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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない E06B
管理番号 1006721
審判番号 審判1998-35196  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-04-04 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-05-11 
確定日 1999-08-13 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2515241号発明「電気錠付フラッシュドア」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
出願:平成5年9月21日
登録:平成8年4月30日(特許第2515241号)
特許異議申立:平成9年1月6日(請求項1に対して)
取消理由通知:平成9年4月1日
意見書:平成9年6月2日
訂正請求:平成9年6月2日
異議決定:平成9年10月28日(訂正を認めて請求項1に係る特許を維持)
決定の確定登録:平成9年12月9日
本件審判請求書:平成10年5月11日
答弁書:平成10年9月21日
訂正請求:平成10年9月21日
弁駁書:指定期間内に応答なし
II.請求人の主張及び提出した証拠方法
請求人は、「特許第2515241号の請求項1に係る特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めている。
そして、その理由として、平成10年5月11日付け無効審判請求書において、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その特許は、特許法第123条1項2号の規定に該当し無効とされるべきである。
そして、請求人は、次の証拠方法を提出している。
甲第1号証:実願平1-15843号(実開平2-107699号公報)の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルム
甲第2号証:「建築大辞典」、発行者・下出源七、発行所・株式会社彰国社、発行日・第1版第7刷昭和57年6月20日、1354頁の「フラッシュドア」の項
甲第3号証:特許庁編Fターム解説書(テーマコード2E035:枠またはウィング用かど部の接続(財)日本特許情報機構 平成3年3月発行 第1頁、第6頁
甲第4号証:実願昭60-15843号(実開昭62-32187号公報)の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルム
甲第5号証:実願昭62-174334号(実開平1-79757号公報)の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルム
III.被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めている。
IV.訂正請求について
(1)訂正の要旨
訂正事項1:本件特許の特許請求の範囲の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、次のように訂正する。
「方形に組まれる芯材のうちの両側部を含む少なくとも3辺を、ホロー部を有するか及び/又はホロー部を外側のエッジ材との間に有し、低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する合成樹脂製の芯材により形成して連通させ、上記芯材の一側部に電気錠を設け、芯材の他側部に導電部を設け、この導電部と上記電気錠を結ぶべく上記ホロー部に電線を挿通して配線し、上記芯材を表裏から面材で挟んでドア本体を形成し、上記芯材と面材で囲まれたドア本体内部に充填時に発熱する発泡材を充填し、上記芯材の外側に取付けられるエッジ材が表裏の面材間を断熱する合成樹脂を備え、電気錠のある前記一側部のエッジ材が、屋外側の面材に近接する部分で金属製とされていることを特徴とする電気錠付フラッシュドア。」
訂正事項2:明細書(平成9年6月2日付訂正請求書に添付の明細書の「発明の詳細な説明」欄の【0004】段落の末尾の「困難であった。」という記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「困難であった。また、従来のフラッシュドアでは、その外周に設けられるエッジ材は金属製で、このエッジ材を介してフラッシュドアの内外方向に伝熱が起り、特に冬期にフラッシュドアの内側で結露が起きる等の問題があった。」
訂正事項3:明細書(平成9年6月2日付訂正請求書に添付の明細書の「発明の詳細な説明」欄の【0005】段落の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「そこで、本発明の目的は、ドア本体内部への発泡材の充填時に電気錠の電線に機械的及び熱的影響を及ぼすことがなく、フラッシュドアに電気錠を組込むことができ、しかも、特に電気錠を設置する側のエッジ材に断熱性を与えて上記のような問題を解消することができる電気錠付フラッシュドアを提供することにある。」
訂正事項4:明細書(平成9年6月2日付訂正請求書に添付の明細書の「発明の詳細な説明」欄の【0006】段落の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「上記目的を達成するために請求項1の発明に係る電気錠付フラッシュドアは、方形に組まれる芯材のうちの両側部を含む少なくとも3辺を、ホロー部を有するか及び/又はホロー部を外側のエッジ材との間に有し、低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する合成樹脂製の芯材により形成して連通させ、上記芯材の一側部に電気錠を設け、芯材の他側部に導電部を設け、この導電部と上記電気錠を結ぶべく上記ホロー部に電線を挿通して配線し、上記芯材を表裏から面材で挟んでドア本体を形成し、上記芯材と面材で囲まれたドア本体内部に充填時に発熱する発泡材を充填し、上記芯材の外側に取付けられるエッジ材が表裏の面材間を断熱する合成樹脂を備え、電気錠のある前記一側部のエッジ材が、屋外側の面材に近接する部分で金属製とされていることを特徴とする。」
