、周知文献等
1.引用文献1について
(1)原査定の拒絶理由に引用された引用文献1(平成30年5月10日出願公開)には、図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。以下、同様。)
「【0026】
図1に示すように、移動誘導装置100は、パネル装置1と、制御装置2と、を備えている。制御装置2は、パネル装置1及び表示装置3を制御する。
【0027】
パネル装置1は、車両の運転者が操作可能な位置に設けられる。具体的には、パネル装置1は、図2に示すように運転席と助手席との間に設けられる。表示装置3は、車両の運転者が視認可能な位置に設けられる。具体的には、表示装置3は、図2に示すようにダッシュボードの中央に設けられる。表示装置3を図2に示すように車両の比較的前方に設置することで、車両の運転者が運転中に表示装置3の表示を確認するときの視点移動が少なくなる。
【0028】
<1-2.パネル装置の構成>
図1に示すように、パネル装置1は、タッチパネル11と、第1振動部12と、第2振動部13と、を備えている。
【0029】
タッチパネル11は、タッチされた位置(以下、「タッチ位置」と略すことがある。)を検出する。タッチパネル11の表面は、例えば車両の運転者の指等によってタッチされる。すなわち、タッチパネル11の表面は操作面である。
【0030】
第1振動部12は、タッチパネル11の表面を振動させる。具体的には、第1振動部12は図3に示す振動子12a?12dによって構成され、振動子12a?12dは図3に示すようにタッチパネル11の表面11aの四隅に固定される。なお、振動子の個数や配置は図3に示す例に限定されるものではない。振動子としては、例えば、ピエゾ素子などの圧電素子を用いることができる。
【0031】
第2振動部13は、タッチパネル11をタッチパネル11の表面に沿った方向に振動させる。具体的には、第2振動部13は図4に示すソレノイドアクチュエータ13a?13dによって構成される。
・・・中略・・・
【0035】
<1-3.制御装置の構成>
図1に示すように、制御装置2は、制御部21と、記憶部22と、を備えている。
【0036】
制御部21は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を備えるコンピュータである。制御部21は、制御装置2が備える記憶部22等と接続され、記憶部22に記憶されたプログラム22aに基づいて情報の処理及び送受信を行い、パネル装置1及び表示装置3を制御する。
【0037】
制御部21は、第1振動制御部21aと、第2振動制御部21bと、位置情報生成部21cと、表示制御部21dと、を備えている。記憶部22に記憶されたプログラム22aにしたがってCPUが演算処理を実行することにより、第1振動制御部21a等の制御部21の各種機能が実現される。
【0038】
第1振動制御部21aは第1振動部12を制御する。具体的には、第1振動制御部21aは、タッチパネル11の表面が振動するように第1振動部12を制御する。この表面の振動によって、タッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11の表面との間に高圧の空気膜が発生すると、タッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11の表面との摩擦抵抗が低減する。なお、タッチパネル11の表面を高速で振動させると、タッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11の表面との間に高圧の空気膜が発生する確実性を高めることができる。この高速での振動とは例えば超音波振動である。
【0039】
第2振動制御部21bは第2振動部13を制御する。具体的には、第2振動制御部21bは、タッチパネル11がタッチパネル11の表面に沿った方向に振動するように第2振動部13を制御する。例えば、タッチパネル11の表面が平面である場合には、その平面の法線方向に略垂直な方向がタッチパネル11の表面に沿った方向となる。この表面に沿った方向の振動によって、タッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11の表面との摩擦抵抗が低い状態におけるタッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11との相対移動が可能になる。したがって、タッチパネル11の振動を利用してタッチパネル11の表面に触れている物体の移動を誘導することができる。タッチパネル11をタッチパネル11の表面に沿った方向に低速で振動させると、上記の相対移動が発生する確実性を高めることができる。この低速での振動とは例えば数十Hz?数百Hzでの振動である。以上により、タッチパネル11の振動を利用してタッチパネル11の表面に触れている物体の移動を誘導する確実性を高めるためには、第1振動部12がタッチパネル11の表面を振動させる際の振動周波数範囲は、第2振動部13がタッチパネル11をタッチパネル11の表面に沿った方向に振動させる際の振動周波数範囲より高いことが望ましい。
【0040】
位置情報生成部21cは、タッチパネル11から検出結果を受け取り、タッチパネル11の検出結果に基づいて、タッチ位置に関する位置情報(例えば、タッチ位置の座標情報)を作成し、表示制御部21dに出力する。なお、タッチパネル11が感圧式タッチパネルである場合には、位置情報生成部21cは、位置情報に加えて、タッチ位置に与えられた圧力に関する圧力情報も作成し、表示制御部21dに出力する。」

「【0042】
<1-4.制御装置の処理>
図5は、制御装置2の処理の流れを示す図である。制御装置2が起動すると、タッチパネル11はタッチされた位置を検出し、位置情報生成部21cはタッチ位置に関する位置情報を作成する(ステップS1)。
【0043】
次に、表示制御部21dは、位置情報生成部21cから出力される位置情報に基づいて表示画像データを作成し、その表示画像データに基づく画像を表示装置3に表示させる(ステップS2)。本実施形態では、表示装置3によって表示される画像は、図6に示すように、アイコン等の所定の図形3aと、タッチ位置を表すカーソル3bとを含んでいる。
【0044】
