| ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
| 既存のポートフォリオに追加保存 |
|
| パテントビューロ作成のPDFをダウンロード |
| 審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E04B |
|---|---|
| 管理番号 | 1012296 |
| 異議申立番号 | 異議1998-73305 |
| 総通号数 | 10 |
| 発行国 | 日本国特許庁(JP) |
| 公報種別 | 特許決定公報 |
| 発行日 | 1994-03-01 |
| 種別 | 異議の決定 |
| 異議申立日 | 1998-07-14 |
| 確定日 | 1999-09-29 |
| 異議申立件数 | 1 |
| 事件の表示 | 特許第2696460号「耐震鉄骨構造物」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
| 結論 | 特許第2696460号の特許を取り消す。 |
| 理由 |
I.手続きの経緯 本件特許第2696460号に係る発明は、平成4年8月7日に出願されたもので、平成9年9月19日にその特許の設定登録がされ、その後、平成10年7月14日に日本鋼管株式会社より特許異議の申立てがあり、平成10年10月26日(起案日)に取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年1月12日に意見書提出と共に訂正請求がなされた後、平成11年3月4日(起案日)に訂正拒絶理由通知がなされ、これに対して平成11年5月17日に意見書が提出されたものである。 II.訂正請求について 1.請求の趣旨及び訂正事項 訂正請求の趣旨は、特許第2696460号の明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものである。 そして、その訂正事項は、以下の▲1▼訂正事項a及び▲2▼訂正事項bのとおりのものである。 ▲1▼訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1を、 「鋼管1とその内部に配置された降伏点10〜20kg/mm2の低降伏点鋼材2との間にコンクリート3を充填して、座屈拘束ブレース4を構成し、その座屈拘束ブレース4を架設する鉄骨構造物7の鋼材製柱5及び鋼材製梁6には、地震時には座屈拘束ブレース4で地震のエネルギを吸収させ、前記鋼材製柱5及び鋼材製梁6自身が永久変形するのを防止できる程度に前記低降伏点鋼材2より高い降伏点を有する鋼材を配設することを特徴とする耐震鉄骨構造物。」と訂正する。 ▲2▼訂正事項b 発明の詳細な説明の段落【0004】を、 「【課題を解決するための手段】 前述の問題を有利に解決するために、本発明の耐震鉄骨構造物においては、鋼管1とその内部に配置された降伏点10〜20kg/mm2の低降伏点鋼材2との間にコンクリート3を充填して、座屈拘束ブレース4を構成し、その座屈拘束ブレース4を架設する鉄骨横造物7の鋼材製柱5及び鋼材製梁6には、地震時には座屈拘束ブレース4で地震のエネルギを吸収させ、前記鋼材製柱5及び鋼材製梁6自身が永久変形するのを防止できる程度に前記低降伏点鋼材2より高い降伏点を有する鋼材を配設することを特徴とする。」と訂正する。 2.訂正の要件の適否 2-1.訂正拒絶理由の概略 訂正拒絶理由は、本件特許第2696460号の訂正明細書の請求項1に係る発明は、刊行物1(実公平4-19121号公報)、刊行物2[1991年度大会(東北)学術講演梗概集 C構造II(1991年9月)日本建築学会 No.21477 P.1367-1368]及び刊行物3[日本規格協会編「JISハンドブック 鉄鋼 JISG3106」(1992年4月20日)日本規格協会発行p.468-479]記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、訂正請求は認められないとしている。 2-2.訂正後の請求項1に係る発明 訂正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により構成される発明(以下、「訂正後の請求項1に係る発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】鋼管1とその内部に配置された降伏点10〜20kg/mm2の低降伏点鋼材2との間にコンクリート3を充填して、座屈拘束ブレース4を構成し、その座屈拘束ブレース4を架設する鉄骨構造物7の鋼材製柱5及び鋼材製梁6には、地震時には座屈拘束ブレース4で地震のエネルギを吸収させ、前記鋼材製柱5及び鋼材製梁6自身が永久変形するのを防止できる程度に前記低降伏点鋼材2より高い降伏点を有する鋼材を配設することを特徴とする耐震鉄骨構造物。」 