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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 G02B 審判 全部申し立て 2項進歩性 G02B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G02B 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 G02B |
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管理番号 | 1379807 |
異議申立番号 | 異議2020-700333 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-05-12 |
確定日 | 2021-10-04 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6605328号発明「多層光学フィルムを含むUV安定性アセンブリ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6605328号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6605328号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続等の経緯 特許第6605328号の請求項1?請求項3に係る特許(以下、それぞれ「本件特許1」?「本件特許3」といい、総称して「本件特許」という。)についての出願は、2013年(平成25年)7月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年7月30日 米国)を国際出願日とし、令和元年10月25日に特許権の設定の登録がされたものである。 本件特許について、令和元年11月13日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である令和2年5月12日に特許異議申立人 特許業務法人朝日奈特許事務所(以下「特許異議申立人」という。)から、全請求項に対して、特許異議の申立てがされた(異議2020-700333号、以下「本件事件」という。)。 本件事件についての、その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和 2年 7月10日付け:取消理由通知書 令和 2年10月15日付け:訂正請求書 令和 2年10月15日付け:意見書(特許権者) 令和 2年12月10日付け:意見書(特許異議申立人) 令和 3年 2月18日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和 3年 5月20日付け:訂正請求書 令和 3年 5月20日付け:意見書(特許権者) 令和3年5月20日付け訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)により、令和2年10月15日付けの訂正請求書による訂正の請求は取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。 なお、令和3年5月20日付け訂正請求書及び意見書に対する特許異議申立人からの応答はなかった。 第2 本件訂正請求について 1 訂正の趣旨及び訂正の内容 (1)訂正の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、「特許第6605328号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3について訂正することを求める。」というものである。 (2)訂正の内容 本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記アセンブリは、さらに、少なくとも100層を有する第2の多層光学フィルムを備え、少なくとも1つの層が、2,6ポリエチレンナフタレートを含む、」と記載されているのを、「前記アセンブリは、さらに、前記第1の多層光学フィルムに隣接して積層される、少なくとも100層を有する第2の多層光学フィルムを備え、前記第2の多層光学フィルムの少なくとも1つの層が、2,6ポリエチレンナフタレートを含み、」に訂正するとともに、「前記第1の多層光学フィルム、前記第2の多層光学フィルムを前記入射光の進行方向において順に有する、」という事項を加入する(請求項1の記載を引用する請求項2及び請求項3も同様に訂正する)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記第1及び第2の光学層を少なくとも含む前記多層光学フィルムが、UV吸収剤を含む、」と記載されているのを、「前記第1の多層光学フィルムが、UV吸収剤を含む、」に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「20ナノメートル未満に及ぶ10?90透過率パーセントのUV透過帯域端を有する、」と記載されているのを、「20ナノメートル未満の波長範囲における10透過率パーセントから90透過率パーセントまでの勾配に沿った50透過率パーセントに対応する波長の位置にあるUV透過帯域端を有する、」に訂正する。 (3)一群の請求項について 本件訂正請求は、一群の請求項である請求項1?請求項3に対して請求されたものである。