次に、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bは、タッチ位置の移動を誘導する必要があるか否かを判定する(ステップS3)。例えば、カーソル3bが所定の図形3aに対して所定範囲以上離れている場合に、タッチ位置の移動を誘導する必要があると判定され、後述するステップS4において、カーソル3bが所定の図形3aに近づくように第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bが振動の制御を行うとよい。これにより、所定の図形3aを選択する操作が楽になり、タッチパネル11の操作性が向上する。なお、所定の図形3aを選択する操作は、タッチパネル11が感圧式タッチパネルである場合には、例えば、所定の図形3aとカーソル3bとが重なった状態でタッチ位置に与えられる圧力が閾値を超えるようにタッチ位置を押すようにすればよく、タッチパネル11が感圧式タッチパネルでない場合には、例えば、所定の図形3aとカーソル3bとが重なった状態が一定時間を超えるようにタッチ位置を固定するようにすればよい。
【0045】
タッチ位置の移動を誘導する必要がないと判定された場合には、ステップS1の処理に戻る。一方、タッチ位置の移動を誘導する必要があると判定された場合には、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bが表示画像データ及びタッチパネル11の検出結果に基づく振動の制御を行う(ステップS4)。これにより、表示装置3の表示内容及びタッチ位置に適したタッチ位置の移動を誘導することができる。
【0046】
ここで、図7及び図8A?図8Dを用いてタッチ位置の移動を右方向に誘導する場合を例に挙げて第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bが行う振動の制御について説明する。図7は、タッチパネル11の移動方向、タッチパネル11の表面と操作者の指F1との摩擦抵抗、及びタッチ位置のタイムチャートである。図8A?図8Dは、パネル装置1の縦断面模式図である。
【0047】
第2振動制御部21bは、第2振動部13を制御して、タッチパネル11をタッチパネル11の長手方向に振動させ、タッチパネル11の移動方向を右方向と左方向とに交互に切り替えている。そして、タッチパネル11が右方向に移動している期間(期間P1、P3等)とタッチパネル11が左方向に移動している期間(期間P2等)とで第1振動制御部21aが異なる制御を行うことで、タッチ位置の移動を右方向又は左方向に誘導することができる。ここでは、タッチパネル11が右方向に移動している期間(期間P1、P3等)において上記の摩擦抵抗を高くし、タッチパネル11が左方向に移動している期間(期間P2等)において上記の摩擦抵抗を低くして、タッチ位置の移動を右方向に誘導している。
【0048】
例えば、タッチパネル11が右方向に移動している期間(期間P1、P3等)において第1振動制御部21aが第1振動部1を動作させないことで、上記の摩擦抵抗を高くし、タッチパネル11が左方向に移動している期間(期間P2等)において第1振動制御部21aが第1振動部12を動作させることで、上記の摩擦抵抗を低くすることができる。このような第1振動部12の間欠動作を実施した場合、第1振動制御部21aの制御処理が簡単になる。
【0049】
図8Aは期間P1の開始時点でのパネル装置1と操作者の指F1との位置関係を示している。期間P1では摩擦抵抗が高いため、操作者の指F1はタッチパネル11に対して滑らずにタッチパネル11とともに右方向に移動する。したがって、期間P1ではタッチ位置は移動せず、タッチパネル11の左端からタッチ位置までの距離はL1のままである。そして、期間P1の終了時点及び期間P2の開始時点では、パネル装置1と操作者の指F1との位置関係は図8Bに示すようになる。
【0050】
期間P2では摩擦抵抗が低いため、操作者の指F1はタッチパネル11に対して滑りタッチパネル11だけが左方向に移動する。したがって、期間P2ではタッチ位置は移動し、タッチパネル11の左端からタッチ位置までの距離はL1より長くなる。そして、期間P2の終了時点及び期間P3の開始時点では、パネル装置1と操作者の指F1との位置関係は図8Cに示すようになり、タッチパネル11の左端からタッチ位置までの距離はL2(>L1)になる。
【0051】
期間P3では再び摩擦抵抗が高くなり、操作者の指F1はタッチパネル11に対して滑らずにタッチパネル11とともに右方向に移動する。したがって、期間P3ではタッチ位置は移動せず、タッチパネル11の左端からタッチ位置までの距離はL2のままである。そして、期間P3の終了時点では、パネル装置1と操作者の指F1との位置関係は図8Dに示すようになる。
【0052】
以上のような振動制御を繰り返すことにより、タッチ位置の右方向への移動を誘導することができる。なお、第1振動制御部21aは、タッチパネル11の表面の振動周波数及び振動振幅の少なくとも一つを可変することで、上記の摩擦抵抗を調整することができる。また、第2振動制御部21bは、タッチパネル11の表面に沿った方向の振動の振動周波数及び振動振幅の少なくとも一つを可変することで、上記の摩擦抵抗が低いときにおけるパネル装置1と操作者の指F1との相対移動量を調整することができる。したがって、タッチパネル11の表面の振動周波数、タッチパネル11の表面の振動振幅、タッチパネル11の表面に沿った方向の振動の振動周波数、及びタッチパネル11の表面に沿った方向の振動の振動振幅の少なくとも一つを可変することで、タッチ位置の移動の誘導力を調整することできる。このため、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bの一方が表示画像データ及びタッチパネル11の検出結果にかかわらず定型の振動制御を行い、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bの他方が表示画像データ及びタッチパネル11の検出結果に基づく振動制御を行うようにしてもよい。」

(2)上記記載事項、特に下線部によれば、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

〈a〉移動誘導装置100は、パネル装置1と、制御装置2と、を備えている。制御装置2は、パネル装置1及び表示装置3を制御する。
〈b1〉パネル装置1は、タッチパネル11と、第1振動部12と、第2振動部13と、を備えている。
〈b2〉タッチパネル11は、タッチされた位置(以下、「タッチ位置」と略すことがある。)を検出する。タッチパネル11の表面は、例えば車両の運転者の指等によってタッチされる。すなわち、タッチパネル11の表面は操作面である。
