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審決分類 |
審判 一部申し立て 発明同一 A01K |
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管理番号 | 1003890 |
異議申立番号 | 異議1998-74432 |
総通号数 | 4 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-09-06 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-09-07 |
確定日 | 1999-08-30 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2726925号「魚釣用スピニングリール」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
I.本件手続の経緯 本件特許第2726925号の請求項1及び請求項2に係る発明についての出願は、平成4年12月29日に出願された実願平4-93399号を国内優先権主張の基礎とし、平成5年2月22日に特願平5-56503号として出願されたものであり、平成9年12月12日に設定登録がなされ、その後、特許異議申立人株式会社シマノより特許異議の申立てがなされ、当審において取消理由を通知したところ、その指定期間内である平成11年7月15日付けで訂正請求がなされたものである。 II.訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 特許権者は特許明細書を次のとおりに訂正するように求めている。 ▲1▼ 明細書における特許請求の範囲の請求項2に係る記載を削除する。 ▲2▼ 明細書における段落番号【0008】の記載の請求項2に対応する後段の記載を削除して、「【0008】【課題を解決するための手段】上記目的に鑑みて本発明は、釣糸巻取り位置と放出位置とに反転自在なベールが取り付けられると共に釣糸案内部を有するベール支持部材を前端部に取り付けた支持アームの前記前端部と、他側の支持アームの前端部とが、ローターの軸芯に対して前記ベールの釣糸巻取り位置側と反対側にオフセットし、前記ローターの回転バランス調整用のバランサーを、少なくとも前記釣糸案内部を有するベール支持部材側の支持アームの中であって、前記釣糸巻取り位置のベール側に配設し、前記両支持アームがその前端部から基部に向けて前記ベールの釣糸巻取り位置側に偏寄した形状に形成されたことを特徴とする魚釣用スピニングリールを提供する。」と訂正する。 ▲3▼ 明細書における段落番号【0011】の記載の「何れの請求項も」の語句を削除して、「【0011】ここで支持アームは前端部が釣糸巻取り位置のベールと反対側にオフセットしているが、支持アームが前端部から基部に向って釣糸巻取り位置のベール側に偏寄しているため、上記正面視方向の合成バランサー位置にそれだけ近くなり、支持アームのベール側領域内に合成分のバランサーを配設し易くなる。即ち、合成バランサーの位置が上記釣糸案内部を有するベール支持部材側支持アームの釣糸巻取り位置のベール側領域に位置するか、或いは近ければ、ローターのコンパクトさを維持する制約下で可及的にバランスをとる意味において、バランサーをこの支持アームのベール側領域内に配設することができる。また幾分離れておれば、この釣糸案内部を有するベール支持部材側支持アームと他側の支持アームとに分配配置することにより、上記同様に可及的にバランスをとることができる。」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記▲1▼の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また上記▲2▼及び▲3▼の訂正は、発明の詳細な説明の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、上記▲2▼及び▲3▼の訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 そして、これらの訂正は、訂正前の明細書、又は図面に記載された事項の範囲内において訂正するものであって新規事項を追加するものでなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。 さらに、訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明が出願の際独立して特許を受けることができるものである。 3.