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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B01D
管理番号 1012660
判定請求番号 判定2000-60010  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1991-10-11 
種別 判定 
判定請求日 2000-01-20 
確定日 2000-07-21 
事件の表示 上記当事者間の特許第1882363号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「レンジフードフィルタ」は、特許第1882363号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 I.請求の趣旨
イ号物品は、被請求人である株式会社アーランドが製造販売している「レンジフードフィルタ」であって、その構成はイ号図面およびその説明書に示されるものであり、特許第1882363号発明(以下、「本件特許発明」という。)の実施にのみ使用するものであるから、本件特許発明の技術的範囲に属する、との判定を求める。
II.本件特許発明
本件特許発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】装着しようとする排気口を覆う広さのシート状のフィルターで該排気口の入口を直接覆い、該フィルターの周囲を点在する複数の把手付きのマグネットホルダーによって押さえて該排気口に固定することを特徴とする排気口へのフィルター取付け方法。
【請求項2】予めフィルターの取付け部分にそれぞれのマグネットホルダーを個別に吸着させる凸縁付の磁石板が固着されていることを特徴とする請求項1記載の排気口へのフィルター取付け方法。
【請求項3】予め、装着しようとする排気口の周囲に表面に鉤状突起が設けられた基盤を取付け、その上から該排気口を覆う所定広さのフィルター被せ、前記鉤状突起に該フィルターの周辺を直接掛止したことを特徴とする排気口へのフィルター取付け方法。」
そして、該請求項3記載の排気口への取付け方法を分説すれば以下のとおりである。
構成要件A:予め、装着しようとする排気口の周囲に表面に鉤状突起が設け られた基盤を取付け、
構成要件B:その上から該排気口を覆う所定広さのフィルター被せ、
構成要件C:前記鉤状突起に該フィルターの周辺を直接掛止した
構成要件D:ことを特徴とする排気口へのフィルター取付け方法。
III.イ号物品
イ号物品は、甲第2号証として提出されたイ号物品の現物から明らかなように、「4つ折りにされた縦約36cm、横約60cmの不織布からなるフィルター」、「裏面に保護シートが貼着され、6枚に分離可能な面状ファスナーからなるマジックテープ」及び「縦方向に2つ折りとなって、表側にはレンジフードフィルタ60cm(マジックテープ付き)の名称と、レンジフードに上記マジックテープを用いて不織布を取付けたカラー写真が印刷され、裏面には、使用方法等が印刷された説明書」及び「フィルター、保護シート付きマジックテープ及び説明書の3点を収納する透明の合成樹脂製収納袋」とからなり、該説明書の記載の概要は、次のとおりである。
・レンジフード内の油汚れを防止するために使用する商品であること。
・特徴の1つは、マジックテープ付きなので、フィルターの交換がワンタ ッチで出来ること。
・使用方法は、備え付けの金属フィルターなどは、そのまま取り付け、備 え付けの金属フィルターなどをおおう位置にフィルターがくるように、 マジックテープを貼り付け、マジックテープにフィルターをよく押し付 けて取り付けること。
・フィルターの交換は、汚れたフィルターを取り外して、新しいフィルタ ーを、マジックテープに押し付けるだけで出来ること。
したがって、イ号物品の使用方法を上記請求項3に係る発明の構成要件に対応させて分説すると、以下のとおりである。
構成要件a:予め、装着しようとする備え付けの金属フィルタなどをおおう 位置にフィルターがくるように、マジックテープを取付け、
構成要件b:その上から該排気口を覆う広さのレンジフードフィルターを被 せ、
構成要件c:前記マジックテープに該フィルターの周辺を直接掛止した