〈b3〉第1振動部12は、タッチパネル11の表面を振動させる。具体的には、第1振動部12は図3に示す振動子12a?12dによって構成され、振動子12a?12dは図3に示すようにタッチパネル11の表面11aの四隅に固定される。なお、振動子の個数や配置は図3に示す例に限定されるものではない。振動子としては、例えば、ピエゾ素子などの圧電素子を用いることができる。
〈b4〉第2振動部13は、タッチパネル11をタッチパネル11の表面に沿った方向に振動させる。具体的には、第2振動部13は図4に示すソレノイドアクチュエータ13a?13dによって構成される。
〈c1〉制御装置2は、制御部21と、記憶部22と、を備えている。
〈c2〉制御部21は、第1振動制御部21aと、第2振動制御部21bと、位置情報生成部21cと、表示制御部21dと、を備えている。
〈c3〉第1振動制御部21aは第1振動部12を制御する。具体的には、第1振動制御部21aは、タッチパネル11の表面が振動するように第1振動部12を制御する。この表面の振動によって、タッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11の表面との間に高圧の空気膜が発生すると、タッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11の表面との摩擦抵抗が低減する。なお、タッチパネル11の表面を高速で振動させると、タッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11の表面との間に高圧の空気膜が発生する確実性を高めることができる。この高速での振動とは例えば超音波振動である。
〈c4〉第2振動制御部21bは第2振動部13を制御する。具体的には、第2振動制御部21bは、タッチパネル11がタッチパネル11の表面に沿った方向に振動するように第2振動部13を制御する。例えば、タッチパネル11の表面が平面である場合には、その平面の法線方向に略垂直な方向がタッチパネル11の表面に沿った方向となる。この表面に沿った方向の振動によって、タッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11の表面との摩擦抵抗が低い状態におけるタッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11との相対移動が可能になる。したがって、タッチパネル11の振動を利用してタッチパネル11の表面に触れている物体の移動を誘導することができる。タッチパネル11をタッチパネル11の表面に沿った方向に低速で振動させると、上記の相対移動が発生する確実性を高めることができる。
〈d1〉表示制御部21dは、位置情報生成部21cから出力される位置情報に基づいて表示画像データを作成し、その表示画像データに基づく画像を表示装置3に表示させる(ステップS2)。本実施形態では、表示装置3によって表示される画像は、図6に示すように、アイコン等の所定の図形3aと、タッチ位置を表すカーソル3bとを含んでいる。
〈d2〉第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bは、タッチ位置の移動を誘導する必要があるか否かを判定する(ステップS3)。例えば、カーソル3bが所定の図形3aに対して所定範囲以上離れている場合に、タッチ位置の移動を誘導する必要があると判定され、後述するステップS4において、カーソル3bが所定の図形3aに近づくように第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bが振動の制御を行うとよい。
〈d3〉所定の図形3aを選択する操作は、タッチパネル11が感圧式タッチパネルである場合には、例えば、所定の図形3aとカーソル3bとが重なった状態でタッチ位置に与えられる圧力が閾値を超えるようにタッチ位置を押すようにすればよく、タッチパネル11が感圧式タッチパネルでない場合には、例えば、所定の図形3aとカーソル3bとが重なった状態が一定時間を超えるようにタッチ位置を固定するようにすればよい。
〈d4〉タッチ位置の移動を誘導する必要があると判定された場合には、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bが表示画像データ及びタッチパネル11の検出結果に基づく振動の制御を行う(ステップS4)。これにより、表示装置3の表示内容及びタッチ位置に適したタッチ位置の移動を誘導することができる。
〈e1〉第2振動制御部21bは、第2振動部13を制御して、タッチパネル11をタッチパネル11の長手方向に振動させ、タッチパネル11の移動方向を右方向と左方向とに交互に切り替えている。そして、タッチパネル11が右方向に移動している期間(期間P1、P3等)とタッチパネル11が左方向に移動している期間(期間P2等)とで第1振動制御部21aが異なる制御を行うことで、タッチ位置の移動を右方向又は左方向に誘導することができる。ここでは、タッチパネル11が右方向に移動している期間(期間P1、P3等)において上記の摩擦抵抗を高くし、タッチパネル11が左方向に移動している期間(期間P2等)において上記の摩擦抵抗を低くして、タッチ位置の移動を右方向に誘導している。
〈e2〉例えば、タッチパネル11が右方向に移動している期間(期間P1、P3等)において第1振動制御部21aが第1振動部1を動作させないことで、上記の摩擦抵抗を高くし、タッチパネル11が左方向に移動している期間(期間P2等)において第1振動制御部21aが第1振動部12を動作させることで、上記の摩擦抵抗を低くすることができる。
〈e3〉第2振動制御部21bは、タッチパネル11の表面に沿った方向の振動の振動周波数及び振動振幅の少なくとも一つを可変することで、上記の摩擦抵抗が低いときにおけるパネル装置1と操作者の指F1との相対移動量を調整することができる。

(3)上記(1)、(2)から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

〈引用発明〉
「パネル装置1、表示装置3、制御装置2を備えている移動誘導装置100であって、
パネル装置1は、タッチパネル11と、第1振動部12と、第2振動部13と、を備え、タッチパネル11は、表面が操作面であり、タッチされた位置を検出し、
