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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1013985
審判番号 審判1996-18770  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-02-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1996-11-06 
確定日 2000-05-22 
事件の表示 平成2年特許願第159919号「プラスチック光ファイバ」拒絶査定に対する審判事件(平成4年2月19日出願公開、特開平4-51205)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願は、平成2年6月20日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に特定された次のとおりのものである。
「1.芯層/鞘層/保護層の三層構造を基本構成とするオールプラスチック光ファイバにおいて、各層形成用重合体が230℃、5kg荷重におけるメルトインデックス値(M.I)が
芯形成用重合体のM.I<鞘形成用重合体のM.I×5/9‥‥(1)
鞘形成用重合体のM.I<保護層形成用重合体のM.I×7/9‥‥(2)
なる条件を満足する重合体にて構成されており、保護層の厚みが10μm以下であることを特徴とするプラスチック光ファイバ。(以下、本願請求項1に係る発明という。)
2.芯層/鞘層/保護層の三層構造を基本構成とするオールプラスチック光ファイバにおいて、各層形成用重合体が230℃、5kg荷重におけるメルトインデックス値(M.I)が
芯形成用重合体のM.I<鞘形成用重合体のM.I×5/9‥‥(1)
鞘形成用重合体のM.I<保護層形成用重合体のM.I×7/9‥‥(2)
なる条件を満足する重合体にて構成されており、鞘層の厚みと保護層の厚みとの比が1:1〜1:2であることを特徴とするプラスチック光ファイバ。(以下、本願請求項2に係る発明という。)」
2.これに対して、当審において平成10年8月28日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開昭61-240205号公報(以下、第1引用例という。)には、「前記芯材層重合体のメルトフローレート〔MFR〕1と鞘材層重合体のメルトフローレート〔MFR〕2とが、〔MFR〕1≦〔MFR〕2≦40g/10分の関係を満足する値をとるプラスチック光ファイバを、210〜240℃の紡糸温度で溶融複合紡糸することを特徴とするプラスチック光ファイバの製造法。」(特許請求の範囲第4行乃至第11行)、「本発明において前記メルトフローレート〔MFR〕1及び〔MFR〕2は、例えば日本工業規格JISK7210-1976……を準拠する場合、A法(手動切取り法)を用い、試験温度230℃、試験荷重5kgで測定されるものである。」(第3頁左上欄第5行乃至第12行)、及び「また、前記コア成分、クラッド成分に加え、保護成分としてポリ弗化ビニリデン(……メルトフローレート20g/10分)を用い、同様に3成分複合紡糸して、芯材層径700μm、鞘材層径(厚みの誤記と認められる。)6μm、保護層厚み144μmのプラスチック光フアイバ心線を得た。」(第5頁右上欄第5行乃至第10行)との記載があり、第1表には、「紡糸温度=210〜240、コアの〔MFR〕1=2.3、クラッドの〔MFR〕2=10」が開示され、図面第2図からは、コア1,クラッド2,保護層3の構成が窺え、結局、「コア1/クラッド2/保護層3の三層構造を基本構成とするオールプラスチック光ファイバにおいて、各層形成用重合体がメルトフローレート〔MFR〕1、〔MFR〕2が
〔MFR〕1=2.3<〔MFR〕2=10×5/9=5.6‥‥(1)
〔MFR〕2=10<保護層3形成用重合体のメルトフローレート=20×7/9=15.6‥‥(2)
なる条件を満足する重合体にて構成されており、保護層3の厚みが144μmであることを特徴とするプラスチック光ファイバ。」及び「コア1/クラッド2/保護層3の三層構造を基本構成とするオールプラスチック光ファイバにおいて、各層形成用重合体がメルトフローレート〔MFR〕1、〔MFR〕2が
〔MFR〕1=2.3<〔MFR〕2=10×5/9=5.6‥‥(1)
〔MFR〕2=10<保護層3形成用重合体のメルトフローレート=20×7/9=15.6‥‥(2)
