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審決分類 審判 補正却下の決定 5項独立特許用件  F25D
管理番号 1012243
審判番号 審判1997-20248  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-08-20 
種別 補正却下の決定 
確定日 2000-02-10 
事件の表示 平成7年特許願第294541号「高効率独立冷却サイクル(High efficiency Multi-evaporatorcycle:H.M.CYCLE)を持つ冷蔵庫及びその運転制御方法」拒絶査定に対する審判事件について,次のとおり決定する。 
結論 平成10年1月6日付けの手続補正を却下する。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年11月13日の出願であって、優先日が平成6年11月11日である。その後、平成10年1月6日付けで明細書を補正する手続補正(以下、この補正という。)がなされている。この補正は、特許法第17条の2第1項第3号の規定に基づく補正であって、特許請求の範囲を補正するものである。
2.補正後の明細書の請求項1に係る発明
この補正により補正された明細書の請求項1に1係る発明(以下「本願発明という。」)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のものである。
「相互に区画され、相異なる温度に冷却される冷凍室及び冷蔵室と、
冷媒を圧縮して供給する圧縮機と、
圧縮された冷媒を凝縮する凝縮機と、
凝縮された冷媒を膨張させる毛細管と、
前記冷凍室に設置され、前記毛細管から流出した冷媒の一部を蒸発させる所定容量の第1の蒸発器と、
前記冷蔵室に設置され、前記第1の蒸発器から流出した冷媒を、蒸発していない残りを蒸発させて前記圧縮機へ戻す所定容量の第2の蒸発器と、
前記第1の蒸発器に隣接して設置され、電源印加時に前記冷凍室内の冷気循環を誘導する第1のファンと、
前記第2の蒸発器に隣接して設置され、電源印加時に前記冷蔵室内の冷気循環を誘導する第2のファンと、
前記圧縮機、第1のファン及び第2のファンが、それぞれ並列に接続される電源と、
前記冷凍室の温度を感知する第1温度感知手段と、
前記冷蔵室の温度を感知する第2温度感知手段と、
前記電源と、前記圧縮機、前記第1のファン及び第2のファンとの間に介挿され、オン/オフにより、前記圧縮機と前記第1又は第2のいずれか一方のファンとをオンせしめるか、前記圧縮機と前記第1のファン及び第2のファンとをオフせしめる第1スイッチング手段と、
前記第1スイッチング手段と前記一方のファンでない他方のファンとの間に介挿され、前記圧縮機と前記一方のファンが駆動される時に、オン/オフにより、前記他方のファンをオンせしめるか、オフせしめる、第2スイッチング手段と、
前記第1温度感知手段及び第2温度感知手段によって感知された温度に基づいて、前記第1スイッチング手段と、第2スイッチング手段を制御する制御部とを具備し、
前記制御部は、前記一方のファンが設置された前記冷凍室又は冷蔵室のいずれか一方の室の温度感知手段において感知された温度が、前記一方の室の設定温度より高い場合に、前記圧縮機及び前記一方のファンと、前記第2スイッチング手段とを電源に接続し、低い場合に、前記圧縮機及び前記一方のファンと、前記第2スイッチング手段とを電源から遮断するべく、前記第1スイッチング手段を制御するとともに、前記圧縮機と前記一方のファンが駆動される時に、前記一方の室でない他方の室の温度感知手段において感知された温度が、前記他方の室の設定温度より高い場合には、前記他方のファンを電源に接続し、低い場合には、前記他方のファンを電源から遮断するべく、前記第2スイッチング手段を制御することを特徴とする高効率独立冷却サイクルを持つ冷蔵庫。」
3.引用刊行物
刊行物1:特公昭49-39591号公報
刊行物2:実公昭47-39421号公報
刊行物1には、
「互いに熱的に隔絶され、相異なる温度に冷却される冷凍室4及び冷蔵室5と、
冷媒を圧縮して供給する電動圧縮機21と、
凝縮器20と、
一次毛細管24と、
前記冷凍室4に設置された冷凍室用蒸発器7と、
前記冷蔵室5に設置された冷蔵室用蒸発器8と、
前記冷凍室用蒸発器7に隣接して設置され、電源印加時に前記冷凍室4内の冷気循環を誘導する冷凍室用ファン14と、
前記冷蔵室用蒸発器8に隣接して設置され、電源印加時に前記冷蔵室5内の冷気循環を誘導する冷蔵室用ファン18と、
前記電動圧縮機21、冷凍室用ファン14及び冷蔵室用ファン18が、それぞれ並列に接続される電源28a,28bと、
前記冷凍室4の温度を感知する感熱部30と、
前記冷蔵室5の温度を感知する感熱部32と、
