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審決分類 審判 全部申し立て 1項1号公知  G21K
審判 全部申し立て 2項進歩性  G21K
管理番号 1002207
異議申立番号 異議1999-72074  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-05-11 
確定日 1999-10-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第2823995号「X線用の分光素子」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2823995号の特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯・本件発明
本件特許第2823995号の請求項1に係る発明(平成4年10月30日出願、平成10年9月4日設定登録)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】 結晶質からなる基板の表面に人工累積膜を設けたX線用の分光素子において、分析元素のスペクトルに対して妨害スペクトルとなる元素の回折X線がX線検出器に入射しないように、上記回折X線を反射させる結晶の格子面を上記基板の表面に対して傾斜させ、上記人工累積膜の格子面が上記基板の表面と平行になるよう上記人工累積膜を設けたことを特徴とするX線用の分光素子。(以下、本件発明という。)
2.異議申立人の主張
異議申立人は、証拠として、
甲第1号証: 米国特許3397312号明細書
甲第2号証: 米国特許4525853号明細書
甲第3号証: 米国特許4675889号明細書
甲第4号証: 米国特許4693933号明細書
甲第5号証: 米国特許4698833号明細書
甲第6号証: 米国特許4727000号明細書
甲第7号証: 米国特許4785470号明細書
甲第8号証: 米国特許4958363号明細書
甲第9号証: 米国特許5027377号明細書
甲第10号証:米国特許5082621号明細書
甲第11号証:米国特許5163078号明細書
甲第12号証:特開平4-169898号公報
甲第13号証:特開昭63-70585号公報
甲第14号証:特開昭63-266396号公報
甲第15号証:特開昭63-273099号公報
甲第16号証:特開平5-346496号公報
甲第17号証:特開平1-94299号公報
甲第18号証:Negel et al.,Graded-Layer-Thickness Bragg X-ray Reflectors,Proceedings of SPIE Vol.315 Reflecting optics for Synchrotron Radiation,110-117(1981)
甲第19号証:Underwood et al.,Layered Synthetic Microstructures as Bragg Diffractors for X Rays and Extreme Ultraviolet:Theory and Predicted Performance,Applied optics Vol.20 NO.17.,3027- 3034(1981)
甲第20号証:Underwood et al.,The Renaissance of X-Ray optics,Physics Today 44-52(1984)
甲第21号証:Gerald F.Marshall,Applications of Thin-Film Multilayered Structures to Figured X- Ray optics,Proceedings of SPIE Vol.563,114-134(1985)
甲第22号証:Gerald F.Marshall,Monochromatization By Multilayered optics on a Cylindrical Reflector and on an EIlipsoidal Focusing Ring,optical Engineering Vol.25,992-932(1986)
甲第23号証:Ishii et al.,Multilayer Mirror for Soft X-ray synchrotron Radiation,NTT Review Vol.2,NO.77-85(July 1990)
甲第24号証:Chakraborty,Purushottam,Layerd Synthetic Microstructures as optical Elements for the Extreme Ultraviolet and Soft X-rays,InternationaI Journal of Modern Physics B,Vol.5,NO.13 2133-2228(1991)
甲第25号証:Platonov et al.,Small d-spacng Multilayer Structuresfor the Photon Energy Range E>0.3 kev,Abstracts of InternationaI Congress on X-ray optics and Microanalysis,583-586(1992).Manchester England.-This article refers to glass as a substrate.
