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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1378504
審判番号 不服2020-9053  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-30 
確定日 2021-09-30 
事件の表示 特願2018-130145「保護シースを有するカテーテルアセンブリ及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月27日出願公開、特開2018-202179〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)9月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年(平成24年)9月27日 イタリア)を国際出願日とする出願である特願2015-533724号の一部を平成30年7月9日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成30年 8月 7日 :手続補正書の提出
平成30年 8月 7日 :上申書の提出
令和 1年 5月30日付け:拒絶理由通知
令和 1年11月 5日 :意見書の提出
令和 1年11月 5日 :手続補正書の提出
令和 2年 4月 8日付け:拒絶査定
令和 2年 6月30日 :審判請求、同時に、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出

第2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、及び、引用文献1に記載された技術または引用文献2に記載された技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献1.米国特許出願公開第2005/0234499号明細書
引用文献2.特表平5-509245号公報

第3 本件発明
本件の請求項1に係る発明は、令和2年6月30日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める(以下、「本件発明」という。)。なお、上記手続補正は、補正前の請求項1の記載を何ら変更するものではない。
「ガイドワイヤチャネル(12)及びインフレーションチャネル(16)を備えるコネクタ(8)と、
近位端(24)から遠位端(28)まで軸方向(X-X)に沿って延在し、同軸ルーメンとしてガイドワイヤルーメン(32)及びインフレーションルーメン(36)を有するシャフト(20)とを備え、
前記シャフト(20)が、その近位端(24)においてコネクタ(8)に接続されて、前記ガイドワイヤルーメン(32)及びインフレーションルーメン(36)がそれぞれ前記ガイドワイヤチャネル(12)及びインフレーションチャネル(16)と機械的かつ流体的に接続されており、
前記機械的かつ流体的な接続が、前記シャフト(20)の前記近位端(24)においてカテーテル(4)のキンク部(44)に対応させて実現され、前記キンク部(44)が、前記コネクタ(8)に対する前記シャフト(20)の相対的な屈曲を可能とするように可撓性を有する、カテーテル(4)において、
前記ガイドワイヤルーメン及びインフレーションルーメン(32,36)とは反対側の前記シャフト(20)の外壁(56)の周囲に設置された保護シース(52)を備え、該保護シース(52)が、前記シャフト(20)の前記外壁(56)と前記キンク部(44)の内壁(64)とが直接接触して固定されるように前記シャフト(20)の前記近位端(24)から第1の距離(L1)に軸方向に設置された第1シース端(60)から、前記シャフト(20)の前記外壁(56)と前記キンク部(44)の前記内壁(64)とが直接接触して固定されるのを避けるように少なくとも前記キンク部(44)の第2キンク端(42)に対応させて軸方向に延在している第2シース端(68)まで延在していることを特徴とするカテーテル(4)。」

第4 引用文献1の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
(ア)引用文献1には、以下の事項が記載されている。
ア「[0001] The invention is related to the field of medical devices, and more particularly, to catheters including medical balloon catheters including a manifold.」
(当審訳、下線は当審で付与した。以下同じ。:[0001] 本発明は医療装置の分野に関し、特に、マニホールドを備えた医療用バルーンカテーテルを含むカテーテルに関する。)