訂正事項5:明細書(平成9年6月2日付訂正請求書に添付の明細書の「発明の詳細な説明」欄の【0008】段落の末尾の「実現することができる。」という記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「実現することができる。また、錠のある側のエッジ材を屋外側で金属製とすることにより強化し、さらにエッジ材に内外を断熱する合成樹脂を備えさせることにより、エッジ材を経て内外方向に熱の移動が起きることを防ぐことができる。」
訂正事項6:明細書(平成9年6月2日付訂正請求書に添付の明細書の「発明の詳細な説明」欄の【0020】段落の末尾の「あればよい。」という記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「あればよい。また、左右のエッジ材21c、21dのうちの少なくとも一方、例えば電気錠10Aの側のエッジ材21cの屋外側を金属とすることによって強度を与えるとともに、屋内側を断熱性のある合成樹脂製とすることによって、内外方向の熱の伝達を防止し、内外温度差の影響がエッジ材を介して内側へ及ぶことを阻止することができる。」
訂正事項7:明細書(平成9年6月2日付訂正請求書に添付の明細書の「発明の詳細な説明」欄の【0029】段落の末尾の「実現できる。」という記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「実現できる。また、特に電気錠を設置する側で芯材の外側に取り付けるエッジ材の屋外側を金属製とし、さらにエッジ材に合成樹脂を備えさせることにより、内外温度差の影響がエッジ材を介して屋内側に及ぶことを阻止し、しかも屋外におけるエッジ材の強度を確保することができる。」
(2)訂正の適否
A.訂正の目的の適否、新規事項の有無、拡張・変更の存否についての判断
訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮に該当し、願書に添付された明細書の記載の範囲内のものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項2〜7に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明に該当し、願書に添付された明細書の記載の範囲内のものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
B.独立特許要件についての判断
請求人は、前記「II.請求人の主張及び提出した証拠方法」で記載したように、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張している。
そこで、これについて検討する。
ア 甲各号証刊行物の記載事項
甲第1号証:実願平1-15843号(実開平2-107699号公報)の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、アルミ合金、鉄等の金属製又は合成樹脂製の角パイプ1aを矩形状に結合してフレーム1を形成し、前記矩形状フレーム1の前後の面に、耐候性、張り剛性、耐熱性を有する合成樹脂製の面板2を可塑性接着剤によって接着して門扉本体を形成し、、前記矩形状フレーム1と面板2により囲まれた門扉本体内にポリウレタンなどの発泡樹脂を充填し、前記矩形状フレーム1の周囲に、断面コ字状のアルミニウム製のカバー部材4を、シート状のシール材17を介して結合した門扉が記載されている。
甲第2号証:「建築大辞典」、発行者・下出源七、発行所・株式会社彰国社、発行日・第1版第7刷昭和57年6月20日、1354頁の「フラッシュドア」の項(以下、「引用例2」という。)には、フラッシュドアとは、平らな表面仕上げゴの戸.「平戸」、「フラッシュ戸」ともいうとの記載がある。
甲第3号証:特許庁編Fターム解説書(テーマコード2E035:枠またはウィング用かど部の接続(財)日本特許情報機構 平成3年3月発行第1頁、第6頁(以下、「引用例3」という。)には、方形に組まれた建具枠材を形成する際、枠材の端部を45度に切断してその切断端面相互を衝接して枠材相互を接続することが、建具業界において周知・慣用の技術であることが示されている。
甲第4号証:実願昭60-15843号(実開昭62-32187号公報)の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルム(以下、「引用例4」という。)には、例えば、次のような記載がある。
▲1▼「〔従来の技術及び考案が解決しようとする問題点〕
扉に施錠用として電気錠を取付けたものは知られているが、この場合これまでの電気配線は扉の内部を通して行っていた。そのため扉内部のペーパーコア、又はウレタン等の充填材は種々な手加工を行って配線している。また、配線は内部を通すため保守点検するには非常に困難で時には扉を壊すこともあった。」明細書第1頁14行〜第2頁2行。
▲2▼「〔問題点を解決するための手段〕
本考案は斯様な実情に鑑み、この問題を一掃するために考案したもので、扉を構成するパネルを囲むエッジ材に配線を通す中空部とパネルヘの取付部とパネルを嵌める嵌合片を設け、嵌合片にパネルを嵌めて取付部から取付ねじによりパネルに取付け、パネルの戸当たり側に取付けた電気錠と、吊元側に通電金具を中空部を通した配線で接続するようにしたもので、取付けの簡略化、交換、保守点検等を容易に行うことを目的としたものである。」同第2頁3行〜第2頁13行。
▲3▼「〔実施例〕