2-3.引用刊行物記載の発明 刊行物1には、 「鋼材で補強された座屈拘束用コンクリート部材1に鋼製中心軸力部材2が挿通され、その中心軸力部材2の表面と前記コンクリート部材1との間に付着防止被膜3が設けられ、かつ鋼製中心軸力部材2の端部に鋼製補強用リブプレート6が固定され、前記コンクリート部材1内に、補強用リブプレート6における中心軸力部材中央側の端面に接触する変形吸収用弾性材7がもうけられていることを特徴とする座屈拘束筋かい部材。」(第1頁第1欄特許請求の範囲)、 「帯状鋼板からなる鋼製中心軸力部材2が4角形断面の鋼管5に挿通され、……前記鋼管5内にコンクリート8が充填され、そのコンクリート8と前記鋼管5とにより鋼材で補強された座屈拘束用コンクリート部材1が構成され、」(第2頁第3欄第16行〜第32行)及び 「中心軸力部材2を構成する鋼材としては、降伏点が10kg/mm2〜50kg/mm2の範囲のものを使用することができ、剛性および塑性挙動(保有耐力、復元力特性)を任意に調整することができる。 第6図および第7図は第1実施例に係る座屈拘束筋かい部材の使用例を示すものであつて、鉄骨構造物における梁10に十字状の鋼製取付金具11が溶接により固着され、その取付金具11と中心軸力部材2の端部およびリブプレート6とは鋼製継手板12およびボルト13により連結されている。 前記実施例における中心軸力部材2を低降伏点鋼により構成した場合は、中心軸力部材2を、履歴特性を利用した振動減衰部材としても使用することができ、したがつて座屈拘束筋かい部材を、耐力材としてだけでなく、地震や風力等の振動の減衰部材としても構造物の振動減衰性を向上させることができ、地震応答を低減させることもできる。」(第2頁第4欄第4行〜第23行) 刊行物2には、 「アンボンドブレースとは、図1に示すように中心材の周りにアンボンド材と称する絶縁材を配置し、さらにその外側を鋼管コンクリートで被覆したもので、曲げを鋼管で負担し、軸力を中心材で負担させるシステムである。 さらにこのアンボンドブレースの芯材の降伏点と断面積を変えることで、剛性・耐力を分離して設定することが可能であれば、構造設計の自由度が大きくなる。たとえば、極低降伏点鋼材をブレース材に用いる事で、地震時のエネルギ吸収を積極的に図り、柱・梁を弾性内に抑える、といった設計手法……も現実のものとなる。」(第1367頁第13行〜第27行及び図1アンボンドブレース、アンボンドブレースの断面図)及び 「極低降伏点鋼の機械的性質 降伏点 11kg/mm2 引張強さ 28kg/mm2 伸び 70% 」 (図1アンボンドブレースの右横欄) 刊行物3には、 「1.適用範囲 この規格は,建築,……その他の構造物に用いる熱間圧延鋼材(以下,鋼材という。)であって,特に溶接性の優れたものについて規定する。」(第468頁第1行〜第2行)及び 「鋼材の引張強さ400〜510N/mm2のものは、鋼材の厚さにより、195N/mm2以上〜245N/mm2以上の降伏点を有し、引張強さ490〜610N/mm2のものは、鋼材の厚さにより、275N/mm2以上〜325N/mm2以上の降伏点を有し、引張強さ570〜720N/mm2のものは、鋼材の厚さにより、420N/mm2以上〜460N/mm2以上の降伏点を有すること。」(第470頁 表5) が、夫々記載されている。 2-4.対比・判断 訂正明細書の請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、訂正明細書の請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明とは、以下の点で相違しているが、その余の点では一致していると認められる。 (相違点) 訂正明細書の請求項1に係る発明は、(座屈拘束ブレース)内部に配置された鋼材が降伏点10〜20kg/mm2の低降伏点のものであり、鋼材製柱及び鋼材製梁が地震時には座屈拘束ブレースで地震のエネルギを吸収させ、鋼材製柱及び鋼材製梁自身が永久変形するのを防止できる程度に低降伏点鋼材より高い降伏点を有するものを選択しているのに対して、刊行物1には、中心軸力部材を構成する鋼材(訂正明細書の請求項1に係る発明の「内部に配置された鋼材」に相当する。)