• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1008374
審判番号 審判1998-18987  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-06-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-12-09 
確定日 2000-01-04 
事件の表示 平成2年特許願第294673号「ディジタルデータの磁気記録装置」拒絶査定に対する審判事件(平成4年6月16日出願公開、特開平4-168604)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年10月31日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年10月4日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
(以下、「本願発明」という。)
「入力ディジタル画像信号を複数の画素データからなるブロック単位のデータに変換するブロック化手段と、上記ブロック化手段の出力データを上記ブロック単位に圧縮符号化する符号化手段と、上記符号化手段の出力符号化データをチャンネル符号化するチャンネル符号化手段と、入力ディジタルオーディオ信号を符号化するオーディオ信号符号化手段と、制御用の付加コードを発生する付加コード発生手段とを有し、上記チャンネル符号化手段の出力画像データ、上記オーディオ信号符号化手段の出力オーディオデータ及び上記付加コード発生手段の出力付加コードを回転ドラムに装着された磁気ヘッドによって磁気テープに記録するようにしたディジタルデータの磁気記録装置において、磁気テープとして、蒸着テープを用い、データ検出方式として、パーシャルレスポンス・クラス4を用い、上記画像データ、上記オーディオデータ及び上記付加コードを所定の配列で、複数のトラックとして同時に上記磁気テープに記録すると共に、上記磁気テープを上記回転ドラムに巻き付ける巻き付け角を180゜より小に選定したことを特徴とするディジタルデータの磁気記録装置。」
2.引用刊行物記載の発明
これに対して、当審の拒絶の理由に引用した、本願の出願の日前である平成2年2月23日に頒布された特開平2-54402号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「この発明は,DAT(…)用の磁気テープに映像信号を記録することのできる磁気記録再生装置に関する。」(第2頁左上欄第15〜17行目)
(2)「また、テープフォーマットの1トラック中、映像信号を記録するエリアをほぼ280ブロック(1ブロックはほぼ288ビット、うちPCMエリアは272ビット)、音声信号を記録するエリアをほぼ29ブロックとし、映像信号をほぼ4Mビット/秒に圧縮して記録するようにしたものである。また、この発明は、デジタル映像データとデジタル音声データを供給する手段と、この映像データと音声データに対しそれぞれ別個にインターリーブをかけてRAMに記憶する第1のインターリーブ手段と、このRAMに記憶された映像データと音声データにパリティーデータを付加する手段と、このパリティーデータが付加された映像データと音声データに対しそれぞれ別個にインターリーブをかける第2のインターリーブ手段と、このインターリーブされた映像データと音声データを変調しDATテープに記録する手段と、…を備えているものである。」(第2頁左下欄第4行目〜右下欄第9行目)
(3)「しかして、上記ビデオ信号処理回路162におけるデータ圧縮は第12図に示すようにして行なわれる。…データの圧縮に際してY信号及び色差信号は、フィールド記録とすることにより、その情報量を1/2としている。…また、色差信号R-Y,B-Yは、4×3=12ドットを1ブロック単位として画面全体を2112のブロックに分け、各ブロック毎にそれぞれ…に置き換えている。上記の圧縮処理を行うことにより、テープ25への記録情報量を大幅に減少することができる。」(第5頁右下欄第13行目〜第6頁左上欄第14行目)
更に、第3頁右上欄第14〜17行目には、ドラムモータ23により直径30mm程度の回転ドラムと共に回転ヘッドが回転することが、また、第3頁左下欄第11行目〜15行目には、「DATテープに映像をデジタル記録させるには、映像の情報量が多いためリード角を小さくしてトラック長を長くする必要があり、この実施例では第2図(b)に示すようにリード角θ′を3°48′に設定している。」と、そして第5頁左下欄第4〜7行目には、ビデオ信号処理回路及びオーディオ信号処理回路から出力されたデータに対してサブコードを付加することが記載されている。
以上の記載を総合すると、引用刊行物1には、「ディジタル画像信号を複数の画素データからなるブロック単位のデータに変換するブロック化手段と、上記ブロック化手段の出力データを上記ブロック単位に圧縮符号化する符号化手段と、制御用の付加コードを発生する付加コード発生手段とを有し、符号化手段の出力画像データとオーディオデータ及び上記付加コード発生手段の出力付加コードを回転ドラムに装着された磁気ヘッドによって、磁気テープに記録するようにしたディジタルデータの磁気記録装置において、磁気テープを直径30mmのドラムにリード角θ′を3°48′で巻き付けるディジタルデータの磁気記録装置。」の発明が記載されている。
また、同じく当審の拒絶の理由に引用した、本願の出願の日前である平成1年4月20日に頒布された特開平1-102777号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
(4)「蒸着テープ及び回転ヘッドを使用したディジタル信号記録再生装置において、記録ディジタル信号をクラスIVパーシャル・レスポンスのプリコーダを介して回転ヘッドに供給し、上記回転ヘッドにより蒸着テープから再生された再生ディジタル信号を上記クラスIVパーシャル・レスポンスのエンコーダに供給し、上記エンコーダの出力信号を3値コンパレータに供給することを特徴とするディジタル信号記録再生装置。」(特許請求の範囲)
(5)「回転ヘッド(回転トランス)及び蒸着テープを用いた記録再生装置において、再生信号の周波数特性とクラスIVのパーシャル・レスポンスの周波数特性とが良く適合する。従って、S/Nが良くなり、エラーレートが改善される。」(第2頁右上欄下から3行目〜左下欄第3行目)