第1振動部12は、タッチパネル11の表面を振動させるもので、振動子12a?12dによって構成され、例えば、ピエゾ素子などの圧電素子を用いることができ、タッチパネル11の表面11aの四隅に固定され、
第2振動部13は、ソレノイドアクチュエータ13a?13dによって構成され、タッチパネル11をタッチパネル11の表面に沿った方向に振動させ、
制御装置2は、制御部21と、記憶部22とを備え、制御部21は、第1振動制御部21aと、第2振動制御部21bと、位置情報生成部21cと、表示制御部21dとを備え、
表示装置3によって表示される画像は、アイコン等の所定の図形3aと、タッチ位置を表すカーソル3bとを含んでおり、所定の図形3aを選択する操作は、タッチパネル11が感圧式タッチパネルである場合には、例えば、所定の図形3aとカーソル3bとが重なった状態でタッチ位置に与えられる圧力が閾値を超えるようにタッチ位置を押すようにすればよく、タッチパネル11が感圧式タッチパネルでない場合には、例えば、所定の図形3aとカーソル3bとが重なった状態が一定時間を超えるようにタッチ位置を固定するようにすればよいものであり、
カーソル3bが所定の図形3aに対して所定範囲以上離れている場合に、タッチ位置の移動を誘導する必要があると判定され、カーソル3bが所定の図形3aに近づくように第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bが振動の制御を行うものであり、
第1振動制御部21aは、タッチパネル11の表面が振動するように第1振動部12を制御し、この表面の振動が高速であると、タッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11の表面との間に高圧の空気膜が発生し、タッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11の表面との摩擦抵抗が低減し、
第2振動制御部21bは、タッチパネル11がタッチパネル11の表面に沿った方向に振動するように第2振動部13を制御し、タッチパネル11の移動方向を右方向と左方向とに交互に切り替え、タッチパネル11が右方向に移動している期間(期間P1、P3等)において第1振動制御部21aが第1振動部1を動作させないことで、上記の摩擦抵抗を高くし、タッチパネル11が左方向に移動している期間(期間P2等)において第1振動制御部21aが第1振動部12を動作させることで、上記の摩擦抵抗を低くすることにより、タッチ位置の移動を右方向に誘導することができる移動誘導装置100。」

2.その他の文献について
(1)令和2年7月9日付け補正の却下の決定において、周知技術を示す文献として引用された特開2017-208024号公報(平成29年11月24日出願公開、以下、引用文献2という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0014】
この触覚呈示装置1は、接続された電子機器の操作を行うことが可能であると共に、電子機器が操作を受け付けたことを示す触覚の呈示を行うことを可能としている。また触覚呈示装置1は、接続された電子機器の表示部として機能する表示装置82と当該電子機器を介して接続されている。この表示装置82は、図1(a)に示すように、センターコンソール81に配置されている。
【0015】
触覚呈示装置1は、図1(a)及び図1(b)に示すように、操作面20になされたなぞり操作を検出する検出部としてのタッチパッド2と、操作面20に振動を付加する振動付加部4と、振動付加部4を制御して操作面20に交差する面(振動面40)内において操作面20上の点が楕円軌道を描くような振動を付加し、操作面20に接触している操作指9をなぞり操作方向に駆動する制御部7と、を備えて概略構成されている。
【0016】
また触覚呈示装置1は、タッチパッド2に作用する荷重を検出して操作面20になされたプッシュ操作を検出する荷重検出部としての荷重センサ6を備えている。制御部7は、荷重センサ6がプッシュ操作を検出した場合、振動付加部4を制御して操作面20を上下に振動させてプッシュ操作に対する触覚フィードバックの呈示を行う。
【0017】
(タッチパッド2の構成)
タッチパッド2は、例えば、操作者の体の一部(例えば、指)や専用のペンで操作面20に触れることにより、触れた操作面20上の位置を検出するタッチセンサである。操作者は、例えば、操作面20に操作を行うことにより、接続された電子機器の操作を行うことが可能となる。タッチパッド2としては、例えば、抵抗膜方式、赤外線方式、静電容量方式などのタッチパッドを用いることが可能である。本実施の形態のタッチパッド2は、例えば、静電容量方式のタッチパッドである。
・・・中略・・・
【0019】
タッチパッド2は、例えば、絶縁性を保ちながら交差して操作面20の下方に配置された複数の駆動電極と複数の検出電極を有する。タッチパッド2は、駆動電極と検出電極の間に生成される静電容量を全ての組み合わせで走査して読み出す。そしてタッチパッド2は、読み出した静電容量としきい値とを比較して操作指の接触点を算出する。タッチパッド2は、周期的に静電容量を読み出し、操作指が検出された場合、接触点の座標を算出して検出情報S1として制御部7に出力する。
【0020】
操作面20には、例えば、図2(a)に示すように、左下を原点としてXY座標系が設定されている。接触点の座標は、このXY座標系の座標として算出される。なお操作面20の法線方向は、Z軸としている。上下の振動とは、例えば、このZ軸に沿った方向の振動であり、法線方向が上方向である。
【0021】
(振動付加部4の構成)
振動付加部4は、図1(b)?図2(b)に示すように、第1のアクチュエータ41?第4のアクチュエータ44を有している。この第1のアクチュエータ41?第4のアクチュエータ44は、例えば、金属板と、圧電素子と、を備えたモノモルフ型の圧電アクチュエータである。
【0022】
このモノモルフ型圧電アクチュエータとは、1枚の圧電素子だけで屈曲する構造のアクチュエータである。なお、第1のアクチュエータ41?第4のアクチュエータ44の変形例としては、2枚の圧電素子を金属板の両面に設けたバイモルフ型圧電アクチュエータであっても良い。
【0023】
第1のアクチュエータ41?第4のアクチュエータ44は、例えば、図2(a)の紙面の右下から時計回りに、操作面20の裏面21の四隅に配置されている。
【0024】