イ「[0026] Refer now to FIG. 1, which is a partial side view of one example embodiment of a catheter 10 including a manifold 22. In the embodiment shown, the catheter 10 is a balloon catheter, for example; an over-the-wire (OTW) balloon catheter that may be configured for advancement over a guidewire 25, or other such device. The catheter 10 can include a shaft assembly 12 including a proximal portion 14 having a proximal end 16, and a distal portion 18 having a distal end 20. A manifold 22 can be disposed adjacent the proximal end 16 of the shaft assembly 12, and one or more deployable balloon assembly 24 can be disposed adjacent the distal end 20 of the shaft assembly 12.
[0027] Referring now to FIG. 2, the shaft assembly 12 can include at least two or more lumens extending therein. The embodiment shown includes two lumens, for example a device lumen 26 and an inflation lumen 28. The device lumen 26 extends the length of the shaft assembly 12, and may be adapted to receive a device 25, such as a guide wire, or other such medical device, as is generally known in the art. In general, the device lumen 26 can be accessed through the manifold 22 such that the device 25 can extend through the manifold 22 into the lumen 26. The inflation lumen 28 allows fluid communication between the manifold 22 and the deployable balloon assembly 24. In general, the proximal end of the inflation lumen 28 can be put into fluid communication with an inflation source via the manifold 22, and the distal end of the inflation lumen 28 is in fluid communication with the interior of the deployable balloon assembly 24.
[0028] The shaft assembly 12 can include a generally coaxial design including a plurality of tubular members generally coaxially disposed to form the lumens 26/28. In the generally co-axial design shown, the shaft assembly 12 can include an inner tubular member 30 and an outer tubular member 32. The inner tubular member 30 defines the device lumen 26, the outer tubular member 32 is disposed about the inner tubular member 32 to define the annular inflation lumen 28 between the inner and outer tubular members 30/32. In at least some embodiments, the inner and outer tubular members 30/32 are two separate and distinct structures, and the inner tubular member 30 is disposed within and may be attached to the outer tubular member 32 to create the shaft assembly 12. In the embodiment shown, the proximal end 35 of the inner tubular member 30 extends proximally beyond the proximal end 37 of the outer tubular member 32, and the manifold 22 is disposed about the proximal portion 14 of the shaft assembly 12. As such, the manifold 22 can be disposed about and/or attached directly to a portion of the inner tubular member 30 adjacent the proximal end 35 thereof, and disposed about and/or attached directly to a portion of the outer tubular member 32 adjacent the proximal end 37 thereof. Such an arrangement can provide for good attachment of the manifold 22 to both the inner and outer tubular members 30/32 of the shaft 12. This can provide a mechanism for maintaining the longitudinal positioning of the inner and outer tubular members 30/32 relative to one another. In at least some embodiments, the proximal end 35 of the inner tubular member 30 extends proximally beyond the proximal end 37 of the outer tubular member 32 by a length in the range of about 0.5 cm or more, or by a length in the range of about 0.5 to about 3 cm. 」
([0026] ここで図1を参照すると、それは、マニホールド22を備えたカテーテル10の一実施形態の部分側面図である。図示の実施形態では、カテーテル10は、バルーンカテーテル、例えば、ガイドワイヤ25上を前進するように構成されたオーバー・ザ・ワイヤ(OTW)バルーンカテーテル、または他のそのような装置である。カテーテル10は、近位端16を有する近位部14、及び、遠位端20を有する遠位部分18を含むシャフトアセンブリ12を含むことができる。マニホールド22は、シャフトアセンブリ12の近位端16に隣接して配置することができ、1つ以上の展開可能なバルーンアセンブリ24がシャフトアセンブリ12の遠位端20に隣接して配置することができる。
[0027] ここで図2を参照すると、シャフトアセンブリ12は、その内部に延在する少なくとも2本またはそれ以上のルーメンを含むことができる。図示実施形態は2のルーメン、装置ルーメン26及び膨張ルーメン28を含む。装置ルーメン26は、シャフトアセンブリ12の全長に亘って延びており、ガイドワイヤ、または、当技術分野で一般的に知られているような他の医療用デバイスである装置25を受容するように適合させることができる。一般に、装置ルーメン26は、装置25がマニホールド22を通って延在するルーメン26に入ることができるようにマニホールド22を介してアクセスすることができる。膨張ルーメン28は、マニホルド22と展開可能なバルーン組立体24との間の流体連通を可能にする。一般に、膨張ルーメン28の近位端は、マニホールド22を介して膨張供給源と流体連通することが可能であり、膨張ルーメン28の遠位端は、展開可能なバルーン組立体24の内部と流体連通している。
[0028] シャフトアセンブリ12は、一般的な同軸ルーメン26,28を形成するように配置された複数の管状部材を含む一般的な同軸設計を含むことができる。一般的な同軸設計では、シャフトアセンブリ12は内側管状部材30及び外側管状部材32を含むことができる。内側管状部材30は、装置ルーメン26を画定し、外側管状部材32は内側管状部材32の周囲に配置された内側管状部材30と外側管状部材32との間の環状膨張ルーメン28を形成する。少なくともいくつかの実施形態では、内側及び外側管状部材30/32は、2個の分離した別個の構造体であり、内側管状部材30は、外側管状部材32の内部に配置され、取付けられて、シャフトアセンブリ12を形成することができる。図示の実施形態では、内側管状部材30の近位端35は、外側管状部材32の近位端37を超えて近位に延び、マニホールド22はシャフト組立体12の近位部14の周りに配置されている。このように、マニホールド22は、その近位端35近傍において内側管状部材30の一部の周囲に配置され、及び/または、直接取り付けられており、その近位端37近傍において外側管状部材32の一部の周囲に配置され、及び/または、直接取り付けることができる。このような装置は、マニホールド22をシャフト12の内側及び外側両方の管状部材30/32へ良好に取り付けるために提供することができる。これは、内側及び外側管状部材30/32の長手方向の位置を維持するための機構を提供することができる。少なくともいくつかの実施形態において、内側管状部材30の近位端35は、外側管状部材32の近位端37を越えて近位方向に延び約0.5cm以上の範囲の長さ、または約0.5から約3cmの範囲の長さである。)

