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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H05K |
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管理番号 | 1016403 |
異議申立番号 | 異議1999-74472 |
総通号数 | 12 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-09-10 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-12-01 |
確定日 | 2000-05-15 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2898814号「印刷インダクタ付き多層配線板」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2898814号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1本件発明 本件特許第2898814号の請求項1ないし3に係る発明(平成4年2月25日に出願され、平成11年3月12日に設定登録。)は、特許明細書及び図面の記載からみても、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により構成されるとおりの次のものと認める。 【請求項1】アース層、配線層又は電源層上に、誘電体層を挾んで印刷インダクタを構成してなる印刷インダクタ付き多層配線板において、印刷インダクタの直下又は直上に位置するアース層、配線層又は電源層の一部又は全部を切り欠いたことを特徴とする印刷インダクタ付き多層配線板。 【請求項2】請求項1に記載の印刷インダクタ付き多層配線板において、印刷インダクタが、多層配線板の内部に形成したものであることを特徴とする印刷インダクタ付き多層配線板。 【請求項3】請求項1又は2に記載の印刷インダクタ付き多層配線板において、切り欠いたアース層、配線層又は電源層のさらに下層又は上層に位置する電源層又はアース層を切り欠かない構造とし、印刷インダクタに対してシールド効果をもたせたことを特徴とする印刷インダクタ付き多層配線板。 2申立ての理由の概要 申立人京セラ株式会社は、証拠として甲第1号証(特関昭62-112402号公報),甲第2号証(特開平3-254512号公報)及び甲第3号証[実願昭60―188045号(実開昭62-96884号報)のマイクロフィルム]を提出し、本件請求項1に記載の発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法29条1項3号の発明に該当しているにもかかわらず特許されたものであり、本件請求項2及び3に記載の発明は、甲第1号証から、または甲第1号証ないし甲第3号証を組み合わせることにより当業者が容易に想到しうる程度のものであり、特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法113条1項2号または4号の規定により取り消されるべきである旨主張している。(なお、同法113条1項4号については内容が示されていない。) 3甲第1ないし第3号証の記載 甲第1号証には、その2頁左下欄7ないし14行に、「ジグザグ形状の導電パターン18は、主ストリップ線路14より細く、したがってこのストリップラインフィルタ10が用いられるマイクロ波帯域では、インダククンスを形成する。 一方、誘電体基板12の他方主面には、切欠部22を除いて、全面にアース電極20が形成される」と記載されており、 また、その第1図には、誘電体基板12の一方主面に、インダクタを構成する導電パターン18が形成され、他方主面にはアース電極20が、導電パターン18の形成された部分を除いて形成されている。 即ち、印刷インダクタの直下のアース層は一部を切り欠かれている。 また、甲第1号証の2頁左下欄14行ないし18行には、「アース電極20に切欠部22を形成するのは、この部分にアース電極が存在すると、導電パターン18とそのアース電極とが結合して分布定数回路を構成し、必要なインダク夕ンスが得られなくなるので、それを回避するためである」と記載されている。 ここで、分布定数回路はインダクタと容量とからなるもので、甲第1号証では、導電パターン18によるインダクタと、導電パターン18とアース電極20間の浮遊容量による分布定数回路の構成を阻止するため、アース電極20に切欠部22を形成している。 即ち、甲第1号証は、浮遊容量をなくすために、導電パターン18の直下のアース電極20に、誘電体基板12ごと切欠部22を形成したものである。 甲第2号証には、その2頁右上欄17行ないし左下欄3行には、「厚み方向中央部にはコイル電極層1が配設され、このコイル電極層1の下側には間に誘電体層3を挟んでシールド電極層5が形成され、更にその下側には保護層10が形成されている。 一方、コイル電極層1の上側は、間に誘電体層2を挟んでシールド電極層4が形成され」と記載され、また、第1図、および第6図には、基板内に印刷インダククおよびシールド電極(別名アース電極)が形成された共振器が記載されている。 甲第3号証は、多層印刷基板について記載されたもので、その明細書2頁10行ないし14行に、「多層印刷基板において、交流的に接地電位となる電源用の導体パ夕ーンを、格別なひきまわしとすることにより、この導体パターンと信号用の導体パターンとの間の浮遊容量を小さくするようにした」と記載され、6頁3行ないし6行には、「同様の理由によりパターン(26C)がコンデンサの電極ではなくても信号に関係するパターンであれば、浮遊容量Csによる特性の劣化を生じてしまう」と記載され、6頁12行ないし17行には、「交流的に接地電位にある電極(27A)、(27B)を連絡するパターンは、パターン(21)ないし(23)およびスルーホールないしビアホール(31)により基板(10)の反対面側まで立体的に引きまわして信号に関係するパターンとの対向間隔を大きくする」と記載され、 6頁20行ないし7頁1行には、「信号に関係するラインと接地電位点との間の浮遊容量が減少し、必要とする特性を得ることができる」と記載されている。 即ち、甲第3号証には、浮遊容量を小さくするためには、導体パターンと信号用の導体パターンとの間の対向間隔を大きくすることが有効であることが記載されている。 4対比・判断 本件請求項1に係る発明と甲第1ないし第3号証に記載の発明とを対比する。 甲第1号証に記載された発明は、インダクタの直下には誘電体層が切り欠かれて存在しないのであるから、本件請求項1に係る発明の「アース層、配線層又は電源層上に、誘電体層を挟んで印刷インダクタを構成し」たものではない。 甲第2号証に記載された発明は、コイルとコンデンサを並列接続した共振器に関する発明であって、印刷インダクタ直下のアース層の一部を切り欠く構成はなく 、インダクタ浮遊容量の低減を意図したものではない。 甲第3号証に記載の発明は浮遊容量の減少を意図したものではあるが、インダクタとの関連の記載はない。 したがって、本件請求項1に係る発明の主要な構成である「アース層、配線層又は電源層上に、誘電体層を挾んでインダクタを構成したもの」において、インダクタの直下又は直上に位置するアース層、配線層又は電源層の一部又は全部を切り欠いたものは甲第1ないし第3号証のいずれにも示されていないし、またこれを示唆する記載もない。 よって、本件請求項1に係る発明は甲第1ないし第3号証に記載の発明から当業者が容易に推考しうるものではない。 本件請求項2および3に係る発明は、請求項1に係る発明を更に限定したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記甲第1ないし第3号証に記載の発明から当業者が容易に推考しうるものではない。 5申立人の主張 申立人は、甲第1号証は、浮遊容量をなくすために、導電パターン18の直下のアース電極20に切欠部22を形成しているのであるから本件発明と同じ構成効果を生ずると主張している。 しかしながら、本件特許明細書によれば、本件発明は浮遊容量をなくすのが目的ではなく、印刷インダクタと対向するアース層等との距離を大きくして、自己共振周波数を得るために必要な浮遊容量を低減しようとするものであるから、甲第1号証に記載の発明とはその構成効果が相違しているため申立人の主張を認めることはできない。 6むすび したがって特許異議申立ての理由及び証拠によって本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-04-17 |
出願番号 | 特願平4-37708 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H05K)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岡田 和加子 |
特許庁審判長 |
神崎 潔 |
特許庁審判官 |
鈴木 法明 清水 英雄 |
登録日 | 1999-03-12 |
登録番号 | 特許第2898814号(P2898814) |
権利者 | 株式会社日立製作所 |
発明の名称 | 印刷インダクタ付き多層配線板 |