構成要件d:ことを特徴とする排気口へのフィルター取付け方法。
IV.請求人の主張の概要
イ号物品の使用方法の構成と、本件特許発明の構成とを対比すると、前者の「装着しようとする備え付けの金属フィルタなどをおおう位置」とは、後者における「装着しようとする排気口の周囲」に相当し、前者における構成b、dは、後者の構成B、Dに相当する。また、両者は、「該フィルターの周辺を直接掛止」するものである点でも一致している。
よって、両者は、前者における「マジックテープ」が、後者の「表面に鉤状突起を設けた基盤」に相当するか否かが問題となる。
本件特許明細書には、「マジックテープ」あるいは「面状ファスナー」についての記載はないが、その構造、機能、作用からみた場合、以下に述べるように、前者の「マジックテープ」は、後者の「表面に鉤状突起を設けた基盤」と同一である。
マジックテープは、一般に面状ファスナーと呼ばれて、表面に多数の鉤状突起が設けられたフックテープと、表面に多数のループ状突起を備えたループテープとの2種類があり、不織布を取付け取り外し可能に固定する必要があるので、イ号物品のマジックテープにはフックテープが使用されていることは当然である。
甲第4号証乃至甲第8号証から明らかなように、マジックテープのフックテープは、表現は多少異なるが、鉤状(フック状)の突起を備え、これによって、ガーゼ、不織布あるいは編み物等の対象物を掛止している。この鉤状の突起は、それ単独では保持することができないので、基盤の上に植設されており、このため、マジックテープは必ず基盤(又は基板)が必要である。
従って、「表面に鉤状突起が設けられた基盤」には、フックテープからなるマジックテープが含まれることは、明細書中に開示がなくとも当然である。
また、マジックテープで不織布を固定する技術は、本件の特許公報に参考文献として記載された刊行物である下記の甲第9、10号証に示すように、換気扇のカバーにも用いられているが、これらに記載されたものは、換気扇の形状に合わせた枠体又は枠が必要であり、枠体又は枠を必要としない本件発明とは異なるものである。

甲第4号証 特公昭59-7453号公報
甲第5号証 特開昭61-16706号公報
甲第6号証 実願昭60-198596号(実開昭62-107825号 )のマイクロフィルム
甲第7号証 特公昭35-522号公報
甲第8号証 国際分類A44B18/00(面ファスナー)とキーワード 「カギ状、カギ型、鉤状、鉤型、フック、フック状」を掛け合 わせて検索した、パトリス検索回答
甲第9号証 実願昭58-92010号(実開昭59-195436号) のマイクロフィルム
甲第10号証 実願昭55-49173号(実開昭56-149837号) のマイクロフィルム
V.被請求人の主張の概要
イ号物品と本件の請求項3に係る特許発明とを構成要件ごとにそれぞれ対比すると、両者は、以下の点で相違する。
・構成Aに関し、本件特許発明では、表面に鉤状突起が設けられた基盤を取 付けるのに対して、イ号物品では、マジックテープを貼り付ける点
・構成Cに関し、本件特許発明では、鉤状突起であるのに対して、イ号物品 では、マジックテープである点。
しかし、本件特許明細書には「表面に鉤状突起を設けた基盤」について具体的に説明されていない以上、本件特許発明での「鉤状突起」は、普通に解すべきである。
一方、「鉤」とは一般的に、「先の曲がった金属製の具。また、それに似たものであるから、鉤状とは「先の曲がった形状」を意味し、本件特許公報の図面と符合する。
また、枠や枠体を介在することなく換気扇の排気口に直接被せる場合、フィルターの巻き込みを確実に防止するには、硬質又は剛直な鉤状突起を形成し、フィルターを確実にかつ強固に引っ掛けることが必要であるから、本件特許発明でいう「鉤状突起を設けた基盤」とは、「その表面に先端部が尖った硬質突起が傾斜乃至先端部に向けて曲がった爪状で設けられた基盤」と解釈すべきである
一方、マジックテープの雄側(フックテープ)は、その表面に、輪の最大径のやや下方の一部を切断して切れ目が形成されたループ状の輪が多数設けられたもので、ループ状の輪は先が尖っておらず、傾斜乃至先端部に向けて曲がった爪状でもなく、硬質でもない。すなわち、マジックテープの表面構造は、一般的な意味での「鉤状突起」を観念させるものではなく、「その表面に先端部が尖った硬質突起が傾斜乃至先端部に向けて曲がった爪状で設けられて」いるとはいえない。