ウ「[0036] The manifold 22 can be of unitary or monolithic construction, meaning, for example, that it is a single or unitary piece of material. The manifold 22 can be overmolded or otherwise formed or created directly onto a part of the proximal portion 14 of the shaft 12 adjacent and/or about the proximal end 16 of the shaft 12. Due to the staggered arrangement of the inner and outer tubular members 30/32 adjacent the proximal end 16 of the shaft 12, the manifold 22 can be overmolded about both a part of the outer tubular member 32 and a part of the inner tubular member 30. Further due to the staggered arrangement of the inner and outer tubular members 30/32, the inner tubular member 30 extends further proximally into the body of the manifold 22 than the outer tubular member 32. The manifold 22 may include a shape, size and/or structure that is adapted for the use as desired.
[0037] For example, in the embodiment shown, the manifold 22 may include a proximal portion 48 defining a plurality of protrusions 41/43 each defining a port 42/44, respectively. The manifold 22 may also include a distal portion 50 disposed about the proximal end 16 of the shaft 12. The manifold 22 defines a plurality of lumens, for example lumens 46/47, that each extend through the manifold 22 from the shaft assembly 12 to one of the ports 42/44.
[0038] Referring now to FIG. 3, the lumen 47 extends from the proximal end 35 of the inner tubular member 30 to the port 44, thereby defining a pathway between the port 44 and the device lumen 26 through the manifold 22. The pathway may, for example, allow for a medical device, such as a guidewire or the like, to extend from the port 42 through the lumen 47 to device lumen 26. The lumen 46 extends from the proximal end 37 of the outer tubular member 32 to the port 42, thereby defining a pathway between the port 42 and the inflation lumen 28 through the manifold 22. The pathway may, for example, allow for fluid communication between the port 42 and the inflation lumen 28, such that inflation media; for example, may be delivered to the inflation lumen 28 through the port 42.」
([0036] マニホールド22は、単一または単一の構成要素であることを意味し、例えば、単一または一体構造のものであり得る。マニホールド22は、シャフト12の近位端16に隣接して及び/またはシャフト12の近位端16の周りに、オーバーモールドされるか、そうでなければシャフト12の近位部14の一部に直接形成または形成され得る。シャフト12の近位端部16に隣接する内側及び外側管状部材30/32の互い違いの配置により、マニホールド22は、外側管状部材32の一部及び内側管状部材30の一部の周りにオーバーモールドすることができる。
[0037] 例えば、図示の実施形態では、マニホールド22は、それぞれポート42/44をそれぞれ画定する複数の突起41/43を画定する近位部分48を含むことができる。マニホールド22はまた、シャフト12の近位端16の周りに配置された遠位部分50を含み得る。マニホールド22は、シャフトアセンブリ12からポート42/44のうちの一つまでマニホールド22を通ってそれぞれ延びる複数のルーメン、例えばルーメン46/47を画定する。
[0038] ここで図3を参照すると、ルーメン47は、内側管状部材30の近位端35からポート44間で延び、それによってマニホールド22を通るポート44と装置ルーメン26との間の経路を画定する。経路は、例えば、ガイドワイヤ等のような医療装置がルーメン47を通ってポート42から装置ルーメン26まで延びることを可能にし得る。ルーメン46は、外側管状部材32の近位端37からポート42まで延び、それによってマニホールド22を通るポート42と膨張ルーメン28との経路を画定する。経路は、例えば、膨張媒体がポート42を通って膨張ルーメン28に送出することができるような、例えば、ポート42及び膨張ルーメン28との間の流体連通を可能にすることができる。)