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1による訂正は、[A]請求項1に記載された「アセンブリ」が、「前記第1の多層光学フィルム、前記第2の多層光学フィルムを前記入射光の進行方向において順に有する」ことに限定する訂正と、[B]請求項1に記載された「第2の多層光学フィルム」が「前記第1の多層光学フィルムに隣接して積層される」ことに限定する訂正と、[C]請求項1に記載された「少なくとも1つの層」が「前記第2の多層光学フィルムの少なくとも1つの層」であることを明らかにする訂正からなる。 そうしてみると、訂正事項1による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号(特許請求の範囲の減縮)及び3号(明瞭でない記載の釈明)に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。 また、前記[A]及び[B]の訂正は、本件特許の明細書の【0006】、【0007】及び【0057】?【0073】の記載並びに本件特許の図3?図11に基づくものであり、前記[C]の訂正は、本件特許の明細書の【0006】の記載に基づくものである。 そうしてみると、訂正事項1による訂正は、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 加えて、訂正事項1による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 これらの点は、請求項1の記載を引用して記載された、請求項2及び請求項3についてみても、同じである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2による訂正は、請求項2に記載された「前記第1及び第2の光学層を少なくとも含む前記多層光学フィルム」が、「前記第1の多層光学フィルム」であることを明らかにする訂正である。 そうしてみると、訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号(明瞭でない記載の釈明)に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。 また、この訂正が、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであるから、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 加えて、訂正事項2による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3による訂正は、請求項3における「20ナノメートル未満に及ぶ10?90透過率パーセントのUV透過帯域端を有する」という記載が、[a]UV透過帯域端が、10透過率パーセントから90透過率パーセントまでの勾配に沿った50透過率パーセントに対応する波長の位置にあるという定義を明らかにし、及び[b]10透過率パーセントから90透過率パーセントまでが20ナノメートル未満の波長範囲内に収まっていることを明らかにする訂正である。 そうしてみると、訂正事項3による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号(明瞭でない記載の釈明)に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。 また、この訂正は、本件特許の明細書の【0054】の記載及び本件特許の図15に基づくものである。 そうしてみると、訂正事項3による訂正は、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 加えて、訂正事項3による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 よって、結論に記載のとおり、特許第6605328号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められたから、本件特許の請求項1?請求項3に係る発明(以下、請求項の番号とともに「本件特許発明1」などといい、総称して「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1?請求項3に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。 「【請求項1】 アセンブリであって、 少なくとも100層を有する第1の多層光学フィルムを備え、この第1の多層光学フィルム層は、少なくとも430ナノメートル?500ナノメートルの波長域における少なくとも30ナノメートルの波長にわたって入射光の少なくとも50パーセントを反射する第1及び第2の光学層を少なくとも含み、前記複数の第1及び第2の光学層は、2,6ポリエチレンナフタレートを本質的に含まず、 前記アセンブリは、さらに、 前記第1の多層光学フィルムに隣接して積層される、少なくとも100層を有する第2の多層光学フィルムを備え、前記第2の多層光学フィルムの少なくとも1つの層が、2,6ポリエチレンナフタレートを含み、 前記第1の多層光学フィルム、前記第2の多層光学フィルムを前記入射光の進行方向において順に有する、アセンブリ。 【請求項2】 前記第1の前記多層光学フィルムが、UV吸収剤を含む、請求項1に記載のアセンブリ。 【請求項3】 20ナノメートル未満の波長範囲における10透過率パーセントから90透過率パーセントまでの勾配に沿った50透過率パーセントに対応する波長の位置にあるUV透過帯域端を有する、請求項1に記載のアセンブリ。」 第4 取消しの理由及び特許異議の申立ての理由の概要 1 取消理由通知(決定の予告)について (1)当合議体は、令和3年2月18日付け取消理由通知(決定の予告)において、令和2年10月15日付け訂正請求書により訂正された本件特許の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明に対し、概略、以下のとおりの取消理由を通知した。 