甲第26号証:Hoover et al.,A New Method for Achieving Accurate Thickness Control for Uniform and Graded Multilayer Coatings on Large Flat Substrates,Proceedings of SPIE Vol.1742,Multilayer and Grazing Incidence X-Ray/EUV Optics for Astronomy and Projection Lithography,373(1991)
甲第27号証:トクハラ・ヤスコ氏へのレター(1990年2月19日付)
甲第28号証:トクハラ・ヤスコ氏からのファックス(1990年2月22日付)
甲第29号証:トクハラ・ヤスコ氏へのレター(1990年2月22日付)
甲第30号証:トクハラ・ヤスコ氏からのファックス(1990年2月26日付)
甲第31号証:トクハラ・ヤスコ氏へのレター(1990年2月28日付)
甲第32号証:レター(1990年3月15日付)
甲第33号証:トクハラ・ヤスコ氏へのレター(1990年3月21日付)
甲第34号証:トクハラ・ヤスコ氏へのレター(1990年3月21日付)
甲第35号証:トクハラ・ヤスコ氏からのファックス(1990年3月7日付)
甲第36号証:トクハラ・ヤスコ氏へのレター(1990年2月28日付)
甲第37号証:トクハラ・ヤスコ氏からのファックス(1990年2月27日付)
甲第38号証:トクハラ・ヤスコ氏へのレター(1990年2月22日付)
甲第39号証:トクハラ・ヤスコ氏からのファックス(1990年2月22日付)
甲第40号証:トクハラ・ヤスコ氏からのファックス(1990年2月 13日付)
甲第41号証:トクハラ・ヤスコ氏からのファックス(1986年9月26日付)
甲第42号証:トクハラ・ヤスコ氏へのレター(1986年10月10日付)
甲第43号証:トクハラ・ヤスコ氏からのファックス(1986年10月13日付)
甲第44号証:トクハラ・ヤスコ氏からのファックス(1990年2月 13日付)
甲第45号証:購入関係資料(1992年8月24日他の日付)
を提出し、下記の理由を主張している。
[理由1]
本特許の請求項1に係る発明はその出願前公知の甲第1号証乃至甲第26号証、特に、甲第8号証及び甲第15号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明しうる程度のものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[理由2]
本特許の請求項1に係る発明は、甲第27号証乃至甲第45号証、特に甲第30号証、甲第34号証、甲第35号証、甲第39号証、及び甲第43号証により、本出願の出願日(1992年10月30日)以前の遅くとも1990年2月26日に日本国内において公然と知られていたので、特許法第29条第1項第1号の規定により特許を受けることができない。
3. [理由1]について
3-1.甲第1号証乃至甲第26号証の記載事項・甲第1号証乃至甲第26号証には、多層構造のX線反射装置が記載されている。その内、甲第8号証、甲第15号証、及び甲第18号証には、さらに、以下の事項が記載されている。
・甲第8号証(米国特許4958363号明細書)「図2に関連して、弱いX線吸収を示す炭素またはホウ素などのスペーサ材を、-j-層対の底部多層構造の上面に直接堆積する。このスペーサ材は、スペーサ材の上面と底部多層構造の上面との間に傾斜角φを形成する傾斜した層の厚さを有する。次に-i-層対の上部多層構造をスペーサ材の上に堆積する。入射角0の場合、エネルギE1およびE2における一次反射率の最大値は、それぞ角度が大体θおよびθ-φのときに生じる。図2は、最も細い端部が放射源に最も近いスペーサを示す。最も厚い端部が発生源に最も近くなるようにスペーサを変化すると、E1はθで発生し、E2はθ+φで発生する。反射率最大値E1、E2は空間的に離すことができ、したがって2つの別個の検出器によって記録することができる。図2に示す種類の二重多層x線ミラーを放射源と共に使用すると、透過データはElおよびE2に対し異なる投射角になる。スペーサ付きのこの二重多層ミラーは、図1に示す種類の二重ミラーによって生成された透過ビームに存在するx線エネルギE1およびE2を分離するために使用することができる。」(8欄20行乃至同欄43行)
・甲第15号証(特開昭63-273099号公報)の第1図及び2頁左上欄9行乃至18行には、概ね、シリコンなどの基板上に人工多層膜を積層しているX線分光素子が記載されている。
・甲第18号証(Graded-layer-thickness Bragg X-ray reflextors)
「厚さに勾配を付けた多層構造体