また、マジックテープの掛止作用は、本件特許発明の「その表面に先端部が尖った硬質突起が傾斜乃至先端部に向けて曲がった爪状で設けられて」いる構造による掛止作用と実質的に異なる。
さらに、マジックテープ自体は、請求人が提出する甲第4ないし8号各証からも明白なように、本件特許出願前から広く用いられ、雄側のみを使用してパイル地等を組み合わせて使用することも行われていた。また、本件特許出願時において、フィルタの取付けにマジックテープを用いることは周知乃至慣用の技術である。よって、本件出願が特許され、かつ本件明細書には「鉤状突起を設けた基盤」にマジックテープ(面状ファスナー又は面ファスナー)を含むことを示唆するような記載が全くない以上、「鉤状突起を設けた基盤」は限定的に解釈せざるを得ない。
さらに又、請求人が提出した甲第9、10号証、及び被請求人が提出した下記の乙第2、3号証からも明らかなように、レンジフードをフィルターで覆う際に、仮止め手段としてマジックテープを用いることは、当業者であれば容易に想到しうる事項にすぎない。
よって、イ号物品の「マジックテープ」は、鉤状突起に当たらないから、イ号物品は、本件特許発明の要件である「鉤状突起を設けた基盤」を備えていないので、本件特許発明の技術的範囲には属しない。
なお、被請求人は、被請求人が提起した、差止請求権不存在確認等請求事件の判決文を下記の乙第1号証として提出している。

乙第1号証 平成7年(ワ)第10079号差止請求権不存在確認等請求事 件の判決文
乙第2号証 被請求人の出願した実願平2-63875号(実開昭4-2 3937号公報)
乙第3号証 実願平2-63875号に対する拒絶理由通知書
VI.当審における判断
本件特許発明の方法と、イ号物品の使用方法を比較した場合、後者における「マジックテープ」が、前者の「表面に鉤状突起を設けた基盤」に相当するか否かだけが問題となるという点では、請求人と被請求人との間に争いはない。
そこで、以下、この点について検討する。
1.本件明細書及び図面の記載からの検討
請求人が提出した甲第1号証(本件特許公報)によれば、本件明細書には、詳細な説明中の【問題点を解決するための手段】の欄に「予め、装着しようとする排気口の周囲に表面に鉤状突起が設けられた基盤を取付け、その上から該排気口を覆う所定広さのフィルターを被せ、前記鉤状突起に該フィルターの周辺を直接係止するようにして構成されている。」、【作用】の欄に「鉤状突起が設けられた基盤を排気口の周囲に設けて、該鉤状突起にフィルターを掛止させているので、フィルターを簡単に排気口に取付け、その交換も容易にできる。」、【実施例】の欄に「第6図は、・・・、排気口の周囲に適当間隔で鉤状突起28の設けられた基盤29を磁石30によって取付け、前記鉤状突起28にフィルター31の端を引っ掛けるようにしている。」、【発明の効果】の欄に「排気口の周囲に直接フィルターを被せ、予め取付けられた鉤状突起が設けられた基盤に固定して、フィルターを固定しているので、極めて簡単にフィルタの交換が行える。」との記載はあるが、「鉤状突起を設けた基盤」については具体的な説明は全くなく、本件図面の第6図に、フィルターの取り付け方法を示す断面図があるだけである。
そこで、該第6図の記載を検討するに、該図には、断面コ字状の基盤29のコ字状内部空間に磁石30を収納し、外側に先端部が尖り、かつ、先端部に向けてわずかに曲がった形状の突起28が斜め同一方向に傾斜して3本設けられており、3本の突起にはフィルター31の端部近傍が引っ掛かった状態が示されている。
また、「鉤」とは、広辞苑第4版によれば、「先の曲がった金属製の具。また、それに似たもの。」であるから、「鉤状」とは先の曲がった形状を指すものとして使われると解される。
そして、それ以外の形状を想起しうる記載は、本件明細書の説明や図面には何ら見いだすことができない。
してみれば、本件明細書の説明や図面の記載から判断して、本件特許発明における「表面に鉤状突起を設けた基盤」とは、「その表面に先端部が尖っった突起が傾斜ないし先端部に向けて曲がった形状で設けられた基盤」を意味すると解せられる。
2.イ号物品を構成するマジックテープについて