理由1:(進歩性)本件特許の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明は、パリ条約に基づく優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 引用文献1:特表2008-505444号公報 (当合議体注:引用文献1は、特許異議申立人が提出した甲1の1(国際公開第2006/007301号)のファミリー文献である甲1の2である。) 2 令和2年7月10日付け取消理由通知について 令和2年7月10日付け取消理由通知により当合議体が通知した取消しの理由は、特許異議の申立ての理由と同旨である。 3 特許異議申立ての理由 特許異議の申立ての理由は、概略、以下のとおりである。 理由1:(新規性)本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲1の2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 甲1の2:特表2008-505444号公報 理由2:(進歩性)本件特許の特許請求の範囲の請求項1?2に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲1の2及び甲2の2に記載された発明に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?2に係る特許は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 甲1の2:特表2008-505444号公報 甲2の2:特表2006-516828号公報 (当合議体注:甲1の2は、主引例であり、甲2の2は、請求項2についての副引例である。) 理由3:(実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明が、当業者が本件特許発明3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができないから、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。 理由4:(明確性要件)本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない、というものである。 4 証拠について 特許異議申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。 甲1の1:国際公開第2006/007301号 甲1の2:特表2008-505444号公報 甲2の1:国際公開第2004/068603号 甲2の2:特表2006-516828号公報 甲3の1:国際公開第2006/132912号 甲3の2:特表2008-546026号公報 (当合議体注:甲1の1及び甲1の2は、主引例である。甲2の1及び甲2の2は、多層光学フィルムがUV吸収剤を含むことを示す副引例である。甲3の1及び甲3の2は、DBEFがPENを含むことが技術常識であることを示す文献である。 また、甲1の2は甲1の1のファミリー文献であり、甲2の2は甲2の1のファミリー文献であり、甲3の2は甲3の1のファミリー文献である。) 第5 当合議体の判断 1 取消理由通知(決定の予告)の「理由1:(進歩性)」について (1)引用文献1の記載 本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1(特表2008-505444号公報)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。 ア 「【背景技術】 【0001】 構造内で発光ダイオード(LED)を利用する白色光源は2つの基本的構成を有することができる。本明細書で直接発光LEDと称するその1つにおいて、白色光は異なる色のLEDの直接発光により生成される。一例には赤色LED、緑色LED、青色LEDの組合せ、青色LEDおよび黄色LEDの組合せがある。本明細書で蛍光体変換LED(PCLED)と称する他の構成において、単一のLEDは狭い波長範囲の光を発生し、その光は蛍光体または他のタイプの電子放出性物質に当たるとともに励起して、LEDにより生じたものとは異なる波長を有する光を生成する。蛍光体は異質の電子放出性物質の混合または組合せを含むことができるとともに、蛍光体により放出された光は、放出された光が人間の裸眼に対して実質的に白色に見えるように可視波長範囲にわたって分散された広いまたは狭い発光線を含むことができる。 ・・・中略・・・ 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本開示は電子放出性物質と成分をフィルタリングする干渉反射体とを用いた照明システムを提供する。 ・・・中略・・・ 【発明を実施するための最良の形態】 【0011】 本開示は光源と、1つまたは複数の光導波路と、電子放出性物質と、1つまたは複数の干渉反射体とを含む照明システムを提供する。いくつかの実施形態において照明システムは様々な用途用の白色光を提供する。本明細書で用いるように用語「白色」は人間の目の中の赤色、緑色および青色感覚器官を刺激して、一般的観察者が「白色」と考え得る様相を生じる光を指す。このような光は赤色に偏っている(一般に温白色光と称する)または青色に偏っている(一般に冷白色光と称する)場合がある。さらにこのような光は100までの演色評価数を有することができる。 