不連続な厚さ勾配のあるハイブリッド多層構造体(マイカ上のW-C)を、2.75+2.51AのTiKα+β蛍光放射により試験した。結果を図4に示す。いくつかの次数の多層構造体およびマイカ基板の両方からの反射が明瞭である。
多層構造体からの3次ピークの存在は、界面が比較的シャープであることを示す傾向がある。これは、クリーブドマイカの開始表面の原子レベルの平滑さのためかもしれない。マイカからの1次反射は、多層構造体の2つの低角透過中の吸収のために、3次および5次より弱い。
4.2d=57Aでのマイカ上のW-C多層構造体(「層化合成マイクロ構造」を表すLSMと表記される)からのTiK放射(λ-2.51-2.75A)の反射率を測定した。回折次数はローマ数字で示す。相対的波高の比較のために、カウントレートを提供する。
図4の結果は、多層構造体材料、層の厚さ、および層数の適切な選択によって、単一回折要素から異なる分解能および強度により、同じスペクトル線を分散できることを示す。代替的に、長い波長を表面多層構造体で、短い波長を基板で回折して、大きい角度で(すなわち適正な分散を用いて)混合スペクトルを反射することもできる。多層構造体の厚さを適切に選択することによって、スペクトルが膜に沿って相互に隣り合うように、あるいは重なるようにすることができる(波長を決定するため、または既知の波長で多層構造体の厚さを測定するため)。同一スタックにおける2つの多層構造体スペーシングを同様に使用することができる。図1に関して、結晶上の多層構造体、または多層構造体の積重ね対は、1つは多層構造体および1つは結晶、または各積み多層構造体に1つづつ、複数のBraggの法則の正弦波曲線によって表される。連続的な厚さ勾配のある多層構造体について、CuKα(1.54A)およびAIKα(8.34A)の両波長で研究した。これらの波長による走査を図5に示す。Sollerコリメー夕のためにAIKの走査がわずかに低い分解能であるが、これらは驚くほど類似している。この類似性は、どちらの場合もほぼ同数の二層構造体対が回折に作用していることを示す。単純吸収の点からみると、CuK放射はより多く透過するが、AIKラインに比べてより小さい角度で回折する(同数の二層構造体の場合、直線距離がより大きくなる)。しかし、深さ透過および分解能を設定するのは、波長に依存する二層構造体の散乱効率によって決定される吸光度である。」(113頁3行乃至同頁末行)
3-2. 対比・判断
本件発明と甲第1号証乃至甲第26号証記載の発明とを比較すると、甲第1号証乃至甲第26号証には、本件発明の構成要件である「分析元素のスペクトルに対して妨害スペクトルとなる元素の回折X線がX線検出器に入射しないように、上記回折X線を反射させる結晶の格子面を上記基板の表面に対して傾斜させる」構成が存在しない。
すなわち、甲第8号証には、-i-層対の格子面を-j-層対の格子面に対して傾斜させ、同じ方向から入射したE1、E2のスペクトルの出射角を分離し、該分離したスペクトルを個別の検出器によって記録する構成が記載されている。
しかしながら、甲第8号証のものは多層膜同士を互いに傾斜させる構成であるから、本件発明の、「結晶質からなる基板の格子面を基板の表面及び多層膜格子面に対して傾斜させる」構成とは明らかに相違している。
また、甲第18号証には、「基板上に人工の多層構造を配置した装置において、多層構造と基板との双方でX線が反射される。」という知見が示されているが、本件発明の技術的課題は「妨害スペクトルを排除する。」ことであり、上記各号証に該技術的課題が存在してない以上、上記甲第8号証及び甲第18号証記載の技術内容から当業者といえども、本件発明の「結晶質からなる基板の格子面を基板の表面及び多層膜格子面に対して傾斜させる」構成を導き出すことはできない。
4.[理由2]について
4-1.証拠の記載事項
異議申立人が申し立ての根拠として特に挙げている甲第35号証のNick Grupidoからトクハラヤスコ宛のレター(1990年3月7日付ファックス)には、「90年2月28日付貴ファックスに関連して、我々はJEOL(日本電子)に3種類の基板で試験を行うように頼みました。しかし、貴方の意図が我々からJEOLに適切に伝わっていなかったとしたら、申し訳ありません。多層がSi基板のシリコン結晶の面と平行にコーティングされる限り、基板の厚さに関係なく、Si基板からは多層構造自体と同じ回折が発生するので、なぜ軸上でカットした基板を試験する必要がある
のか、JEOLにはその理由が分かつていません。