次に本考案に係る扉エッジ材に一実施例を図面に基づいて具体的に説明する。1はペーパーコア、ウレタン等の充填材2を充填したパネル3を囲むアルミ型材等からなるエッジ材で、このエッジ材1は配線4を通す中空部5と、前記パネル3を嵌める嵌合片6,6と取付け部7を設けている。取付け部7は取付けねじ9をねじ込んでパネル3に取付けた時頭部9aが突出しないように凹部8を設けてある。10はパネル3の戸当り側に取付けた電気錠で、パネルの吊元側に設けた通電金具11と中空部5を通す配線4で接続してある。通電金具11は操作盤12に電線13を介して接続してある。」同第2頁14行〜第3頁8行。
前記▲1▼〜▲3▼の記載事項と第1〜3図の記載事項からみて、引用例3には、内部にウレタン等の充填されたパネル3の周囲に、中空部5と、前記パネル3を嵌める嵌合片6,6と取付け部7を設けているアルミ型材等からなるエッジ材1を、その両側部を含む3辺を連通するように取付け、パネル3の一側部に電気錠10を取付け、パネル3の他側部に通電金具11を取付け、通電金具11と電気錠10を結ぶべくエッジ材の中空部5に電線を挿通して配線した扉が記載されている。
甲第5号証:実願昭62-174334号(実開平1-79757号公報)の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルム(以下、「引用例5」という。)には、ドアー2の周囲に、両側部を含む少なくとも3辺が連通する中空部を有する竪枠8を取付け、ドアー2の一側部に電気錠装置4を取付け、ドアー2の他側部にケース7を取付け、ケース7と電気錠装置4を結ぶべく竪枠8の中空部に電線を挿通して配線したドアーが記載されている。
イ 対比
そこで、本件訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)と、引用例4記載の発明を対比する。
引用例4記載の発明における、「パネル」、「中空部」、「通電金具」及び「扉」は、本件発明における、「ドア本体」、「ホロー部」、「導電部」及び「ドア」に対応するものであるから、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
一致点:ドア本体の周囲に、両側部を含む少なくとも3辺が連通するホロー部を形成し、ドア本体の一側部に電気錠を設け、ドア本体の他側に導電部を設け、この導電部と電気錠を結ぶべく上記ホロー部に電線を挿通して配線し、ドア本体の周囲にエッジ材を取付けた電気錠付ドアである点。
相違点1:本件発明が、低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する芯材を方形に組み、芯材の表裏から面材で挟み、芯材と面材で囲まれた内部に充填時に発熱する発泡材を充填してドア本体としたのに対して、引用例4記載の発明が、内部にウレタン等が充填されたドア本体とした点。
相違点2:本件特許発明が、電気錠と導電部を結ぶべく、両側部を含む少なくとも3辺を連通するホロー部を、枠材に設けるか及び/又は枠材とエッジ材との間に設けるのに対して、引用例4記載の発明が、電気錠と導電部を結ぶべく、両側部を含む少なくとも3辺を連通するホロー部を、エッジ材に設ける点。
相違点3:本件発明が、フラッシュドアとしたのに対して、引用例4記載の発明が、単なるドアとした点。
相違点4:本件発明が、エッジ材が表裏の面材間を断熱する合成樹脂を備え、電気錠のある前記一側部のエッジ材が屋外側の面材に近接する部分で金属製とされているのに対して、引用例4記載の発明が、エッジ材をアルミ型材で形成し、表裏の面材間を断熱するものではない点。
相違点の判断
先ず、相違点1について検討する。
引用例1記載の発明における、「合成樹脂製の角パイプ」、「矩形状」、「面板」、「門扉本体」及び「ポリウレタンなどの発泡樹脂」は、本件発明における、「低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する芯材」、「方形」、「面材」、「ドア本体」及び「充填時に発熱する発泡材」に対応するものであるから、引用例1には、「低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する芯材を方形に組み、芯材の表裏から面材で挟み、芯材と面材で囲まれた内部に充填時に発熱する発泡材を充填してドア本体とした」という前記相違点1にあげた「ドア本体」の構成が記載されており、引用例4記載の発明のドア本体の構成に代えて、引用例1記載の発明のドア本体の構成を適用することは、当業者が容易になしえる程度のものである。
次に、相違点2について検討する。
相違点2にあげた両者の構成を、エッジ材の機能の面から検討すると、本件発明におけるエッジ材が、枠材との間でホロー部を形成するか、全くホ口ーを形成するのに関係のない部材であるので、エッジ材を板状部材とするのに対して、引用例4記載の発明におけるエッジ部材が、ホロー部を形成する部材であるので、エッジ部材を断面中空部材とする点で両者の構成は相違し、前記構成の相違により、製造容易、コストの面での効果の差異が生じる。また、引用例1記載の発明には、ホロー部を有する芯材を方形に組んだドアが示されているが、電気錠と導電部を結ぶという課題がないため、両側部を含む3辺を連通するという構成の明示がなく、引用例3に示されているように、中空芯材を方形に組む際、相互の中空部を連通する接合構造が周知・慣用の技術であったととしても、引用例4記載の発明の、両側部を含む3辺を連通するための構成に代えて、引用例1記載の発明の構成を適用して、前記相違点2にあげた本件発明の構成のようにすることは、当業者が容易になしえるものとは認められない。
続いて、相違点3について検討する。
引用例2に示されているフラッシュドアの定義は、「平らな表面仕上げの戸」ということであり、引用例4記載の発明のドアも、平らな表面仕上げの戸であり、フラッシュドアといえるものであるから、前記相違点にあげた両者の構成の相違は、実質的な構成の相違ではない。
最後に、相違点4について検討する。