(6)「エラー訂正エンコーダ3の出力信号がエクスクルーシブORゲート4に供給される。エクスクルーシブORゲート4の他方の入力信号として、M系列発生回路5からのM系列が供給される。M系列によって、スクランブル処理がなされ、記録ディジタル信号の直流成分が制限される。」(第2頁左下欄下から8行目〜下から3行目)
(7)「第1図及び第2図において、破線で囲んだ部分がクラスIVのパーシャル・レスポンス方式の構成である。パーシャル・レスポンスは、…直流成分を持たない周波数特性を有している。この発明の一実施例では、記録回路に設けられたプリコーダ8が(1/1-D2)の伝達関数を有している。」(第3頁左下欄第15行目〜右下欄第10行目)
同じく当審の拒絶の理由に引用した、本願の出願の日前である昭和58年7月21日に頒布された特開昭58-122606号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。
(8)「テープ6のヘッドシリンダー2への当接角度は約100°とし、」(第3頁左上欄第15〜16行目)
3.対比
本願発明と引用刊行物1に記載された発明とを対比すると、引用刊行物1において、DATテープ(有効記録幅2.613mm,トラック長23.501mm)を直径30mmの回転ドラムにリード角3゜48′で巻き付けるとこの場合の巻き付け角は略165゜になるものと認められ、該巻き付け角は180゜より小さい(なお、このように巻き付け角が180゜より小さい構成は引用刊行物3にも記載されているように周知の事項と認められる。)ので、両者は「入力ディジタル画像信号を複数の画素データからなるブロック単位のデータに変換するブロック化手段と、上記ブロック化手段の出力データを上記ブロック単位に圧縮符号化する符号化手段と、入力ディジタルオーディオ信号を符号化するオーディオ信号符号化手段と、制御用の付加コードを発生する付加コード発生手段とを有し、上記各手段からの出力画像データ、出力オーディオデータ及び上記付加コード発生手段の出力付加コードを回転ドラムに装着された磁気ヘッドによって、磁気テープに記録するようにしたディジタルデータの磁気記録装置において、上記画像データ、上記オーディオデータ及び上記付加コードを所定の配列で上記磁気テープに記録すると共に、上記磁気テープを上記回転ドラムに巻き付ける巻き付け角を180゜より小に選定したディジタルデータの磁気記録装置。」である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点▲1▼
本願発明では符号化データをチャンネル符号化する手段を有するのに対し、引用刊行物1に記載された発明ではその様な手段を有していない点。
相違点▲2▼
本願発明では磁気テープとして、蒸着テープを用いると共にデータ検出方式としてパーシャルレスポンス・クラス4を用いているのに対し、引用刊行物1に記載された発明ではその様な限定をしていない点。
相違点▲3▼
本願発明では磁気テープヘの記録が、複数のトラックとして同時に行われるのに対し、引用刊行物1に記載された発明ではその様な構成を有していない点。
4.当審の判断
上記相違点について検討するに、本願発明の、「チャンネル符号化手段」は、具体的にはその明細書第25頁第4行目〜第26頁第18行目の記載及び図面の第6図、第7図に記載されたようなものと認められるところ、この構成は、上記「2.引用刊行物の記載」の(6),(7)で引用した構成に相当する。
したがって、相違点▲1▼の、符号化データをチャンネル符号化する手段、及び▲2▼の磁気テープとして蒸着テープを用い、データ検出方式として、パーシャルレスポンス・クラス4を用いる構成は、いずれも引用刊行物2に記載されている。
また、相違点▲3▼の、複数のトラックとして同時に磁気テープに記録する構成は周知(例.実開昭56-64557号公報,特開昭60-211611号公報,実開平2-123713号公報,特開平2-162514号公報参照)である。
(なお、審判請求人は意見書において、「また、この発明は、複数トラックとして同時に記録する記録方式において、クロストークの問題を回避できる利点がある。巻き付け角が180゜以上では、記録動作が重複する期間が生じ、記録系の回路間でクロストークが発生するおそれがある。特に、複数のトラックを同時に記録する場合には、同時に動作する記録系のチャンネル数がかなり多くなり、クロストークを防止することが難しくなる。この発明は、記録動作の重複する期間を生じないようにできるので、たとえ、複数トラックを同時に記録する場合にも、同時に動作する記録系のチャンネル数が何倍とはならず、クロストークの問題を回避し易くなる。」と主張しているが、記録動作の重複する期間が生じないようにできるのは、周知の巻き付け角が180゜以下の構成に対応するものであり、本願請求項1に係る発明は、「複数トラックとして同時に」記録するものであり、クロストークが発生するおそれがあるものであるにもかかわらずクロストークをいかにして回避するかについては何ら記載されていない。そして、上記のように複数のトラックに同時に記録する構成は周知であるから、クロストークの問題を回避しやすくなるという効果は、上記周知の構成の寄せ集めによる予測し得る範囲の効果であり、本願請求項1に係る発明がクロストークの問題を回避しているとは認められない。)
そして、これらはいずれもディジタルデータの磁気記録装置である点で同じ技術分野に属するものであるから、引用刊行物1に記載された発明において、引用刊行物2に記載された上記構成を付加するとともに上記周知の構成を付加することによって本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。
そして、このように複数の構成を付加することにより新たな効果を奏するものとは本願明細書を見てもこれを認めることができないばかりでなく、請求人が意見書で述べているような(当業者の予測し得ない)相乗効果を奏すると認めるに足りるデータの記載もないので、本願発明の奏する効果は各引用刊行物から予測し得る程度のものと認められる。
5.結び
したがって、本願発明は、引用刊行物1,2に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-10-22 
結審通知日 1999-11-02 
審決日 1999-11-16 
出願番号 特願平2-294673
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小要 昌久  
特許庁審判長 三友 英二
特許庁審判官 田良島 潔
犬飼 宏
発明の名称 ディジタルデータの磁気記録装置  
代理人 杉浦 正知  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