【0012】 一般にこれらの照明システムは第1の光学特性を含む光を放出する光源を含む。本発明の開示のシステムは、第1の光学特性を含む光で照明されると第2の光学特性を含む光を放出する電子放出性物質も含む。第1の光学特性および第2の光学特性は任意の適当な光学特性、例えば波長、偏光、変調、強度等であり得る。例えば第1の光学特性は第1の波長域を含み得るとともに、第2の光学特性は第1の波長域とは異なる第2の波長域を含み得る。例示的一実施形態において光源は第1の光学特性を含む光を放出し、第1の光学特性はUV光を含む第1の波長域を含む。この例示的実施形態において光源により放出されたUV光は電子放出性物質を照明し、それによりこのような物質は第2の光学特性を含む光を放出し、第2の光学特性は可視光を含む第2の波長域を含む。 【0013】 本開示のいくつかの実施形態はショートパス(SP)干渉反射体を含む。本明細書に用いるように用語「ショートパス干渉反射体」は、第1の光学特性を有する光を実質的に透過するとともに第2の光学特性を有する光を実質的に反射する反射体を指す。例示的一実施形態において照明システムは、光源からのUV光を実質的に透過するとともに透過UV光により照明された電子放出性物質により放出された可視光を実質的に反射するSP干渉反射体を含む。 【0014】 さらにいくつかの実施形態において照明システムはロングパス(LP)干渉反射体を含む。本明細書で用いるように用語「ショートパス干渉反射体」は、第2の光学特性を有する光を実質的に透過するとともに第1の光学特性を有する光を実質的に反射する反射体を指す。例えば例示的一実施形態において照明システムは、電子放出性物質により放出された可視光を実質的に透過するとともに電子放出性物質を照明した光源からのUV光を実質的に反射するLP干渉反射体を含む。 ・・・中略・・・ 【0018】 いくつかの実施形態においてSP干渉反射体およびLP干渉反射体の一方または両方はポリマー多層光学フィルムを含む。ポリマー多層光学フィルムは少なくとも第1および第2のポリマー材料の数十、数百、または数千の交互層を有するフィルムである。 ・・・中略・・・ 【0033】 図1は照明システム10の一実施形態を概略的に図示する。システム10は光源20と、出力面14を有する光導波路12とを含む。いくつかの実施形態において光導波路12は入力面16を含むこともできる。システム10は光源20と光導波路12の出力面14との間に位置する第1の干渉反射体30も含む。第1の干渉反射体30と光導波路12の出力面14との間に位置するのは電子放出性物質40である。 【0034】 光源20は任意の適当な光源、例えばエレクトロルミネセントデバイス、冷陰極蛍光灯、無電極蛍光ランプ、LED、有機エレクトロルミネセントデバイス(OLED)、ポリマーLED、レーザダイオード、アークランプ等を含むことができる。本明細書で用いるように用語「LED」は可視、紫外、または赤外のいずれにしても、可干渉性または非可干渉性にかかわらず発光するダイオードを指す。本明細書で用いられるような用語は、従来型または超放射型種類にかかわらず「LED」として販売されている非可干渉性エポキシ封入半導体デバイスも含む。本明細書に用いられるようにこの用語は半導体レーザダイオードも含む。 ・・・中略・・・ 【0038】 システム10の光導波路12は任意の適当な光導波路、例えば中空または中実の光導波路を含み得る。 ・・・中略・・・ 【0039】 照明システム10は光源20と光導波路12の出力面14との間に位置する第1の干渉反射体30も含む。図1に図示された実施形態において第1の干渉反射体30はSP干渉反射体であり、すなわち光源20からの第1の光学特性を有する光を実質的に透過するとともに第2の光学特性を有する光を実質的に反射する。例えば本明細書にさらに説明するように電子放出性物質40は、光源20からのUVまたは青色光で照明されると可視光を放出し得る。このような実施形態において第1の干渉反射体30を、UV光を実質的に透過するとともに可視光を実質的に反射するように選択し得る。他の実施形態において電子放出性物質40は、光源20からの光で照明されると赤外光を放出しうる。このような実施形態において第1の干渉反射体30を、光源20からの光を実質的に透過するとともに赤外光を実質的に反射するように選択し得る。 【0040】 第1の干渉反射体30を光源20と光導波路12の出力面14との間の任意の適当な場所に配置し得る。いくつかの実施形態において第1の干渉反射体30を光導波路12の入力面16上、光導波路12内または光源20上に配置し得る。 【0041】 第1の干渉反射体30は任意の適当な干渉反射体または本明細書に記載する反射体を含み得る。さらに第1の干渉反射体30は任意の適当な形状、例えば半球状、円筒状、平面状等を取り得る。 【0042】 第1の干渉反射体30を本明細書に説明するようにUV、青色、または紫色光に露光されたときに劣化しにくい材料で形成することができる。一般に本明細書で検討する多層反射体は延長時間、高輝度照明下で安定可能である。高輝度照明を概して1?100ワット/cm^(2)のフラックスレベルとして規定することができる。適当な図示のポリマー材料は、例えばアクリル材料、PET材料、PMMA材料、ポリスチレン材料、ポリカーボネート材料、スリーエム・カンパニー(3M Company)(ミネソタ州セントポール(St.Paul,MN))から入手可能なTHV材料、およびそれらの組合せから形成されたUV抵抗性材料を含むことができる。これらの材料およびPEN材料を青色光を放出する光源と一緒に用いることができる。 【0043】 照明システム10は第1の干渉反射体30と光導波路12の出力面14との間に配置された電子放出性物質40も含む。電子放出性物質40は光源20からの第1の光学特性を有する光で照明されると第2の光学特性を有する光を放出する。