引用例4記載の発明におけるエッジ材は、良熱伝導材であるアルミ型材で形成されており、両面材間の断熱するものではない。他の引用例1及び5記載の発明においても、エッジ部材に、両面材間の断熱効果を付与するという機能をもたせたものはない。請求人は、審判請求書の第5頁において、引用例1のシール材15、16、17は、ゴム製のパッキン、軟質ポリウレタン、エラストマーなどが用いられており、カバー部材4と面板との間を断熱する機能を有するものであると主張しているが、前記シール材は、雨水等が侵入して内部の発泡体3が損なわれるのを防止することを目的とするものであり、さらに、引用例1記載の発明は、屋外で使用される門扉に関するものであるから、屋内と屋外の面材間の熱伝導を防止するという課題自体が存在しないものであるから、引用例4記載の発明のエッジ材の構成に代えて、引用例1記載の発明のエッジ材の構成を適用して、前記相違点4にあげた本件発明の構成のようにすることは、当業者が容易になしえるものとは認められない。
そして、本件発明は、前記相違点にあげた構成により、明細書記載の「内外温度差の影響がエッジ材を介して屋内側に及ぶことを阻止し、しかも、屋外におけるエッジ材の強度を確保することができる。」という引用例記載の発明にはない効果を奏するものである。
従って、本件発明は、引用例1〜5記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
よって、本件発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものである。
C.訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第134条ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項で準用する特許法第126条第2項ないし第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
V.無効理由について
請求人は、前記「II.請求人の主張及び提出した証拠方法」で記載したように、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その特許は、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し無効とされるべきである旨主張している。
しかしながら、本件特許の請求項1に係る発明は、前記IV.(2)の「B.独立特許要件についての判断」において示したように、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないものである。
VI.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許の請求項1に係る特許を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電気錠付フラッシュドア
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形に組まれる芯材のうちの両側部を含む少なくとも3辺を、ホロー部を有するか及び/又はホロー部を外側のエッジ材との間に有し、低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する合成樹脂製の芯材により形成して連通させ、上記芯材の一側部に電気錠を設け、芯材の他側部に導電部を設け、この導電部と上記電気錠を結ぶべく上記ホロー部に電線を挿通して配線し、上記芯材を表裏から面材で挟んでドア本体を形成し、上記芯材と面材で囲まれたドア本体内部に充填時に発熱する発泡材を充填し、上記芯材の外側に取付けられるエッジ材が表裏の面材間を断熱する合成樹脂を備え、電気錠のある前記一側部のエッジ材が、屋外側の面材に近接する部分で金属製とされていることを特徴とする電気錠付フラッシュドア。
【請求項2】
方形に組まれた芯材の対向する両側部間に低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する合成樹脂製のパイプ材を掛け渡し、上記芯材の一側部に電気錠を設け、芯材の他側部に導電部を設け、この導電部と上記電気錠を結ぶべく上記パイプ材内部に電線を挿通して配線し、上記芯材を表裏から面材で挟んでドア本体を形成し、上記芯材と面材で囲まれたドア本体内部に充填時に発熱する発泡材を充填したことを特徴とする電気錠付フラッシュドア。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ドア本体の内部に発泡ウレタンなどの発泡材を充填してなるフラッシュドアに電気錠を組込んだ新規な電気錠付フラッシュドアに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、フラッシュドアとしては、方形に組まれた芯材を表裏から鋼板製の面材で挟んで中空のドア本体を形成し、このドア本体の内部に発泡ウレタンなどの発泡材を充填してなるものが知られている(実開昭62-42682号公報、実開平2-107699号公報等参照)。このようなフラッシュドアにおいては、吸音性、断熱性、防火性などが優れていることからアパートやマンションなどのドアとして広く利用されている。
【0003】