第1のアクチュエータ41は、制御部7から出力される第1の駆動信号S2に基づいて操作面20に振動を与える。第2のアクチュエータ42は、制御部7から出力される第2の駆動信号S3に基づいて操作面20に振動を与える。第3のアクチュエータ43は、制御部7から出力される第3の駆動信号S4に基づいて操作面20に振動を与える。第4のアクチュエータ44は、制御部7から出力される第4の駆動信号S5に基づいて操作面20に振動を与える。
【0025】
この第1のアクチュエータ41?第4のアクチュエータ44の共振周波数は、一例として、1Hz?200Hzである。本実施の形態の共振周波数は、80Hzである。」

「【0035】
(操作面20に付加する楕円軌道75について)
図3(a)は、実施の形態に係る触覚呈示装置の操作面になされたなぞり操作の一例を示す上面図であり、図3(b)は、楕円軌道の一例を説明するための概略図であり、図3(c)は、振動付加部の振動パターンの一例を示す概略図である。図4(a)?図4(c)は、実施の形態に係る触覚呈示装置が操作指に与えるせん断力の一例について説明するための概略図である。
【0036】
ここでは、一例として、図3(a)に示すように、時間t1において操作指9が点A(XA,YA)で検出され、時間t2において操作指9が点B(XB,YB)で検出され、なぞり操作が行われたと判定された場合に呈示される楕円軌道75を形成する振動について説明する。なおYA=YBである。このなぞり操作のなぞり操作方向は、X軸に沿っており、図3(a)及び図3(b)に示す時間t7以降も続くものとする。
【0037】
制御部7は、例えば、図3(b)に示すように、操作面20に交差する振動面40内において操作面20上の点が楕円軌道75を描くような振動を付加し、操作面20に接触している操作指9をなぞり操作方向に駆動する。この点は、操作指9が検出された接触点25である。
【0038】
また制御部7は、図3(b)に示すように、楕円軌道75の長径が操作面20の法線方向、楕円軌道75の短径が操作面20の平行方向となるように操作面20に振動を付加するように振動付加部4を制御する。この短径は、なぞり操作方向と一致する。この一致によって操作指9は、効率良くなぞり操作方向に駆動される。以下では、楕円軌道75の生成について、図3(a)?図4(c)を参照しながら説明する。
【0039】
時間t1及び時間t2において連続して操作指9が検出された場合、制御部7は、なぞり操作が行われていると判定する。この際、操作面20は、図4(a)に示すように、基準位置23に位置する。
【0040】
次に時間t3において、制御部7は、図3(b)及び図3(c)に示すように、第1のアクチュエータ41?第4のアクチュエータ44を駆動する第1の駆動信号S2?第4の駆動信号S5を出力して操作面20を基準位置23から上方向に変位させる。操作面20の上方向の変位によって操作指9は、図4(a)に示すように、腹90が潰れるように変形する。この操作面20の上方向の変位は、時間t3?時間t4まで行われる。
【0041】
次に時間t4から時間t5まで制御部7は、第2のアクチュエータ42及び第3のアクチュエータ43が操作面20を上方向に変位させ、第1のアクチュエータ41及び第4のアクチュエータ44が操作面20を下方向に変位させる第1の駆動信号S2?第4の駆動信号S5を出力する。
【0042】
図3(b)に示すように、時間t4から時間t5では、操作面20は、なぞり操作方向に変位しながら基準位置23まで下降する。この際、操作指9は、せん断力Fを受けて操作面20と共になぞり操作方向に移動する。
【0043】
次に時間t5から時間t6まで制御部7は、第1のアクチュエータ41?第4のアクチュエータ44が操作面20を下方に変位させる第1の駆動信号S2?第4の駆動信号S5を出力する。
【0044】
この際、操作面20は、図3(b)に示すように、なぞり操作方向とは反対の方向に変位しながら下方に変位する。つまり操作指9は、図4(c)に示すように、腹90の変形が戻りつつ操作面20が変位する。従って操作指9に作用するせん断力Fは、時間t4?時間t5において作用したせん断力Fよりも小さくなる。さらに操作指9は、なぞり操作方向になぞり操作されているので、操作面20と共に移動せずになぞり操作方向に移動する。
【0045】
次に時間t6から時間t7まで制御部7は、第1のアクチュエータ41及び第4のアクチュエータ44が操作面20を上方向に変位させ、第2のアクチュエータ42及び第3のアクチュエータ43が操作面20を下方に変位させる第1の駆動信号S2?第4の駆動信号S5を出力する。
【0046】
この際、操作面20は、なぞり操作方向とは反対方向に変位しながら基準位置23まで上昇する。しかし操作指9に作用するせん断力Fが小さいため、操作指9は、なぞり操作方向に移動する。
【0047】
次に時間t7以降は、時間t3?時間t7までの繰り返しとなる。時間t7、つまり時間t3において第1のアクチュエータ41?第4のアクチュエータ44が操作面20を基準位置23から上方向に変位させる第1の駆動信号S2?第4の駆動信号S5を出力する。
【0048】
図3(b)に示す時間t7(時間t3)から時間t4では、操作面20が操作指9の腹90を変形させながらなぞり操作方向に変位する。従って操作指9は、なぞり操作方向に移動する。つまり操作指9は、基準位置23から上方向に操作面20が変位する間、なぞり操作方向に駆動される。
【0049】
そして制御部7は、時間t3?時間t7までの振動パターン71を繰り返して操作指9をなぞり操作方向に駆動する。
【0050】
上述のように、操作面20に楕円軌道75を描くような振動が付加されると、操作指9には、なぞり操作方向とその反対方向のせん断力Fが作用する。このせん断力Fは、なぞり操作方向の方が反対方向よりも大きい。
【0051】
この楕円軌道75における操作面20の変位は、合計ではゼロとなる。しかし操作面20の変位によって操作指9に作用する力積は、基準位置23から上方向と下方向とでは非対称であり、合計でゼロとはならない。
【0052】
つまり操作面20が上方向に変位すると力積が大きくなると共に操作指9の変形が大きくなり、操作指9は、操作面20と追従してなぞり操作方向に移動する。また操作面20が下方に変位すると力積が小さくなると共に操作指9の変形が小さくなり、操作指9は、操作面20に追従せずになぞり操作方向に移動する。このような力積の偏りが操作指9をなぞり操作方向に駆動する力となる。
【0053】
