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審決分類 審判 全部無効 発明同一 無効とする。(申立て全部成立) B31C
管理番号 1013934
審判番号 審判1996-861  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1977-12-15 
種別 無効の審決 
審判請求日 1996-01-12 
確定日 1996-10-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第1276108号発明「ウエブ材料のロール」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第1276108号発明の特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 本審判請求に係る特許は、昭和52年5月18日の特許出願(特願昭56-2126号、スウエーデン国に対する出願に基づく、優先権主張日:1976年5月19日)につて、昭和59年12月18日の出願公告(特公昭59-52062号)され、昭和60年8月16日に登録されたものであり、その後、小林昌志に移転されたものである。
1、これに対する無効審判請求は3つの理由を掲げるものでり、その第1番目の理由(以下これを「理由1」という)の主旨は次ぎのとおりである。
本件特許発明は、本件特許の出願の先願の出願であって、出願公開された特願昭50-96299号(発明者および出願人、小林昌志)の願書に最初に添付された明細書または図面(以下これを「先願の明細書等」という。特開昭52-21403号)に記載された発明と同一であるから、本件特許は特許法第29条の2の規定に違反するものであり、特許法第123条第1項2号の規定により無効にすべきものである。
また、第2番目の理由(以下これを「理由2」という)は、本件特許発明は特開昭51-55404号公報(昭和51年5月15日出願公開)に記載された発明に基づいて当業者が本件特許の出願前に容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
さらに、第3番目の理由(以下これを「理由3」と言う)は、本件特許明細書には記載が不備な点があり、特許法第36条に規定する要件を満足しえないものである。
したがって、本件特許は特許法策123条の規定により無効にすべきものである。
2、上記理由1に対する、被求人の反論(平成8年6月11日付け答弁)の主旨は次ぎのとおりである。
本件特許発明の構成要件の一部、「中央開口を有してウエブ材料の供給を形成し」は、発明の詳細な説明の記載を参酌すれば、ロールの中央部開口からもウエブ材料を繰り出すことができることが可能な状態とし」を意味することは明らかであるとの前提に立ち、先願の明細書等にはこの点が記載されているとは言えないので、本件特許発明はこの点において先願の明細書等に記載された発明と相違する。したがって、本件特許発明は先願の明細書等に記載された発明と同一ではない。
3、判断
理由2および理由3は平成8年4月25日付け補充された理由であり、理由2の証拠方法、特開昭51-55404号公報は本件特許の出願前に頒布された刊行物であり、これには理由1の証拠方法に記載された発明と同様の発明が記載されていて、理由2は、特開昭51-55404号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、したがって、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである、というものである。このことから、理由2は、本件特許発明は、理由1の証拠方法に記載された発明に対して相違する点があって、そのために同一であるとはいえないとしても、その相違点は当業者が容易に想到し得たことであるというものと推測され、したがって、予備的な理由であると推測される。
そこで、まず、理由1についてその理由の有無について判断する。
(1)本件特許発明の要旨
本件特許発明の要旨は、明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の欄の第1項に記載された次ぎのとおりと認められる。
「紙、プラスチツク箔、布帛あるいは同類物等の固有の剛さを有さないかあるいはほんの少ししか有さないウエブ材料の筒状ロールであって、
中央開口を有してウエブ材料の供給を形成し、かつロールを軸方向および放射方向の圧潰に対して支持するのに十分な強度を有する前記中央開口内の筒状芯を有するウエブ材料の筒状ロールにおいて、前記芯が前記ウエブ材料の多数の巻回体と芯を形成するウエブ材料の少な<とも一つの面の上にこの芯巻回体を実質的に剛性の芯に固めるぺく塗布された固定剤とからなり、芯を形成する前記ウエブ材料はロールを形成する前記ウエブ材料と一体的に連続しており、前記固定剤はウエブ材料の強さよりも低い接着強度を有し、しかして前記芯におけるウエブ材料の巻回体が使用のために筒状ロールの材料と共に同じ態様で繰り出されるようにして残余の芯を残さないようにしたことを特徴とするウエブ材料の筒状ロール。」。