つまり、Si(100)の場合、軸から1゜ずらしてカットしなければ、前に示した現象が必ず発生します。 JEOLの上記意見は、Si(100)のSi基板を使用するという理解に基づいています。101や111などの異なるユニットセルを採用する場合には、当方にお知らせください。 また、カッティングに関して我々の知識をより明確にするために、「軸上」の場合と「1゜の軸ずれ」の場合とでSi基板はどのようにカットされるかを、きわめて大まかな手書きのスケッチで示してください。また、「軸上」または「1゜の軸ずれ」カッティングというのは、何に対してなのかを示してください。Si結晶の面に対してですか、何に対してでしようか? 貴方の追加情報の要求にお応えします。JEOLは、FからCの範囲に対して印加される0V-060AでSiピークの問題を経験したことがあります。この範囲では、1次銅回折が全て発生しました。カワベさんが言うには、2d=2.714Aであり、シリコン400平面の回折およびBraggの法則にしたがって、AuからCrLにアルファが反射する等々ということであり、これらから貴方が
返答を構築できるかと期待します。私は、始めにSi基板から多少のピークを観察した理学(大阪)に接触しました。しかし、彼らのシステムは望ましくないピークを除去する機能を備えているので、彼らは実のところSi基板のユニットセルまたはカッティング方法にあまり重きをおいていません。彼らは現在の方法に満足しているだけです。貴方のご意見と略スケッチをよろしくお願いします。(我々は、軸上カッティングとは何かに対して垂直に切断するということだと理解しています。間違いありませんか?)」と記載されている。
同じく異議申立人が申し立ての根拠として特に挙げている甲第43号証のトクハラヤスコからのファックス(1986年10月13日付)には、「……Siウェハの方向: JEOL(日本電子)ではウェハの傾斜は1゜未満と予想していますが、計算値を後程報告します。」と記載されている。
同じく異議申立人が申し立ての根拠として特に挙げている甲第39号証(トクハラヤスコからの1990年2月22日付ファックス)には「2.Si基板のオリエンテーション 貴社の理解が正しく、私の理解は間違っていました。本日、カワベ氏によって確認されましたので、ウェハは軸から1°ずらしてカッティングを続けてください。その後この点についてJEOL(日本電子)はチェックしていませんが、彼らが苦情を耳にしたことはありません。」と記載されている。
同じく異議申立人が申し立ての根拠として特に挙げている甲第30号証(トクハラヤスコからの1990年2月26日付ファックス)には「3.Si基板のオリエンテーション: Si基板によるSiピーク干渉の問題を経験したことがあるかどうか、島津に聞きました。上田氏は、確信はないが、貴社が軸から1°ずらしたカッティングを始めた時期と一致する最初の時以来、そのような干渉に関する苦情や意見を受けたことはないということです。島津は、3´´のウェハからの基板のカッティングの方向を知りたいと願っています。大小各々のサイズの基板の図面を用いてそれを説明してくださるようお願いします。」と記載されている。
同じく異議申立人が申し立ての根拠とし特に挙げている甲第34号証(トクハラヤスコ宛の1990年3月21日付ファックス)には「昨日のファックスが首尾よく届いているとよいのですが。私自身は送信するのを忘れていましたが、---が送信してくれたようです。本日は遅れを取り戻して続きを書き終えようと思います。先週は会議や電話が多かったため、この重要な返事を書き終える時間がありませんでした。
Siのオリエンテーション
我々は、当社の欧州のマイクロプローブのOEMの一社における基板の回折の問題に確証を持っています。フラットクリスタルXRFの人々は皆、理学とほとんど同じ応答をしており、私は、軸ずれウェハ対軸上ウェハに関するJEOL(日本電子)の意見に同意します。この議論を続ける前に、できる限り分かりやすく、軸ずれについて説明してみましょう。結晶Siはインゴットとして成長します。インゴットを切断し、研磨して平滑な円筒形にします。円筒形の長さに沿って「オリエンテーション」フラットをカットすべき場所を決定するために、回折パターンを取ります。フラットをカットした後、インゴットのフラットの平面に垂直にスライスすることによって、1-0-0ウェハを得ることができます。軸ずれウェハはこの平面に対して垂直にカットされず、垂直方向から斜めにカットされます。これを図に示すと、次のようになります。考え方としては、Si基板の平面を傾斜させることによって、Si回折ピークが検出器に入るように状態が補正されなくなるというものです。全ての干渉を解消するために1゜の軸ずれが適切かどうか確証はなく、また軸ずれ傾斜が別の問題を生じないという確信もありません。最善の方法は、これを試験して、結晶として回折しないアモルファス基板と比較することだと思います。結晶Si基板の代わりにガラスまたは溶融シリカなどのアモルファス基板材を使用することができます。JEOLはこの方法に興味がありますか? 我々は、JEOLの曲率半径まで曲げることができる、かなり高品質のガラスカバースリップを入手することができます。