このように、操作指9は、なぞり操作が行われている間、なぞり操作方向と同じ方向に大きなせん断力Fが生じるように振動付加部4が制御されると、操作面20上を移動し易くなる。一方操作指9は、なぞり操作方向と反対方向に大きなせん断力Fが生じるように振動付加部4が制御されると、操作面20上を移動し難くなる。従ってこれらを組み合わせることによって触覚呈示装置1は、操作面20上の任意の位置に操作指9を誘導することが可能となる。
【0054】
なお上述では、楕円軌道75がなぞり操作方向と一致する場合について説明したが、触覚呈示装置1は、楕円軌道75の振動面40がなぞり操作方向と交差するように振動を付加するように構成されても良い。」

(2)同じく、令和2年7月9日付け補正の却下の決定において、周知技術を示す文献として引用された特開2011-159280号公報(平成23年8月18日出願公開、以下、引用文献3という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
図1は本発明の好ましい第1実施例によるタッチスクリーン装置の概略的な斜視図である。以下、これを参照して本実施例によるタッチスクリーン装置100aに対して説明する。
図1に図示したように、本実施例によるタッチスクリーン装置100aは、タッチスクリーン110、及び前記タッチスクリーン110を上下方向が含まれた2次元に駆動させるアクチュエーター120a、120bを含んで構成される。
タッチスクリーン110は、画像表示部に表示される画像を見ながらタッチパネルを圧迫操作し、使用者の要求を入力してディスプレーするための手段として、画像表示部とタッチパネルを含んで構成される。ここで、タッチパネルは、透明性及び可撓性を有することによって画像表示部に表示される画像を見ながら圧迫操作する入力信号面の機能を遂行するもので、例えば支持機能を遂行するベースフィルム層に、電極膜が形成されたITOフィルム層(Indium Tin Oxide film)とタッチ面の機能を遂行する外部フィルム層が積層された構造を有する。
【0020】
アクチュエーター120a、120bは振動を発生させてタッチスクリーン110に振動を印加するためのものであって、タッチ感が向上されるようにタッチスクリーン110を上下方向が含まれた2次元駆動させる駆動力を生成することを特徴とする。即ち、本実施例ではタッチスクリーン110を一方向に振動させる1次元的な振動フィードバックではなく、タッチスクリーン110を上下方向が含まれた2次元的な振動フィードバックを生成することによって、使用者に向上されたタッチ感を提供するようになる。
ここで、アクチュエーター120a、120bは上下方向が含まれた2次元駆動力を生成するために、Z方向にタッチスクリーン110を駆動させる第1アクチュエーター120aとX、Y方向の中から選択された一方向にタッチスクリーン110を駆動させる第2アクチュエーター120bで構成される。
【0021】
即ち、第1アクチュエーター120aはタッチスクリーン110を上下方向(Z方向)に駆動させる駆動力を印加するZ軸アクチュエーターであり、第2アクチュエーター120bはタッチスクリーン110を左右方向(X方向)に駆動させる駆動力を印加するX軸アクチュエーター及び前後方向(Y方向)に駆動させる駆動力を印加するY軸アクチュエーターの中から選択された一つのアクチュエーターである。この際、X軸アクチュエーターはタッチスクリーン110の左側、右側、左右側の側面または下面に備えられてタッチスクリーン110に対してX軸方向に振動を印加し、Y軸アクチュエーターはタッチスクリーン110の前方、後方、前後方の側面または下面に備えられてY軸方向に振動を印加し、Z軸アクチュエーターはタッチスクリーン110の下面に備えられてZ軸方向に振動を印加する。
【0022】
図1の(a)にはZ軸アクチュエーターで構成された第1アクチュエーター120aとX軸アクチュエーターで構成された第2アクチュエーター120bを備えるタッチスクリーン装置が図示されている。この場合には、第1アクチュエーター120aと第2アクチュエーター120bで発生する振動力はタッチスクリーン110にX、Z方向に2次元駆動力を印加するようになり、タッチスクリーン110はXZ平面上でT2のような駆動方向(例えば、斜線、円または楕円形状の駆動方向)に駆動するようになる。
図1の(b)にはZ軸アクチュエーターで構成された第1アクチュエーター120aとY軸アクチュエーターで構成された第2アクチュエーター120bを備えるタッチスクリーン装置が図示されている。この場合には、第1アクチュエーター120aと第2アクチュエーター120bで発生する振動力はタッチスクリーン110にY、Z方向に2次元駆動力を印加するようになり、タッチスクリーン110はYZ平面上でT3のような駆動方向(例えば、斜線、円または楕円形状の駆動方向)に駆動するようになる。
【0023】
従って、本実施例によるタッチスクリーン装置100aは、タッチスクリーンを上下方向に駆動させることによって、使用者にクリック感、ダイヤリング感、表面質感のような実際的なタッチ感を伝達できるという長所を有し、これに対する具体的な説明は後述する。
一方、アクチュエーター120a、120bには外部電源によって長さ方向に収縮または膨脹することによって振動感を印加する圧電(またはポリマー)アクチュエーターまたはリニア振動モーターが用いられることができる。
【0024】
図2は図1に図示されたタッチスクリーン装置のタッチ感の発生原理を説明するための図面であり、図3は図1に図示されたタッチスクリーン装置のドラッグ感の発生原理の応用例を説明するための図面であり、図4は図1に図示されたタッチスクリーン装置のテクスチャー感の発生原理の応用例を説明するための図面である。
【0025】
以下、図面を参照してタッチスクリーンが2次元に駆動する場合タッチ感が向上される原理に対して説明する。一方、図2は図1の(a)に図示されたXZ平面内で2次元駆動する状態を例示的に図示したもので、YZ平面内でも同一の原理で駆動することができるということはいうまでもない。
【0026】
図2に図示したように、使用者がタッチスクリーン110を入力手段(使用者の指など)でタッチする場合、XZ平面上でT2のような駆動方向に楕円駆動するタッチスクリーン110は使用者の指とともに振動するようになる。さらに具体的には、第1アクチュエーター120aがタッチスクリーン110を上方向に駆動させる時、X軸アクチュエーター120bはタッチスクリーン110を左右方向(X方向)のうち一方向に駆動させて、第1アクチュエーター120aがタッチスクリーン110を下方向に駆動させる時、X軸アクチュエーター120bはタッチスクリーン110を左右方向(X方向)のうち他方向(一方向と反対方向)に駆動させる。この際、入力手段(使用者の指など)はタッチスクリーン110が移動する感じを受けるようになるため、優秀なタッチ感を伝達できるようになる。