として降伏点10〜50kg/mm2の範囲のうち低降伏点のものを使用することが記載され、鋼材製柱及び鋼材製梁については、降伏点を限定する記載がない点。 そこで、上記相違点を検討すると、 刊行物1の記載によれば、ブレース内部に配置された鋼材が降伏点10〜50kg/mm2のものを使用することが記載されているが、上記のように「中心軸力部材を低降伏点鋼により構成した場合は、中心軸力部材2を、履歴特性を利用した振動減衰部材としても使用することができ、したがつて座屈拘束筋かい部材を、耐力材としてだけでなく、地震や風力等の振動の減衰部材としても構造物の振動減衰性を向上させることができる」と記載され、制振用として使用する場合には、内部に配置された鋼材が降伏点10〜50kg/mm2の範囲の内のさらに低降伏点範囲を選択することが示唆されていると認められ、また刊行物2には、上記のように「地震時のエネルギ吸収を積極的に図り、柱・梁を弾性内に抑えるため、例えば降伏点11kg/mm2の極低降伏点鋼材をアンボンドブレースに用いること」が記載されている。そして、刊行物1、2記載の発明は、いずれも上記のように座屈拘束ブレースにて地震時のエネルギ吸収を積極的に図り、鋼材製柱及び鋼材製梁を弾性内に抑えること、言い換えれば、鋼材製柱及び鋼材製梁自身が永久変形するのを防止することを目的とするものと言うことができ、該目的を達成するため、通常使用される鋼材製柱及び鋼材製梁より低い降伏点のものを使用すること及び逆に鋼材製柱及び鋼材製梁は座屈拘束ブレーズよりも高い降伏点のものを使用することは、自明の事項と認められる。 ところで、引張強さが約40〜60kg/mm2の鋼材を柱、梁部材として用いることは、特許権者が本件の審査の際に提出した平成8年12月6日付け意見書において、自認しているように、本件の出願前、普通に実施されていることであり、この引張強さ約40〜60kg/mm2を、実施される鋼材の厚さを勘案し、刊行物3の記載に従い降伏点に変換すれば、23.5以上〜35.5以上kg/mm2の範囲になるものと認められるるから、この降伏点23.5〜35.5kg/mm2の範囲の鋼材を柱、梁として用いることは、本件の出願前、通常実施されていることであると言い換えることができる。 以上を総合して判断すると、座屈拘束ブレース内部に配置された鋼材は、刊行物2に記載された極低降伏点の11kg/mm2前後から、刊行物1記載の降伏点10〜50kg/mm2の範囲の内のさらに低降伏点範囲、すなわち通常、鋼材製柱及び鋼材製梁として使用される略23.5kg/mm2以下にすることは、当業者が容易に想到できることにすぎないということができる。そして、この降伏点範囲11kg/mm2〜23.5kg/mm2は、上記相違点における訂正明細書の請求項1に係る発明の座屈拘束ブレース内部に配置された鋼材の降伏点10〜20kg/mm2の数値範囲とは、下限値及び上限値が多少相違するも、作用効果上、それにより格別な差異を生ずるものとは、認められない。また、鋼材製柱及び鋼材製梁は、座屈拘束ブレーズの降伏点よりも高い降伏点のものを使用することは、刊行物1、2記載の発明の目的より考え自明の事項にすぎないものと認められる。 よって、上記相違点における訂正明細書の請求項1に係る発明のようにすることは、当業者であれば必要に応じて容易になし得ることにすぎないものと認められる。 [なお、特許権者は、平成11年5月17日付けの意見書で、『刊行物2に関し、当該刊行物2は、本願発明を示唆しないと思料する。 つまり、刊行物2においては、図3のアンボンドブレースの断面図が示すように、極低降伏点鋼(降伏点11kg/mm2)とSM490(降伏点33kg/mm2以上)の併用が前提であり、この点とくに重要である。……刊行物2における「低降伏点鋼」はあくまでも「やや高張力鋼材」との併用を前提とするもので、「低降伏点鋼」はあくまでも「アンボンドブレースの中心軸力材に低降伏点鋼とやや高張力鋼材を併用して用いる」ことを必須の要件として示しており、この刊行物2の技術思想は、「極低降伏点鋼材を単独で用いる」ことはどこにも示唆しておらず、刊行物2における「低降伏点鋼」が本願発明における「低降伏点鋼」の概念を内包せず、かつこれを示唆しないことはきわめて明らかである。』(第5頁第3行〜第6頁第19行)と主張しているが、刊行物2には、前記「2-3.