請求人が提出した甲第4号証乃至甲第8号証からも明らかなように、一般に「マジックテープ」あるいは「面状ファスナー」のフックテープ(雄側)といわれるものには、いろいろな形状のものがあるところ、甲第2号証によれば、イ号物品を構成するマジックテープは、「雄側」或いは「フックテープ」といわれる側のものであって、その裏面に接着面を覆う保護シートが貼着され、その表面には、輪の最頂点からやや下方の部分に輪の一部を切断して切れ目が設けられた、ループ状の輪が多数植設された、裏面の保護シートをはがしてレンジフードに接着しうるように構成されている。
該雄側のマジックテープに設けられた、一部が切断された多数のループ状の輪は、前記一般的な意味での「鉤状突起」を思い起こさせるようなものではなく、「その表面に先端部が尖っった突起が傾斜ないし先端部に向けて曲がった形状で設けられて」いるとはいえない。
さらに、イ号物品のマジックテープ(雄側)の係止作用は、輪の最頂点からやや下方の部分に輪の一部を切断して切れ目が設けられた、ループ状の輪の一方側部分と他方側部分とからなる構造によるものである。すなわち、当該切れ目部分から進入した繊維状のものは、輪を切断した一方側部分と他方側部分の両者の相互作用により、当該輪から抜け出しがたいように規制されるものである。よって、イ号物品のマジックテープの係止作用は、本件特許発明の「その表面に先端部が尖っった突起が傾斜ないし先端部に向けて曲がった形状で設けられた」構造による係止作用とは、その作用効果の面で質的に異なるものである。
3.先行出願及び公知技術からみた検討
前記甲第4〜8号証からも明らかなように、マジックテープ自体は、本件特許発明の出願前から周知のものであり、例えば、甲第6号証に記載されているように、該マジックテープの雄側のみを用い、それにパイル生地等を押しつけることにより、生地の糸をマジックテープに設けられた突起に引っ掛けて仮止めすることも、本件出願前に既に公知である。
また、本件特許出願日(平成2年1月28日)前に出願され、かつ本件出願日前に出願公開されている、換気扇カバーに関する実用新案登録出願の明細書には、「面状ファスナー」或いは「マジックテープ」を用いて、換気扇用交換フィルターを仮止めすることが開示されている。
すなわち、請求人が提出した甲第9号証は、請求人が、本件特許発明の出願日前の昭和58年6月14日付で出願した実用新案登録出願である実願昭58-92010号の(実開昭59-195436号、昭和59年12月26日公開)のマイクロフィルムであって、次の記載がある。
「交換フィルター部材(C)は通気性を阻害しない程度の荒い不織布状の難燃性繊維等によって形成し、」(明細書第4頁3〜5行)
「第5図は交換フィルター部材(C)の仮止め手段(A)として面状ファスナー(b)を用いた場合の他の実施例を示すものであり、筒状本体部(B)の後面開口縁部(3´)の内周面(5)に任意間隔の下に面状ファスナー(b)を取り付けた者である。従って本実施例における交換フィルター部材(C)の取り付け作業は、後面開口縁部(3´)の内周面(5)側に折り込んだ交換フィルター部材(C)の外周縁部(6)を各面状ファスナー(b)の表面に強く押しつけるだけで固定することができ、又取り外し作業も少し力を入れて引っ張るだけで容易に面状ファスナー(b)より剥がすことができるものである。なお、仮止め手段(A)としては上記実施例に示すもの以外に、例えば両面テープや挟持クリップを用いたり、或いは多数の針状係止片による等種々の方法によることができるものであり、要は折り込まれた交換フィルタ部材の(C)の外周縁部(6)を筒状本体部(B)の後面開口縁部(3´)の内周面(5)側において仮止め状態となし得るものであればよい。」(明細書第5頁下から第3行〜第6頁第14行)
また、請求人が提出した甲第10号証は、昭和55年4月11日に出願された実願昭55-49173号(実開昭56-149837号、昭和56年112月10日公開)のマイクロフィルムであって、次の記載がある。なお、以下の「××××テープ」は、明細書に記載された「マジックテープ」が、登録商標であるために、公報不掲載としたものである。
「この実用新案は、換気扇カバーのフィルターを××××テープ雄で止めるようにしたことを特徴とするものである。」(明細書第1頁下から第9〜7行)
「フィルター14を扉の内側から当て、××××テープ7の上を指で軽く押さえると、フィルターは簡単に枠に貼りつく。」(明細書第2頁第9〜11行)
