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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06F
管理番号 1006081
異議申立番号 異議1999-72291  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-03-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-06-14 
確定日 1999-10-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第2836600号「携帯端末装置」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2836600号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 I.本件特許第2836600号の請求項1〜請求項6に係る発明(平成8年9月3日出願、平成10年10月9日設定登録)は、特許査定時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜請求項6に記載された以下の事項により特定されるとおりのものであると認める。
【請求項1】 電池と、複数の周辺回路を備え、外部からの駆動要求に応じて前記複数の周辺回路への給電を個別に制御する制御手段とを備えた携帯端末装置において、
前記駆動要求に応じて前記制御手段から供給される電池残量検出要求に応じて前記電池の電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段により検出された電圧に基づいて前記電池の残存容量を判定し、前記駆動要求を満足するに足る残存容量が有るか否かを判定する判定手段とを更に備え、
前記制御手段は、前記判定手段の判定結果が肯定的である場合に、前記駆動要求に対応した給電を前記電池に行わせることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】 前記制御手段は、前記複数の周辺回路の中で前記駆動要求に対応するN個の周辺回路を一つづつ順に給電する制御手段であり、第n(nは、N以下の整数)の周辺回路に給電する前に前記電池残量検出要求を前記電圧検出手段に送出し、前記判定手段の判定結果が肯定的である場合には、前記電池に第nの周辺回路に給電させることによりn個の周辺回路に順次給電させることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項3】 前記電圧検出手段は、前記電池残量検出要求があった時にのみ動作する電圧検出器と、前記電池の電圧と第1の所定電圧とを比較する第1の電圧比較器とから構成される請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項4】 前記電圧検出手段は、前記電池の電圧と前記第1の所定電圧より低い値の第2の所定電圧とを比較し、前記電池電圧の方が小である場合には、携帯端末装置をパワーオフする第2の電圧比較器をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の携帯端末装置。
【請求項5】 前記電圧検出手段は、前記電池残量検出要求があった時にのみ動作する電圧検出器と、前記電池に接続され、前記電池残量検出要求があった時に所定時間だけ動作する高負荷回路とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項6】 前記制御手段は、前記判定手段の判定結果が否定的である場合には、前記駆動要求が実行不能である旨を表示することを特徴とする請求項1記載の携帯端末装置。
II.これに対して、特許異議申立人 小野省一は、▲1▼.第1号証〔特開平8ー98415号公報〕を引用し、本件請求項1〜請求項6に係る発明は、特許法第29第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件請求項1〜請求項6に係る特許は、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものである、▲2▼.特許請求の範囲の請求項1及び請求項2には、発明の詳細な説明に記載されていない事項が記載されており、特許法第36条第6項の規定を満たしていないから、本件請求項1及び請求項2に係る特許は、特許法第113条第1項第4号の規定により取り消すべきものである、旨の主張をしている。
III.異議申立理由▲1▼について
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証をみると、これには、以下の記載があることが認められる。
「図22において、アクセス監視部147は、演算部117bより携帯形電子機器123bに接続されているHDD138からICカード142までのI/O機器に対しアクセス命令が発生するI/O機器を検出し、これをアラーム表示電圧設定部119aに通知する。」(第14頁右欄第25行〜第30行)
「図25の流れ図に従い、電圧チェックの処理手順について説明を行う。アクセス監視部147は演算部117bを監視し、アクセス命令が発生すると(S46)、I/O機器に対するアクセス命令であるかチェックを行う(S47)。I/O機器に対するアクセス命令である場合には、どのI/O機器に対するアクセス命令であるか種類の確定を行う(S48)。アクセス監視部147はI/O機器の種類を確定し、これを警報制御部119のアラーム表示電圧設定部119aに通知する。さらに、メモリ143はこれから処理を行うデータのデータ量をアラーム表示電圧設定部119aに通知する(S49)。アラーム表示電圧設定部119aは通知されたI/O機器の種類とデータ量をもとに消費電力テーブル119bを参照し、消費電力を求める(S50)。さらに、消費電力とデータ量よりアラーム表示電圧を算出する(S51)。例えば、アクセス命令がプリンタ141に対する命令であった場合、図18(A)のテーブルAよりプリンタの消費電力は4Wであることが求められる。さらにデータ量が10KBであるとすると図18(B)のテーブルBよりアラーム表示電圧が6.1Vであると求めることができる。アラーム表示電圧設定部119aは、求めたアラーム表示電圧をアラーム表示電圧設定レジスタ119cに通知する。アラーム表示電圧設定レジスタ119cは設定電圧を電圧比較部119dに通知する。図25の流れ図には図示していないが、アクセス命令が発生した時点で電圧検出部118を起動し、電源125の電圧を検出し、検出した電圧を電圧比較部119dに通知している。このため、電圧比較部119dは検出電圧とアラーム表示電圧の比較を行う(S52)。比較した結果アラーム表示電圧が検出電圧よりも大きければ、電圧比較部119dは警報要求部119eに対し警報要求を行い、警報要求部119eは警報要求部120に対し警報発生を通知する。警報発生部120は警報器121より残量アラームを表示する(S54)。上記S52において、比較した結果、検出電圧がアラーム表示電圧以上の場合は、I/O機器に対するアクセス命令を実行する(S53)。また、上記S47のチェックにおいて、アクセス命令がI/O機器に対するアクセス命令でなかった場合、本体の制御を行うために必要な消費電力を考慮した消費電力を基に、S49からの処理を順に実行する。」(第15頁右欄第21行〜第16頁左欄第11行)