第2の光学特性は任意の適当な光学特性、例えば波長、変更、変調、強度等であり得る。いくつかの実施形態において電子放出性物質40により放出された光は、電子放出性物質40が第1の波長域を含む光源20により放出された光で照明されると第2の波長域を含み得る。例えばいくつかの実施形態において電子放出性物質40は、光源20からのUVまたは青色光で照明されると可視光を放出し得る。本明細書に用いるように用語「可視光」は裸眼で知覚可能な、例えば概して約400nm?約780nmの波長範囲の光を指す。他の実施形態において電子放出性物質40は可視光および/または赤外光を放出し得る。本明細書で用いるように用語「赤外光」は780nm?2500nmの波長範囲の光を指す。 ・・・中略・・・ 【0054】 本開示の照明システムのいくつかの実施形態は2つ以上の干渉反射体を含み得る。例えば図2は出力面114と入力面116とを有する光導波路112と、光源120とを含む照明システム100の一実施形態を概略的に図示する。またシステム100は光源120と光導波路112の出力面114との間に配置された第1の干渉反射体130と、第1の干渉反射体130と出力面114との間に配置された電子放出性物質140とを含む。図1に図示された実施形態の光導波路12、光源20、第1の干渉反射体30、および電子放出性物質40に対して本明細書に記載された設計上の考察および可能性のすべては、図2に図示された実施形態の光導波路112、光源120、第1の干渉反射体130および電子放出性物質140に同等に適用される。 【0055】 図1のシステム10と図2のシステム100との間の1つの相違は、システム100が、電子放出性物質140が第1の干渉反射体130と第2の干渉反射体150との間にあるように配置された第2の干渉反射体150を含むことである。いくつかの実施形態において第2の干渉反射体150はLP干渉反射体、すなわち第2の光学特性を有する光を実質的に透過するとともに第1の光学特性を有する光を実質的に反射する反射体である。例えばいくつかの実施形態において電子放出性物質140は、UVまたは青色光(すなわち第1の光学特性)で照明されると可視光(すなわち第2の光学特性)を放出し得る。このような実施形態において第2の干渉反射体150を、可視光を実質的に透過するとともにUVまたは青色光を実質的に反射するように選択し得る。他の実施形態において電子放出性物質140は、UVまたは青色光で照明されると赤外光を放出し得る。これらの実施形態において第2の干渉反射体150を、赤外光を実質的に透過するとともにUVまたは青色光を実質的に反射するように選択し得る。 【0056】 第2の干渉反射体150は本明細書に記載の任意の適当な干渉反射体を含み得る。さらに第2の干渉反射体150は任意の適当な形状、例えば半球状、円筒状、または平坦状を取り得る。 ・・・中略・・・ 【0060】 本開示の照明システムは1つまたは複数の光学素子を含み得る。例えば図3は1つまたは複数の光学素子260を含む照明システム200を概略的に図示する。システム200は出力面214と入力面216とを有する光導波路212と、光源220とをさらに含む。またシステム200は光源220と光導波路212の出力面214との間に配置された第1の干渉反射体230と、第1の干渉反射体230と光導波路212の出力面214との間に配置された電子放出性物質240とを含む。図1に図示された実施形態の光導波路12、光源20、第1の干渉反射体30、および電子放出性物質40に対して本明細書に記載された設計上の考察および可能性のすべては、図3に図示された実施形態の光導波路212、光源220、第1の干渉反射体230および電子放出性物質240に同等に適用される。このシステム200も、本明細書にさらに説明するように1つまたは複数の追加干渉反射体(例えばLP干渉反射体)を含み得る。 【0061】 1つまたは複数の光学素子260を電子放出性物質240と光導波路212の出力面214との間、光源220と第1の干渉反射体230との間、第1の干渉反射体230と電子放出性物質240との間、および/または光導波路212の出力面214に隣接して配置し得る。1つまたは複数の光学素子260は任意の適当な光学素子、例えば接着剤もしくは屈折率一致流体またはジェルなどの光結合剤、BEF(スリーエム・カンパニー(3M Company)から入手可能)などの光学輝度強化フィルム、および紫外光吸収染料および顔料などの短波長吸収物質、DBEF(同様にスリーエム・カンパニー(3M Company)から入手可能)などの反射型偏光フィルム、拡散板、およびこれらの組合せを含むことができる。いくつかの実施形態において1つまたは複数の光学素子260は、光導波路212に向けられた電子放出性物質240による発光の角度を制御するように構成されている。 ・・・中略・・・ 【0068】 本開示の照明システム内で用いられ得るいくつかの光源は広い発光円錐の光を放出する。例えばいくつかのLEDは2πステラジアン以上の立体角を有する半球状パターンの光を放出する。本開示のいくつかの実施形態は、光源からの励起光を集光および/または光導波路内に向ける非結像光学デバイスを提供する。 【0069】 例えば図5は照明システム400の一実施形態の概略斜視図である。システム400は図2の照明システム100と同様である。システム400は出力面414と入力面416とを有する光導波路412と、光源420とを含む。またシステム400は光源420と光導波路412の出力面414との間に配置された第1の干渉反射体430と、第1の干渉反射体430と出力面414との間に配置された電子放出性物質440と、電子放出性物質440と出力面414との間に配置された第2の干渉反射体450とを含む。