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定において準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する同第126条第2ないし4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.特許異議の申立てについての判断 請求項2に係る発明は、訂正の結果削除され、特許異議の申し立ての対象が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 魚釣用スピニングリール (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 釣糸巻取り位置と放出位置とに反転自在なベールが取り付けられると共に釣糸案内部を有するベール支持部材を前端部に取り付けた支持アームの前記前端部と、他側の支持アームの前端部とが、ローターの軸芯に対して前記ベールの釣糸巻取り位置側と反対側にオフセットし、 前記ローターの回転バランス調整用のバランサーを、少なくとも前記釣糸案内部を有するベール支持部材側の支持アームの中であって、前記釣糸巻収り位置のベール側に配設し、 前記両支持アームがその前端部から基部に向けて前記ベールの釣糸巻収り位置側に偏寄した形状に形成された ことを特徴とする魚釣用スピニングリール。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は魚釣用スピニングリールに関し、特に操作性の良い魚釣用スピニングリールに関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、魚釣用スピニングリールは、ローターの両側に形成した一対の支持アームの先端部に釣糸案内部を有するアームレバーやベールホルダー等のベール支持部材を介して、半環状のベールを釣糸巻取り位置と放出位置に反転自在に取り付けているが、これらベールやベール支持部材はそれぞれ左右対称には形成されていないため、ローターの回転バランスが悪い。 【0003】 この回転バランスの不良を改善する手段として、実開昭52-80887号公報に見られるように釣糸巻取り状態のベールとは反対側のローター部分にバランサーを取り付けたり、ベールの支持アームに対する軸着位置をローターの軸芯に 対して釣糸巻取り状態のベール側とは反対側にオフセットさせたり、実公昭53 -33033号公報に見られるように、一方の支持アームの先端部にスプール軸 方向と平行にバランサーを移動可能に設けたり、更には、2つのベール支持部材 の材質に比重の異なるものを用いたりしてローターの回転バランスの不均衡を改 善することが知られている。 【0004】 ところが近年は巻取り効率を向上させるために、実開平1-59063号公報に見られるように釣糸案内ローラーにボールベアリングを使用したり、実開平3 -74260号公報や実開平4-9564号公報に見られるように、ベール支持 部材に糸絡み防止部材を設ける等しているため、釣糸案内部を有するベール支持 部材を取り付けた側の支持アームは、その先端方向(ローターの前方向)への重量偏寄が一層進行している。 【0005】 そこでローターの前方への重量偏寄を補正し、ロータ一回転時に偶力が生じないようにベール側のローター後部にバランサーを設けて、ベール等の重心を後方に移動させ、ロータ一回転時のバランスを図るようにしたものが実開平4-127167号で知られている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、ローター後部の形状がバランサー装着のため部分的に外方に突出してしまい、ローター自体がコンパクトにならず、スピニングリールのローターとしては適さず、また、突出部は外観上美観を損ねる。 更には、バランスのために重量を付加するのみであるためローター全体として重量が大きくなり、釣竿に装着する部品としては必ずしも適さない。 【0007】 依って本発明は、軽量かつコンパクトであると同時に可及的に回転バランスのとれた操作性の良い魚釣用スピニングリールの提供を目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】 上記目的に鑑みて本発明は、釣糸巻収り位置と放出位置とに反転自在なベールが取り付けられると共に釣糸案内部を有するベール支持部材を前端部に取り付けた支持アームの前記前端部と、他側の支持アームの前端部とが、ローターの軸芯に対して前記ベールの釣糸巻取り位置側と反対側にオフセットし、前記ローターの回転バランス調整用のバランサーを、少なくとも前記釣糸案内部を有するべール支持部材側の支持アームの中であって、前記釣糸巻取り位置のベール側に配設し、前記両支持アームがその前端部から基部に向けて前記ベールの釣糸巻取り位置側に偏寄した形状に形成されたことを特徴とする魚釣用スピニングリールを提供する。 