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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B23B
管理番号 1003822
異議申立番号 異議1997-72111  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-01-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-05-02 
確定日 1999-06-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第2558053号「環状カッタの着脱装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2558053号の特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
特許第2558053号発明は、平成5年6月30日の出願であって、平成8年9月5日にその特許の設定登録がなされ、その後、株式会社ミヤナガにより特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成9年10月20日に訂正請求がなされ、平成10年10月7日に前記訂正請求が取り下げられ、平成11年1月11日付けで本権の抹消がなされたものである。
2.本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】自由端部に環状カッタの挿入部を保持する挿入孔を有するアーバーを備えた穿孔装置であって、前記アーバーの前記挿入孔に、環状カッタ挿入部外周に形成した係合部に係止し、且つ、半径方向に出没自在な施錠部材を設け、前記施錠部材は操作スリーブに形成した第1制御面によって、前記カッタが非挿入状態の時に挿入孔内に求心方向に半突入状態で支承されているとともに、前記カッタがアーパーに挿入保持されている時に、操作スリーブに形成した第2制御面によって該施錠部材が該カッタ挿入部に設けた係合部に係止すべく構成されており、該施錠部材は、該施錠部材の通過を許容する凹部を有するカッタのみの通過を許容するように構成したことを特徴とする環状カッタの着脱装置。」
3。引用刊行物
特許異議申立人が提出し、当審において取消理由通知で引用した実願平2-39944号(実開平4-5911号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(以下「引用文献」という。)には、「図において、1はアダプターの主体で、筒状をなし下端を開口させ、上端にドリル本体の駆動軸に装着されたチャックに結合するシャンク2を有する。3はこの主体1の周壁に穿設した収容孔4に収容した結合用ボールで、ドリルビットAとの結合に用いられるもので、主体1に挿入されるドリルビットAのシャンクB周面に設けた凹部Cに嵌脱する。尚、上記収容孔4は外拡テーバ状孔にして結合用ボール3が本体1の内腔部へ脱落するのを防止している。5は主体1に対して所定の範囲を移動自在に嵌着した筒状のカバー体で、前記結合用ボール3に臨んで内壁に環状フランジ部6を設けている。」 (第7頁第6行〜第8頁第1行)、及び「主体1に対するドリルビットAの脱着には、カバー体5をスプリング7に抗してシャンク2側に移動させた状態で行われる。この状態ではカバー体5の環状フランジ部6が結合用ボール3から離れて結合用ボール3の主体1内への突出量が変えられる。ここで、結合用ボール3の主体1内への突出量の変化としては、第2図(a)、(b)に示すように主体1内から完全退出とはならず、ドリルビットAのシャンクBの凹部Cからだけ退出するものとし、一部を僅かに主体1内に突出状態とし、主体1内が空になった時に打撃力減衰部材11が抜け落ちるのを阻止している。そして、ドリルビットAのシャンクBが主体1内に出入りするのには、主体1内に突出する結合用ボール3が邪魔にならないように、ドリルビットAのシャンクB上端部には、第2図(a)に示すように凹部Cに至る溝部Eを設けるとか、第2図(b)に示すように凹部Cの一部が掛かるようにしてシャンクB上端部周りを縮径加工E’等している。尚、打撃力減衰部材11の交換等は主体1からカバー体5を外して行う。然して、この考案のアダプターを使用するドリルビットAとしては、主体1に挿入結合されるシャンクBの形態を共通にし、特に細径のものが用意される。」(第9頁第9行〜第10頁第15行)と記載されており、第1図には一部を断面で示す正面図が、また、第2図(a)、(b)には要部の断面図が記載されている。
4.対比、判断
上記のことから、引用文献には、「自由端部にドリルビットのシャンクを保持する内腔部を有するドリル本体の駆動軸に装着されたチャックに結合するシャンクの主体を備えた穿孔装置であって、前記主体の前記内腔部に、ドリルビットのシャンク外周に形成した凹部に係止し、且つ、半径方向に出没自在な結合用ボールを設け、前記結合用ボールはカバー体の環状フランジ部の内側面によって、前記ドリルビットが非挿入状態の時に内腔部内に求心方向に半突入状態で支承されているとともに、前記ドリルビットが主体に挿入保持されている時に、カバー体の前記環状フランジ部以外の部分の内側面によって該結合用ボールが該ドリルビットのシャンクに設けた凹部に係止すべく構成されており、該結合用ボールは、該結合用ボールの通過を許容する溝部を有するドリルビットのみの通過を許容するように構成したドリルビットの取付け用アダプター。」が記載されている。
ここで、引用文献記載のものにおける「ドリルビットのシャンク」、「ドリル本体の駆動軸に装着されたチャックに結合するシャンクの主体」、「内腔部」、「凹部」、「結合用ボール」、「カバー体」、「カバー体の環状フランジ部の内側面」、「カバー体の環状フランジ部以外の部分の内側面」、「溝部」及び[取付け用アダプター」は、それぞれ本件発明における「挿入部」、「アーバー」、「挿入孔」、「係合部」、「施錠部材」、「操作スリーブ」、「操作スリーブに形成した第1制御面」、「操作スリーブに形成した第2制御面」、「凹部」及び「着脱装置」と表現し得るものであるから、同引用文献には、以下のものが記載されていると言うことができる。
「自由端部にドリルビットの挿入部を保持する挿入孔を有するアーバーを備えた穿孔装置であって、前記アーバーの前記挿入孔に、ドリルビット挿入部外周に形成した係含部に係止し、且つ、半径方向に出没自在な施錠部材を設け、前記施錠部材は操作スリーブに形成した第1制御面によって、前記ドリルビットが非挿入状態の時に挿入札内に求心方向に半突入状態で支承されているとともに、前記ドリルビットがアーバーに挿入保持されている時に、操作スリーブに形成した第2制御面によって該施錠部材が該ドリルビットの挿入部に設けた係含部に係止すべく構成されており、該施錠部村は、該施錠部材の通過を許容する凹部を有するドリルビットのみの通過を許容するように構成したドリルビットの着脱装置。」
そこで、本件発明と上記引用文献記載のものとを比較すると、前者は、「環状カッタ」に係わるものであるのに対して、後者は「ドリルビット」に係わるものである点でのみ相違する。
しかしながら、上記「環状カッタ」及び上記「ドリルビット」は何れも穿孔用の工具として同じ技術分野に属するものであり、しかもそれぞれ周知のものであるから、上記引用文献記載のものを環状カッタに適用して本件発明の如く構成することは当業者であれば容易になし得るものと言える。
したがって、本件発明は、引用文献に記載された発明に基づき、容易に発明をすることができたものと言わざるを得ない。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、本件特許に係る出願の出願前に国内において頒布された刊行物である引用文献に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願についてなされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規程により結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-04-21 
出願番号 特願平5-183522
審決分類 P 1 651・ 121- Z (B23B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 和田 雄二  
特許庁審判長 城戸 博兒
特許庁審判官 小関 峰夫
桐本 勲
登録日 1996-09-05 
登録番号 特許第2558053号(P2558053)
権利者 日東工器株式会社
発明の名称 環状カッタの着脱装置  
代理人 増井 忠弐  
代理人 社本 一夫  
代理人 今井 庄亮  
代理人 伊藤 茂  
代理人 角田 嘉宏  

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