図2に図示された実施形態の光導波路112、光源120、第1の干渉反射体130、電子放出性物質140、および第2の干渉反射体150に対して本明細書に記載された設計上の考察および可能性のすべては、図5に図示された実施形態の光導波路412、光源420、第1の干渉反射体430、電子放出性物質440、および第2の干渉反射体450に同等に適用される。 【0070】 図2のシステム100と図5のシステム400との間の1つの相違は、システム400が光源420に光学的に結合された光学キャビティ470も含むことであり、すなわち光源420からの光を光学キャビティ470に向けることができる。2つ以上のデバイスが光学的に結合されている場合、このようなデバイスは同一の光路内にあるとともに、任意の適当な技術、例えば反射、透過、放出等を用いて光を互いに向けることができる。光学キャビティ470は光源420により放出された光を第1の干渉反射体430に向けるように構成されている。光学キャビティ470を任意の好適な場所に配置し得る。いくつかの実施形態において光学キャビティ470を第1の干渉反射体430と接して配置し得る。いくつかの実施形態において、さらに本明細書に説明するようにTIR促進層を光学キャビティ470と第1の干渉反射体430との間に配置し得る。 ・・・中略・・・ 【0154】 本開示の照明システムを照明を提供する任意の適当な方法で用い得る。例えば本明細書に記載の照明システムのいくつかまたはすべてを用いてディスプレイ用の照明を提供し得る。図16はディスプレイデバイス1512に光学的に結合された照明システム1510を含むディスプレイアセンブリ1500を概略的に図示する。照明システム1510は本明細書に記載された任意の照明システム、例えば図1のシステム10を含み得る。照明システム1510はディスプレイデバイス1512に照明光を提供する。ディスプレイデバイス1512は任意の適当なディスプレイデバイス、例えばLCD、エレクトロクロミックまたは電気泳動デバイス、空間光変調器、透光性標識等であり得る。 【0155】 例えばディスプレイデバイス1512は1つまたは複数の空間光変調器を含み得る。いくつかの実施形態において1つまたは複数の空間光変調器は個々にアドレス可能な制御可能要素のアレイを含み得る。このような空間光変調器は適当なタイプの制御可能要素を含み得る。例えば空間光変調器は可変透過率タイプのディスプレイを含み得る。いくつかの実施形態において空間光変調器は、透過型光変調器の一例である液晶ディスプレイ(LCD)を含み得る。いくつかの実施形態において空間光変調器は、反射型光変調器の一例である変形可能ミラーデバイス(DMD)を含み得る。」 イ 【図1】 ウ 【図2】 エ 【図3】 オ 【図5】 (2)引用発明 ア 引用発明A 引用文献1の【0054】?【0059】及び【図2】には、次の発明が記載されている(以下「引用発明A」という。)。 なお、用語を統一して記載した。また、引用文献1の【0054】に「図1に図示された実施形態の光導波路12、光源20、第1の干渉反射体30、および電子放出性物質40に対して本明細書に記載された設計上の考察および可能性のすべては、図2に図示された実施形態の光導波路112、光源120、第1の干渉反射体130および電子放出性物質140に同等に適用される。」と記載されていることから、【0034】、【0038】及び【0039】の記載も参考にした。 「 出力面114と入力面116とを有する光導波路112と、光源120とを含む照明システム100であって、 照明システム100は、光源120と光導波路112の出力面114との間に配置された第1の干渉反射体130と、第1の干渉反射体130と出力面114との間に配置された電子放出性物質140と、電子放出性物質140が第1の干渉反射体130と第2の干渉反射体150との間にあるように配置された第2の干渉反射体150を含み、 光源120は任意の適当な光源を含み、 光導波路112は任意の適当な光導波路を含み、 第1の干渉反射体130はSP干渉反射体、すなわち光源120からの第1の光学特性を有する光を実質的に透過するとともに第2の光学特性を有する光を実質的に反射し、 電子放出性物質140は光源120からの第1の光学特性を有する光で照明されると第2の光学特性を有する光を放出し、 第2の干渉反射体150はLP干渉反射体、すなわち第2の光学特性を有する光を実質的に透過するとともに第1の光学特性を有する光を実質的に反射する反射体である、 照明システム100。」 イ 引用発明B 引用文献1の【0069】?【0076】及び【図5】には、引用発明Aとして認定した図2の「照明システム100」を、より具体化してなる、「照明システム400」が記載されている。また、【図5】の形状に接した当業者ならば、この「照明システム400」が「ディスプレイデバイスのバックライト用」であることに、直ちに気付くといえる(当合議体注:この点は、引用文献1の【0154】の記載からも明らかな事項である。)。 そうしてみると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明B」という。)も記載されている。 なお、引用発明Bの認定にあたり、引用文献1の【0069】に「図2に図示された実施形態の光導波路112、光源120、第1の干渉反射体130、電子放出性物質140、および第2の干渉反射体150に対して本明細書に記載された設計上の考察および可能性のすべては、図5に図示された実施形態の光導波路412、光源420、第1の干渉反射体430、電子放出性物質440、および第2の干渉反射体450に同等に適用される。」と記載されていることから、引用発明Aに関連する上記アで述べた記載箇所も考慮した。 