前記電源28a,28bと、前記電動圧縮機21、前記冷凍室用ファン14との間に介挿され、オン/オフにより、前記電動圧縮機21と前記冷凍室用ファン14とをオンせしめるか、前記電動圧縮機21と前記冷凍室用ファン14とをオフせしめる温度調節器29と、
前記電源28a,28bと前記冷蔵室用ファン18との間に介挿され、前記電動圧縮機21と前記冷凍室用ファン14が駆動される時に、オン/オフにより、前記冷蔵室用ファン18をオンせしめるか、オフせしめる、温度調節器34と、
前記感熱部30及び感熱部32によって感知された温度に基づいて、前記温度調節器29と、温度調節器34を制御する、(これら感熱部30,32、温度調節器29,34等から成る)制御部とを具備し、
前記制御部は、前記冷凍室用ファン14が設置された前記冷凍室4の感熱部30において感知された温度が、前記冷凍室4の設定温度より高い場合に、前記電動圧縮機21及び前記冷凍室用ファン14と、前記温度調節器34とを電源28a,28bに接続し、低い場合に、前記電動圧縮機21及び前記冷凍室用ファン14を電源28a,28bから遮断するべく、前記温度調節器29を制御するとともに、前記電動圧縮機21と前記冷凍室用ファン14が駆動される時に、前記冷蔵室5の感熱部32において感知された温度が、前記冷蔵室5の設定温度より高い場合には、前記冷蔵室用ファン18を電源28a,28bに接続し、低い場合には、前記冷蔵室用ファン18を電源28a,28bから遮断するべく、前記温度調節器34を制御することを特徴とする独立冷却サイクルを持つ冷蔵庫。」
が記載されている。(刊行物1第1欄17,18行、第3欄33〜43行、第4欄2〜10行を特に参照。)
刊行物2には、
「切換スイッチ10が、温度調節器9と冷蔵室用送風機8との間に介挿され、(これら温度調節器9、切換スイッチ10等から成る)制御部は、冷蔵室Aの感知された温度が、冷蔵室Aの所定の低温度になると、前記切換スイッチ10をも電源から遮断するべく、前記温度調節器9を制御する冷蔵庫。」
が記載されている。(刊行物2第2欄9〜16行を特に参照。)
4.対比
本願発明と、刊行物1記載の発明を対比すると、刊行物1記載の「電動圧縮機21」、「凝縮器20」、「一次毛細管24」、「冷凍室用蒸発器7」、「冷蔵室用蒸発器8」、「冷凍室用ファン14」、「冷蔵室用ファン18」、「感熱部30」、「感熱部32」、「温度調節器29」、「温度調節器34」は、それぞれ、本願発明の「圧縮機」、「凝縮機」、「毛細管」、「第1の蒸発器」、「第2の蒸発器」、「第1のファン」、「第2のファン」、「第1温度感知手段」、「第2温度感知手段」、「第1スイッチング手段」、「第2スイッチング手段」にそれぞれ相当すると認められる。
また、刊行物1記載の「冷凍室4」、「冷蔵室5」、「冷凍室用ファン14」、「冷蔵室用ファン18」、は、それぞれ、本願発明の「一方の室」、「他方の室」、「一方のファン」、「他方のファン」にそれぞれ相当すると認められる。
刊行物1記載の「互いに熱的に隔絶され、」は、本願発明の「相互に区画され、」に相当すると認められる。
上記の請求項1に記載された「圧縮された冷媒を(凝縮機で)凝縮する」、「凝縮された冷媒を(毛細管で)膨張させる」は、必ずしも刊行物1には明記されていないが、このようなことは冷蔵庫の分野では技術常識にすぎない。
さらに、上記の請求項1には「高効率独立冷却サイクルを持つ冷蔵庫」と記載されているが、刊行物1には「高効率」とは明記されていない。しかし、本願明細書【0006】〜【0009】欄の記載によれば、本願明細書における「高効率」という用語は“冷凍室と冷蔵室を分離し、各室の状態に基づいてファンをオン/オフし、各室専用の2つの蒸発器を用いて個別的に温度制御する”ことにより達成される高い効率という意味で用いられていることは明白である。然るに、引用文献1記載の冷蔵庫においても同様に“冷凍室4と冷蔵室5を熱的に分離し、各室の状態に基づいてファン14,18をオン/オフし、各室専用の2つの蒸発器7,8を用いて個別的に温度制御する”のだから、引用文献1の冷蔵庫もやはり、本願明細書の用語法でいう「高効率」の冷蔵庫であると言わざるを得ない。
したがって、両発明は、
「相互に区画され、相異なる温度に冷却される冷凍室及び冷蔵室と、
冷媒を圧縮して供給する圧縮機と、
圧縮された冷媒を凝縮する凝縮機と、
凝縮された冷媒を膨張させる毛細管と、
前記冷凍室に設置され、所定容量の第1の蒸発器と、
前記冷蔵室に設置され、所定容量の第2の蒸発器と、
前記第1の蒸発器に隣接して設置され、電源印加時に前記冷凍室内の冷気循環を誘導する第1のファンと、
前記第2の蒸発器に隣接して設置され、電源印加時に前記冷蔵室内の冷気循環を誘導する第2のファンと、
前記圧縮機、第1のファン及び第2のファンが、それぞれ並列に接続される電源と、