一方、ドア本体内部が中空になったドアや中空の框材を用いた框ドアにおいては、その中空部を利用して電線を配線し、リモートコントロールにより施錠及び解錠ができる電気錠を組込んだものが開発されているが、このようなドアと同様に上記フラッシュドアにも電気錠を組込むことができれば更に便利になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記フラッシュドアにおいては、ドア本体内部に発泡材を充填するため、その充填時の圧力で電気錠の電線が切断されたり、或いは充填時に発生する熱によって上記電線の被覆材が融けたりする虞れがある。このため、上記フラッシュドアには電気錠を組込むことができず、電気錠付フラッシュドアを実現することが困難であった。また、従来のフラッシュドアでは、その外周に設けられるエッジ材は金属製で、このエッジ材を介してフラッシュドアの内外方向に伝熱が起り、特に冬期にフラッシュドアの内側で結露が起きる等の問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ドア本体内部への発泡材の充填時に電気錠の電線に機械的及び熱的影響を及ぼすことがなく、フラッシュドアに電気錠を組込むことができ、しかも特に電気錠を設置する側のエッジ材に断熱性を与えて上記のような問題を解消することができる電気錠付フラッシュドアを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1の発明に係る電気錠付フラッシュドアは、方形に組まれる芯材のうちの両側部を含む少なくとも3辺を、ホロー部を有するか及び/又はホロー部を外側のエッジ材との間に有し、低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する合成樹脂製の芯材により形成して連通させ、上記芯材の一側部に電気錠を設け、芯材の他側部に導電部を設け、この導電部と上記電気錠を結ぶべく上記ホロー部に電線を挿通して配線し、上記芯材を表裏から面材で挟んでドア本体を形成し、上記芯材と面材で囲まれたドア本体内部に充填時に発熱する発泡材を充填し、上記芯材の外側に取付けられるエッジ材が表裏の面材間を断熱する合成樹脂を備え、電気錠のある前記一側部のエッジ材が、屋外側の面材に近接する部分で金属製とされていることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明に係る電気錠付フラッシュドアは、方形に組まれた芯材の対向する両側部間に低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する合成樹脂製のパイプ材を掛け渡し、上記芯材の一側部に電気錠を設け、芯材の他側部に導電部を設け、この導電部と上記電気錠を結ぶべく上記パイプ材内部に電線を挿通して配線し、上記芯材を表裏から面材で挟んでドア本体を形成し、上記芯材と面材で囲まれたドア本体内部に充填時に発熱する発泡材を充填したことを特徴とする。
【0008】
【作用】
請求項1の発明によれば、方形に組まれる芯材のうちの両側部を含む少なくとも3辺を、ホロー部を有する芯材及び/又はホロー部を外側のエッジ材との間に有し、低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する芯材により形成して連通させ、この連通したホロー部に電気錠の電線を挿通させて配線したので、ドア本体内部への発泡材充填時の圧力及び発熱による機械的及び熱的影響から電気錠の電線を保護することができ、フラッシュドアに電気錠を組込むことが可能となり、電気錠付フラッシュドアを容易に実現できる。また、電気錠のある側のエッジ材を屋外側で金属製とすることにより強化し、さらにエッジ材に内外を断熱する合成樹脂を備えさせることにより、エッジ材を経て内外方向に熱の移動が起ることを防ぐことができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、方形に組まれた芯材の対向する両側部間に低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する合成樹脂製のパイプ材を掛け渡し、このパイプ材内に電気錠の電線を挿通させて配線したので、ドア本体内部への発泡材充填時の圧力及び発熱による機械的及び熱的影響から電気錠の電線を保護することができ、電気錠付フラッシュドアを容易に実現できる。この場合、芯材の一側部に設けられた電気錠と芯材の他側部に設けられた導電部とを上記パイプ材により略直線的に結ぶことができるため、電気錠と導電部を結ぶ電線の短縮化が図れると共に、メンテナンスが容易になる。
【0010】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を添付図面に基づいて詳述する。
【0011】
本発明の第1実施例を示す図1〜図3において、1は電気錠付フラッシュドアで、このフラッシュドア1のドア本体2は方形に組まれた芯材3と、この芯材3を表裏から挟むように設けられた鋼板製の面材4とから主要部が構成されている。本実施例の場合、上記芯材3は、上下左右の4辺の芯材3a〜3dともホロー部(中空部)を有する合成樹脂製のホロー材(中空材)からなっている。このホロー材の押出成形に適した合成樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)等が適用でき、本実施例では低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する硬質塩化ビニル(PVC)が用いられている。
【0012】
上記芯材3は、図4に示すように上下の芯材3a,3b(下の芯材3bは図示省略)の両端部に左右(両側)の芯材3c,3dの対向壁3wをビス5で結合することにより方形に組立てられる。また、結合される左右の芯材3c,3dの結合部分の強度を高めるために、結合部分の対向壁3wの裏面には座金6が配置され、この座金6を介してビス5が上下の芯材3a,3bに形成された雌ネジ孔7に螺入されるようになっている。更に、隣接する芯材(例えば、3aと3c)のロー部3h間を連通するために、左右の芯材3c,3dの対向壁3w及び上記座金6には開口部8,9が形成されている。
【0013】