エ「[0041] Additionally, catheter 10 may also include one or more strain relief portions, for example, strain relief portion 60 disposed about the proximal portion of the shaft 12. In at least some embodiments, the strain relief portion 60 can be a portion of the unitary and/or monolithic manifold 22, meaning that the strain relief portion 60 is merely an extension of the unitary manifold 22. In other words, the unitary manifold 22 can include a strain relief portion 60 in the distal manifold portion 50 that is of unitary construction with the remainder of the manifold 22. Some embodiments, however, may include separate strain relief members, as are generally known in the art that may be attached to the shaft 12 adjacent the manifold 22. Yet other embodiments may include a separate strain relief which is disposed about the shaft 12, and thereafter, a portion of the manifold may be overmolded about a portion of the strain relief.
[0042] The strain relief portion 60 may include structure that may allow for desired flexibility characteristics, for example, to provide for a transition in flexibility between the shaft assembly 12 and the remainder of the manifold 22. For example, the strain relief portion 60 can include varying geometry, such as a tapering thickness, grooves, channels, ridges, or other such structure defined, for example, in the surface thereof to provide for the desired flexibility characteristics. In at least some embodiments, the strain relief portion 60 can be more flexible at the distal end than it is at the proximal end thereof. In the embodiment shown, the strain relief portion 60 includes one or more grooves 61 defined in the surface to provide for increased flexibility. However, it should be understood that any of a broad variety of structures may be used for the strain relief portion to achieve the desired characteristics. Some examples of strain relief configurations that may be used are disclosed in U.S. Pat. No.6,273,404, which is incorporated herein by reference. 」
([0041] 更に、カテーテル10はまた、一つ又はそれ以上の張力緩和部、例えば、シャフト12の近位部分の周りに配置された張力緩和部60を含むことができる。少なくともいくつかの実施形態では、張力緩和部60は、一体型及び/またはモノリシック型マニホールド22の一部であってもよく、張力緩和部60は、一体的なマニホールド22の延長部であることを意味する。言い換えれば、単一のマニホルド22は、マニホルド22の残りの部分と一体構成である遠位マニホールド部50に張力緩和部60を含むことができる。いくつかの実施形態では、マニホールド22に隣接してシャフト12に取り付けてもよいことが当技術分野で知られているように、別個の張力緩和部を含んでいてもよい。さらに他の実施形態は、シャフト12の周りに配置された、別個の張力緩和部を含んでもよく、その後、マニホールドは、張力緩和部の一部分の周りにオーバーモールドされてもよい。
[0042] 張力緩和部60は、例えば、シャフトアセンブリ12とマニホールド22の残りの部分との間の可撓性の変化をもたらすために、所望の可撓性を可能し得る構造を含み得る。例えば、張力緩和部60は、例えば、その表面に所望の可撓性特性を提供するために、変化する幾何学的形状、テーパーした厚み、溝、チャンネル、隆起部、または他の構造を含むことができる。少なくともいくつかの実施形態では、張力緩和部60は、その近位端よりも遠位端において、より可撓性であることができる。図示の実施形態では、張力緩和部60は、表面に1つ以上の溝61を含み、増加した柔軟性を提供することである。しかしながら、所望の特性を達成するために幅広い種類の構造体のいずれかを張力緩和部に使用することができることを理解すべきである。使用することができる張力緩和構成の一部の例は、参照することにより本明細書に組み込まれている米国特許6,273,404に開示されている。)