【0009】 【作用】 ベールの重心はローターの前方位置に在るため、ローターの長手方向のアンバランス(偶力)を補正するためにはベール重心の後方位置に一方のバランサーを設けてベールの重心を後方に修正移動させる必要が有る。一方、釣糸案内部を有するベール支持部材側支持アームの先部は他側の支持アームの先部よりも重く、かつ、前方位置にその重心が在るため、ローターの長手方向のアンバランスを補正するためには釣糸案内部を有するベール支持部材の後方位置にもう一方のバランサーを設けてその重心を後方に移動させる必要がある。 【0010】 上記一方のバランサーが釣糸巻取り位置のベール側であって、もう一方のバランサーが釣糸案内部を有するベール支持部材側ということから、これらの2つのバランサーを合成した合成バランサーは、実質的にはローターの前方視(正面方向視)による釣糸巻取り位置のベール側の半領域と釣糸案内部を有するベール支持部材側の半領域との重なり合った領域に位置することになる。 【0011】 ここで支持アームは前端部が釣糸巻取り位置のベールと反対側にオフセットしているが、支持アームが前端部から基部に向って釣糸巻取り位置のベール側に偏寄しているため、上記正面視方向の合成バランサー位置にそれだけ近くなり、支持アームのベール側領域内に合成分のバランサーを配設し易くなる。即ち、合成バランサーの位置が上記釣糸案内部を有するベール支持部材側支持アームの釣糸巻収り位置のベール側領域に位置するか、或いは近ければ、ローターのコンパクトさを維持する制約下で可及的にバランスをとる意味において、バランサーをこの支持アームのベール側領域内に配設することができる。また幾分離れておれば、この釣糸案内部を有するベール支持部材側支持アームと他側の支持アームとに分配配置することにより、上記同様に可及的にバランスをとることができる。 【0012】 これらバランサーはローターの長手方向の偶力アンバランスを調整するものであるが、上記解決手段の前者も後者もベール支持部材を前端部に取り付けた支持アームの該前端部を釣糸巻取り状態のベールと反対側にオフセットさせているため、ベール重量と、その重心をローター後方に修正移動させるためのバランサー分とによる、ベール側対反ベール側という半径方向の遠心力アンバランスをこのオフセット形状によって補正できる。従って、回転の半径方向アンバランスの調整バランサーを別に設けなくても回転バランスが良く、ローターの軽量化とコンパクトさが図られる。 釣糸案内部を有するベール支持部材側支持アーム領域と他側の支持アーム領域との重量の相違による半径方向の遠心力アンバランスについては、軽量である他側の支持アーム領域を、例えば、比重の重い材料によって製作するか、或いは、該支持アーム内にバランサーを配設する等によってローターのコンパクトさを損なわない範囲で可及的に対処することができる。 【0013】 【実施例】 以下、本発明を添付図面に示す実施例に基づき、更に詳細に説明する。 図1,図2で魚釣用スピニングリールは、リール本体1の前部la内の筒状の駆動軸2の外周に、該駆動軸2を回転自在に支持する軸受10が嵌合され、該軸受10よりもスプール11側前方に爪車12とカラー13が嵌合され、更にカラー13の前方にローター3の筒部3aを回り止め嵌合してナット14で固定している。 【0014】 ローター3は、駆動軸2に設けられた図示しないピニオンと噛合する図示しない駆動歯車を介してハンドル15の回転に連動して回転駆動されるように支持されている。前記駆動軸2に套嵌されて突出したスプール軸16の先端部にスプール11が支持され、スプール11はハンドル15の回転に連動して前後に往復動する。 【0015】 ローター3について、以下では図1の左側を前方、右側を後方と呼ぶことがある。ローターは各図に示すように前記筒部3aと、前壁3bと、大径の筒部3cと、ローター底部の側部から前方に向けて突出された一対の支持アーム3f,3gが形成されている。 【0016】 一方の支持アーム3f内の軸部3hには、釣糸案内部としてのガイドローラ20側のベール支持部材(以下、一方のベール支持部材ということがある。)4がタッピングネジ軸17で反転自在に支持され、図3において一方のベール支持部材4は釣糸巻取り時実線の釣糸巻取り位置に在り、釣糸放出時には2点鎖線の釣糸放出位置に反転される。 他側の支持アーム3g内の軸部3iには他側のベール支持部材5がタッピングネジ軸18で反転自在に支持され、図4で他側のベール支持部材5は釣糸巻取り時実線の釣糸巻取り位置にあり、釣糸放出時には2点鎖線の釣糸放出位置に反転される。 