そして、上記芯材3の一側部すなわちドア本体2の自由端側に位置する芯材3cには電気錠であるメイン電気箱錠10A及びサブ電気箱錠10Bが取付けられ、芯材3の他側部すなわちドア本体2の枢支側(回動支点側)の芯材3dにはドア本体側の端子と建物の躯体側の端子を電気的に接続するための導電部11が取付けられる。上記メイン電気箱錠10Aは図5に示すようにハンドル12により施解錠されるラッチ部10a及び鍵若しくはコントローラ13により施解錠されるデッド部10bを備えており、サブ電気箱錠10Bは鍵若しくはコントローラ13により施解錠されるデッド部10cを備えている。上記コントローラ13は上記導電部11を介して屋内側に設置され、このコントローラ13には上記メイン電気箱錠10A及びサブ電気箱錠10Bを屋外側から暗証番号で施解錠するためのテンキー14が接続されている。
【0014】
上記メイン電気箱錠10A及びサブ電気箱錠10Bは上記芯材3cに形成された開口部15a,15bに収容されてビス16で固定され、上記導電部11は上記芯材3dに形成された開口部15cに収容されて図示しないビスで固定される。また、上記芯材3c,3dの対向壁には、充填される発泡材20が漏れないように上記開口部15a〜15c及び電気箱錠10A,10Bを覆うカバー17a,17bが取付けられている。なお、本実施例では、メイン電気箱錠10A及びサブ電気箱錠10Bが合成樹脂製のカバー17aにより一体的に覆われているが、個別に覆われていてもよい。
【0015】
上記メイン電気箱錠10A及びサブ電気箱錠10Bと導電部11を結ぶべく上記左右及び上の芯材3a,3c,3dのホロー部3hには、樹脂で被覆された電線18が挿通されている。この場合、上記メイン電気箱錠10A及びサブ電気箱錠10Bが芯材3cの略中間部に配置され、上記導電部11が屋内配線の関係で芯材3dの上側部に配置されているため、上記電線18は短い経路をとるべく上の芯材3a内を経由すべく配線されている。上記電線18の一端には上記メイン電気箱錠10A及びサブ電気箱錠10Bに接続されるコネクター19a,19bを有し、電線18の他端には上記導電部11に接続されるコネクター19cを有している。上記電線18は、芯材3の組立中に配線することにより容易に配線することができる。
【0016】
組立られた芯材3の表面部及び裏面部には、上記面材4がその周縁部に形成した係止部4aを芯材3の表面側及び裏面側の周縁部に係止させることにより装着され、ドア本体2が構成される。そして、上記芯材3と面材4により囲まれたドア本体2内部には、図示しない注入口から発泡材(例えば発泡ウレタン)20が充填される。この発泡材20の充填は、充填時の圧力で面材4が膨らまないように面材4を両面からプレス機等でプレスした状態で行われる。
【0017】
上記芯材3の外側周縁部にはこれとの間で上記面材4の係止部4aを挟持すべくエッジ材21がネジ22等により取付けられる。左右のエッジ材21c,21dの屋外側半分は補強等のため金属製であるが、そのエッジ材21c,21dの屋内側半分及び上下のエッジ材21a,21bは断熱のため合成樹脂製である。上記一方のエッジ材21cにはドアを閉めた時に建物の躯体側に当接するストッパー23が形成され、ドア本体2の枢支側上下部には建物の躯体側に図示しないピボット軸受を介して枢支される腕材24が取付けられる。なお、本実施例では、ドア本体2がピボット軸受を介して枢支されるようになっているが、蝶番を介して枢支されるようになっていてもよい。
【0018】
以上の構成からなる電気錠付フラッシュドア1は、先ず電線18を上及び左右の芯材3a,3c,3dのホロー部3hに挿通しながら芯材3を方形に組み、この芯材3の両面に面材4を取付け、この芯材3と面材4で囲まれたドア本体2内部に発泡材20を充填した後、上記電線18にメイン電気箱錠10A、サブ電気箱錠10B及び導電部11を接続してこれらを芯材3に取付け、次いで芯材3にエッジ材21を取付け、更にハンドル12、腕部24等を取付けることにより完成する。なお、芯材3にエッジ材21を取付けた後、メイン電気箱錠10A等を取付けるようにしてもよい。
【0019】
上記電気錠付フラッシュドア1によれば、方形に組まれる芯材3を合成樹脂製のホロー材により形成してホロー部3hを連通させ、この連通した芯材3のホロー部3hに電気錠の電線18を挿通配線するようにしたので、ドア本体2内部への発泡材20の充填時に上記電線18が機械的及び熱的影響を受けることがない。すなわち、上記電線18は、芯材3のホロー部3hに挿通されて保護されているので、発泡材20の充填時の押圧力により断線や損傷を生じることがなく、また発泡材20が充填時に発熱(80℃程度)したとしても、合成樹脂製の芯材3が耐熱性(120℃程度)及び断熱性を有しているため、上記電線18の被覆材が加熱されて融けるようなことはない。
【0020】
従って、従来では実現困難であった電気錠付フラッシュドアを容易に実現することができる。また、上記電線18が芯材3のホロー部3hに挿通されているため、電線等のメンテナンスが可能である。なお、芯材3の合成樹脂としては、上記発泡材20の発熱(80℃程度)によって軟化しないものであればよい。また、左右のエッジ材21c,21dのうち少くとも一方、例えば電気錠10Aの側のエッジ材21cの屋外側を金属とすることによって強度を与えるとともに、屋内側を断熱性のある合成樹脂製とすることによって、内外方向の熱の伝達を防止し、内外温度差の影響がエッジ材を介して内側へ及ぶことを阻止することができる。
【0021】
図6は本発明に係る電気錠付フラッシュドアの第2実施例を示している。本実施例においては、上記第1実施例と同一部分に同一参照符号が付してあり、またコントローラ等は図面上省略されている。本実施例の電気錠付フラッシュドア1は、方形に組まれた芯材3と、この芯材3の対向する両側部間に掛け渡された合成樹脂製のパイプ材25と、上記芯材3の一側部に設けられた電気錠10と、芯材の他側部に設けられた導電部11と、この導電部11と上記電気錠10を結ぶべく上記パイプ材25内部に挿通された電線18と、上記芯材3を表裏から挟んでドア本体2を形成する面材4と、これら面材4と上記芯材3で囲まれたドア本体2内部に充填された発泡材20とから主要部が構成されている。
【0022】