前記冷凍室の温度を感知する第1温度感知手段と、
前記冷蔵室の温度を感知する第2温度感知手段と、
前記電源と、前記圧縮機、前記第1のファンとの間に介挿され、オン/オフにより、前記圧縮機と前記第1又は第2のいずれか一方のファンとをオンせしめるか、前記圧縮機と前記第1のファンとをオフせしめる第1スイッチング手段と、
前記圧縮機と前記一方のファンが駆動される時に、オン/オフにより、前記他方のファンをオンせしめるか、オフせしめる、第2スイッチング手段と、
前記第1温度感知手段及び第2温度感知手段によって感知された温度に基づいて、前記第1スイッチング手段と、第2スイッチング手段を制御する制御部とを具備し、
前記制御部は、前記一方のファンが設置された前記冷凍室又は冷蔵室のいずれか一方の室の温度感知手段において感知された温度が、前記一方の室の設定温度より高い場合に、前記圧縮機及び前記一方のファンと、前記第2スイッチング手段とを電源に接続し、低い場合に、前記圧縮機及び前記一方のファンを電源から遮断するべく、前記第1スイッチング手段を制御するとともに、前記圧縮機と前記一方のファンが駆動される時に、前記一方の室でない他方の室の温度感知手段において感知された温度が、前記他方の室の設定温度より高い場合には、前記他方のファンを電源に接続し、低い場合には、前記他方のファンを電源から遮断するべく、前記第2スイッチング手段を制御する
ことを特徴とする高効率独立冷却サイクルを持つ冷蔵庫。」
で一致し、次のイ.ロ.の2点で相違する。
イ.前記冷凍室に設置された第1の蒸発器に、前記毛細管から流出した冷媒を流入させ、その一部を蒸発させ、その後、第1の蒸発器から流出した冷媒を前記冷蔵室に設置された第2の蒸発器に導入し、蒸発していない残りを蒸発させて前記圧縮機へ戻す点。
ロ.第2スイッチング手段が、第1スイッチング手段と一方のファンでない他方のファンとの間に介挿され、制御部は、冷凍室又は冷蔵室のいずれか一方の室の感知された温度が、前記一方の室の設定温度より低い場合に、前記第2スイッチング手段をも電源から遮断するべく、前記第1スイッチング手段を制御する点。
5.判断.
上記相違点イ.について検討する。圧縮機から供給された冷媒を
毛細管→冷凍室蒸発器→冷蔵室蒸発器→圧縮機の順に循環することは
実公昭42-19004号公報
特開昭52-28763号公報
特開昭52-48145号公報
実開昭53-61772号公報
等にも記載されているように周知の技術にすぎない。このような技術水準を考慮すると、上記相違点イ.のようにすることは、容易の範囲内の事項と言わざるを得ない。
次に、上記相違点ロ.について検討する。
刊行物2に記載の「切換スイッチ10」、「温度調節器9」、「冷蔵室用送風機8」、「所定の低温度になると、」は、それぞれ、本願発明の「第2スイッチング手段」、「第1スイッチング手段」、「他方のファン」、「設定温度より低い場合に、」にそれぞれ相当する。
それゆえに、刊行物2には、上記相違点ロ.の内容がすべて開示されている。
そして、刊行物1及び2記載の発明は、いずれも、冷蔵室用蒸発器と冷凍室用蒸発器をもつ2温度式冷蔵庫の技術分野に属しており、技術分野が共通であるから、刊行物1記載の発明に刊行物2記載のものを組み合わせることは容易である。
本願発明の効果は、刊行物1及び2の記載から容易に予測できる程度のものにすぎず、格別なものではない。
6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、本願の優先日前に国内において頒布された刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、補正後の請求項2〜4に係る発明を検討するまでもなく、この補正は、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第4項の規定に違反してなされたものと認められ、特許法第159条第1項の規定により読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
決定日 1999-09-14 
出願番号 特願平7-294541
審決分類 P 1 93・ 575- (F25D)
前審関与審査官 小関 峰夫  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 会田 博行
岡田 和加子
発明の名称 高効率独立冷却サイクル(High efficiency Multi-evaporatorcycle:H.M.CYCLE)を持つ冷蔵庫及びその運転制御方法  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  

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