オ「[0052] Refer now to FIG. 8, which is a section view illustrating another alternative embodiment of a manifold 22 disposed about a proximal end 16 of a catheter shaft assembly 12 similar to the embodiments described above, wherein like reference numbers indicate similar structure. This embodiment, however, includes a member and/or layer of material 117 disposed about a portion of the outer tubular member 32. A cross sectional view taken along line 9-9 of FIG. 8 is shown in FIG. 9. A portion of the member and/or layer 117 may be disposed between the outer tubular member 32 and a portion of the manifold 22, for example, a part of the strain relief portion 60 of the manifold 22.
[0053] The layer 117 may be provided over a portion of the proximal end of the outer tubular member 32 and/or the inner tubular member 30 to achieve certain desired characteristics. The embodiment shown includes a layer 117 over only the outer tubular member 32, but it should be understood that a similar layer may be disposed over the inner tubular member 30. In some embodiments, the layer 117 may provide better bonding of the manifold 22 to the tubular member 30/32. In some embodiments, the layer 117 may provide for better strength, such as burst strength, in the finished device. In some embodiments, the layer 117 may provide a protective layer to a portion of the tubular member 30/32 to provide protection and/or insulation to the tubular member 30/32 during the molding of the manifold 22 thereto. For example, when the molding material is molded onto the shaft 12, the outer tubular member 32 can in some cases be damaged (particularly if a braided steel or other support member is provided) by the heat involved in the molding process. The inclusion of a layer 117 over the proximal end of the outer tubular member 32 can improve burst strength of the finished product by protecting the outer tubular member 32 from excessive heat as well as providing additional material for containing pressure and keeping braid strands encased.」
([0052] ここで、図8を参酌すると、これは、上述の実施形態と同様のカテーテルシャフトアセンブリ12の近位端部16の周りに配置されたマニホールド22の別の代替実施形態を示す断面図であり、類似の参照番号は類似の構造を示す。しかしながらこの実施形態は、外側管状部材32の一部の周りに配置された部材及び/または材料の層117を含む。いくつかの実施形態において、層117は、完成したデバイスにおいて、破裂強度などのより良い強度を提供し得る。図8の9-9線に沿った断面図を図9に示す。部材及び/または層117の一部は、外側筒状部材32とマニホールド22の一部、例えば、マニホールド22の張力緩和部60の一部との間に配置されてもよい。
[0053] 層117は、特定の所望の特性を達成するために、外側筒状部材32及び/または内側管状部材30の近位端の一部の上に設けられてもよい。図示の実施形態は、外側管状部材32のみを覆う層117を含むが、同様の層を内側管状部材30を覆うように配置してもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態において、層117は、マニホールド22の管状部材30/32へのより良好な結合を提供し得る。いくつかの実施形態において、層117は、完成したデバイスにおいて、破裂強度などのより良い強度を提供し得る。いくつかの実施形態では、層117は、管状部材30/32の一部への保護層を提供して、マニホールド22の成形中の管状部材30/32を保護及び/または絶縁することができる。例えば、成形材料がシャフト12上に成形されるとき(特に編組鋼または他の支持部材が設けられている場合。)、成形プロセスに伴う熱によって外側管状部材32が損傷を受けることがある。外側管状部材32の近位端を覆う層117を含めることは、外側管状部材32を過度の熱から保護すると共に、圧力を封じ込めて編組ストランドを包み込むための追加の材料を提供することによって完成品の破裂強度を改善することができる。)