上記パイプ材25を形成する合成樹脂としては、硬質塩化ビニルが好適である。また、パイプ材25の断面形状は特に限定されないが(円形、方形、多角形等)、発泡材20をドア本体2内部に行き渡らせるときの障害とならないよう両面材4間の幅よりも小さい外径であり、しかも電線18のコネクター(図示省略)を容易に挿通できる大きさの内径である必要がある。このパイプ材25は、ホロー材からなる両側の芯材3c,3dの対向壁3wに設けられた嵌合用穴部26に両端部を嵌合させて取付けられている。
【0023】
本実施例の電気錠付フラッシュドア1によれば、上記電気錠10の電線18がパイプ材25により保護されているため、上記第1実施例と同様にドア本体2内部への発泡材20の充填時に上記電線18が機械的及び熱的影響を受けることがなく、電気錠付フラッシュドアを容易に実現することができる。また、電気錠10と導電部11とを上記パイプ材25により略直線的に結ぶことができるため、電気錠10と導電部11を結ぶ電線18の短縮化が図れると共に、電線18の交換等のメンテナンスが容易である。
【0024】
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更等が可能である。例えば、上記第1実施例では、上下左右の4辺の芯材3a〜3dがホロー材からなっているが、電気錠の電線18を通すためには両側部を含む少なくとも3辺(上及び左右)の芯材3a,3c,3dがホロー材からなっていて互に連通していればよく、残りの1辺(下)の芯材3bはソリッド材(中実材)からなっていてもよい。
【0025】
また、電気錠の電線18を挿通するためのホロー部3hは、必ずしもホロー材からなる芯材のホロー部である必要はなく、例えば図4の上の芯材3aのように断面U字状に成形されたホロー材又はソリッド材からなる芯材にエッジ材を取付けることにより芯材とエッジ材との間に形成されるホロー部であってもよい。更に、上記芯材3a,3c,3dのホロー部3hは、ホロー材からなる芯材のホロー部と、芯材とエッジ材との間に形成されるホロー部との組合せからなっていてもよい。
【0026】
また、上記第1実施例では、導電部11が芯材3dの上側部に配置されているため、電気錠の電線18が上の芯材3a内を経由して配線されているが、導電部11が芯材3dの下側部に配置されている場合には、当然のことながら電気錠の電線18は下の芯材3b内を経由して配線されることになる。更に、上記第1実施例では、リモートコントロールにより電気的に施解錠するサブ電気箱錠10Bが採用されているが、サブ電気箱錠10Bとしては機械的に施解錠し、その施解錠のモニターを電気的にとるものであってもよい。
【0027】
また、上記第1実施例では、芯材3のコーナー部が隣接する芯材(例えば3aと3c)の端部を直角に当接させて形成されているが、例えば図7に示すように隣接する芯材3a,3cの端部を45度で切断し、端部同士を突き合わせてコーナー部を形成するようにしてもよい。この場合、上記隣接する芯材3a,3cのホロー部3h同士を連通させ、かつ芯材3a,3cの端部同士の結合強度を高めるために、芯材3a,3cの端部同士をL字状の中空連結材27を介して結合することが好ましい。また、上記第2実施例では、両側の芯材3c,3d間にパイプ材25が水平に配置されているが、電気錠10と導電部11が異なる高さに配置されている場合には、これらを直線的に結ぶべくパイプ材25を傾斜させて配置するようにしてもよい。
【0028】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、次のような優れた効果が得られる。
【0029】
(1)請求項1の発明によれば、方形に組まれる芯材のうちの両側部を含む少なくとも3辺を、ホロー部を有する芯材及び/又はホロー部を外側のエッジ材との間に有し、低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する芯材により形成して連通させ、この連通したホロー部に電気錠の電線を挿通させて配線したので、ドア本体内部への発泡材充填時の圧力及び発熱による機械的及び熱的影響から電気錠の電線を保護することができ、フラッシュドアに電気錠を組込むことが可能となり、電気錠付フラッシュドアを容易に実現できる。また、特に電気錠を設置する側で芯材の外側に取り付けるエッジ材の屋外側を金属製とし、さらにエッジ材に合成樹脂を備えさせることにより、内外温度差の影響がエッジ材を介して屋内側に及ぶことを阻止し、しかも屋外におけるエッジ材の強度を確保することができる。
【0030】
(2)請求項2の発明によれば、方形に組まれた芯材の対向する両側部間に低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する合成樹脂製のパイプ材を掛け渡し、このパイプ材内に電気錠の電線を挿通させて配線したので、ドア本体内部への発泡材充填時の圧力及び発熱による機械的及び熱的影響から電気錠の電線を保護することができ、電気錠付フラッシュドアを容易に実現できる。この場合、芯材の一側部に設けられた電気錠と芯材の他側部に設けられた導電部とを上記パイプ材により略直線的に結ぶことができるため、電気錠と導電部を結ぶ電線の短縮化が図れると共に、メンテナンスが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る電気錠付フラッシュドアの第1実施例を示す一部断面図正面図である。
【図2】
図1のA-A線拡大詳細断面図である。
【図3】
図1のB-B線拡大詳細断面図である。
【図4】
芯材の分解斜視図である。
【図5】
電気錠の取付け状況を示す斜視図である。
【図6】
本発明に係る電気錠付フラッシュドアの第2実施例を示す一部断面図正面図である。
【図7】
芯材のコーナー部の変形例を示す部分的断面図である。
【符号の説明】
1 電気錠付フラッシュドア
2 ドア本体
3 芯材
3h ホロー部
4 面材
10 電気錠
10A メイン電気箱錠(電気錠)
10B サブ電気箱錠(電気錠)
11 導電部
18 電線
20 発泡材
21 エッジ材
25 パイプ材
 
訂正の要旨 (1)訂正の要旨