我々は、実際に半径およそ130mmまで曲げたことがあります。しかし、これらの部品に対する当社製品の性能については確信がありません。我々は、表面仕上げが非常に滑らかであるが、カバースリップの表面の粗さが高い、厚めのガラス基板で非常によい結果を出したことがあります(正確な数値は思い出せませんが、後でお送りします)。別の方法として、BK-7ガラスに類似した予め湾曲した光学系構成体にコーティングを施す方法があります。さらに別の方法として、異なるオリエンテーションを持つ基板を入手します。JEOL(日本電子)としては、Si(101)またはSi(110)の干渉線がSi(100)より少ないと思うかどうか、JEOLに聞いてください。
JEOLは最終的にこの問題を解決するために一部の研究をサポートすることに興味があるでしょうか?島津V/C 改訂POに感謝します。遅くても4月6日までに発送します。カッティングに関しては、V/Cから2枚以上カットすることはお勧めしません。dスペーシングの分配は、ウェハの両方向で同じではありません。つまり、1つの方向が別の方向より均一性が高くなります。この理由から、1つのウェハにつき1枚しかカットできません。我々としては、島津にXRFおよびEPMA両方のシステムで測定を行うことを奨励しますが、島津が評価片から2枚カットすることはお勧めしません。最善の成果を確実にするために、中心部から1枚だけをカットするように要求してください。さもなければ、ピークの形状に影響が出るかもしれません(昨日のファックスで述べた理学の210AのNi/Cの場合と同じ理由)。我々は調査機でV/Cを作成せず、数枚を同時に作ることができます。財政の問題 この問題については遅くなってすみません。貴方の提案は興味深く、こちら側で考察する必要があります。Jim Flasckと協議したいと思います。できるだけ早くご返事します。」と記載されている。
4-2.上記記載事項から認定される事実
以上の記載事項から、概ね以下の点が推認できる。
1)日本電子には、1986年10月時点から(X線分光素子において)シリコン基板上に多層構造を配置する際に、シリコン基板のシリコン結晶面と多層構造の層とを平行にしないように、シリコン結晶面を1度傾斜させて切り出すべきことの知見があり、そのようなシリコン基板の製造をOSMICに指示していた点。
2)OSMICは、日本電子からの指示により、シリコン結晶面を1度傾斜させて切り出したシリコン結晶を、1986年10月から1990年2月までの間に日本電子へ出荷していた点。
3)島津は、1990年2月以前に、シリコン結晶面を1度傾斜させて切り出したシリコン結晶をOSMICから入手し、使用していた。
4)島津には、遅くとも1990年2月26日にOSMICの結晶がシリコン結晶面を1度傾斜させて切り出されていることの知見があった。
4-3.当審の判断
上記事実によれば、以下のことがいえる。
a)上記各証拠は全てファクシミリによるレターであり、送信日は各レターの上部にそれぞれ記載されているように明確なものであるが、該各レターがいつ頃公然として知られまたは知られうる状態にあったことを証明すべき証拠が示されていない。
b)上記証拠により日本電子、OSMIC、島津は「(X線分光素子において)シリコン基板上に多層構造を配置する際に、シリコン基板のシリコン結晶面と多層構造の層とを平行にしないように、シリコン結晶面を1度傾斜させて切り出すべきこと」を知っていたことは証明されているが、このことを知り得た上記三者が不特定人である証明がなされておらず、やはり上記事項が公然として知られまたは知られ得る状態にあったことの証明がなされていない。
よって、上記4-2で認定した事実に対する上記a)〜b)の判断により、本件発明は、上記各号証によって、その出願の出願前公然知られた発明であるとすることができない。
6.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
 
異議決定日 1999-09-20 
出願番号 特願平4-316621
審決分類 P 1 651・ 111- Y (G21K)
P 1 651・ 121- Y (G21K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田邉 英治  
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 柏木 悠三
島田 信一
登録日 1998-09-04 
登録番号 特許第2823995号(P2823995)
権利者 理学電機工業株式会社
発明の名称 X線用の分光素子  
代理人 伏見 直哉  
代理人 田中 夏夫  
代理人 川口 義雄  

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