カ「図1



キ「図2



ク「図8



ケ「図9



コ 上記イ[0026]及びカより、シャフトアセンブリ12は、近位端16から遠位端20まで軸方向に沿って延在していることが理解できる。

サ 上記ウ[0038]、エ[0041]、ク及びケより、ルーメン47及びルーメン46と装置ルーメン26及び膨張ルーメン28との接続は、カテーテル10の張力緩和部60によって実現されていることが理解できる。

シ 上記オ[0052]、ケより、層117が装置ルーメン26及び膨張ルーメン28とは反対側のシャフトアセンブリ12の外側管状部材32の周囲に設置されていることが理解できる。

ス 上記オ[0052]、[0053]、クより、層117が、シャフトアセンブリ12の外側管状部材32と張力緩和部60の内壁とが直接接触して固定されるように前記シャフトアセンブリ12の近位端16から所定の距離だけ軸方向に離れて設置された層の近位側端から、前記シャフトアセンブリ12の前記外側管状部材32と前記張力緩和部60の前記内壁との間に配置され少なくとも前記張力緩和部60の遠位側端よりも軸方向に遠位側に延在している層の遠位側端まで延在していることが理解できる。

(イ)上記記載事項及び認定事項から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
a 引用文献1に記載された技術は、カテーテルに関するものである(ア[0001])。
b カテーテル10は、マニホールド22とシャフトアセンブリ12とを備えている(イ[0026])。
c マニホールド22は、ガイドワイヤ等のような医療装置が通るルーメン47及び膨張媒体を送出できるルーメン46を備えている(ウ[0038])。
d シャフトアセンブリ12は、近位端16から遠位端20まで軸方向に沿って延在しており(コ)、装置ルーメン26及び膨張ルーメン28を有している(イ[0027])。
e シャフトアセンブリ12は、その近位端16においてマニホールド22に接続されており(ウ[0036])、ルーメン47及びルーメン46がそれぞれ装置ルーメン26及び膨張ルーメン28と流体的に接続されている(ウ[0038])。さらに、ルーメン47、46を備えたマニホールド22は、装置ルーメン26を画定する内側管状部材30及び内側管状部材30と協働して膨張ルーメン28を画定する外側管状部材にオーバーモールドされる(イ[0028]、ウ[0036])から、ルーメン47及びルーメン46がそれぞれ装置ルーメン26及び膨張ルーメン28と機械的に接続されていると認められる。
f ルーメン47及びルーメン46と装置ルーメン26及び膨張ルーメン28との接続は、カテーテル10の張力緩和部60によって実現され(サ)、前記張力緩和部60がマニホールド22に対するシャフトアセンブリ12の相対的な屈曲を可能とするように可撓性を有している(エ[0042])。
g 装置ルーメン26及び膨張ルーメン28とは反対側のシャフトアセンブリ12の外側管状部材32の周囲に設置された層117を備え(シ)、該層117が、前記シャフトアセンブリ12の前記外側管状部材32と張力緩和部60の内壁とが直接接触して固定されるように前記シャフトアセンブリ12の近位端16から所定の距離だけ軸方向に離れて設置された層の近位側端から、前記シャフトアセンブリ12の前記外側管状部材32と前記張力緩和部60の前記内壁との間に配置され前記張力緩和部60の遠位側端よりも軸方向に遠位側に延在している層の遠位側端まで延在している(ス)。
h 層117を備えたカテーテル10において、装置ルーメン26及び膨張ルーメン28は偏心二重ルーメンである(ケ)。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ガイドワイヤ等のような医療装置が通るルーメン47及び膨張媒体を送出できるルーメン46を備えるマニホールド22と、
近位端16から遠位端20まで軸方向に沿って延在し、偏心二重ルーメンとして装置ルーメン26及び膨張ルーメン28を有するシャフトアセンブリ12とを備え、
前記シャフトアセンブリ12が、その近位端16においてマニホールド22に接続されて、前記装置ルーメン26及び膨張ルーメン28がそれぞれ前記ルーメン47及びルーメン46と機械的かつ流体的に接続されており、
前記機械的かつ流体的な接続が、前記シャフトアセンブリ12の前記近位端16においてカテーテル10の張力緩和部60によって実現され、前記張力緩和部60が、前記マニホールド22に対する前記シャフトアセンブリ12の相対的な屈曲を可能とするように可撓性を有する、カテーテル10において、
前記装置ルーメン26及び膨張ルーメン28とは反対側の前記シャフトアセンブリ12の外側管状部材32の周囲に設置された層117を備え、該層117が、前記シャフトアセンブリ12の前記外側管状部材32と前記張力緩和部60の内壁とが直接接触して固定されるように前記シャフトアセンブリ12の前記近位端16から所定の距離だけ軸方向に離れて設置された層117の近位側端から、前記シャフトアセンブリ12の前記外側管状部材32と前記張力緩和部60の前記内壁との間に配置され前記張力緩和部60の遠位側端よりも軸方向に遠位側に延在している層117の遠位側端まで延在しているカテーテル10。」