「以上のようにI/O機器に対するアクセス命令を実行する前に、電圧の残量が携帯電子機器を使用しているユーザに知らされるので、ユーザはアクセス命令の実行を行う前に電力が不足していれば電力の充電を行い、処理を継続して行うことができる。」(第16頁左欄第12行〜第14行)
上記の記載事項において、「携帯形電子機器」、「アクセス命令」、「電圧検出部118」、「電圧比較部119d」は、夫々、「携帯端末装置」、「駆動要求」、「電圧検出手段」、「判定手段」に相当するものと認められるから、甲第1号証の前記記載事項より、以下の発明が記載されているものと認められる。
「電池と、複数のI/O機器を備え、駆動要求に応じて前記複数のI/O機器に対する駆動要求の実行を個別に制御する制御手段とを備えた携帯端末装置において、前記駆動要求に応じて前記制御手段から供給される電池残量検出要求に応じて前記電池の電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段により検出された電圧に基づいて前記電池の残存容量を判定し、前記駆動要求を実行するに足る残存容量が有るか否かを判定する判定手段とを更に備え、前記制御手段は、前記判定手段の判定結果が肯定的である場合に、前記I/O機器に対する駆動要求の実行を行うようにした携帯端末装置。」
(2)本件請求項1に係る発明(以下、前者と云う)と甲第1号証に記載された発明(以下、後者と云う)とを対比すると、両者は、「駆動要求に応じて制御手段から供給される電池残量検出要求に応じて電池の電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段により検出された電圧に基づいて前記電池の残存容量を判定し、前記駆動要求を実行するに足る残存容量が有るか否かを判定する判定手段」を備えている携帯端末装置であることにおいて一致し、以下の点において相違する。
前者は、「外部からの駆動要求に応じて複数の周辺回路への給電を個別に制御する制御手段」を備え、「前記制御手段は、判定手段の判定結果が肯定的である場合に、前記駆動要求に対応した給電を電池に行わせる」のに対し、後者は、駆動要求に応じて前記複数のI/O機器に対する駆動要求の実行を個別に制御する制御手段を備え、前記制御手段は、判定手段の判定結果が肯定的である場合に、I/O機器に対する前記駆動要求の実行を行う点。
(3)相違点についての判断
前記相違点について検討すると、この相違点における前者の事項は、甲第1号証においては、何処にも記載されておらず、また、これは、当業者において周知の事項であるとは認められない。
なお、異議申立人は、「使用する際に給電をおこなう技術は、本件特許発明の従来技術に記載のとおり、一般に行われている技術」であり、これから、「制御手段は、判定手段の判定結果が肯定的である場合に、駆動要求に対応した給電を電池に行わせる」ことを想到することは容易である、旨の主張をしているが、本件特許発明の従来技術に記載のものは、「制御手段103」、「切り替え手段A104」、「切り替え手段B105」を備え、「制御手段103は、周辺回路A,Bが使用されているか否かを判断し、使用されていないとときには、電源の供給を切り替え手段A,Bによって停止させる」ものであるにすぎず、駆動要求に対応した周辺回路への給電を行うものではなく、また、これを示唆するものでもない。
そうすると、この相違点における後者の事項に代えて前者の事項とすることは、当業者が容易に想到することができたものと云うことはできない。
(4)したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(5)本件請求項2〜請求項6に係る発明は請求項1を引用するものであり、前述のとおり、本件請求項1に係る発明が、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないものであるから、同様に、本件請求項2〜請求項6に係る発明も、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
IV.異議申立理由▲2▼について
異議申立人は、本件特許請求の範囲の請求項1の「複数の周辺回路への給電を個別に制御する」、「前記駆動要求に対応した給電を前記電池に行わせる」の記載、また、本件特許請求の範囲の請求項2の「周辺回路を一つづつ順に給電する・・・周辺回路に順次給電させる」の記載事項は、発明の詳細な説明に記載されていない事項である、旨の主張をしているが、発明の詳細な説明には、【0029】及び【0030】において、前記各事項を裏付ける記載がなされていることが、明らかである。
したがって、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載は、発明の詳細な説明に記載されていない事項が記載されているものと云うことはできない。
V.以上のとおりであり、本件請求項1〜請求項6に係る特許は、前記特許異議申立人の申立理由及び証拠方法によっては、取り消すべきものとすることはできない。また、他に本件請求項1〜請求項6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-09-30 
出願番号 特願平8-232787
審決分類 P 1 651・ 537- Y (G06F)
P 1 651・ 121- Y (G06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三好 洋治  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 今井 義男
木村 勇夫
登録日 1998-10-09 
登録番号 特許第2836600号(P2836600)
権利者 日本電気株式会社
発明の名称 携帯端末装置  

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