【0027】
また、上述の過程において、第1アクチュエーター120aがタッチスクリーン110を下方向に駆動させる時はタッチスクリーン110と入力手段が分離されて、第1アクチュエーター120aがタッチスクリーン110を上方向に駆動させる時はタッチスクリーン110と入力手段が接触される過程を繰り返すと、使用者は入力手段を通じてタッチスクリーン110が左右方向(X方向)のうち一方向に沿って実際に移動する感じを受ける。従って、使用者が入力手段をタッチスクリーン110上で一方向に移動させると、タッチスクリーン装置100aがこれを認識してタッチスクリーン110を上述の方式で駆動させることによって、使用者はドラッグ(drag)感(物体を押して移動させる時、物体が付いて動く感じ)を感じることができる。
【0028】
例えば、図3に図示されたように、タッチスクリーン110からアイコン(Icon)を移動させる時、アイコンが移動する方向にパネルが移動する感じが入力手段を通じて使用者に伝達されて、これは結局アイコンを動かしていく感じに認知される。
また、第1アクチュエーター120aはタッチスクリーン110を下方向に駆動させてタッチスクリーン110と入力手段を分離させる過程と、タッチスクリーン110を上方向に駆動させてタッチスクリーン110と入力手段を接触させる過程を繰り返して遂行しながら、接触時間と分離時間を制御することによって使用者が微細形状などの表面質感を与えるテクスチャー(texture)感を感じることができる。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
ア.本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「タッチパネル11」は、「表面が操作面」であるから、本願発明1の「面状の操作部」に相当する。
(イ)引用発明の「表示装置3」は、本願発明1の「該操作部から離れた表示部」に相当するといえる。
(ウ)引用発明の「表示装置3によって表示される」「アイコン等の所定の図形3a」は、本願発明1の「前記操作部上の位置と関連付けて表示した入力部」に相当する。
(エ)引用発明の「制御部21と記憶部22」は、「タッチパネル11が感圧式タッチパネルである場合には、例えば、所定の図形3aとカーソル3bとが重なった状態でタッチ位置に与えられる圧力が閾値を超えるようにタッチ位置を押す」こと、「タッチパネル11が感圧式タッチパネルでない場合には、例えば、所定の図形3aとカーソル3bとが重なった状態が一定時間を超えるようにタッチ位置を固定する」ことにより「所定の図形3aを選択する操作」を行うことは明らかであるから、本願発明1の「前記操作部に対する操作体の接触によって、前記表示部に表示された前記入力部に対する操作を間接的に行わせる制御部」に相当する。
(オ)引用発明の「第1振動部12」は、「タッチパネル11の表面が振動するように」制御されているから、本願発明1の「該操作部を面直方向に振動させる面直方向振動部」に相当するといえる。
(カ)引用発明の「第2振動部13」は、「タッチパネル11をタッチパネル11の表面に沿った方向に振動させ」るから、本願発明1の「前記操作部を面方向に振動させる面方向振動部」相当するといえる。
(キ)引用発明の「第1振動制御部21a」及び「第2振動制御部21b」は、本願発明1の「前記面直方向振動部および前記面方向振動部によって前記操作部に面直方向の振動および面方向の振動を発生させる振動制御部」に相当するといえる。
(ク)引用発明の「第2振動制御部21bは、タッチパネル11がタッチパネル11の表面に沿った方向に振動するように第2振動部13を制御し、タッチパネル11の移動方向を右方向と左方向とに交互に切り替え、タッチパネル11が右方向に移動している期間(期間P1、P3等)において第1振動制御部21aが第1振動部1を動作させないことで、上記の摩擦抵抗を高くし、タッチパネル11が左方向に移動している期間(期間P2等)において第1振動制御部21aが第1振動部12を動作させることで、上記の摩擦抵抗を低くすることにより、タッチ位置の移動を右方向に誘導する」構成は、本願発明1の「振動制御部は、前記面直方向振動部が前記操作部に発生させる面直方向の振動によって、前記操作部を表面側へ変位させて前記操作体との接触圧が高くなったときに、前記操作体を誘導する面方向の変位の向きの振動を合わせるように制御して、前記操作部に接触された前記操作体を前記操作部の面に沿って誘導する」ことと、「振動制御部は、前記操作部に接触された前記操作体を前記操作部の面に沿って誘導する」構成である点では共通するといえる。
(ケ)引用発明の「移動誘導装置100」は、後述する相違点を除き、本願発明1の「情報処理装置」に相当するといえる。

イ.したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「面状の操作部と、
該操作部から離れた表示部と、
該表示部に、前記操作部上の位置と関連付けて表示した入力部と、
前記操作部に対する操作体の接触によって、前記表示部に表示された前記入力部に対する操作を間接的に行わせる制御部とを有する情報処理装置であって、
前記操作部は、
該操作部を面直方向に振動させる面直方向振動部と、
前記操作部を面方向に振動させる面方向振動部とを有し、
前記制御部は、
前記面直方向振動部および前記面方向振動部によって前記操作部に面直方向の振動および面方向の振動を発生させる振動制御部を備え、
振動制御部は、前記操作部に接触された前記操作体を前記操作部の面に沿って誘導することを特徴とする情報処理装置。」

(相違点)
本願発明1では、「振動制御部」は、「前記面直方向振動部が前記操作部に発生させる面直方向の振動によって、前記操作部を表面側へ変位させて前記操作体との接触圧が高くなったときに、前記操作体を誘導する面方向の変位の向きの振動を合わせるように制御して、前記操作部に接触された前記操作体を前記操作部の面に沿って誘導する」のに対し、引用発明では、第2振動制御部21bがタッチパネル11を右方向に移動している期間(期間P1、P3等)において第1振動制御部21aが第1振動部1を動作させないことで、表面に触れている物体とタッチパネル11の表面との摩擦抵抗を高くし、第2振動制御部21bがタッチパネル11を左方向に移動している期間(期間P2等)において第1振動制御部21aが第1振動部12を動作させることで、上記の摩擦抵抗を低くすることにより、タッチ位置の移動を右方向に誘導する点。

