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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C11D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C11D
管理番号 1006057
異議申立番号 異議1997-75434  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-10-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-11-21 
確定日 1999-05-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第2611071号「洗剤組成物」の請求項1ないし7に係る特許について、次のとおり決定する。 
結論 特許第2611071号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 同請求項6ないし7に係る特許を維持する。 
理由 I 本件発明
本件特許第2611071号(平成3年10月18日出願(優先権主張日1990年10月19日及び1991年8月19日 英国)、平成9年2月27日設定登録)の発明は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された下記のとおりのものである。

「【請求項1】次の成分:
(i)過酸塩;及び
(ii)N-アシル基又はO-アシル基を有し、かつ過酸化水素と反応して有機過酸を生成する化合物であって、実測擬一次パーハイドロリシス速度定数(Kobs)が1.5×10-4〜350×10-4sec-1である漂白剤活性化剤;
を含み、但し過酸塩が過硼酸ナトリウムでありかつ漂白剤活性化剤がN-ジアシル化アミン又はN,N′-ポリアシル化アミンである場合には、過酸塩は漂白剤活性化剤から隔離されている、圧縮した粒状漂白組成物の洗濯用タブレット。
【請求項2】更に、洗剤活性化合物を含む請求項1のタブレット。
【請求項3】更に、洗剤ビルダーを含む請求項1又は2のタブレット。
【請求項4】過酸塩10〜30重量%、漂白剤活性化剤1〜10重量%、洗剤活性化合物2〜50重量%、及び洗剤ビルダー5〜80重量%からなる請求項3に記載のタブレット。
【請求項5】更に、他の洗剤成分を含む請求項1〜4のいずれかに記載のタブレット。
【請求項6】過酸塩が過炭酸ナトリウムである請求項1〜5のいずれかに記載のタブレット。
【請求項7】漂白剤活性化剤が、テトラアセチルエチレンジアミン、グリセリントリアセテート、ベンゾイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム及び1-O-オクタノイル-2,3,4,6-テトラ-O-アセチルグルコースから選択したものである請求項1〜6のいずれかに記載のタブレット。」
II 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人プロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イースト・インクは、甲第1号証乃至甲第13号証及び参考資料A及びBを提出し、
(1)本件請求項1乃至請求項7に係る発明は、甲第11号証乃至甲第13号証及び参考資料A及びBによる技術水準を参酌すれば、甲第1号証乃至甲第10号証に記載された発明であるか、あるいはこれらに記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1乃至7に係る特許は、特許法29条の規定に違反してなされたものであること、および
(2)本件特許明細書には記載不備があるから、本件請求項1乃至請求項7に係る特許は、特許法36条の記載要件を満たさないものに対してなされたものであること
を理由に、本件請求項1乃至7に係る特許は取り消されるべきものであると主張している。
(甲第1号証乃至甲第13号証及び参考資料A及びBは、別紙参照。)
III 請求項1乃至請求項5に係る特許について
請求項1乃至5に係る特許に対して、当審では下記の取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。
そして、下記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項1乃至請求項5に係る特許は、この理由によって取り消すべきものである。