(エ)また、上記(ア)から、引用文献1には、以下の技術(以下、「引用文献1記載の技術」という。)が記載されていると認められる。
「同軸ルーメンとして装置ルーメン26及び膨張ルーメン28を有するシャフトアセンブリ12を備えたカテーテル10。」(上記(ア)イ[0028]参照。)

第5 対比
本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ガイドワイヤ等のような医療装置が通るルーメン47」及び「ルーメン47」は本件発明の「ガイドワイヤチャネル」に相当し、以下同様に、「膨張媒体を送出できるルーメン46」及び「ルーメン46」は「インフレーションチャネル」に、「マニホールド22」は「コネクタ」に、「近位端16」は「近位端」に、「遠位端20」は「遠位端」に、「装置ルーメン26」は「ガイドワイヤルーメン」に、「膨張ルーメン28」は「インフレーションルーメン」に、「シャフトアセンブリ12」は「シャフト」に、「カテーテル10」は「カテーテル」に、「張力緩和部60」は「キンク部」に、「張力緩和部60によって実現され」は「キンク部に対応させて実現され」に、「外側管状部材32」は「外壁」に、「層117」は「保護シース」に、「所定の距離」は「第1の距離」に、「所定の距離だけ軸方向に離れて設置された」は「第1の距離に軸方向に設置された」に、「層117の近位側端」は「第1シース端」に、「前記シャフトアセンブリ12の前記外側管状部材32と前記張力緩和部60の前記内壁との間に配置され」は「前記シャフトの前記外壁と前記キンク部の前記内壁とが直接接触して固定されるのを避けるように」に、「張力緩和部60の遠位側端」は「キンク部の第2キンク端」に、「層117の遠位側端」は「第2シース端」に、「前記張力緩和部60の遠位側端よりも軸方向に遠位側に延在している層117の遠位側端まで延在している」は「少なくとも前記キンク部の第2キンク端に対応させて軸方向に延在している第2シース端まで延在している」に、それぞれ相当する。