なお、上記の「中央開口を有してウエブ材料の供給を形成し、」は、その文脈からして、「中央開口を有してウエブ材料の供給を形成した、・・・ウエブ材料の筒状ロール」であることを意味することは明らかであり、また、「中央開口を有してウエブ材料の供給を形成し、」は文意が必ずしも明確ではないが、発明の詳細な説明の記載を参酌すると、ウエブ材料の筒状ロールが「中央開口を有していて」この中央開口から「ウエブ材料を繰り出せるように形成された」ものであることを意味するものと解することができる。
(2)先願の明細書等に記載された発明
先願の明細書等にトイレットペーパーロールが記載されており、このものはいわゆる別個巻き芯を有せず、トイレットペーパーの巻取先端部を巻取軸に巻き付け、その頭初の数巻き分を軽く接着させて巻きロールの中心部分を硬化させて巻き芯として機能させられるようにしたものである。また、このものはトイレットペーパーの頭初の数巻き分に水を吹き付けて接着性を持たせ、あるいは稀薄な糊液を吹き付けて接着性を持たせたものである。
また、先願の明細書には「本発明の接着とは糊液により剥がれないように接着してももちろんよいが、・・・剥がれる場合は剥がして最後までトイレットペーパを使い尽くし、剥がれない場合は便器に投入すれ・・・よい。」の記載がある。この記載はトイレットペーパーロールを外周から繰り出して、芯として機能する上記硬化部が残った場合に、その部分の紙の層が剥離可能な程度に接着されている場合は、これを全部繰り出して使用できることを意味していることは明らかである。
このことから、先願の明細書には、上記芯の部分の紙層間の接着強度を紙層が剥離する程度にすることによって、この部分からも紙シートを繰り出せることが記載されていることが認められる。
(3)本件特許発明の先願の明細書等に記載された発明との相違
そこで本件特許発明と先願の明細書等に記載された発明とを比較すると、芯の部分がその中央開口部から繰り出せる程度に接着して硬化したものである点において相違し、その余の点において一致しているものと認められる。
(4)相違点についての評価・判断
次いで上記相違点について考察する。
先願の明細書には、トイレットペーパーロールの外周からトイレットペーパーを繰り出して硬化した芯の部分に到達してとき、その紙層を剥がしながらそれを繰り出せるようにすることが記載されていることは明らかであるが、芯の部分から繰り出せるようになっている旨の記載がないことは被請求人主張のとおりである。
しかし、いわゆる巻き芯を有しないロール紙について中央開口部からも繰り出して使うことは従来周知のことであり(一例として例えば、実公昭50-12499号公報、実開昭50-53239号マイクロフィルム参照)、日常的にも経験することである。そして、先願の明細書等に記載されたものは、接着して硬化した芯の部分が剥ぎ取られる程度に接着されているのであるから、巻きロールの内周からも剥ぎ取られ得ることは予測するに難くないことである(外周からは剥ぎ取られるが、内周からは剥ぎ取れないというべき理由はない)。したがって、このものについて実際の使用において巻きロールの内周から繰り出すことが求められるときは、それが可能であることは常識的に推測し得たことである。
また、内側から繰り出すには、例えば、その巻取先端部が自然には剥離せず、人手によるときは容易に剥離するようにすることが望ましいが、このために本件発明が巻取の仕方等について特別な工夫を講じたものであるとは言えず、また本件特許発明がそのような要求に適うような特別の接着方法をその要旨とするものであるとも言えない。
したがって、上記相違点は、先願の明細書等に記載された巻きロールについて、中央開口部からも繰り出せるようにしたものであるというに相当し、言わば先願の明細書等に記載されたものについて常識的に予想される上記の使用形態を単に明示したにすぎないといえる。
それゆえ、本件特許発明は先願の明細書等に記載された発明と実質的に同一であると言える。
また、本件特許発明の発明者、出願人が先願の発明の発明者、出願人と同一でないことは明らかである。
それゆえ、本件特許は特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであると言わざるを得ない。
4、まとめ
以上のとおりであるから、理由2、理由3について判断するまでもなく、本件特許は特許法第123条第1項2号に規定する特許に該当するものと認められる。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1996-07-23 
結審通知日 1996-08-02 
審決日 1996-08-09 
出願番号 特願昭52-58172
審決分類 P 1 112・ 161- Z (B31C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 光田 敦  
特許庁審判長 園田 敏雄
特許庁審判官 千馬 隆之
藤 文夫
登録日 1985-08-16 
登録番号 特許第1276108号(P1276108)
発明の名称 ウエブ材料のロール  
代理人 山内 康伸  
代理人 湯浅 恭三  
代理人 伊藤 茂  
代理人 社本 一夫  

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