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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A43B
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A43B
管理番号 1012530
異議申立番号 異議1999-73232  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-06-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-27 
確定日 2000-03-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第2864208号「靴底」の請求項1,2に係る発明の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2864208号の請求項1,2に係る発明の特許を維持する。 
理由 1.本件特許の請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明
本件特許第2864208号(平成10年12月18日設定登録)の請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明は、それぞれ、その特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次の通りのもの及び同請求項2に記載された事項により特定される次の通りのものにある。
「【請求項1】アウトソールの外側アーチ外縁部と内側アーチ外縁部で囲まれた部分を、外側アーチ外縁部の幾分内側から、内側アーチ外縁部を開放する状態で切除して所定の形状の空間領域を形成し、アウトソールとミッドソールの間に、前記空間領域に対応する面積より幾分大きめの硬質合成樹脂またはゴム製のプレートを嵌挿、接着させ、そのプレートの内側アーチ外縁部方向への伸長部端部を、靴の甲被部分へ向けて立ち上がらせ靴底全体として一体化したことを特徴とする靴底。」
「【請求項2】外側アーチ外縁部内側をテーパをもたせて切除することを特徴とする請求項1の靴底。」
2.特許異議申立ての理由
これに対して、特許異議申立人、有限会社アイコは、甲第1号証(米国特許第5052130号明細書)及び甲第2号証(実公平5-4275号公報)を証拠方法として提出して、本件特許の請求項1に係る発明及び同請求項2に係る発明に対して、「本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、その出願前公知の甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。」(特許異議申立書第11頁第6〜9行)と主張すると共に、甲第3号証(特許庁審査基準室編「解説 平成6年改正特許法の運用」社団法人発明協会発行、平成8年6月6日、第30頁〜第38頁)を証拠方法として提出して、「本件特許は、(旧)特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものである。」(特許異議申立書第11頁第10〜12行)と主張している。
3.特許異議申立ての理由についての検討
(1)本件特許の請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明が、特許法第29条第2項の規定に該当するか否かについて
上記甲第1号証には、「SPRING PLATE SHOE」が記載されており、この「SPRING PLATE SHOE」に関し、上記甲第1号証には、特許異議申立書第5頁第12行〜同第6頁第9行に摘示された事項が、FIG.1〜FIG.5の図面と共に記載されていることが認められる。
そして、上記甲第1号証の「The outsole16 is specically configurated to have an opening at the medial arch region(FIG.3),causing the curvilinear convex medial arch portion20' of spring plate20 to be exposed on the exteriorof the shoe,yet offset upwardly from the main plane of the outer sole16.」(第6欄第18〜23行)の記載及びFIG.3〜FIG.5の記載からみて、上記甲第1号証に記載されたもののspring plate20の中央の曲線で囲まれた中高状のarch portion20'(土踏まず部分20')は、外底16の底面から上方に引っ込んだ段をなす状態で、外底16の中央の土踏まず部分に設けたopening(開放領域)から靴の外側に露出している部分であるということができる。
しかしながら、上記甲第1号証には、上記甲第1号証に記載されたもののspring plate20が、外底16の内側アーチ外縁部方向への伸長部を有し、その伸長部端部を靴の甲被部分へ向けて立ち上がらせる旨の記載は見当たらない。
また、上記甲第2号証には、「任意材から成る本底の土踏まず部領域に抜き穴を設け、任意繊維と耐摩耗性樹脂とからなるシート状のシャンク芯を該抜き穴を覆って該抜き穴の外周面に配設して、本底の内面とシャンク芯とを平滑に接着し、本底の外面には抜き穴相当分の凹部を形成したことを特徴とする靴の本底。」が記載されており、この「靴の本底」に関し、上記甲第2号証には、「ゴム、プラスチックその他任意の発砲体から成る本底1の土踏まず部領域Bに抜き穴2を設け、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維その他任意の繊維と体摩耗性樹脂から成るシート状のシャンク芯3を本底1の抜き穴2を覆って外周面4まで配設して、金型を用いて加圧加熱して、本底1の内面Cとシャンク芯3とを平滑に接着5し、本底1の外面Dには抜き穴2相当分の凹部6を有する靴の本底である。」(第2欄第24行〜第3欄第5行)ことが第1図乃至第3図と共に記載されていることが認められる。
しかしながら、上記甲第2号証には、上記甲第2号証に記載されたもののシャンク芯3が、本底1の内側アーチ外縁部方向への伸長部を有し、その伸長部端部を靴の甲被部分へ向けて立ち上がらせる旨の記載は見当たらない。