【0017】 ベール支持部材4にはガイドローラ20を介してベール19の一端が、またベール支持部材5にはベール19の他端が取り付けられている。 ベール支持部材4,5が反転自在に支持される軸部3h,3iの軸芯3h’,31’は、ローター3の軸芯LAに対して巻取り位置に在るベール19と反対側にオフセット(1〜7mm)されており、ローター回転の半径方向のバランスからみて、半環状の異形ベールの重量偏寄分と、後述の後方への重心移動用のバランサーの重量偏寄分をローターの形状を工夫することによって調節するものである。従って、単にバランサーを付加するだけによる調節の場合と比較して、ローター3が軽量化される。 【0018】 また、一対の支持アーム3f,3gの形状は、それぞれ図3と図4に示すようにベール支持部材4,5が取り付けられた先端部から基部3d,3eに亘って、釣糸巻取り位置のベール19側に偏寄した形状に形成されている。ただし、本発明に係る支持アーム形状はこれに限らず、先端部から下方部にまで亘ってローター軸芯LAに沿った方向に形成されており、基部付近のみが釣糸巻取り位置のベール側に偏寄した形状に形成されていたり、また中央部から基部に亘って前記ベール側に偏寄した形状に形成されていてもよい。 更には支持アーム3f,3gの基部3d,3eのベール19側には凹部3j,3kが形成されており、それぞれにはバランサー7,8が装着されている。また一方の支持アーム3fの基部3d内にはローター3の中心方向に貫通する透孔3mが穿設されている。 【0019】 ベール支持部材4,5とベール19とを図3と図4に示す2点鎖線の釣糸放出位置から実線の釣糸巻取り位置側に反転させるL字形のレバー9が、図7に示す一方の支持アーム3f内に設けられている。レバー9の一端の凸部9aはベール支持部材4の図示していない孔に挿入され、他端9bは図1と図2において上下方向に配設された状態で透孔3mに挿入されている。レバー9の他端9bは図1と図2に示すリール本体1に設けられたカム1bに当接可能に臨んでいる。こうした各部材を収容保護するカバー部材3p,3qがそれぞれ支持アーム3f,3gの外側を覆うようにビス3r,3sによって締結されている。 【0020】 魚釣用スピニングリールの作動は、図示しない仕掛けが投擲される時、ベール支持部材4,5が図3,図4の2点鎖線の釣糸放出位置にあってスプール11に巻回された釣糸が放出される。 仕掛けが投擲された後、ハンドル15の回転でローター3が回転されると、レバー9の他端9bがリール本体1に設けられカム1bに当接されて後退し、ベール支持部材4が反転されて両ベール支持部材4,5とベール19とが釣糸巻取り位置に起こされる。この時釣糸はベール19ですくいあげられて釣糸案内ローラ20へ案内される。この状態でハンドル15の回転でローター3が回転すると釣糸がスプール11に巻回される。 【0021】 以下では、以上説明した本発明に係る魚釣用スピニングリールの構成理由を説明する。 図8を参照すると、ローター軸芯LAに対してベール19側と反ベール側との遠心力による半径方向のバランスをとるために、ローター3’の反ベール側の円筒部上にベール19の遠心力に対するバランサーWを設けただけでは、ローター軸芯LA方向において、ベール19の重心GBとバランサーWとの距離Hの存在のため偶力が生じてしまい、バランスがとれない。 【0022】 そこでベール重心GBをローター3’の後方位置に修正移動させることが必要となる。ベールのみではないが、他部品をも含めてベール側ローター後部円筒部にバランサーを設けて修正するようにしたものが、実開平4-127167号公報に開示されている。 【0023】 然しなから、ローター後部の形状がバランサー装着のために部分的に外方に突出してしまい、美観を損ねると共に、ローター自体が重く、かつコンパクトにならず、スピニングリールのローターとして適さない。そこで本発明では、ローターの形状を工夫することによって、軽量かつコンパクトなローターの範囲内において可及的に回転バランスのとれた魚釣用スピニングリールを提供する。 【0024】 これを以下に詳述する。図9は本発明の原理を説明したものであり、ローター3を前方からみた略図である。支持アーム3fと3gとは、既述の如くローター軸芯LAから、釣糸巻取り状態に在るベール19に対して反ベール側に移動した位置にベール支持部材4,5をその前端部に装着できるようにオフセットされている。 【0025】 まず、ベール19の重心をローター3の後方位置に修正移動させるために、ローター後方にバランサーAを設けたものと考える。また、一対の支持アーム3fと3gに取り付けられた部品の重量差による半径方向の回転バランスを図る際にも、上記ベールに対する場合と同様に偶力が生じ得る。