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審決分類 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1010112
審判番号 審判1999-3480  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-07-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-03-10 
確定日 2000-03-13 
事件の表示 平成 2年特許願第330633号「スライド作製用カラートナー」拒絶査定に対する審判事件〔平成 4年 7月24日出願公開、特開平 4-204548、平成 7年 8月16日出願公告、特公平 7- 76847、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成2年11月30日の出願であって、平成7年8月16日に出願公告されたところ、コニカ株式会社及びミノルタ株式会社よりそれぞれ特許異議の申立があり、そのうちのミノルタ株式会社の申立に理由があるものと決定され、その決定の理由によって拒絶査定されたものである。
2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、出願公告後の平成11年4月9日付の手続補正書により補正された明細書の記載から見て、特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「【請求項1】ヒートローラ定着法を採用する電子写真法でスライド用透明シート上にカラー画像を形成するためのカラートナーにおいて、結着樹脂として、重量平均分子量が10000〜350000の範囲にある、スチレン・アクリル酸アルキル共重合体、スチレン・メタクリル酸アルキル共重合体及びスチレン・アクリルニトリル共重合体の群から選択される1種以上の熱可塑性樹脂を用い、粒子径12μm以上のカラートナーの体積を20%以下に抑え、累積体積分布が50%になる体積平均粒子径d50を4〜9μmの範囲に調整し、測定温度150℃、測定荷重2160gwtにおけるカラートナーのメルトインデックスMIを10〜30の範囲に調整し、かつ、〔MI≧4.0×d50-18〕の関係を満たすように調整したことを特徴とするスライド作製用カラートナー。」にあるものと認める。
(なお、平成8年7月22日付の手続き補正書は、特許法第64条第2項で準用する同法第126条第2項の規定に違反するものとして、同法第54条第1項の規定により却下された。)
3.原査定における拒絶の理由
原審における拒絶の理由となった特許異議決定の趣旨は、本願明細書には、メルトインデックスの値がいかなる試験法によって計測された値であるのか記載されておらず、本願明細書には当業者が本願の発明を実施できる程度にその発明について記載されていないと認められるので、特許法第36条第3項の規定を満たしておらず、特許を受けることができないとするものである。
4.明細書の記載
本願の公告決定時の明細書には、「電子写真法でスライド用透明シート上にカラー画像を形成するためのカラートナーにおいて、粒子径12μm以上のカラートナーの体積を20%以下に、累積体積分布が50%になる体積平均粒子径d50を4〜9μmに、カラートナーのメルトインデックスMIを10〜30に、かつ、[MI≧4.0×d50-18]の関係を満たすように調整したことを特徴とするスライド作製用カラートナー。」(特許請求の範囲)、「カラートナーのメルトインデックスMIを10〜30に、」(第3頁18〜19行、第7頁11行)、「メルトインデックスの範囲の上限を越えると機内でブロッキングや定着時のオフセットが生じてトナーとして使用することが困難になる。」(第8頁3〜6行)、「このトナーのメルトインデックスMIの実測値は28であり」(実施例1)、「トナーのMI実測値は23であり」(実施例2)、「トナーのMI実測値は28であり」(実施例3)、「トナーのMI実測値は10であり」(実施例4)、「トナーのMI実測値は10であり」(実施例5)、「トナーのMI実測値は30であり」(実施例6)、「トナーのMI実測値は28であり」(比較例1)、「トナーのMI実測値は23であり」(比較例2)、「トナーのMI実測値は28であり」(比較例3)、「トナーのMI実測値は12であり」(比較例4)、「トナーのMI実測値は15であり」(比較例5)との記載が存在するものの、トナーのメルトインデックスMIを測定するための、測定温度、測定荷重などの具体的測定方法についての記載は認められない。
5.当審の判断
一般に、わが国において、工業製品の品質、性状などの試験には、日本工業規格によった試験方法が常用されており、日本工業規格の制定がない分野については、類似の製品の日本工業規格を参考として試験が行われることが極めて多い。
そして、熱可塑性樹脂である結着樹脂と、顔料、ワックス成分その他よりなるトナーそのもののメルトインデックスの測定方法は、日本工業規格としては、未だ制定されておらず、この場合に、トナーを形成する主要成分である結着樹脂に関する日本工業規格の測定方法に沿って測定することは合理的なことである。
ところで、トナーの定着温度は、トナーを構成する結着樹脂(及び顔料その他の成分)が、短時間で被定着基材に充分に結合するために、溶融する温度にまで加熱する必要があるのに対して、トナーのメルトインデックスは、10分という長い時間をかけて、圧力によりノズルから押し出される量を測定するものであるから、定着温度よりも低い温度で測定されるべきことは明らかである。
そこで、熱可塑性樹脂のメルトインデックスに関する日本工業規格の測定方法、「熱可塑性プラスチックの流れ試験方法 JIS K 7210-1995」を参照すると、本願明細書の実施例に示されているトナーの定着温度である190℃より低い温度でメルトインデックスを測定する条件としては、150℃・2160gf(gfはgwtと同じ)が該当することになる。
なお、他に125℃・325gfの条件のものがあるが、190℃という本願発明のトナーの定着温度からは離れすぎていて、トナーの熱的性質を判断する基準とはなり得ない。
したがって、出願公告時の本願明細書中に明記がなくても、その材料の使用条件及びメルトインデックスの測定方法を考慮すると、本願発明のトナーのメルトインデックスは、150℃・2160gwtの条件が用いられたと解される。
6.むすび
以上のとおり、上記手続補正書は採用できるものであるから、出願公告された本願明細書には、メルトインデックスの値がいかなる試験法によって計測された値であるのか記載されていないという記載不備は、該補正により解消した。
よって、本願明細書が特許法第36条第3項の規定を満たしていないため、特許を受けることができないとした原審の判断は妥当なものでない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2000-02-24 
出願番号 特願平2-330633
審決分類 P 1 8・ 531- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 彌一菅野 芳男  
特許庁審判長 高梨 操
特許庁審判官 多喜 鉄雄
鐘尾 みや子
発明の名称 スライド作製用カラートナー  
代理人 内田 明  
代理人 萩原 亮一  
代理人 安西 篤夫  

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