そうすると、甲第1号証に記載されたもの及び甲第2号証に記載されたものは、いずれも、本件特許の請求項1に記載されたものの構成要件及び請求項2に記載されたものの構成要件である、アウトソールに形成された空間領域に対応する面積より幾分大きめのプレートであって、アウトソールとミッドソールの間に嵌挿、接着させる硬質合成樹脂またはゴム製のプレートのアウトソールの内側アーチ外縁部方向への伸長部端部を、靴の甲被部分へ向けて立ち上がらせ靴底全体として一体化したという構成要件を備えているということができない。
特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記甲第1号証の靴底は、「そのプレートの内側アーチ外縁部方向への伸長部端部を靴の甲被部分へ向けて立ち上がらせてある」という構成要件を具備している旨主張しているけれども(特許異議申立書第6頁第18〜26行の記載参照。)、叙上の通りであるから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
これに対して、本件特許の請求項1に記載されたもの及び請求項2に記載されたものは、本件の特許明細書の発明の詳細な説明の第6,7,9,11段の記載からみて、上記の構成要件を備えることにより、靴底に要求される弾性、耐曲げ疲労性、耐久性等の平面的機能に加えて、足と靴底を一体にさせて足の運動動作に順応させ、以て、靴内部での足の内側への捻れ、外側への戻り等の激しい運動時の足の異常動作を防止したり、或いは速やかに順応させるようにするという立体的機能をも、靴底に与えようとするものであるということができる。
そうすると、本件特許の請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明は、いずれも、上記甲第1号証に記載されたもの及び上記甲第2号証に記載されたものに基づいて、当業者が容易に発明できたものであるということはできず、特許法第29条第2項の規定に該当するものであるということができない。
(2)本件特許は(旧)特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしていないか否かについて
特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件の請求項1において使用されている「2箇所の『幾分』という語句は、どの程度の距離、大きさを表しているのか不明確である。また、発明の詳細な説明中にも、『外側アーチ外縁部の幾分内側から』、『前記空間領域に対応する面積より幾分大きめ』という点に関し、具体的な数値は何ら示されていない。従って、本件の請求項1は、2箇所の『幾分』という語句によって発明の外延が不明瞭になっており、発明を明確に把握することができないものである。」(第10頁第23〜29行)「このことは、甲第3号証の第30頁の(1)及び第34頁の3(なお、原文では、この3は丸文字の3である。)の記載を見ても明らかである。」と主張している。
よって、検討するに、「幾分」とは、「いくらか。ある程度。少し。」を意味する語句であるから(新村 出編「広辞苑第三版」岩波書店発行、昭和59年11月20日、参照。)、本件特許の請求項1に記載の「外側アーチ外縁部の幾分内側から」は、アウトソールの外側アーチ外縁部側の切除端を規定した文言であって、外側アーチ外縁部の少し内側からを意味する文言であると解されるし、同請求項1に記載の「空間領域に対応する面積より幾分大きめ」は、硬質合成樹脂またはゴム製のプレートの大きさを規定する文言であって、空間領域に対応する面積より少し大きめを意味する文言であると解される。
そして、本件特許の請求項1の記載からみて、そこに記載された「空間領域」は、「アウトソールの外側アーチ外縁部と内側アーチ外縁部で囲まれた部分」に形成された空間領域であるが、この「アウトソールの外側アーチ外縁部と内側アーチ外縁部で囲まれた部分」は、本件の特許明細書の発明の詳細な説明の第8段において、靴底の「ほぼ土踏まず部分に相当する部分」と定義されている。
そうすると、上記の「外側アーチ外縁部の幾分内側から」は、靴底の土踏まず部分に相当する部分の外側アーチ外縁部を基準として、その外側アーチ外縁部より少し内側からを意味する文言であり、それがその内側アーチ外縁部側に近いところからということまで意味する文言でないことは明らかであり、また、上記の「空間領域に対応する面積より幾分大きめ」は、靴底の土踏まず部分に相当する部分に形成した空間領域に対応する面積を基準として、その空間領域に対応する面積より少し大きめを意味する文言であり、それが靴底の土踏まず部分を越えて空間領域に対応する面積よりかなり大きいことまで意味する文言でないことも明らかである。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明に「外側アーチ外縁部の幾分内側から」、「前記空間領域に対応する面積より幾分大きめ」という点に関し具体的な数値で示されていないからといって、本件の特許明細書の発明の詳細な説明の第6〜9段,第11段の記載からすれば、その「幾分」の程度が理解できないとまではいうことができない。
したがって、本件の請求項1及び請求項2の記載は、2箇所の『幾分』という語句によって、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項が明確に把握することができないものであるとまではいうことができず、(旧)特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしていないものであるとまではいうことができない。
4.むすび
以上の通りであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-01-31 
出願番号 特願平5-351371
審決分類 P 1 651・ 534- Y (A43B)
P 1 651・ 121- Y (A43B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐野 健治  
特許庁審判長 寺尾 俊
特許庁審判官 岡田 和加子
冨岡 和人
登録日 1998-12-18 
登録番号 特許第2864208号(P2864208)
権利者 広島化成株式会社
発明の名称 靴底  
代理人 古関 宏  

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