「 出力面414と入力面416とを有する光導波路412と、光源420とを含む照明システム400であって、 照明システム400は光源420と光導波路412の出力面414との間に配置された第1の干渉反射体430と、第1の干渉反射体430と出力面414との間に配置された電子放出性物質440と、電子放出性物質440と出力面414との間に配置された第2の干渉反射体450とを含み、 光源420は任意の適当な光源を含み、 光導波路412は任意の適当な光導波路を含み、 第1の干渉反射体430はSP干渉反射体、すなわち光源420からの第1の光学特性を有する光を実質的に透過するとともに第2の光学特性を有する光を実質的に反射し、 電子放出性物質440は光源420からの第1の光学特性を有する光で照明されると第2の光学特性を有する光を放出し、 第2の干渉反射体450はLP干渉反射体、すなわち第2の光学特性を有する光を実質的に透過するとともに第1の光学特性を有する光を実質的に反射する反射体である、 ディスプレイデバイスのバックライト用の照明システム400。」 (3)本件特許発明1について ア 対比 事案に鑑みて、本件特許発明1と引用発明Bを対比する。 引用発明Bの「照明システム400」は、「光源420と光導波路412の出力面414との間に配置された第1の干渉反射体430と、第1の干渉反射体430と出力面414との間に配置された電子放出性物質440と、電子放出性物質440と出力面414との間に配置された第2の干渉反射体450とを含」む。 上記の構成からみて、引用発明Bの「照明システム400」は、アセンブリということができ、この点において、本件特許発明1と共通する。 イ 一致点及び相違点 本件特許発明1と引用発明Bは、「アセンブリ」の点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 「アセンブリ」が、本件特許発明1は、「少なくとも100層を有する第1の多層光学フィルムを備え、この第1の多層光学フィルム層は、少なくとも430ナノメートル?500ナノメートルの波長域における少なくとも30ナノメートルの波長にわたって入射光の少なくとも50パーセントを反射する第1及び第2の光学層を少なくとも含み、前記複数の第1及び第2の光学層は、2,6ポリエチレンナフタレートを本質的に含まず」、「さらに」、「前記第1の多層光学フィルムに隣接して積層される、少なくとも100層を有する第2の多層光学フィルムを備え、前記第2の多層光学フィルムの少なくとも1つの層が、2,6ポリエチレンナフタレートを含み」、「前記第1の多層光学フィルム、前記第2の多層光学フィルムを前記入射光の進行方向において順に有する」のに対して、引用発明Bは、この構成を具備するとは特定されていない点。 ウ 判断 前記相違点について検討する。 引用文献1の【0018】、【0042】、【0056】及び【0061】には、それぞれ、「ポリマー多層光学フィルムは少なくとも第1及び第2のポリマー材料の数十、数百、または数千の交互層を有するフィルムである。」、「第1の干渉反射体30を本明細書に説明するようにUV、青色、または紫色光に露光されたときに劣化しにくい材料で形成することができる。・・・適当な図示のポリマー材料は、例えばアクリル材料、PET材料、PMMA材料、ポリスチレン材料、ポリカーボネート材料、スリーエム・カンパニー(3M Company)(ミネソタ州セントポール(St.Paul,MN))から入手可能なTHV材料、およびそれらの組合せから形成されたUV抵抗性材料を含むことができる。これらの材料およびPEN材料を青色光を放出する光源と一緒に用いることができる。」、「第2の干渉反射体150は本明細書に記載の任意の適当な干渉反射体を含み得る。」、及び「1つまたは複数の光学素子260を電子放出性物質240と光導波路212の出力面214との間、光源220と第1の干渉反射体230との間、第1の干渉反射体230と電子放出性物質240との間、および/または光導波路212の出力面214に隣接して配置し得る。1つまたは複数の光学素子260は任意の適当な光学素子、例えば接着剤もしくは屈折率一致流体またはジェルなどの光結合剤、BEF(スリーエム・カンパニー(3M Company)から入手可能)などの光学輝度強化フィルム、および紫外光吸収染料および顔料などの短波長吸収物質、DBEF(同様にスリーエム・カンパニー(3M Company)から入手可能)などの反射型偏光フィルム、拡散板、およびこれらの組合せを含むことができる。」と記載されている。 ここで、「PEN」は、「2,6ポリエチレンナフタレート」と同義である。また、「DBEF等の反射型偏光フィルム」が、少なくとも100層を有するフィルムであること及び2,6ポリエチレンナフタレートを含むことは周知である(例えば、特許第3621415号公報の7頁46行?8頁5行及び特表2008-546026号公報の【0017】を参照。)。 前記記載から、引用文献1には、少なくとも100層を有する多層光学フィルムであって、2,6ポリエチレンナフタレートを含むものも、2,6ポリエチレンナフタレートを含まないものも開示されているといえる。 しかしながら、第1干渉反射体及び第2干渉反射体は、他の干渉反射体やDBEFとの関係で2,6ポリエチレンナフタレートの有無を特定するものではない。しかも、引用文献1の【0061】において、DBEF(あるいはBEF)は、光結合剤、光輝度強化フィルム、短波長吸収物質、拡散板といった任意の光学素子のうちの1つとして列挙されているにすぎず、その配置場所についても、電子放出性物質と光導波路の出力面との間、光源と第1の干渉反射体との間、第1の干渉反射体と電子放出性物質との間及び光導波路の出力面に隣接して配置するものなど多岐に渡る選択肢が記載されており特定されないものである。 