「本案の××××テープ7は、扉の外側の枠に貼りつけることも出来、フィルターを扉の外側にとりつければ、枠が油で汚れる事も少なくフィルタの取り替えも、扉を閉じた状態のままで簡単にとりかえられる。更に扉が開閉式でない場合は、フィルタを換気扇カバー全体に被さるよう、××××テープでとりつけることも出来、この場合もフィルターの取り替えは簡単で、カバー本体も汚れない利点がある。」(明細書第4頁下から第10行〜末行)
以上のことから判断して、換気扇用交換フィルタの分野において、フィルターを仮止めする手段として、マジックテープを用いることは本件出願前に既に公知であり、しかも、請求人自身を含めて、当業者は、明細書において「面状ファスナー」あるいは「マジックテープ」という用語を用いていたものと認められるところ、本件明細書には、本件特許発明の「鉤状突起が設けられた基盤」として「マジックテープ」或いは「面状ファスナー」が含まれることを示唆する記載は全くない。
よって、イ号物品を構成するマジックテープは、本件特許発明の「鉤状突起を設けた基盤」には当たらない、と解するのが相当である。
なお、この点について、請求人は、本件特許発明は、枠体あるいは支持体を用いずに、排気口を覆う広さのフィルターで排気口を直接覆うようにした点に特徴を有するものであって、枠を必要とする甲第9号証及び甲第10号証の考案とは異なるものであるから、これらの各号証に記載のものから容易に発明し得るものではない旨主張しているので、以下に付言する。
換気扇及びレンジフードの排気口に用いるフィルターの取り付け方法として、枠体あるいは支持体を用いずに、排気口を覆う広さのフィルターで排気口を直接覆うようにすることは、例えば、実願昭63-35574号(実開平1-139811号)のマイクロフィルム及び実願昭52-143804号(実開昭54-69669号)のマイクロフィルムに記載されているように、本件出願前に既に公知であって、特に前者には、フィルターを複数個の磁石片で取り付けることが記載されている。また、乙第2号証は、被請求人が本件出願後の平成2年6月16日付けで出願した「換気扇カバー」に係る実用新案登録出願の明細書及び図面であり、乙第3号証は、該実用新案登録出願について通知された拒絶理由通知であるが、乙第2号証には、網状体が取付けられた深型レンジフード用の換気扇カバーであって、該網状体の前面を覆う不織布などからなるシート状の交換フィルター(すなわち、請求人が主張するところの、枠体あるいは支持体を用いずに、排気口を覆う広さのフィルターで排気口を直接覆うようにしたフィルター)が、磁石や面ファスナーなどの仮止め手段により、網状体に貼着されることが記載され、乙第3号証には、引用文献として上記実願昭52-143804号(実開昭54-69669号)のマイクロフィルムが挙げられると共に、備考として「フィルタを換気扇前面に磁石等の仮止め手段により仮止めすることは、例示するまでもなく従来周知である。また、深型レンジフードにフィルタを設けることも従来周知である。」と記載されている。
VII.むすび
以上のとおりであるから、イ号物品は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
イ号図面説明書
1.図面の説明
図1(A)、(B)は株式会社アーランドが販売しているレンジフードフィルターの平面図及び背面図、図2は収納袋に人っている不織布、マジックテープ、説明書、振込取扱票、収納袋をばらばらにして記載したものである。図3は説明書の表側のコピー、図4は説明書の裏側のコピーである。
2.イ号物品の説明
イ号物品は図1〜図2に示すように、以下の(A)〜(E)からなる。
(A)上部に熱溶着した封止部10を介してつり下げ部11を有し、つり下 げ部11の中央部分には円形の掛止孔12が設けられて、透明合成樹脂シ ートを主素材とする縦長長方形の収納袋13。
(B)4つ折りされた縦約36cm及び横約60cmの2枚の不織布14。
(C)透明の合成樹脂シートに収納されて、裏面に保護シートが貼着された 6枚に分離可能なマジックテープ(フックテープ)15。
(D)縦方向に2つ折りとなって、表側及び裏側には以下の事項が記載され た写真入りの説明書16。
表側(図3参照)
「レンジフードフィルター60cm(マジックテープ付き)」の文字、