よって、本件発明と引用発明とは、以下の構成において一致する。
「ガイドワイヤチャネル及びインフレーションチャネルを備えるコネクタと、
近位端から遠位端まで軸方向に沿って延在し、ガイドワイヤルーメン及びインフレーションルーメンを有するシャフトとを備え、
前記シャフトが、その近位端においてコネクタに接続されて、前記ガイドワイヤルーメン及びインフレーションルーメンがそれぞれ前記ガイドワイヤチャネル及びインフレーションチャネルと機械的かつ流体的に接続されており、
前記機械的かつ流体的な接続が、前記シャフトの前記近位端においてカテーテルのキンク部に対応させて実現され、前記キンク部が、前記コネクタに対する前記シャフトの相対的な屈曲を可能とするように可撓性を有する、カテーテルにおいて、
前記ガイドワイヤルーメン及びインフレーションルーメンとは反対側の前記シャフトの外壁の周囲に設置された保護シースを備え、該保護シースが、前記シャフトの前記外壁と前記キンク部の内壁とが直接接触して固定されるように前記シャフトの前記近位端から第1の距離に軸方向に設置された第1シース端から、前記シャフトの前記外壁と前記キンク部の前記内壁とが直接接触して固定されるのを避けるように少なくとも前記キンク部の第2キンク端に対応させて軸方向に延在している第2シース端まで延在しているカテーテル。」

そして、本件発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
[相違点]
シャフトのガイドワイヤルーメン及びインフレーションルーメンに関し、本件発明では両者は同軸ルーメンとして設けられたものであるのに対し、引用発明では両者は偏心二重ルーメンとして設けられたものである点。

第6 判断
1 相違点について
上記相違点は、引用文献1に開示された装置ルーメン26と膨張ルーメン28との二重ルーメンにおける軸の位置関係が異なるものであるところ、上記第5の1(エ)に記載したとおり、同軸ルーメンとして装置ルーメン26及び膨張ルーメン28を有するシャフトアセンブリ12を備えたカテーテル10は、引用文献1記載の技術である。そして、引用発明と上記引用文献1記載の技術とは、同じ特許文献に記載された発明の実施例同士であるという関係にあり、二重ルーメンにおいて、同軸ルーメンも偏心二重ルーメンも、カテーテルという技術分野においてごく普通に採用される構成である(例えば、特開2000-126299号公報の【0015】、図3、特開2002-360698号公報の【0019】-【0020】、図2、特開2007-14820号の【0006】参照。)ことを踏まえれば、引用発明の偏心二重ルーメンについて、上記引用文献1記載の技術を採用し、同軸ルーメンへ変更する程度のこと、すなわち上記相違点における本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことといえる。
そして、引用発明の課題(「[0002]・・・there is an ongoing need to provide alternative structures, assemblies, and methods for making and using catheter manifolds.」([0002]・・・カテーテルマニホールドを使用するための代替構造体、アセンブリ、および方法を提供する必要がある。))等をみても、当該変更を阻害する事情は見い出せない。
また、本件発明の奏する効果は、引用発明及び上記引用文献1記載の技術から、当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。
よって、本件発明は、引用発明及び上記引用文献1記載の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 請求人の主張について
請求人は、審判請求書の【本願発明が特許されるべき理由】の(5)において、引用文献1の「図2の構成においては、layer 117が不要であることは明らかであると思料致します。」と主張している。
しかしながら、原査定の拒絶理由は、上記1のとおり、引用発明(層117が設けられたカテーテル10)の装置ルーメン26及び膨張ルーメン28について同軸ルーメンに変更することが容易であることを判断しているのであって、同軸ルーメンであるカテーテル(請求人が主張するところの「図2の構成」)について層117(同「layer 117」)を採用することの容易想到性を説示しようとするものではないので、請求人の上記主張は当を得たものではなく、採用することができない。

第7 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明及び上記引用文献1記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

したがって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-04-27 
結審通知日 2021-05-06 
審決日 2021-05-18 
出願番号 特願2018-130145(P2018-130145)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡▲さき▼ 潤杉▲崎▼ 覚  
特許庁審判長 内藤 真徳
特許庁審判官 莊司 英史
倉橋 紀夫
発明の名称 保護シースを有するカテーテルアセンブリ及びその製造方法  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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