そうしてみると、引用文献1には、2,6ポリエチレンナフタレートを本質的に含まない少なくとも100層を有する多層光学フィルムに隣接して積層される、2,6ポリエチレンナフタレートを含む少なくとも100層を有する多層光学フィルムを有することは、記載されておらず、示唆もされていない。 また、仮に当業者が、上記選択肢の中から、2,6ポリエチレンナフタレートを含む少なくとも100層を有する多層光学フィルムであるDBEFを選択し、それを導波路の出力面414に隣接して配置するような態様を採用する何らかの動機が見いだせたとしても、引用発明Bの「DBEF」(本件特許発明1の「第2の多層光学フィルム」に相当)が、「第2の干渉反射体」(本件特許発明1の「第1の多層光学フィルム」に相当)に隣接して積層される構成とはならない。 以上によれば、当業者であっても、引用発明Bにおいて、2,6ポリエチレンナフタレートを本質的に含まない少なくとも100層を有する多層光学フィルムに隣接して積層される、2,6ポリエチレンナフタレートを含む少なくとも100層を有する多層光学フィルムを有する構成に至るとはいえず、相違点に係る本件特許発明1の構成に到るともいえない。 そして、相違点に係る本件特許発明1の構成に至ることを窺わせることは、引用文献1の他の箇所にも記載されておらず、また、周知技術であるともいえない。 以上の点を勘案すると、本件特許発明1は、たとえ当業者であっても、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということができない。 (4)本件特許発明2?3について 本件特許発明2?3は、本件特許発明1の構成を全て具備するものであるから、本件特許発明2?3も、本件特許発明1と同じ理由により、たとえ当業者であっても、引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。 2 令和2年7月10日付け取消理由通知で示した理由及び特許異議の申立ての理由について 令和2年7月10日付け取消理由通知で示した理由は、特許異議の申立ての理由と同旨であるので、特許異議の申立ての理由について、以下検討する。 (1)理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について 特許異議の申立ての理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について、前記1(3)で示したとおり、本件特許発明1は、引用文献1に記載された発明であるとはいえず、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。 したがって、特許異議の申立ての理由1(新規性)及び理由2(進歩性)を採用することはできない。 (2)理由3(実施可能要件)及び理由4(明確性要件)について 特許異議の申立ての理由3(実施可能要件)及び理由4(明確性要件)は、本件訂正請求でした訂正により解消された。 第6 むすび 本件特許1?3は、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。 また、他に本件特許1?3を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 アセンブリであって、 少なくとも100層を有する第1の多層光学フィルムを備え、この第1の多層光学フィルム層は、少なくとも430ナノメートル?500ナノメートルの波長域における少なくとも30ナノメートルの波長にわたって入射光の少なくとも50パーセントを反射する第1及び第2の光学層を少なくとも含み、前記複数の第1及び第2の光学層は、2,6ポリエチレンナフタレートを本質的に含まず、 前記アセンブリは、さらに、 前記第1の多層光学フィルムに隣接して積層される、少なくとも100層を有する第2の多層光学フィルムを備え、前記第2の多層光学フィルムの少なくとも1つの層が、2,6ポリエチレンナフタレートを含み、 前記第1の多層光学フィルム、前記第2の多層光学フィルムを前記入射光の進行方向において順に有する、アセンブリ。 【請求項2】 前記第1の多層光学フィルムが、UV吸収剤を含む、請求項1に記載のアセンブリ。 【請求項3】 20ナノメートル未満の波長範囲における10透過率パーセントから90透過率パーセントまでの勾配に沿った50透過率パーセントに対応する波長の位置にあるUV透過帯域端を有する、請求項1に記載のアセンブリ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-09-15 |
出願番号 | 特願2015-525432(P2015-525432) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YAA
(G02B)
P 1 651・ 113- YAA (G02B) P 1 651・ 537- YAA (G02B) P 1 651・ 121- YAA (G02B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 辻本 寛司 |
特許庁審判長 |
里村 利光 |
特許庁審判官 |
井口 猶二 榎本 吉孝 |
登録日 | 2019-10-25 |
登録番号 | 特許第6605328号(P6605328) |
権利者 | スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー |
発明の名称 | 多層光学フィルムを含むUV安定性アセンブリ |
代理人 | 佃 誠玄 |
代理人 | 野村 和歌子 |
代理人 | 赤澤 太朗 |
代理人 | 赤澤 太朗 |
代理人 | 吉野 亮平 |
代理人 | 浅村 敬一 |
代理人 | 吉野 亮平 |
代理人 | 野村 和歌子 |
代理人 | 佃 誠玄 |
代理人 | 浅村 敬一 |