甲第1号証(英国特許第911,204号明細書)刊行物(以下、単に「刊行物」という)の実施例3には、p-アセトキシベンゼンスルホン酸ナトリウムと過ホウ酸ナトリウムを含む洗濯用タブレットが記載されている。
そして、p-アセトキシベンゼンスルホン酸ナトリウムのKobsは、1.5×10-4〜350×10-4sec-1の範囲に入っているものと推定される(異議申立書8〜9頁のパラグラフ3.10と上申書参照)。
上記刊行物には、タブレットが、洗剤活性剤、ビルダー、その他の成分を含むことも記載されている。
したがって、本件請求項1乃至5に係る発明は、上記刊行物に記載された発明と同一であると認められるから、特許法29条1項3号に該当するものである。
IV 請求項6乃至7に係る特許について
1 特許法29条について
(1)請求項6に係る発明
異議申立人の提出する甲第1号証乃至甲第13号証のいずれを検討しても、本件請求項6に係る発明、すなわち、過酸塩を過炭酸ナトリウムとし、請求項1の(ii)で規定する特定の実測擬一次パーハイドロリシス速度定数(Kobs)の漂白剤活性化剤を含む洗濯用タブレットの発明は記載されていない。
すなわち、甲第1号証乃至甲第4号証には、過酸塩と漂白剤活性化剤とを含む洗濯用タブレットは記載されるが、過酸塩が過炭酸ナトリウムであることも、漂白活性剤のKobsが特定範囲であることも具体的に何ら記載されていない。
甲第5号証及び甲第6号証には、種々の形態の漂白組成物が記載されているが、タブレットは記載されていない。
甲第7号証には、漂白組成物のタブレットが記載されるが、過炭酸ナトリウムを含むものは記載されていない。
甲第8号証には、漂白組成物が記載されるが、過炭酸ナトリウムを含むこともタブレットであることも記載されていない。
甲第9号証には、漂白組成物で用いる活性化剤のKobsが記載されるに過ぎない。
甲第10号証には、義歯クレンジング用タブレットが記載されるが、洗濯用タブレットも、過炭酸ナトリウムを含むことも記載されていない。
甲第11号証には、漂白剤活性化剤を含む洗濯用タブレットが記載されるが、過炭酸ナトリウムを含むことも、漂白剤活性化剤のKobsも記載されていない。
甲第12号証及び甲第13号証には、漂白組成物で、過炭酸ナトリウムを安定化するためにコーティングすることが記載されているに過ぎない。
また、甲第1号証乃至甲第13号証刊行物には、それらに記載される発明を組み合わせる動機はないから、本件請求項6に係る発明の過炭酸ナトリウムと特定のKobsを有する漂白剤活性化剤とを組み合わせ洗濯用タブレットにするという構成を、これらの刊行物記載の発明を組み合わせて当業者が容易になし得たことであるとすることもできない。本件請求項6に係る発明では、その構成により安定で良好な漂白特性を有する漂白組成物のタブレットを得るという効果を奏しているものであると認められる。
したがって、請求項6に係る発明は、異議申立人の提出する甲第1号証乃至甲第13号証刊行物に記載された発明であるとも、それらから当業者が容易に発明をすることができたものであるともすることができない。
なお、参考資料Aは、漂白組成物の粒状物とタブレットとを対比実験するものであるが、特定の洗濯機における実験に過ぎないものであるから、そこに示される結果のみでもって、タブレットにすることにより効果がないとすることはできない。
また、参考資料Bは、特定の洗濯機の構造を説明するに過ぎない。
よって、参考資料A及びBは、上記判断を左右しない。
(2)請求項7に係る発明
請求項7に係る発明は、漂白活性化剤がテトラアセチルエチレンジアミン(いわゆるTAED)、グリセリントリアセテート等の特定のものから選択されたものである漂白組成物(但し過酸塩が過硼酸ナトリウムでありかつ漂白活性化剤がTAEDである場合には、過酸塩は漂白剤活性化剤から隔離されている)の洗濯用タブレットとなるが、異議申立人の提出する甲第1号証乃至甲第13号証のいずれを検討しても、請求項7に係る上記発明は記載されていない。
すなわち、甲第1号証は、過酸塩と漂白剤活性剤とを含むタブレットを記載するが、本件請求項7の特定の漂白剤活性剤を記載しない。
甲第2号証乃至甲第4号証及び甲第7号証は、過硼酸ナトリウムとTAEDとを含むタブレットを記載するが、過硼酸ナトリウムとTAEDとは隔離されていない。
甲第5号証乃至甲第6号証及び甲第8号証には、種々の形態の漂白組成物が記載されているがタブレットは記載されていない。
甲第9号証には、漂白組成物で用いる活性化剤のKobsが記載されるに過ぎない。
甲第10号証には、義歯クレンジング用タブレットが記載されるが、洗濯用タブレットは記載されていない。
甲第11号証には、漂白剤活性化剤を含む洗濯用タブレットが記載されるが、過酸塩と漂白剤活性剤とを併用することは記載されていない。
甲第12号証及び甲第13号証には、漂白組成物において、過炭酸ナトリウムを安定化するためにコーティングすることが記載されているに過ぎない。
よって、請求項7に係る発明を、甲第1号証乃至甲第13号証刊行物に記載された発明であるとすることはできない。
また、請求項7に係る発明では、過酸塩にテトラアセチルエチレンジアミン(いわゆるTAE D)、グリセリントリアセテート等の特定の漂白活性化剤を組み合わせた漂白組成物(但し過酸塩が過硼酸ナトリウムでありかつ漂白活性化剤がTAEDである場合には、過酸塩は漂白剤活性化剤から隔離されている)を洗濯用タブレットとすることで、安定で漂白特性の良好な漂白組成物を得ているのであるから、請求項7に係る発明を甲第1号証乃至甲第13号証刊行物に記載された発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。
参考資料A及びBが参酌できないことは、前記(1)で記載したとおりである。
2 特許法36条について
異議申立人は、本件特許は、明細書中に不明瞭ないし不十分な記載があるにもかかわらず特許されたものであるから、この点によっても取り消されるべきであると主張する。
しかし、異議申立人は明細書の記載不備の個所や理由を具体的に指摘していない。
よって、本件特許明細書が特許法36条の記載要件を満たしていないものであるとすることはできない。
3 以上、異議申立人の主張する理由及び証拠によっては、本件請求項6乃至7に係る特許を取り消すことはできない。
V むすび
以上のとおり、請求項1乃至請求項5に係る発明は、特許法29条1項3号の規定に該当するものであるから、請求項1乃至5に係る特許は、特許法29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項6及び請求項7に係る特許は、特許異議申立ての理由および証拠によっては取り消すことはできず、他にこれらの特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲 別記

 
異議決定日 1998-12-11 
出願番号 特願平3-271424
審決分類 P 1 651・ 113- ZC (C11D)
P 1 651・ 121- ZC (C11D)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 西川 和子  
特許庁審判長 吉見 京子
特許庁審判官 星野 浩一
谷口 操
登録日 1997-02-27 
登録番号 特許第2611071号(P2611071)
権利者 ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ
発明の名称 洗剤組成物  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 中村 行孝  
代理人 船山 武  
代理人 川口 義雄  
代理人 小野寺 捷洋  
代理人 中村 至  

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