なる条件を満足する重合体にて構成されており、クラッド2の厚みと保護層3の厚みとの比が1:24であることを特徴とするプラスチック光ファイバ。」が記載されている。
3-1.そこで、本願請求項1に係る発明と第1引用例記載のものとを対比すると、本願請求項1に係る発明の「芯層」、「鞘層」、「保護層」、「230℃、5kg荷重におけるメルトインデックス(M.I)」は、夫々第1引用例記載のものの「コア1」、「クラッド2」、「保護層3」、「メルトフローレート〔MFR〕1、〔MFR〕2」に相当するから、両者は、(1)保護層の厚みが、本件請求項1に係る発明では、10μm以下であるのに対して、第1引用例記載のものでは、144μmである点で相違し、その余の点では一致している。
3-2.そこで、本願請求項2に係る発明と第1引用例記載のものとを対比すると、本願請求項2に係る発明の「芯層」、「鞘層」、「保護層」、「230℃、5kg荷重におけるメルトインデックス(M.I)」は、夫々第1引用例記載のものの「コア1」、「クラッド2」、「保護層3」、「メルトフローレート〔MFR〕1、〔MFR〕2」に相当するから、両者は、(i)鞘層の厚みと保護層の厚みとの比が、本件請求項2に係る発明では、1:1〜1:2であるのに対して、第1引用例記載のものでは、1:24である点で相違し、その余の点では一致している。
4-1.相違点(1)について検討すると、一般に、保護層の厚みをどの程度の値とするかは、保護層の材料等によって、当業者が適宜決定できる設計的な手段に過ぎず、例えば、特開平2-25812号公報では25μm、特開平2-93502号公報では36μm、特開平1-235905号公報では40μm、特開昭64-84205号公報では40μm、特開昭63-113511号公報では50μmとなっている。
また、本件の実施例1、比較例7,8における、保護厚みと伝送損失との関係は、A660nmの赤色LEDを発光入力源としたとき、保護厚み(μm)5,15,20に対して、伝送損失(db/Km)が、198,231、236と変化し、B650nmでのN.A.=0.65入射光としたとき、保護厚み(μm)5,15,20に対して、伝送損失(db/Km)が、128,150、169と変化し、C650nmでのN.A.=0.1入射光としたとき、保護厚み(μm)5,15,20に対して、伝送損失(db/Km)が、120,125、132と変化し、上記したA、B、Cいずれの場合にも、保護厚みが増えるにつれて伝送損失が滑らかに増えているから、保護層の厚みを「10μm以下」にすることに格別の臨界的な意義が在るとは認め難い。
4-2.相違点(i)について検討すると、一般に、鞘層の厚みと保護層の厚みとの比をどの程度の値とするかは、鞘層や保護層の材料等によって、当業者が適宜決定できる設計的な手段に過ぎず、例えば、特開平2-93502号公報では1:9、特開平1-235905号公報では1:4、特開昭64-84205号公報では1:8、特開昭63-113511号公報では1:6.3となっている。
また、本件の実施例1、比較例7,8における、鞘層の厚みと保護層の厚みとの比(以下、当該比という。)と伝送損失との関係は、A660nmの赤色LEDを発光入力源としたとき、当該比1:1,1:3,1:4に対して、伝送損失(db/Km)が、198,231、236と変化し、B650nmでのN.A.=0.65入射光としたとき、当該比1:1,1:3,1:4に対して、伝送損失(db/Km)が、128,150、169と変化し、C650nmでのN.A.=0.1入射光としたとき、当該比1:1,1:3,1:4に対して、伝送損失(db/Km)が、120,125、132と変化し、上記したA、B、Cいずれの場合にも、当該比が増えるにつれて伝送損失が滑らかに増えているから、当該比を「1:1〜1:2」にすることに格別の臨界的な意義が在るとは認め難い。
5.したがって、本願請求項1及び2に係る発明は、第1引用例に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、本願請求項1及び2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-01-04 
結審通知日 1999-01-12 
審決日 1999-01-19 
出願番号 特願平2-159919
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋場 健治  
特許庁審判長 高橋 美実
特許庁審判官 横林 秀治郎
柏崎 正男
発明の名称 プラスチック光ファイバ  
代理人 田村 武敏  

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