引用刊行物記載の発明」において、摘示したように、図1には、周りにアンボンド材を配置した中心材を単独で使用し、その外側を鋼管コンクリートで被覆したアンボンドブレーズが記載され、そして、この中心材として降伏点11kg/mm2の機械的性質を有する極低降伏点鋼を選択したことが記載されていることは、明らかであり、図1のアンボンドブレーズのいずれの位置の横断面をとっても、アンボンドブレーズの断面図として示されたもののような極低降伏点鋼材の上部で直交するSM50(刊行物3のJISG3106に照らしてみれば、SM490に相当し、厚さが22mmであるから、略特許権者がいうとおりの31.5kg/mm2以上の鋼材を意味する。)が存在する図が想到できず、また、このアンボンドブレーズの断面図に対する説明は見あたらない。 更に、アンボンドブレーズの断面図は、例えば、本件の特許明細書及び図面の図7と同様の断面形状となっていることから、同図4に示すもののように、SM50は、補強用リブプレートに相当するような鋼材等であって、補助的に中心材の極低降伏点鋼材に上部の直交する位置で付設したもので、それ自身軸力を負担するものではないと解釈した方が妥当である。 よって、刊行物2記載の発明を前記のように摘示し、上記のように対比、判断したことに誤認はないということができる。] 2-5.むすび したがって、訂正明細書の請求項1に係る発明は、刊行物1〜3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、上記訂正請求は、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によって適用される特許法第120条の4第3項において準用する同第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 III.特許異議申立てについて 1.本件請求項1に係る発明 本件特許第2696460号の請求項1に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】鋼管1とその内部に配置された降伏点10〜20kg/mm2の低降伏点鋼材2との間にコンクリート3を充填して、座屈拘束ブレース4を構成し、その座屈拘束ブレース4を、当該低降伏点鋼材2より高降伏点を有する鋼材製柱5及び鋼材製梁6からなる鉄骨構造物7に架設した耐震鉄骨構造物。」 2.取消理由の概要 取消理由は、刊行物1(実公平4-19121号公報)及び特許異議申立人が提出した甲第1号証[1991年度大会(東北)学術講演梗概集C 構造II (1991年9月)日本建築学会 No.21477 P.1367-1368]を刊行物2として、また同甲第6号証[日本規格協会編「JISハンドブック 鉄鋼 JISG3106」(1992年4月20日)日本規格協会発行p.468-479]を刊行物3として引用し、本件請求項1に係る発明は、刊行物1〜3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとしている。 3.刊行物記載の発明 上記取消理由として引用した刊行物1〜3記載の発明は、前記「II.訂正請求について」の「2-3.引用刊行物記載の発明」に記載されたとおりのものである。 4.対比・判断 本件請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、 刊行物1記載の発明の、中心軸力部材を低降伏点鋼により構成した座屈拘束筋かい部材を、地震の振動の減衰部材として構造物に装着し、構造物の振動減衰性を向上させることができ、地震応答を低減させるものである点は、本件請求項1に係る発明の、内部に低降伏点鋼材を配置した座屈拘束ブレースを、鉄骨構造物に架設して、鉄骨構造物を耐震性のものにするのと同一の技術的事項を意味していると認められ、また、刊行物1記載の発明の「鋼製中心軸力部材」及び「座屈拘束筋かい部材」は、本件請求項1に係る発明の「内部に配置された鋼材」及び「座屈拘束ブレース」に相当するから、 本件請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明とは、 「鋼管とその内部に配置された低降伏点鋼材との間にコンクリートを充填して、座屈拘束ブレースを構成し、その座屈拘束ブレースを、鋼材製柱及び鋼材製梁からなる鉄骨構造物に架設した耐震鉄骨構造物。」である点で一致しているが、以下の点で相違している。 (相違点) 本件請求項1に係る発明は、(座屈拘束ブレース)内部に配置された鋼材が降伏点10〜20kg/mm2の低降伏点のものであり、鋼材製柱及び鋼材製梁として当該低降伏点鋼材より高降伏点を有するものを選択しているのに対して、刊行物1には、中心軸力部材を構成する鋼材として降伏点10〜50kg/mm2の範囲のうち低降伏点のものを使用することが記載され、鋼材製柱及び鋼材製梁については、降伏点を限定する記載がない点。 