「フィルター寸法、 縦36cm、横60cm、フィルター2枚入り」 の文字
「ペットボトル再利用商品」の文字、
「PET」の文字が記載された「ペットボトル」の絵、及び「*この説 明書は再生紙を使用しております。」の文字
「特徴1 油汚れを防ぎ清潔!」
「特徴2 熱に強く安心!」
「特徴3 毎月替えて、経済的!」
「特徴4 マジックテープで取付簡単!」
「レンジフードフィルターの使用状態を示す写真」特に、この写真には 、マジックテープの取付け部分に拡大図の写真があり、矢印にて「マジ ックテープ」の表示がある。
裏側(図4参照)
「〈〈適用範囲〉〉
・イラストの様な浅型・深型レンジフードのフード幅が、60cm用の フィルターです。」
そして、「浅型レンジフード」の文字及びその図面と、「深型レンジ フード」の文字及びその図面と「←幅60cm→」が記載されている。
「〈〈使用目的〉〉
・このフィルターは、レンジフード内の油汚れを防止する為に使用する 商品です。」
「〈〈製品の効用〉〉
・レンジフード内の油汚れをキャッチし、備え付けの金属フィルター及 びレンジフード内の掃除が楽になります。」
「〈〈特徴〉〉
・難燃特殊フィルターなので熱に強く、安心です。
・フィルターだけの交換式なので、経済的です。
交換時期は約1ヶ月毎に、新しいフィルターに交換して下さい。
・マジックテープ付なので、フィルターの交換がワンタッチで出来ま す。」
「〈〈ご使用方法〉〉
1.備え付けの金属フィルター及びレンジフード内のお掃除をした後、 備え付けの金属フィルターなどは、そのまま取り付けて下さい。
2.備え付けの金属フィルターなどをおおう位置に、フィルターがくる ように、マジックテープを貼り付けて下さい。
3.マジックテープにフィルターをよく押し付けて、取り付けて下さい 。
4.フィルターの交換は、汚れたフィルターを取り外して、新しいフィ ルターをマジックテープに押し付けるだけで、ご交換出来ます。」
そして、右側には、「浅型レンジフード」と「深型レンジフード」の文 宇と「これらにフィルターを取付ける前の図面」と、「取り付けた後の 図面」が記載されている。
「〈〈ご使用上の注意〉〉
・レンジフードのご使用前後に、フィルターがマジックテープによく取 り付けられているか、安全のためご確認下さい。
・一般のご家庭でご使用される期間は、約1ヶ月が目安です。
汚れたままで、ご使用になりますと、フィルターが目づまりして、換気 能力が落ちますので、新しいフィルターにご交換下さい。
・この商品は一般家庭用です。長時間使用される営業用や特殊建築物な どでは、ご使用にならないで下さし、。
・レンジフード用フィルター以外の用途には使用しないで下さい。
床面等のふき掃除やほこり取り等には使用できません。
・直接火のあたる場所や高温になる場所では使用しないで下さい。
特に、料理にアルコール類を入れて、炎の出る可能性のある場合には、 穴があいたり、フィルターについている飛沫油に、引火するおそれがあ りますので、使用しないで下さ い。
・火災予防条例により「ガスコンロ等の調理具と、その上部との距離を lm以上保つこと」と定められています。
これより短い距離では、絶対に使用しないで下さい。」
最下欄には、
「コンロからlm以上離して使用する絵」、「バーコード」、「フィル ター材質、ポリエステル灘燃特殊不織布の文字」、製造業者を示す「株式 会社アーランドの名称、住所、電話番号、ファックス番号」及び「NAD BINJAPAN」の文字が記載されている。
(E)払込取扱票17。
株式会社アーランドに送金するための振込用紙である。
 
判定日 2000-06-30 
出願番号 特願平2-17560
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松井 佳章  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 能美 知康
西村 和美
登録日 1994-11-10 
登録番号 特許第1882363号(P1882363)
発明の名称 排気口へのフィルタ―取付け方法  
代理人 中前 富士男  
代理人 鍬田 充生  

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