訂正事項1:本件特許の特許請求の範囲の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、次のように訂正する。
「方形に組まれる芯材のうちの両側部を含む少なくとも3辺を、ホロー部を有するか及び/又はホロー部を外側のエッジ材との間に有し、低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する合成樹脂製の芯材により形成して連通させ、上記芯材の一側部に電気錠を設け、芯材の他側部に導電部を設け、この導電部と上記電気錠を結ぶべく上記ホロー部に電線を挿通して配線し、上記芯材を表裏から面材で挟んでドア本体を形成し、上記芯材と面材で囲まれたドア本体内部に充填時に発熱する発泡材を充填し、上記芯材の外側に取付けられるエッジ材が表裏の面材間を断熱する合成樹脂を備え、電気錠のある前記一側部のエッジ材が、屋外側の面材に近接する部分で金属製とされていることを特徴とする電気錠付フラッシュドア。」
訂正事項2:明細書(平成9年6月2日付訂正請求書に添付の明細書の「発明の詳細な説明」欄の【0004】段落の末尾の「困難であった。」という記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「困難であった。また、従来のフラッシュドアでは、その外周に設けられるエッジ材は金属製で、このエッジ材を介してフラッシュドアの内外方向に伝熱が起り、特に冬期にフラッシュドアの内側で結露が起きる等の問題があった。」
訂正事項3:明細書(平成9年6月2日付訂正請求書に添付の明細書の「発明の詳細な説明」欄の【0005】段落の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「そこで、本発明の目的は、ドア本体内部への発泡材の充填時に電気錠の電線に機械的及び熱的影響を及ぼすことがなく、フラッシュドアに電気錠を組込むことができ、しかも、特に電気錠を設置する側のエッジ材に断熱性を与えて上記のような問題を解消することができる電気錠付フラッシュドアを提供することにある。」
訂正事項4:明細書(平成9年6月2日付訂正請求書に添付の明細書の「発明の詳細な説明」欄の【0006】段落の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「上記目的を達成するために請求項1の発明に係る電気錠付フラッシュドアは、方形に組まれる芯材のうちの両側部を含む少なくとも3辺を、ホロー部を有するか及び/又はホロー部を外側のエッジ材との間に有し、低熱伝導性、剛性及び耐熱性を有する合成樹脂製の芯材により形成して連通させ、上記芯材の一側部に電気錠を設け、芯材の他側部に導電部を設け、この導電部と上記電気錠を結ぶべく上記ホロー部に電線を挿通して配線し、上記芯材を表裏から面材で挟んでドア本体を形成し、上記芯材と面材で囲まれたドア本体内部に充填時に発熱する発泡材を充填し、上記芯材の外側に取付けられるエッジ材が表裏の面材間を断熱する合成樹脂を備え、電気錠のある前記一側部のエッジ材が、屋外側の面材に近接する部分で金属製とされていることを特徴とする。」
訂正事項5:明細書(平成9年6月2日付訂正請求書に添付の明細書の「発明の詳細な説明」欄の【0008】段落の末尾の「実現することができる。」という記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「実現することができる。また、錠のある側のエッジ材を屋外側で金属製とすることにより強化し、さらにエッジ材に内外を断熱する合成樹脂を備えさせることにより、エッジ材を経て内外方向に熱の移動が起きることを防ぐことができる。」
訂正事項6:明細書(平成9年6月2日付訂正請求書に添付の明細書の「発明の詳細な説明」欄の【0020】段落の末尾の「あればよい。」という記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「あればよい。また、左右のエッジ材21c、21dのうちの少なくとも一方、例えば電気錠10Aの側のエッジ材21cの屋外側を金属とすることによって強度を与えるとともに、屋内側を断熱性のある合成樹脂製とすることによって、内外方向の熱の伝達を防止し、内外温度差の影響がエッジ材を介して内側へ及ぶことを阻止することができる。」
訂正事項7:明細書(平成9年6月2日付訂正請求書に添付の明細書の「発明の詳細な説明」欄の【0029】段落の末尾の「実現できる。」という記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「実現できる。また、特に電気錠を設置する側で芯材の外側に取り付けるエッジ材の屋外側を金属製とし、さらにエッジ材に合成樹脂を備えさせることにより、内外温度差の影響がエッジ材を介して屋内側に及ぶことを阻止し、しかも屋外におけるエッジ材の強度を確保することができる。」
審理終結日 1999-05-14 
結審通知日 1999-06-08 
審決日 1999-06-17 
出願番号 特願平5-256287
審決分類 P 1 122・ 121- YA (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 忠夫  
特許庁審判長 片寄 武彦
特許庁審判官 鈴木 憲子
藤枝 洋
登録日 1996-04-30 
登録番号 特許第2515241号(P2515241)
発明の名称 電気錠付フラッシュドア  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 前島 旭  
代理人 佐藤 嘉明  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 永井 浩之  
代理人 浜本 忠  
代理人 黒瀬 雅志  
代理人 高橋 邦彦  
代理人 前島 旭  
代理人 黒瀬 雅志  
代理人 永井 浩之  

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