そこで、上記相違点を検討すると、 刊行物1の記載によれば、ブレース内部に配置された鋼材が降伏点10〜50kg/mm2のものを使用することが記載され、前記のように「中心軸力部材2を低降伏点鋼により構成した場合は、中心軸力部材2を、履歴特性を利用した振動減衰部材としても使用することができ、したがつて座屈拘束筋かい部材を、耐力材としてだけでなく、地震や風力等の振動の減衰部材としても構造物の振動減衰性を向上させることができる」と記載され、制振用として使用する場合には、内部に配置された鋼材が降伏点10〜50kg/mm2の範囲の内のさらに低降伏点範囲を選択することが記載されていると認められ、また、刊行物2には、前記のように「地震時のエネルギ吸収を積極的に図り、柱・梁を弾性内に抑えるため、例えば降伏点11kg/mm2の極低降伏点鋼材をアンボンドブレースに用いること」が記載されている。 そして、本件の審査の際に提出した平成8年12月6日付け意見書において、特許権者が自認しているように、引張強さが約40〜60kg/mm2の鋼材を柱、梁部材として用いることは、本件の出願前、普通に実施されていることであり、この引張強さ約40〜60kg/mm2を、刊行物3の記載に従い降伏点に変換すれば、略23.5以上〜35.5以上kg/mm2の範囲になるものと認められるから、この降伏点23.5〜35.5kg/mm2の範囲の鋼材を柱、梁として用いることは、本件の出願前、通常実施されていることであると言い換えることができる。 以上を総合して判断すると、刊行物1記載の発明も上記のように座屈拘束ブレースを制振用として使用する場合、また刊行物2記載のアンボンドブレーズを使用する場合、常識的に鋼材製柱及び鋼材製梁は、それらブレーズよりも高い降伏点、23.5〜35.5kg/mm2のものを使用することが予想できる。逆に言えば、ブレース内部に配置された鋼材は、刊行物2に記載された極低降伏点の11kg/mm2前後から、刊行物1記載の降伏点10〜50kg/mm2の範囲の内のさらに低降伏点範囲、すなわち通常、鋼材製柱及び鋼材製梁として使用される略23.5kg/mm2以下にすることは、当業者が容易に想到できることにすぎないということができる。そして、この降伏点範囲11kg/mm2〜23.5kg/mm2は、上記相違点における訂正明細書の請求項1に係る発明の座屈拘束ブレース内部に配置された鋼材の降伏点10〜20kg/mm2の数値範囲とは、下限値及び上限値が多少相違するも、作用効果上、それにより格別な差異を生ずるものとは、認められない。 そして、刊行物1、2記載の発明は、いずれも前記のように座屈拘束ブレースにて地震時のエネルギ吸収を積極的に図り、鋼材製柱及び鋼材製梁を弾性内に抑えること、言い換えれば、鋼材製柱及び鋼材製梁自身が永久変形するのを防止することを目的とするものと言うことができ、該目的を達成するため、鋼材製柱及び鋼材製梁は座屈拘束ブレーズよりも高い降伏点のものを使用することは、自明の事項と認められる。 よって、上記相違点における本件請求項1に係る発明のようにすることは、当業者であれば必要に応じて容易になし得ることにすぎないものと認められる。 5.むすび 以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、刊行物1〜3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 したがって、本件請求項1に係る発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
| 異議決定日 | 1999-08-02 |
| 出願番号 | 特願平4-231505 |
| 審決分類 |
P
1
651・
121-
ZB
(E04B)
|
| 最終処分 | 取消 |
| 前審関与審査官 | 青山 敏 |
| 特許庁審判長 |
樋口 靖志 |
| 特許庁審判官 |
白樫 泰子 阿部 綽勝 |
| 登録日 | 1997-09-19 |
| 登録番号 | 特許第2696460号(P2696460) |
| 権利者 | 新日本製鐵株式会社 |
| 発明の名称 | 耐震鉄骨構造物 |
| 代理人 | 木村 三朗 |
| 代理人 | 佐々木 宗治 |
| 代理人 | 林 信之 |
| 代理人 | 小林 久夫 |
| 代理人 | 大村 昇 |