従って、重量がローター前方に偏寄している側の支持アーム3fに取り付けられたベール支持部材4等のローター後方位置にバランサーBを設けたものと考える。ローター3の重量を可及的に軽量化する観点から、これらのバランサーはできるだけローター3の後方に位置させる。こうすると小さな重量のバランサーでベール19等の重心をより後方に修正移動させることができる。従って、各バランサーA,Bはローター3の底部近くに設けるものと考える。 【0026】 この両バランサーA,Bの代りに、この両バランサーAとBを合わせた合成バランサーCを考える。この合成バランサーCは、図9に示す様に、支持アーム3f,3gのベール側に偏寄した基部3d,3eを結んだラインLD上に在るとは限らないが、本発明の狙いであるコンパクトなリールという制約の下で可及的にバランスを図ることより、ラインLD上に在るものとして2つのバランサーD,Eに分割してそれぞれ支持アーム3f,3g内の基部3d,3eに配設する。このバランサーDが図3のバランンサー7であり、バランサーEが図4のバランサー8である。 【0027】 もっとも、各バランサーA,Bをローター3の底部よりも前方に設け、合成バランサーCの位置がもう少しローター軸芯LAの方(反ベール方向)に近く位置するならば、各バランサーD,Eは支持アーム3f,3gの基部とは限らず、もう少し前方(前端部方向)に位置することもある。 【0028】 更には、各部材の重量分布によっては図10に示すように、丁度支持アーム3f内か又は支持アーム3fの近くに合成バランサーCが位置することもある。この場合は他方の支持アーム3gにはバランサーを分散配置する必要は無く、合成バランサーCそのものがそのまま支持アーム3d内に配置されることとなる。 【0029】 このようにして偶力対策としてのバランサーDとE(又はC)を配設したが、これらのバランサーの内、バランサーAとベール19の重量によるベール方向の遠心力を打ち消すように、両支持アーム3fと3gを反ベール側にオフセットしている。この場合、ベール19が釣糸開放状態と巻取り状態との両方に切替られる関係上、該ベール19内周とスプール11の外周との間隔はオフセットによって変動する。図9における反ベール側にベール19を移動させた場合、即ち、釣糸開放状態では間隔が大きくなって投擲の際に釣糸がリールに接触し難くなり、円滑な投擲が可能となって操作性がよくなる。 【0030】 しかし、逆に図9の釣糸巻取り状態の場合はスプール11とベール19との間隔が小さくなり、またデザイン上の観点からも上記オフセットには限界がある。そこで通常、オフセット量ΔLは1〜7mm程度である。このため、オフセットのみではベール側と反ベール側の遠心力バランスが完全にとれない場合があり、その場合にはローター3の前壁3bの表又は裏側や、大径筒部3cの内周に補助のバランサーを配設することもある。図6の破線Fがこの補助バランサーを示している。この場合もコンパクトなリールという制約に反することは無い。 【0031】 一方、両支持アーム3f,3gに取り付けられている部材の重量差と上述のバランサーBの分とに基づくベール・反ベール方向に直交する方向の半径方向の遠心力によるアンバランスを可及的に是正するように他方の支持アーム3g内にバランサーを配設したり、また、他方のベール支持部材5を比重の大きな材料、例えば、亜鉛等によって形成したりする。こうした方法もリールのコンパクトさを損なうことがない。この半径方向のバランスのために支持アーム3g内にバランサーを配設する場合は、支持アーム3gの前端部近くに位置させると良い。 【0032】 これは、支持アーム内に配設する限りにおいては、リールのコンパクトさを損なうことは無く、しかも支持アームの前端部に位置させることは、対向する一方の支持アーム3fの先部に取り付けられたベール支持部材4等の重心を大きく下げる必要性が無く、その分上述したバランサーBの重量を小さくでき、それによってローター、ひいてはリールを軽量化することに寄与する。 【0033】 また、支持アーム3f,3gの基部3d,3eは幅広に形成されているため、ベール19の付勢機構や反転機構等も設けることができ、しかもこれらの機構に悪影響を及ぼすことなくバランス調整ができる。 【0034】 既述の如く、各支持アーム3f,3gの外側はカバー部材3p,3qによって被覆している。これはベール支持部材を釣糸巻取り位置と放出位置とに振り分け付勢する付勢ばねや、反転機構のレバー9の装着等と同一方向からバランサー取り付け作業が行えると共に、同一カバー部材でカバーできるため、リールの組立作業性が良いと共に構造も簡素化される。反転機構のレバー9の代りに、リール本体1の上部に形成した脚部1cに復帰部材を設けて、ベール支持部材4の衝接によってベール19を反転させてもよい。 