(2)相違点についての判断
上記引用文献2には、「操作面20に交差する振動面40内において操作面20上の点が楕円軌道75を描くような振動を付加し、操作面20に接触している操作指9をなぞり操作方向に駆動」し(【0037】)、「時間t3において、制御部7は、図3(b)及び図3(c)に示すように、第1のアクチュエータ41?第4のアクチュエータ44を駆動する第1の駆動信号S2?第4の駆動信号S5を出力して操作面20を基準位置23から上方向に変位させ」、「操作面20の上方向の変位によって操作指9は、図4(a)に示すように、腹90が潰れるように変形」し、「この操作面20の上方向の変位は、時間t3?時間t4まで行われ」(【0040】)、「図3(b)に示す時間t7(時間t3)から時間t4では、操作面20が操作指9の腹90を変形させながらなぞり操作方向に変位」し、「従って操作指9は、なぞり操作方向に移動」し、「つまり操作指9は、基準位置23から上方向に操作面20が変位する間、なぞり操作方向に駆動される」(【0048】)こと、すなわち、操作面20上の点が楕円軌道75を描くような振動を付加することにより、操作面20の上方向の変位によって操作指9の腹90を変形させ、操作指9を変形させながらなぞり操作方向に変位させる構成が記載されている。
しかしながら、引用文献2の操作面20上の点が楕円軌道75を描くような振動を付加する振動付加部4の構成は、「第1のアクチュエータ41?第4のアクチュエータ44は、例えば、図2(a)の紙面の右下から時計回りに、操作面20の裏面21の四隅に配置され」(【0023】)、「第1のアクチュエータ41は、制御部7から出力される第1の駆動信号S2に基づいて操作面20に振動を与え」、「第2のアクチュエータ42は、制御部7から出力される第2の駆動信号S3に基づいて操作面20に振動を与え」、「第3のアクチュエータ43は、制御部7から出力される第3の駆動信号S4に基づいて操作面20に振動を与え」、「第4のアクチュエータ44は、制御部7から出力される第4の駆動信号S5に基づいて操作面20に振動を与える」(【0024】)ものであるから、上記引用文献2に記載された技術的事項を、「タッチパネル11の表面を振動させ」「タッチパネルの四隅に固定される」「第1振動部12」と「タッチパネル11をタッチパネル11の表面に沿った方向に振動させる第2振動部13」を備える引用発明に適用する動機付けはない。

また、引用文献3には、「図2に図示したように、使用者がタッチスクリーン110を入力手段(使用者の指など)でタッチする場合、XZ平面上でT2のような駆動方向に楕円駆動するタッチスクリーン110は使用者の指とともに振動するようになる」、「さらに具体的には、第1アクチュエーター120aがタッチスクリーン110を上方向に駆動させる時、X軸アクチュエーター120bはタッチスクリーン110を左右方向(X方向)のうち一方向に駆動させて、第1アクチュエーター120aがタッチスクリーン110を下方向に駆動させる時、X軸アクチュエーター120bはタッチスクリーン110を左右方向(X方向)のうち他方向(一方向と反対方向)に駆動させ」、「この際、入力手段(使用者の指など)はタッチスクリーン110が移動する感じを受けるようになるため、優秀なタッチ感を伝達できるようになる」こと(【0026】)、「また、上述の過程において、第1アクチュエーター120aがタッチスクリーン110を下方向に駆動させる時はタッチスクリーン110と入力手段が分離されて、第1アクチュエーター120aがタッチスクリーン110を上方向に駆動させる時はタッチスクリーン110と入力手段が接触される過程を繰り返すと、使用者は入力手段を通じてタッチスクリーン110が左右方向(X方向)のうち一方向に沿って実際に移動する感じを受け」、「従って、使用者が入力手段をタッチスクリーン110上で一方向に移動させると、タッチスクリーン装置100aがこれを認識してタッチスクリーン110を上述の方式で駆動させることによって、使用者はドラッグ(drag)感(物体を押して移動させる時、物体が付いて動く感じ)を感じることができる」こと(【0027】)、すなわち、タッチスクリーン110を上方向に駆動させる時、タッチスクリーン110を左右方向(X方向)のうち一方向に駆動させる構成が記載されている。
しかしながら、引用文献2の上記構成は、優秀なタッチ感を伝達できるようにするため、または、ドラッグ(drag)感を感じることができるようにするための構成であるから、タッチパネル11が右方向に移動している期間(期間P1、P3等)において第1振動制御部21aが第1振動部1を動作させないことで、上記の摩擦抵抗を高くし、タッチパネル11が左方向に移動している期間(期間P2等)において第1振動制御部21aが第1振動部12を動作させることで、上記の摩擦抵抗を低くすることにより、タッチ位置の移動を方向に誘導する引用発明に適用する動機付けはない。

また、上記相違点に係る本願発明1の構成が、本願の出願前に当該技術分野における周知技術とあったともいえない。

そうすると、引用発明の「振動制御部」において、「前記面直方向振動部が前記操作部に発生させる面直方向の振動によって、前記操作部を表面側へ変位させて前記操作体との接触圧が高くなったときに、前記操作体を誘導する面方向の変位の向きの振動を合わせるように制御して、前記操作部に接触された前記操作体を前記操作部の面に沿って誘導する」こと、すなわち、相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-4について
本願発明2-4も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-09-21 
出願番号 特願2019-50877(P2019-50877)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木内 康裕  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 小田 浩
▲吉▼田 耕一
発明の名称 情報処理装置  
代理人 弁護士法人クレオ国際法律特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