【0035】 また、各バランサーは板状部材を複数枚重ね合わせて構成すると都合が良い。即ち、バランサーの微調整がその枚数を加減することによって行え、また、鉛、亜鉛、Bs等比重の異なる板の組合せによって調節の自由度が増大する。更にはローターを共通化して設計仕様における釣糸案内部の構成の相違や反転レバーの有無等に対しても対応が可能になる。また更に、板状部材はプレスによって打ち抜き加工ができ、鋳造製品に必要なバリ取やパーティングの仕上げ加工等も不要であって安価に製作できる。 【0036】 【発明の効果】 以上の説明から明らかなように本発明によれば、ハンドルの回転に連動して回転するローターの形状のコンパクト化や軽量簡素化を図りながら、ローターに装着される部材の不均衡に基づく回転アンバランスを可及的に是正でき、魚釣り操作性が向上する。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明に係る魚釣用スピニングリールの部分破断側面図である。 【図2】 図1の要部の拡大断面側面図である。 【図3】 図1の魚釣用スピニングリールをガイドローラー側から見た側面図である。 【図4】 図1の魚釣用スピニングリールを図3と反対側から見た側面図である。 【図5】 図4に現われているベール支持部材を主としたローターの側面図である。 【図6】 ローターの正面図と縦断面図である。 【図7】 図3に現われているベール支持部材を主としたローターの側面図である。 【図8】 ローターの偶力発生説明図である。 【図9】 偶力バランサーの配置説明図である。 【図10】 他の偶カバランサーの配置説明図である。 【符号の説明】 3 ローター 3d,3e 支持アームの基部 3f,3g 支持アーム 4,5 ベール支持部材 7,8 バランサー 19 ベール F 補助バランサー |
訂正の要旨 |
▲1▼ 特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項2に係る記載を削除する。 ▲2▼ 明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書における段落番号【0008】の記載の請求項2に対応する後段の記載を削除して、「【0008】【課題を解決するための手段】上記目的に鑑みて本発明は、釣糸巻取り位置と放出位置とに反転自在なベールが取り付けられると共に釣糸案内部を有するベール支持部材を前端部に取り付けた支持アームの前記前端部と、他側の支持アームの前端部とが、ローターの軸芯に対して前記ベールの釣糸巻取り位置側と反対側にオフセットし、前記ローターの回転バランス調整用のバランサーを、少なくとも前記釣糸案内部を有するベール支持部材側の支持アームの中であって、前記釣糸巻取り位置のベール側に配設し、前記両支持アームがその前端部から基部に向けて前記ベールの釣糸巻取り位置側に偏寄した形状に形成されたことを特徴とする魚釣用スピニングリールを提供する。」と訂正する。 ▲3▼ 明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書における段落番号【0011】の記載の「何れの請求項も」の語句を削除して、「【0011】ここで支持アームは前端部が釣糸巻取り位置のベールと反対側にオフセットしているが、支持アームが前端部から基部に向って釣糸巻取り位置のベール側に偏寄しているため、上記正面視方向の合成バランサー位置にそれだけ近くなり、支持アームのベール側領域内に合成分のバランサーを配設し易くなる。即ち、合成バランサーの位置が上記釣糸案内部を有するベール支持部材側支持アームの釣糸巻取り位置のベール側領域に位置するか、或いは近ければ、ローターのコンパクトさを維持する制約下で可及的にバランスをとる意味において、バランサーをこの支持アームのベール側領域内に配設することができる。また幾分離れておれば、この釣糸案内部を有するベール支持部材側支持アームと他側の支持アームとに分配配置することにより、上記同様に可及的にバランスをとることができる。」と訂正する。 |
異議決定日 | 1999-08-25 |
出願番号 | 特願平5-56503 |
審決分類 |
P
1
652・
161-
XA
(A01K)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 石井 哲 |
特許庁審判長 |
藤井 俊二 |
特許庁審判官 |
佐藤 昭喜 木原 裕 |
登録日 | 1997-12-12 |
登録番号 | 特許第2726925号(P2726925) |
権利者 | ダイワ精工株式会社 |
発明の名称 | 魚釣用スピニングリール |
代理人 | 小林 茂雄 |
代理人 | 越智 俊郎 |
代理人 | 越智 俊郎 |